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特開2022-8302血管外空間の血管過灌流のための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008302
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】血管外空間の血管過灌流のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 31/00 20060101AFI20220105BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61M31/00
A61M5/14 540
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021136214
(22)【出願日】2021-08-24
(62)【分割の表示】P 2019516392の分割
【原出願日】2017-03-24
(31)【優先権主張番号】2016903834
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2016903836
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2016904991
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2016905067
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2016905068
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】519100734
【氏名又は名称】オール バスキュラー プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】レーン,ロドニー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ハックソン,マシュー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】キュン,クリス
(72)【発明者】
【氏名】レーン,デイヴィッド マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キン,ニャン ヨウ
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,スコット ライアン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB05
4C066CC01
4C066DD12
4C066FF01
4C066FF04
4C066HH02
4C066LL11
4C066QQ35
4C066QQ92
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血管の隔離及び身体の領域内への、及び身体の領域からの、流体フラックスの操作を通じて、身体の領域に治療用の治療用物質を送達する方法を提供する。
【解決手段】方法は、以下の工程を含む。身体の領域への血管流入を制限する工程、身体の前記領域から外向きの膠質浸透圧勾配を増加させて、膠質浸透圧的に活性な血漿タンパク質を身体の前記領域から洗い流す工程、身体の前記領域に虚血を誘発する工程、身体の前記領域に出入りする主血管の圧力及び流体フローを制御する工程、身体の前記領域への前記流体フローが制御される場合、前記治療用物質を身体の前記領域に提供する工程、を含む、方法。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬の注入及び/又は1つ以上の血管内装置を挿入する長期の血管アクセスを提供する血管アクセス装置であって、以下の:
管状本体部分及びカニューレの管腔が血管と流体連通して接続されるように、血管に接続する角度で血管と係合するように構成された面取りカニューレ端部を含む、面取りカニューレ;及び
前記カニューレの内腔を塞いで密封するように構成された取り外し可能なプランジャ;
を含み、ここで、前記取り外し可能なプランジャは、面取り端部を含み、前記面取り端部は、前記プランジャが前記カニューレに完全に挿入されて前記カニューレの内腔を塞ぎ、かつ密封する場合、前記カニューレ内のデッドスペースを排除するように配置される、
血管アクセス装置。
【請求項2】
前記プランジャが前記カニューレに完全に挿入されて前記カニューレの内腔を塞ぎ、かつ密封する場合、前記取り外し可能なプランジャの面取り端部が血管内に突出しないように配置される、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項3】
前記面取りカニューレ端部及び前記取り外し可能なプランジャの面取り端部の面取り角度は同じである、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項4】
前記カニューレは、前記プランジャの外壁に嵌合可能に対応するように断面成形されている管腔を規定するカニューレの内壁を含む、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項5】
前記カニューレの内壁は、前記プランジャの外壁との嵌合可能な対応により、前記プランジャが回転できないように断面成形されている、請求項4に記載の血管アクセス装置。
【請求項6】
前記プランジャの外側ステム壁の1つ以上の突出部が、前記カニューレの内壁の対応する凹部内に受容されるように配置されている、請求項4に記載の血管アクセス装置。
【請求項7】
前記プランジャが前記カニューレに完全に挿入された場合、前記面取りカニューレ端部が前記面取り端部と平行かつ整列するように、前記カニューレの内壁と前記プランジャの外壁との嵌合対応部が配置されている、請求項4に記載の血管アクセス装置。
【請求項8】
前記面取りカニューレ端部は、血管グラフトを介して血管と係合及び接続するように構成及び配置されたグラフト端部として構成される、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項9】
前記カニューレの面取り端部とは反対側の端部が、医療供給装置に接続するように配置された接続アセンブリを含む、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項10】
前記接続アセンブリは、身体部分と接続するように配置されている、請求項9に記載の血管アクセス装置。
【請求項11】
前記接続アセンブリは、前記カニューレを外部環境から密封するため、前記取り外し可能なプランジャの外部ハブ又は接続要素と接続するように構成されている、請求項9に記載の血管アクセス装置。
【請求項12】
前記医療供給装置は、マルチポートアダプタ、ポンプ、薬剤供給源、放射線供給源を含む、請求項9に記載の血管アクセス装置。
【請求項13】
前記医療供給装置は、薬剤の注入、1つ又は血管内装置の導入、及び/又は体液の抽出のために構成される、請求項12に記載の血管アクセス装置。
【請求項14】
体液を血管から/又は血管に抽出及び/又は戻すために長期使用に適合された、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項15】
前記取り外し可能なプランジャは、第2のプランジャによって塞がれるように適合された内部管腔を備える、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項16】
動脈カニューレと静脈カニューレの間を接続して循環を提供するように配置され、かつ、血流を中断せずに、循環の動脈側及び静脈側への無菌アクセスを繰り返す外部動静脈瘻接続であって、以下の:
前記動脈カニューレに密封的に接続するように構成された動脈接続手段;
前記動脈カニューレに密封的に接続して密封された通路を形成するように配置された静脈接続手段;かつ
少なくとも1つの再使用可能なアクセスポータル;
を含み、ここで、
前記アクセスポータルは、前記静脈カニューレに接続された静脈又は前記動脈カニューレに接続された動脈のいずれかに挿入するカテーテルを受容するように構成される、外部動静脈瘻接続。
【請求項17】
動脈カニューレに挿入するための血管内装置を受容するように構成される再使用可能な動脈アクセスポータル及び静脈カニューレに挿入するための血管内装置を受容するように構成される静脈アクセスポータルを含む、請求項16に記載の外部動静脈瘻接続。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、臓器及びそのセグメントの血管隔離の改善、特に、これらの血管外空間への、化学療法剤や幹細胞等の治療薬の送達及び活性を増強するための、臓器及びそのセグメントにおけるヒト血管外空間の血管隔離のための改良された装置及び方法に関する。本発明はさらに、血管空間とそのセグメントを係合(engagement)する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
様々な医療及び治療の多くの状況で、動脈又は静脈の係合及び長期間にわたるアクセスが必要である。これは通常、動脈又は静脈へのカニューレ挿入を含む。静脈又は動脈とカニューレとの間の界面は、材料の送達、又は血液の受け取り、及び血液が前記界面の周囲に停滞して血栓症が起きる可能性を最小限に抑えるため、圧力が必要である。
【0003】
血液が採取されない場合、又は物質が静脈又は動脈内に送達されない場合は、血液の漏出を止めるため、カニューレと静脈又は動脈との間の内腔(lumen)を塞ぐ必要がある。通常、前記カニューレ及び/又はプラグの端部は、静脈又は動脈内に延在するか、又はカニューレ内にデッドスペースの領域をもたらす縁部又は突出部若しくは凹部を包含する。突出部及び凹部は、血液が溜まって停滞する可能性のある形成を示し、血栓症が発生する可能性のある状態をおこす。デッドスペースにより、また、血液が溜まって停滞する可能性のある領域が生じ、血栓症が発生する可能性のある状況を提示する。当該デッドスペースはまた、ガスが集まってガス塞栓形成のリスクを生じさせる領域を提示する場合がある。
【0004】
このような処置又は治療に用いられるアクセス装置は、通常、一端が患者の循環器系に接続されたカニューレと、他端の血流ポンプ又は他の注射装置に接続されたアダプタポートとを含む。使用されない場合、隔離システムは、カニューレの空洞内で摺動可能なプランジャに依存して、空洞へのアクセスを閉じたり、循環器系とアクセス装置のポートのいずれかとの間の流体連通を防いだりしていた。当該アクセス装置はシングルルーメンアクセス装置という場合がある。
【0005】
特許文献1及び特許文献2は、リモートアクセス隔離システム用のアクセス装置を記載する。関連するアクセス装置及びシステムは、特許文献3に記載される。これら3つの特許は各々本発明者により、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0006】
カニューレ等の静脈又は動脈へのアクセスが患者の血管に垂直な角度で接続される場合、プランジャの先端は、それがカニューレの近位端が血管の壁に接続されている場所に達するまで、カニューレの空洞又は内腔を通してスライドさせることができる。したがって、カニューレの使用後、プランジャは、患者の血液がカニューレの内腔に充填されるのを完全に防ぐことができ、それによって、そうでなければ血栓症につながりうる体液鬱滞を回避できる。しかしながら、カニューレが患者の血管に垂直でない角度で接続されていると、先端がカニューレの内腔を通ってさらにスライドし、そして先端の先導部分(leading part)が血管の内腔内に突出しない限り、プランジャの先端部の従来の円筒形状は、カニューレの内腔の下部(「デッドスペース」という)への少量の血液の充填は防ぐことができない。カニューレ内腔の下部のこのようなデッドスペース、又はデッドスペースがプランジャ先端にある場合、血管の内腔への先端の先導部分(leading part)のそのような突出は、血栓症につながりうる、患者の循環器系内の体液流の停止(fluid stasis)を包含する血行動態障害の原因となりうる。
【0007】
カニューレ等のこれらの特許に記載されている種類のシングルルーメンアクセス装置が患者の血管に垂直な角度で接続されている場合、プランジャの先端は、それがカニューレの近位端が血管の壁に接続されている場所に達するまで、カニューレの空洞又は内腔を通してスライドさせることができる。したがって、カニューレの使用後、プランジャは、患者の血液がカニューレの内腔に充填されるのを完全に防ぐことができ、それによって、そうでなければ血栓症につながりうる体液鬱滞を回避することができる。しかしながら、適当に面取りされた近位端を有するカニューレが患者の血管に垂直でない角度で接続される場合、先端がカニューレの内腔を通ってさらにスライドし、先端の先導部分(leading part)が血管の内腔内に突き出ない限り、プランジャの先端の従来の円筒形状は、カニューレの内腔の下部(「デッドスペース」という)への少量の血液の充填を防ぐことができない。カニューレの内腔の下部内のこのようなデッドスペース、又はデッドスペースがプランジャ先端部によって占められている場合、このような先端の先導部分の血管の内腔への突出は、血栓症につながりうる、患者の循環器系内の体液流の停止(fluid stasis)を包含する血行動態障害の原因となり得る。
【0008】
さらに、本発明者による特許文献3の図51に示されるように、マルチアクセス処置キャップがあるアクセス装置が知られる。しかしながら、マルチアクセス処置キャップがあるこれらのアクセス装置には、単一のカテーテルのみが選択されたアクセスポートを介した後、アクセス装置の内腔を通って受容され得るようなアクセスポートがある。したがって、そのような各装置は、循環器系から血流ポンプへの流出又は循環器系内の血流ポンプからの流入のいずれか一方のみを促進することができるが、両方を促進することはできない。すなわち、マルチアクセス処置キャップがあるそれらのアクセス装置は、それらの装置の内腔が2つ以上のカテーテルを受容することができないので、同時に2つ以上の流入及び流出カテーテルを進めることができない。さらに、それらのマルチアクセス処置キャップは、マルチアクセス処置キャップを用いてカテーテルを特定の位置に指向できない。
【0009】
医薬品又は他の治療薬の動脈又は静脈内注入は、新形成の治療における化学療法、遺伝子治療、及び幹細胞治療用の標準的な方法である。標的組織に対する効果は、正常な血流による治療薬の希釈及び/又は血液による治療薬の解毒、の結果として減少する。これらの影響に対抗するため、通常は標的組織からの流入及び流出を妨げて「流れを止める」技術が開発されてきた。
【0010】
例えば、骨盤内の新形成の化学療法的治療用の標準的な技術が存在し、そこでは大動脈及び下大静脈が閉塞され、止血帯が脚に適用され、次いで隔離されたセグメントに骨盤の虚血時間内に短時間化学療法剤を注入する。別のアプローチは、化学療法剤を含有する血液を除去すること、及び全身再循環の前に薬剤を中和するために様々な体外フィルターを用いることである。当該状況での目的は、化学療法剤を含有する血液が体循環に放出された場合の毒性の副作用を最小限に抑えることである。この種のアプローチは、門脈及び肝臓の肝動脈にカニューレを挿入し、薬剤を再循環させるためにポンプを用いて、全身作用を最小限にするために体外フィルターを用いて肝臓内で有効に(operatively)行うことができる。これを「分離肝注入」という。
【0011】
血管内空間への血流を高める局所過灌流用リモートアクセス隔離システムが記載される(特許文献3参照)。一般に、過灌流は、正常量を超える量の体液又は細胞が空間を通過する場合に起こる。当該隔離システムは、標的臓器への血流を制御するために流入口、流出口、隔離バルーン、及びポンプが必要である。生成される圧力は、正常な動脈平均圧力の4倍までであり、通常の流量の最大8倍まで高まる。特許文献3における過灌流の目的は、短期的には切断を防ぐために虚血性肢の症状を取り除き、長期的には新しい血管を成長させるために剪断応力を高めることである。
【0012】
所望の血管内空間に局所的に治療薬を過灌流することの必然的な効果は、その後、薬剤が間質腔に移動し、そこから標的領域だけでなく排出リンパ管及びリンパ節にも入る可能性があることである。当該アプローチは、腫瘍の治療では重要な影響を及ぼす。なぜなら、多くの悪性細胞がリンパ管に浸潤し、リンパ節に移動し、増殖し、それらが血管系に移動する前に胸管を介して塞栓形成し、そこから全身的に広がるためである。関与するリンパ節は、そのサイズが小さいために治療が難しいことが知られている。腫瘍の再発は、リンパ節内及びリンパ球内の残存腫瘍から生じることがよくある。新形成の治療に関連する他の問題は、比較的虚血性の組織中に少数存在する悪性細胞から生じ、その結果、全身治療の効果が低下することであろう。ある腫瘍はまた、正常な構造の圧縮及び/又は二次的な炎症作用に関連する周囲の仮性被膜(pseudo-capsule)に起因して、より高い間質圧を誘発することも知られている。非増殖の悪性細胞もあり、したがって主に細胞分裂に影響を与える当該治療薬はそのような細胞にほとんど又は全く影響を及ぼさないであろう。
【0013】
標的領域への局所的過灌流のため、及び長期間にわたる動脈又は静脈の係合が必要な治療法又は処置用のそのようなリモートアクセス隔離システムで用いられるアクセス装置としては、カニューレ、カテーテル(及び特にバルーンカテーテルシステム)、バルーン、プランジャ、アダプタポート、及びこれらの治療法又は処置に必要な他の装置があげられる。
【0014】
過去のリモートアクセス隔離システムは、虚血性四肢への過灌流を目的として、患者の循環器系への断続的又は急性のアクセスを提供することができた。当該システムで用いられるアクセス装置は、通常、一端が患者の循環器系に接続されたカニューレと、他端の血流ポンプに接続されたアダプタポートとを含む。使用されないとき、隔離システムは、カニューレの空洞内で摺動可能なプランジャに依存して、空洞へのアクセスを閉じたり、循環器系とアクセス装置のポートのいかなるものとの間の流体連通を防いでいたりした。そのようなアクセス装置は単一内腔アクセス装置という場合がある。
【0015】
特許文献1及び特許文献2は、リモートアクセス隔離システム用のそのようなアクセス装置を記載する。関連するアクセス装置及びシステムは、特許文献3に記載される。本発明者による当該3つの特許は各々の、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0016】
カニューレ等のこれらの特許に記載された種類の単一内腔アクセス装置が患者の血管に垂直な角度で接続される場合、プランジャの先端は、それがカニューレの近位端が血管の壁に接続されている場所に達するまで、カニューレの空洞又は内腔を 通してスライドさせることができる。したがって、カニューレの使用後、プランジャは、患者の血液がカニューレの内腔に充填されるのを完全に防ぐことができ、それによって、そうでなければ血栓症になりうる体液流の停止(fluid stasis)を回避することができる。しかしながら、適当に面取りされた近位端があるカニューレが患者の血管に垂直でない角度で接続されている場合、プランジャの先端の従来の円筒形状は、先端が内腔を通してさらにスライドし、先端の先導部分が血管の内腔に突き出ない限り、プランジャの先端部の従来の円筒形状は、カニューレの内腔の下部(「デッドスペース」という)への少量の血液の充填を防ぐことができない。カニューレの内腔の下部内のこのようなデッドスペース、又はデッドスペースがプランジャ先端部によって占められている場合、血管の内腔内への先端の先導部分のそのような突出は、血栓症になりうる患者の循環器系内の体液流の停止(fluid stasis)を包含する血行動態障害の原因となりうる。
【0017】
さらに、本発明者による特許文献3の図51に示されるように、マルチアクセス処置キャップがあるアクセス装置が知られている。しかしながら、マルチアクセス処置キャップがあるこれらのアクセス装置には、単一のカテーテルのみが選択されたアクセスポートを通って、次いでアクセス装置の内腔を通って受容され得るようなアクセスポートがある。したがって、そのような各装置は、循環器系から血流ポンプへの流出又は循環器系内の血流ポンプからの流入のいずれか一方のみを促進することができるが、両方を促進することはできない。すなわち、マルチアクセス処置キャップがあるそれらのアクセス装置は、それらの装置の内腔が2つ以上のカテーテルを受容することができないので、同時に2つ以上の流入及び流出カテーテルを促進することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7,766,853号
【特許文献2】米国特許第8,419,672号
【特許文献3】米国特許第9,078,982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者は、血管隔離がヒト臓器及びそのセグメント(例えば腫瘍)への治療薬の送達を増強することができ、かつそれによって治療活性を増強できるいくつかの方法があることを見出した。
【0020】
まず、増強された質量効果は、特定の隔離された標的領域への薬剤の送達によってその領域内の限定された組織塊(mass)中の薬剤の濃度を高めて作出できる。この効果は相対的な腫瘍量(mass)に基づき、「マス・ターゲティング」という。増強の程度は、体の全質量(mass)と比較した標的組織の質量に依存する。例えば、膵頭がんは通常、臨床症状で35gである。70kgの男性では、マス・ターゲティングの治療上の利点は全身静脈内送達の2000倍に近い。
【0021】
血管隔離の第2の増強効果は「曝露時間延長」といい、特に関連臓器の虚血時間内の期間中、流入及び流出を制御する薬剤の洗浄又は希釈の回避を含む。これは、上記の質量効果を乗算した時間効果である。薬物動態用語では、これは「曲線下面積」として知られており、これは薬剤濃度が時間に対してプロットされているグラフから得られる。
【0022】
血管隔離の第3の増強効果は、隔離が逆転する前に解毒剤を投与することによるなど、薬剤を中和する能力である。これは、「残存活性化学療法の中和」という。いかなる全身的影響も回避するため、隔離された臓器又はその部分を通る流れを逆転させ、残留物質を抽出し、それが臓器を離れる前にそれを廃棄することができる。これは薬剤の残留濃度といい、廃棄された容量中の薬剤の濃度を評価することによって測定することができる。
【0023】
血管隔離の第4の増強効果は、隔離された標的領域への浸透圧勾配を制御し、その結果として膠質浸透圧を制御することによる。アクセス装置は動脈流入及び静脈流出の制御を可能にするが、血管内血漿タンパク質を、治療薬を含む低浸透圧溶液で置換することで、さらに標的を絞った治療がもたらされうる。低浸透圧溶液により、血管内空間から血管外空間、及び特に腫瘍細胞を囲む間質空間への、治療薬の移動を制御する浸透圧勾配が生じうる。間質腔は、腫瘍細胞にとって必要な代謝基質を含有し、かつリンパ系により排出される。したがって、腫瘍細胞をこのように特異的に標的化することができるだけでなく、腫瘍細胞から排出されるリンパ管及びリンパ節もまた標的化することができる。
【0024】
浸透圧勾配の制御は、膠質浸透圧の制御を包含することができる。膠質浸透圧の制御により、血管内タンパク質の除去又は部分的除去ができる。
【0025】
血管隔離が治療活性を高めることができるさらなる方法は、同時に動脈の流入を制御しながら、臓器の静脈流出を選択的に制御することである。
【0026】
また、本発明に関して、血管の隔離が治療活性を高めることができるさらに別の方法は、血管流出圧以下まで(up to and including)、可能な限り注射用の水力を高めることができる、通常、平均動脈圧(MAP)及び平均毛細管圧(MCP)を超えて静脈流出圧を上昇させて、それによりこの水力を横方向に指向しうる。これは注入システムに取り付けられた器具で測定することができる。
【0027】
以前は、通常は血液透析処置用に様々な外瘻があった。オリジナルのシャントは、Quentin Scribner, Allen Brown及びThomas Shuntsが記載する。ドナーの入力動脈と受容する静脈への直接吻合がありうる(Thomas and Allen Brown)。いくつかの場合、腔内接続は、吻合せずに、遠位血管を結紮して用いられた(Quentin Scribner)。全身循環にアクセスするために、動脈側及び静脈側を一時的に固定し、そして相互接続装置を取り外した。この装置は一般に簡単な腔内接続管であり、容易に外れうる。明らかに安全上に問題がある。当該システムは治療又は診断システムに接続されていた。主な例は腎臓の血液透析である。
【0028】
外瘻が用いられる場合、高流速が一般的である。高流速は、末梢浮腫、嗜眠、息切れ及び胸痛として現れる、高流速に起因するうっ血性心不全の一因となりうる。それはまた、高流速が瘻孔の遠位の領域に虚血をおこす末梢「スチール」症候群を誘発しうる。高流量(high flow)はまた静脈性高血圧となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の要約
第1の実施形態では、本発明は、血管の隔離及び身体の領域内への、及び身体の領域からの流体フラックス(fluid flux)の操作(manipulation)を通じて、身体の領域に治療用の治療用物質を送達する方法を提供することを目的とする。当該方法は、以下の:
身体の前記領域への血管流入(vascular inflow)を制限する工程;
身体の前記領域から外向きの膠質浸透圧勾配(oncotic pressure gradient)を高めることによって、膠質浸透圧的に活性な(oncotically active)血漿タンパク質を身体の前記領域から身体の全身循環に洗い流す工程;
身体の前記領域に虚血を誘発する工程;
身体の前記領域に出入りする主血管の圧力及び流体フローを制御する工程;
身体の前記領域への前記流体フローが制御される場合、前記治療用物質を身体の前記領域に過灌流する工程;
を含む。
【0030】
タンパク質を洗い流すため、及び治療的処置を可能にするための主血管の圧力及び流体フローを制御する際、本発明は、卵白(albumens)を放出し、治療用物質を血管外空間障壁を横断させうる薬剤を用いずにすむことを目的とする。
【0031】
好ましくは、身体の前記領域は臓器である。
【0032】
好ましくは、前記血管流入を介した圧力は20mmHg以下になるように制御される。
【0033】
好ましくは、前記血管流入を介した圧力は、臨界(critical)毛細血管閉鎖を誘導するように制御される。
【0034】
好ましくは、前記膠質浸透圧的に活性な(oncotically active)血漿タンパク質は、28mmHg~35mmHgの間で洗い流される。
【0035】
好ましくは、身体の前記領域からの前記治療用物質の流出は、呼気終末陽圧(positive end expiratory pressure)(PEEP)を用いて閉塞される。
【0036】
PEEPを用いると、前記流出を介した治療用物質の漏出を制限する流出ポートの機械的閉塞が必要なくなる。
【0037】
好ましくは、身体の前記領域からの前記治療用物質の流出は、身体の四肢の相対運動を用いて制御される。
【0038】
過灌流は、血管外空間への物質移動を補助する薬物を用いなくてよい。
【0039】
好ましくは、前記過灌流は35mmHg以下で提供される。
【0040】
好ましくは、血管流の閉塞は、標的領域を囲む血管の少なくとも1つへのマルチバルーンカテーテルライン挿入によって達成される。
【0041】
好ましくは、前記治療的処置は、化学療法、ナノ粒子の供給、幹細胞、免疫療法及び/又は遺伝子療法のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
好ましくは、流体フラックスの前記操作は、流れの閉塞、流れの部分的な閉塞、前記標的領域への主血管の等灌流又は過灌流のうちの少なくとも1つを含む。
【0043】
好ましくは、流体フラックスの前記操作は、血管内装置又は血管外装置のうちの少なくとも1つを用いて達成される。
【0044】
好ましくは、当該方法は、輸液(infusion)による血管内の流体の流体圧力の評価及び調整を含む。
【0045】
好ましくは、当該方法は、以下の工程:
腫瘍細胞が存在する間質空間に、又は膠質浸透勾配(oncotic gradient)の後に仮性被膜(pseudocapsule)を貫通する膠質浸透勾配に沿って腫瘍の壊死中心に、治療的処置を送達する工程;
リンパ管を横切り、リンパ節に処置を送達する流体を提供する工程;
1つの特定の治療サイクルで分裂していない細胞を標的とし得る、治療的処置の送達を経時的に繰り返す工程;
を含む。
【0046】
前記膠質浸透勾配を用いて、腫瘍細胞を標的とすると、細胞は付帯的損害なくよりよく標的とされうる。
【0047】
第2の実施形態では、本発明は、血管の隔離及び身体の領域内への、及び身体の領域からの、流体フラックスの操作を通じて、身体の領域に治療的処置を送達するアセンブリであって、
身体の前記領域への血管流入を制限するように適合されている第1の閉塞装置と、
身体の前記領域からの血管流出を制限するための第2の閉塞装置(arrangement)と、
ここで、前記第1の閉塞装置は、身体の前記領域を虚血状態にするため、身体の前記領域から膠質浸透圧的に活性な血漿タンパク質を洗い流すために、身体の前記領域から外向きの膠質浸透圧勾配を高めるように適合されている、
前記領域が虚血状態にあるとき、前記治療的処置のための治療用物質を提供するように構成された注射装置と、
身体の前記領域から前記治療用物質を除去するように構成された除去装置と、
を包含するアセンブリを提供することを目的とする。
【0048】
好ましくは、身体の前記領域は臓器である。
【0049】
好ましくは、前記第1の閉塞装置は、前記血管流入を介した圧力を20mmHg以下に制御するように構成されている。
【0050】
好ましくは、前記血管流入を介した圧力は、重大な毛細血管閉鎖(critical capillary closure)を誘導するように制御される。
【0051】
好ましくは、前記膠質浸透圧的に活性な血漿タンパク質は、28mmHg~35mmHgの間で洗い流される
【0052】
好ましくは、身体の前記領域からの前記治療用物質の流出が、呼気終末陽圧を用いて閉塞される。
【0053】
好ましくは、身体の前記領域からの前記治療用物質の流出は、前記身体の四肢の相対運動を用いて制御される
【0054】
好ましくは、前記治療用物質はカテーテルを介して身体の前記領域に過灌流されるように適合されている。
【0055】
好ましくは、前記過灌流は、身体の前記領域からの静脈流出圧力より低い圧力で提供される。
【0056】
好ましくは、前記過灌流は35mmHg以下で提供される。
【0057】
第3の実施形態では、本発明は、長期使用用の血管アクセス装置であって、
ある角度で血管と係合するように構成された面取りカニューレ端部を包含する面取りカニューレと、
前記カニューレの内腔を塞いで密封するように構成された取り外し可能なプランジャと、
を包含し、ここで、前記取り外し可能なプランジャは、前記プランジャが前記カニューレの内腔を塞ぐため、前記カニューレ内に完全に挿入される場合、前記カニューレ内のデッドスペースを排除するように構成された面取り端部を包含する、
血管アクセス装置を提供する。
【0058】
前記デッドスペースを排除すると、血栓症のリスクが最小限に抑えられる。
【0059】
好ましくは、前記取り外し可能なプランジャの前記面取りされた端部は、前記プランジャが、前記カニューレを塞ぐため、前記カニューレ内に完全に挿入される場合、前記血管内に突出しないように配置される。
【0060】
好ましくは、前記面取りカニューレ端部と前記プランジャの面取り端部の面取り角度は同じである。
【0061】
好ましくは、前記カニューレは、前記プランジャの外側ステム壁に嵌合可能に対応するように断面成形された(profiled)内壁を包含する。
【0062】
好ましくは、前記カニューレの内壁は、前記プランジャの外側ステム壁との嵌合可能な対応により、前記プランジャが回転できないように断面成形されている(profiled)。前記プランジャの外側ステム壁の突出部が、前記カニューレの内壁の凹部内に受容されるように配置されている。
【0063】
好ましくは、前記プランジャが前記カニューレに完全に挿入された場合、前記面取りカニューレ端部が前記面取り端部と平行であり且つ整列するように、前記カニューレ内壁と前記プランジャ外壁との嵌合対応部は配置されている。
【0064】
好ましくは、前記カニューレは、血管及び身体部分と係合するように配置されたグラフト端部を包含し、ここで、前記グラフト端部は前記身体部分と接続するように構成されている。
【0065】
好ましくは、前記カニューレは、医療供給装置(medical supply device)に接続するように配置された前記グラフト端部の遠位側にある接続アセンブリを包含する。
【0066】
好ましくは、前記接続アセンブリは前記身体部分と接続するように配置されている。
【0067】
第4の実施形態では、本発明は、カニューレシステム用のマルチポートアダプタであって、
中心内腔に供給されている複数のチューブであって、ここで、前記中心内腔が脈管構造に接続するように構成されている主カニューレラインに接続するように構成されている、マルチポートアダプタ、を提供する。
【0068】
好ましくは、前記複数のチューブは、中心内腔を介して前記脈管構造内に複数のカニューレを提供するのに用いることができる。
【0069】
好ましくは、前記複数のカニューレは、前記脈管構造内に吻合を形成するのに用いられる。
【0070】
好ましくは、前記複数のチューブの各々は、前記中心内腔内にガイドワイヤを受容し且つ送るように構成されている。
【0071】
好ましくは、前記複数のチューブは可撓性であり、且つ、前記チューブの各々における内腔が交差しないように構成されている。
【0072】
好ましくは、前記ガイドワイヤは、前記脈管構造内に個々に又はともに送り込まれるように構成される。
【0073】
好ましくは、前記ガイドワイヤはバルーンを包含するように構成される。
【0074】
好ましくは、前記ガイドワイヤは、特定の領域の流入及び流出脈管構造物に指向するように構成されているので、前記特定の領域は前記ガイドワイヤに関連する医療機器で隔離することができる。
【0075】
好ましくは、前記複数のチューブの各々は、外部医療機器を接続するように構成されている。
【0076】
好ましくは、前記複数のチューブは、ルアーロックを用いて前記外部医療機器に接続するように構成される。
【0077】
好ましくは、前記複数のチューブは、脈管構造内に複数の血管内装置を同時に提供するように構成される。
【0078】
第5の実施形態では、本発明は、動脈カニューレと静脈カニューレとの間を連結するように構成された外部動静脈瘻接続であって、
前記動脈カニューレに密封的に接続するように構成された動脈接続手段と、
密封された通路を形成するため、前記静脈カニューレに密封的に接続するように構成された静脈接続手段と、
少なくとも1つの再使用可能なアクセスポータルと、
を包含し、ここで、前記アクセスポータルは、前記静脈カニューレに接続された静脈又は前記動脈カニューレに接続された動脈に挿入するためのカテーテルを受容するように構成される、外部動静脈瘻接続、を提供する。
【0079】
好ましくは、前記外部動静脈瘻接続は、
前記動脈カニューレへの挿入のためにカテーテルを受容するように構成された再使用しうる動脈アクセスポータルと、
前記静脈カニューレに挿入するためのカテーテルを受容するように構成された静脈アクセスポータルと、を包含する。
第6の実施形態では、本発明は、総腸管流量を減少させるため、従って、門脈流量を減少させ、肝動脈緩衝液反応を活性化させるため、複数の経動脈バルーンのシステムを用いて肝動脈流を高めるシステムの提供を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図面の簡単な説明
他の実施形態も本発明の範囲内に該当しうるので、本発明の一実施形態は、添付の図面を参照して、例示としてのみ説明される。
図1図1は、本発明の一実施形態による骨盤領域内の動脈流を制御する動脈閉塞バルーン位置決め装置(arrangement)の概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による血管流を制御する血管閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による、右乳房の血管の隔離で用いる側副血管流の制御を提供する単一バルーンカテーテルシステムの血管閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図4図4は、動脈流入のスーパーセレクション(super selection)を伴う、本発明の一実施形態による右乳房の血管の隔離で用いる側副動脈流の制御を提供するマルチバルーンカテーテルシステムの動脈閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図5図5は、本発明の一実施形態による、肝臓への血管の流れを制御するバルーンカテーテルシステムの動脈閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図6図6は、本発明の一実施形態による、肝臓の過灌流で用いる側副動脈流の制御を提供するバルーンカテーテルシステムの動脈閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図7図7は、頭蓋領域の治療用の本発明の一実施形態による血管閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図8図8は、本発明の実施形態による下肢への血管流を制御する動脈閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図9図9は、本発明の実施形態による下肢への血管流を制御する動脈閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図10図10は、本発明の一実施形態による、膵臓への血管の流れの制御を提供するカテーテルシステムにおける3つの別々のバルーンの動脈閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図11図11は、本発明の別の実施形態による、膵臓内の腫瘍の血管の隔離のために十二指腸内で用いる、圧力制御された管腔内バルーン及び本発明の別の実施形態によるマルチチャネルカテーテルシャフトシステムの接続遠位端の概略図である。
図11A図11Aは、図11の圧縮バルーンの側面図である。
図12図12は、肝臓の過灌流に用いるための側副動脈流の制御を提供する3つの別々のバルーンカテーテルシステムの動脈閉塞バルーン位置決め装置の概略図である。
図13図13は、肺の上葉の血管隔離の概略図である。
図14図14は、先行技術の単一内腔アクセス装置の側断面図である。
図15図15は、先行技術の別の単一内腔アクセス装置のカニューレの側断面図であり、カニューレから患者の血管の管腔内へ突出する装置のプランジャステムの先端部を示す。
図16図16は、図15と同様の側断面図であるが、但し、カニューレの内腔内にデッドスペースを作り出すために、もはや血管内腔内に突出していないがカニューレの内腔内に後退している装置のプランジャステムの先端を示す。
図17図17は、本発明の一実施形態による単一内腔アクセス装置のカニューレの側面図である。
図18図18は、図17のカニューレのB-Bを貫通する断面端面図である。
図19図19は、単一内腔アクセス装置の図17及び図18に示すカニューレと共に用いるために先端部が面取りされたプランジャステムの側面図である。
図20図20は、図19のプランジャステムのA-Aを貫通する断面端面図である。
図21図21は、図17及び図18のカニューレ並びに図19及び図20のプランジャステムから形成された単一内腔アクセス装置の側面図であり、前記単一内腔アクセス装置は、患者の血管に接続され、いずれの結果として生じる突出部又はデッドスペースを示さない。
図21A図21Aは、図17のカニューレに対する代替のカニューレの側面図である。
図22図22は、図17のカニューレの側断面図(長手方向)である。
図23図23は、図22に示すカニューレの断面部分Bの拡大図である。
図24図24は、図22に示すカニューレの断面部分Cの拡大図である。
図25図25は、使用のために、単一内腔アクセス装置のカニューレと接続された本発明の一実施形態によるマルチポートアダプタの斜視図である。
図25A図25Aは、本発明の一実施形態によるマルチポートアダプタの斜視図である。
図26図26は、カニューレと並んで、図25に示すマルチポートアダプタの分解図である。
図27図27は、患者の循環システムに接続され、且つ、臓器への又は臓器からの血管流を制御するため、全てがカニューレの内腔を通って循環システムに入る3つの別々のバルーンカテーテルシステムの閉塞バルーン位置決め装置を示す、図25の相互接続されたマルチポートアダプタ及びカニューレの側面図である。
図28図28は、使用時に、単一内腔アクセス装置の植込み型カニューレと接続された第2の発明の別の実施形態によるマルチポートアダプタの斜視図である。
図29図29は、植込み型カニューレの遠位端に沿った図28に示されるマルチポートアダプタの分解図である。
図30図30は、患者の循環器系に接続され、且つ、臓器の血管隔離を提供する、全てカニューレの内腔を通過して前記循環器系に入る3つの別々のバルーンカテーテルシステムの閉塞バルーン位置決め装置を示す、図28の相互接続マルチポートアダプタ及びカニューレの側面図である。
図31図31は、本発明の一実施形態による外部瘻孔装置の側面図である。
図32図32は、本発明の一実施形態による外部瘻孔装置の側面図である。
図33図33は、図32の外部瘻孔装置で用いられるポートの側面図である。
図34図34は、本発明の一実施形態による外部瘻孔コネクタ装置の側面図である。
図35図35は、カニューレ挿入された図34の外部瘻孔コネクタ装置の側面図である。
図36図36は、本発明の一実施形態に係るマルチポートカテーテル接続部とプランジャの側面図である。
図37図37は、本発明による外部瘻孔装置の側面図である。
図38図38は、本発明による外部瘻孔装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
発明の詳細な説明
概して、図1図13を参照すると、本発明の一実施形態は、標的細胞又は病変が位置する、余分な血管、すなわち間質腔への治療的処置のための治療用物質の送達を改善するためのシステム及び装置に関し、特に虚血性間質腔を過灌流する。過灌流は、通常の量を超える流体(又は細胞)を、空間を通過させるように定義される。間質腔への治療薬の過灌流の不可避な効果は、排出リンパ管及びリンパ節と同様に標的を過灌流することである。多くの悪性細胞がリンパ管に浸潤し、リンパ節に移動し、増殖し、次いで胸管を経て静脈系に塞栓し、そしてそれ故全身に広がるので、この概念は新形成の治療に重要な影響を及ぼす。リンパ節転移(involvement)は、サイズが小さいリンパ節について治療が困難なことが知られている。腫瘍の再発はしばしばリンパ節及びリンパ球における残存腫瘍に関連する。新形成の治療に関連する他の問題は、比較的虚血性の組織内に少数存在する悪性細胞に関連し、全身治療により浸透能力が著しく減少するため、効果がある。一部の腫瘍はまた、正常な構造の圧縮及び/又は二次的な炎症作用に関連する周囲の仮性被膜に部分的に起因して、より高い間質圧が誘導されることも知られている。非増殖の悪性細胞もあり、かつ、多くの治療薬には、細胞分裂に対する主な効果がある。毛細管膜を通過する流体フラックスを支配する生理学的法則は、スターリングスの等式に記載されている。
【0082】
スターリングスの等式は以下の:
【数1】
(式中、
は毎秒の立方センチメートルにおける正味の経血管流体フローであり、
【数2】
は正味の駆動力であり、
は毛管静水圧であり、
は間質組織静水圧であり、
πは毛細血管コロイド膠質浸透圧であり、
πは、間質組織コロイド膠質浸透圧であり、
は毛管濾過係数、比例定数、であり、
σは毛管タンパク質反射係数である)
である。
【0083】
反射係数は、膠質浸透圧勾配の変動性を反映する補正係数である。通常、反射係数は1未満である。
【0084】
以下は、身体中の細動脈と細静脈の両方の方程式における変数の近似値である。
【表1】
【0085】
正味の駆動力が直線的に減少すると仮定すると、全体として毛細管から外向きに平均の正味の駆動力があり、これはまた、毛細管を再流入させるよりも多くの流体を毛細管から流出させる結果となる。リンパ系はこの過剰を排出する。
【0086】
間質腔の過灌流による変数の変化
本装置及び方法の以下の実施形態は、毛細管圧を「臨界閉鎖圧(critical closing pressure)」より低くする。注入が始まると、毛細管は再開し、注入された基質を受け取る。注入が止まると、それらは再び閉じて、赤血球と血漿による希釈を最小限に抑えられる。通常、臨界閉鎖圧力は20mmHgである。
【0087】
圧力駆動ウォッシュアウト及び間質腔の過灌流が改善された本発明の実施形態は、以下の変数に影響を及ぼす。
(a)細動脈から細静脈への圧力勾配が通常高く、静脈容量が細動脈容量の数倍であるときのPcの減少。灌流圧の低下は治療用物質の急速なウォッシュアウトを避けるために不可欠である。
(b)間質腔から赤血球、血漿及びタンパク質を洗い流すために膠質浸透勾配(oncotic gradient)を高める。
(c)注入カテーテルによる治療的灌流圧(Pp)の上昇。多くの場合、最大治療薬が基底膜を通過して間質腔に入るように、Ppは元のPcよりも大きく、最適にはPpはPcよりも大きい。
(d)血管内卵白(albumen)としてのπcの減少は、これを食塩水で希釈する膠質浸透勾配にとって重要であり、これは血管内から血管外空間への正味の外向きのフラックスをけん引する。これは、血管内空間から血管外空間へ受動的に交差し、及びそれゆえ治療に機能する多くの低分子量の治療薬によって増強される。多くの活性な治療薬は卵白が結合するとその効率が低下する。例えば、オキサリプラチン(oxalyplatin)は70%が急速かつ不可逆的に卵白に結合される。記載された装置は、膠質浸透圧が減少すると卵白を希釈することができるため、間質性過灌流を改善することができる。
(e)装置はまた、虚血を誘発することで、濾過係数(Kf)を高めることができる。血管内の赤血球が減少すると、毛細血管内皮への酸素送達が減少し、その結果、毛細血管透過性が高まり、正味の外向きフラックスが増加する。局所虚血は血管拡張を誘発し、それにより局所断面積が高まり、全外向きフラックスが高まることで、余分な血管流が促進される。
【0088】
本発明の装置の実施形態は、少なくとも部分的に、:
1.Pc、渦位Pv勾配を低減、均等化、又は逆転させること、
2.血管内卵白及び血漿タンパク質を希釈又は除去することによって外向きの膠質浸透勾配を高めること、
3.共有結合を最小限に抑えることによって治療活性を最適化すること、
4.内皮膜を横切る外向きのフラックスを高める虚血を作り出すこと、
5.虚血によって誘発される血管拡張によって断面積を増加させること、
6.毛細血管の臨界閉鎖を誘発すること、
7.静脈流出圧を可能な限り高めること、及び
8.最大臨界小量vまででそれを超えないように注入して、治療薬が全身循環中に入らないようにすること、
を目的とする。
【0089】
静脈側では、装置により様々な程度の閉塞が可能になり、且つ、治療部位に応じて、流出を閉塞させる血管内バルーン、呼気終末陽圧(PEEP)、又は外向きの流れを制御するために経皮的に膨張又は収縮させることができる閉塞装置内の血管外にあることができる。
【0090】
血管内フラックスから血管外フラックスを制御する効果:
(a)腫瘍細胞が少数存在する間質腔に、又は膠質浸透勾配(oncotic gradient)に沿って腫瘍の壊死中心に、治療薬を送達すること、
(b)膠質浸透勾配に続いて仮性被膜を貫通する能力が増加していること、
(c)流体がリンパ管を横切り、リンパ節に治療を送達すること、
(d)薬剤を経時的に繰り返し送達することは、ある特定の治療サイクルで分裂していない細胞を標的としうる。
【0091】
臨界閉鎖圧力は、通常20mmHgで、弁として用いることができる。血管外空間への流入ポートが閉塞されているので、臨界閉鎖圧力は弁としての作動に依存することができる。余分な血管空間のウォッシュアウトが行われ、治療薬の送達が完了した後、毛細血管系は閉鎖されたままであり、それから正常な血液によるその領域の最小限の希釈が期待できる。過灌流と血管内及び血管外空間との間の圧力差は極端である。血管内過灌流は、心臓によって通常生じる圧力よりも高い圧力が必要である。剪断応力の増加及び静脈流の減少は、遠位血管の拡張に関連する。赤血球から細胞への及び細胞からのガスフラックスは即時であり、すなわち拡散時間は極めて短く、そして浸透圧及び血漿とは無関係である。
【0092】
多くの腫瘍では、血管流入は曲がりくねっていて、直径は不規則であり、そしてやみくもに終わることがある。流量、圧力、抵抗が減少するため、化学療法剤の投与量が減少する。キャピラリー流入圧力は5mmHgまで低下する可能性がある。これらの状況では、過灌流はより大きな正味流入圧力をもたらし、そしてMAP及びMCPに対して増加をもたらし、それにより、より大きな正味流入圧力及びより大きな治療用物質送達を作り出す。過灌流はリンパ系にも当てはまり、高い間質圧に関連したリンパ流がより高まる。治療用物質を含有する増加流は、リンパ管とリンパ節の両方に送達される。
【0093】
人体の臓器又は解剖学的領域の血管隔離を含む可能な治療としては、肝臓、膵臓、骨盤内臓器、下肢、頭蓋領域などがあげられるが、これらに限定されない。本発明の様々な実施形態では、バルーン24及びカテーテル22を利用する複数のカニューレ挿入システムは、カニューレ挿入技術を用いて患者の血管系に挿入され、及び続いて標的領域に血液を供給する動脈及び/又は静脈内に配置される。次いで、これらのバルーンカテーテルシステムのバルーンを膨張させて、標的領域への動脈又は静脈の流入を遮断又は閉塞し、そして著しく減少した血液流入の隔離されたゾーンを確立する。この隔離されたゾーンにより、全身曝露を最小にしつつ、標的領域へ治療薬を注入しうる。血管の隔離は、標的領域又は病変部からの静脈流出を閉塞するように静脈内に追加のバルーンカテーテルシステムを配置するために別のアクセス装置を用いることによって、又は呼気終末陽圧(PEEP)を用いることによって、さらに高められうる。
【0094】
隔離ゾーンが確立された状態で、血管内の血流で、又は血流に逆らって標的領域への注入を提供することは本発明の範囲内である。
【0095】
概して、本発明は、身体内の領域を隔離する血管閉塞バルーン位置決めアセンブリ20を提供する。前記血管閉塞バルーン位置決め装置は、血管内に係合し、突き刺し、そして血管内へのアクセスを提供するように配置されたアクセス装置41と、複数のカテーテルライン22と、血流を制御するため、血管内で膨張するように配置された前記カテーテルライン22の周囲に配置されたカテーテルバルーン24とを包含する。前記カテーテルライン22及びバルーン24は、それを血流から隔離するために身体内の前記領域の周りに配置されている。
【0096】
本発明の実施形態は、血管23内の圧力を測定すること、及び前記血管23のセクション内の流れ及び圧力を制御することを想定する。
【0097】
図1は、大動脈81からの骨盤領域で用いられる本発明の一実施形態による血管閉塞バルーン位置決め装置20を示す。これは、膀胱、直腸S状結腸、前立腺、肛門管、膣、子宮頸部、子宮、卵巣、リンパ腫、細胞腫、及び仙骨部腫瘍のターゲティングを包含するが、これらに限定されない。通常、この領域は、多数の血管23を包含する。図1の前記装置では、前記バルーン位置決め装置20は、血管23を突き刺し且つアクセスするためのアクセス装置41と、複数のカテーテルライン22と、標的部位への血流を制御するために血管内で膨張するように配置された前記カテーテルライン22の周りのカテーテルバルーン24とを包含する。図1の実施形態では、前記標的部位は腫瘍11である。前記カテーテルライン22及びバルーン24は、アクセス装置41を介して血管内に挿入され、それを血流から隔離するために前記腫瘍11の周囲の血管23内に配置される。
【0098】
通常、骨盤領域内の標的臓器/領域では、両方の供給血管を介した血流の制御が必要な両側血液供給がある。これは、別々のバルーン24を有する2本のカテーテルライン22を有するコレール(co-rail)システムが必要でありうる。これは、前記2本のカテーテルライン22により両方の血液供給血管内にバルーン24が配置される。例えば、前記腫瘍11が前立腺がんである場合、注入するのに望ましい最適動脈である下膀胱動脈に入る超選択的(super selective)カテーテルを備えた前部及び後部の両方の分割を包含する内腸骨システムの起点にあるバルーンが用いられる。
【0099】
図2は、下大静脈46からの血管23において用いられる本発明の一実施形態による前記バルーン位置決め装置20の使用を示す。前記血管閉塞バルーン位置決め装置20は、血管23を貫通してこれらへのアクセスを提供するためのアクセス装置41、複数のカテーテルライン、及び標的部位への血流を制御するために静脈内で膨張するように構成された前記カテーテルライン22の周りのカテーテルバルーン24を包含する。図2の実施形態では、前記標的部位は腫瘍11である。前記カテーテルライン22及びバルーン24は、それを血流から隔離するために身体内の前記腫瘍11の周囲の血管23内に配置される。
【0100】
図1及び図2に関して、両側注入が必要な場合、アクセス装置41は対側又は同側から個別に用いることができる。
【0101】
図3は、側副静脈流を最小化し、そして右乳房における化学療法剤の注入を最適化するための血流制御バルーン24の一例を示す。
【0102】
図4は、側副動脈流を最小化し、さらに右乳房への化学療法剤の注入をさらに最適化するために用いられる複数の血流バルーン24の一例を示す。
【0103】
前記バルーン24は、外側胸動脈118内のカテーテル22及びバルーン24を通る注入チャネル116を介して標的領域への化学療法剤又は他の治療薬を選択的に動脈注入しうるように協働する。側副流制御バルーン114は、無名動脈120、内胸動脈124、最上胸動脈126及び甲状頚動脈128の遠位の血管の閉塞によって標的領域への動脈側副流を最小にする。総頸動脈122は、無名動脈120に送り込まれる。
【0104】
本発明照射粒子の一実施形態では、照射粒子を、動脈注入時又はその後に身体の隔離された領域に注入することができる。身体の領域は、照射された粒子が注入された時点でその領域にいくらかの血流がある可能性がある。
【0105】
特に図3を参照すると、側副流制御バルーン24は、無名静脈130、内胸静脈134、胸筋静脈136及び外側胸静脈138の近位の血管の閉塞によって標的領域からの静脈側副流を最小にする。このようにして、(図4に示すように)右乳房への腋窩及び鎖骨下動脈系の閉塞があり、且つ、(図3に示すように)右乳房からの腋窩及び鎖骨下静脈系の閉塞がある。内頸静脈132は右鎖骨下静脈141に合流する。右乳房からの主静脈流出の閉塞は標的領域内の静脈圧を上昇させ、それによって病変に対する化学療法剤の効果を最適化する。
【0106】
図3はまた、尺側皮静脈、次いで右鎖骨下静脈141を介してバルーン24に至る別個のガイドワイヤ及び膨張チャネル(図示せず)を含有するシャフト140と、前記シャフト140の端部142とを示す。
【0107】
図4はまた、当業者には理解されるように、上腕動脈又は代替のアクセスポイントを介してバルーン24に、次いで腋窩動脈に通じる別個のガイドワイヤ及び膨張チャネル(図示せず)を含有するシャフト143を示す。やはり上腕、動脈、次いで腋窩動脈144を介してバルーン24に通じる別個のガイドワイヤ及び膨張チャネルを含むシャフト145、及び前記シャフト145の端部146も示される。
【0108】
図4を参照すると、他の動脈、例えば内胸動脈が注入されることは本発明の範囲内である。
【0109】
図5は、肝臓21の血管を隔離するバルーンカテーテルシステムの動脈閉塞バルーン位置決め装置20を示す。カテーテルライン22上の3つのカテーテルバルーン24が、肝臓21へ、及び肝臓21から血液を供給する血管23内に挿入される。バルーン24は、多数の上腸間膜動脈25、胃十二指腸動脈43、総肝動脈又は固有肝動脈23、及び脾動脈42に配置される。46は下大静脈であり、44は腹腔軸である。
【0110】
図6は、肝動脈23内の膨張した閉塞バルーン24の位置決めにより、及び閉塞バルーン24の中央ガイドワイヤチャネルを通って配置され、且つ、前記肝動脈23の内側の開口部まで延在するマイクロカテーテル3により、腫瘍11を治療するための肝臓21の血管隔離の一例を示す。マイクロカテーテル3は、前記腫瘍11を供給する血管の内側に押し込まれるように、且つ、腫瘍を供給する血管の壁に対してマイクロカテーテル3の壁を押し付けることによって、動脈側副血行路を通る流れを妨げるように、形成されている。アンブラ(umbra)又は流れの影は、腫瘍11への流れを最小にする二重の閉塞のために密である。門脈側副はまた、それぞれ腹腔動脈44、上腸間膜動脈25及び下腸間膜血管を囲む血管内又は血管外いずれかのバルーン24によって閉塞される。その結果、腸35内の動脈流が低くなり、門脈69を通る二次的な流れが小さくなり、腫瘍11への流れがさらに減少する。一実施形態では、この流れは移植可能なカフ(cuff)26を門脈の周りで膨張させてさらに減らすことができる。この血管単離方法はまた虚血効果を高め、それによって成長端部5がある腫瘍11内の中心壊死を誘発する。腫瘍11からリンパ管4内の間質液流は、呼気終末陽圧(PEEP)を制御して肝静脈73及び下大静脈(IVC)46内の圧力を高めて高められる。腫瘍11からの外向きの流れは、PEEPを変えることによって制御することができる。あるいは、3つの別々のバルーン24カテーテル22を、3つの肝静脈73を各々閉塞するように配置することができる。
腹腔動脈、胃動脈、上腸間膜動脈及び下腸間膜動脈におけるバルーン(閉塞時に1つ以上の組み合わせ)は、門脈流量の減少をもたらす。肝動脈緩衝液反応(HABR)として定義される生理学的反応がある。これにより、一酸化窒素アドレナリン及び他の局所上腕骨物質によって媒介される肝動脈流が実質的に高まる。治療用物質、幹細胞、ナノ粒子、化学療法又は放射性粒子の送達では、HABRを活性化するのに有効でありうる。
【0111】
止血帯又はその他、流れを制限する膨張可能なカフ以外の別の形態の制限も本発明の範囲内である。
【0112】
図7は、頭蓋領域39の血管及び動脈の隔離に適用された本発明の実施形態を示す。これは、脳の腫瘍37又は舌のがん腫、喉頭、咽頭、顔面皮膚及び顎下腺を包含し得る。
【0113】
一実施形態では、治療の起点部位は、外頸動脈74の起点にあるアクセス装置41であるか、あるいは鼠径部又は腕部のいずれか又は両方からのものであり得る。前記アクセス装置は、片側又は両側に埋め込むことができる。アクセス装置41は、正中線に近い血液供給を受ける構造体のために両側に埋め込まれる。流入のため、主軸は、標的領域に対してスーパーセレクトされ、そして上記のようにカテーテル22上の血管内又は血管外バルーン24閉塞システムで制御される。ある状況では、前記閉塞システムは近位バルーン24システム及び遠位バルーン24システムの優れた側副流に関連する(コレールシステムは、プレキャピラリーレベルで20mmHgである臨界閉鎖圧力に対応する圧力を減少させるのに必要である)。
【0114】
付随的な制御のために、放射線学的外観及び主軸を閉塞した後に得られる圧力に応じて、外頸動脈74の他の枝にカニューレを挿入する必要があるかもしれない。外頸動脈の他の隣接する枝は、肋頸管及び甲状頸管等の鎖骨下血管の枝を含めて制御する必要があるかもしれない。
【0115】
流出制御は、姿勢操作(manoeuvres)(例えばトレンデレンブルク位置への移動)、陽圧及び呼気圧、並びに内頸静脈75、一般的な顔面又は前頸静脈における閉塞カテーテル(これは血管内又は外部血管閉塞システムを含み得る)によって達成される。
【0116】
前記内頸静脈の内部の閉塞は、上述のように、バルーン24、カテーテル22を用いて達成される。外部閉塞は、膨張ライン79を介して静脈の外側に圧力を加える血管外閉塞装置78を用いて達成される
【0117】
血管外閉塞装置78を用いた前記外部閉塞は、前記アクセス装置が適用されるのと同じ血管の同じ側に適用される。図7において前記閉塞装置78が反対側に示されるということは、その両側使用を示す。
【0118】
静脈圧は連続的にモニターされる。血管の制御が含まれると、血漿タンパク質及び血液は標的セグメントから洗い流され、そして治療薬を含む食塩水と交換される。血流が再確立されると、側副血行路及び主軸動脈流入が最初に収縮し、静脈流出制御が5~20分間継続して全身再循環が最小限に抑えられる。血漿タンパク質が洗い流されると、患者の抗体の作用は大幅に減少するか、又は排除される。標的セグメント内の患者の抗体の作用が排除又は低減されると、標的セグメント内の免疫応答のチャンスが大幅に低減又は排除される。
【0119】
脳の実質内への治療薬の送達の処置においていくつかの制約がある。血液脳関門(BBB)は、内皮を通過する治療用物質の95%超を防ぐ。500ダルトン未満の分子は通常通過することができる。問題は、内皮細胞間の緊密な接合部がこの障壁を越えて自由に移動できないことである。次の問題は、腫瘍が特定の腫瘤に集中するのではなく、びまん性になる傾向があるため、腫瘍自体に関連する。流体フラックスに関して、これは頭蓋内圧の上昇と関連し、これは頭蓋内圧亢進症の症候群と関連する症状を誘発する可能性がある。次の問題は相対的な脳虚血、特に局所注入によるものである。隔離治療は注入時間を調整するために局所麻酔下で行うのが最善である。最後の問題は、脳のある部分での良好な側副流であり、これは注入されたセグメント中の膠質浸透圧的に活性な結晶タンパク質を洗い流すことが困難であるために、膠質浸透勾配を生じさせるのが困難である。最後の問題は、血管内から血管外空間への正味の移動があるように流出圧力を高めることの困難性に関する。
【0120】
分節脳の隔離のために、流入制御の確立は、鼠径部外頸動脈74又は腕動脈を介する動脈アクセスを介する。側副流は、側副血管の使用によって最小化され、そのため一方のバルーンはより大きな血管内で近位にあり、他方のバルーンは通常同じ血管内の病巣に近接し、注入は中央又はガイドワイヤチャネルに沿って進行する、つまりコレールシステムの使用によって最小限に抑えられる。流出性脳高血圧は、血管内で閉塞性バルーンシステムを用いて、又は頸部の内頸静脈周囲に移植された血管外閉塞システムのいずれかを用いて、トレンデレンブルク又は内頸静脈への特定の閉塞によって改善することができる。このシステムは経皮的に活性化及び非活性化することができる。
【0121】
血漿タンパク質及び血液はセグメントから洗い流され、そして積極活動療法によって置換される。これは、内皮細胞を収縮させるために高張性の担体溶液を用いることにより、内皮の孔径を増大させることによって補助することができる。別の可能性は、特に血液脳関門を通過する親油性薬剤がより容易であるならば、他の担体物質を用いることである。
【0122】
図8及び図9は、下肢82に適用される本発明の血管隔離の方法及び装置を示す。図8は動脈隔離を示し、図9は静脈隔離を示す。管腔内カテーテルの起源部位は、一般的な大腿骨若しくは補助血管若しくは上腕血管の対側肢上、又は動静脈瘻を介してもよい。リンパ系が治療を受ける機会がある場合、制御系はリンパ節、すなわち腸骨系の近傍に位置してよい。ある状況では、埋め込み型の血管外閉塞システムを用いることができる。
【0123】
当業者であれば、図8及び図9に示した血管を隔離する方法及び装置が上肢に容易に適用されることを容易に理解するであろう。
【0124】
当業者は、治療の起点部位が総大腿動脈81の起点にあるアクセス装置41であるか、又は鼠径部又は腕のいずれか又は両方からのものであり得ることを理解するであろう。
【0125】
上記のようにカテーテルライン22上にバルーン24を用いることにより、深部血管又は内腸骨動脈又はコレールシステムを個別に制御して、腫瘍11の隔離が達成される。図8の実施形態では、バルーン24が表在大腿動脈83内に配置される。一実施形態では、これは適当な圧力変換によってモニタリングされる。図9の実施形態では、バルーン24が表在大腿静脈に配置されている。流出制御は、逆トレンデレンベルク位置決めによって補助することができる。場合によっては、同側又は対側又は止血帯42のいずれかの血管内バルーンが適当であることができ、また陽圧及び呼気圧を加えることができる。上記のメカニズムのいずれか又はすべてを用いて流出を制御することができる。膠質活性物質の血漿及び血液の除去並びに生体適合性溶液中の治療用物質による置換、流入制御系の数分後に流出閉塞を除去することにより正常な循環の再開を遅らせることができる。深部血管の制御は、同側又は反対側で達成される。
【0126】
図10は、前上膵十二指腸動脈193、前下膵十二指腸動脈191及び後上膵十二指腸動脈95を介した膵臓53の血管隔離のバルーン位置決め装置20の3つの個別のバルーン24位置の動脈閉塞バルーン位置決め装置を示す。また、後下膵十二指腸動脈97、上腸間膜動脈194、胃十二指腸動脈192、固有肝動脈94及び腹腔軸44も示される。
【0127】
図11は、本発明のバルーン位置決め装置20の一実施形態で用いられる十二指腸231内に位置決めされた膨張粘膜圧縮バルーン230の一例を示す。また、上膵十二指腸動脈232、その後側枝部234、及びその前側枝部236も示される。また、上膵十二指腸動脈232の前側枝部236からの胃十二指腸動脈238及び膵臓枝部240も示される。
【0128】
後方分岐部234及び前方分岐部236の両方は、通常、上部腸間膜血管244から生じる、後部及び下部膵臓十二指腸分岐部242と連通する。バルーン24は、脾臓の起点252、上膵十二指腸動脈232及び上腸間膜血管244に各々配置される。膵臓腫瘍254が膵臓256の頭部に示される。膨張した粘膜圧迫バルーン230は十二指腸231の4つの部分すべてを横切っている。
【0129】
標的領域(又は腫を瘍)を治療する化学療法剤を、膵臓256が分離されているように、注入することができる。
【0130】
粘膜バルーン230の外側注入バルーンは氷水が充填されてよい。氷水には、十二指腸の血管を圧迫する効果があり、低酸素の影響を最小にすることで虚血時間を延長するという副次的効果がある、すなわち、「冷虚血時間」は「温熱虚血時間」よりも長い。低温によりまた、十二指腸の小血管の血管収縮がおこり、これにより細胞傷害性薬物の注入から保護される。しかしながら、腫瘍254内の血管は、血管壁内に平滑筋及び神経が存在しないため、血管運動性緊張がほとんど又は全くない。バルーン230が必要な低温を維持するために周囲構造からの連続的な加熱効果があるので(血液供給の減少により最小化されるにもかかわらず)、周囲の十二指腸温度を一定にするために温度制御流体の連続注入が必要である。PEEPを変化させると、化学療法剤の体循環への漏出が最小限となるため、肝臓及び門脈系における静脈圧が高まる可能性がある。同様に、肝静脈の直接的なバルーン閉塞は静脈圧を高める可能性がある。
【0131】
腫瘍血管は他の組織のように寒冷には反応しないため、氷水を用いて、氷水に対する粘膜組織の反応のために十二指腸への治療用物質の送達を回避しながら、腫瘍を標的化することができる。
【0132】
図11Aは、粘膜バルーン230をさらに詳細に示す。マルチチャネルカテーテル192が粘膜バルーン230を通過する。粘膜バルーン230は、加圧される内側膨張バルーン194と、溶出ポート198を介して血管収縮剤又は冷たい流体を周囲組織に収容又は移送する外側注入バルーン196とを包含する。温度制御された流体は、カテーテル192のチャネル内の開口部214を介して内側バルーン194に注入され、膨張用流体(空気など)は、カテーテル192の第2のチャネル内の開口部216を通って内側バルーン194内に注入され、内側バルーン194内の圧力を膨張させ維持する。治療用物質は、マルチカテーテル192の第3のチャネル内の開口部224を通って内側膨張バルーン194と外側注入バルーン196との間の空間に注入される。治療用物質は溶出ポート198を介して周囲の組織に移送され、低温は腫瘍組織等の組織の標的化を補助する。
【0133】
図12は、側副流を最小にし、肝臓における過灌流を最適化する3つの別のバルーンカテーテルシステム75、76、77の動脈閉塞バルーン位置決め装置を示す。システム75のバルーン78は、柔軟で展性のあるバルーンであり、内腔79がある。バルーン78は、腹腔軸80を越えて大動脈81内に長手方向に延在し、また、左胃動脈82、脾動脈83、及び右胃動脈85及び右胃大網動脈86等の総肝動脈84の他の側副血管並びに多くの小血管の開口部内へと延びる。システム76のバルーン87は左肝動脈88内に配置されており、システム77のバルーン89は右肝動脈90内に配置されている。各バルーン87、89用の2つの別々のカテーテル91、92は、バルーン78用のより広いカテーテル93によって提供される内腔79の内径を通過することができる。
【0134】
図12に示されるバルーン位置決め装置により、総肝動脈84から及び側副血管からの流入の制御によって治療薬を最適に送達できる。バルーン78は、膨張時には少なくとも5cmの長さであるが、できるだけ多くの側副血管を閉塞するために最大40cmの長さであり得る。もとの血管(すなわち、総肝動脈84)に適合し、側副血管の開口部内に部分的に突出することは順応性がある。これも中央ガイドワイヤチャネルを画定する内腔79は、従来技術のガイドワイヤチャネルよりも直径が大きい。結果として、内腔79は安定化シースのように作用することができる。これにより、バルーン78及び他の同様のバルーンを、主血管から極めて急激に分岐する血管の隔離及び閉塞に用いることができる。
【0135】
バルーンカテーテルシステムを鋭角血管に挿入するための一般的な方法は、最初にガイドワイヤを血管に挿入し、次いでバルーンカテーテルシステムをガイドワイヤ上で所望の位置まで挿入することを含む。しかしながら、バルーンの膨張及びその後に治療薬を注入できるようにガイドワイヤが取り外されると、未膨張のバルーンが血管から滑り出る可能性がある。この問題は、バルーンが未膨張の場合でも、内腔79が安定化シースのように作用する、図12に示される長い側副バルーン78を用いて回避できる。次いでガイドワイヤを除去し、次いで追加の側副バルーンシステムを長い側副バルーンの内腔を通して挿入することができる。あるいは、長い側副バルーンが膨張した後にガイドワイヤを除去してもよい。その場合、バルーン78は非常に順応性があり、側副血管の開口部内に部分的に突出するため、それはより大きな摩擦抵抗力を生じ、ガイドワイヤが取り除かれても、膨張したバルーンは血管から滑り落ちない。
【0136】
ほとんどの従来技術のバルーンカテーテルシステムの管腔又は中央のガイドワイヤチャネルの直径は、0.035インチ又は0.038インチである。しかしながら、バルーン78を用いるバルーンカテーテルシステム75により、各々の最小直径が0.039インチである2つの別々のバルーン注入カテーテルシステムをその内腔に通すことができる。
【0137】
図13に示すバルーン位置決め装置は、肺100の右上葉の隔離及び注入のメカニズムを示す。主気管支101及び肺静脈102が示される。当業者は、いずれかの肺の任意の部分又は全体が同様の方法で隔離され得ることを容易に認識するであろう。
【0138】
肺又はセグメントの非換気により、その肺又はセグメントの無気肺又は虚脱がおこる。肺動脈の血管収縮は、血液を曝気セグメントにシャントするために生理学的に継続する。腫瘍の血流は、それらの原始的な性質に関連した血管収縮に対してそれほど反応性ではなく、したがって選択的注入目的のための正常組織と比較した血管細胞活性の程度である。血液供給の中には、それほど影響を受けない上腕動脈からのものもある。無気肺に関連して、肺静脈圧が上昇し、これはPEEPによって補助され得る。
【0139】
結果として、本発明による右上肺100における原発性又は続発性の肺新形成の治療は以下の通りである。
(a)気管支のバルーン閉塞による非換気による無気肺の誘導;
(b)端部104における肺動脈103の閉塞及びバルーン24による末梢静脈アクセスからの前部区画106を有するスーパーセレクションカテーテル624の導入;
(c)供給血管から単離された肺葉又はセグメントへの膠質浸透圧的に活性な物質のウォッシュアウト;
(d)PEEPの適用;及び
(e)予測される肺静脈圧まで積極的な治療を注入する。
【0140】
肺は、約450グラム(右)と400グラム(左)であり、右側に3つの葉がある。葉に対して約600倍の75kgの患者における予測質量比の優位性。腫瘍全体の崩壊は、腫瘍の解剖学的分布で必要であるように、罹患した分節部分にのみ注入して行うことができる。
【0141】
本発明のバルーン位置決め装置は上記用途及び以下の用途に用いることができる。
【0142】
頭頸部病変
これは、鼻、咽頭及び喉頭の腫瘍、舌、口底、副鼻腔、顎下腺、並びに皮膚及び粘膜の悪性領域があげられる。治療の起点の通常の場所は、外頸動脈の起点にあるマルチアクセスポートであるか、又は鼠径部又は腕のいずれか又は両方からのものであってよい。アクセス装置は、正中線に近い血液供給を受ける構造物のために両側に埋め込まれる。流入すると、主軸は標的領域にスーパーセレクトされ、血管内又は血管外のバルーン閉塞システムで制御され、ある状況では近位及び遠位バルーンシステムの優れた側副流に関連する(コレールシステムは、プレキャピラリーレベルで20mmHgである臨界閉鎖圧力に対応する圧力を下げるために必要である)。
【0143】
放射線学的外観及び主軸を閉塞した後に得られる圧力によっては、外頸動脈の他の枝にカニューレ挿入する必要がある場合もある。外頸動脈の他の隣接する枝は、肋頸管及び甲状頸管等の鎖骨下血管の枝を含めて制御する必要がある場合もある。
【0144】
流出制御
これは、トレンデレンベルク等の体位操作、陽圧及び呼気圧、並びに内頸静脈、一般的な顔面又は前頸静脈内の閉塞カテーテル(血管内又は外部血管閉塞システムを含み得る)によって達成される。静脈圧は継続的にモニタリングされる。血管の制御が収容されると、血漿タンパク質及び血液は標的セグメントから洗い流され、そして治療薬を含む食塩水と交換される。血流が再確立されると、側副血行路及び主軸動脈流が最初に収縮し、かつ、静脈流出制御を5~20分間続けて、全身再循環を最小限に抑える。
【0145】
骨盤内の病変の血管隔離と膠質浸透圧(onconic)操作
これは、膀胱、直腸、膣内病変、肛門管、前立腺、子宮、子宮頸部、リンパ管及び他の一次又は二次性病変があげられる。カテーテルの起点部位は、一方又は他方又は両方の鼠径部に位置する血管アクセスシステムであり、これには、一般的な大腿骨、浅大腿骨システム、及び同様に一般的な大腿骨、浅大腿静脈、外静脈及び腸骨静脈に位置する静脈アクセスシステムを包含する。時折、大伏在静脈の管理が必要である。実際の流入量は、標的臓器例えば内腸骨系の起源を制御する別のバルーンと前立腺病変の下膀胱動脈、のスーパーセレクション、によって2つのレベルで制御される。これらの臓器は左右に血流を受けるので、大動脈の分岐部にわたって逆行性に配置されたカテーテルを導入して、スーパーセレクションにより対側主軸の同期制御が達成される。モニタリングされる圧力は、両側で個別に、そしてともに変換されたスーパーセレクトされた最終圧力であり、同様に、一方的にそして次に両側的に測定された付随的圧力である。これらの測定値により、同時の対側フロー制御の必要性が決定された。場合によっては、流入圧力を適当に減少するため、重要な側副血管の塞栓術が必要になることがある。
【0146】
流出制御
流出制御は、同時に、内部、外部又は選択された骨盤静脈の閉塞、腸骨静脈、又は静脈によって達成される。静脈流出圧の上昇は、姿勢操作(頭を上に向ける)と、陽圧及び呼気圧(PEEP)の印加の両方で達成される。
【0147】
膠質浸透圧操作
血液は、治療される隔離された臓器から除去され、低膠質浸透圧(hypo-oncotic)溶液中で適当な化学療法又は他の形態の治療と交換される。滞留を最大にするために、静脈圧は通常の動脈流の再開後5~20分間は常に上昇したままである。
【0148】
隔離法及び膵臓への流体フラックス制御
主軸動脈流入は、胃又は上膵十二指腸のスーパーセレクションとの共通肝内カテーテル及びバルーンによって制御される。膵臓の他の病変では、脾臓血管又は膵臓マグナが主軸制御系である必要があるかもしれない。そして時折下膵十二指腸のスーパーセレクションが必要である。付随的な制御は、標的腫瘍の部位に応じて、胃、胃大網、肝血管及び脾動脈を制御するバルーンシステムを介して行われる。
【0149】
静脈閉塞(obstruction)
これは、陽圧呼気圧(PEEP)、並びに門脈又は場合によっては脾臓静脈を囲む血管外閉塞装置によって得られる。肝静脈はまたバルーンを介した制御を必要とするかもしれない。この程度の閉塞は、放射線学的に経皮的に制御された。血管の隔離後、血漿タンパク質及び血液は隔離されたセグメントから洗い流され、そして化学療法剤を含有する食塩水と交換される。側副血行路並びに主軸方向圧力及び放射線学的に適当なカテーテルの配置をモニタリングすることは必須である。化学療法の活性とレベルのオフライン測定も管理に役立ち、場合によっては胃及び十二指腸、並びに十二指腸の最初の部分に低温注入を用いて反応性血管収縮及び最小血流をおこして、周囲の粘膜を遮蔽する方法を省くことができる。
【0150】
乳房における血管の隔離と病変のフラックスの操作
流入制御
アクセスシステムは、上腕血管又は鼠径部のいずれかの腕に埋め込まれる。内側の病変で、内側乳房がスーパーセレクトされて閉塞されると、注入の準備が整う。外側病変では、外側胸部血管がスーパーセレクトされる。ごくまれに、内側と外側の胸窩がその起源の近位と遠位の2つのバルーンで分離される場合がある。側副血管、スーパーセレクトされていない他の血管、すなわち内胸、内側及び外側胸部、甲状頸管、側頭頸部幹、並びに外側胸部血管は、病変部位に応じて必要があれば閉塞する。1つのシングル又は2つのバルーンは、適当な減圧ですべての側副流を閉塞するのに十分である。
【0151】
流出
流出カニューレは上腕から、鎖骨下血管及び腋窩血管の支流の全てを閉塞する。したがって、外側胸静脈、内側及び外側胸静脈、甲状頸管幹及び頸静脈幹からの静脈、並びに内乳房静脈は、すべて同時に閉塞される。静脈圧と動脈圧は、主軸と側副血圧の両方でモニタリングされる。次いで、動脈系を閉塞し、次いで血漿タンパク質を洗い流し、次いで流出バルーンを膨張させ、そして閉じたセグメントを、治療薬を含む食塩水で置換する。
【0152】
再構成
側副バルーンの放出は最初に主軸方向バルーンであり、その後に、動脈再構成の5~20分後に収縮する静脈流出閉塞システムで体循環に入る治療を最小限にする。
【0153】
上肢
カテーテル/バルーンアクセスシステムの起源の部位は、元の病巣の部位及び関連するリンパドレナージに依存し、そしていくつかの場合には鼠径部に由来してよい。近位では、流入制御システムは、近位側、すなわち病変の心臓側に配置される。これは、主軸の二重包含又は病変への流入を制御するために瘻孔を用いてよい。
【0154】
側副血行路制御
これは、病変の部位及び圧力変換記録の結果に応じて、放射状の尺骨間質又は回旋上腕骨血管の主軸選択的閉塞における近位及び遠位バルーンを含んでよい。
【0155】
陽圧及び呼気圧、姿勢、及び病変の心臓側に配置されたバルーン、並びに適当な支流の制御は主静脈リターン軸の支流をなす。これらの血管は上腕の補助血管又は鎖骨下血管であってよい。適当な治療薬を含む生体適合性のある溶液で血液交換。循環の再開、静脈流出は流入制御システムの数分後に収縮して活性治療薬の不要な領域への再循環を最小限に抑えることができる。
上記の実施形態のカニューレ、カテーテル及びバルーンは、必要に応じて、1つのアクセスポイントを介して流入及び流出血管内に身体内に挿入することができる。その結果、必要なアクセスポイントの数が減り、体内で実施形態を容易に行うことができ、注入ポイントが減る。
治療用物質の標的空間からの流出を最低限にしつつ、血管外空間を上記方法で隔離し、治療用物質を標的空間に指向させ、上記の実施形態により、治療処置頻度を高めうる。
【0156】
概して、図17図24を参照すると、本発明の一実施形態は、カニューレが血管内に挿入された場合にデッドスペースの形成を排除するための面取り端部がある血管アクセス装置に関する。
【0157】
図14、15及び16は、従来技術の単一内腔アクセス装置を示す。図14に示すアクセス装置410は、アダプタポート412があるカニューレ411があり、カニューレ411は垂直角(90°)で患者の血管413に接続されている。このようにして、カニューレ411内のプランジャ415のステムの先端部414は、カニューレの近位端部が壁と水平になる点に達するように、カニューレの近位端部に向かって十分にスライドさせることができる。これにより、患者の血液がカニューレの腔又は内腔416に充填されるのを防ぐことができる。結果として、カニューレ411が患者の血管に垂直な角度で接続されると、プランジャ先端部414と血管413との間にデッドスペースがなくなる。
【0158】
しかしながら、図15及び図16に示されるように、anがあるカニューレ417が患者の血管に垂直でない角度(例えば30°)で接続される場合、プランジャの先端部414の規則的な円筒形状は血管の内腔に突出部418を形成しうる(図15参照)。あるいは、突出部を排除するために先端部414をカニューレ内に後退させると、カニューレの管腔内に少量の血液が充填されるデッドスペース419が形成される(図16参照)。突出部418及びデッドスペース419はともに、血栓事象をおこしうる、患者の循環器系内の血行動態障害又は乱流を起こしうるか又はそれに寄与しうる。デッドスペース又は突出部の量は、存在する場合、遠隔アクセスの場所、例えば腋窩、大腿、腸骨、又は頸静脈、に応じて変わる。
【0159】
図17及び図18に示す本発明のカニューレ421と共に用いて単一内腔アクセス装置を形成するための図19及び図20に示すプランジャ420は、面取りされた先端部422又は近位端を構成することで、この問題を回避する。それにより、先端部422の面取り面とプランジャ420の長手方向軸との間の角度は、プランジャステムが通るカニューレ421の長手方向軸と、カニューレ421によって接続された患者の血管の壁との間の角度と同一である。プランジャ420により、カニューレ421で血流が上方へ流れるのが止められる。血流がカニューレ421で上方へ流れると血栓症をおこしうる。
【0160】
一実施形態では、プランジャ420は、その全長にわたって延びる内部管腔(図示せず)を含むことができる。内部管腔は、第2のプランジャによって塞がれうる。第2のプランジャを取り外して、内部管腔を通る材料を供給させることができる。
【0161】
図17及び図21に示すように、カニューレ421は、プランジャ先端部422と同じ面取り角がある近位グラフト端部423と、プランジャステム424がその中に着座する身体部分432とがある。プランジャステム424がカニューレ421の身体部分432を滑り落ちると、プランジャ先端部422の面取り面は患者の血管壁428と平行になり、デッドスペースを防ぎ、それにより血栓症発症の可能性が軽減される。
一実施形態では、カニューレ421は、カニューレ421を身体内に固定するように配置されたその長さに沿ったダクロンカフを含む。
【0162】
図18及び図20の端部断面図に示すように、カニューレ421の身体部分432の内壁425は、プランジャステム420の外壁426の外形と嵌合可能に対応するように輪郭付けされる。プランジャステム424は、カニューレ421を通過する間、プランジャステム及びカニューレの近位端又は先端122、123の面取りされた表面が正しく整列するように誘導される。カニューレ421が患者の血管に垂直でない角度で接続され、プランジャステム424がカニューレ421の空洞427を滑り落ちる場合、上記の対応する輪郭壁425、426によって提供される位置合わせは、プランジャ先端部422の面取り面が血管壁428と平行かつ一直線上にあることで、カニューレ421の内腔427内のデッドスペース又は血管内腔への突出を確実に防ぐ。血栓症をおこす可能性のある血行動態障害はこの特徴により防止され、これによりアクセス装置がその安全性を低下させずにより長い移植期間の間用いられるであろう。
【0163】
図22は、カニューレ421の長手方向の断面図を示す。図23は、接続アセンブリ429がカニューレ421の近位グラフト端部430をカニューレ421の本体432の隣接端部431にどのように相互接続するかを断面詳細に示す。図24は、接続アセンブリ433がカニューレ421の本体432の遠位端部分434にどのように接続されるかを断面詳細に示す。接続アセンブリ433により、マルチポートアダプタ、ポンプ、薬剤供給源、放射線供給源等の医療供給装置への接続が可能となる。
【0164】
図21Aを参照すると、プランジャステム424があるカニューレ421の使用に対する代替案が示される。代わりに、第2のプランジャステム420Aを用いてカニューレ421の内腔上の血流を止める。第2のプランジャステム420Aはその長さに沿って通路422Aを包含する。通路422Aは、カニューレ421から通路422Aへの流体及び微粒子の流入を阻止しつつ、カニューレ421内へ材料を注入させる一方向弁423Aを包含する。
【0165】
図14図24の面取りされた端部がある血管アクセス装置は、上記の身体又は臓器の領域の単離及び治療的処置用のカテーテル22及びバルーン24のためのアクセス装置を提供する。
【0166】
概して、図25図30を参照すると、本発明の一実施形態は、シングルカニューレ内腔への複数のカテーテルの挿入を容易にするためのマルチポートアダプタ装置に関する。
【0167】
図25から図27に示されるマルチポートアダプタ235には、図17から図24のカニューレ421の遠位端部分234で接続アセンブリ233に接続される単一端部ポート236がある。アダプタ235には、3つのチューブに分岐する分岐部237があり、各分岐部には、米国特許第5,047,021号に記載されるタイプの雄型ルアーロック医療用フィッティングで、他の医療機器に適合するように設計された各々外側ポート241、242、243を有する外部チューブ238、239、240のアイテムが解放可能に接続される。当業者であれば、外部ポート241、242、243を他の医療機器に接続するのに代替接続手段を用いることができることを理解するであろう。そのような医療機器は止血弁(米国特許第5,195,980号;欧州特許第0875262号;米国特許第6,22,1057号参照)、医療用三方活栓(米国特許第7,914,495号参照)、及びシリンジ(米国特許第8,652,109号参照)であってよい。アダプタ235はまた、3つのバルーンカテーテルシステムのカテーテル44及びバルーン45を受け入れることができる。これらは全てカニューレ421の内腔を通過し、かつ血管遮断システムで用いられ、そして患者の循環器系との連通を改善し、かつ高めるのに用いられる。
【0168】
図25Aの実施形態に示されるようにマルチポートアダプタ225が示される。マルチポートアダプタ225は、可撓性であり、且つ、異なるチューブを通して配置されたカテーテルを配置するためのガイドとして機能するのに役立つ4つのチューブ541、542、543、543を包含する。可撓性チューブ541、542、543、544は、1本の可撓性チューブを動かすことで他のカテーテルに影響を与えることなく1本のカテーテルにのみ作用するフィーダ接続ポート545を通るカテーテルの配置のための独立した操縦を可能にする。チューブ541、542、543、544は、それらの遠位端が外側ポート546、547、548、549に接続されている。
【0169】
別の実施形態のマルチポートアダプタには、3本より多いチューブが包含される。さらに別の代替実施形態では、マルチポートアダプタの前記複数のチューブは、チューブの位置を互いに対して固定するために単一の本体内に配置されている。
【0170】
当業者であれば、雄型ルアーロックへの代替の接続機構を用いることができ、それでも本発明の範囲内に入ることを理解するであろう。
【0171】
次いで、患者の循環器系に導入された血管隔離システムを用いて、血管246を通る臓器又はその上のセグメントへの及び/又はそこからの血流を制御又は閉塞する。アダプタ235は、アクセス装置の体外構成要素として機能する。複数の小型カニューレ44がマルチポートアダプタ235を介してカニューレ221内に供給される場合、小型カニューレ44のそれぞれを異なる位置に指向させて、血流を閉塞又は制御することができる。
【0172】
図28~30は、図25~27と構造及び機能が類似するマルチポートアダプタ247の単一端部ポート236にその遠位端で接続された図17~24の植込み型カニューレ421を示す。図30は、患者の動脈又は静脈の壁228に直接接続されたカニューレ421を示す。マルチポートアダプタ247はまた分岐して、血管用途に適したISO標準の流体/密封接続を備えた複数の外側ポートを形成する。3つのカテーテル244及びバルーン245はすべて、マルチポートアダプタ247の外側ポートを介して埋め込み型カニューレ421の内腔を通過し、バルーン245は血管246を通る血流を閉塞する。
【0173】
埋め込み型カニューレ421の内腔を通る追加の装置の挿入を容易にする際のマルチポートアダプタ235、247の機能により、カテーテル及びバルーン等の複数の血管内装置(以下「バルーンカテーテル」という)が、埋め込み型カニューレを介して患者の血管系に同時に導入されうる。次いで、これらの血管内装置を同時に用いて、様々な方法で治療を施すことができる。
【0174】
可能な治療の例は、肝臓、膵臓又は骨盤内臓器を含むがこれらに限定されない人体の臓器又は解剖学的領域の血管隔離を含む。この例では、バルーン及びカテーテルを用いる複数のカニューレ挿入システムが、植込み型カニューレ421及びマルチポートアダプタ235、247を用いて、患者の血管系に挿入され、続いて標的領域又は病変に血液を供給する動脈内に配置される。次いで、これらのバルーンカテーテルシステムのバルーンを膨張させ、標的領域への動脈流入を遮断又は閉塞し、そして著しく減少した血液流入の隔離されたゾーンを確立する。この隔離されたゾーンにより、全身曝露を最小にしながら標的領域への治療薬が注入される。血管の隔離は、標的領域若しくは病変部からの静脈流出を閉塞するように静脈内に追加のバルーンカテーテルシステムを配置するために別々のアクセス装置を用いて、又は呼気終末陽圧(PEEP)を用いて、さらに高められうる。
【0175】
図31図35を参照すると、本発明の一実施形態による外部血管瘻孔装置300、315、320が示される。これらの瘻孔装置300、315、320は、瘻孔装置300、315、320を通る血流を妨げずに、循環の動脈側及び静脈側へ繰り返し無菌アクセスができる。さらに、動脈及び静脈の制御後にコネクタを取り外して交換することができる。この装置により、別個の静脈穿刺なしに血液が採取できる。当該機能により、特に化学療法の血液学的効果の調査に多くの検査が必要な化学療法を受けているがん患者の生活の質が改善される。当該装置により、化学療法、幹細胞又はナノ粒子又は抗生物質の送達のため、カテーテルを連続的な遠隔の動脈内又は静脈内注入のために挿入できる。システムにはまた、例えば細胞型のリアルタイム認識のため、カテーテルループがあってよい。カテーテルが瘻孔装置300、315、320の動脈側に挿入されると、リアルタイムで細胞型を即座に認識して、瘻孔の流れを妨げずに血液を静脈系に戻す装置を横切る。同様のシステムは、瘻孔装置300、315、320の静脈部分を介した摘出、及びポンプを介した動脈システムへの再挿入である。これはリモート閉ループ再循環として知られる。これはある種の化学療法、特に解毒が必要な場合には適当である。この装置はまた、必要に応じてカテーテルを動脈静脈側に挿入する、反復診断血管造影法にも適する。この装置構造は、自発的転位及び不正開封の可能性を実質的に最低限にすることで安全性の問題に対処する。
【0176】
瘻孔において、過去に、静脈系は、漸進的な血流の減少及び最終的な内包物を伴う内膜過形成を経験する可能性がある。これは適当な血管形成術又は手術で治療可能な場合もあれば、そうでない場合もある。このような状況下では、瘻孔装置300、315、320はチューブをプランジャで栓をすることによってアクセスを継続させ、すなわち必要ならばアクセス装置を取り外し、アクセスチューブの一方又は両方のプランジャによって交換することができる。
【0177】
あるいは、循環の反対側へのアクセスが必要な場合、以前の単一の動脈内装置を瘻孔装置300、315、320に変換することができる。
【0178】
図31を参照すると、外部瘻孔装置300が示される。外部瘻孔装置301は、動脈カニューレ303及び静脈カニューレ305に接続するように設計された架橋装置307を包含する。架橋装置307により、動脈カニューレ303と静脈カニューレ305との間に通路310を設けて血液が流れることができる。架橋装置307は、架橋装置307を動脈及び静脈カニューレ303、305に固定するための係合手段309を包含する。係合手段309は、ねじ山、クリップ、スナップフィット又はその他の形態であってよく、それは当業者に理解されうる。架橋装置307の通路210は、係合点311で動脈及び静脈カニューレ303、305の通路と密封係合する。係合点311は、架橋装置に出入りする血液の漏出を止めるシールを包含する。
【0179】
アクセスポータル301が架橋装置307上に配置されて、動脈及び静脈カニューレ303、305へのアクセスを提供する。アクセスポータル301は、通路210に直接送り込まれ、カテーテルが瘻孔接続部の動脈側又は静脈側の一方又は両方に送り込まれてよい。この装置により、動脈カニューレと静脈カニューレとの間の接続を損なわずに、アクセスポータルを介したカテーテルを繰り返し挿入できる。
【0180】
図32を参照すると、動脈カニューレ303及び静脈カニューレ305に接続された代替の外部瘻孔装置315が示される。図31の実施形態と同様、通路310を備えた架橋装置313は動脈カニューレ303と静脈カニューレ305をともに接続するのに用いられる。接続装置319は、架橋装置313を動脈及び静脈カニューレ303、305に密封的に固定する。架橋装置は、動脈側アクセスポータル317及び静脈側アクセスポータル318をともに包含する。動脈アクセスポータル317は、動脈カニューレ303を通してカテーテルを動脈内に挿入するのに用いられる。静脈アクセスポータル318は、静脈カニューレ305を通してカテーテルを静脈内に挿入するのに用いられる。動脈アクセスポータル317及び静脈アクセスポータル318の頂部のシールは、動脈又は静脈を穿刺せずに架橋装置を通してカテーテルを繰り返し挿入させることができる。
【0181】
図33は、図32の動脈アクセスポータル317を示す。カテーテルは、通路321を通ってシール323を通って動脈カニューレ303内に挿入される。
【0182】
図34は代替の外部瘻孔装置320を示す。上記実施形態と同様、接続手段327は外部瘻孔装置320を動脈及び静脈カニューレ303、305に固定する。動脈アクセスポータル322はシールを包含し、動脈への挿入のためにカテーテルを受容するように構成される。静脈アクセスポータル324はシールを包含し、静脈への挿入のためにカテーテルを受容するように構成される。接続手段は、ねじを切ったねじ手段、クリップ、クランプ、又は当業者によって理解されるような他の方法の形態であってよい。動脈及び静脈アクセスポータル322、324は、カテーテルを容易に挿入及び除去できるように繰り返し用いるように配置される。一実施形態では、T動脈及び静脈アクセスポータル322、324は、貫通可能な膜を含む。
【0183】
一実施形態では、外部瘻孔装置は可撓性である。
【0184】
図35を参照すると、動脈及び静脈アクセスポータル322、324を介して動脈及び静脈にカテーテルが挿入された図34の代替の外部瘻孔装置320が示される。
【0185】
図36は、代替の外部瘻孔装置320が動脈カニューレ303と静脈カニューレ305との間の接続部から除去されて動脈333と静脈335とに繋がっているシナリオを示す。プランジャ337が接続手段327を介して静脈カニューレ305内に配置されて静脈血を塞ぐ。マルチポートアダプタ35は、カテーテル44及びバルーン45を挿入させるように動脈カニューレ303に接続される。これにより、治療的処置のために上記方法を用いて動脈の閉塞及び臓器が隔離できる。
【0186】
図37及び図38を参照すると、外部瘻孔装置350が示される。外部瘻孔装置は、内管351を包含する。
【0187】
図37の実施形態では、第1の狭窄装置353は、外部瘻孔装置350の外側ハウジング354と係合する。狭窄制御要素355は、外部瘻孔装置内を通過して、内管351と係合する。狭窄装置は、内管に力を加え、内管351の小径部分356を狭める。狭窄装置353は、内管351の左右に狭窄を加えることができる。あるいは、狭窄装置353は、内管に円周方向の狭窄を加えることができる。狭窄装置353は、ねじ、液圧、空気圧手段、又は当業者によって理解されるような他の方法で適用することができる。
【0188】
図38の実施形態では、図38に存在するのと同様の要素は同じ番号で記載される。第2の狭窄装置357は、外部瘻孔装置350の外側ハウジング354の周りに配置される。第2の狭窄装置357は、外部瘻孔装置350の狭窄領域359で外側ハウジング354と内管351をともに狭窄する。狭窄部は左右又は円周方向のいずれでもよく、ねじ、液圧、空気圧手段、又は当業者によって理解されるようなものである制御要素361で制御される。
【0189】
図38及び図39の実施形態では、狭窄内部管351により、瘻孔を通る流体の流速が制御される。
【0190】
実施形態の変更及び変形
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、設計及び構成に関する様々な追加、改変及び置換を行うことができる。
【0191】
当業者に明らかであるような改変及び変形は、本発明の範囲内にあると見なされる。本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態のいずれによっても範囲が限定されるべきではない。これらの実施形態は、例示のみを目的とする。機能的に等価な製品、配合物及び方法は、明らかに本明細書に記載の本発明の範囲内にある。
【0192】
下部及び上部等の位置の説明への言及は、図面に示された実施形態の文脈で解釈されるべきであり、本発明をその用語の文字通りの解釈に限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ当業者によって理解されるように解釈されるべきである。
【0193】
本明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、「comprise」又は「comprises」又は「comprising」等の変形は、記載された整数又は整数群を包含することを意味するが、他の整数又は整数群を排除するものではないことを意味すると理解されよう。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図9
図10
図11
図11A
図12
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図38
【外国語明細書】