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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083005
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】無機質成形体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20220527BHJP
   C04B 35/117 20060101ALI20220527BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C04B35/80 300
C04B35/117
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194219
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】米内山 賢
【テーマコード(参考)】
4G019
【Fターム(参考)】
4G019FA15
(57)【要約】
【課題】高温で熱変形しにくい無機質成形体を提供する。
【解決手段】無機質成形体は、アルミナ含有量が60質量%超のアルミナ質繊維と、アルミナ粒子と、無機バインダーと、を含み、リフラクトリーセラミックファイバーを実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減された、無機質成形体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ含有量が60質量%超のアルミナ質繊維と、
アルミナ粒子と、
無機バインダーと、
を含む無機質成形体であって、
リフラクトリーセラミックファイバーを実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減された、無機質成形体。
【請求項2】
縦150mm、横45mm、厚さ7mmの平板形状の試験体の長手方向中央部に縦30mm、横45mmの直方体形状の錘10gを載せて1400℃で3時間保持する熱クリープ試験において測定される前記熱クリープ量が下記(a)又は(b):
(a)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m未満であり、前記熱クリープ量が9.0mm以下である;
(b)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m以上であり、前記熱クリープ量が3.0mm以下である;、
を満たす、請求項1に記載の無機質成形体。
【請求項3】
縦150mm、横45mm、厚さ7mmの平板形状の試験体の長手方向中央部に縦30mm、横45mmの直方体形状の錘10gを載せて1400℃で3時間保持する熱クリープ試験において測定される前記熱クリープ量を、前記試験体の嵩密度で除して得られる熱クリープ量/嵩密度比が、下記(c)又は(d):
(c)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m未満であり、前記熱クリープ量/嵩密度比が0.0450以下である;
(d)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m以上であり、前記熱クリープ量/嵩密度比が0.0080以下である;、
を満たす、請求項1又は2に記載の無機質成形体。
【請求項4】
200℃以上の温度で加熱されたことがない、縦150mm、横50mm、厚さ25mmの平板形状の試験体に、3点曲げ強度試験機を用いてヘッドスピード10mm/分の速さで荷重を加える曲げ強度試験において測定される最大荷重に基づき、式:未加熱曲げ強度(MPa)={3×最大荷重(N)×下部支点間距離(mm)}/{2×試験体の幅(mm)×(試験体の厚さ(mm))};で得られる未加熱曲げ強度を、前記試験体の嵩密度で除して得られる未加熱曲げ強度/嵩密度比が、0.0031以上である、請求項1乃至3のいずれかに記載の無機質成形体。
【請求項5】
前記無機質成形体100質量部に対する前記リフラクトリーセラミックファイバーの含有量は0.1質量部以下である、
請求項1乃至4のいずれかに記載の無機質成形体。
【請求項6】
前記アルミナ粒子の平均粒径が0.5μm以上、100μm以下である、
請求項1乃至5のいずれかに記載の無機質成形体。
【請求項7】
嵩密度が100kg/m以上、1000kg/m以下である、
請求項1乃至6のいずれかに記載の無機質成形体。
【請求項8】
ヒーター線をさらに含む、
請求項1乃至7のいずれかに記載の無機質成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品や電池用電極材等を熱処理するために、工業炉による焼成が行われている。工業炉の内部に設けられる炉材(断熱材)としては、熱容量及び熱伝導率が低いものが求められる。このような炉材を用いることにより、加熱時の熱エネルギーを効率的に利用するとともに、タクトタイムを短縮して生産効率を向上させている。
【0003】
この点、特許文献1には、炉材として用いたときに、熱容量及び熱伝導率が十分に低いとともに、十分な強度を有し、アルカリガスによる侵食が低減され、表面における剥離やクラックの発生を抑制し得る無機質成形体として、アルミナ質繊維と、アルミナ粒子と、無機バインダーとを含み、ASTM C522による通気抵抗率が6×10Pa・S/m以下で、嵩密度が100~200kg/mである無機質成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-155733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、工業炉の中には、高温焼成が求められるものがあり、加熱時に変形の少ない炉材が求められる。この点、従来、結晶質アルミナ繊維及びアルミナ粒子に加えて、主にコストを抑える目的で非晶質アルミナシリカ繊維であるリフラクトリーセラミックファイバーをさらに含む炉材があった。
【0006】
しかしながら、本発明の発明者らが独自に検討したところ、リフラクトリーセラミックファイバーを含む炉材は高温におけるクリープ量が比較的大きく、重量物を載せた場合、炉材が損傷しやすく、交換頻度が高くなりやすいことが判明した。また、炉材にヒーター線を埋め込み、パネルヒーターとして用いる際、熱変形量が大きいことで、当該ヒーター線に負荷がかかりやすくなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、高温で熱変形しにくい無機質成形体を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無機質成形体は、アルミナ含有量が60質量%超のアルミナ質繊維と、アルミナ粒子と、無機バインダーと、を含む無機質成形体であって、リフラクトリーセラミックファイバーを実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減された、無機質成形体である。本発明によれば、高温で熱変形しにくい無機質成形体が提供される。
【0009】
また、前記無機質成形体は、縦150mm、横45mm、厚さ7mmの平板形状の試験体の長手方向中央部に縦30mm、横45mmの直方体形状の錘10gを載せて1400℃で3時間保持する熱クリープ試験において測定される前記熱クリープ量が下記(a)又は(b):(a)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m未満であり、前記熱クリープ量が9.0mm以下である;(b)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m以上であり、前記熱クリープ量が3.0mm以下である;、を満たすこととしてもよい。
【0010】
また、前記無機質成形体は、縦150mm、横45mm、厚さ7mmの平板形状の試験体の長手方向中央部に縦30mm、横45mmの直方体形状の錘10gを載せて1400℃で3時間保持する熱クリープ試験において測定される前記熱クリープ量を、前記試験体の嵩密度で除して得られる熱クリープ量/嵩密度比が、下記(c)又は(d):(c)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m未満であり、前記熱クリープ量/嵩密度比が0.0450以下である;(d)前記無機質成形体及び前記試験体の嵩密度が300kg/m以上であり、前記熱クリープ量/嵩密度比が0.0080以下である;、を満たすこととしてもよい。
【0011】
また、前記無機質成形体は、200℃以上の温度で加熱されたことがない、縦150mm、横50mm、厚さ25mmの平板形状の試験体に、3点曲げ強度試験機を用いてヘッドスピード10mm/分の速さで荷重を加える曲げ強度試験において測定される最大荷重に基づき、式:未加熱曲げ強度(MPa)={3×最大荷重(N)×下部支点間距離(mm)}/{2×試験体の幅(mm)×(試験体の厚さ(mm))};で得られる未加熱曲げ強度を、前記試験体の嵩密度で除して得られる未加熱曲げ強度/嵩密度比が、0.0031以上であることとしてもよい。
【0012】
また、前記無機質成形体は、前記無機質成形体100質量部に対する前記リフラクトリーセラミックファイバーの含有量が0.1質量部以下であることとしてもよい。また、前記無機質成形体は、前記アルミナ粒子の平均粒径が0.5μm以上、100μm以下であることとしてもよい。また、前記無機質成形体は、嵩密度が100kg/m以上、1000kg/m以下であることとしてもよい。また、前記無機質成形体は、ヒーター線をさらに含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温で熱変形しにくい無機質成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態において無機質成形体の物性を評価した結果の一例を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態において無機質成形体の物性を評価した結果の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る無機質成形体(以下、「本成形体」という。)について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0016】
本成形体は、アルミナ含有量が60質量%超のアルミナ質繊維と、アルミナ粒子と、無機バインダーと、を含む無機質成形体であって、リフラクトリーセラミックファイバーを実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減された、無機質成形体である。
【0017】
アルミナ質繊維は、アルミナを主成分として含む金属酸化物繊維である。本成形体に含まれるアルミナ質繊維は、アルミナ含有量が60質量%超である。アルミナ質繊維のアルミナ含有量は、60質量%超であれば特に限られないが、例えば、61質量%以上であってもよく、65質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。
【0018】
また、アルミナ質繊維のアルミナ含有量が70質量%以上である場合、当該アルミナ含有量は、72質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより一層好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。
【0019】
さらに、アルミナ質繊維のアルミナ含有量が85質量%以上である場合、当該アルミナ含有量は、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0020】
アルミナ質繊維のアルミナ含有量が大きくなるほど、当該アルミナ質繊維を含む本成形体の熱クリープ量が低減される傾向がある。アルミナ質繊維のアルミナ含有量の上限値は特に限られないが、当該アルミナ含有量は、例えば、100質量%以下であってもよいし、99質量%以下であってもよいし、98質量%以下であってもよいし、97質量%以下であってもよいし、96質量%以下であってもよい。
【0021】
アルミナ質繊維のアルミナ含有量は、上記下限値のいずれかと、上記上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本成形体は、アルミナ含有量が互いに異なる2種以上のアルミナ質繊維を含んでもよいし、アルミナ質繊維としてアルミナ含有量が特定値である1種類のみを含んでもよい。
【0022】
アルミナ質繊維は、アルミナ以外の成分をさらに含んでもよい。アルミナ質繊維がアルミナ以外の成分(他の成分)を含む場合、当該他の成分は、例えば、シリカ、ジルコニア、カルシア、酸化鉄、ソディア、及びマグネシアからなる群より選択される1以上であってもよく、シリカであることが好ましい。
【0023】
アルミナ質繊維がシリカを含む場合、当該アルミナ質繊維における他の成分の含有量(当該アルミナ質繊維が2種以上の他の成分を含む場合には当該2種以上の他の成分の含有量の合計)100質量部に対するシリカ含有量は、例えば、60質量部以上(60質量部以上、100質量部以下)であってもよく、70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることがより一層好ましく、95質量部以上であることが特に好ましい。
【0024】
具体的に、例えば、アルミナ質繊維のアルミナ含有量が80質量%(すなわち、他の成分の含有量は20質量%)であって、他の成分の含有量100質量部に対するシリカ含有量が90質量部以上である場合、当該アルミナ質繊維におけるシリカ含有量は、18質量部以上、20質量部以下である。
【0025】
アルミナ質繊維の平均長さは、特に限られないが、例えば、100μm以上、100000μm以下であることが好ましく、1000μm以上、80000μm以下であることがより好ましく、3000μm以上、50000μm以下であることが特に好ましい。
【0026】
アルミナ質繊維の平均繊維径は、特に限られないが、例えば、1μm以上、20μm以下であることが好ましく、2μm以上、10μm以下であることがより好ましく、3μm以上、7μm以下であることが特に好ましい。アルミナ質繊維のアスペクト比(縦横比)は、特に限られないが、例えば、25以上であることが好ましい。
【0027】
アルミナ粒子は、焼結アルミナからなるものであってもよいが、結晶性の高いαアルミナ(電融アルミナ)からなるものであることが好ましい。アルミナ粒子の平均粒径は、特に限られないが、例えば、0.5μm以上、100μmであることが好ましく、0.5μm以上、50μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上、15μm以下であることがより一層好ましく、2.0μm以上、10μm以下であることが特に好ましい。
【0028】
アルミナ粒子の平均粒径が小さいほど、当該アルミナ粒子を含む本成形体の力学的強度が向上する傾向がある。なお、アルミナ粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
【0029】
無機バインダーは、本発明の効果を損なわないものであれば特に限られないが、例えば、コロイダルシリカ(例えば、アニオン性のコロイダルシリカ、及びカチオン性のコロイダルシリカからなる群より選択される1以上)、ヒュームドシリカ、ジルコニアゾル、チタニアゾル、アルミナゾル、及びベントナイトからなる群より選択される1以上であることが好ましく、コロイダルシリカであることが特に好ましい。
【0030】
本成形体は、無機定着材をさらに含んでもよい無機定着材は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限られないが、例えば、硫酸アルミニウム、アルミナゾル及びアンモニア水からなる群より選択される1以上であってもよく、硫酸アルミニウムであることが好ましい。
【0031】
本成形体は、有機バインダーをさらに含んでもよい。有機バインダーは、本発明の効果を損なわないものであれば特に限られないが、例えば、高分子凝集剤及び澱粉からなる群より選択される1以上であることが好ましい。なお、本成形体が高分子凝集剤を含む場合、本成形体は、さらに澱粉を含んでもよいし、澱粉を含まないこととしてもよい。
【0032】
有機バインダーとしての高分子凝集剤は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限られないが、例えば、ポリアクリルアミド系高分子、アマイド系高分子、ポリアクリルエステル系高分子、及びポリアクリルエーテル系高分子からなる群より選択される1以上であることが好ましく、特にポリアクリルアミド系高分子であることが好ましい。
【0033】
有機バインダーとしての澱粉は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限られず、例えば、原料澱粉(例えば、天然原料由来澱粉(例えば、バレイショ澱粉、タピオカ澱粉、トウモロコシ澱粉及びその加水分解物からなる群より選択される1以上))、カチオン澱粉、アニオン澱粉、及び両性澱粉からなる群より選択される1以上であってもよい。
【0034】
本成形体は、有機バインダーとして、必要に応じて、パルプや適当なエマルジョン等をさらに含んでもよい。本成形体の製造において、所望の大きさのフロックを形成するために溶媒中に添加する有機バインダーの種類及び添加量は、無機バインダーの電荷量、電荷の性質、使用するアルミナ粒子のサイズ等に応じて最適化される。
【0035】
なお、本成形体は、少なくともその成形の時点(例えば、後述する脱水成形又は抄造により得られた湿潤成形体を乾燥した無機質成形体として本成形体が得られた時点)において、有機バインダーを含むことが好ましい。
【0036】
一方、後述するように、本成形体は、その成形後、出荷前又は使用前に焼成処理が施されてもよい。焼成処理が施された本成形体においては、当該焼成処理前に含まれていた有機バインダーの一部又は全部が消失していてもよい。
【0037】
本成形体の嵩密度は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限られないが、例えば、100kg/m以上、1000kg/m以下であってもよく、150kg/m以上、1000kg/m以下であることが好ましく、200kg/m以上、1000kg/m以下であることがより好ましく、300kg/m以上、1000kg/m以下であることが特に好ましい。
【0038】
ここで、本成形体において特徴的なことの一つは、本成形体は、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)を実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減されていることである。
【0039】
すなわち、上述のとおり、本発明の発明者らが独自に検討したところ、RCFを含む炉材は高温におけるクリープ量が比較的大きいことが判明した。この点、本成形体は、RCFを実質的に含まないため、RCFを含む従来の炉材に比べて、熱クリープ量が低減される。
【0040】
RCFは、アルミナ(Al)含有量が60質量%以下の非晶質のアルミナシリカ繊維である。具体的に、RCFは、30質量%~60質量%のAlと、40質量%~60質量%のSiOとを含む。RCFは、さらに、20質量%以下のR(RはZr又はCr)を含んでもよい。すなわち、RCFは、0質量%~20質量%のR(RはZr又はCr)を含んでもよい。RCFの平均繊維径は一般的に1μm~3μmである。RCFは、溶融繊維化法を用いて製造される。
【0041】
具体的に、RCFを実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減された本成形体は、例えば、RCFを実質的に含まず、縦150mm、横45mm、厚さ7mmの平板形状の試験体の長手方向中央部に縦30mm、横45mmの直方体形状の錘10gを載せて1400℃で3時間保持する熱クリープ試験において測定される熱クリープ量が下記(a)又は(b):(a)本成形体及び当該試験体の嵩密度が300kg/m未満であり、当該熱クリープ量が9.0mm以下である;(b)本成形体及び当該試験体の嵩密度が300kg/m以上であり、当該熱クリープ量が3.0mm以下である;、を満たすこととしてもよい。
【0042】
上記熱クリープ試験においては、本成形体を加工して、上記サイズ及び形状の本成形体からなる試験体を作製し、当該試験体に10gの荷重をかけながら1400℃で3時間保持した場合の変形量を熱クリープ量として測定する。
【0043】
本成形体が上記(a)を満たす場合、本成形体及び試験体の嵩密度は、300kg/m未満(例えば、299kg/m以下)であれば特に限られないが、例えば、100kg/m以上、300kg/m未満であってもよく、130kg/m以上、300kg/m未満であってもよく、150kg/m以上、300kg/m未満であってもよい。
【0044】
また、上記(a)を満たす本成形体の熱クリープ量は、例えば、8.0mm以下であることが好ましく、7.0mm以下であることがより好ましく、6.0mm以下であることがより一層好ましく、5.0mm以下であることが特に好ましい。
【0045】
さらに、上記(a)を満たす本成形体の熱クリープ量が5.0mm以下である場合、当該熱クリープ量は、例えば、4.0mm以下であることが好ましく、3.5mm以下であることがより好ましく、3.0mm以下であることが特に好ましい。
【0046】
本成形体が上記(b)を満たす場合、本成形体及び試験体の嵩密度は、300kg/m以上であれば特に限られないが、例えば、300kg/m以上、1000kg/m以下であってもよい。
【0047】
また、上記(b)を満たす本成形体の熱クリープ量は、例えば、2.5mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることが特に好ましい。
【0048】
また、RCFを実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減された本成形体は、例えば、RCFを実質的に含まず、縦150mm、横45mm、厚さ7mmの平板形状の試験体の長手方向中央部に縦30mm、横45mmの直方体形状の錘10gを載せて1400℃で3時間保持する熱クリープ試験において測定される熱クリープ量を、当該試験体の嵩密度で除して得られる熱クリープ量/嵩密度比が、下記(c)又は(d):(c)本成形体及び当該試験体の嵩密度が300kg/m未満であり、当該熱クリープ量/嵩密度比が0.0450以下である;(d)本成形体及び当該試験体の嵩密度が300kg/m以上であり、当該熱クリープ量/嵩密度比が0.0075以下である;、を満たす、こととしてもよい。
【0049】
本成形体が上記(c)を満たす場合、本成形体及び試験体の嵩密度は、300kg/m未満(例えば、299kg/m以下)であれば特に限られないが、例えば、100kg/m以上、300kg/m未満であってもよく、130kg/m以上、300kg/m未満であってもよく、150kg/m以上、300kg/m未満であってもよい。
【0050】
また、上記(c)を満たす本成形体の熱クリープ量/嵩密度比は、例えば、0.0400以下であることとしてもよく、0.0350以下であることが好ましく、0.0300以下であることがより好ましく、0.0250以下であることがより一層好ましく、0.0200以下であることが特に好ましい。
【0051】
本成形体が上記(d)を満たす場合、本成形体及び試験体の嵩密度は、300kg/m以上であれば特に限られないが、例えば、300kg/m以上、1000kg/m以下であってもよい。
【0052】
また、上記(d)を満たす本成形体の熱クリープ量/嵩密度比は、例えば、0.0075以下であることとしてもよく、0.0070以下であることが好ましく、0.0600以下であることがより好ましく、0.0500以下であることがより一層好ましく、0.0400以下であることが特に好ましい。
【0053】
また、RCFを実質的に含まないことにより、熱クリープ量が低減された本成形体は、例えば、RCFを実質的に含まず、200℃以上の温度で加熱されたことがない、縦150mm、横50mm、厚さ25mmの平板形状の試験体に、3点曲げ強度試験機を用いてヘッドスピード10mm/分の速さで荷重を加える曲げ強度試験において測定される最大荷重に基づき、式:未加熱曲げ強度(MPa)={3×最大荷重(N)×下部支点間距離(mm)}/{2×試験体の幅(mm)×(試験体の厚さ(mm))};で得られる未加熱曲げ強度を、当該試験体の嵩密度で除して得られる未加熱曲げ強度/嵩密度比が、0.0031以上であることとしてもよい。
【0054】
上記曲げ強度試験においては、未加熱の(未だ200℃以上の温度で加熱されたことのない)本成形体を加工して、上記サイズ及び形状の本成形体からなる試験体を作製し、当該試験体に3点曲げ強度試験機を用いてヘッドスピード10mm/分の速さで荷重を加えた場合における最大強度(破断強度)を測定し、上記式より未加熱曲げ強度を算出する。
【0055】
本成形体の未加熱曲げ強度/嵩密度比は、例えば、0.0035以上であることが好ましく、0.0040以上であることが特に好ましい。
【0056】
RCFを実質的に含まない本成形体は、当該本成形体100質量部に対するRCFの含有量が、0.1質量部以下である無機質成形体である。本成形体100質量部に対するRCFの含有量は、例えば、0.07質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以下であることが特に好ましい。
【0057】
本成形体におけるアルミナ質繊維の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、本成形体は、例えば、当該本成形体100質量部に対して、15質量部以上、90質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよく、20質量部以上、85質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよく、25質量部以上、80質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよく、30質量部以上、75質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよい。
【0058】
また、本成形体は、アルミナ質繊維の含有量とアルミナ粒子の含有量との合計100質量部に対して、例えば、10質量部以上、90質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよく、20質量部以上、90質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよく、30質量部以上、90質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよく、40質量部以上、80質量部以下のアルミナ質繊維を含んでもよい。
【0059】
本成形体におけるアルミナ粒子の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、本成形体は、例えば、当該本成形体100質量部に対して、5質量部以上、65質量部以下のアルミナ粒子を含んでもよく、10質量部以上、60質量部以下のアルミナ粒子を含んでもよく、15質量部以上、55質量部以下のアルミナ粒子を含んでもよい。
【0060】
本成形体は、嵩密度が300kg/m未満である場合、アルミナ質繊維の含有量とアルミナ粒子の含有量との合計100質量部に対する、アルミナ含有量が72質量%以下のアルミナ質繊維の含有量は、40質量%未満であることとしてもよく、35質量%以下であることとしてもよく、20質量%以下であることとしてもよく、10質量%以下であることとしてもよい。
【0061】
また、本成形体は、嵩密度が300kg/m未満である場合、本成形体に含まれるアルミナ質繊維は、アルミナ含有量が72質量%超であることとしてもよく、75質量%以上であることとしてもよく、80質量%以上であることとしてもよい。
【0062】
本成形体は、嵩密度が300kg/m以上である場合、アルミナ質繊維の含有量とアルミナ粒子の含有量との合計100質量部に対する、アルミナ含有量が72質量%以下のアルミナ質繊維の含有量は、60質量%未満であることとしてもよく、55質量%以下であることとしてもよく、50質量%以下であることとしてもよく、45質量%以下であることとしてもよく、40質量%以下であることとしてもよい。
【0063】
本成形体における無機バインダーの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、本成形体は、アルミナ質繊維の含有量とアルミナ粒子の含有量との合計100質量部に対して、例えば、1質量部以上、20質量部以下の無機バインダーを含むことが好ましく、3質量部以上、17質量部以下の無機バインダーを含むことがより好ましく、5質量部以上、15質量部以下の無機バインダーを含むことが特に好ましい。
【0064】
本成形体が無機定着材を含む場合、本成形体における当該無機定着材の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、本成形体は、アルミナ質繊維の含有量とアルミナ粒子の含有量との合計100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、15質量部以下の無機定着材を含むことが好ましく、0.1質量部以上、10質量部以下の無機定着材を含むことがより好ましく、0.1質量部以上、5質量部以下の無機定着材を含むことが特に好ましい。
【0065】
本成形体が有機バインダーを含む場合、本成形体における当該有機バインダーの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、本成形体は、アルミナ質繊維の含有量とアルミナ粒子の含有量との合計100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、15質量部以下の有機バインダーを含むことが好ましく、0.5質量部以上、10質量部以下の有機バインダーを含むことがより好ましく、1質量部以上、5質量部以下の有機バインダーを含むことが特に好ましい。
【0066】
本成形体は、断熱材として機能するために十分に低い熱伝導率を有することが好ましい。すなわち、本成形体は、600℃における熱伝導率が、例えば、0.45(W/m・K)以下であることが好ましく、0.35(W/m・K)以下であることがより好ましく、0.25(W/m・K)以下であることが特に好ましい。
【0067】
本成形体は、ヒーター線を含むこととしてもよい。すなわち、この場合、本成形体は、例えば、その表面に配置されたヒーター線を含む。ヒーター線を含む本成形体は、例えば、パネルヒーターとして使用される。ヒーター線は、特に限られないが、例えば、通電されることにより発熱する金属線(例えば、ニクロム線又は二珪化モリブデン)であることが好ましい。
【0068】
本成形体は、次のような方法によって好ましく製造される。本成形体の製造方法においては、まず上述したアルミナ質繊維と、アルミナ粒子と、無機バインダーとを含むスラリーを調製する。この際、無機定着材をさらに含むスラリーを調製してもよい。また、有機バインダーをさらに含むスラリーを調製してもよい。
【0069】
スラリーのウェットボリュームは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、例えば、50mL/20g以上、1000mL/20g以下であることが好ましく、75mL/20g以上、950mL/20g以下であることがより好ましく、100mL/20g以上、900mL/20g以下であることが特に好ましい。
【0070】
次いで、スラリーを脱水成形又は抄造することにより、湿潤成形体を得る。ここで、必要に応じて(例えば、嵩密度が比較的大きい本成形体を製造する場合)、湿潤成形体をプレスしてもよい。
【0071】
その後、湿潤成形体を乾燥することにより、無機質成形体(本成形体)を得る。本成形体の形状は特に限られないが、例えば、ボード状、シート状、又はブロック状であることが好ましい。また、本成形体の形状は、所望の形状に合わせて吸引型を選択することにより、円筒状、又は円錐状等の他の形状とすることもできる。
【0072】
また、本成形体は、さらに焼成処理が施されてもよい。すなわち、例えば、本成形体を断熱材や耐火材として使用する場合、出荷前、使用前又は使用時に本成形体に焼成処理を施してもよい。
【0073】
焼成処理の方法は特に限られず、例えば、公知の加熱炉を用いて行われる。焼成温度は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、例えば、600℃以上(例えば、600℃以上、1600℃以下)であることが好ましい。焼成時間は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限られないが、例えば、30分以上(例えば、30分以上、60分以下)であることが好ましい。
【0074】
また、本成形体は、硬化処理が施されてもよい。硬化処理は、例えば、本成形体に無機バインダー(例えば、コロイダルシリカ及びアルミナゾルからなる群より選択される1以上)を含む硬化処理液を含侵させ、乾燥させる処理である。硬化処理により、乾燥後の本成形体の硬度を効果的に向上させることができる。
【0075】
硬化処理液は、例えば、無機バインダーに加えて、粘度を制御するための有機増粘剤及び無機粉末(例えば、ガラス粉末、アルミナ粉末及びワラストナイト粉末からなる群より選択される1以上)からなる群より選択される1以上を含んでもよい。本成形体に硬化処理液を含侵させる方法は特に限られないが、例えば、刷毛塗り、スプレー塗布、及び浸漬からなる群より選択される1以上が好ましく用いられる。
【0076】
また、本成形体は、表面コーティング処理が施されてもよい。すなわち、例えば、ZrO、SiO及びSiCを含むコーティング剤や、Al及びSiOを含むコーティング剤を本成形体の表面にコーティングすることにより、本成形体の表面特性を効果的に向上させることができる。具体的に、例えば、本成形体を炉内に配置して使用する場合、本成形体に表面コーティング処理を施すことにより、当該炉内のスケール(例えば、酸化鉄)に対する耐食性、及び/又は炉内の熱風に対する耐風速性を効果的に向上させることができる。
【0077】
また、本成形体は、接着処理が施されてもよい。すなわち、例えば、複数の本成形体を互いに接着する場合や、本成形体と他の成形体とを接着する場合、Al及びSiOを含む接着剤や、Fe及びSiOを含む接着剤を本成形体の接着面に塗布することにより、その接着力を効果的に向上させることができる。
【0078】
また、ヒーター線を含む本成形体(例えば、パネルヒーターである本成形体)を製造する場合、例えば、当該ヒーター線を吸引成形時に予め成形型に入れておくことで、当該ヒーター線が湿潤成形体内部に含まれるようにしてもよく、又は、本成形体を切削加工して切削部に当該ヒーター線を埋め込み、さらに蓋を設けてもよい。前者の方法によれば、ヒーター線の保持力が高く、被加熱物との接触が起きにくい。後者の方法によれば、ヒーター線を含む本成形体を製造しやすく、熱効率が高い。また、後者の方法において、ヒーター線を埋め込む前に本成形体の切削面に上記硬化処理を施すことにより、ハンドリング性を向上する。また、本成形体の強度が高いことにより、切削加工時における加工精度が向上する。
【0079】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例0080】
[原料]無機繊維としては、(I)アルミナ含有量が95質量%のアルミナ質繊維(デンカ株式会社製、「B95N5」、シリカ含有量5質量%、アルミナ中に占めるαアルミナ含有量50質量%~59質量%、平均繊維径2μm~4μm)、(II)アルミナ含有量が80質量%のアルミナ質繊維(デンカ株式会社製、「B80」、シリカ含有量20質量%、アルミナ中に占めるムライト含有量50質量%~70質量%、平均繊維径3μm~5μm)、(III)アルミナ含有量が72質量%のアルミナ質繊維(三菱ケミカル株式会社製、「マフテック」、シリカ含有量28質量%、アルミナ中に占めるムライト含有量0質量%~59質量%、平均繊維径5μm~7μm)、及び、(V)RCF(ニチアス株式会社製、「ファインフレックス1300」、アルミナ含有量49質量%、シリカ含有量51質量%、平均繊維径2μm~3μm)を用いた。
【0081】
無機粒子としては、アルミナ粒子(日本軽金属株式会社製、「SA31」、平均粒径5μm、Al:99.4%以上)を用いた。
【0082】
無機バインダーとしては、コロイダルシリカ(日本化学工業株式会社製、「シリカドール30」、固形分30質量%の懸濁液、固形分の平均粒径15nm、pH10.0)及び、アルミナゾル(日産化学工業株式会社製、「アルミナゾル520」、固形分20質量%の懸濁液、pH4.0)を用いた。
【0083】
無機定着材としては、硫酸アルミニウム(浅田化学工業株式会社製、「液体硫酸アルミニウム」、酸化アルミニウム8.0~8.2%、pH3.0以上)を用いた。有機バインダーとしては、高分子凝集剤であるポリアクリルアミド(荒川化学工業株式会社製、「ポリストロン705」、カチオン性、不揮発分10%、pH2.5~3.5、粘度300~1000mPa・s)、及び、澱粉(日澱化学株式会社製、「ペトロサイズJ」)を用いた。
【0084】
[無機質成形体]図1及び図2に示す配合にて、水に、無機繊維、無機粒子、無機バインダー、無機定着材、及び有機バインダーを加え、さらに、スラリー濃度が2質量%となるように、水を加えて攪拌し、スラリーを作製した。
【0085】
上述のようにして得られたスラリーを、底部に網が設置された成形型中に流し込み、溶媒を吸引する吸引脱水成形法により脱水成形して、平板形状を有する湿潤成形体を得た。さらに、実施例8~14及び比較例3においては、最終的に得られる無機質成形体の嵩密度が所望の範囲となるように、上述のようにして得られた湿潤成形体をプレスした。一方、実施例1~7及び比較例1,2においては、湿潤成形体のプレスは行わなかった。その後、各例で得られた湿潤成形体を乾燥機により110℃で36時間乾燥処理することにより、厚さ25mmの平板形状の無機質成形体を得た。
【0086】
[嵩密度]各例で得られた無機質成形体の嵩密度をノギスによる寸法測定(縦、横、厚さ)、及び電子天秤による重量測定により算出した。
【0087】
[未加熱曲げ強度]各例で得られた無機質成形体の未加熱曲げ強度を次のようにして測定した。無機質成形体からなる縦150mm、横50mm、厚さ25mmの平板形状の試験片に、万能強度試験機(株式会社島津製作所製、「オートグラフ」)を用いて、ヘッドスピード10mm/分の速度で荷重を加え、最大荷重(破断荷重)を測定した。
【0088】
そして、無機質成形体の未加熱曲げ強度を次式により算出した:未加熱曲げ強度(MPa)={3×最大荷重(N)×下部支点間距離(mm)}/{2×試験体の幅(mm)×(試験体の厚さ(mm))}。
【0089】
[加熱収縮率]各例で得られた無機質成形体からなる縦150mm、横50mm、厚さ25mmの平板形状の試験片を1400℃で24時間、又は1600℃で24時間加熱し、次式により加熱収縮率(%)を算出した:{加熱前試験体長さ(mm)-加熱後試験体長さ(mm)}/加熱前試験体長さ(mm)×100。試験体長さの測定はノギスを用いて行った。
【0090】
[熱クリープ量]各例で得られた無機質成形体の熱クリープ量を次のような熱クリープ試験にて測定した。すなわち、まず無機質成形体からなる縦150mm、横45mm、厚さ7mmの平板形状の試験体の長手方向の両端部を、当該試験体の長手方向に120mmの間隔を空けて配置された一対の支持部材(高さ30mm)で支持した。
【0091】
次いで、試験体の長手方向中央部に、縦30mm、横45mmの直方体形状を有し重量が10g又は30gの錘を載せた。なお、試験体は、室温にて錘を載せることによっては全く撓まなかった。
【0092】
その後、錘を載せた試験体を加熱し、1400℃、1500℃又は1600℃の温度で、3時間又は24時間保持した。上記加熱によって、試験体は撓み、その長手方向の中央部分は下方に変位した。そして、上記加熱による変位量(撓み量)を熱クリープ量(mm)として測定した。
【0093】
[結果]図1には、嵩密度が150kg/m~257kg/mの無機質成形体(実施例1~7及び比較例1,2)について、及び、図2には、嵩密度が319kg/m~380kg/mの無機質成形体(実施例8~14及び比較例3)について、各構成成分(無機繊維、無機粒子、無機バインダー、無機定着材、及び有機バインダー)の含有量と、物性の測定結果とを示す。なお、図1及び図2において、無機バインダーの質量部は、固形分換算値を示している。また、図1及び図2において、記号「-」は、物性の測定が行われなかったことを示している。
【0094】
図1に示すように、10gの荷重を1400℃で3時間かけた場合における実施例1~5の無機質成形体の熱クリープ量Bは、2.2mm~2.7mmであり、比較例1,2のそれ(9.2mm~13.1mm)に比べて顕著に小さかった。
【0095】
また、実施例1~5の無機質成形体の熱クリープ量Bを嵩密度で除して得られる熱クリープ量B/嵩密度比は、0.0086~0.0173であり、比較例1,2のそれ(0.0460~0.0649)に比べて顕著に小さかった。
【0096】
また、10gの荷重を1600℃で3時間かけた場合における実施例1~3,5の無機質成形体の熱クリープ量Dは、12.5mm~29.5mmであり、比較例1のそれ(36.0mm)に比べて顕著に小さかった。
【0097】
また、実施例1~3、5の無機質成形体の熱クリープ量D/嵩密度比は、0.0537~0.1612であり、比較例1のそれ(0.1800)に比べて顕著に小さかった。
【0098】
また、実施例1~3の無機質成形体の未加熱曲げ強度/嵩密度比は、0.0042~0.0061であり、比較例1,2のそれ(0.0025~0.0030)に比べて顕著に大きかった。
【0099】
図2に示すように、実施例8~12の無機質成形体の熱クリープ量Bは、0.9mm~1.4mmであり、比較例3のそれ(3.1mm)に比べて顕著に小さく、実施例1~5のそれ(2.2mm~2.7mm)よりも小さかった。
【0100】
また、実施例8~14の無機質成形体の熱クリープ量B/嵩密度比は、0.0028~0.0039であり、比較例3のそれ(0.0082)及び実施例1~5のそれ(0.0086~0.0173)に比べて顕著に小さかった。
【0101】
また、実施例8~14の無機質成形体の熱クリープ量Dは、7.4mm~18.5mmであり、比較例3のそれ(21.0mm)に比べて顕著に小さかった。
【0102】
また、実施例8~10、12の無機質成形体の熱クリープ量D/嵩密度比は、0.0219~0.0486であり、比較例1のそれ(0.0553)及び実施例1~3,5のそれ(0.0537~0.1612)に比べて顕著に小さかった。
【0103】
また、30gの荷重を1400℃で3時間かけた場合における実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量Aは、2.0mm~2.6mmであり、比較例3のそれ(18.0mm)に比べて顕著に小さかった。
【0104】
また、実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量A/嵩密度比は、0.0054~0.0070であり、比較例3のそれ(0.0474)に比べて顕著に小さかった。
【0105】
また、10gの荷重を1500℃で3時間かけた場合における実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量Cは、3.7mm~3.9mmであり、比較例3のそれ(16.5mm)に比べて顕著に小さかった。
【0106】
また、実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量C/嵩密度比は、0.0100~0.0108であり、比較例3のそれ(0.0434)に比べて顕著に小さかった。
【0107】
また、10gの荷重を1400℃で24時間かけた場合における実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量Eは、2.8mm~3.5mmであり、比較例3のそれ(13.5mm)に比べて顕著に小さかった。
【0108】
また、実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量E/嵩密度比は、0.0076~0.0097であり、比較例3のそれ(0.0355)に比べて顕著に小さかった。
【0109】
また、10gの荷重を1600℃で24時間かけた場合における実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量Fは、20.5mm~30.5mmであり、比較例3のそれ(37.0mm)に比べて顕著に小さかった。
【0110】
また、実施例10,12,14の無機質成形体の熱クリープ量F/嵩密度比は、0.0554~0.0824であり、比較例3のそれ(0.0974)に比べて顕著に小さかった。
【0111】
また、実施例8~10、12の無機質成形体の未加熱曲げ強度/嵩密度比は、0.0057~0.0071であり、比較例3のそれ(0.0019)に比べて顕著に大きかった。
【0112】
また、1400℃で24時間加熱した場合における実施例8~12の無機質成形体の加熱収縮率は、0.3%であり、比較例3のそれ(0.9%)に比べて顕著に小さかった。
図1
図2