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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083208
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】フィルム・シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220527BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20220527BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220527BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/00
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194510
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】508047738
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】特許業務法人 Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB021
4J002BB091
4J002BB101
4J002BB111
4J002BB171
4J002BD031
4J002BD101
4J002BN151
4J002CF041
4J002CF061
4J002CF081
4J002CG011
4J002CH091
4J002CL011
4J002CL031
4J002CN011
4J002CN031
4J002DE136
4J002DE186
4J002DE236
4J002DG046
4J002FD016
4J002GA00
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】環境中への意図しない流出(排出)を防止できて、環境負荷の軽減を可能とすること。
【解決手段】フィルム・シートは、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とが熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含まれたものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とが前記熱可塑性樹脂:前記無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含まれたことを特徴とするフィルム・シート。
【請求項2】
前記無機鉱物と前記熱可塑性樹脂は、それら真比重の比率が前記無機鉱物/前記熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内のものであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム・シート。
【請求項3】
前記無機鉱物は、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、及び炭酸バリウムのうちの1種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィルム・シート。
【請求項4】
前記フィルム・シートは、その真比重が1.5以上、2.0以下の範囲内のものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載のフィルム・シート。
【請求項5】
前記フィルム・シートは、前記熱可塑性樹脂と前記無機鉱物が、前記熱可塑性樹脂:前記無機鉱物=70:30~90:10の範囲内の体積比で混合した混合物をフィルム・シート化したものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載のフィルム・シート。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載のフィルム・シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂と無機鉱物を含んだフィルム・シートに関するもので、特に、高比重化によって、風雨等で飛ばされたり流されたりすることによる環境への意図しない流出(排出)防止を図ることができるフィルム・シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、包装分野、農業分野、衣料分野、土木分野、建築分野等において、材料や製品等を包んだり保護したりするためのものとして、合成樹脂を薄い膜状に成形してなるフィルム・シートが多用されている。この種のフィルム・シートの素材としては、加工性や安定性の観点から、従来、ポリオレフィン系樹脂やポリ塩化ビニル系樹脂が広く使用されてきた。
【0003】
ここで、ポリ塩化ビニル系樹脂においては、塩素を含み、焼却時の焼却条件によっては環境負荷物質であるダイオキシンを発生させる可能性があることから、近年では、ポリ塩化ビニル系樹脂の代替としてポリオレフィン系樹脂への転換が進んでいる。
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂としてフィルム・シートの素材に多用されているポリエチレンやポリプロピレンは、ポリ塩化ビニル系樹脂に比べ、製造段階における石油消費量やエネルギ消費量が多いものである。このため、それらポリオレフィン系樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂に比べ、その製造段階で、地球温暖化の原因とされている温室効果ガスの二酸化炭素を多く排出するとされている。
【0004】
更に、近年、プラスチックごみによる環境汚染が顕在化し、プラスチックの廃棄が問題になっているところ、ポリオレフィン系樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂に比べ低比重である。このため、例えば、ポリオレフィン系樹脂からなるポリ袋等のフィルム・シートの環境への散乱が懸念される。
即ち、回収されてリサイクルまたはごみ処理施設で適切に処理されることなく、自然環境中に放たれたプラスチックごみは、紫外線等で細分化されるものの、容易に分解されずに自然に残存する。特に、海洋に流出したマイクロプラスチックは、プランクトンや魚介類等の動物に取り込まれ、生態系に悪影響を及ぼすことが問題視されている。ここで、プラスチックごみの中でも、殊に、市場に広く普及しているポリオレフィン系樹脂からなるポリ袋等のフィルム材やシート材は、極めて軽量である。このため、風で飛ばされたり雨で流されたりして意図せずに環境中に排出されて拡散、散乱、移動しやすい。そして、意図せずに環境に放たれたフィルム・シートは、景観を損ねるばかりか、人の目の届かない場所に漂流して回収困難な状態で環境中に残り続け、それが海洋に流出して海洋汚染を引き起こす懸念がある。
【0005】
ここで、合成樹脂を薄い膜状に成型してなる樹脂成型品の技術に関し、例えば、特許文献1がある。この特許文献1では、所定粒径の炭酸カルシウムの組み合わせとポリオレフィン系樹脂との含有により、印刷性を損なわずに、ブロッキングが抑制された成形品を得ることができる樹脂組成物の技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6661152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の樹脂組成物によれば、炭酸カルシウムを配合するから、石油原料由来であるポリオレフィン系樹脂の含有量が軽減されることで石油系資源であるプラスチック原料の使用は抑えることが可能である。しかしながら、そこに、環境中への意図しない流出(排出)を抑制することの技術思想は存在していない。
【0008】
そこで、本発明は、環境中への意図しない流出(排出)を防止できて、環境負荷の軽減を可能とするフィルム・シートの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明のフィルム・シートは、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とが前記熱可塑性樹脂:前記無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含まれたものである。
【0010】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン(PS)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂や、塩化ビニル系樹脂(軟質塩化ビニル等を含む)等が使用される。それらは単独の使用であってもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂である。
【0011】
また、上記真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物としては、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、炭酸バリウム等が使用される。それらは単独の使用であってもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、真比重が4.1以上、7.0以下、更に好ましくは、4.4以上、6.5以下の無機鉱物であり、中でも、硫酸バリウムが好ましい。
なお、上記真比重とは、空間がある場合の見かけ比重、嵩比重とは異なり、物質本来の比重のことである。
【0012】
そして、それら熱可塑性樹脂と無機鉱物の配合を、質量比で、10:90≦熱可塑性樹脂の質量:前記無機鉱物の質量≦50:50、好ましくは、20:80≦熱可塑性樹脂の質量:前記無機鉱物の質量≦50:50、更に好ましくは、25:75≦熱可塑性樹脂の質量:前記無機鉱物の質量≦45:55の範囲内としたものである。
なお、上記フィルム・シートとは、熱可塑性樹脂と無機鉱物の混合物をフィルム・シート状に成形、即ち、フィルム・シート化してなるものであり、ここでは、フィルムまたはシートを厚さで区別せずまとめてフィルム・シートとする。
【0013】
請求項2の発明のフィルム・シートの前記無機鉱物と前記熱可塑性樹脂は、それら真比重の比率が、4.0≦無機鉱物の真比重/熱可塑性樹脂の真比重≦7.5、好ましくは、4.3≦無機鉱物の真比重/熱可塑性樹脂の真比重≦7.0、更に好ましくは、4.5≦無機鉱物の真比重/熱可塑性樹脂の真比重≦7.0の範囲内のものである。
ここで、上記熱可塑性樹脂の真比重は、フィルム・シートの原料として複数種の熱可塑性樹脂を使用したときは、フィルム・シートの原料の熱可塑性樹脂全体の真比重を示す。
また、上記無機鉱物の真比重も、フィルム・シートの原料として複数種の無機鉱物を使用したときは、フィルム・シートの原料の無機鉱物の全体の真比重を示す。
【0014】
請求項3の発明のフィルム・シートの前記無機鉱物は、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、炭酸バリウムの何れか1種または2種以上としたものであり、好ましくは、硫酸バリウムを主に使用したものである。
【0015】
請求項4の発明のフィルム・シートの真比重は、1.5以上、2.0以下、好ましくは、1.5以上、1.95以下、より好ましくは、1.6以上、1.95以下の範囲内であるものである。
【0016】
請求項5の発明のフィルム・シートは、前記熱可塑性樹脂と前記無機鉱物の配合が、体積比で、70:30≦熱可塑性樹脂の体積:無機鉱物の体積≦90:10、好ましくは、70:30≦熱可塑性樹脂の体積:無機鉱物の体積≦85:15、より好ましくは、75:25≦熱可塑性樹脂の体積:無機鉱物の体積≦85:15とした混合物をフィルム・シート化してなるものである。
【0017】
請求項6の発明のフィルム・シートは、前記熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂であるものである。
上記オレフィン系樹脂としては、ポリプリピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリブテン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が使用される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係るフィルム・シートによれば、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とを前記熱可塑性樹脂:前記無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含有するものである。
熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とを熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で配合したものでは、無機鉱物の分散性及びフィルム・シートの成形性や生産性も良くて、フィルム・シートの破れ難い強度と高比重化との両立を可能とする。即ち、フィルム・シートの強度特性を損なうことなく、高比重化によって風に飛ばされたり雨に流されたりし難いものとなる。よって、環境中への意図しない流出(排出)を防止できて、環境負荷の軽減を可能とする。
【0019】
請求項2の発明に係るフィルム・シートによれば、前記無機鉱物と前記熱可塑性樹脂は、それら真比重の比率が前記無機鉱物/前記熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内のものである。
ここで、比重差が小さすぎるものでは、熱可塑性樹脂の体積含有比が小さくなるから、熱接着性(シール性)等の加工性が低いものとなる。一方で、比重差が大きすぎるものでも、フィルム・シートが裂けやすく、加工性も低下する。
真比重の比率が無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内であれば、請求項1に記載の効果に加え、熱接着性(シール性)等の加工性が高いものとなる。
【0020】
請求項3の発明に係るフィルム・シートによれば、前記無機鉱物は、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、炭酸バリウムの何れか1種以上であり、分散性が良いから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、フィルム・シート化の成形性、生産性が良いものである。特に、比重が4.4以上、6.5以下である硫酸鉛、硫酸バリウム、タングステン酸バリウムの使用では、高比重化の効果を高くでき、かつ、焼却時の二酸化炭素の排出量も少ないものとなる。
【0021】
請求項4の発明に係るフィルム・シートによれば、その真比重が、1.5以上、2.0以下の範囲内である。フィルム・シートの真比重が、1.5以上、2.0以下の範囲内であれば、従来のレジ袋、ゴミ袋、アクセサリー等の雑貨や衣料品等の包装袋、クリーニング用袋、傘袋等のフィルム・シートよりも、風に飛ばされたり雨に流されたりし難く、かつ、従来のものと遜色のない低負荷の携帯、持ち運びが可能である。よって、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、レジ袋等の包装用途等に好適である。
【0022】
請求項5の発明のフィルム・シートによれば、前記熱可塑性樹脂と前記無機鉱物を、体積比で、熱可塑性樹脂の体積:無機鉱物の体積=70:30~90:10の範囲内で配合した混合物をフィルム・シート化してなるものである。
ここで、熱可塑性樹脂の体積含有率が高すぎるものは、高比重化の効果が小さく、熱可塑性樹脂の体積含有率が小さすぎるものは、熱接着性(シール性)等の加工性が低下する。
熱可塑性樹脂の体積:無機鉱物の体積=70:30~90:10の範囲内であれば、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、高比重化と熱接着性(シール性)等の加工性との両立を可能とする。
【0023】
請求項6の発明のフィルム・シートによれば、前記熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂であることで、コストが抑えられ、かつ、低温での加工性に優れる。よって、請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の効果に加えて、他用途に展開できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係るフィルム・シートについて説明する。
本実施の形態に係るフィルム・シートは、熱可塑性樹脂と無機鉱物とを含んだ混合物をフィルム・シート化してなるものであり、無機鉱物として真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物を用い、熱可塑性樹脂と無機鉱物を熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含んだものである。
【0025】
本発明者らは、鋭意実験研究により、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物を熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で配合することによって、フィルム・シートの破れ難い強度と、風で飛ばされたり雨で流されたりし難い高比重化とが両立することを見出した。
【0026】
即ち、熱可塑性樹脂と真比重が4.0未満の無機鉱物との組み合わせでは、風で飛ばされたり雨で流されたりし難いフィルム・シートの高比重化のためには無機鉱物を多く配合する必要があり、相対的に熱可塑性樹脂の配合量が減少することで、強度が損なわれる。一方で、熱可塑性樹脂と真比重が7.0以上の無機鉱物との組み合わせでは、分散性が低下し、フィルム・シート化の成形性や生産性が損なわれる。
また、熱可塑性樹脂の質量比が無機鉱物に対し相対的に大きくなりすぎるものでは、所定の高比重とならず、熱可塑性樹脂の質量比が無機鉱物に対し相対的に小さくなりすぎるものでは、強度が損なわれる。
【0027】
熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物を熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で配合することで、無機鉱物の分散性もよくてフィルム・シートの破れ難い強度を確保しつつ、無延伸状態でのフィルム・シートの全体真比重を1.5以上とする高比重化を可能とし、既存のレジ袋、ゴミ袋、アクセサリー等の雑貨や衣料品等の包装袋、クリーニング用袋、傘袋等のフィルム・シートよりも風に飛ばされたり雨に流されたりし難いものとなる。
【0028】
好ましくは、無機鉱物の真比重が4.1以上、7.0以下のものであり、より好ましくは、4.4以上、6.5以下のものである。
また、熱可塑性樹脂と無機鉱物の配合質量比が、好ましくは、熱可塑性樹脂:無機鉱物=20:80~50:50の範囲内、より好ましくは、25:75~45:55の範囲内である。
【0029】
更に、本発明者らの鋭意実験研究によれば、フィルム・シートの原料である熱可塑性樹脂と無機鉱物の真比重の比率が、無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内である熱可塑性樹脂と無機鉱物の組み合わせによって、熱接着性(シール性)等の加工性を良くできることを見出した。
【0030】
即ち、比重差が小さすぎるものでは、熱可塑性樹脂の体積含有比が小さくなることから、熱接着性(シール性)等の加工性が低いものとなる。一方で、比重差が大きすぎるものでは、フィルム・シートが裂けやすく、加工性も低下する。
真比重の比率を無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内とする熱可塑性樹脂と無機鉱物の組み合わせによって、熱可塑性樹脂の質量含有比を低く抑え高比重化を確保しつつ、熱可塑性樹脂の体積含有比を高くできることで、熱接着性(シール性)等の加工性を良くでき、高比重化と熱接着性(シール性)等の加工性が両立する。
【0031】
好ましくは、無機鉱物と熱可塑性樹脂との真比重の比率が、無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.3~7.0の範囲内、より好ましくは、4.5~7.0の範囲内のものである。
なお、無機鉱物の真比重は、複数種の無機鉱物を使用した場合には、配合した無機鉱物全体の質量及び体積から特定される無機鉱物全体の真比重を示す。
同様に、熱可塑性樹脂の真比重も、複数種の熱可塑性樹脂を使用した場合には、配合した熱可塑性樹脂全体の質量及び体積から特定される熱可塑性樹脂全体の真比重を示す。
【0032】
ここで、本実施の形態に係るフィルム・シートを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチル-1-ペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂や、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体等のポリスチレン系樹脂や、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂等の熱可塑性ポリエステル系樹脂や、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等のポリカーボネート樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニル系樹脂や、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂等が使用できる。これらは、フィルム・シートの使途等に応じて適宜選択され、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
コスト、成形性や加工性、汎用性等の観点からすれば、オレフィン成分単位を主成分とするポリオレフィン系樹脂の使用が好ましく、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンの単独重合体、オレフィンの共重合体、1種類以上のオレフィンと、オレフィンと重合可能な1種類以上の重合性モノマーとの共重合体等が使用できる。モノマー単位のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等が挙げられる。また、共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよく、2元系でも3元系でも4元系であってもよい。石油由来のものに限らず、植物由来のものであってもよい。具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレン共重合体成分及びポリブチレン成分の少なくとも一方とポリプロピレン成分とを有する共重合体、エチレンー環状オレフィン共重合体等が使用される。加工性等の観点からすれば、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0034】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン成分単位が50質量%以上の樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-1‐ブテン共重合体、エチレン-1‐ブテン共重合体、エチレン-1‐ヘキセン共重合体、エチレン-4‐メチル‐1‐ペンテン共重合体、エチレン-1‐オクテン共重合体等が使用できる。引張強度や加工性の観点からすれば、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の低密度ポリエチレンが好ましく、これらは包装用途、特に、買い物した食品、食材、日用品、雑貨、衣料品等を入れるレジ袋やゴミ袋に好適である。
【0035】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分単位が50質量%以上の樹脂、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと共重合可能な他のα-オレフィンとの共重合体等が使用できる。即ち、単独重合ポリプロピレン(h-PP)、ランダム共重合ポリプロピレン(r-PP)、ブロック共重合ポリプロピレン(b-PP)、メタロセンポリプロピレン等が使用できる。プロピレンと共重合可能な他のα-オレフィンとしては、例えば、エチレンや、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン等の炭素数4~10のα-オレフィンがある。プロピレン単独重合体としては、アイソタクティック、シンジオタクティック、アタクチック、ヘミアイソタクチック及び種々の程度の立体規則性を示す直鎖又は分枝状ポリプロピレン等の何れであってもよい。また、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、二元共重合体、三元共重合体の何れであってもよい。具体的には、例えば、エチレン-プロピレンランダム共重合体、ブテン-1-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1-プロピレンランダム3元共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体等が例示できる。好ましくは、ランダム共重合体のものである。
【0036】
本実施の形態に係るフィルム・シートを構成する無機鉱物としては、真比重が4.0以上、7.0以下である酸化チタン、炭酸バリウム、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛等が好ましく使用される。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。中でも、硫酸バリウムは、取扱性に優れ低コストであり、また、フィルム・シート燃焼時の二酸化炭素の排出量も少なくできるから、包装資材用途等に好適である。
【0037】
また、無機鉱物は、その中位径が0.1μm以上、50μm以下のものが好ましい。より好ましくは、0.1μm以上、20μm以下、更に好ましくは、0.5μm以上、15μm以下のものである。
無機鉱物の粒子径が大きすぎるものは、分散性が損なわれ、強度が低下する一方で、無機鉱物の粒子径が小さすぎるものは、熱可塑性樹脂との混練時に粘度が上昇し生産性が低下したり所定の強度を確保しつつの薄膜化、成形性が困難となったりする。
上記範囲内であれば、フィルム・シートの所望の強度が得られ生産性も良好となる。
【0038】
なお、JIS-Z-8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、中位径とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。定義的には、中位径と平均粒子径(平均粒径)で粒子群のサイズを表現されるが、ここでは、商品説明の表示、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径の値である。そして、この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算質量部が50%となる粒子径(D50)をいう。但し、上記数値は、厳格なものでなく、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。また、この誤差の観点から見ると、正規分布に近いと、カタログ表示等の平均粒子径(含有粒子の平均値)との差も僅少であり、中位径≒平均粒子径であって中位径=平均粒子径と見做すことができ、一般的にカタログ表示等では累積の50%粒子径を平均粒子径として呼ばれる場合もある。
【0039】
そして、本実施の形態に係るフィルム・シートは、上述したような熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とを熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内で配合した混合物をフィルム・シート状に成形してなるものである。
【0040】
このとき、フィルム・シート化させる熱可塑性樹脂と無機鉱物の混合物において、熱可塑性樹脂と無機鉱物の配合は、体積比で、熱可塑性樹脂:無機鉱物=70:30~90:10の範囲内とするのが好ましい。
熱可塑性樹脂の体積含有率が高すぎると、高比重化の効果が小さくなり、熱可塑性樹脂の体積含有率が小さすぎるものは、熱接着性(シール性)等の加工性が低下する。
熱可塑性樹脂:無機鉱物=70:30~90:10の範囲内であれば、高比重化と熱接着性(シール性)等の加工性とが両立する。
より好ましくは、熱可塑性樹脂:無機鉱物=70:30~85:15の範囲内であり、更に好ましくは、熱可塑性樹脂:無機鉱物=75:25~85:15の範囲内の体積比である。
【0041】
ここで、これら熱可塑性樹脂と無機鉱物の混合物を薄い膜状に成形、即ち、フィルム・シート化する方法としては、例えば、インフレーション法、Tダイ法、キャスト法、カレンダー法、押出法等があり、フィルム・シートの用途や、使用する熱可塑性樹脂や無機鉱物の種類等に応じて適宜選択される。
【0042】
例えば、溶融押出成形法の一種であるインフレーション法では、サーキュラダイス、リングダイス、またはクロスヘッドダイスと呼ばれる環状の吐出口(リップ)を有する金型(ダイス)付きの押出機に熱可塑性樹脂及び無機鉱物の原料を投入し、押出機のシリンダー内において高温条件下(例えば、150℃~200℃)で加熱すると共に、スクリューで加圧して、溶融混練する。そして、溶融混練した熱可塑性樹脂及び無機鉱物の原料を、押出金型(ダイス)からチューブ状(筒状)に押し出し、その押し出したチューブ内に金型(ダイス)の中央の空気孔から圧搾空気を吹き込んで膨張させたのち、ローラ(ピンチロール、ニップロール)で引っ張りながら冷却固化する。これより、熱可塑性樹脂と無機鉱物の混合物が薄い膜状に連続的に成形されるものである。通常、保管、搬送の利便性から、冷却固化したフィルム・シートは複数のロールを通して巻取機でロール状に巻き取られ原反ロールの状態で取引されるが、チューブ状(筒状)に成形されたフィルム・シートを、巻き取り前に幅方向の両端(両耳)を切断することで2枚に分割したものを1本ずつ巻き取って両開きのフラット(シングル)のものとしてもよいし、2枚重ねで巻きとって両開きのダブルのものとしてもよい。または、巻き取り前に幅方向の一端(片耳)を切断し片開き状としたものを巻きとってもよい。或いは、切断を行わずにチューブ状のままで巻き取ってもよい。チューブ状のものは、その原反ロールを繰り出し、その長手方向の所定間隔で部分的に熱溶着(ヒートシール)し、所定長さでカットすることにより、或いは、所定長さにカットしてから、その部分を熱溶着することにより袋状に加工できる。片開き状のものでも、袋状に加工して使用することも可能である。
【0043】
同じく溶融押出成形法の一種であるTダイ法では、Tダイ(フラットダイ)と呼ばれる直線状の吐出口(リップ)を有する金型(ダイス)付きの押出機に熱可塑性樹脂及び無機鉱物の原料を投入し、押出機のシリンダー内において高温条件下(例えば、150℃~200℃)で加熱すると共に、スクリューで加圧して、溶融混練する。そして、溶融混練された熱可塑性樹脂及び無機鉱物の原料を押出金型(ダイス)のTダイのスリットからフィルム・シート状に押し出した後、そのフィルム・シート状の溶融膜を冷却ローラー(水冷ローラー)に通すことで冷却固化する。これより、熱可塑性樹脂と無機鉱物の混合物が薄い膜状に連続的に成形されるものである。通常、保管、搬送の利便性から、冷却固化したフィルム・シートは複数のロールを通して巻取機でロール状に巻き取られ原反ロールの状態で取引されるが、この状態では、1枚の平坦なフィルム・シートである。ここでも、原反ロールを繰り出し、その長手方向の所定間隔で部分的に、かつ、幅方向の両端部を連続的に熱溶着(ヒートシール)し、所定長さでカットすることで、袋状に加工できる。
【0044】
カレンダーロール法は、加熱して溶融混練状態とした熱可塑性樹脂及び無機鉱物の原料を複数本(3本型、4本L型、4本逆L型、4本Z型、6本型等)のローラー(カレンダーロール)間を通過させることで圧延し、加熱または冷却しながら連続的に薄膜状に成形するものである。
【0045】
キャスト法は、熱可塑性樹脂及び無機鉱物の原料を溶剤に入れて樹脂を溶融させた溶液をダイから押し出して、ドラムや平滑ベルト等の支持体上にキャストし、加熱乾燥させて溶媒を蒸発させることで薄膜状を連続的に成形するものである。
【0046】
なお、上述の押出機への熱可塑性樹脂及び無機鉱物の投入は、ペレット状、フレーク状、ビーズ状等の熱可塑性樹脂と粉末状の無機鉱物の混合物としてもよいし、或いは別々に投入して押出機で混練するようにしてもよいし、両者を予め溶融混練(マスターバッチ化)してペレットあるいはコンパウンドとし、それを押出機に投入してもよい。また、押出成形機を使用したフィルム・シート化では、単軸(1軸)押出機を使用してもよいし、多軸(2軸)押出機を使用してもよく、フィルム・シートの使途、目的等に応じ適宜選択される。多軸(2軸)のスクリューでは、単軸(1軸)のものよりも高いせん断応力を掛けることができるから、無機鉱物を高配合としても、均一な分散で熱可塑性樹脂と混練できる。特に、熱可塑性樹脂と無機鉱物の配合が上記の所定の範囲内であれば、押出機内での混練時の分散性も良くて均一に分散し、所定の強度、生産性、成型性を確保しつつ薄膜化を容易とする。なお、単軸(1軸)または多軸(2軸)の押出成形機で溶融混練と押出成形とを同時に連続的に行うものであってもよいし、予めミキサー、ニーダー等を用いて原料を溶融混練してから、押出機のホッパーに投入して押出成形してもよい。
更に、本発明を実施する場合には、フィルム・シートの使途、目的等に応じ、1軸または2軸方向の延伸加工を施したり、多層加工や、表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線放射処理等)や、コーティング加工を施したりすることも可能である。例えば、フィルム・シートに通気性が求められる用途の場合には、延伸によって空隙を形成してもよい。また、フィルム・シートを袋状に加工する場合には、両サイドと底部の3箇所をヒートシールする三方シールや、二つ折りにして両サイドを熱溶断シールするサイドシール等で袋状としてもよい。質量がある安定性から、スタンディングパウチ等にも好適である。
【0047】
本実施の形態に係るフィルム・シートは、こうしたインフレーション法、Tダイ法、キャスト法、カレンダー法等により、熱可塑性樹脂と無機鉱物を含んだ混合物をフィルム・シート状に成型したものであり、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物とが、熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比、好ましくは、熱可塑性樹脂:無機鉱物=70:30~90:10の範囲内の体積比の配合によって、無延伸の状態で、フィルム・シートの真比重を好ましくは1.5以上の高比重としたものである。なお、フィルム・シートの真比重が高すぎるものでは、無機鉱物の質量比が高くなることで強度が低下することになるが、真比重が1.5以上、2.0以下であれば、破れや裂けが生じ難い実用的な強度が得られ、また、従来のレジ袋、ゴミ袋、アクセサリー等の雑貨や衣料品等の包装袋、クリーニング用袋、傘袋等のフィルム・シートと遜色のない低負荷の携帯、持ち運びが可能である。
【0048】
なお、このような方法により熱可塑性樹脂及び無機鉱物の混合物を薄膜成型してなるフィルム・シートの厚みは、フィルム・シートの使途、目的等に応じて適宜設定される。例えば、30μm~1000μmの範囲内とされ、包装用途等では、好ましくは、40μm~500μmの範囲内とされる。
【0049】
また、本発明を実施する場合には、フィルム・シートの使途、目的、製造方法等に応じ、酸化防止剤、滑剤、静電防止剤、帯電防止剤、着色顔料、紫外線吸収剤、分散剤、難燃剤、その他の添加剤を含有させることもできる。
例えば、酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、α‐トコフェノール、ビタミンE等のフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステルやリン酸エステル等のリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤等が使用される。こうした酸化防止剤によれば、例えば、インフレーション成型等における加熱溶融時の樹脂原料の酸化を防止できる。
滑剤としては、例えば、(ヒドロキシ)ステアリン酸等の脂肪酸系滑剤、ステアロアミド等の脂肪族アマイド系滑剤、脂肪族アルコール系滑剤、脂肪族エステル系滑剤等が使用される。こうした滑剤によれば、例えば、インフレーション成形時におけるダイスからのフィルム・シートの離型性の向上、耐摩耗性の向上を可能とし、生産性の向上が可能となる
【0050】
こうして、本実施の形態においては、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物が、熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比、好ましくは、熱可塑性樹脂:無機鉱物=70:30~90:10の範囲内の体積比で配合した混合物を、インフレーション法、Tダイ法、キャスト法、カレンダー法等でフィルム・シート化することにより、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物が、熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含まれたフィルム・シートとなる。
【0051】
こうした熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物が、熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含まれたフィルム・シートによれば、フィルム・シートの裂けや破れが生じ難い強度を確保しつつ、無延伸の状態で全体の真比重が1.5以上の高比重化を可能とし、既存のレジ袋、ゴミ袋、アクセサリー等の雑貨や衣料品等の包装袋、クリーニング用袋、傘袋等のフィルム・シートよりも風に飛ばされたり雨に流されたりし難いものとなる。
【0052】
加えて、本実施の形態のフィルム・シートによれば、石油原料由来である熱可塑性樹脂の配合質量が低いから、環境に散乱されることなく適切に回収されて焼却処理されるときの燃焼時(通常、800℃以上)の二酸化炭素排出量が少なく、既存のレジ袋、ゴミ袋、アクセサリー等の雑貨や衣料品等の包装袋、クリーニング用袋、傘袋等のフィルム・シートよりも焼却時の二酸化炭素の排出量を削減できる。更に、石油原料由来である熱可塑性樹脂が少ない使用量であるから、フィルム・シートに使用する原料製造時における二酸化炭素排出量も少ないものである。特に、無機鉱物として、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタンを使用すれば、炭酸塩と比較し、焼却時のニ酸化炭素の排出量を少なくできる。
また、無機鉱物の真比重が大きいから、光、音、ハロゲン化物等の遮蔽にも有効である。
更に、本実施の形態のフィルム・シートは、高比重化により熱接着(ヒートシール)加工したときの熱接着性に優れる。
【0053】
特に、真比重の比率を無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内とする熱可塑性樹脂と無機鉱物の組み合わせでは、熱可塑性樹脂の質量含有比を低く抑え無機鉱物による高比重化を確保するも、熱可塑性樹脂の体積含有比が高いものであるから、熱接着性(シール性)を高くでき、高比重化と熱接着性(シール性)とが両立する。
よって、フィルム・シートの袋状物等では、その熱接着部分の強度が強く丈夫で破れや剥離が生じ難いものとなる。熱接着性に優れるから、より低温度での接着やヒートシール加工時の高速化を可能として、低コスト化を図ることも可能となる。
【0054】
また、こうした真比重の比率を無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内とする熱可塑性樹脂と無機鉱物の組み合わせにより熱可塑性樹脂の体積含有比が高いものでは、熱可塑性樹脂による特性が十分に発揮され、裂けや破れが生じ難く十分に高い強度となり、かつ、樹脂の熱が加えられたときの熱伝導性、熱加工性もよく、フィルム・シート形状への変形しやすさにより、柔らかさ、滑らかさ、ドレープ感、しなやかさの質感、触感があり、表面の滑りが良くて表面の平滑性にも優れ、光沢が高いフィルム・シートとなる。よって、印刷性も良い。また、印刷等の手段を用いなくても高級感のある意匠が付与される。
【0055】
こうして、真比重の比率が無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内である熱可塑性樹脂と無機鉱物の混合物をフィルム・シート化してなるフィルム・シートでは、熱接着性(シール性)、成形性等の加工性や質感に優れるものとなる。
【0056】
ここで、本実施の形態に係るフィルム・シートについて、具体的に実施例を挙げて説明する。
本実施例1乃至実施例4に係るフィルム・シートは、表1に示す配合で作製したものである。
なお、表1において、フィルム・シートの真比重や、無機鉱物及び熱可塑性樹脂の各真比重は、乾式自動密度計(マイクロメリテックス社製のAccupycII 1340)を用い、測定対象の試料を60℃で8時間乾燥した後、Heガス置換法により測定したものである。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1のフィルム・シートは、無機鉱物として硫酸バリウム(真比重;4.50)と酸化チタン(真比重;4.17)を用い、また、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)(真比重;=0.92)を用い、表1に示した配合、即ち、熱可塑性樹脂:無機鉱物=38:62の質量比、熱可塑性樹脂:無機鉱物=75:25の体積比の配合とした、硫酸バリウム及び酸化チタンの無機鉱物並びに低密度ポリエチレンの熱可塑性樹脂の混合物をインフレーション法でフィルム・シート化したものである。なお、このときのインフレーション成形機での設定厚みは50~70mmとしている。
【0059】
つまり、実施例1に係るフィルム・シートは、熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)と無機鉱物としての真比重が4.50の硫酸バリウム及び真比重が4.17の酸化チタンとを、熱可塑性樹脂:無機鉱物=38:62の質量比で含有したものである。
これら無機鉱物としての硫酸バリウム及び酸化チタンと熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンとの組み合わせからなる実施例1では、無機鉱物と熱可塑性樹脂の真比重の比率が、無機鉱物全体の真比重/熱可塑性樹脂の真比重=4.89のものである。
そして、実施例1では、無機鉱物としての硫酸バリウム及び酸化チタンと熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンの所定の配合によって、真比重が1.75のフィルム・シートを得た。なお、実施例1のフィルム・シートの外観の色調は、白色であった。
【0060】
実施例2のフィルム・シートは、無機鉱物としてタングステン酸バリウム(真比重;5.04)を用い、また、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)(真比重;0.92)を用い、表1に示した配合、即ち、熱可塑性樹脂:無機鉱物=41:59の質量比、熱可塑性樹脂:無機鉱物=79:21の体積比の配合としたタングステン酸バリウムの無機鉱物及び低密度ポリエチレンの熱可塑性樹脂の混合物をカレンダーロール法でフィルム・シート化したものである。なお、このときのカレンダーロール機の設定厚みは200mmとしている。
【0061】
つまり、実施例2に係るフィルム・シートは、熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)と無機鉱物としての真比重が5.04のタングステン酸バリウムとを、熱可塑性樹脂:無機鉱物=41:59の質量比で含有したものである。
これら無機鉱物としてのタングステン酸バリウムと熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンとの組み合わせからなる実施例2では、無機鉱物と熱可塑性樹脂の真比重の比率が、無機鉱物全体の真比重/熱可塑性樹脂の真比重=5.48のものである。
そして、実施例2では、無機鉱物としてのタングステン酸バリウムと熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンの所定の配合によって、真比重が1.79のフィルム・シートを得た。なお、実施例2のフィルム・シートの外観の色調は、クリーム色であった。
【0062】
実施例3のフィルム・シートは、無機鉱物として硫酸鉛(真比重;6.29)を用い、また、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)(真比重;0.92)を用い、表1に示した配合、即ち、熱可塑性樹脂:無機鉱物=42:58の質量比、熱可塑性樹脂:無機鉱物=83:17の体積比の配合とした硫酸鉛の無機鉱物及び低密度ポリエチレンの熱可塑性樹脂の混合物をカレンダーロール法でフィルム・シート化したものである。なお、このときのカレンダーロール機の設定厚みは200mmとしている。
【0063】
つまり、実施例3に係るフィルム・シートは、熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)と無機鉱物としての真比重が6.29の硫酸鉛とを、熱可塑性樹脂:無機鉱物=42:58の質量比で含有したものである。
これら無機鉱物としての硫酸鉛と熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンとの組み合わせからなる実施例3では、無機鉱物と熱可塑性樹脂の真比重の比率が、無機鉱物全体の真比重/熱可塑性樹脂の真比重=6.84のものである。
そして、実施例3では、無機鉱物としての硫酸鉛と熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンの所定の配合によって、真比重が1.83のフィルム・シートを得た。なお、実施例3のフィルム・シートの外観の色調は、クリーム色であった。
【0064】
実施例4のフィルム・シートは、無機鉱物として酸化チタン(真比重;4.17)を用い、また、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)(真比重;0.92)を用い、表1に示した配合、即ち、熱可塑性樹脂:無機鉱物=33:67の質量比、熱可塑性樹脂:無機鉱物=70:30の体積比の配合とした酸化チタンの無機鉱物及び低密度ポリエチレンの熱可塑性樹脂の混合物をキャスト法でフィルム・シート化したものである。なお、このときのキャスト機の設定厚みは80mmとしている。
【0065】
つまり、実施例4に係るフィルム・シートは、熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)と無機鉱物としての真比重が4.17の酸化チタンとを、熱可塑性樹脂:無機鉱物=33:67の質量比で含有したものである。
これら無機鉱物としての硫酸鉛と熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンとの組み合わせからなる実施例4では、無機鉱物と熱可塑性樹脂の真比重の比率が、無機鉱物全体の真比重/熱可塑性樹脂の真比重=4.53のものである。
そして、実施例4では、無機鉱物としての酸化チタンと熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンの所定の配合によって、真比重が1.93のフィルム・シートを得た。なお、実施例4のフィルム・シートの外観の色調は、白色であった。
【0066】
これら実施例1乃至実施例4では、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物とを、熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比での含有によって、市販のポリエチレンフィルム・シート(後述の比較例2に相当)と同程度の裂けや破れが生じ難い所定の強度を確保しつつ、真比重が1.5~2.0と高比重のフィルム・シートが得られた。
【0067】
一方、比較のために比較例1及び比較例2に係るフィルム・シートも用意した。比較例1及び比較例2の配合内容は、表1に示した通りである。
比較例1は、無機鉱物として炭酸カルシウム(真比重;2.71)と酸化チタン(真比重;4.17)を用い、また、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)(真比重;0.92)を用い、表1に示した配合、即ち、熱可塑性樹脂:無機鉱物=46:54の質量比、熱可塑性樹脂:無機鉱物=72:28の体積比の配合とした炭酸カルシウム及び酸化チタンの無機鉱物並びに低密度ポリエチレンの熱可塑性樹脂の混合物をインフレーション法でフィルム・シート化したものである。なお、このときのインフレーション機の設定厚みは50~70mmとしている。
【0068】
つまり、比較例1に係るフィルム・シートは、熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)と無機鉱物としての真比重が2.71の炭酸カルシウム及び真比重が4.17の酸化チタンとを、熱可塑性樹脂:無機鉱物=46:54の質量比で含有したものである。
これら無機鉱物としての炭酸カルシウム及び酸化チタンと熱可塑性樹脂としての低密度ポリエチレンとの組み合わせからなる比較例1では、無機鉱物と熱可塑性樹脂の真比重の比率が、無機鉱物全体の真比重/熱可塑性樹脂の真比重=2.95のものである。
この比較例1では、所定の強度を確保する配合では、フィルム・シートの真比重が1.5未満であった。なお、比較例1のフィルム・シートの外観の色調は、白色であった。
【0069】
比較例2は、市販の白色のポリエチレンフィルム・シートである。このポリエチレンフィルム・シートは、キャスト法でフィルム・シート化され、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE/LLDPE)(真比重;0.92)に、フィルム・シートを乳白色にするための着色剤として無機鉱物である酸化チタンが含まれているが、その配合は、表1に示したように、熱可塑性樹脂:無機鉱物=94:6の質量比、熱可塑性樹脂:無機鉱物=98:2の体積比であり、フィルム・シートの真比重が0.98である。
【0070】
ここで、各実施例及び比較例について、フィルム・シートの特性を比較検討した。具体的には、熱接着性(シール強度)について評価した。また、フィルム・シートを燃焼したときの二酸化炭素の発生量についても測定した。
熱接着性(シール強度)については、フィルム・シート同士を熱溶着し、その熱溶着したシール部分の強度をJIS1711に準拠して測定した(試料の幅;15mm、引張速度;500mm/分)。そして、実施例1乃至実施例4及び比較例1のシール強度について、市販のエチレンフィルム・シートである比較例2のシール強度との比較で評価した。比較例2のシール強度と差が4.5N/15mm未満と同等程度であったものを◎、実用的な使用は可能であるも、比較例2のシール強度と差が4.5N/15mm以上、7N/15mm以下であったものについては○とした。
二酸化炭素の発生量については、燃焼管式空気法(JIS K 2541-3:2003)に準拠し、管状電気炉(KOYO LINDBERG LYD.製 TYPE55035)を用いて、設定温度を1000℃、支燃性ガスを空気(供給量;0.3±0.05L/分)とした燃焼条件で試料を燃焼したときの生成二酸化炭素量をガスクロマトグラフ法(GC-TCD)による定量分析で求めた。
熱接着性(シール強度)の評価及び燃焼時の二酸化酸素の発生量の測定結果は、表1の下段に示した通りである。
【0071】
実施例1乃実施例3のフィルム・シートでは、熱接着性(シール強度)が何れも◎の評価であるのに対し、実施例4では〇の評価であった。また、比較例1のフィルム・シートについても〇の評価であった。
実施例1乃実施例3と、実施例4や比較例1の比較から、無機鉱物と熱可塑性樹脂の真比重の比率が大きいものでは、熱可塑性樹脂の体積含有比を大きくできることで、高い熱接着性を確保できることが分かる。
特に、実施例1乃実施例3のフィルム・シートでは、その感触、質感が、比較例2の市販のエチレンフィルム・シートと同等以上の柔らかさ、滑らかさがあるのに対し、実施例4については、柔らかさ、滑らかさが若干少なかった。比較例1では、柔らかさ、滑らかさが更に少なく、パリパリ感、ガサガサ感があるものであった。無機鉱物と熱可塑性樹脂の所定の真比重の比率となる組み合わせによって熱可塑性樹脂の体積含有比を大きくすることで、熱可塑性樹脂の熱による十分な変形によって柔らかさ、滑らかさが得られるものと考えられる。
【0072】
また、実施例1乃実施例4のフィルム・シートでは、燃焼時の二酸化炭素発生量は940~1300mg/gであり、熱可塑性樹脂の使用量(配合質量)が少ないものほど、燃焼時の二酸化炭素発生量が少なかった。
これに対し、比較例1では、燃焼時の二酸化炭素発生量は1700mg/gと多く、実施例1乃至実施例4のときの1.4倍以上であった。これは、熱可塑性樹脂の使用量が多いことに加え、無機鉱物として炭酸カルシウムを含んでいることで、炭酸カルシウムの熱分解によって二酸化炭素が発生するためである。
また、比較例2の市販のエチレンフィルム・シートでは、当然、熱可塑性樹脂量が多いことで、二酸化炭素発生量は3000mg/gと最多で、実施例1乃至実施例4のときの2.5倍以上であった。
【0073】
こうして、真比重の比率が無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.5~7.5の範囲内である熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物とを、熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含有した実施例1乃至実施例4のフィルム・シートによれば、柔らかさや滑らかさがあり、熱接着(ヒートシール)したときの熱接着性(シール強度)も良く、更に、燃焼時の二酸化炭素の発生量が抑えられるものである。
【0074】
そして、実施例1乃至実施例4と比較例1との比較から分かるように、実施例1乃至実施例4のように熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物とを熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含有するものでは、破れ難い強度を確保しつつ、フィルム・シートの真比重を1.5以上とする高比重化が可能であるのに対し、比較例1のように真比重が4.0未満の無機鉱物の使用であると、所定の強度を確保する熱可塑性樹脂と無機鉱物の配合量では、既存の塩化ビニルフィルム・シートと同程度の低い真比重しか得られない。
【0075】
比較例1及び比較例2のフィルム・シートよりも高比重化されて真比重が1.5~2.0の範囲内とした実施例1乃至実施例4のフィルム・シートによれば、既存のレジ袋、ゴミ袋、アクセサリー等の雑貨や衣料品等の包装袋、クリーニング用袋、傘袋等のフィルム・シートよりも風に飛ばされたり雨に流されたりし難いものとなる。
【0076】
ここで、更に、実施例と比較例のフィルム・シートについて、空気中及び水中における運動実験並びに所定の風速下での飛距離の実験を行った結果について説明する。ここでは、代表的に、実施例1乃至実施例4のうち最も真比重が小さい実施例1のフィルム・シートを挙げ、比較例1及び比較例2のフィルム・シートと比較した実験結果を説明する。
【0077】
初めに、水中での運動実験結果について説明する。
本実験では、内寸が120mm×120mm×280mmの水槽(ポリプロピレン製)に水を入れ、水位240mmとした水面上に試験片のフィルム・シートを置き、その試験片のフィルム・シートが水中200m距離を落下する時間を計測した。
具体的には、30mm×30mm寸法の1枚のフィルム・シートの試験片をピンセットで掴み、上述の所定水位とした水槽内の水中に浸してフィルム・シートの試験片表面に付いた気泡を取り除いてから、水槽内の静止した水面(240mm水位)に対し水平に置いて、ピンセットからフィルム・シートの試験片を放した。なお、水槽には、底面から40mmの高さ位置と240mmの高さ位置(水位)に標線を付している。そして、フィルム・シートの試験片が水中を落下し、その落下が40mmの標線位置に達するまでの時間、即ち、200mmの距離を落下する時間を計測した。そのときの測定結果を表2の上段に示す。なお、水中での落下中にフィルム・シートの試験片が水槽の内壁面に触れた場合には、計測をやり直し、表2の上段には、5回の実験の平均値を示した。
【0078】
【表2】
【0079】
本実験において200mmの水深は、子供にとっても安全な水遊びができる子供の膝下水位、つまりは、意図せずにフィルム・シートが水中に放たれたときでも安全にフィルム・シートを回収できる環境下を想定したものであり、水中での移動時間は、水流がある場合に環境中に放出されたフィルム・シートが移動する距離に影響を与えるものと考える。即ち、200mmの距離を移動するのにかかる時間が長いほど、水流(流速)の影響により、遠くまで移動する可能性が高くなると考えられる。
【0080】
表2の上段に示したように、実施例1では、2.34秒で200mmの距離を移動した。
ここで、子供にとっても安心な水遊びができる水流速度、即ち、意図せずにフィルム・シートが水中に放たれたときでもフィルム・シートを安全に回収できる環境の流速を0.25m/秒として考えると、実施例1のフィルム・シートにおいては、2.34秒で200mmの距離を移動したことから、理論的には、0.25m/秒の水流の流速下では、0.25(m/秒)×2.34(秒)=0.585(m)の距離を移動する可能性がある。
【0081】
これに対し、比較例1のフィルム・シートでは、4.87秒掛かって200mmの距離を移動したことから、0.25(m/秒)の水流の流速下では、理論的には、0.25(m/秒)×4.87(秒)=1.2175(m)の距離をも移動する可能性があり、実施例1の2倍の距離である。
また、比較例2のフィルム・シートでは、その比重が1.0未満であることから、水中に沈まず、200mmの水中距離を移動する時間は計測できないものの、その比重からして、0.25(m/秒)の水流の流速下の移動距離は、比較例1のときよりも長くなることが予測される。
したがって、実施例1のフィルム・シートでは、意図せずに環境中に放たれたときでも、比較例1及び比較例2のフィルム・シートよりも雨で流されたりし、川に流されたり、波にさらわれたりし難いものといえる。
【0082】
次に、空中での運動実験結果について説明する。
本実験では、100mm×120mmの寸法とした1枚のフィルム・シートの試験片をピンセットで掴み、床面から200mの高さ位置でフィルム・シートの試験片を放し、フィルム・シートの試験片が床面に落下するまでの時間、即ち、200mmの距離を落下する時間を計測した。そのときの測定結果は表2の下段に示した通りである。なお、フィルム・シート試験片の落下中、周囲の物にフィルム・シートの試験片が触れたり、静電気や外乱が生じて不自然な落下挙動をしたりした場合は、計測をやり直し、表2の下段には、5回の実験の平均値を示した。
上述した水中での実験のときと同様、200mmの距離を移動するのにかかる時間が長いほど、横風、風速の影響により、遠くまで移動する可能性が高くなると考えられる。
【0083】
表2の下段に示したように、実施例1では、1.84秒で200mmの距離を移動したのに対し、比較例1では、2.62秒、比較例2では、2.8秒掛かったことから、上述の水中での実験のときと同様、風速を加味すると、実施例1のフィルム・シートは、比較例1及び比較例2のフィルム・シートよりも風で遠くに飛び難いものといえる。
【0084】
更に、本発明者らは、実際に、所定の風速下でのフィルム・シートの移動距離(飛散距離)についても実験を行っている。
本実験では、床面上に送風機を設置し、その送風機の前面から水平方向に10cm離れた位置、かつ、送風機の中心位置から垂直方向に上に70cm離れた高さ位置から、ピンセットで掴んだ100mm×120mm寸法の1枚のフィルム・シートの試験片を放ち、床面上に落下したときから、5分間計測し、その5分間でフィルム・シートの試験片の落下点から水平方向にフィルム・シートの試験片がどれだけ移動したかその水平距離を計測した。このときの測定結果を表3に示す。なお、本実験において送風機はフィルム・シートに対する一定方向の送風状態とし、一定風速(3m/秒)での運転とした。フィルム・シート試験片の落下中、周囲の物にフィルム・シートが触れたり、静電気や外乱が生じて不自然な落下挙動をしたりした場合は、計測をやり直し、表3には、各フィルム・シートについて20回測定したときの測定結果を示した。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示したように、実施例1では、比較例1及び比較例2に比べ、所定の風速下、5分間で水平方向に移動した距離が明らかに少なかったことが分かる。即ち、実施例1のフィルム・シートは、比較例1及び比較例2のフィルム・シートよりも明らかに風に飛ばされ難いものとなっている。
【0087】
こうして、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の範囲内の無機鉱物とを熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含有し、比重が1.5~2.0の範囲内とした本実施例に係るフィルム・シートは、高比重化によって風で飛ばされたり雨で流されたりし難いものとなり、環境中への流出が防止され、環境負荷を軽減できるものである。
【0088】
以上説明してきたように、上記実施の形態のフィルム・シートは、熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とが熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で含まれたものである。
【0089】
熱可塑性樹脂と真比重が4.0以上、7.0以下の無機鉱物とを熱可塑性樹脂:無機鉱物=10:90~50:50の範囲内の質量比で配合したものでは、無機鉱物の分散性及びフィルム・シートの成形性や生産性も良くて、フィルム・シートの裂けや破れが生じ難い強度と高比重化との両立を可能とする。即ち、フィルム・シートの強度特性を損なうことなく、従来のレジ袋等のフィルム・シートの真比重よりも高い1.5以上の高比重化を可能とし、高比重化によって風に飛ばされたり雨に流されたりし難いものとなる。
【0090】
したがって、例えば、レジ袋等の包装用途等としたフィルム・シートでは、それが屋外のゴミ捨て場に捨てられたときでも、ゴミ捨て場から雨で流されたり風で飛ばされたりし難いものである。また、防水や防護、保護等の目的で屋外で使用されるものとした場合には、それが雨で流されたり風で飛ばされたりし難いものとなる。更に、レジ袋等としたフィルム・シートを屋外で使用したときも、それが風で飛ばされ難いものである。また、飛ばされたり流されたりしても遠くまで散乱、拡散し難く、回収しやすいものとなる。
よって、意図しない環境中への流出(排出)の防止によって環境汚染の防止、環境負荷の軽減を可能とし、風で遠くに飛ばされ、川に流されたり波にさらわれたりして海洋に流出してしまう事態を防止できる。
【0091】
更に、石油原料由来である熱可塑性樹脂が少ない使用量であるから、フィルム・シートに使用する原料製造時における二酸化炭素排出量が少ないうえ、環境に散乱されることなく適切に回収されて焼却処理されるときの燃焼時の二酸化炭素排出量も抑えられる。よって、環境に優しいものでもある。
【0092】
特に、無機鉱物と熱可塑性樹脂とは、それら真比重の比率が無機鉱物/熱可塑性樹脂=4.0~7.5の範囲内のものであると、熱可塑性樹脂の体積含有比が大きいことで、裂けや破れが生じ難い十分に高い強度が得られ、かつ、熱可塑性樹脂の熱による十分な変形によって柔らかさ、滑らかさもあり、更に、熱接着性(シール性)等の加工性も高いフィルム・シートとなる。
【0093】
また、熱可塑性樹脂と無機鉱物が、熱可塑性樹脂:無機鉱物=70:30~90:10の範囲内の体積比で混合した混合物をフィルム・シート化したフィルム・シートでは、熱可塑性樹脂の体積含有比が大きいことで、高比重化と熱接着性(シール性)等の加工性が両立する。
【0094】
更に、無機鉱物が、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、炭酸バリウムの何れか1種以上であれば、分散性がよいから、フィルム・シート化する成型性、生産性も良い。特に、好ましくは、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム、硫酸鉛の何れか1種以上であれば、無機鉱物のより少ない配合質量比でフィルム・シートの高比重化が可能であるから、熱可塑性樹脂の体積含有比が大きいことで、熱接着性(シール性)等の加工性にも優れるものとなる。更には、炭酸塩を含まないことで、燃焼時の二酸化炭素の排出量も抑えられる。また、炭酸カルシウムでは、環境中に排出された際に、水との反応でアルカリ性を示すのに対し、それらの無機鉱物では、生態系のpHバランスを崩す恐れもない。
【0095】
そして、真比重が1.5以上、2.0以下の範囲内であるフィルム・シートでは、従来のレジ袋等のフィルム・シートよりも、風に飛ばされたり雨に流されたりし難く、かつ、従来のものと遜色のない低負荷である。よって、レジ袋等に好適である。更に、真比重が1.5以上、2.0以下の範囲内であるフィルム・シートでは、水に沈むから、水を利用し既存の比重1.0未満のポリ袋等との分別回収を可能とし、材料の再利用やサーマルリサイクルへの利用を容易とする。
特に、熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂であれば、加工性に優れるから、他用途に展開できる。
【0096】
なお、上記実施の形態のフィルム・シートは、例えば、包装分野、農業分野、衣料分野、土木分野、建築分野等において、物を包んだり保護したりする用途、例えば、レジ袋等の包装用途や、衣料や、遮水、防水、保温等の機能性フィルム・シート、例えば、農業用シート(マルチシート等)として使用可能なものである。
【0097】
本発明を実施するに際しては、フィルム・シートのその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等について、本実施の形態及び実施例に限定されるものではない。また、本実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。