(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083137
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 9/18 20060101AFI20220527BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220527BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20220527BHJP
B60L 53/80 20190101ALI20220527BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220527BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220527BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20220527BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20220527BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220527BHJP
【FI】
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L58/20
B60L53/80
B60L7/14
H02J7/00 R
H02J7/34 B
H02J7/00 303C
H02M3/155 F
H02M7/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194412
(22)【出願日】2020-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (公開1:学会資料web配信) 論文名:Energy Regeneration System for Electric Vehicles Using DC-DC Converter with Super-capacitors(和名:スーパーキャパシタとDC-DCコンバータを組合わせて用いた電動車用エネルギー回生システム) ダウンロードURL:https://www.gakkai-web.net/p/knt/icems2020/reg/mod2.php ダウンロード開始日:令和02年11月20日 (公開2:学会) 開催名:ICEMS2020-Hamamatsu 開催日:令和02年11月24日 開催URL:https://www.icems2020.com/
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(71)【出願人】
【識別番号】519417676
【氏名又は名称】株式会社アパード
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達之
(72)【発明者】
【氏名】マハムド アブドルナビ サイド アブダラ
(72)【発明者】
【氏名】竹下 隆晴
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503BB03
5G503BB05
5G503FA03
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC13
5H125BB09
5H125BC26
5H125CB02
5H125EE08
5H125EE23
5H125EE42
5H125EE47
5H125EE48
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730DD04
5H730FD61
5H770AA02
5H770BA02
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770EA01
5H770JA11W
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】モータの力行時におけるインバータの損失を低減し、且つ、モータの回生時における蓄電装置でのエネルギの回収を確実に行わせることにより、電力変換器を有効活用できる電動車両を提供する。
【解決手段】力行及び回生可能なモータ1と、インバータ2とを有する電動車両であって、モータ1にエネルギ供給可能な第1蓄電装置4と、力行時に降圧する機能と回生時に昇圧する機能を有する電力変換器10と、第1蓄電装置4に力行時に降圧する機能を有する前記電力変換器10が接続された回路とを具備し、モータ1の力行時、電力変換器10によって第1蓄電装置4の出力電圧を降圧し、第1蓄電装置4からインバータ2にエネルギを供給するとともに、モータ1の回生時、電力変換器10によってインバータ2の直流電圧を昇圧し、第1蓄電装置4で回生エネルギを回収するものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
力行及び回生可能なモータと、
直流電流から交流電流に変換可能なインバータと、
を有する電動車両であって、
前記モータにエネルギ供給可能な蓄電装置と、
力行時に降圧する機能と回生時に昇圧する機能を有する電力変換器と、
前記蓄電装置に力行時に降圧する機能を有する前記電力変換器が接続された回路と、
を具備し、前記モータの力行時、前記電力変換器によって前記蓄電装置の出力電圧を降圧し、前記蓄電装置から前記インバータにエネルギを供給するとともに、前記モータの回生時、前記電力変換器によって前記インバータの直流電圧を昇圧し、前記蓄電装置で回生エネルギを回収することを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記蓄電装置は、高電圧型の特性を有する第1蓄電装置であって、
低電圧型の特性を有する第2蓄電装置と、
前記第2蓄電装置を電源として作動する補助装置と、
を具備し、前記回路の前記電力変換器には、前記インバータと並列になるように、前記第2蓄電装置と前記補助装置が接続されるとともに、前記第1蓄電装置から第2蓄電装置の充電時、前記第1蓄電装置の出力電圧を降圧し、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置にエネルギを供給することを特徴とする請求項1記載の電動車両。
【請求項3】
前記第1蓄電装置は、車両に対して脱着可能とされるとともに、車両の走行を可能にするスタートスイッチを具備し、前記スタートスイッチがオフ状態、且つ、前記第2蓄電装置が充電可能のとき、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置にエネルギを供給することを特徴とする請求項2記載の電動車両。
【請求項4】
前記モータを制御して駆動輪の駆動トルクを調整可能なアクセル操作手段と、車両の走行を可能にするスタートスイッチとを具備し、アクセル操作手段を操作しない状態、且つ、前記スタートスイッチがオン状態、且つ、前記モータの回転数が所定の回転数以下のとき、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置にエネルギを供給することを特徴とする請求項2記載の電動車両。
【請求項5】
前記モータの力行時に前記第1蓄電装置の出力電圧を降圧する場合、前記第2蓄電装置の電圧以上になるように、前記第1蓄電装置の出力電圧を降圧し、前記第1蓄電装置から前記インバータにエネルギを供給することを特徴とする請求項2~4の何れか1つに記載の電動車両。
【請求項6】
前記モータの回生時に前記インバータの直流電圧が前記第2蓄電装置の電圧より高くなるモータ回転数以上で前記インバータの直流電圧を昇圧し、前記第1蓄電装置でエネルギを回収することを特徴とする請求項2~5の何れか1つに記載の電動車両。
【請求項7】
前記インバータの電流制御時、前記インバータの直流電圧を前記モータの回転数に応じて制御可能とされるとともに、前記モータの回転数が所定の回転数以下の場合、前記モータの回転数が低いほど前記インバータの直流電圧を低く制御することを特徴とする請求項1~6の何れか1つに記載の電動車両。
【請求項8】
前記インバータの電流制御時、前記モータの回転数が所定の回転数以下の場合、前記インバータの直流電圧をモータ線間電圧の波高値に応じて制御をすることを特徴とする請求項1~7の何れか1つに記載の電動車両。
【請求項9】
前記第1蓄電装置は、高電圧リチウムイオン電池又は高電圧ニッケル水素電池から成り、前記第2蓄電装置は、低電圧リチウムイオン電池、低電圧ニッケル水素電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又は鉛蓄電池の何れかであることを特徴とする請求項2~8の何れか1つに記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力行及び回生可能なモータと当該モータにエネルギ供給可能な蓄電装置とを具備した電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
力行及び回生可能なモータと当該モータにエネルギ供給可能な蓄電装置とを具備し、モータの駆動力で推力を得るとともに、駆動輪の制動トルクを調整して蓄電装置にエネルギを回収可能な電動車両として、例えば特許文献1に記載されたものが挙げられる。かかる電動車両によれば、制動時に回収したエネルギを蓄電装置(電池)に蓄電させて力行時に駆動エネルギとして使用することができる。また、例えば特許文献2には、必要電力が閾値未満である場合、蓄電装置の出力電圧を降圧することにより、低出力時のインバータにおける損失を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-84780号公報
【特許文献2】特開2019-118241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術2においては、モータの力行時は、蓄電装置の出力電圧を降圧することにより、低出力時のインバータにおける損失を低減させることができるものの、蓄電装置の出力電圧を降圧する電力変換器の追加が必要となり、製造コストが嵩んでしまうという不具合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、モータの力行時におけるインバータの損失を低減し、且つ、モータの回生時における蓄電装置でのエネルギの回収を確実に行わせることにより、追加された電力変換器を有効活用することができる電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、力行及び回生可能なモータと、直流電流から交流電流に変換可能なインバータとを有する電動車両であって、前記モータにエネルギ供給可能な蓄電装置と、力行時に降圧する機能と回生時に昇圧する機能を有する電力変換器と、前記蓄電装置に力行時に降圧する機能を有する前記電力変換器が接続された回路とを具備し、前記モータの力行時、前記電力変換器によって前記蓄電装置の出力電圧を降圧し、前記蓄電装置から前記インバータにエネルギを供給するとともに、前記モータの回生時、前記電力変換器によって前記インバータの直流電圧を昇圧し、前記蓄電装置で回生エネルギを回収することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動車両において、前記蓄電装置は、高電圧型の特性を有する第1蓄電装置であって、低電圧型の特性を有する第2蓄電装置と、前記第2蓄電装置を電源として作動する補助装置とを具備し、前記回路の前記電力変換器には、前記インバータと並列になるように、前記第2蓄電装置と前記補助装置が接続されるとともに、前記第1蓄電装置から第2蓄電装置の充電時、前記第1蓄電装置の出力電圧を降圧し、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置にエネルギを供給することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電動車両において、前記第1蓄電装置は、車両に対して脱着可能とされるとともに、車両の走行を可能にするスタートスイッチを具備し、前記スタートスイッチがオフ状態、且つ、前記第2蓄電装置が充電可能のとき、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置にエネルギを供給することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の電動車両において、前記モータを制御して駆動輪の駆動トルクを調整可能なアクセル操作手段と、車両の走行を可能にするスタートスイッチとを具備し、アクセル操作手段を操作しない状態、且つ、前記スタートスイッチがオン状態、且つ、前記モータの回転数が所定の回転数以下のとき、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置にエネルギを供給することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項2~4の何れか1つに記載の電動車両において、前記モータの力行時に前記第1蓄電装置の出力電圧を降圧する場合、前記第2蓄電装置の電圧以上になるように、前記第1蓄電装置の出力電圧を降圧し、前記第1蓄電装置から前記インバータにエネルギを供給することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項2~5の何れか1つに記載の電動車両において、前記モータの回生時に前記インバータの直流電圧が前記第2蓄電装置の電圧より高くなるモータ回転数以上で前記インバータの直流電圧を昇圧し、前記第1蓄電装置でエネルギを回収することを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1~6の何れか1つに記載の電動車両において、前記インバータの電流制御時、前記インバータの直流電圧を前記モータの回転数に応じて制御可能とされるとともに、前記モータの回転数が所定の回転数以下の場合、前記モータの回転数が低いほど前記インバータの直流電圧を低く制御することを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項1~7の何れか1つに記載の電動車両において、前記インバータの電流制御時、前記モータの回転数が所定の回転数以下の場合、前記インバータ
の直流電圧をモータ線間電圧の波高値に応じて制御することを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項2~8の何れか1つに記載の電動車両において、前記第1蓄電装置は、高電圧リチウムイオン電池又は高電圧ニッケル水素電池から成り、前記第2蓄電装置は、低電圧リチウムイオン電池、低電圧ニッケル水素電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又は鉛蓄電池の何れかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モータの力行時、電力変換器によって蓄電装置の出力電圧を降圧し、蓄電装置からインバータにエネルギを供給するとともに、モータの回生時、電力変換器によってインバータの直流電圧を昇圧し、蓄電装置で回生エネルギを回収するので、モータの力行時におけるインバータの損失を低減し、且つ、モータの回生時における蓄電装置でのエネルギの回収を確実に行わせることにより、電力変換器を有効活用できるとともに、製造コストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動車両を示す模式図
【
図5】同電動車両の電力制御の全体を示すタイムチャート
【
図6】同電動車両のメイン制御を示すフローチャート
【
図7】同電動車両の要求特性(駆動輪の車両要求)を示すグラフ
【
図8】同電動車両の要求特性(駆動輪のモータ要求)を示すグラフ
【
図9】同電動車両の要求特性(従動輪の車両要求)を示すグラフ
【
図10】同電動車両の要求特性(従動輪のブレーキ要求)を示すグラフ
【
図11】同電動車両の要求処理制御を示すフローチャート
【
図12】同電動車両の運転者要求テーブル(テーブル1)を示すグラフ
【
図13】同電動車両の運転者要求テーブル(テーブル2)を示すグラフ
【
図14】同電動車両の運転者要求テーブル(テーブル3)を示すグラフ
【
図15】同電動車両の運転者要求テーブル(テーブル4)を示すグラフ
【
図16】同電動車両の電力制御のモータ制御を示すフローチャート
【
図18】同電動車両の電圧要求テーブル(PWMの場合のテーブルA)を示すグラフ
【
図19】同電動車両の電圧要求テーブル(PWMの場合のテーブルB)を示すグラフ
【
図20】同電動車両の電圧要求テーブル(モータ線間電圧波高値依存型の場合のテーブルA)を示すグラフ
【
図21】同電動車両の電圧要求テーブル(モータ線間電圧波高値依存型の場合のテーブルB)を示すグラフ
【
図22】他の実施形態に係る電動車両のモータ線間電圧波高値依存型の動作例を示すタイムチャート
【
図23】同電動車両の第1蓄電装置の蓄電状態を示すグラフ
【
図24】同電動車両の第2蓄電装置の蓄電状態を示すグラフ
【
図25】同電動車両の蓄電装置の組み合わせを示す表
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る電動車両は、モータの駆動力により走行可能な自動二輪車等の鞍乗り型車両から成るもので、
図1~4に示すように、モータ1と、インバータ2と、メカブレーキ(3a、3b)と、第1蓄電装置4と、第2蓄電装置5と、アクセル操作手段6と、メカブレーキ操作手段7と、回生ブレーキ操作手段8と、電力変換器10と、ECU11と、スタートスイッチ12と、第2蓄電装置5を電源として作動するモニタ13(補助装置)とを主に具備している。
【0018】
モータ1(Motor)は、エネルギ供給により駆動力を得るための電磁モータから成り、
図2、3に示すように、インバータ2を介して電力変換器10及び第1蓄電装置4と電気的に接続可能とされ、力行及び回生可能とされている。インバータ2(DC-AC Inverter)は、直流電流から交流電流に変換可能なもので、本実施形態においては、第1蓄電装置4の直流電流を交流電流に変換してモータ1に供給可能とされている。
【0019】
メカブレーキは、ディスクブレーキやドラムブレーキ等のエネルギを放出して制動可能な制動装置から成り、駆動輪Taの運動エネルギを放出して制動する駆動輪メカブレーキ3aと、従動輪Tbの運動エネルギを放出して制動する従動輪メカブレーキ3bとを有して構成されている。これら駆動輪メカブレーキ3a及び従動輪メカブレーキ3bは、ブレーキアクチュエータ9を介してメカブレーキ操作手段7と接続されている。
【0020】
かかるメカブレーキ操作手段7は、メカブレーキ(従動輪メカブレーキ3b)を制御して制動トルクを調整可能な部品(本実施形態においては、ハンドルバーの右側端部に取り付けられた操作レバー)から成り、その操作量に応じてメカブレーキ制御部17(
図4参照)がブレーキアクチュエータ9を作動させ、従動輪メカブレーキ3bを動作させ得るよう構成されている。
【0021】
アクセル操作手段6は、モータ1を制御して駆動輪Taの駆動トルクを調整可能な部品(本実施形態においては、ハンドルバーの右側端部に取り付けられたアクセルグリップ)から成り、
図4に示すように、その操作量に応じてインバータ制御部15によりトルク要求を推定してモータ1を作動させることにより、所望の駆動力を得るよう構成されている。なお、インバータ制御部15は、ECU11に形成された制御部の一つである。
【0022】
蓄電装置は、モータ1にエネルギを供給可能なもので、本実施形態においては、モータにエネルギ供給可能な第1蓄電装置4の他、第2蓄電装置5を有して構成されている。第1蓄電装置4は、高電圧型の特性を有する蓄電装置から成り、
図25に示すように、例えば高電圧リチウムイオン電池又は高電圧ニッケル水素電池を使用することができる。第2蓄電装置5は、低電圧型の特性を有する蓄電池から成り、
図25に示すように、例えば低電圧リチウムイオン電池、低電圧ニッケル水素電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又は鉛蓄電池の何れかを使用することができる。
【0023】
回生ブレーキ操作手段8は、モータ1を制御して、駆動輪Taの制動トルクを調整し、蓄電装置(第1蓄電装置4)にエネルギを回収可能な部品(本実施形態においては、ハンドルバーの左側端部に取り付けられた操作レバー)から成り、その操作量に応じてモータ1の回生を行わせて所望の制動力が得られるよう構成されている。かかるモータ1の回生により、第1蓄電装置4にエネルギを回収することができる。
【0024】
電力変換器10は、モータ1の力行時(モータ1へのエネルギ供給時)に電圧を降圧する機能とモータ1の回生時(モータ1からのエネルギ回収時)に電圧を昇圧する機能を有するもので、
図2、3に示すように、電気回路における第1蓄電装置4及びインバータ2の間に接続されている。より具体的には、電力変換器10は、
図2に示すように、MOSFET等から成るスイッチS1、S2及び整流器としてのダイオードを有する2つの半導体スイッチ素子10a、10bと、リアクトル10c(コイル)とを有して構成されている。
【0025】
そして、本実施形態に係る電力変換器10によれば、半導体スイッチ素子10a、10bのスイッチS1、S2を高速スイッチング(duty制御)することにより、モータ1の力行時(
図3において右側に向かって電流が流れるとき)には、リアクトル10cが半導体スイッチ素子10a、10bの下流側に位置するため、電圧を降圧し得るとともに、モータ1の回生時(
図3において左側に向かって電流が流れるとき)には、リアクトル10cが半導体スイッチ素子10a、10bの上流側に位置するため、電圧を昇圧し得るようになっている。
【0026】
より具体的には、本実施形態においては、
図2に示すように、蓄電装置(第1蓄電装置4)に電力変換器10が接続され、電力変換器10のリアクトルにインバータ2が接続された回路を有しており、モータ1の力行時に電力変換器10によって第1蓄電装置4の出力電圧(Vdc)を降圧し、蓄電装置(第1蓄電装置4)からインバータ2にエネルギを供給するとともに、モータ1の回生時、電力変換器10によってインバータ2の直流電圧(Vinv)を昇圧し、蓄電装置(第1蓄電装置4)で回生エネルギを回収するよう構成されている。
【0027】
また、本実施形態においては、
図2に示すように、回路の電力変換器10には、インバータ2と並列になるように、第2蓄電装置5とモニタ13(補助装置)が接続されるとともに、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5の充電時、第1蓄電装置4の出力電圧を降圧し、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5にエネルギを供給するよう構成されている。また、蓄電装置10と第2蓄電装置5との間には、半導体スイッチ素子14が直列に接続されている。この半導体スイッチ素子14は、半導体スイッチ素子10a、10bと同様、MOSFETにて構成されたスイッチS3と、整流器としてのダイオードを有している。かかる回路には、電力変換器10がオフ時にオン状態とされるスイッチSaが形成されるとともに、安定化のためのコンデンサCa、Cbが接続されている。
【0028】
ECU11は、入力された運転者の要求に応じてモータ1等を制御するためのもので、
図4に示すように、インバータ制御部15、回路制御部16及びメカブレーキ制御部17を有するとともに、インバータ2、電力変換器10、第1蓄電装置4、第2蓄電装置5、モニタ13(補助装置)及びブレーキアクチュエータ9と接続されている。また、第1蓄電装置4及び第2蓄電装置5の各電圧が検出可能とされており、それら電圧に基づいて第1蓄電装置4及び第2蓄電装置5の蓄電状態をそれぞれ判断可能とされている。なお、第1蓄電装置4の蓄電状態を
図23、第2蓄電装置5の蓄電状態を
図24にそれぞれ示している。
【0029】
しかるに、本実施形態においては、モータ1の力行時に第1蓄電装置4の出力電圧(Vdc)を降圧する場合、第2蓄電装置5の電圧(Vc)以上になるように、第1蓄電装置4の出力電圧を降圧し、第1蓄電装置4からインバータ2にエネルギを供給するとともに、モータ1の回生時にインバータ2の直流電圧(Vinv)が第2蓄電装置5の電圧(Vc)より高くなるモータ回転数以上でインバータ2の電圧を昇圧し、第1蓄電装置4でエネルギを回収するよう構成されている。
【0030】
スタートスイッチ12は、車両の走行を可能にする操作スイッチから成り、かかるスタートスイッチ12を操作した後、アクセル操作手段6を操作することにより、モータ1を作動させて走行し得るようになっている。モニタ13は、既述のように、第2蓄電装置5を電源として作動する車両に取り付けられた液晶モニタ等の補助装置から成り、例えば車両の状態(速度、蓄電状態又は故障の有無等)やナビゲーションシステムの地図等を表示させ得るようになっている。
【0031】
ここで、本実施形態に係る第1蓄電装置4は、車両に対して脱着可能とされた蓄電池から成り、スタートスイッチ12がオフ状態、且つ、第2蓄電装置5が充電可能のとき、第1蓄電装置4から第2蓄電装置2に充電を行うよう構成されている。また、スタートスイッチ12がオン状態、且つ、アクセル操作手段6を操作しない状態、且つ、モータ1の回転数が所定の回転数以下のとき、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5に充電を行うよう構成してもよい。
【0032】
なお、本実施形態においては、
図4に示すように、モータ1の回転数を検知するセンサから成る検知手段18を具備しており、検知手段18で検知されたモータ1の回転数が所定値以上のとき、回生ブレーキ操作手段8の操作量に応じた所定制動トルクを回生ブレーキにより発生(特に、本実施形態においては、回生ブレーキのみにより発生)するよう構成されている。また、モータ1の回生時、その所定制動トルクの最大値は、モータ1の定格トルクとされている。
【0033】
さらに、検知手段18で検知されたモータ1の回転数が所定値未満のとき、回生ブレーキ操作手段8の操作量に応じてメカブレーキ(駆動輪メカブレーキ3a)により制動トルクを発生させるようになっている。加えて、第1蓄電装置4の充電量が所定値以上のとき、回生ブレーキ操作手段8の操作量に応じて、メカブレーキ(駆動輪メカブレーキ3a)により制動トルクを発生させるよう構成されている。
【0034】
図5は、上記実施形態に係る電動車両において、スタートスイッチ12をオンした後、アクセル操作手段6及び回生ブレーキ操作手段8の操作を行った場合の各パラメータの変化を示している。特に、キャパシタ電流(Ic)及びキャパシタ容量(SOC2)は、本実施形態の第2蓄電装置5の電流及び容量、電池電流(Idc)及び電池容量(SOC1)は、本実施形態の第1蓄電池4の電流及び容量を示している。なお、同図の表における「FCCNO」(function circuit control number)は、
図4、16、17で示される「FCCNO」と対応するものである。
【0035】
次に、本実施形態に係る電動車両の制御(メイン制御)について、
図6のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、S1にて第1蓄電装置4の充電状態(Soc1)が所定下限値(
図23参照)より大きいか否か判定され、充電状態(Soc1)が所定下限値より大きいと判断されると、S2にてスタートスイッチ12がオンしたか否か判定される。そして、スタートスイッチ12がオンしたと判断されると、S3にてモニタ13が作動し、当該モニタ13にて所定の情報等を表示する。
【0036】
その後、S4にてアクセル開度が所定値より大きいか否か判定され、アクセル開度が所定値より大きいと判断されると、要求処理(S5)、モータ制御(S6)及びメカブレーキ制御(S7)が順次行われることとなる。また、S2にてスタートスイッチ12がオンしていないと判断され、S8にて第2蓄電装置5の充電状態(Soc2)が所定上限値(
図24参照)より小さいか否か判定され、充電状態(Soc2)が所定上限値より小さいと判断される、又はS4にてアクセル開度が所定値より大きくないと判断されると、S9にてモータ回転数が所定値以下であるか否か判定され、モータ回転数が所定値以下であると判断されると、S10にてFCCNO=6とした後、充電制御(S12)及びメカブレーキ制御(S7)が順次行われる。
【0037】
なお、S9にてモータ回転数が所定値以下でないと判断されると、既述の要求処理(S5)、モータ制御(S6)及びメカブレーキ制御(S7)が順次行われる。一方、S1にて充電状態(Soc1)が所定下限値より大きくないと判断される、またはS8にて充電状態(Soc2)が所定上限値より小さくないと判断されると、S11にてFCCNO=5とした後、メカブレーキ制御(S7)が行われることとなる。
【0038】
次に、本実施形態に係る電動車両の要求特性について、
図7~10に基づいて説明する。
駆動輪Taにおける駆動トルク及び制動トルクと車速との関係は、
図7に示すような特性とされ、駆動輪Taにおけるモータトルクとモータ1の回転数(ω)との関係は、
図8に示すような特性とされる。特に、
図7に示すように、高速走行の場合、駆動トルクと制動トルクは、車速に対して漸減関係となっている。なお、
図8においては、縦軸のプラス側(上半分)がアクセル操作手段6の操作量に応じた駆動トルクを示しており、縦軸のマイナス側(下半分)が回生ブレーキ操作手段8の操作量に応じた制動トルクを示している。同図中の符号Tm1は、モータ1の定格トルクを示している。
【0039】
また、従動輪Tbにおける制動トルクと車速との関係は、
図9に示すような特性とされ、従動輪Tbにおける制動トルク(メカ制動トルク(Tbmf)とモータ1の回転数(ω)との関係は、
図10に示すような特性とされる。なお、
図9、10においては、従動輪Tbの特性を示すものであるため、縦軸のマイナス側(下半分)のみの特性(制動トルク)のみが示されている。
【0040】
次に、本実施形態に係る電動車両の制御(要求処理制御)について、
図11のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、S1にて故障信号の有無に基づいてモータ1が正常か否か判定され、故障信号がなく正常であると判断された場合、S2にてアクセル操作手段6の操作の有無(アクセル操作量Apが0より大きいか否か)が判定され、アクセル操作手段6の操作があると判断されると、S4に進み、
図12に示すテーブル1に基づいてアクセル操作手段6の操作量に応じたモータトルク(Tm)が算出される。
【0041】
S4の算出の後、S7にて
図14に示すテーブル3に基づいて回生ブレーキ操作手段8の操作量に応じたメカ制動トルク(Tbmr)が算出され、続いて、S10にて、
図15に示すテーブル4に基づいてメカブレーキ操作手段7の操作量に応じたメカ制動トルク(Tbmf)が算出される。また、S2にてアクセル操作手段の操作がないと判断されると、S3にてモータ1の回生が可能か否か判定される。かかる判定は、第1蓄電装置4の蓄電状態(Soc1)が所定上限値以下(
図24参照)であり、且つ、モータの回転数がω1(
図8参照)以上である場合、モータ1の回生が可能であると判断されるものである。
【0042】
そして、S3にてモータ1の回生が可能であると判断されると、S5に進み、
図13に示すテーブル2に基づいて回生ブレーキ操作手段8の操作量に応じたモータトルク(Tm)が算出される。ここで、テーブル2に基づくモータトルク(Tm)の算出においては、モータ1の回転数が
図8で示す所定回転数(ω2)以下の場合、Tm=Tm(ω-ω1)/(ω2-ω1)なる補正が行われる。なお、S5の算出後、S8にてメカ制動トルク(Tbmr)が0に設定され、続いて、既述のS10が行われることとなる。
【0043】
一方、S1にて故障信号があると判断された場合、またはS3にてモータ1の回生が可能でないと判断された場合、S6に進み、モータトルク(Tm)=0に設定された後、S9に進み、
図14に示すテーブル3に基づいて回生ブレーキ操作手段8の操作量に応じたメカ制動トルク(Tbmr)が算出される。なお、S9の算出後、既述のS10が行われることとなる。
【0044】
次に、本実施形態に係る電動車両の制御(モータ制御)について、
図16のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、S1にて故障信号の有無に基づいてモータ1が正常か否か判定され、故障信号がなく正常であると判断された場合、S2にてアクセル操作手段6の操作の有無(アクセル操作量Apが0より大きいか否か)が判定される。そして、S2にてアクセル操作手段6の操作があると判断されると、S5にてモータ1の回転数(ω)がω3(
図18、20参照)より小さいか否か判定され、モータ1の回転数(ω)がω3より小さくない(高回転)と判断されると、S6に進み、FCCNO(function circuit control number)=1とする。
【0045】
また、S5にてモータ1の回転数(ω)がω3より小さい(低回転)と判断されると、S7に進み、FCCNO=2とする。さらに、S2にてアクセル操作手段6の操作がないと判断されると、S3にてモータ1の回生が可能か否かが判定される。かかる判定は、第1蓄電装置4の蓄電状態(Soc1)が所定上限値以下(
図23参照)であり、且つ、モータ1の回転数がω1(
図8参照)以上である場合、モータ1の回生が可能であると判断されるものである。
【0046】
S3にてモータ1の回生が可能であると判断されると、S4に進み、モータ1の回転数(ω)がω3(
図18、20参照)より大きいか否か判定され、モータ1の回転数(ω)がω3より大きい(高回転)と判断されると、S8に進み、FCCNO=3とするとともに、S5にてモータ1の回転数(ω)がω3より大きくない(低回転)と判断されると、
S9に進み、FCCNO=4とする。一方、S1にて故障信号があり故障であると判断された場合、または、S3にてモータ1の回生が可能でないと判断された場合、S10に進み、FCCNO=5とする。上記の如くFCC1~5が決定した後、S11に進み、FCCNOに応じた制御が行われ、続いて、S12にてインバータ制御が行われる。
【0047】
ここで、S11のFCCに応じた制御は、
図17の制御表に基づいて行われる。かかる制御表による制御内容について以下に説明する。
FCCNO=1、3のとき、半導体スイッチ素子10a、10bのスイッチS1、S2がオフ状態(電力変換器10がオフ状態)とされるとともに、スイッチS3がオフ状態及びスイッチSaがオン状態とされる。
【0048】
FCCNO=2のとき、半導体スイッチ素子10a、10bのスイッチS1、S2が力行時にDuty制御されて電力変換器10が第1蓄電装置の出力電圧を降圧するとともに、スイッチS3及びスイッチSaがオフ状態とされる。そして、FCCNO=2のとき、インバータ2の電流制御は、
図18に示すテーブルAに基づいて行われる。
【0049】
かかるテーブルAによれば、PWM制御でインバータ2の電流制御が行われる場合、
図18に示すように、インバータ2の直流電圧をモータ1の回転数(ω)に応じて制御可能とされるとともに、モータ1の回転数が所定の回転数(ω3)以下の場合、モータ1の回転数が低いほどインバータ2の直流電圧を低く制御することとなる。なお、後述するテーブルBについても、PWM制御でインバータ2の電流制御が行われることを前提としている。
【0050】
FCCNO=4のとき、半導体スイッチ素子10a、10bのスイッチS1、S2が回生時にDuty制御されて電力変換器10がインバータ直流電圧を昇圧するとともに、スイッチS3が及びスイッチSaがオフ状態とされる。そして、FCCNO=4のとき、インバータ2の電流制御は、
図19に示すテーブルBに基づいて行われる。
【0051】
FCCNO=5のとき、半導体スイッチ素子10a、10bのスイッチS1、S2、スイッチS3及びSaがオフ状態とされるとともに、FCCNO=6のとき、半導体スイッチ素子10a、10bのスイッチS1、S2が充電時にDuty制御されて電力変換器10が第1蓄電装置の出力電圧を降圧するとともに、スイッチS3がオン状態及びスイッチSaがオフ状態とされる。
【0052】
さらに、上記実施形態においては、テーブルA、Bを適用するにあたり、PWM(pulse width modulation:パルス幅変調)制御でインバータ2の電流制御が行われることを前提としているが、これに代えて、インバータ2の電流制御をモータ線間電圧波高値依存型制御としてもよい。すなわち、PWM制御は、所定のインバータ直流電圧に対して、スイッチング周波数の幅(パルス幅)を変える(インバータの電流流通率を変える)制御であるのに対し、モータ線間電圧波高値依存型制御は、
図20~22に示すように、前記インバータの直流電圧そのものをモータ線間電圧の波高値に応じて変える制御である。
【0053】
しかるに、モータ線間電圧波高値依存型制御でインバータ2の電流制御が行われる場合、テーブルAにおいては、
図20に示すように、モータ1の回転数が所定の回転数(ω3)以下の場合、インバータ2の直流電圧をモータ線間電圧の波高値に応じて制御する。また、テーブルBにおいては、
図21に示す制御とされる。
図22は、
図20~21のいずれかのテーブル(インバータ直流電圧とモータ線間電圧波高値が同じ電圧の場合)において電流制御した場合の、インバータ回路のスイッチ動作とモータ線間電圧とモータ線間電圧の基本波の動作例を示すタイムチャートを示す。このタイムチャートにおいて、インバータ直流電圧(Vinv)とモータ線間電圧の基本波の波高値が一致している。
【0054】
上記実施形態に係る電動車両によれば、モータ1の力行時、電力変換器10によって蓄電装置(第1蓄電装置4)の出力電圧を降圧し、第1蓄電装置4からインバータ2にエネルギを供給するとともに、モータ1の回生時、電力変換器10によってインバータ2の直流電圧を昇圧し、蓄電装置(第1蓄電装置4)で回生エネルギを回収するので、モータ1の力行時におけるインバータ2の損失を低減し、且つ、モータ1の回生時における蓄電装置(第1蓄電装置4)でのエネルギの回収を確実に行わせることにより、電力変換器10を有効活用できる。
【0055】
また、回路の電力変換器10には、インバータ2と並列になるように、第2蓄電装置5とモニタ13(補助装置)が接続されるとともに、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5の充電時、第1蓄電装置4の出力電圧を降圧し、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5にエネルギを供給するので、力行時の降圧回路と第2蓄電装置5の充電時の降圧回路とを共用させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る第1蓄電装置4は、車両に対して脱着可能とされるとともに、車両の走行を可能にするスタートスイッチ12を具備し、スタートスイッチ12がオフ状態、且つ、第2蓄電装置5が充電可能のとき、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5に充電を行うので、運転者が車両を走行させる前の状態で第2蓄電装置5に充電を行なうことにより、例えば運転中、第1蓄電装置4の蓄電残量が少なくなり、ドライブイン等の充電スタンドで第1蓄電装置4を交換した場合、車両のスタートスイッチ12がオン状態になって第2蓄電装置5の充電を開始するものに比べ、第2蓄電装置5の充電をより早く行うことができる。
【0057】
また、スタートスイッチ12がオン状態、且つ、アクセル操作手段6を操作しない状態、且つ、モータ1の回転数が所定の回転数以下のとき、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5に充電を行うようにすれば、運転中、車両が停止時に、第1蓄電装置4から第2蓄電装置5に充電を行うことができるので、運転中、車両が停止時に充電を行わないものに比べ、充電頻度が増加させることができ、第2蓄電装置5の蓄電容量を小さくすることができる。
【0058】
またさらに、モータ1の力行時に第1蓄電装置4の出力電圧を降圧する場合、第2蓄電装置5の電圧以上になるように、第1蓄電装置4の出力電圧を降圧し、第1蓄電装置4からインバータ2にエネルギを供給するので、第2蓄電装置5からモータ1に電流が流れてしまうのを防止することができる。また、モータ1の回生時にインバータ2の直流電圧が第2蓄電装置5の電圧より高くなるモータ回転数以上でインバータ2の電圧を昇圧し、第1蓄電装置4でエネルギを回収するので、第2蓄電装置5から第1蓄電装置4に電流が流れてしまうのを防止することができる。
【0059】
また、インバータ2の電流制御時、インバータ2の直流電圧をモータ1の回転数に応じて制御可能とされるとともに、モータ1の回転数が所定の回転数以下の場合、モータ1の回転数が低いほどインバータ2の直流電圧を低く制御するので、低回転時におけるインバータ2の入力直流電圧を低くすることができ、スイッチの瞬時電力を低くすることができ、低回転時のスイッチング損失を低減できる。
【0060】
さらに、インバータ2の電流制御時、モータ1の回転数が所定の回転数以下の場合、インバータ2の直流電圧をモータ線間電圧の波高値に応じて制御するので、スイッチングパターンを基本波周波数の3倍程度の低次高調波低減の固定パターンを使用できる。これにより、PWM制御(インバータ直流電圧一定でのDUTY制御)のスイッチング周波数に対し、スイッチング周波数を1/30以下の周波数とすることができ、スイッチング損失をPWM制御に比べて1/30以下とすることができる。
【0061】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば第1蓄電装置4を第2蓄電装置5より高電圧型の特性を有した他の形態の蓄電装置とし、或いは第2蓄電装置5を第1蓄電装置4より低電圧型の特性を有した他の形態の蓄電装置としてもよい。また、半導体スイッチ素子は、MOSFETに代えてIGBTとしてもよい。また、モニタ13を具備しないもの、或いはモニタ13とは異なる補助装置(第2蓄電装置5を電源として作動する他の電装品等)を接続したものであってもよく、或いはバギー等の3輪車両又は4輪車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
モータの力行時、電力変換器によって蓄電装置の出力電圧を降圧し、蓄電装置からインバータにエネルギを供給するとともに、モータの回生時、電力変換器によってインバータの直流電圧を昇圧し、蓄電装置で回生エネルギを回収する電動車両であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 モータ
2 インバータ
3a 駆動輪メカブレーキ
3b 従動輪メカブレーキ
4 第1蓄電装置(電池)
5 第2蓄電装置(キャパシタ)
6 アクセル操作手段
7 メカブレーキ操作手段
8 回生ブレーキ操作手段
9 ブレーキアクチュエータ
10 電力変換器
10a、10b 半導体スイッチ素子(MOSFET)
10c リアクトル(コイル)
11 ECU
12 スタートスイッチ
13 モニタ(補助装置)
14 半導体スイッチ素子(MOSFET)
15 インバータ制御部
16 回路制御部
17 メカブレーキ制御部
18 検知手段
Ta 駆動輪
Tb 従動輪
S3 第1スイッチ
Ca 平滑コンデンサ
Cb 平滑コンデンサ
Vdc 第一蓄電装置(電池)電圧
Vc 第二蓄電装置(キャパシタ)電圧
Vinv インバータ直流電圧
V1 S2端子平均電圧