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特開2022-83108セグメントピース、セグメントリング及びトンネル覆工体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083108
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】セグメントピース、セグメントリング及びトンネル覆工体
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20220527BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194375
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 省吾
(72)【発明者】
【氏名】崎谷 淨
(72)【発明者】
【氏名】篠田 隆作
(72)【発明者】
【氏名】小川 和花
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155GC04
2D155GD03
2D155GD05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンクリートの発生応力を低減できるセグメントピース、セグメントリング及びトンネル覆工体を提供する。
【解決手段】セグメントリングを構成するセグメントピース10であって、主としてコンクリートからなる本体部20と、本体部20の内部に埋設され、セグメントリングの周方向に延びるように配筋された複数の主筋30と、セグメントリングの径方向、且つ、セグメントリングの軸方向に延びるように配筋され、複数の主筋30を拘束する複数の配力筋40と、本体部20の周方向の端面20fから中央部に向かって内部に延びるように埋設され、棒形状に形成された複数の圧縮鋼材50と、を備え、複数の圧縮鋼材50は、径方向における内周側に配置された複数の内周側圧縮鋼材51と、外周側に配置された複数の外周側圧縮鋼材52と、の少なくともいずれか一方を有し、複数の圧縮鋼材50は、径方向において配力筋40と同等以上のかぶり厚さを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置され周方向に互いに連結されることによりトンネルの掘削面を覆う筒状に形成されたセグメントリングを構成するセグメントピースであって、
主としてコンクリートからなる本体部と、
前記本体部の内部に埋設されており、前記セグメントリングの周方向に延びるように配筋された複数の主筋と、
前記本体部の内部に埋設されており、前記セグメントリングの径方向、且つ、前記セグメントリングの軸方向に延びるように配筋され、前記複数の主筋を拘束する複数の配力筋と、
前記本体部の周方向の端面から中央部に向かって内部に延びるように埋設されており、棒形状に形成された複数の圧縮鋼材と、
を備え、
前記複数の圧縮鋼材は、
前記径方向における内周側に配置された複数の内周側圧縮鋼材と、
前記径方向における外周側に配置された複数の外周側圧縮鋼材と、
の少なくともいずれか一方を有し、
前記複数の内周側圧縮鋼材及び前記複数の外周側圧縮鋼材は、
前記径方向において前記複数の配力筋と同等以上のかぶり厚さを有しているセグメントピース。
【請求項2】
前記複数の主筋の周囲に配置された前記複数の配力筋のうち少なくとも1つの配力筋で囲まれた領域内において、
前記複数の内周側圧縮鋼材は、
前記複数の圧縮鋼材が配置できる位置の中で前記径方向における最内周に配置されており、
前記複数の外周側圧縮鋼材は、
前記複数の圧縮鋼材が配置できる位置の中で前記径方向における最外周に配置された請求項1に記載のセグメントピース。
【請求項3】
前記複数の主筋は、
前記軸方向に沿って配列され、前記径方向の最内周に配置された複数の内周側主筋と、
前記軸方向に沿って配列され、前記径方向の最外周に配置された複数の外周側主筋と、
を有し、
前記複数の内周側圧縮鋼材のそれぞれは、
前記軸方向において、少なくとも一部分が前記複数の内周側主筋同士の間に配置されており、
前記複数の外周側圧縮鋼材のそれぞれは、
前記軸方向において、少なくとも一部分が前記複数の外周側主筋同士の間に配置されている請求項1又は2に記載のセグメントピース。
【請求項4】
前記本体部の前記端面には、シール部材が配置される少なくとも1つのシール溝が形成されており、
前記シール溝は、
前記本体部の内部側に凹むように形成されていると共に、前記軸方向に延びるように形成されており、
前記複数の内周側圧縮鋼材は、
最も内周側に形成された前記シール溝よりも内周側に配置されており、
前記複数の外周側圧縮鋼材は、
最も外周側に形成された前記シール溝よりも外周側に配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項5】
前記本体部は、
前記セグメントリングの内周側の壁面を形成する内周側壁部と、
前記セグメントリングの外周側の壁面を形成する外周側壁部と、
を有し、
前記本体部の軸方向且つ径方向に沿った断面における径方向の厚さである断面厚さにおいて、
前記複数の内周側圧縮鋼材は、
前記内周側壁部から前記断面厚さの3分の1の範囲までに配置されており、
前記複数の外周側圧縮鋼材は、
前記外周側壁部から前記断面厚さの3分の1の範囲までに配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項6】
前記複数の圧縮鋼材のそれぞれは、
前記端面から延びて直線状に形成された直線部と、
前記直線部の先端部に設けられ、前記直線部の延びる方向に対して傾斜した傾斜部と、
を有する請求項1~5のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項7】
前記複数の圧縮鋼材のそれぞれは、
異形棒鋼であり、
前記複数の圧縮鋼材のそれぞれの長さは、
棒鋼径の12倍以上の長さに形成されている請求項1~6のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項8】
前記端面に配置され、平板状に形成された複数の基部を有し、
前記複数の基部はそれぞれ、
前記複数の圧縮鋼材のそれぞれと接続されている請求項1~7のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項9】
前記端面に配置され、前記軸方向に延びるように長尺かつ平板状に形成された複数の基部を有し、
前記複数の基部はそれぞれ、
前記複数の圧縮鋼材と接続されており、
前記複数の圧縮鋼材は、
前記複数の基部の長手方向に沿って配列されている請求項1~7のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項10】
前記複数の基部は、
前記端面から露出しており、前記複数の基部の露出面が防水剤によって覆われている請求項8又は9に記載のセグメントピース。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のセグメントピースを複数有し、
複数の前記セグメントピースが環状に配置され、周方向に互いに連結して形成されたセグメントリング。
【請求項12】
請求項11に記載の前記セグメントリングを複数有し、
複数の前記セグメントリングが、トンネルの延びる方向に連続して接続されたトンネル覆工体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の覆工材として用いられるセグメントピース、セグメントリング及びトンネル覆工体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地下鉄、道路トンネル、上下水道、電力、通信のとう道、共同溝などの建設工事に、シールド工法が定着している。このシールド工法では、掘削面の覆工体としてRC(Reinforced-Concrete)セグメントが用いられている。
【0003】
RCセグメントは、軸圧縮力をコンクリートと鉄筋とによって負担する。RCセグメントを構成するセグメントピースは、本体部のコンクリートの内部に主鉄筋が配置されている。しかし、従来のセグメントピースの本体部は、本体部の端部であり、セグメントピース同士が相互に連結する継手部にまで主鉄筋が延びていない。そのため、従来のセグメントピースの継手部は、コンクリートのみによって圧縮力を負担することになる。そこで、継手部に鋼材を設置するセグメントピースが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
継手部に鋼材を設置すると、継手部に作用する圧縮力をコンクリートと鋼材とによって負担することができる。そのため、継手部に鋼材が設置されたセグメントピースは、コンクリートの発生応力を低減させることができ、継手部に鋼材が設置されていない従来のセグメントピースよりも厚さを薄くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-12239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、継手部に鋼材を設置し、コンクリートと鋼材とによってコンクリートの応力負担を低減させる構造案はこれまでも存在した。しかし、実際にどのような鋼材をどの位置、あるいは、どの程度の深さにまで設置すればよいか等の詳細は無く、検証試験等も行われていないのが実情であり鋼材の設置の態様については根拠の薄いものであった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、鋼材の設置の態様を具体化することによりコンクリートの発生応力を低減できるセグメントピース、セグメントリング及びトンネル覆工体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセグメントピースは、環状に配置され周方向に互いに連結されることによりトンネルの掘削面を覆う筒状に形成されたセグメントリングを構成するセグメントピースであって、主としてコンクリートからなる本体部と、本体部の内部に埋設されており、セグメントリングの周方向に延びるように配筋された複数の主筋と、本体部の内部に埋設されており、セグメントリングの径方向、且つ、セグメントリングの軸方向に延びるように配筋され、複数の主筋を拘束する複数の配力筋と、本体部の周方向の端面から中央部に向かって内部に延びるように埋設されており、棒形状に形成された複数の圧縮鋼材と、を備え、複数の圧縮鋼材は、径方向における内周側に配置された複数の内周側圧縮鋼材と、径方向における外周側に配置された複数の外周側圧縮鋼材と、の少なくともいずれか一方を有し、複数の内周側圧縮鋼材及び複数の外周側圧縮鋼材は、径方向において複数の配力筋と同等以上のかぶり厚さを有しているものである。
【0009】
本発明に係るセグメントリングは、上記構成のセグメントピースを複数有し、複数のセグメントピースが環状に配置され、周方向に互いに連結して形成されたものである。
【0010】
本発明に係るトンネル覆工体は、上記構成のセグメントリングを複数有し、複数のセグメントリングが、トンネルの延びる方向に連続して接続されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセグメントピースは、複数の内周側圧縮鋼材及び複数の外周側圧縮鋼材が、配力筋と同等以上のかぶり厚さを有しているものである。当該構成により、セグメントリングの径方向において、圧縮鋼材がセグメントピースの端部側に配置されている。すなわち、圧縮鋼材は、セグメントリングの径方向において、セグメントピースの外側の端部に配置されることになる。セグメントピースは、主筋のように鋼材が外側の端部に配置されるほどセグメントピースの強度を確保することができるため、上記構成を有するセグメントピースは、コンクリートの発生応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るセグメントリングを軸方向に見た概念図である。
図2】実施の形態に係るセグメントリングを概念的に表した斜視図である。
図3】実施の形態に係るセグメントピースをセグメントリングの径方向に見た概念図である。
図4図3に示すセグメントピースのA-A線断面から見たセグメントピースの概念図である。
図5図3に示すセグメントピースをセグメントリングの周方向から見た側面図である。
図6】圧縮鋼材を設置していないセグメントピースの継手部の拡大図である。
図7】圧縮鋼材を設置しているセグメントピースの継手部の拡大図である。
図8】圧縮鋼材の一例を示す拡大図である。
図9】圧縮鋼材の長さと、実験値と、RC構造での理論値との関係を示す図である。
図10】圧縮鋼材長さとコンクリート応力(実験値)を示す図である。
図11】変形例のセグメントピースをセグメントリングの周方向から見た概念図である。
図12】実施の形態に係るトンネル覆工体の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に係るセグメントピース10、セグメントリング100及びトンネル覆工体200等について図面等を参照しながら説明する。なお、図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左、右、前、後、表及び裏等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0014】
実施の形態.
[セグメントリング100]
図1は、実施の形態に係るセグメントリング100を軸方向ADに見た概念図である。図2は、実施の形態に係るセグメントリング100を概念的に表した斜視図である。図1及び図2を用いてセグメントリング100について説明する。なお、図1及び図2に示す、軸方向ADは、セグメントリング100の軸方向を表しており、周方向CDは、セグメントリング100の周方向を表している。また、径方向RDは、セグメントリング100の径方向を表しており、Y1側は、セグメントリング100の内周側を表しており、Y2側は、セグメントリング100の外周側を表している。
【0015】
セグメントリング100は、シールド工法等の施工法において掘削面を覆う構造物である。セグメントリング100は、筒状に形成されている。セグメントリング100は、例えば、円筒形状に形成されているが、円筒形状に限定されるものではない。トンネル本体は、複数のセグメントリング100がトンネルの延びる方向に沿って連結されることで構築される。より詳細には、トンネル本体は、シールド工法において、トンネルの断面の1周分(1リング)ずつセグメントリング100が配置されることにより構築される。したがって、セグメントリング100は、トンネル本体において、トンネルの延びる方向の1単位を構成する。
【0016】
[セグメントピース10]
セグメントピース10は、環状に配置され周方向CDに互いに連結されることによりトンネルの掘削面を覆う筒状に形成されたセグメントリング100を構成する。セグメントリング100は、周方向CDにおいて、複数の構成要素に分割されている。この構成要素は、セグメントピース10である。セグメントピース10は、セグメントリング100の軸方向ADに見た視点において、弧状に形成されており、湾曲した形状に形成されている。複数のセグメントピース10が環状に配置され、隣接するセグメントピース10同士が互いに連結されることによりセグメントリング100が形成される。なお、セグメントピース10は、周方向CDにおいて全てのセグメントピース10が同じ大きさに形成されているとは限らない。
【0017】
図3は、実施の形態に係るセグメントピース10をセグメントリング100の径方向RDに見た概念図である。図4は、図3に示すセグメントピース10のA-A線断面から見たセグメントピース10の概念図である。図5は、図3に示すセグメントピース10をセグメントリング100の周方向CDから見た側面図である。図5は、セグメントピース10を側面から見た場合の各構成部材の位置関係を表すものである。なお、図5は、セグメントピース10の内部の構成部材を点線で表している。図6は、圧縮鋼材50を設置していないセグメントピース10Lの継手部12の拡大図である。なお、図3図6では、セグメントピース10の内部構造を明確にするために、コンクリートの内部に配置された鉄筋及び圧縮鋼材等の存在を透過させて表示している。図3図6を用いて更にセグメントピース10の構造について説明する。
【0018】
セグメントピース10は、RC構造(鉄筋コンクリート構造)である。セグメントピース10は、本体部20と、複数の主筋30と、複数の配力筋40と、複数の圧縮鋼材50とを有する。
【0019】
(本体部20)
本体部20は、主としてコンクリートからなるブロック状の構造物である。本体部20は、セグメントリング100の軸方向ADから見た視点において、円弧状に湾曲している。本体部20は、径方向RDに幅のある円弧形状の平面が、軸方向ADに連続して構成される立体の構造物である。換言すれば、本体部20は、円弧形状に湾曲した直方体である。
【0020】
本体部20は、セグメントリング100の内周側(Y1側)の壁面を形成する内周側壁部20aと、セグメントリング100の外周側(Y2側)の壁面を形成する外周側壁部20bと、を有する。内周側壁部20aは、トンネルの内部空間を形成する。外周側壁部20bは、トンネルの外周側(Y2側)の壁を構成し、トンネルの掘削面に沿って配置される側の面を構成する。
【0021】
本体部20は、セグメントリング100の軸方向ADにおいて、一方の端部の壁面を構成する軸方向端面20cと、他方の端部の壁面を構成する軸方向端面20dとを有する。軸方向端面20c及び軸方向端面20dは、トンネルの延びる方向に対する垂直断面を構成する。後述するトンネル覆工体200は、軸方向端面20cと軸方向端面20dとが当接してセグメントリング100同士が連なることによって形成される。
【0022】
本体部20は、セグメントリング100の周方向CDにおいて、一方の端部の壁面を構成する周方向端面20eと、他方の端部の壁面を構成する周方向端面20fとを有する。セグメントリング100は、周方向端面20eと周方向端面20fとが接続され、セグメントピース10同士が連なることによって形成される。
【0023】
本体部20の軸方向端面20c、軸方向端面20d、周方向端面20e及び周方向端面20fには、シール部材が配置される少なくとも1つのシール溝23が形成されている。シール溝23は、本体部20の内部側に凹むように形成されている。周方向端面20e及び周方向端面20fに形成されたシール溝23は、セグメントリング100の軸方向ADに延びるように形成されている。軸方向端面20c及び軸方向端面20dに形成されたシール溝23は、セグメントリング100の周方向CDに延びるように形成されている。本体部20は、少なくともセグメントリング100の径方向RDの外周側(Y2側)にシール溝23が形成されている。本体部20は、更にセグメントリング100の径方向RDの内周側(Y1側)にシール溝23が形成されてもよい。このシール溝23には、シール部材(図示せず)が装着される。シール部材は、例えば水膨張性のシール材であるが、水膨張性のシール材に限定されるものではない。
【0024】
(主筋30)
複数の主筋30は、主鋼材として本体部20の内部に埋設されており、セグメントリング100の周方向CDに延びるように配筋されている。主筋30は、例えば、鉄筋である。図3図5に示すセグメントピース10は、セグメントリング100の軸方向ADに沿って9本、セグメントリング100の径方向RDに沿って2本の主筋30を有しているが、主筋30の数は、当該数に限定されるものではない。
【0025】
主筋30は、少なくとも、セグメントリング100の軸方向ADに沿って配列され、径方向RDの最内周に配置された複数の内周側主筋31と、軸方向ADに沿って配列され、径方向RDの最外周に配置された複数の外周側主筋32と、を有する。
【0026】
図3及び図4に示すように、主筋30の周方向CDの長さは、本体部20の周方向CDの長さよりも短い。従って、図6のセグメントピース10Lに示すように、主筋30の両端部と、本体部20の周方向端面20e及び周方向端面20fとの間には、それぞれ間隔が設けられている。すなわち、本体部20の端部であり、セグメントピース10同士が相互に連結する継手部12には主筋30が延びていない。
【0027】
(配力筋40)
配力筋40は、本体部20の内部に埋設されており、セグメントリング100の径方向RD且つ軸方向ADに延びるように配筋され、複数の主筋30を拘束する。配力筋40は、主筋30を拘束するフープ筋であり、帯筋である。配力筋40は、内周側主筋31と外周側主筋32とを外側から囲い拘束している。配力筋40は、主筋30の延びる方向において、複数設けられている。図3図5に示すセグメントピース10は、セグメントリング100の周方向CDに沿って配力筋40を9本有しているが、配力筋40の数は、当該数に限定されるものではない。
【0028】
(圧縮鋼材50)
圧縮鋼材50は、本体部20の周方向CDの端面となる周方向端面20e及び周方向端面20fから中央部20hに向かって本体部20の内部に延びるように埋設されている。圧縮鋼材50は、本体部20の内部に補強鋼材として埋設される。セグメントリング100は、隣接するセグメントピース10同士の間で発生する圧縮力が、圧縮鋼材50に伝わり、圧縮鋼材50に伝わった力が、圧縮鋼材50から周辺のコンクリートに分散される。
【0029】
圧縮鋼材50は、棒形状に形成されている。圧縮鋼材50は、例えば、鉄筋であり、異形棒鋼である。図3図5に示すセグメントピース10は、セグメントリング100の軸方向ADに沿って8本、セグメントリング100の径方向RDに沿って2本の圧縮鋼材50を有しているが、圧縮鋼材50の数は、当該数に限定されるものではない。
【0030】
図7は、圧縮鋼材50を設置しているセグメントピース10の継手部12の拡大図である。圧縮鋼材50は、径方向RDにおける内周側(Y1側)に配置された複数の内周側圧縮鋼材51と、径方向RDにおける外周側(Y2側)に配置された複数の外周側圧縮鋼材52と、の少なくともいずれか一方を有する。
【0031】
複数の内周側圧縮鋼材51及び複数の外周側圧縮鋼材52は、径方向RDにおいて複数の配力筋40と同等以上のかぶり厚さを有している。すなわち、図7に示すように、セグメントピース10の内周側(Y1側)に配置された内周側圧縮鋼材51のかぶり厚さT1は、セグメントピース10の内周側(Y1側)における配力筋40のかぶり厚さT2と同等以上の厚さを有している。同様に、セグメントピース10の外周側(Y2側)に配置された外周側圧縮鋼材52のかぶり厚さT3は、セグメントピース10の外周側(Y2側)における配力筋40のかぶり厚さT4と同等以上の厚さを有している。
【0032】
図5に示すように、複数の主筋30の周囲に配置された複数の配力筋40のうち少なくとも1つの配力筋40で囲まれた領域内45において、複数の内周側圧縮鋼材51は、複数の圧縮鋼材50が配置できる位置の中で径方向RDにおける最内周に配置されている。同様に、複数の主筋30の周囲に配置された複数の配力筋40のうち少なくとも1つの配力筋40で囲まれた領域内45において、複数の外周側圧縮鋼材52は、複数の圧縮鋼材50が配置できる位置の中で径方向RDにおける最外周に配置されている。なお、図5において領域内45は、点線のハッチングで示された領域として示されている。
【0033】
また、図5に示すように、複数の内周側圧縮鋼材51のそれぞれは、軸方向ADにおいて、少なくとも一部分が複数の内周側主筋31同士の間に配置されている。また、複数の外周側圧縮鋼材52のそれぞれは、軸方向ADにおいて、少なくとも一部分が複数の外周側主筋32同士の間に配置されている。
【0034】
また、図5に示すように、複数の内周側圧縮鋼材51は、最も内周側(Y1側)に形成されたシール溝23よりも内周側(Y1側)に配置されている。また、複数の外周側圧縮鋼材52は、最も外周側(Y2側)に形成されたシール溝23よりも外周側(Y2側)に配置されている。圧縮鋼材50は、径方向RDにおいて可能な限り本体部20の外側の端部に配置されることが望ましいが、2つのシール溝23に隣接するように、2つのシール溝23の外側まで寄せて形成されてもよい。なお、圧縮鋼材50は、当該構成に限定されるものではない。例えば、複数の内周側圧縮鋼材51は、最も内周側(Y1側)に形成されたシール溝23よりも外周側(Y2側)に配置されてもよい。また、複数の外周側圧縮鋼材52は、最も外周側(Y2側)に形成されたシール溝23よりも内周側(Y1側)に配置されてもよい。すなわち、複数の内周側圧縮鋼材51及び複数の外周側圧縮鋼材52は、2つのシール溝23の間に配置されてもよい。
【0035】
また、図5に示すように、本体部20の軸方向AD、且つ、径方向RDに沿った断面において、本体部20の径方向RDの厚さを断面厚さSTと定義する。この場合、複数の内周側圧縮鋼材51は、内周側壁部20aから断面厚さSTの3分の1の範囲までに配置されている。また、複数の外周側圧縮鋼材52は、外周側壁部20bから断面厚さSTの3分の1の範囲までに配置されている。
【0036】
図8は、圧縮鋼材50の一例を示す拡大図である。圧縮鋼材50は、周方向端面20e又は周方向端面20fの端面から延びて直線状に形成された直線部56と、直線部56の先端部56aに設けられ、直線部56の延びる方向に対して傾斜した傾斜部57と、を有する。
【0037】
複数の圧縮鋼材50のそれぞれの長さLは、圧縮鋼材50における棒鋼径Dの12倍以上の長さに形成されている。圧縮鋼材50の長さLは、圧縮鋼材50の延びる方向に沿った長さである。そのため、圧縮鋼材50の長さLは、直線部56の長さL1と傾斜部57の長さL2との合計の長さである。圧縮鋼材50は、径の断面積によって負担できる荷重が異なるため、鉄筋径に対する倍率により圧縮鋼材50の長さLを特定することによって圧縮鉄筋が分担する力が定まり、コンクリートにかかる応力が分散する力が定まる。
【0038】
上述したように、継手部12に鋼材を設置し、コンクリートと鋼材とによってコンクリートの応力負担を低減させる構造案はこれまでも存在した。しかし、実際にどのような鋼材をどの程度の深さにまで設置すればよいか等の詳細は無く、検証試験等も行われていないのが実情であり鋼材の設置の態様については根拠の薄いものであった。今回、発明者は、圧縮鋼材50の設置長さを変えて検証試験を行った。検証試験は、コンクリートの発生応力を低減させるためにどの位の圧縮鋼材50の設置長さが必要かを検証するためのものである。なお、圧縮鋼材50の設置長さは、圧縮鋼材50の埋め込み長さでもある。
【0039】
図9は、圧縮鋼材50の長さと、実験値と、RC構造での理論値との関係を示す図である。図10は、圧縮鋼材長さとコンクリート応力(実験値と理論値)を示す図である。検証試験は、異形鉄筋の圧縮鋼材50の長さLをパラメーターとしてその有効性を確認するものとした。検証試験は、棒鋼径Dとして鉄筋径を用い、圧縮鋼材50の長さLを、鉄筋径の9倍~15倍の範囲で行った。具体的には、圧縮鋼材50の長さLを鉄筋径の9倍、12倍、15倍とした場合に、コンクリートに発生する応力を計測した。なお、検証試験は、軸圧縮力4000kN、曲げモーメント480kN・m作用時の発生応力を計測している。検証試験の結果は図9及び図10に示す通りである。
【0040】
試験結果より、圧縮鋼材50の長さLは、概ね鉄筋径の12倍以上でその効果がRC構造での理論値通りに発揮されている。したがって、検証試験の結果、発明者は、圧縮鋼材50に鉄筋を用いる場合、鉄筋径の12倍以上で、その効果が表れることを確認した。なお、検証試験は、同じ試験を2回実施し、その再現性も確認されている。
【0041】
図3図5に示すように、セグメントピース10は、複数の基部60を有してもよい。基部60は、平板状に形成されている。ただし、基部60の形状は、平板状に形成されたものに限定されない。基部60は、例えば、アングル状に形成されてもよい。
【0042】
図5に示すように、基部60は、セグメントピース10において、周方向端面20e及び周方向端面20fに露出するように配置されている。複数の基部60はそれぞれ、複数の圧縮鋼材50のそれぞれと接続されている。複数の圧縮鋼材50のそれぞれは、周方向端面20e又は周方向端面20f側の端部が基部60と接続されている。基部60と、圧縮鋼材50とは溶接によって固定されている。基部60は、圧縮鋼材50を本体部20に配置する際の位置決めに用いられ、圧縮鋼材50を本体部20のコンクリートに埋設する際の製作に用いられる。
【0043】
図11は、変形例のセグメントピース10をセグメントリング100の周方向CDから見た概念図である。変形例のセグメントピース10は、基部60Aの形状が上記に説明した基部60の形状と異なるものである。
【0044】
基部60Aは、平板状に形成されており、セグメントリング100の軸方向ADに長尺状に形成されている。複数の基部60Aはそれぞれ、複数の圧縮鋼材50と接続されている。複数の圧縮鋼材50は、周方向端面20e又は周方向端面20f側の端部が基部60Aに接続されている。複数の圧縮鋼材50は、基部60Aの長手方向に沿って配列されている。すなわち、長尺状に形成された基部60Aには、複数の圧縮鋼材50が接続されている。
【0045】
基部60及び基部60Aは、図4図5及び図8に示すように、周方向端面20e及び周方向端面20f等の端面から露出しており、基部60及び基部60Aの露出面が防水剤70によって覆われている。防水剤70は、例えば、弾性エポキシである。防水剤70は、周方向端面20e及び周方向端面20fに露出している基部60及び基部60Aを覆うように塗布される。
【0046】
[セグメントピース10の製作]
まず、本体部20の型枠が作成される。本体部20の周方向CDの端部の位置に、圧縮鋼材50が溶接された基部60をボルト等の固定具によって固定される。型枠内に、主筋30及び配力筋40によって形成された鉄筋篭が配置される。その後、型枠内にコンクリートが打設され、コンクリートが固化した後、本体部20を型枠から外すことによってセグメントピース10が形成される。
【0047】
[トンネル覆工体200]
図12は、実施の形態に係るトンネル覆工体200の概念図である。トンネル覆工体200は、セグメントリング100を複数有し、複数のセグメントリング100が、トンネルの延びる方向に連続して接続されて形成されている。トンネル覆工体200は、例えば、地下鉄、道路トンネル、上下水道、電力、通信のとう道、共同溝等を構成するトンネルを構成するために用いられる。
【0048】
[セグメントピース10の作用効果]
セグメントピース10は、複数の内周側圧縮鋼材51及び複数の外周側圧縮鋼材52が、配力筋40と同等以上のかぶり厚さを有しているものである。当該構成により、セグメントリング100の径方向RDにおいて、圧縮鋼材50は、セグメントピース10の端部側に配置されている。すなわち、圧縮鋼材50は、セグメントリング100の径方向RDにおいて、セグメントピース10の外側の端部に配置されることになる。セグメントピース10は、主筋30のように、鋼材が外側の端部に配置されるほどセグメントピース10の強度を確保することができるため、上記構成を有するセグメントピース10は、コンクリートの発生応力を低減できる。
【0049】
また、複数の内周側圧縮鋼材51は、複数の圧縮鋼材50が配置できる位置の中で径方向RDにおける最内周に配置されており、複数の外周側圧縮鋼材52は、複数の圧縮鋼材50が配置できる位置の中で径方向RDにおける最外周に配置されている。圧縮鋼材50は、セグメントピース10の外側の端部に配置されるほどセグメントピース10の強度を確保することができるため、上記構成を有するセグメントピース10は、コンクリートの発生応力を低減できる。
【0050】
また、軸方向ADにおいて、複数の内周側圧縮鋼材51のそれぞれは、少なくとも一部分が複数の内周側主筋31同士の間に配置されており、複数の外周側圧縮鋼材52のそれぞれは、少なくとも一部分が複数の外周側主筋32同士の間に配置されている。圧縮鋼材50は、セグメントピース10の外側の端部に配置されるほどセグメントピース10の強度を確保することができるため、上記構成を有するセグメントピース10は、コンクリートの発生応力を低減できる。
【0051】
また、一般的に主筋30は、コンクリートの発生応力に対応する観点から本体部20の中で最も有利な位置に配筋されている。上記構成によって、内周側圧縮鋼材51及び外周側圧縮鋼材52の少なくとも一部分は、軸方向ADにおいて主筋30と重なる位置に配置されている。すなわち、内周側圧縮鋼材51及び外周側圧縮鋼材52は、径方向RDにおいて、主筋30が配置されている位置と略等しい位置に配置されている。そのため、内周側圧縮鋼材51及び外周側圧縮鋼材52は、主筋30と同様に、コンクリートの発生応力に対応する観点から本体部20の中で最も有利な位置に配筋されている。したがって、上記構成を有するセグメントピース10は、コンクリートの発生応力を低減できる。
【0052】
また、複数の内周側圧縮鋼材51は、最も内周側に形成されたシール溝23よりも内周側に配置されており、複数の外周側圧縮鋼材52は、最も外周側に形成されたシール溝23よりも外周側に配置されている。圧縮鋼材50は、セグメントピース10の外側の端部に配置されるほどセグメントピース10の強度を確保することができるため、上記構成を有するセグメントピース10は、コンクリートの発生応力を低減できる。
【0053】
また、複数の内周側圧縮鋼材51は、内周側壁部20aから断面厚さSTの3分の1の範囲までに配置されており、複数の外周側圧縮鋼材52は、外周側壁部20bから断面厚さSTの3分の1の範囲までに配置されている。圧縮鋼材50は、セグメントピース10の外側の端部に配置されるほどセグメントピース10の強度を確保することができるため、上記構成を有するセグメントピース10は、コンクリートの発生応力を低減できる。
【0054】
また、複数の圧縮鋼材50のそれぞれは、直線状に形成された直線部56と、直線部56の先端部56aに設けられ、直線部56の延びる方向に対して傾斜した傾斜部57と、を有する。本体部20は、円弧形状に形成されており、圧縮鋼材50が直線部56のみで形成されている場合には、配力筋40と干渉する可能性がある。圧縮鋼材50は、傾斜部57を有することによって、配力筋40との干渉を避けることができる。またその結果、圧縮鋼材50は、埋め込み長さを確保することができる。
【0055】
また、複数の圧縮鋼材50のそれぞれの長さLは、棒鋼径Dの12倍以上の長さに形成されている。そのため、上述したように、RC構造での理論値に沿った効果を発揮させることができ、セグメントピース10は、コンクリートの発生する応力を低減することができる。
【0056】
また、セグメントピース10は、平板状に形成された基部60を有し、複数の圧縮鋼材50はそれぞれ基部60に接続されている。圧縮鋼材50は、基部60と接続されていることにより、セグメントピース10の作成時の位置決めが容易となり、セグメントピース10の製作性を向上させることができる。
【0057】
また、複数の圧縮鋼材50は、基部60Aに接続されており、複数の圧縮鋼材50は、基部60Aの長手方向に沿って配列されている。基部60Aは、複数の圧縮鋼材50と接続されているため、複数の圧縮鋼材50の位置決めを同時に行うことができる。そのため、基部60Aを有するセグメントピース10は、更に製作性を向上させることができる。
【0058】
また、基部60及び基部60Aは、端面から露出しており、基部60及び基部60Aの露出面が防水剤70によって覆われている。一般的に、コンクリートと鋼材との界面に水が浸透する場合がある。基部60及び基部60Aの露出面を覆うように防水剤70が塗布されることにより、水の浸透を防ぐことができる。その結果、圧縮鋼材50は、径方向RDにおいて、セグメントピース10に形成されたシール溝23よりも外側に配置することができる。
【0059】
セグメントリング100は、上記構成のセグメントピース10を有するものである。その結果、セグメントリング100は、実施の形態に係るセグメントピース10と同様の効果を得ることができる。
【0060】
トンネル覆工体200は、上記構成のセグメントリング100を有するものである。その結果、トンネル覆工体200は、実施の形態に係るセグメントピース10と同様の効果を得ることができる。
【0061】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 セグメントピース、12 継手部、20 本体部、20a 内周側壁部、20b 外周側壁部、20c 軸方向端面、20d 軸方向端面、20e 周方向端面、20f 周方向端面、20h 中央部、23 シール溝、30 主筋、31 内周側主筋、32 外周側主筋、40 配力筋、45 領域内、50 圧縮鋼材、51 内周側圧縮鋼材、52 外周側圧縮鋼材、56 直線部、56a 先端部、57 傾斜部、60 基部、60A 基部、70 防水剤、100 セグメントリング、200 トンネル覆工体、AD 軸方向、CD 周方向、D 棒鋼径、RD 径方向、ST 断面厚さ、T1 かぶり厚さ、T2 かぶり厚さ、T3 かぶり厚さ、T4 かぶり厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12