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特開2022-83145半導体製造システムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083145
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】半導体製造システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
G01M3/16 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194433
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一行
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA38
2G067BB03
2G067BB25
2G067BB36
2G067CC04
2G067DD14
2G067DD25
2G067EE05
(57)【要約】
【課題】簡易な方式で圧力チャンバー等のシール性を検知することが可能な半導体製造システムを提供する。
【解決手段】圧力チャンバーと、圧力チャンバーを制御する制御装置とを備える。圧力チャンバーは、半導体ウェハを搬入あるいは搬出するための開口部が設けられた筐体と、開口部を密閉するための開閉ドアと、開口部に対応して筐体と開閉ドアとの間に設けられた第1のシール部材とを含む。制御装置は、筐体と開閉ドアとの間のインピーダンスを測定する測定部と、測定部の測定結果に基づいて圧力チャンバーのシール性を判定する判定部とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力チャンバーと、
前記圧力チャンバーを制御する制御装置とを備え、
前記圧力チャンバーは、
半導体ウェハを搬入あるいは搬出するための開口部が設けられた筐体と、
前記開口部を密閉するための開閉ドアと、
前記開口部に対応して前記筐体と前記開閉ドアとの間に設けられた第1のシール部材とを含み、
前記制御装置は、
前記筐体と前記開閉ドアとの間のインピーダンスを測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて前記圧力チャンバーのシール性を判定する判定部とを含む、半導体製造システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記測定部の測定結果と閾値とに基づいて前記圧力チャンバーのシール性の異常を判定する、請求項1記載の半導体製造システム。
【請求項3】
前記測定部は、TDR(Time Domain reflectometry)方式に基づいて前記筐体と前記開閉ドアとの間のインピーダンスを測定する、請求項1記載の半導体製造システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記測定部の測定結果に基づいて前記第1のシール部材の劣化状態を判定する劣化判定部をさらに含む、請求項1記載の半導体製造システム。
【請求項5】
前記開閉ドアを前記第1のシール部材に押圧するための駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、前記劣化判定部の判定結果に基づいて前記開閉ドアによる前記第1のシール部材の押圧力を調整する、請求項4記載の半導体製造システム。
【請求項6】
前記第1のシール部材は、弾性部材である、請求項1記載の半導体製造システム。
【請求項7】
前記圧力チャンバーに存在する気体を排出するための配管をさらに備え、
前記配管は、
複数の連結配管と、
前記複数の連結配管の連結部の間に設けられた第2のシール部材と、
前記連結部を締め付ける締付具とを含み、
前記制御装置は、
前記連結部のインピーダンスを測定する連結配管測定部と、
前記連結配管測定部の測定結果に基づいて前記複数の連結配管のシール性を判定する連結配管判定部とをさらに含む、請求項1記載の半導体製造システム。
【請求項8】
圧力チャンバーを備える半導体製造システムの制御方法であって、
前記圧力チャンバーは、半導体ウェハを搬入あるいは搬出するための開口部が設けられた筐体と、前記開口部を密閉するための開閉ドアと、前記開口部に対応して前記筐体と前記開閉ドアとの間に設けられた第1のシール部材とを含み、
前記筐体と前記開閉ドアとの間のインピーダンスを測定するステップと、
前記測定部の測定結果に基づいて前記圧力チャンバーのシール性を判定するステップとを備える、半導体製造システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体製造システムに関し、例えば、圧力チャンバー等のシール性を検知する半導体製造システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている圧力チャンバー等の一種である真空チャンバーのシール性の確認は、真空チャンバーを真空引きし、圧力計により到達圧力や真空引きを停止した際の圧力上昇で確認を行っている。従来の真空チャンバーのシール性の確認方法では、真空チャンバーのロードロック室等のシール材に問題がある状態で真空引きをした場合、その瞬間に内部の製品に異常が発生する可能性があった。
【0003】
一方で、特開2010-127384号公報においては、管と管との間にシール材であるパッキンを設ける技術が開示されている。当該パッキンには、圧力によって信号を出力する圧電センサーが埋め込まれており、圧電センサーの信号によりシール材のシール性の正常および異常を検知する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-127384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パッキン等のシール材そのものに圧電センサーを埋め込むためにシール材のシール性能が悪化してしまい製品に悪影響を与える可能性が高い。基本的にシール材は消耗部品であるが、圧電センサーを埋め込むことにより消耗が早くなる可能性がある。そのため、予期しないタイミングでリークが発生し、製品に影響を与えてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためのものであって、簡易な方式で圧力チャンバー等のシール性を検知することが可能な半導体製造システムおよびその制御方法を提供する。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施例によれば、圧力チャンバーと、圧力チャンバーを制御する制御装置とを備える。圧力チャンバーは、半導体ウェハを搬入あるいは搬出するための開口部が設けられた筐体と、開口部を密閉するための開閉ドアと、開口部に対応して筐体と開閉ドアとの間に設けられた第1のシール部材とを含む。制御装置は、筐体と開閉ドアとの間のインピーダンスを測定する測定部と、測定部の測定結果に基づいて圧力チャンバーのシール性を判定する判定部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
一実施例によれば、半導体製造システムは、簡易な方式で圧力チャンバーのシール性を検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に従う半導体製造システムの概要について説明する図である。
図2】実施形態に従う開閉ドア20の開閉状態を説明する図である。
図3】比較例として真空チャンバー2のシール材(Oリング16)のシール性に異常が有る場合について説明する図である。
図4】実施形態に従うシール材(Oリング16)の部分を拡大した場合を説明する図である。
図5】実施形態に従うシール材のインピーダンスを測定する場合の回路構成について説明する図である。
図6】実施形態に従うインピーダンス測定方式について説明する図である。
図7】実施形態に従うインピーダンス測定装置10により測定したインピーダンス値について説明する図である。
図8】実施形態に従うインピーダンス測定装置10により測定したインピーダンス値に従う容量値について説明する図である。
図9】実施形態に従う真空チャンバー2内の成膜処理のフローについて説明する図である。
図10】実施形態の変形例1に従う半導体製造システムの概要について説明する図である。
図11】実施形態の変形例1に従うTDR法に従うインピーダンス測定結果について説明する図である。
図12】実施形態の変形例2に従う真空配管について説明する図である。
図13】実施形態の変形例2に従う真空配管の接続部について説明する図である。
図14】実施形態の変形例2に従うTDR法に従うインピーダンス測定結果について説明する図である。
図15】実施形態の変形例3に従うシール材のシール性の経年劣化について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、実施形態に従う半導体製造システムの概要について説明する図である。図1を参照して、半導体製造システムは、一例として、圧力チャンバーの一例として真空チャンバー2と、ポンプPと、インピーダンス測定装置10と、システム全体を管理する管理装置5とを備える。
【0012】
ポンプPは、真空チャンバー2内の気体を排気して真空チャンバー2内を真空状態に設定する。真空チャンバー2は、筐体3と、開閉ドア20とを含む。筐体3は、半導体ウェハWを搬入あるいは搬出するための開口部4が設けられている。開閉ドア20は、半導体ウェハWの搬入あるいは搬出のために開閉可能に設けられており、開口部4を密閉する。また、真空チャンバー2は、開口部4に対応して筐体3と開閉ドア20との間に設けられたシール部材であるOリング16をさらに含む。インピーダンス測定装置10は、筐体3と開閉ドア20との間のインピーダンスを測定する。管理装置5は、インピーダンス測定装置10の測定結果を取得して、測定結果に基づいて半導体製造システムを制御する。
【0013】
一例として、管理装置5は、インピーダンス測定装置10の測定結果に基づいて真空チャンバー2のシール性を判定する。具体的には、管理装置5は、筐体3と開閉ドア20との間に設けられたシール材であるOリング16のシール性を解析して異常が有るか否かを判定する。
【0014】
なお、本例においては、インピーダンス測定装置10と管理装置5とはそれぞれ別体として設ける構成について説明するが当該構成に限られず、インピーダンス測定装置10は管理装置5内に設けられる構成としても良い。
【0015】
図2は、実施形態に従う開閉ドア20の開閉状態を説明する図である。図2(A)には、実施形態に従う締付機構30を駆動して開閉ドア20を真空チャンバー2の筐体3側に密着させた(開閉ドア20を閉じた)状態が示されている。図2(B)には、実施形態に従う締付機構30を駆動して開閉ドア20を真空チャンバー2の筐体3側から開放した(開閉ドア20を開いた)状態が示されている。開閉ドア20は締付機構30の軸を中心として下側に回転することにより開口部4が開いた状態となる。
【0016】
締付機構30は、開閉ドア20のシールプレート18をOリング16に押圧するための駆動部である。締付機構30を駆動することにより開閉ドア20が移動してOリング16と接触してOリング16を押圧する。
【0017】
図3は、比較例として真空チャンバー2のシール材(Oリング16)のシール性に異常が有る場合について説明する図である。図3に示されるように、真空チャンバー2のシール材(Oリング)のシール性に異常が有る場合にはポンプPにより真空状態に設定する際に、大気中のガス分子、ゴミD等が内部に侵入する可能性がある。そのために、内部の半導体ウェハWを傷つける可能性がある。
【0018】
実施形態においては、ポンプPにより真空状態に設定する前に真空チャンバー2のシール材のシール性の状態を検出する必要がある。
【0019】
図4は、実施形態に従うシール材(Oリング16)の部分を拡大した場合を説明する図である。図4に示されるように、開閉ドア20が移動してOリング16と接触してOリング16を押圧した場合に、開閉ドア20と筐体3との間にギャップが生じる。開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップは、コンデンサを形成する。
【0020】
図5は、実施形態に従うシール材のインピーダンスを測定する場合の回路構成について説明する図である。図5に示されるように、C2は、Oリング16が挟まった領域における開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップにより生じたコンデンサの容量を表す。C1およびC3は、Oリング16が挟まっていない領域における開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップにより生じたコンデンサの容量を表す。全体のコンデンサの容量は、C1+C2+C3である。
【0021】
本例においては、インピーダンス測定装置10により当該電気回路のコンデンサのインピーダンスを測定する。なお、電圧および電流のいずれを用いて測定してもよい。
【0022】
図6は、実施形態に従うインピーダンス測定方式について説明する図である。図6に示されるように、入射電圧Viと反射電圧Vrとに基づいて、反射係数ρを算出することが可能である。反射係数ρと、信号源インピーダンスZoとに基づいて負荷インピーダンスZLを算出することが可能である。本例における負荷インピーダンスZLは、開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップにより生じたコンデンサに起因するものである。
【0023】
図7は、実施形態に従うインピーダンス測定装置10により測定したインピーダンス値について説明する図である。図7に示されるように、縦軸は、負荷インピーダンスZLの虚部の値を表している。横軸は、ギャップの距離である。コンデンサのインピーダンスは、負荷インピーダンスZLの虚部の値と相関があるため虚部の値を用いている。本例に示されるように、ギャップの距離に応じて線形にインピーダンス値が変化している場合が示されている。本例は、入射電圧Viの周波数として10MHzを採用した場合が示されている。
【0024】
また、対向部面積の3%について、Cu箔を挿入する。ギャップの距離0.45mmは、0.25mmに変化するものとする。これによりインピーダンス値が大きく変化することが示されている。
【0025】
図8は、実施形態に従うインピーダンス測定装置10により測定したインピーダンス値に従う容量値について説明する図である。図8に示されるように、縦軸は、コンデンサの容量値を表している。横軸は、ギャップの距離である。本例に示されるように、ギャップの距離に応じて線形に容量値が変化している場合が示されている。本例は、入射電圧Viの周波数として50MHzを採用した場合が示されている。
【0026】
また、対向部面積の3%について、Cu箔を挿入する。ギャップの距離0.45mmは、0.25mmに変化するものとする。これによりインピーダンス値が大きく変化することが示されている。
【0027】
したがって、インピーダンス測定装置10により開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップにより生じたコンデンサのインピーダンス値を測定することにより、真空チャンバー2のシール材であるOリング16のシール性を検出することが可能である。具体的には、インピーダンス測定装置10により出力値が一定値(閾値)以上であることを検出した場合には、シール性は異常であることを検出することが可能である。一方で、インピーダンス測定装置10により出力値が一定値(閾値)未満であることを検出した場合には、シール性は正常であることを検出することが可能である。
【0028】
また、開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップに異物が混入した場合についても出力値が大きく変化するため異常を精度良く検出することが可能である。
【0029】
図9は、実施形態に従う真空チャンバー2内の成膜処理のフローについて説明する図である。図9を参照して、管理装置5は、真空チャンバー2の開閉ドア20を開ける(ステップS2)。次に、管理装置5は、半導体ウェハWを真空チャンバー2内に搬入する(ステップS4)。次に、管理装置5は、真空チャンバー2の開閉ドア20を閉める(ステップS6)。次に、管理装置5は、真空チャンバー2の開閉ドア20のシール性が正常(OK)か否かを判断する(ステップS8)。具体的には、インピーダンス測定装置10は、開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップにより生じたコンデンサのインピーダンス値を測定して、管理装置5に出力する。管理装置5は、インピーダンス測定装置10により出力値が一定値(閾値)以上であることを検出した場合には、シール性は異常であると判断する。一方で、管理装置5は、インピーダンス測定装置10により出力値が一定値(閾値)未満であることを検出した場合には、シール性は正常であると判断する。ステップS8において、管理装置5は、シール性が正常であると判断した場合(ステップS8においてYES)には、ポンプPによる真空引きを実行する(ステップS10)。次に、管理装置5は、半導体ウェハWに対する成膜処理を実行する(ステップS12)。そして、処理を終了する(エンド)。
【0030】
一方、ステップS8において、管理装置5は、真空チャンバー2のシール性が正常(OK)でない異常(NG)であると判断した場合(ステップS8においてNO)には、処理を中断する(ステップS14)。そして、処理を終了する(エンド)。
【0031】
従来の真空チャンバー2内の成膜処理の方式では、ステップS8における真空チャンバー2のシール材のシール性の異常判断はできなかった。したがって、図3で説明したように、真空チャンバー2のシール材(Oリング16)のシール性に異常が有る場合にはポンプPにより真空状態に設定する際に、大気中のガス分子、ゴミ等が内部に侵入する可能性があり、内部の半導体ウェハWを傷つける可能性があった。
【0032】
実施形態に従う方式により、ポンプPによる真空引きを実行する前に真空チャンバー2のシール材のシール性の異常判断により、判断結果に基づいて適切な処理(一例として中断処理)が可能となるため真空チャンバー2のシール材のシール性の異常に起因して半導体ウェハWを傷つけることを回避することが可能である。
【0033】
(変形例1)
上記の実施形態に従うインピーダンス測定装置10においては、一例として信号の反射係数に基づいてインピーダンスを測定する方式について説明したが、当該方式に限られず、別の方式によりインピーダンスを測定することも可能である。
【0034】
図10は、実施形態の変形例1に従う半導体製造システムの概要について説明する図である。図10を参照して、半導体製造システムは、一例として、圧力チャンバーの一例として真空チャンバー2と、ポンプPと、インピーダンス測定装置10と、システム全体を管理する管理装置5とを備える。図1の構成と比較して、インピーダンス測定装置10と開閉ドア20との間の距離を設定している点が異なる。当該距離の一例として20cmに設定している場合が示されている。具体的には、TDR(Time Domain Reflectometry)法を用いてインピーダンスを測定するようにしてもよい。TDR法は測定器の接続箇所を基準(0)として、そこからの距離に対するインピーダンスの変化を測定する手法であり、印加する高周波の周波数を振り、インピーダンスの周波数特性を測定し、逆フーリエ変換により距離軸データにおける周波数特性を時間軸データに変換して解析する手法である。TDR法には、バンドパスモード、ローパスインパルスモード、ローパスステップモードの3種類の測定方式があり、いずれの方式を採用するようにしてもよい。
【0035】
図11は、実施形態の変形例1に従うTDR法に従うインピーダンス測定結果について説明する図である。図11(A)を参照して、四角で囲まれた領域はインピーダンス測定装置10から距離20cmの位置のインピーダンスの周波数特性を表している。図11(B)を参照して、逆フーリエ変換により距離軸データから時間軸データに変換する。
【0036】
そして、本例においては、ギャップの距離を0.45mmから0.6mmに変化させた場合が示されている。縦軸は、反射の度合いを示す強度を表している。横軸は、ギャップの距離である。本例に示されるように、ギャップの距離に応じて線形に強度の特性が変化している場合が示されている。
【0037】
また、対向部面積の3%について、Cu箔を挿入する。ギャップの距離0.45mmから0.6mmに変化するものとする。これによりインピーダンス値の特性が大きく変化することが示されている。
【0038】
したがって、本方式においてもインピーダンス測定装置10により開閉ドア20の面と対向する筐体3側の面との間のギャップにより生じたコンデンサのインピーダンス値を測定することが可能である。すなわち、真空チャンバー2のシール材であるOリング16のシール性を検出することが可能である。具体的には、インピーダンス測定装置10の出力値に基づく強度が一定値(閾値)未満であることを検出した場合には、シール性は異常であることを検出することが可能である。一方で、インピーダンス測定装置10により出力値に基づく強度が一定値(閾値)以上であることを検出した場合には、シール性は正常であることを検出することが可能である。
【0039】
(変形例2)
上記においては、真空チャンバー2の開閉ドア20のシール材のシール性について検出する場合について説明したが、これに限られず他の部材においてもシール材のシール性を検出することが可能である。
【0040】
図12は、実施形態の変形例2に従う真空配管について説明する図である。図12に示されるように真空配管の接続部100,102のシール性を検出する場合に適用可能である。
【0041】
図13は、実施形態の変形例2に従う真空配管の接続部について説明する図である。図13に示されるように、真空配管の接続部102においてシール材としてOリング16Aが設けられる。接続する真空配管のフランジ同士でOリング16Aを挟み込み、絶縁板30を介してクランプ40で固定する場合が示されている。また、別の真空配管の接続部100においても同様に、シール材としてOリング16Bが設けられる。接続する真空配管のフランジ同士でOリング16Bを挟み込み、絶縁板30を介してクランプ40で固定する。
【0042】
図14は、実施形態の変形例2に従うTDR法に従うインピーダンス測定結果について説明する図である。図14を参照して、実線波形は、シール性に異常が無い場合のインピーダンス測定装置10から距離L1,L2の位置のインピーダンスの周波数特性を表している。点線波形は、距離L2の位置にシール性に異常がある場合のインピーダンス測定装置10から距離L1,L2の位置のインピーダンスの周波数特性を表している。当該図に示されるようにシール性の異常の有無に従って波形が異なる。
【0043】
したがって、TDR法に従うインピーダンス測定により、どの位置に異常が生じているかを判定することも可能である。すなわち、真空配管の複数の接続部のシール材であるOリング16A,16Bのシール性を検出することが可能である。具体的には、インピーダンス測定装置10の出力値に基づく強度が一定値(閾値)未満であることを検出した場合には、シール性は異常であることを検出することが可能である。一方で、インピーダンス測定装置10により出力値に基づく強度が一定値(閾値)以上であることを検出した場合には、シール性は正常であることを検出することが可能である。
【0044】
なお、絶縁板の代わりにアルマイト加工を施したり、セラミック溶射により絶縁加工を施すようにしてもよい。
【0045】
(変形例3)
実施形態の変形例3においては、シール材のシール性の劣化の異常を予測する場合について説明する。上記したように、シール材は経年劣化によりシール性が弱くなる。
【0046】
図15は、実施形態の変形例3に従うシール材のシール性の経年劣化について説明する図である。図15に示されるように、異常の予兆を発報するための異常予兆発報閾値を設定する。本例においては、正常代表値に対して上下7%を異常予兆発報閾値に設定する場合が示されている。また、正常代表値に対して上下10%を異常発報閾値に設定する場合が示されている。管理装置5は、取得したデータが当該正常代表値に対して上下7%を異常予兆発報閾値の範囲を超えた場合に、異常となる可能性がある旨を示す異常予兆を発報することが可能である。また、当該異常予兆の発報に従って異常となる日付を推定して出力するようにしても良い。
【0047】
管理装置5は、取得したデータが、当該正常代表値に対して上下10%の範囲を超えた場合に、異常を発報することが可能である。
【0048】
当該方式により、シール材のシール性の劣化の異常を予測することが可能である。
(その他変形例)
その他の変形例としてシール材のシール性を調整するための調整機構を設けるようにしても良い。具体的には、管理装置5からの指示に基づいて例えば開閉ドア20の押圧を調整する。一例として調整機構は、開閉ドア20の締付度合を調整する。
【0049】
管理装置5は、異常の予兆が検知される際に、調整機構に指示して開閉ドア20の押圧力を調整するように指示するようにしても良い。これにより、シール材が劣化した際に調整機構の調整により、シール材が劣化した際にも押圧力を調整することによりシール材のシール性を維持することが可能である。
【0050】
なお、上記においては、シール材としてOリングを例に挙げて説明したが、これに限られず金属材(ガスケット)等を用いることも可能である。
【0051】
以上、本開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
2 真空チャンバー、3 筐体、5 管理装置、10 インピーダンス測定装置、16 Oリング、20 開閉ドア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15