(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083209
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】フィルム、並びにそれを用いたテープ及び貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20220527BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
A61F13/02 310D
A61F13/02 310M
A61F13/02 310J
A61F13/02 380
A61M35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194511
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 和輝
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB05
4C267BB07
4C267BB12
4C267BB24
4C267CC01
4C267GG06
4C267GG10
4C267GG14
4C267GG16
(57)【要約】
【課題】補助器具を用いることなく、簡便に肌に貼ることが可能で、また、貼った後の使用感も良好なフィルム、並びにこれを用いたテープ、及び貼付剤を提供する。
【解決手段】フィルム1は、断面形状がうねった形状の樹脂フィルムであり、上記樹脂フィルムを構成する樹脂のヤング率が800MPa以上3000MPa以下であり、上記樹脂フィルムの曲げ剛性は異方性を有し、最も高い曲げ剛性値を有する方向と平行方向における曲げ剛性値に対する、上記平行方向と直交する直交方向における曲げ剛性値の比が、0.02以上0.5以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状がうねった形状の樹脂フィルムであり、
前記樹脂フィルムを構成する樹脂のヤング率が800MPa以上3000MPa以下であり、
前記樹脂フィルムの曲げ剛性は異方性を有し、最も高い曲げ剛性値を有する方向と平行方向における曲げ剛性値に対する、前記平行方向と直交する直交方向における曲げ剛性値の比が、0.02以上0.5以下である、
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
幅15mmの前記フィルムをループ状にし、該ループの長さが85mm、押し込み距離20mmの測定条件にて測定される、ループステフネス値が、
前記平行方向にループを作製した場合には、2mN/15mm以上40mN/15mm以下であり、
前記直交方向にループを作製した場合には、0.5mN/15mm以上5mN/15mm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記見掛け上の厚みが、前記フィルム自体の厚みの2倍を超える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの
うねった構造も含めた見掛け上の厚みが、20μm以上100μm以下であり、
前記フィルム自体の厚みが、5μm以上40μm以下である、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムは、前記直交方向の破断伸度が20%以上であり、
前記直交方向における10%モジュラス値が0.5N/15mm以上5N/15mm以下である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記直交方向への伸度が0~20%の範囲内において、前記フィルムのポアソン比が0%以上10%以下である、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記うねった形状の前記直交方向に対する、
うねりの平均ピッチが100μm以上400μm以下である、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
前記フィルムは、フィルムの法線方向と直交する面に平行な面を有しており、
フィルムの法線方向からみたとき、その割合が30%以上90%以下である、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
前記うねった形状は、少なくとも前記平行方向に延在している、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記うねった形状に沿って、前記樹脂フィルムとは別の層が積層している、
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
一方の面及び他方の面の少なくとも何れか一方に形成された凹部を埋めるように、別の樹脂が積層され、
該別の樹脂のヤング率は、前記樹脂フィルムの1/10以下である、
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記うねった形状は複数の領域を有し、
各領域が請求項1~11の何れか一項に記載の特徴を有するフィルム。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載のフィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有する、
ことを特徴とするテープ。
【請求項14】
請求項1~12の何れか一項に記載のフィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有する、
ことを特徴とする貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に貼るテープ、貼付剤などに利用可能な支持体用フィルム、並びにそれを用いたテープ及び貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能、などの性質がある。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買い物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料が選択される。更にプラスチックフィルムを複数種類重ね、積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補うようにした用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、もしくは透明性などにより適正なフィルム材料を選択している。
【0003】
ところで、肌に貼るテープやシップに代表される貼付剤は、支持体となる基材フィルム上に、肌と接する粘着剤を積層した構成となっている。このような貼付剤を肌にうまく貼るためには、適度に強い曲げ剛性つまりコシ感が重要になるが、一方で、肌に貼り付けた後は、肌の動きに追従するよう適度に弱い曲げ剛性つまりコシ感がないことが望まれている。すなわち、コシ感が弱いとテープや貼付剤が折れて粘着剤同士がくっついてしまうことで肌にうまく貼れないのに対し、コシ感が強いと貼った後で、肌にモノを貼っているという違和感として感じてしまうのである。
【0004】
このような問題に対し、例えば特許文献1では貼付剤貼付用補助器具を考案し、補助器具を使うことで肌に貼ることを達成している。しかしながら、補助器具を利用するのは煩わしく手間であるし、コストもかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、補助器具を用いることなく、簡便に肌に貼ることが可能で、また、貼った後の使用感も良好なフィルム、並びにこれを用いたテープ及び貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するために、本発明のフィルムの一態様は、断面形状がうねった形状の樹脂フィルムであり、上記樹脂フィルムを構成する樹脂のヤング率が800MPa以上3000MPa以下であり、上記樹脂フィルムの曲げ剛性は異方性を有し、最も高い曲げ剛性値を有する方向と平行方向における曲げ剛性値に対する、上記平行方向と直交する直交方向における曲げ剛性値の比が、0.02以上0.5以下であることを要旨とする。
また、本発明のテープの一態様は、上記フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有することを要旨とする。
また、本発明の貼付剤の一態様は、上記フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルムの一態様によれば、簡便に肌に貼ることが可能で、また、貼った後の使用感も良好であるという効果を有する。
また、本発明のテープの一態様によれば、簡便に肌に貼ることが可能で、また、貼った後の使用感も良好であるフィルムをテープの形態で有効に利用できるという効果を有する。
また、本発明の貼付剤の一態様によれば、簡便に肌に貼ることが可能で、また、貼った後の使用感も良好であるフィルムを貼付剤の形態で有効に利用できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面形状である。
【
図4】本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面形状である。
【
図5】本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面形状である。
【
図6】本実施形態の貼付剤における一例を示す断面図である。
【
図7】本実施形態のフィルムと粘着剤との密着部分を示す断面図である。
【
図8】本実施形態のフィルムの変形例を示す断面図である。
【
図9】本実施形態のフィルムの変形例を示す断面図である。
【
図10】本実施形態のフィルムの区画を示す平面図である。
【
図11】実施例1におけるフィルムの構成を示す斜視図である。
【
図12】本実施形態のフィルムのループステフネス試験の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のフィルム並びにそのフィルムを用いたテープ及び貼付剤の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0011】
(フィルム)
フィルム1は、
図1に示すように、断面形状がうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部2bと凸部2aを繰り返す凹凸構造2を有する。このように断面形状を蛇腹状にすることで、フィルム1の曲げ剛性に異方性を持たせることが出来る。このとき、フィルム1は、最も高い曲げ剛性値を有する方向と平行方向における曲げ剛性値に対する、上記平行方向と直交する直交方向における曲げ剛性値の比が、0.02以上0.5以下である。
図1の場合、図中奥行き方向の曲げ剛性値が大きくなり、それに直交する左右方向の値が小さくなり、この比が0.02~0.5の範囲内に入る。
【0012】
<ヤング率>
さらに、フィルム1を構成する樹脂のヤング率は、800MPa以上3000MPa以下である。
ここで、フィルム1を構成する樹脂のヤング率とは、この樹脂を用いて作製した表面に凹凸構造のないフィルムのヤング率を示すものであり、材料自体の硬さを示す指標である。ヤング率が800MPaを下回ると、凹凸構造2による異方性に関わらず柔らかくなりすぎ、3000MPaを超えると、硬くなりすぎてしまう。
【0013】
フィルム1の曲げ剛性が小さい程、フィルム1を肌へ貼る時に、フィルム1がシワシワになったりフィルム1同士がくっついてしまったり、貼りにくい。一方で、フィルム1のコシが大きい(曲げ剛性が大きい)程、肌に貼った後に、硬いものを貼っているという違和感を感じやすい。フィルム1は、一方向には曲げ剛性値が高く、その直交方向には曲げ剛性値が低いという、異方性をもたせることで、貼る時には、コシが高く肌に貼り付けやすく、貼った後はコシがなく違和感を感じにくい特性を得ることが出来ることがわかった。
【0014】
曲げ剛性値の比が0.5を超えると、異方性の影響が小さくなり、ヤング率が低い場合には貼りにくい特性になり、ヤング率が高い場合には使用感は悪い特性になってしまい、貼りやすさと使用感の両立ができない。また、曲げ剛性値の比が0.02を下回ると、異方性が大きくなりすぎ、曲げ剛性値が小さい方向に曲がりやすすぎ貼りにくくなってしまったり、曲げ剛性値が大きい方向に曲がりにくく使用感が悪くなってしまったりする。
【0015】
ここで、
図1の場合は、凹凸構造2は図中の奥行き方向に直線状に延在しているが、必ずしも、一方向のみに延在している必要はない。
図2のような二方向に延在されたようなクロス形状となっていても良い。ただし、このとき、90度の回転対称形となっていては、曲げ剛性に異方性は生まれないため、一方向の畝(凸部2aが延びた突条部)の数は他方向の畝の数に比べて少なくなっている必要がある。さらに、クロス形状の場合、
図2では二方向の畝の高さが一致しているが異なっていても問題ない。
【0016】
<ループステフネス>
また、フィルム1は、ループ状にしたときの方向によって得られるそれぞれのループステフネス値が特定の範囲内であることが好ましい。ループステフネス値は、例えば、幅15mmのフィルム1をループ状にし、ループの長さ(周長)が85mm、押し込み距離20mmの測定条件にて測定される。具体的には、フィルム1において曲げ剛性が高くなる方向と平行方向にループを形成したときに得られるループステフネス値が2mN/15mm以上40mN/15mm以下であることが好ましい。また、フィルム1において曲げ剛性が高くなる方向と直交方向にループを形成したときに得られるループステフネス値が0.5mN/15mm以上5mN/15mm以下であることが好ましい。
どちらの方向のループステフネス値も、上記範囲未満になると貼り付け時のコシが十分でなく貼りにくくなってしまい、上記範囲を超えてしまうとコシ感が十分にあるため肌に貼り付けた際に違和感を感じやすくなってしまう。
【0017】
ループステフネス値は、株式会社東洋精機製作所製ループステフネステスタを利用することで得ることができる。
図12にループステフネス試験中の様子を示す。ループステフネス試験は、
図12のように、フィルム1をチャック21で固定することでループ状にし、ループ状のフィルム1を圧子22により押込み、その時の圧子の荷重を測定する試験である。圧子22の押し込む距離は、押込み距離により規定され、押込み距離とは圧子22とチャック21が最も近づいた時の距離を表す。ループステフネス値とは、この試験で得られる荷重の最大値を示すものである。
【0018】
<フィルムの厚み>
フィルム1の凹凸構造2も含めた見掛け上の厚みTは20μm以上100μm以下であり、凹凸構造2を含めないフィルム厚み(フィルム1自体の厚み)tは5μm以上40μm以下であると良い。より好ましくは、見掛け上の厚みTは30μm以上80μm以下であり、フィルム厚みtは10μm以上30μm以下である。見掛け上の厚みT、フィルム厚みtについては
図3に示す。各厚みを上記範囲内にすることで、適度な曲げ剛性の異方性、曲げ剛性値を有することができるようになる。
なお、凹凸構造2や各厚みは、本発明の効果を損なわない限りフィルム1の場所によって均一である必要はなく不均一であっても良い。不均一の時には、どの場所でも上記範囲に入っていると良い。
【0019】
さらに、見掛け上の厚みTが、フィルム厚みtの2倍を超えると良い。弱い力で伸びる特性を得ることができるためである。見掛け上の厚みTがフィルム厚みtの2倍を超えると、凹凸構造2の高さH(=T-t)がフィルム厚みtを上回り、フィルムを引っ張った際に、フィルム材料の弾性変形による伸びではなく、凹凸構造2の形状変化による伸びを発現させることができるためである。模式図を
図4に示す。
【0020】
このとき、形状変化による弱い力で伸びる特性は、凹凸構造2の延在方向とは直交する方向について得られる特性である。例えば、
図1のような一方向に延在した凹凸構造2の場合、図中左右方向に引っ張った場合には弱い力で伸びるが、図中奥行き方向に引っ張った場合には弱い力では伸びない。図中奥行き方向には凹凸を持たず、伸びるためにはフィルム1の材料の弾性変形が必要であることから大きな力が必要になる。また、例えば、
図2のような二方向に延在した凹凸構造2の場合は、どちらの方向に対しても形状変化による伸びる特性は得られるが、直交する互いの畝が交差する部分では、形状変化を阻害する働きをするため、
図1のような一方向に延在した凹凸構造2に比べると、伸ばすのに必要な力は大きくなってしまう。つまり、畝の数が多い方向にはより弱い力で伸びるようになり、畝の数が少ない方向にはそれなりの力が必要になる。
【0021】
<破断伸度、モジュラス値>
このような弱い力で伸びる特性は、肌に貼ったときの使用感に大きく影響する。運動をした際の体や肌の動きに追従しやすくなるため、使用感が良くなるのである。一方向のみに伸びる特性であっても、使用感が良くなることを我々は確認している。さらに、曲げ剛性が高くなる方向と直交する方向の破断伸度が20%以上であり、この方向における10%モジュラス値が0.5N/15mm以上5N/15mm以下であると、なお良い。ここで、10%モジュラス値とは、フィルム1を10%伸ばした時にかかる力を示す。
また、直交する方向には伸びにくいため、接合又は縫合した創部が開口しないように固定するために使用することも可能である。
【0022】
<ポアソン比>
また、曲げ剛性が高くなる方向と直交する方向への伸度が0~20%の範囲内において、フィルム1のポアソン比が0%以上10%以下であると良い。ここで、ポアソン比とは、ある方向に引っ張ったときに、その方向の歪み(=伸び)に対する、その方向とは直交する方向の歪み(=縮み)の比を示す。一般的なフィルムのポアソン比は30~40%程度の値を示すが、本フィルム1は上記のように形状変更による伸びを示すため、見掛け上、ポアソン比を小さくすることが可能である。このポアソン比が小さいということは、引っ張ったときに縮まないことを示しており、動きへの追従性が高まることで、肌に貼ったときに使用感が良くなるのである。
【0023】
凹凸構造2は凹部2bと凸部2aが規則的に並んでいる周期的構造であると好ましい。非周期的な構造としないことで、意図した伸び性を得やすいと同時に、凹凸構造2の設計や製作を簡便にすることができる。但し、非周期的な凹凸構造2や部分的に凹凸構造2の幅を変更することは任意である。
【0024】
<平均ピッチ>
凹凸構造2の延在する方向と直交する方向に対するうねりの平均ピッチP、つまり、畝の平均的なピッチが、100μm以上400μm以下であると良い。
ここで、平均ピッチPとは畝と畝との間隔の平均を示しており、畝の配置については、均一になっていても良いし不均一になっていても良い。うねりの平均ピッチを上記範囲内にすることで、適度な形状変化による伸び特性、10%モジュラスやポアソン比を有することができるようになる。
【0025】
凹凸構造2は、厚さ方向の断面図において、直線や曲線を種々組み合わせた形状であり、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム全面で同一パターンでも良いし、異なるパターンを組み合わせても良い。具体的には、
図1や
図5(a)のように台形形状でも良いし、
図5(b)(c)のような台形形状でも良い。また台形でなく、
図5(d)のように三角形状でも良いし、台形の角部がなだらかになった形や、三角形状がなだらかになった波型形状であっても良いが、これらの形状に限定するものではない。
【0026】
凹凸構造2は、フィルム1の法線方向と直交する面に平行な面を有しており、フィルムの法線方向からみたとき、その割合が30%以上90%以下であると、なお良い。このようにすることで、
図6のように、フィルム1の片面に配置する、粘着剤10やインキ11との密着性を向上させることができる。
図6は、本フィルム1を用いた貼付剤の一例で、上から、インキ11、フィルム1、粘着剤10、ライナー12が積層されており、使用時はライナー12を剥離し、使用することとなる。
【0027】
図7に凹凸構造2と粘着剤10との接触面について示す。フィルム1の法線方向と直交する面に平行に、凹凸構造2は面を有するため、粘着剤10との密着性は保つことができる。そのため、
図7(a)のように粘着剤10は凹部2b部分のみで接していても良いし、
図7(c)のように凸部2a部分までも埋まっていても良いし、
図7(b)のように中間の状態になっていても良い。
【0028】
フィルム1は、
図8のように、凹凸構造2に沿って、2種類以上の層が積層していても良い。例えば、バリア性をもった機能層4とコスト低減のための嵩増層3であったり、薬剤非吸着性をもった層4と伸長しても元に戻る伸長回復性をもった層3であったりしても良い。この場合、2つ以上の層を合わせて、フィルム1となる。
【0029】
<別の樹脂のヤング率>
また、
図9のように、フィルム1の凹凸構造2の凹部、すなわちフィルム1の一方の面及び他方の面の少なくとも何れか一方に形成された凹部を埋めるように、別の樹脂13が積層している場合、この別の樹脂13のヤング率は、フィルム1材料のヤング率の1/10以下であると良い。別の樹脂13としては、例えば、伸長しても元に戻る伸長回復性をもった樹脂などが利用できるが、別の樹脂13が硬いと本発明の効果を得ることができなくなってしまうので、フィルム1材料のヤング率の1/10以下であると良い。より好ましくは、1/20以下である。
【0030】
<配列構造>
また、
図10のように、フィルム1は、凹凸構造2を含んだ複数の領域1Aを有し、その領域が並んだフィルムとなっていても良い。フィルム1は、物性に異方性をもつことから、ハンドリング性を向上させるために、例えば、隣の領域では90度回転させた凹凸構造2とすることで、フィルム全体としては、等方的なフィルムとして扱えるような工夫をしても良い。この場合、肌に貼る等の使用時は、断裁し、各領域1Aをフィルム1として扱うことになる。
また、貼付剤支持体用フィルム1の全面を、凹凸構造2を設ける必要もない。例えば、左右両側の縁部やフィルムの幅方向の中央部や、隣り合う領域1Aの間などに、凹凸構造2を形成しない箇所があっても良い。
【0031】
<材料>
フィルム1の材料は、特に限定される必要があるものではないが、貼付剤として使用される場合には、フィルム1の一方の面に、薬剤入りの粘着剤10が配置されるため、薬剤バリア性を有する材料から構成されると良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体を好ましく使用することが出来る。このような材料を用いれば、例えばリバスチグミン、ツロブテロールのような薬剤に対し、薬剤バリア性を有する。その他の材料を用いた場合にも、例えば、薬剤バリア層4を少なくとも有していれば問題ない。
【0032】
また、フィルム1は、凹凸構造2が潰れることによる衝撃吸収性も高いという特性も有している。
【0033】
<フィルムの製造方法>
フィルム1の製造方法については、例えば熱プレスによる方法や、押出成形による方法を用いることができる。
【0034】
[熱プレス]
熱プレスによる方法では、離形性を有する複数のフラットフィルムを重ね、もしくは、離形性を有する複数の層を保持するフラットフィルムを、凹凸形状を設けた加熱ロール間、もしくは加熱した平板状のプレス機に通すことで、凹凸構造2を付与することが可能である。この際、プレス深さやプレス圧を調整することによって、フィルム表面及び層界面に、所望の凹凸形状が付与され、冷却後に凹凸構造2を付与した複数の層のフィルムを剥離することによりフィルム1を得ることができる。
又は、製膜した単層でフラットのフィルム1を、プレス表裏に凹凸形状を設け精密位置合わせされたプレス機に通すことにより、うねった形状のフィルム1を得ることが可能である。
【0035】
[押出成形]
また、押出成形による方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の別の樹脂をフィードブロック法、又はマルチマニホールド法により共押出することで、フィルム1を片側表面に配置した2層以上の多層構成のフィルムを得ることができる。フィルム化するための冷却工程において、フィルム1を配置した面に、凹凸構造2に対応する凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造2をつけることが出来る。この時、冷却ロールと接するフィルム1のフィルム厚さに対し、凹凸構造2の山谷の高低差Hが大きいときには、フィルム1の冷却ロールと反対面の界面にも同様に凹凸構造2が付加されるため、冷却後に凹凸構造2を付与したフィルム1を多層フィルムから剥離することにより、本実施形態のうねった形状のフィルム1を得ることができる。
【0036】
さらに押出成形による別の方法では、1台の押出機から単層にて押出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸構造2に対応する凹凸が表面に設けられた1対の冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造2が付与された、うねった形状のフィルム1を得ることが可能である。
【0037】
その他、射出成形など、凹凸構造2を付加するいずれかの方法が選択可能であり、特に方法が限定されるものではない。
【0038】
フィルム1は、後工程で表面に印刷層や蒸着層、ハードコート層、反射防止層、粘着剤との密着性向上のためのアンカーコート層などの機能層を積層した積層体とすることもできる。又は、別の熱可塑性樹脂などを積層した積層体とすることもできる。別の熱可塑性樹脂は、例えば上述のような機能層を構成する場合もあるし、さらに強度などの機能アップ層を構成する場合もある。
【0039】
(テープ)
本発明の一態様としてのテープは、上述したフィルム1の少なくとも一方の面に粘着剤層を有してなる。このように構成することで、簡便に肌に貼ることが可能で、また、貼った後の使用感も良好であるフィルムをテープの形態で有効に利用できる。
【0040】
(貼付剤)
本発明の一態様としての貼付剤は、上述したフィルム1の少なくとも一方の面に粘着剤層を有してなる。このように構成することで、簡便に肌に貼ることが可能で、また、貼った後の使用感も良好であるフィルムを貼付剤の形態で有効に利用できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例0042】
以下、本発明者が作製した実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
フィルム1の材料として、ユニチカ株式会社製のユニチカポリエステル樹脂(A-PET)MA-2101M(ヤング率1520MPa)を用いた。フィルム1は、共押出成形により、フィルム1側を凹凸の付いたロールにニップし、2層構造に製膜して凹凸構造2を付与した。その後、フィルム1を共押出フィルムと剥離し、実施例1のサンプルとした。共押出の材料としては、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバテックLD LC701を用いた。
フィルム1の厚みtは20μmとし、凹凸構造2は、台形断面形状を周期的に並べる形状とした。台形の凹凸構造2の高さHは60μm、ピッチPは175μm、上辺長さUは74μm、下辺長さDは143μmとした。この台形の凹凸構造2を形状Aとする。
図11に台形の凹凸構造2について示す。以下、台形の凹凸構造2が延在した方向をx方向、x方向に直交し、台形の凹凸構造2が並んだ方向をy方向をする。
【0044】
(実施例2)
台形の凹凸構造2の高さHは45μm、ピッチは175μm、上辺長さは74μm、下辺長さは127μmとした。この台形の凹凸構造2を形状Bとする。それ以外は実施例1と同様とし、実施例2のサンプルを作製した。
【0045】
(実施例3)
台形の凹凸構造2の高さHは30μm、ピッチは124μm、上辺長さは74μm、下辺長さは110μmとした。この台形の凹凸構造2を形状Cとする。それ以外は実施例1と同様とし、実施例3のサンプルを作製した。
【0046】
(実施例4)
フィルム1の厚みtは30μm、台形の凹凸構造2は形状Aとし、それ以外は実施例1と同様とし、実施例4のサンプルを作製した。
【0047】
(実施例5)
フィルム1の材料として、三菱ケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノール D2908(ヤング率880MPa)を用いた。貼付剤支持体用フィルム1の厚みtは30μmとし、台形の凹凸構造2の高さHは100μm、ピッチPは385μm、上辺長さUは205μm、下辺長さDは224μmとした。この台形の凹凸構造2を形状Dとする。それ以外は実施例1と同様とし、実施例5のサンプルを作製した。
【0048】
(実施例6)
台形の凹凸構造2を形状A、それ以外は実施例5と同様とし、実施例6のサンプルを作製した。
【0049】
(実施例7)
フィルム1の材料として、東洋紡株式会社製の東洋紡エステルフィルム(二軸延伸PET)E-5100(商品名;ヤング率2620MPa)を用い、熱プレス法により、凹凸構造2を形成した。フィルム1の厚みtは12μm、台形の凹凸構造2を形状B、それ以外は実施例1と同様とし、実施例7のサンプルを作製した。
【0050】
(実施例8~10)
フィルム1の厚みtは16μm、それ以外はそれぞれ実施例1,2,3と同様とした実施例8,9,10のサンプルを作製した。
【0051】
(実施例11~13)
フィルム1の厚みtは12μm、それ以外はそれぞれ実施例1,2,3と同様とした実施例11,12,13のサンプルを作製した。
【0052】
(実施例14~16)
フィルム1の厚みtは8μm、それ以外はそれぞれ実施例1,2,3と同様とした実施例14,15,16のサンプルを作製した。
【0053】
(実施例17)
フィルム1の厚みtは30μm、それ以外は実施例3と同様とした実施例17のサンプルを作製した。
【0054】
(比較例1)
台形の凹凸構造2を形状Dとし、それ以外は実施例8と同様とし、比較例1のサンプルを作製した。
【0055】
(比較例2)
台形の凹凸構造2の高さHは15μm、ピッチは117μm、上辺長さは74μm、下辺長さは86μmとした。この台形の凹凸構造2を形状Eとする。それ以外は実施例8と同様とし、比較例2のサンプルを作製した。
【0056】
(比較例3)
押出成形時にフィルム1側に凹凸のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のないフラットなサンプルを作製した。それ以外は実施例8と同様とし、比較例3のサンプルを作製した。
【0057】
(比較例4)
押出成形時にフィルム1側に凹凸のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のないフラットなサンプルを作製した。それ以外は実施例5と同様とし、比較例4のサンプルを作製した。
【0058】
(比較例5)
フィルム1の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン ノバテックLD(LDPE)LC701(ヤング率120MPa)を用いた。共押出の材料には、日本ポリプロピレン株式会社製のポリプロピレン ノバテックPP(ブロックPP)BC3HFを用いた。フィルム1の厚みtは16μm、台形の凹凸構造2を形状A、それ以外は実施例1と同様とし、比較例5のサンプルを作製した。
【0059】
(比較例6)
フィルム1の厚みtを30μm、台形の凹凸構造2を形状A、それ以外は比較例5と同様とし、比較例6のサンプルを作製した。
【0060】
(ループステフネス値、曲げ剛性の比、y方向10%モジュラス値評価方法)
各実施例及び比較例における、フィルム1のループステフネス値、曲げ剛性の比、y方向10%モジュラス値の評価を実施した。
ループステフネス値の評価は、株式会社東洋精機製作所製ループステフネステスタ(DA-S)を用いて実施した。サンプル幅は15mm、ループの長さは85mm、押し込み距離(チャック-圧子間距離)は20mmとした。なお、比較例5,6のフィルムは、柔らかすぎてループ状にならなかった。
曲げ剛性の比は、x方向にループ状にしたときのループステフネス値に対する、y方向にループ状にしたときのループステフネス値の比を算出した。
y方向10%モジュラス値の評価は、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて実施した。JISK7127:1999 プラスチック-引張特性の試験方法-の試験条件に準拠し、サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minにおいて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与した際の荷重を測定する引張試験を実施し、フィルム1をy方向に10%伸ばした際の引張荷重をy方向10モジュラス値とした。
【0061】
(使用感評価方法)
各実施例及び比較例におけるフィルム1の使用感を評価するため、各実施例及び比較例に粘着剤を塗工し、それを肌に貼付した。このときの、肌への「貼りやすさ」と貼った後の「貼り心地」の官能評価を実施した。
「貼りやすさ」評価は、貼りにくいと感じたものを「×」、貼りやすいと感じたものを「〇」、特に貼りやすいと感じたものを「◎」とした。
「貼り心地」評価は、1日貼付して違和感を感じるかどうかで評価し、違和感を強く感じたものを「×」、それほど感じなかったものを「〇」、あまりなかったものを「◎」とした。
【0062】
(総合評価)
実施例1~7及び比較例1~7のフィルムにおいて、「貼りやすさ」と「貼り心地」のどちらか一方でも「×」だったものは「×」とし、どちらも「〇もしくは◎」だったものは「〇」、中でも、どちらも「◎」だったものは「◎」とした。
【0063】
各実施例における条件、及び評価結果の一覧表を表1に示す。また、各比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表2に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
(評価結果)
表1,2の実施例と比較例の総合評価を見比べると、同じ材料でも「〇」のものもあれば「×」のものもあり、また、同じ形状、同じ厚みであっても「〇」「×」が混在していることがわかる。
実施例は、総合評価で「〇」以上となり、これらは、材料ヤング率が800MPa以上3000MPa以下かつ曲げ剛性値の比が0.02以上0.5以下であることを満たしている。一方で、比較例は、総合評価で「×」となっており、これらは、材料ヤング率もしくは曲げ剛性の比が上記範囲外になっていることがわかる。
【0067】
比較例1では、材料がA-PETと比較的硬く、さらに形状Dという大きな構造体のため、x方向のループステフネス値が大きく、それゆえに貼りやすい結果となったが、貼り心地はx方向に硬すぎるため悪い結果となった。
比較例2では、形状Eという小さな構造体のため、曲げ剛性に異方性がなく、x方向・y方向のループステフネス値がともに小さく、貼りにくい結果となった。
比較例3,4では、形状がなくフラットなため、さらに曲げ剛性に異方性がなく、貼りにくい結果となった。
比較例5,6では、材料が柔らかすぎ、凹凸構造を形状Aにしても、まだ柔らかいことで、貼りにくい結果となった。
【0068】
実施例1,2,6,7,8,9,10,11,12,13は、適度に曲げ剛性に異方性があり、適度な材料ヤング率のため、貼りやすさ・貼り心地ともに良好な結果(「◎」)となった。
実施例3は、曲げ剛性の異方性、材料ヤング率とも適度なため良好な結果が得られたが、形状Cという構造が小さいため、y方向10%モジュラス値が若干高い数値となっており、伸びにくくなり、貼り心地は「〇」にとどまった。
実施例4、5は、厚みを向上させたことで、ループステフネス値が高くなったことで、少し硬く感じたため、貼り心地は「〇」にとどまった。
実施例14,15,16は、y方向のループステフネス値が低くなってしまったことで、柔らかくなり少し貼りづらくなったため、貼りやすさは「○」にとどまった。また実施例14は、さらにy方向モジュラス値が低かったことも影響している。
実施例17は、曲げ剛性の異方性、材料ヤング率とも適度なため良好な結果が得られたが、厚みを向上させ、さらに形状Cという構造が小さいため、y方向のループステフネス値とy方向10%モジュラス値が高い数値となったことで、少し硬く感じたため、貼り心地は「〇」にとどまった。