(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083152
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】加圧防排煙設備および遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
A62B 13/00 20060101AFI20220527BHJP
E06B 7/18 20060101ALI20220527BHJP
E05F 15/72 20150101ALI20220527BHJP
E06B 7/23 20060101ALN20220527BHJP
E06B 5/16 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
A62B13/00 B
E06B7/18 A
E05F15/72
E06B7/23 A
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194441
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岸上 昌史
(72)【発明者】
【氏名】山口 純一
【テーマコード(参考)】
2E036
2E052
2E185
2E239
【Fターム(参考)】
2E036BA01
2E036CA05
2E036DA16
2E036EA08
2E036EB02
2E036EB07
2E036FA10
2E036HB14
2E052AA03
2E052BA01
2E052BA05
2E052BA09
2E052EA01
2E185AA09
2E185CC61
2E239CA02
2E239CA12
2E239CA47
2E239CA66
(57)【要約】
【課題】給気設備による給気量を低減することのできる加圧防排煙設備、および、加圧防排煙設備に適用される遮蔽装置を提供する。
【解決手段】加圧防排煙設備は、隣接室15と付室13とを連絡する遮煙開口部14に扉27が設けられている。また、加圧防排煙設備は、隣接室15を排気する排気設備と、付室13に給気する給気設備と、を有する。加圧防排煙設備は、遮蔽装置30を有する。遮蔽装置30は、遮煙開口部14の遮煙開口部上辺14aと扉27の扉上辺27aとに囲まれる上部領域29を覆うことが可能な不燃性材料からなる遮蔽部32を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮煙開口部に扉を設けた加圧防排煙設備であって、
前記遮煙開口部の遮煙開口部上辺と前記扉の扉上辺とに囲まれる上部領域を覆うことが可能な不燃性材料からなる遮蔽部を有する遮蔽装置を設けたことを特徴とする加圧防排煙設備。
【請求項2】
前記遮蔽部が、前記扉の開放に応じて、前記上部領域に展開する部材で構成されることを特徴とする請求項1に記載の加圧防排煙設備。
【請求項3】
前記遮蔽装置は、給気設備の起動により前記扉上辺に係合する係合部材を有し、前記扉の開放に応じて前記係合部材が移動することで前記遮蔽部を展開することを特徴とする請求項2に記載の加圧防排煙設備。
【請求項4】
前記遮蔽部が、前記上部領域を覆う天井部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の加圧防排煙設備。
【請求項5】
遮煙開口部に扉を設けた加圧防排煙設備に用いられる遮蔽装置であって、
前記遮煙開口部を有する壁部に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に支持され、前記遮煙開口部の遮煙開口部上辺と前記扉の扉上辺とに囲まれる上部領域を覆うことが可能な不燃性材料からなる遮蔽部と、を有することを特徴とする遮蔽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧防排煙設備、および、加圧防排煙設備に用いられる遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、建物の排煙設備に代えて用いることのできる設備として加圧防排煙設備が知られている。加圧防排煙設備は、消防隊による活動を支援するために、火災が発生した場合に生ずる煙を有効に排除し、かつ、給気により加圧することによって、当該活動の拠点となる室への煙の侵入を防ぐことのできる設備である。
【0003】
加圧防排煙設備が適用される建物は、避難階段が設けられた階段室、消火活動の拠点となる室であって階段室に連絡する付室、遮煙開口部を通じて付室に連絡する隣接室、隣接室に連絡する一般室などを備えている。
【0004】
加圧防排煙設備は、一般室および隣接室を排気する排気設備と、付室に対して給気する給気設備と、を有する。一般室や隣接室での火災発生時、加圧防排煙設備は、排気設備により一般室や隣接室から煙を排出するとともに給気設備により付室を加圧することで、遮煙開口部を通じた付室への煙の侵入を抑える。
【0005】
また、
図7に示すように、加圧防排煙設備においては、隣接室101と付室102とを連絡する遮煙開口部103を開閉する扉104が設けられている。扉104は、付室102側に開閉領域を有する。給気設備による給気量は、扉104の開口幅を40cmとした場合の開口面105における通過風速が規定値以上となるように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、付室102に給気された空気の一部は、上面視において、開口面105、遮煙開口部103、および、扉104に囲まれる上部領域106を通じて遮煙開口部103へと流入する。このため、上部領域106を通過する分だけ、給気設備に必要とされる給気量を多くしなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する加圧防排煙設備は、遮煙開口部に扉を設けた加圧防排煙設備であって、前記遮煙開口部の遮煙開口部上辺と前記扉の扉上辺とに囲まれる上部領域を覆うことが可能な不燃性材料からなる遮蔽部を有する遮蔽装置を設けた。
【0009】
上記課題を解決する遮蔽装置は、遮煙開口部に扉を設けた加圧防排煙設備に用いられる遮蔽装置であって、前記遮煙開口部を有する壁部に取り付けられる取付部材と、前記取付部材に支持され、前記遮煙開口部の遮煙開口部上辺と前記扉の扉上辺とに囲まれる上部領域を覆うことが可能な不燃性材料からなる遮蔽部と、を有する。
【0010】
上記構成によれば、上部領域を通じた空気の流通量が低減することから、給気設備に必要とされる給気量を低減することができる。
上記構成においては、前記遮蔽部が、前記扉の開放に応じて、前記上部領域に展開する部材で構成されてもよい。この構成によれば、扉の開放時に、遮煙開口部における空気の流通量を低減することができる。
【0011】
上記構成において、前記遮蔽装置は、給気設備の起動により前記扉上辺に係合する係合部材を有し、前記扉の開放に応じて前記係合部材が移動することで前記遮蔽部を展開してもよい。この構成によれば、火災が発生していないときに扉の開閉に必要な操作力が大きくなることが回避される。
【0012】
上記構成においては、前記遮蔽部が、前記上部領域を覆う天井部で構成されてもよい。この構成によれば、扉の開閉にかかわらず、上部領域を覆うことが可能な状態に遮蔽部を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】加圧防排煙設備の第1実施形態の概略構成を示す図。
【
図2】遮蔽装置の第1実施形態が取り付けられた状態を示す斜視図であって、取付部材に遮蔽部が収納された状態を模式的に示す図。
【
図3】第1実施形態において、遮蔽部の展開状態を模式的に示す上面図。
【
図4】第2実施形態において、遮蔽部の展開状態を模式的に示す上面図。
【
図5】第3実施形態において、(a)遮蔽部が収納状態にある遮蔽装置の概略構成を模式的に示す側面図、(b)遮蔽部が展開状態にある遮蔽装置の概略構成を模式的に示す側面図。
【
図6】第4実施形態において、(a)遮蔽部が収納状態にある遮蔽装置の概略構成を模式的に示す斜視図、(b)遮蔽部が展開状態にある遮蔽装置の概略構成を模式的に示す斜視図。
【
図7】従来例において、加圧防排煙設備の概略構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1~
図3を参照して、加圧防排煙設備、および、加圧排煙設備に用いられる遮蔽装置の第1実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、加圧防排煙設備20が適用される建物10は、避難階段11が設けられた階段室12、消火活動の拠点となる室であって階段室12に連絡する付室13、遮煙開口部14を通じて付室13に連絡する隣接室15、隣接室15に連絡する一般室16を備えている。
【0016】
加圧防排煙設備20は、一般室16や隣接室15での火災発生時に、一般室16および隣接室15を排気する排気設備21と、付室13に対して給気する給気設備22と、を有する。
【0017】
排気設備21は、一般室16および隣接室15に設けられた排煙口23と、排煙口23を通じて一般室16および隣接室15を排気する排気機24と、を有する。排気機24は、例えば火災報知器や起動スイッチからの信号S1を受けて起動される。起動後、排気機24は、予め定められた排気量で一般室16および隣接室15を排気する。
【0018】
給気設備22は、付室13に設けられた図示されない給気口と、給気口を通じて付室13に空気を送る給気機26と、を有する。給気機26は、例えば火災報知器や起動スイッチからの信号S2を受けて起動される。起動後、給気機26は、予め定められた給気量で付室13に給気する。
【0019】
図2に示すように、隣接室15と付室13とを区画する壁17には、該壁17に形成された遮煙開口部14を開閉する扉27が設けられている。扉27は、付室13側に開閉領域を有する。給気設備22による給気量は、扉27の開口幅を40cmとした場合の開口面28における通過風速が規定値以上となるように設定される。
【0020】
加圧防排煙設備20は、遮蔽装置30を有する。遮蔽装置30は、付室13側において壁17に設置される。遮蔽装置30は、建物10の建設中に壁17に設置されてもよいし、既存の建物10の壁17に設置されてもよい。遮蔽装置30は、一般室16や隣接室15での火災発生時に、付室13の上面視において、遮煙開口部14、扉27、および、開口面28で囲まれる上部領域29を上方から覆うことが可能に構成されている。
【0021】
遮蔽装置30は、例えば火災報知器や起動スイッチからの信号S3を受けて起動される。信号S3は、遮蔽装置30用に設けられた起動スイッチの操作によって入力される構成であってもよいし、排気設備21の起動スイッチあるいは給気設備22の起動スイッチの操作に連動して入力される構成であってもよい。
【0022】
遮蔽装置30は、遮煙開口部14の上方に位置する壁部17aに取付部材31を介して取り付けられる。取付部材31は、例えば金属など、不燃性材料で形成される。取付部材31は、壁部17aにアンカーボルト等を用いて取り付けられる構成であってもよいし、壁部17aに埋め込まれている構成であってもよい。
【0023】
遮蔽装置30は、遮蔽部32を有する。遮蔽部32は、取付部材31に収納される収納状態と、上部領域29を覆うことが可能な展開状態と、を有する。
図2は、収納状態を示している。
【0024】
遮蔽装置30は、ガイド部材34、軸部材35、係合部材36を有する。ガイド部材34、軸部材35、および、係合部材36は、例えば金属など、不燃性材料で構成される。
ガイド部材34は、遮蔽部32の収納状態において、遮煙開口部14の遮煙開口部上辺14aに沿うように延びているとともに遮蔽部32を覆い隠すように配置される。軸部材35は、取付部材31に対して固定されている。軸部材35は、図示されない扉27の回転軸部の上方に配置される。軸部材35は、鉛直方向に沿う方向を回転軸としてガイド部材34の基端部を回転自在に軸支する。係合部材36は、ガイド部材34の先端部分に設けられている。係合部材36は、遮蔽装置30の起動により扉27の扉上辺27aに係合する。
【0025】
遮蔽装置30では、起動により係合部材36が扉27の扉上辺27aに係合することで扉27の開放に追従してガイド部材34が回転する。このガイド部材34の回転に応じて、すなわち、扉27の開閉に応じて、遮蔽部32が収納状態と展開状態との間で遷移する。
【0026】
図3を参照して、遮蔽部32について説明する。なお、
図3では、取付部材31を省略して示している。
図3に示すように、遮蔽部32は、複数の遮蔽板32aで構成される。各遮蔽板32aは、例えば金属や石膏ボードなどの不燃性材料で構成される。各遮蔽板32aは、板面が水平方向に沿うように配置される。各遮蔽板32aは、略三角形状の板面を有する。複数の遮蔽板32aは、収納状態において積み重なっている。各遮蔽板32aは、収納状態での上面視において、遮煙開口部14に沿うように配置される細長い形状を有する。各遮蔽板32aは、基端部が軸部材35に回転自在に軸支されている。最下層に位置する遮蔽板32aは、取付部材31に対して連結されている。最上層に位置する遮蔽板32aは、ガイド部材34に対して連結されている。最下層と最上層との間に位置する遮蔽板32aは、当該遮蔽板32aの上層側の遮蔽板32aと当該遮蔽板32aの下層側の遮蔽板32aとに対して、一部が重畳した状態を維持したまま軸部材35を中心として回転可能に連結されている。
【0027】
なお、
図3では、遮蔽部32の構成を模式的に示している。そのため、
図3に示す遮蔽部32は5枚の遮蔽板32aで構成されているが、遮蔽部は、より多くの遮蔽板32aで構成し、より多段で折り畳むことにより、収納状態における占有スペースを小さくすることが好ましい。また、最上層に位置する遮蔽板32aが取付部材31に連結され、かつ、最下層に位置する遮蔽板32aがガイド部材34に連結される構成であってもよい。
【0028】
(作用)
遮蔽装置30においては、起動後に係合部材36が扉27に係合する。そして、扉27の開閉に合わせてガイド部材34が移動すると、遮蔽部32は、ガイド部材34に連結された遮蔽板32aから順に扉27の扉上辺27aを追従するように軸部材35を中心に回転する。すなわち、遮蔽部32は、扉27が閉鎖状態から開放状態に操作されると、収納状態から展開状態に遷移して上部領域29を上方から覆うことが可能な状態となる。また、遮蔽部32は、扉27が開放状態から閉鎖状態に操作されると展開状態から収納状態に遷移する。
【0029】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)遮蔽装置30は、上部領域29を遮蔽部32で覆うことが可能に構成されている。これにより、上部領域29を通じた空気の流通量が低減することから、給気設備22に必要とされる給気量を低減することができる。
【0030】
(1-2)給気設備22に必要とされる給気量が低減されることで排気設備21に必要とされる排気量も低減することができる。
(1-3)火災発生時、遮煙開口部14を通じて隣接室15から付室13に流入した煙や熱い空気は、上方に向かって移動する性質を有する。上記構成によれば、火災発生時には扉27の開閉領域の上方が遮蔽部32によって覆われるため、煙や熱い空気が隣接室15から付室13に流入しにくくなる。
【0031】
(1-4)遮蔽装置30は、信号S3を受けて扉27の扉上辺27aに係合する係合部材36を有している。これにより、火災が発生していないときに扉27の開閉に必要な操作力が大きくなることが回避される。
【0032】
(第2実施形態)
図4を参照して、加圧防排煙設備および遮蔽装置の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態とは遮蔽部の構成が異なる。そのため、第2実施形態においては、遮蔽部について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、遮蔽部32は、不燃膜部材32bで構成される。不燃膜部材32bは、可撓性を有する不燃性材料で構成される。不燃膜部材32bとしては、例えば、ガラス繊維に塩化ビニル樹脂をコーティングしたものを使用することができる。不燃膜部材32bは、収納状態において板面が鉛直方向に沿うように配置される複数の板状部32cで構成されている。不燃膜部材32bは、山折り部と谷折り部とが交互に配置されるように複数の板状部32cが一体化された蛇腹状の形状を有している。複数の板状部32cのうち、取付部材31側の端に位置する板状部32cは、取付部材31に連結されている。複数の板状部32cのうち、ガイド部材34側の端に位置する板状部32cは、ガイド部材34に連結されている。
【0034】
(作用)
遮蔽装置30の起動後に扉27の操作に合わせてガイド部材34が移動すると、遮蔽部32は、軸部材35を中心として、ガイド部材34に連結された板状部32cから順に扉27の扉上辺27aを追従するように移動する。すなわち、遮蔽部32は、扉27が閉鎖状態から開放状態に操作されると、収納状態から展開状態に遷移して上部領域29を上方から覆うことが可能な状態となる。また、遮蔽部32は、扉27が開放状態から閉鎖状態に操作されると展開状態から収納状態に遷移する。
【0035】
第2実施形態によれば、上記(1-1)~(1-4)に記載した効果に加えて、下記の効果を得ることができる。
(2-1)遮蔽部32は、山折り部と谷折り部とが交互に配置されるように一体化された複数の板状部32cで構成されている。これにより、遮蔽部32の構造の簡素化を図ることができる。
【0036】
(第3実施形態)
図5を参照して、加圧防排煙設備および遮蔽装置の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態とは遮蔽装置の構成が異なる。このため、第3実施形態においては、遮蔽装置について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0037】
図5(a)および
図5(b)に示すように、遮蔽装置30は、遮煙開口部14の上方に位置する壁部17aに取付部材41を介して取り付けられる。取付部材41は、例えば金属など、不燃性材料で形成される。取付部材41は、壁部17aにアンカーボルト等を用いて取り付けられる構成であってもよいし、壁部17aに埋め込まれている構成であってもよい。
【0038】
遮蔽装置30は、遮蔽部42を有する。遮蔽部42は、
図5(a)に示すように取付部材41に収納される収納状態と、
図5(b)に示すように上部領域29を覆うことが可能な展開状態と、を有する。
【0039】
遮蔽部42は、複数の遮蔽板42aで構成されている。各遮蔽板42aは、例えば金属や石膏ボードなどの不燃性材料で構成される。各遮蔽板42aは、略矩形状の板面が水平方向に沿うように配置される。各遮蔽板42aは、収納状態での上面視において遮煙開口部14に沿うように配置される細長い形状を有する。複数の遮蔽板42aは、収納状態において積み重なっている。各遮蔽板42aは、当該遮蔽板42aの上層側の遮蔽板42aと当該遮蔽板42aの下層側の遮蔽板42aとに対して、一部が重畳した状態を維持したまま取付部材41に対して進退移動可能に構成されている。遮蔽部42は、取付部材41に固定された伸縮機構43を介して取付部材41に支持されている。
【0040】
伸縮機構43は、例えば、取付部材41に内蔵されるモータ、複数の伸縮部材43a、伸縮部材43aに内蔵される動力伝達機構などで構成される。伸縮機構43は、伸縮部材43aや動力伝達機構が例えば金属などの不燃性材料で構成される。伸縮機構43は、複数の伸縮部材43aにより、取付部材41に対して伸縮自在に構成されている。伸縮機構43は、最上層に位置する遮蔽板42aが連結されているとともに、展開状態において先端部に配置される伸縮部材43aに、最下層に位置する遮蔽板42aが連結されている。
【0041】
(作用)
遮蔽装置30においては、起動後、伸縮機構43が伸張する。伸縮機構43が伸張すると、複数の遮蔽板42aは、最下層に位置する遮蔽板42aから順に取付部材41から引き出される。これにより、遮蔽部42は、収納状態から、階段状の展開状態に遷移して上部領域29を上方から覆うことが可能な天井部45を形成する。
【0042】
第3実施形態によれば、上記(1-1)~(1-3)に記載した効果に加えて、下記の効果を得ることができる。
(3-1)遮蔽装置30の起動後、遮蔽部42は、壁17からせり出す庇状の天井部45を形成する。これにより、扉27の開閉操作にかかわらず、上部領域29を覆うことが可能な状態に遮蔽部42を維持することができる。また、遮蔽装置30の起動前後において、扉27の開閉に必要な操作力が変化することが回避される。
【0043】
(第4実施形態)
図6を参照して、加圧防排煙設備および遮蔽装置の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態では、第1実施形態とは遮蔽装置の構成が異なる。このため、第4実施形態においては、遮蔽装置について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0044】
図6(a)および
図6(b)に示すように、遮蔽装置30は、遮煙開口部14の上方に位置する壁部17aに取付部材46を介して取り付けられる。取付部材46は、壁17に沿うように拡がる形状を有する。取付部材46は、例えば金属など、不燃性材料で形成される。取付部材46は、壁部17aにアンカーボルト等を用いて取り付けられる構成であってもよいし、壁部17aに埋め込まれている構成であってもよい。
【0045】
遮蔽装置30は、遮蔽部47を有する。遮蔽部47は、
図6(a)に示すように取付部材46に収納される収納状態と、
図6(b)に示すように上部領域29を覆うことが可能な展開状態と、を有する。
【0046】
遮蔽部47は、例えば金属や石膏ボードなどの不燃性材料で構成された板状の形状を有する。遮蔽部47は、収納状態において壁17に沿うように拡がっている。遮蔽部47の基端部は、取付部材41の下端部に軸支されている。遮蔽部47は、上面視において遮煙開口部14に沿うように延びる回転軸47aを中心として自重により回転可能に構成される。
【0047】
遮蔽装置30は、ロック部材48を有する。ロック部材48は、取付部材46に取り付けられる。ロック部材48は、遮蔽部47と係合することで遮蔽部47を収納状態に保持する。ロック部材48は、遮蔽装置30の起動により遮蔽部47との係合が解除されると、回転軸47aを中心とした遮蔽部47の回転を許可する。
【0048】
遮蔽装置30は、取付部材46と遮蔽部47とに連結されて展開状態において遮蔽部47を支持する支持部材49を有していてもよい。支持部材49は、例えば、取付部材46の上端部と遮蔽部47の先端部とに連結された紐材で構成することが可能である。支持部材49は、展開状態への遷移完了時における衝撃や展開状態において取付部材46と遮蔽部47との連結部分に作用する機械的な負荷を緩和する。
【0049】
(作用)
遮蔽装置30の起動後、ロック部材48との係合が解除された遮蔽部47は、自重により、回転軸47aを中心に壁17から離間するように回転する。これにより、遮蔽部47は、収納状態から展開状態に遷移して上部領域29を上方から覆うことが可能な天井部50を形成する。
【0050】
第4実施形態によれば、上記(1-1)~(1-3)に記載した効果に加えて、下記の効果を得ることができる。
(4-1)遮蔽装置30の起動後、遮蔽部47は、壁17からせり出す庇状の天井部50を形成する。これにより、扉27の開閉操作にかかわらず、上部領域29を覆うことが可能な状態に遮蔽部47を維持することができる。また、遮蔽装置30の起動前後において、扉27の開閉に必要な操作力が変化することもない。
【0051】
(4-2)遮蔽装置30は、遮蔽部47が倒れ込むように回転することで天井部を形成する。これにより、簡素な構成のもとで天井部を構成することができる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・第1および第2実施形態においては、遮蔽装置30は、起動後に扉27に係合する係合部材36を有している。これに限らず、遮蔽装置30は、扉27に係合する状態が常に維持される係合部材を有していてもよい。こうした構成によれば、扉27の開放に応じて常に展開するように遮蔽部を構成することができる。これにより、火災発生時以外においても、扉27の開放時に、遮煙開口部14における空気の流通量を低減することができる。その結果、例えば、隣接室15が空調されている場合には、その空調空気が付室13に流入することが抑えられるため、隣接室15を空調する空調設備に対する負荷を低減することができる。
【0053】
・第1および第2実施形態のように、扉27の開閉に応じて遮蔽部を展開する構成においては、例えば、扉27の扉上辺27aの位置を検出するセンサーの検出結果に基づいて、遮蔽部を展開してもよい。
【0054】
・第3および第4実施形態においては、遮蔽装置30の起動により庇状の天井部が形成される構成とした。これに限らず、遮蔽装置30を壁17に取り付けることにより、庇状の天井部が常に配置される構成であってもよい。
【0055】
・第3および第4実施形態のように天井部により上部領域29を覆う構成においては、天井部が下がり天井で構成されてもよい。
・第4実施形態において、展開状態への遮蔽部47の状態遷移は、モータなどの電動機を用いて行われてもよい。
【0056】
・第4実施形態のように1つの板状の遮蔽部47によって上部領域29を覆う構成においては、扉27の開閉領域の上方に遮蔽部47を待機させておき、遮蔽装置30の起動後に遮蔽部47を下降させることにより天井部を形成する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…建物、11…避難階段、12…階段室、13…付室、14…遮煙開口部、14a…遮煙開口部上辺、15…隣接室、16…一般室、17…壁、17a…壁部、20…加圧防排煙設備、21…排気設備、22…給気設備、23…排煙口、24…排気機、26…給気機、27…扉、27a…扉上辺、28…開口面、29…上部領域、30…遮蔽装置、31…取付部材、32…遮蔽部、32a…遮蔽板、32b…不燃膜部材、32c…板状部、34…ガイド部材、35…軸部材、36…係合部材、41…取付部材、42…遮蔽部、42a…遮蔽板、43…伸縮機構、43a…伸縮部材、45…天井部、46…取付部材、47…遮蔽部、47a…回転軸、48…ロック部材、49…支持部材、50…天井部、101…隣接室、102…付室、103…遮煙開口部、104…扉、105…開口面、106…上部領域。