(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083161
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】クライオポンプ、および、クライオポンプ用バッフルプレート
(51)【国際特許分類】
F04B 37/08 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
F04B37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194450
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】591176306
【氏名又は名称】アルバック・クライオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】関口 俊一
(72)【発明者】
【氏名】安田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】朴 文官
(72)【発明者】
【氏名】村山 吉信
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA27
3H076BB21
3H076CC51
3H076CC53
3H076CC54
(57)【要約】
【課題】排気性能を高めることを可能としたクライオポンプ、および、クライオポンプ用バッフルを提供する。
【解決手段】バッフルプレート14は、バッフルプレート14の中心14Cを含み、バッフルプレート14を貫通する第1孔14AHが形成された第1部分14Aと、バッフルプレート14の縁14Eを含み、バッフルプレート14を貫通する第2孔14BHが形成された第2部分14Bとから構成される。第2部分14Bのコンダクタンスが、第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機に接続されるクライオパネルと、
前記クライオパネルを収容する本体と、
前記本体の気体導入口に位置するバッフルプレートと、
を備えたクライオポンプであって、
前記バッフルプレートは、
前記バッフルプレートの中心を含み、前記バッフルプレートを貫通する第1孔が形成された第1部分と、
前記バッフルプレートの縁を含み、前記バッフルプレートを貫通する第2孔が形成された第2部分と、から構成され、
前記第2部分のコンダクタンスが、前記第1部分のコンダクタンスよりも大きい
クライオポンプ。
【請求項2】
前記第2部分の開口率が、前記第1部分の開口率よりも大きい
請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記第1孔および前記第2孔は円形孔であり、
前記第2孔の直径は、前記第1孔の直径よりも大きい
請求項1または2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記第2孔は、大孔と、前記大孔よりも小さい中間孔とを備え、
前記第2部分は、前記縁を含み前記大孔が形成された外周部分と、前記外周部分と前記第1部分との間に位置し、前記中間孔が形成された中間部分とを備える
請求項1から3のいずれか一項に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記第2孔は、大孔と、前記大孔よりも小さい中間孔とを備え、
前記第2部分は、前記縁を含み前記大孔が形成された外周部分と、前記外周部分と前記第1部分との間に位置し、前記中間孔が形成された中間部分とを備え、
前記バッフルプレートと対向する視点から見て、前記第1部分および前記中間部分とから構成される領域内に前記クライオパネルが位置する
請求項1から3のいずれか一項に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記バッフルプレートと対向する視点から見て、前記第1部分と前記クライオパネルとが重なり、
前記第2部分と前記クライオパネルとが重ならない
請求項1から3のいずれか一項に記載のクライオポンプ。
【請求項7】
冷凍機に接続されるクライオパネルを収容した本体の気体導入口に取り付けられるクライオポンプ用バッフルプレートであって、
前記クライオポンプ用バッフルプレートの中心を含み、前記クライオポンプ用バッフルプレートを貫通する第1孔が形成された第1部分と、
前記クライオポンプ用バッフルプレートの縁を含み、前記クライオポンプ用バッフルプレートを貫通する第2孔が形成された第2部分と、から構成され、
前記第2部分のコンダクタンスが、前記第1部分のコンダクタンスよりも大きい
クライオポンプ用バッフルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプ、および、クライオポンプが備えるクライオポンプ用バッフルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、ポンプケースと、ポンプケース内に位置する熱シールドと、熱シールド内に位置する複数のクライオパネルと、熱シールドの開口に位置するバッフルとを備えている。熱シールドは、第1シールドと第2シールドとを備えている。第1シールドおよび第2シールドは、それぞれ筒状を有している。各シールドは中心軸が一致するようにポンプケース内に位置している。第2シールドは、第1シールドよりも外側に位置し、かつ、第1シールドは、第2シールドよりもポンプケースの開口寄りに位置している。第1シールドの基端は、第2シールドの先端よりも第2シールドの基端寄りに位置している。これにより、第1シールドの基端と第2シールドの先端との間に、流体の通路が形成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したクライオポンプでは、バッフルから熱シールド内に流入した気体に加えて、第1シールドの基端と第2シールドの先端との間に形成された流路から第2シールド内に流入した気体もクライオパネルによって排気される観点では、クライオポンプの排気性能が高められる。一方で、熱シールドが1つの筒状部材から形成される場合に比べて、第1シールドの基端と第2シールドの先端によって形成される流路を介した入熱が大きくなる観点では、クライオポンプの排気性能が低くなる。そのため、クライオポンプの排気性能を高めることが可能な他の形態が求められている。
【0005】
本発明は、排気性能を高めることを可能としたクライオポンプ、および、クライオポンプ用バッフルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのクライオポンプは、冷凍機に接続されるクライオパネルと、前記クライオパネルを収容する本体と、前記本体の気体導入口に位置するバッフルプレートと、を備える。前記バッフルプレートは、前記バッフルプレートの中心を含み、前記バッフルプレートを貫通する第1孔が形成された第1部分と、前記バッフルプレートの縁を含み、前記バッフルプレートを貫通する第2孔が形成された第2部分と、から構成される。前記第2部分のコンダクタンスが、前記第1部分のコンダクタンスよりも大きい。
【0007】
上記課題を解決するためのクライオポンプ用バッフルプレートは、冷凍機に接続されるクライオパネルを収容した本体の気体導入口に取り付けられる。前記クライオポンプ用バッフルプレートの中心を含み、前記クライオポンプ用バッフルプレートを貫通する第1孔が形成された第1部分と、前記クライオポンプ用バッフルプレートの縁を含み、前記クライオポンプ用バッフルプレートを貫通する第2孔が形成された第2部分と、から構成される。前記第2部分のコンダクタンスが、前記第1部分のコンダクタンスよりも大きい。
【0008】
上記クライオポンプ、および、クライオポンプ用バッフルプレートによれば、第2部分のコンダクタンスが第1部分のコンダクタンスよりも大きいことによって、バッフルプレートの第2部分から本体内に気体が流入しやすくなる。これにより、バッフルプレートが広がる平面と対向する視点から見て、クライオパネルのうち、縁を含む部分でも凝縮気体の堆積が生じやすくなり、クライオパネルの中心を含む部分において凝縮気体の堆積が優先的に進むことが抑えられる。従って、クライオパネルにおいて凝縮気体の堆積量に偏りが生じることが抑えられる。これにより、クライオポンプの排気性能が高められる。
【0009】
上記クライオポンプにおいて、前記第2部分の開口率が、前記第1部分の開口率よりも大きくてもよい。このクライオポンプによれば、バッフルプレートにおいて、第1部分の厚さと第2部分の厚さとを異ならせる場合に比べて、第2部分のコンダクタンスを第1部分のコンダクタンスよりも大きくすることが容易である。
【0010】
上記クライオポンプにおいて、前記第1孔および前記第2孔は円形孔であり、前記第2孔の直径は、前記第1孔の直径よりも大きくてもよい。このクライオポンプによれば、第2孔の数を第1孔の数以下に抑えながら、第2部分のコンダクタンスを第1部分のコンダクタンスよりも大きくすることが可能である。そのため、バッフルプレートの加工が容易である。
【0011】
上記クライオポンプにおいて、前記第2孔は、大孔と、前記大孔よりも小さい中間孔とを備え、前記第2部分は、前記縁を含み前記大孔が形成された外周部分と、前記外周部分と前記第1部分との間に位置し、前記中間孔が形成された中間部分とを備えてもよい。
【0012】
上記クライオパネルによれば、バッフルプレートのコンダクタンスを、第1部分、中間部分、外周部分の順に大きくすることが可能である。そのため、バッフルプレートが、第2部分の全体において一様なコンダクタンスを有する場合に比べて、クライオパネルの径方向において、凝縮気体の堆積量に差が生じることが抑えられる。
【0013】
上記クライオポンプにおいて、前記第2孔は、大孔と、前記大孔よりも小さい中間孔とを備え、前記第2部分は、前記縁を含み前記大孔が形成された外周部分と、前記外周部分と前記第1部分との間に位置し、前記中間孔が形成された中間部分とを備え、前記バッフルプレートと対向する視点から見て、前記第1部分および前記中間部分とから構成される領域内に前記クライオパネルが位置してもよい。
【0014】
上記クライオポンプによれば、バッフルプレートのコンダクタンスを第1部分、中間部分、外周部分の順に大きくすることが可能である。そのため、バッフルプレートが、第2部分の全体において一様なコンダクタンスを有する場合に比べて、クライオパネルの径方向において、凝縮気体の堆積量に差が生じることが抑えられる。しかも、外周部分がクライオパネルと対向しないから、外周部分が有する大孔に起因したクライオパネルへの入熱を抑えることも可能である。
【0015】
上記クライオポンプにおいて、前記バッフルプレートと対向する視点から見て、前記第1部分と前記クライオパネルとが重なり、前記第2部分と前記クライオパネルとが重ならなくてもよい。
【0016】
上記クライオポンプによれば、クライオパネルの縁よりも外側から本体内に供給される気体の流量を大きくすることによって、クライオパネルの縁を含む部分における凝縮気体の堆積量が、クライオパネルの中心を含む部分における凝縮気体の堆積量に対して小さくなることが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態におけるクライオポンプの構造を示す断面図。
【
図2】バッフルプレートが広がる平面と対向する視点から見たバッフルプレートの形状を示す平面図。
【
図3】バッフルプレートが広がる平面と対向する視点から見たクライオポンプの構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から
図3を参照して、クライオポンプ、および、クライオポンプ用バッフルプレートの一実施形態を説明する。なお、
図1では、クライオポンプが備える本体の断面構造、および、冷凍機およびクライオパネルの端面構造が示されている。また、
図1では、図示の便宜上、冷凍機の一部のみが示されている。
【0019】
[クライオポンプ]
図1が示すように、クライオポンプ10は、冷凍機11、クライオパネル12、本体13、および、バッフルプレート14を備えている。クライオパネル12は、冷凍機11に接続されている。本体13は、クライオパネル12を収容している。本体13は、気体導入口13Aを有している。バッフルプレート14は、本体13の気体導入口13Aに位置している。
【0020】
本体13は、ポンプケース13Bと、熱シールド13Cとを備えている。ポンプケース13Bは、クライオポンプ10の内部を外部から隔てるための真空容器である。ポンプケース13Bは、熱シールド13Cを収容する第1収容部13B1と、冷凍機11を収容する第2収容部13B2とを備えている。第1収容部13B1は筒状を有している。第1収容部13B1において、一方の端部が底部によって塞がれ、かつ、他方の端部には開口13BAが位置している。
【0021】
熱シールド13Cは、ポンプケース13Bからの輻射熱からクライオパネル12を保護する。熱シールド13Cは、ポンプケース13Bとクライオパネル12との間に位置している。熱シールド13Cは、筒状を有している。熱シールド13Cにおいて、一方の端部が底部によって塞がれ、かつ、他方の端部には開口13CAが位置している。熱シールド13Cは、クライオパネル12を収容している。熱シールド13Cの開口13CAは、ポンプケース13Bの開口13BAに囲まれている。熱シールド13Cの開口13CAと、ポンプケース13Bの開口13BAとが気体導入口13Aを形成している。
【0022】
冷凍機11は、例えばギフォード・マクマホン式冷凍機である。冷凍機11は、第1シリンダー11A1、第1ステージ11A2、第2シリンダー11B1、および、第2ステージ11B2を備えている。第1シリンダー11A1は、第2シリンダー11B1に直列に接続されている。第1シリンダー11A1内には図示されない第1ディスプレーサーが位置し、かつ、第2シリンダー11B1内には図示されない第2ディスプレーサーが位置している。
【0023】
第1シリンダー11A1は、ポンプケース13Bの第2収容部13B2内に位置している。第1ステージ11A2は、第1シリンダー11A1の端部であって、第2シリンダー11B1に接続される端部に固定されている。第1ステージ11A2は、熱シールド13Cに接触し、これによって、第1ステージ11A2は、熱シールド13Cに熱的に接続されている。
【0024】
第2シリンダー11B1は、熱シールド13Cによって画定される空間内に位置している。第2シリンダー11B1のうち、第1シリンダー11A1に接続される端部とは反対側の端部に第2ステージ11B2が固定されている。第2ステージ11B2には、冷凍機11に対してクライオパネル12を接続するための取付部材11Cが接続されている。
【0025】
熱シールド13Cによって画定される空間内には、複数のクライオパネル12が位置している。各クライオパネル12は、取付部材11Cに取り付けられている。これにより、各クライオパネル12は、第2ステージ11B2に熱的に接続されている。各クライオパネル12は、板部材によって形成されている。各クライオパネル12は、円錐台状に成型されている。各クライオパネル12は、バッフルプレート14が広がる平面と対向する平面視において、各クライオパネル12の中心が同一の中心軸上に位置するように取付部材11Cに取り付けられている。
【0026】
冷凍機11は、第1ステージ11A2を例えば80K以上100K以下の範囲に含まれる所定の第1温度に冷却し、かつ、第2ステージ11B2を例えば10K以上20K以下の範囲に含まれる所定の第2温度に冷却する。上述したように、熱シールド13Cは第1ステージ11A2に熱的に接続されるから、熱シールド13Cは第1ステージ11A2と同等の温度に冷却される。クライオパネル12は取付部材11Cを介して第2ステージ11B2に接続されるから、クライオパネル12は第2ステージ11B2と同等の温度に冷却される。
【0027】
クライオポンプ10では、第1温度において凝縮する気体であって、蒸気圧が相対的に低い気体が、バッフルプレート14および熱シールド13Cによって捕捉され、これによって、当該気体は、クライオポンプ10が接続された真空槽内から排気される。また、クライオポンプ10では、第2温度において凝縮する気体であって、蒸気圧が相対的に高い気体が、クライオパネル12によって捕捉され、これによって、当該気体は、クライオポンプ10が接続された真空槽内から排気される。
【0028】
図2は、バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見たバッフルプレート14の平面構造を示している。
図2が示すように、バッフルプレート14は、第1部分14Aと第2部分14Bとから構成される。第1部分14Aは、バッフルプレート14の中心14Cを含む。第1部分14Aには、バッフルプレート14を貫通する第1孔14AHが形成されている。第1孔14AHは、バッフルプレート14の厚さ方向に沿ってバッフルプレート14を貫通する。第2部分14Bは、バッフルプレート14の縁14Eを含む。第2部分14Bには、バッフルプレート14を貫通する第2孔14BHが形成されている。第2部分14Bのコンダクタンスが、第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きい。
【0029】
第2部分14Bのコンダクタンスが第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きいことによって、バッフルプレート14の第2部分14Bから本体13内に気体が流入しやすくなる。これにより、バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、クライオパネル12のうち、縁を含む部分でも凝縮気体の堆積が生じやすくなり、クライオパネル12の中心を含む部分において凝縮気体の堆積が優先的に進むことが抑えられる。従って、クライオパネル12において凝縮気体の堆積量に偏りが生じることが抑えられる。これにより、本体13によって画定される領域において、凝縮気体を堆積させることが可能な領域が拡張されるから、クライオポンプ10の排気性能を高めることが可能である。
【0030】
なお、コンダクタンスは、流路における気体の流れやすさの指標である。流路によって接続される2つの空間での圧力差が同一である場合には、流路のコンダクタンスが大きいほど、流路を流れる気体の流量が大きくなる。コンダクタンスは、流路の太さ、長さ、流路を流れる気体の種類、および、温度などに依存する値である。
【0031】
本実施形態では、第2部分14Bの開口率が、第1部分14Aの開口率よりも大きい。これによって、第2部分14Bのコンダクタンスが、第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きい。こうしたクライオポンプ10によれば、バッフルプレート14において、第1部分14Aの厚さと第2部分14Bの厚さとを異ならせる場合に比べて、第2部分14Bのコンダクタンスを第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きくすることが容易である。また、バッフルプレート14の厚さが厚くなることが抑えられるため、本体13の容積がバッフルプレート14の厚さに起因して小さくなることが抑えられる。
【0032】
本実施形態では、第1孔14AHおよび第2孔14BHは円形孔である。すなわち、バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、第1孔14AHおよび第2孔14BHは、円形状を有する。第1孔14AHおよび第2孔14BHの各々では、円形状の断面がバッフルプレート14の厚さ方向に沿って連なっている。第2孔14BHの直径は、第1孔14AHの直径よりも大きい。
【0033】
これにより、第2孔14BHの数を第1孔14AHの数以下に抑えながら、第2部分14Bのコンダクタンスを第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きくすることが可能である。そのため、バッフルプレート14の加工が容易である。
【0034】
本実施形態では、第2孔14BHは、大孔14BH1と、中間孔14BH2とを備えている。中間孔14BH2は、大孔14BH1よりも小さい。第2部分14Bは、外周部分14B1と中間部分14B2とを備えている。外周部分14B1は、バッフルプレート14の縁14Eを含み、かつ、外周部分14B1には大孔14BH1が形成されている。中間部分14B2は、外周部分14B1と第1部分14Aとの間に位置し、かつ、中間部分14B2には、中間孔14BH2が形成されている。
【0035】
これにより、バッフルプレート14のコンダクタンスを、第1部分14A、中間部分14B2、外周部分14B1の順に大きくすることが可能である。そのため、バッフルプレート14が、第2部分14Bの全体において一様なコンダクタンスを有する場合に比べて、クライオパネル12の径方向において、凝縮気体の堆積量に差が生じることが抑えられる。
【0036】
図2が示すように、第1孔14AHおよび第2孔14BHが円形孔である場合には、中間孔14BH2の直径は、大孔14BH1の直径よりも小さい。第2孔14BHの直径は、第1孔14AHの1倍よりも大きく3倍以下であることが好ましい。外周部分14B1に形成された第2孔14BHの全てが大孔14BH1である。
図2が示す例では、中間部分14B2に形成された第2孔14BHの全てが中間孔14BH2である。
【0037】
バッフルプレート14において、第1孔14AHおよび第2孔14BHを含む全ての貫通孔は、格子状に並んでいる。
図2が示す例において、貫通孔は、正方格子が備える格子点上に1つずつ位置している。
【0038】
図3は、気体導入口13Aと対向する視点から見たクライオポンプ10の平面構造を示している。
図3が示すように、バッフルプレート14と対向する視点から見て、第1部分14Aおよび中間部分14B2とから構成される領域内にクライオパネル12が位置している。そのため、外周部分14B1がクライオパネル12と対向しないから、外周部分14B1が有する大孔14BH1に起因したクライオパネル12への入熱を抑えながら、凝縮気体の分布における偏りを抑えることが可能である。
【0039】
複数のクライオパネル12において、バッフルプレート14からの距離が最も小さいクライオパネル12(以下、第1クライオパネル)の直径が、他のクライオパネル12(以下、第2クライオパネル)の直径よりも小さい。バッフルプレート14が広がる平面と対向する始点から見て、クライオパネル12は円錐台状を有している。バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、第2クライオパネルの斜面は、第1クライオパネルから露出している。バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、複数の中間孔14BH2の一部が、第2クライオパネルの斜面に重なっている。
【0040】
[試験例]
直径が183mm以上189mm以下であり、かつ、厚さが2mmである円板に対して、格子状に並ぶ複数の貫通孔を設定した。これによって、試験例1から試験例5のバッフルプレートを得た。なお、以下の表1および表2に記載のように、各試験例のバッフルプレートにおいて、貫通孔の数および大きさを設定した。各試験例のバッフルプレートを適用したクライオポンプについて、熱シールドによって画定される領域であって、第1クライオパネルの上部に積層される凝縮Arガスの容積と、クライオパネル群の側面に積層される凝縮Arガスの厚さとをシミュレーションによって算出した。また、各試験例のバッフルプレートを適用したクライオポンプについて、第1クライオパネルの上部に積層される凝縮Arガスの分布もシミュレーションによって算出した。なお、試験例1および試験例5のバッフルプレートでは、縁を含む外周部に第2孔が位置せず、かつ、円環状を有した隙間を設定した。
【0041】
【0042】
【0043】
表1および表2が示すように、凝縮Arガスの容積は、1800L以上であり、第1クライオパネルの上部の空間に対して70%以上の凝縮Arガスが堆積することが認められた。また、クライオパネル群の側面に堆積する凝縮Arガスの厚さが、8.33mm以上であることが認められた。
【0044】
なお、試験例4のバッフルプレートに対して、試験例5および試験例1において、第1クライオパネルの上部に堆積する凝縮Arガスの均一性が高められることが認められた。そのため、第2孔の直径は、第1孔の直径に対して1倍よりも大きく3倍以下であることが好ましいと言える。また、試験例2および試験例3のバッフルプレートでは、第1クライオパネルの上部に堆積する凝縮Arガスが略均一であることが認められた。
【0045】
以上説明したように、クライオポンプ、および、クライオポンプ用バッフルプレートの一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第2部分14Bのコンダクタンスが第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きいことによって、バッフルプレート14の第2部分14Bから本体13内に気体が流入しやすくなる。これにより、バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、クライオパネル12のうち、縁を含む部分でも凝縮気体の堆積が生じやすくなり、クライオパネル12の中心を含む部分において凝縮気体の堆積が優先的に進むことが抑えられる。従って、クライオパネル12において凝縮気体の堆積量に偏りが生じることが抑えられる。これにより、本体13によって画定される領域において、凝縮気体を堆積させることが可能な領域が拡張されるから、クライオポンプ10の排気性能を高めることが可能である。
【0046】
(2)バッフルプレート14において、第1部分14Aの厚さと第2部分14Bの厚さとを異ならせる場合に比べて、第2部分14Bのコンダクタンスを第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きくすることが容易である。
【0047】
(3)第2孔14BHの数を第1孔14AHの数以下に抑えながら、第2部分14Bのコンダクタンスを第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きくすることが可能である。そのため、バッフルプレート14の加工が容易である。
【0048】
(4)バッフルプレート14のコンダクタンスを、第1部分14A、中間部分14B2、外周部分14B1の順に大きくすることが可能である。そのため、バッフルプレート14が、第2部分14Bの全体において一様なコンダクタンスを有する場合に比べて、クライオパネル12の径方向において、凝縮気体の堆積量に差が生じることが抑えられる。
【0049】
(5)外周部分14B1がクライオパネル12と対向しないから、外周部分14B1が有する大孔14BH1に起因したクライオパネル12への入熱を抑えながら、凝縮気体の分布における偏りを抑えることが可能である。
【0050】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[クライオパネル]
・バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、外周部分14B1とクライオパネル12とが重なってもよい。この場合であっても、第2部分14Bのコンダクタンスが第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きいことによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0051】
・バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、第1部分14Aとクライオパネル12とが重なり、第2部分14Bとクライオパネル12とが重ならなくてもよい。この場合には、以下に記載の効果を得ることができる。
【0052】
(6)クライオパネル12の縁よりも外側から本体13内に供給される気体の流量を大きくすることによって、クライオパネル12の縁を含む部分における凝縮気体の堆積量が、クライオパネル12の中心を含む部分における凝縮気体の堆積量に対して小さくなることが抑えられる。
【0053】
[バッフルプレート]
・第2部分14Bは、外周部分14B1と中間部分14B2とを有しなくてもよい。すなわち、第2部分14Bには、同一の直径を有した複数の第2孔14BHが第2部分14Bの全体において形成されていてもよい。この場合であっても、第2部分14Bのコンダクタンスが第1部分のコンダクタンスよりも大きいことによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0054】
・第1孔14AHおよび第2孔14BHの少なくとも一方が、円形孔でなくてもよい。この場合には、バッフルプレート14が広がる平面と対向する視点から見て、円形孔ではない貫通孔は、例えば多角形状を有してもよい。この場合であっても、第2部分14Bのコンダクタンスが第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きいことによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0055】
・第1孔14AHおよび第2孔14BHが円形孔である場合には、第2孔14BHの直径が、第1孔14AHの直径以下であってもよい。この場合には、例えば、第2部分14Bにおける第2孔14BHの密度を第1部分14Aにおける第1孔14AHの密度よりも高くすることによって、第2部分14Bの開口率を第1部分14Aの開口率よりも大きくすることができる。すなわち、第2部分14Bのコンダクタンスを第1部分14Aのコンダクタンスよりも大きくすることが可能である。
【0056】
・第2部分14Bの開口率は、第1部分14Aの開口率以下であってもよい。この場合には、例えば、第2部分14Bの厚さを第1部分14Aの厚さよりも薄くすることによって、第2部分14Bのコンダクタンスを第1部分14Aのコンダクタンスよりも小さくすることが可能である。
【0057】
・バッフルプレート14において、第1孔14AHと第2孔14BHとを含む貫通孔は、格子状に並んでいなくてもよい。この場合には、例えば、複数の貫通孔は、バッフルプレート14において設定された同心円状の複数の円環上に配置されてもよい。あるいは、複数の貫通孔は、バッフルプレート14においてランダムに配置されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…クライオポンプ
11…冷凍機
12…クライオパネル
13…本体
14…バッフルプレート
14A…第1部分
14AH…第1孔
14B…第2部分
14B1…外周部分
14B2…中間部分
14BH…第2孔
14BH1…大孔
14BH2…中間孔