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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083092
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】土壌改良材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/32 20060101AFI20220527BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20220527BHJP
   C09K 17/50 20060101ALI20220527BHJP
   C09K 17/14 20060101ALI20220527BHJP
   C09K 17/42 20060101ALI20220527BHJP
   C05F 17/00 20200101ALI20220527BHJP
【FI】
C09K17/32 H
C09K17/02 H
C09K17/50 H
C09K17/14 H
C09K17/42 H
C05F17/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194349
(22)【出願日】2020-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】519368585
【氏名又は名称】株式会社ダイセン
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】神谷 成章
【テーマコード(参考)】
4H026
4H061
【Fターム(参考)】
4H026AA01
4H026AA08
4H026AA10
4H026AB03
4H061CC11
4H061DD14
4H061EE43
4H061EE64
4H061EE66
4H061GG49
4H061HH11
(57)【要約】
【課題】製造工程が簡素かつ容易であり、植物の生育に対して非常に有効な土壌改良材の製造方法を提供すること。
【解決手段】土壌改良材の製造方法は、少なくともバーク材と微生物とケイ素含有材料とを含む土壌改良材用原料6に対して、太陽光を付与できる環境下で酸素を含む気体A1、A2を供給し、土壌改良材用原料6中の微生物を活性化させ、バーク材を発酵させると共にその発酵熱により炭化させる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌改良材の製造方法であって、
少なくともバーク材と微生物とケイ素含有材料とを含む土壌改良材用原料に対して、光エネルギーを付与できる環境下で酸素を含む気体を供給し、前記土壌改良材用原料中の前記微生物を活性化させ、前記バーク材を発酵させると共にその発酵熱により炭化させる、土壌改良材の製造方法。
【請求項2】
前記土壌改良材用原料に対して、前記土壌改良材用原料内を通過するように、酸素を含む気体を供給する、請求項1に記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項3】
前記土壌改良材用原料に対して、イオン化した酸素を含む第1の気体を供給する第1の工程と、前記土壌改良材用原料に対して、酸素を含み、前記第1の気体とは異なる第2の気体を供給する第2の工程と、を含む、請求項1又は2に記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、前記土壌改良材用原料に対して、前記第1の気体を第1の期間供給し、前記第2の工程では、前記土壌改良材用原料に対して、前記第2の気体を前記第1の期間よりも長い第2の期間供給する、請求項3に記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項5】
前記ケイ素含有材料は、珪石及び珪砂のうち少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の土壌改良材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の生育のための農業用の肥料や土壌改良材が知られている。植物は、土壌から栄養分を吸収して生育する。そのため、肥料や土壌改良材には、植物の生育に必要な成分である「必須元素」が含まれている。また、肥料や土壌改良材には、「必須元素」の他に、植物の生育を助ける成分である「有用元素」が含まれている。
【0003】
この「有用元素」のうち、「ケイ素(Si)」は、イネ科の植物の生育に非常に有効であることが知られている。また、近年、「ケイ素」は、イネ科の植物だけではなく、それ以外の植物の生育にも効果があると考えられている。農業用の土壌改良材として、「ケイ素」を含有する各種土壌改良材が開示されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2001-181073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の「ケイ素」を含有する肥料や土壌改良材は、単に無機物であるケイ素含有材料を添加しているだけである。そのため、植物がこのような肥料や土壌改良材を施用した土壌から有用元素である「ケイ素」を吸収することが容易ではなく、植物の生育に対して十分に効果があるとは言えなかった。
【0006】
本発明は、製造工程が簡素かつ容易であり、植物の生育に対して非常に有効な土壌改良材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様である土壌改良材の製造方法は、少なくともバーク材と微生物とケイ素含有材料とを含む土壌改良材用原料に対して、光エネルギーを付与できる環境下で酸素を含む気体を供給し、土壌改良材用原料中の微生物を活性化させ、バーク材を発酵させると共にその発酵熱により炭化させる。
【0008】
上記土壌改良材の製造方法によれば、土壌改良材用原料に対して、光エネルギー及び酸素を含む気体を供給することにより、土壌改良材用原料中の微生物を十分に活性化させることができる。そのため、活性化した微生物によってバーク材を発酵させ、その発酵熱(微生物の発熱)によって十分に炭化させることができる。
【0009】
これにより、得られる土壌改良材は、植物の生育に対して非常に有効なものとなる。この理由としては、予め土壌改良材用原料に含まれている「ケイ素」やその「ケイ素」を含む土壌改良材用原料を用いた土壌改良材の製造過程において炭化した有機物等の作用により、植物が土壌改良材を施用した土壌から「ケイ素」を吸収しやすくなり、植物の生育を効果的に助けるものと考えられる。
【0010】
また、上記土壌改良材の製造方法は、上述したように、土壌改良材用原料に対して、光エネルギー及び酸素を含む気体を供給することにより、微生物を活性化させる。そして、活性化した微生物によってバーク材を発酵させ、その発酵の際に生じる発酵熱(微生物の発熱)を利用してバーク材を炭化させる。そのため、製造工程が非常に簡素かつ容易である。また、微生物の活性化やバーク材の発酵及び炭化のための加熱装置等を必要とせず、製造のためのエネルギーやコストを低減することができる。
【0011】
上記土壌改良材の製造方法において、土壌改良材用原料に対して、土壌改良材用原料内を通過するように、酸素を含む気体を供給してもよい。この場合には、土壌改良材用原料中の微生物をより十分に活性化させ、バーク材の発酵や発酵熱による炭化を促進させることができる。
【0012】
また、土壌改良材用原料に対して、イオン化した酸素を含む第1の気体を供給する第1の工程と、土壌改良材用原料に対して、酸素を含み、第1の気体とは異なる第2の気体を供給する第2の工程と、を含んでもよい。この場合には、第1の工程において、イオン化した酸素を含む第1の気体を供給することで電子の不安定状態を作り、土壌改良材用原料の微振動によって微生物の活性温度まで加熱することができる。これにより、土壌改良材用原料中の微生物を迅速に活性化させることができる。また、第2の工程において、活性化した微生物によってバーク材を発酵させ、その発酵熱によってバーク材を炭化させることができる。また、バーク材の発酵及び炭化の均一化を図り、乾燥も行うことができる。
【0013】
また、第1の工程では、土壌改良材用原料に対して、第1の気体を第1の期間供給し、第2の工程では、土壌改良材用原料に対して、第2の気体を第1の期間よりも長い第2の期間供給してもよい。この場合には、第1の工程において、土壌改良材用原料中の微生物を迅速に活性化させ、第2の工程において、活性化した微生物によってバーク材を十分に発酵させ、その発酵熱によってバーク材を十分に炭化させることができる。
【0014】
また、ケイ素含有材料は、珪石及び珪砂のうち少なくとも一方を含んでもよい。この場合には、ケイ素(Si)を十分に含有し、植物の育成に対して非常に有効な土壌改良材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】土壌改良材の製造装置の概略を示す説明図である。
図2】土壌改良材の製造方法における第1の工程を示す説明図である。
図3】土壌改良材の製造方法における第2の工程を示す説明図である。
図4】土壌改良材の製造方法における第3の工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、製造装置1は、土壌改良材を製造するための装置である。土壌改良材は、土壌に施用することにより、土の状態を良くし、植物の生育に適した環境を整える材料である。
【0017】
製造装置1は、土壌改良材を製造するプラント2を備えている。プラント2は、底部21と、側壁部22と、屋根部23とを備えている。プラント2内には、底部21と側壁部22と屋根部23とにより囲まれた内部空間24が形成されている。
【0018】
屋根部23は、プラント2内に太陽光を取り込めるように、太陽光を透過可能な材料で構成されている。また、側壁部22も、プラント2内に太陽光を取り込めるように、少なくとも一部が太陽光を透過可能な材料で構成されている。
【0019】
また、側壁部22の上部には、プラント2内を換気するための換気ファン25及び換気口26が設けられている。換気ファン25を作動させて回すことにより、プラント2内の空気を外部に排出すると共に、換気口26からプラント2内に新しい空気を導入することができる。
【0020】
プラント2の外部には、第1給気ブロワー31が設けられている。第1給気ブロワー31は、外部から空気を取り込んでプラント2内に供給するための送風機である。第1給気ブロワー31とプラント2との間には、第1給気ブロワー31からプラント2内に供給する空気を流通させる第1供給管41が設けられている。
【0021】
第1供給管41の一端側は、第1給気ブロワー31に接続されている。第1供給管41の他端側は、プラント2の底部21に接続されている。プラント2の底部21において、第1供給管41の他端側に設けられた複数の供給口411が開口している。第1供給管41の途中には、第1供給管41を流通する空気中の酸素をイオン化するためのイオン発生装置5が設けられている。イオン発生装置5としては、従来公知のイオン発生装置を用いることができる。
【0022】
また、プラント2の外部には、第2給気ブロワー32が設けられている。第2給気ブロワー32は、外部から空気を取り込んでプラント2内に供給するための送風機である。第2給気ブロワー32とプラント2との間には、第2給気ブロワー32からプラント2内に供給する空気を流通させる第2供給管42が設けられている。
【0023】
第2供給管42の一端側は、第2給気ブロワー32に接続されている。第2供給管42の他端側は、プラント2の内部空間24に接続されている。プラント2の内部空間24に設けられた給排気部27内には、第2供給管42の他端側に設けられた供給口421が開口している。
【0024】
また、プラント2には、プラント2内から外部に排出する空気を流通させる排出管43が設けられている。排出管43の一端側は、外部に開口している。排出管43の他端側は、プラント2の内部空間24に接続されている。プラント2の内部空間24に設けられた給排気部27内には、排出管43の他端側に設けられた排出口431が開口している。
【0025】
次に、本実施形態の土壌改良材の製造方法について説明する。
まず、バーク材と微生物群とを混ぜ合わせ、中間混合物を得る。中間混合物におけるバーク材と微生物群との混合比は、質量比で2:1とした。その後、中間混合物を約4週間放置して寝かせる。
【0026】
バーク材は、樹皮(バーク)により構成されている材料である。具体的には、樹皮を粉砕して作成した材料である。バーク材は、一緒に混ぜ合わせる微生物を増殖させるのに好適な材料である。
【0027】
微生物群は、好光性及び好熱性の双方を備えている微生物を含んでいる。好光性及び好熱性の微生物としては、例えば、光合成細菌のうち好熱性を備えている微生物を用いることができる。また、微生物群は、少なくとも、好気性を備えている微生物を含んでいる。
【0028】
次に、中間混合物とミネラル成分材料とケイ素含有材料とを混ぜ合わせ、土壌改良材用原料を得る。土壌改良材用原料における中間混合物とミネラル成分材料とケイ素含有材料との混合比は、質量比で4:1:1とした。また、土壌改良材用原料の水分量は、70質量%以下(好ましくは45~65質量%)とした。
【0029】
ミネラル成分材料は、植物の生育のための栄養素となるミネラル成分を含む材料である。ミネラル成分としては、カルシウム(石灰)、マグネシウム(苦土)、鉄等が挙げられる。本実施形態では、ミネラル成分材料として、マグネシウム、カルシウム、鉄等のミネラル成分が含まれる穀物、土等を用いた。
【0030】
ケイ素含有材料は、植物の生育を助ける成分である有用元素の1つである「ケイ素」を含有する材料である。本実施形態では、ケイ素含有材料として珪石を用いた。珪石は、ケイ酸(SiO)を主成分とする石英片岩である。
【0031】
次に、図2に示すように、土壌改良材用原料6を製造装置1のプラント2内(内部空間24)に入れる。土壌改良材用原料6は、その一部がプラント2の給排気部27内に入り込む高さまで積み上げる。土壌改良材用原料6の積み上げ高さは、約2.5~4mとした。
【0032】
プラント2内には、側壁部22及び屋根部23を介して、太陽光が取り込まれる。そのため、プラント2内の土壌改良材用原料6に対して、具体的には土壌改良材用原料6中の微生物に対して、太陽光による光エネルギーが付与される環境となっている。
【0033】
次に、第1給気ブロワー31を作動させる。第1給気ブロワー31の作動により、外部から第1給気ブロワー31に取り込んだ空気A1が第1供給管41を介してプラント2内に供給される。
【0034】
このとき、第1供給管41内を流通する空気A1が第1供給管41の途中に設けられたイオン発生装置5を通過することにより、空気A1中の酸素をイオン化させる。よって、イオン化した酸素(酸素イオン:O2-)を含む空気A1(第1の気体)がプラント2内に供給される。
【0035】
具体的には、プラント2の底部21に配置された第1供給管41の供給口411からプラント2内に供給された空気A1は、土壌改良材用原料6内を下から上に向かって通過する。すなわち、土壌改良材用原料6に対して、土壌改良材用原料6内を通過するように、空気A1を供給する。
【0036】
土壌改良材用原料6に対して、イオン化した酸素を含む空気A1を供給することにより、電子の不安定状態を作り、土壌改良材用原料6の微振動によって微生物の活性温度まで迅速に加熱する。ここでは、土壌改良材用原料6を40~100℃(好ましくは50~70℃)に加熱した。これにより、土壌改良材用原料6中の微生物を迅速に活性化させる。
【0037】
本実施形態では、第1給気ブロワー31を作動させる期間を約1週間とした。すなわち、土壌改良材用原料6に対して、イオン化した酸素を含む空気A1を供給する工程(第1の工程)を約1週間継続して行う。その後、第1給気ブロワー31を停止する。
【0038】
次に、図3に示すように、第2給気ブロワー32を作動させる。第2給気ブロワー32の作動により、外部から第2給気ブロワー32に取り込んだ、酸素を含む空気A2(第2気体)が第2供給管42を介してプラント2内に供給される。なお、酸素を含む空気A2は、通常の空気である。
【0039】
また、第2給気ブロワー32の作動により、外部から第2給気ブロワー32に取り込んだ空気A2が第2供給管42を介してプラント2内に供給されると共に、プラント2内に供給される空気A2の流れを利用して、プラント2内の空気が排出管43を介して外部に排出される。
【0040】
具体的には、プラント2の給排気部27内に配置された第2供給管42の供給口421からプラント2内に供給された空気A2は、土壌改良材用原料6内を上から下へ、また下から上へと循環するように通過する。すなわち、土壌改良材用原料6に対して、土壌改良材用原料6内を循環して通過するように、空気A2を供給する。
【0041】
そして、土壌改良材用原料6内を循環するように通過した空気等を含むプラント2内の空気は、プラント2の給排気部27内に配置された排出管43の排出口431から排出される。プラント2内から排出された空気A3は、排出管43を介して外部に排出される。
【0042】
土壌改良材用原料6に対して、酸素を含む空気A2を供給することにより、微生物を活性化した状態で、かつ、土壌改良材用原料6を40~100℃(好ましくは50~70℃)に維持した状態で、微生物によってバーク材を分解し、発酵させる。そして、バーク材を発酵させる際に生じる発酵熱(微生物の発熱)を利用して、バーク材を炭化させる。また、バーク材の発酵及び炭化を均一化させ、乾燥も行う。
【0043】
本実施形態では、第2給気ブロワー32を作動させる期間を約1か月間とした。すなわち、土壌改良材用原料6に対して、酸素を含む空気A2を供給する工程(第2の工程)を約1か月間継続して行う。その後、第2給気ブロワー32を停止する。
【0044】
次に、図4に示すように、プラント2の換気ファン25を作動させる。換気ファン25を回すことにより、プラント2内の余分な水分を空気A4と共に外部に排出すると共に、換気口26からプラント2内に新しい空気A5を導入する。このように、プラント2内の換気を行うことにより、プラント2内の余分な水分、特に土壌改良材用原料6に含まれる水分を放出し、土壌改良材用原料6をさらに乾燥させる。
【0045】
本実施形態では、土壌改良材用原料6を乾燥させる工程(第3の工程)を、土壌改良材用原料6が所望の水分量となるまで行う。なお、第2の工程終了後に、土壌改良材用原料6が所望の水分量となっていれば、第3の工程を行う必要はない。その後、換気ファン25を停止する。以上により、土壌改良材を得る。
【0046】
本実施形態で得られた土壌改良材には、窒素、リン酸、カリウム(加里)の三要素のほか、カルシウム(石灰)、マグネシウム(苦土)、鉄等の微量要素が含まれている。また、土壌改良材にはケイ素(Si)が含まれており、土壌改良材におけるケイ素の含有量は30質量%前後であった。また、土壌改良材の水分量は10質量%以下であった。
【0047】
また、本実施形態の土壌改良材を施用した土壌で植物(例えば、きゅうり、トマト、白菜、キャベツ、ブロッコリー、かぼちゃ、落花生、なす、ピーマン、すいか等)を生育したところ、従来の土壌改良材(特にケイ素を含有した土壌改良材)を施用した土壌で植物を生育した場合と比べて、植物の生育(伸長)スピードが速く、植物の根、茎、葉等の生育具合も良いことが確認できた。
【0048】
次に、本実施形態の土壌改良材の製造方法における作用効果について説明する。
本実施形態の土壌改良材の製造方法によれば、土壌改良材用原料6に対して、光エネルギー(太陽光)及び酸素を含む気体(空気A1、空気A2)を供給することにより、土壌改良材用原料6中の微生物を十分に活性化させることができる。そのため、活性化した微生物によってバーク材を発酵させ、その発酵熱(微生物の発熱)によって十分に炭化させることができる。
【0049】
これにより、得られる土壌改良材は、植物の生育に対して非常に有効なものとなる。この理由としては、予め土壌改良材用原料6に含まれている「ケイ素」やその「ケイ素」を含む土壌改良材用原料6を用いた土壌改良材の製造過程において炭化した有機物等の作用により、植物が土壌改良材を施用した土壌から「ケイ素」を吸収しやすくなり、植物の生育を効果的に助けるものと考えられる。
【0050】
また、上記土壌改良材の製造方法は、上述したように、土壌改良材用原料6に対して、光エネルギー(太陽光)及び酸素を含む気体(空気A1、空気A2)を供給することにより、微生物を活性化させる。そして、活性化した微生物によってバーク材を発酵させ、その発酵の際に生じる発酵熱(微生物の発熱)を利用してバーク材を炭化させる。そのため、製造工程が非常に簡素かつ容易である。また、微生物の活性化やバーク材の炭化のための加熱装置等を必要とせず、製造のためのエネルギーやコストを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態の土壌改良材の製造方法において、土壌改良材用原料6に対して、土壌改良材用原料6内を通過するように、酸素を含む気体(空気A1、空気A2)を供給する。そのため、土壌改良材用原料6中の微生物をより十分に活性化させ、バーク材の発酵や発酵熱による炭化を促進させることができる。
【0052】
また、土壌改良材用原料6に対して、イオン化した酸素を含む空気A1(第1の気体)を供給する第1の工程と、土壌改良材用原料6に対して、酸素を含み、空気A1とは異なる空気A2(第2の気体)を供給する第2の工程と、を含む。そのため、第1の工程において、イオン化した酸素を含む空気A1(第1の気体)を供給することで電子の不安定状態を作り、土壌改良材用原料6の微振動によって微生物の活性温度まで加熱することができる。これにより、土壌改良材用原料6中の微生物を迅速に活性化させることができる。また、第2の工程において、活性化した微生物によってバーク材を発酵させ、その発酵熱によってバーク材を炭化させることができる。また、バーク材の発酵及び炭化の均一化を図り、乾燥も行うことができる。
【0053】
また、第1の工程では、土壌改良材用原料6に対して、空気A1(第1の気体)を約1週間(第1の期間)供給し、第2の工程では、土壌改良材用原料6に対して、空気A2(第2の気体)を、空気A1を供給した期間よりも長い約1か月間(第2の期間)供給する。そのため、第1の工程において、土壌改良材用原料6中の微生物を迅速に活性化させ、第2の工程において、活性化した微生物によってバーク材を十分に発酵させ、その発酵熱によってバーク材を十分に炭化させることができる。
【0054】
また、ケイ素含有材料は、珪石を含む。そのため、ケイ素(Si)を十分に含有し、植物の育成に対して非常に有効な土壌改良材が得られる。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0056】
(1)上記実施形態では、製造装置1を用いて土壌改良材を製造したが、本発明の土壌改良材の製造方法を実現することができれば、他の構成の製造装置等を用いて土壌改良材を製造することもできる。
【0057】
(2)上記実施形態では、光エネルギーとして太陽光を用いたが、例えば、光エネルギーとして従来公知の照明装置等を用いてもよい。また、光エネルギーとして、例えば、昼間は太陽光を用い、夜間は照明装置等を用いるようにしてもよい。
【0058】
(3)上記実施形態では、第1の工程において、土壌改良材用原料6に対して、イオン化した酸素を含む空気A1を供給し、第2の工程において、酸素を含む空気A2を供給したが、例えば、第2の工程において、土壌改良材用原料6をより加熱する場合等には、土壌改良材用原料6に対して、酸素を含む空気A2を供給すると共に、イオン化した酸素を含む空気A1を供給してもよい。すなわち、第1の工程を継続して行いながら、第2の工程を行ってもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、第2の工程において、活性化した微生物によってバーク材を発酵させ、その発酵熱によってバーク材を炭化させる。ここで、土壌改良材用原料6がバーク材以外の有機物を含んでいる場合には、第2の工程において、活性化した微生物によってバーク材を含む有機物を発酵させ、その発酵熱によってバーク材を含む有機物を炭化させることになる。
【0060】
(5)上記実施形態では、ケイ素含有材料として珪石を用いたが、珪石の代わりに珪砂を用いてもよいし、珪石及び珪砂の両方を用いてもよい。珪砂は、ケイ素含有材料であり、ケイ酸(SiO)を主成分とする石英の砂である。また、ケイ素含有材料としては、その他のケイ素を含有する各種材料、例えば籾殻、貝殻等を用いることができる。ケイ素含有材料に有機物が含まれる場合には、第2の工程において、ケイ素含有材料に含まれる有機物の発酵や炭化が行われる。
【0061】
(6)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【符号の説明】
【0062】
1…製造装置、2…プラント、5…イオン発生装置、6…土壌改良材用原料、31…第1給気ブロワー、32…第2給気ブロワー、41…第1供給管、42…第2供給管、43…排出管

図1
図2
図3
図4