(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083240
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】異常検出ブレーカ、及び分電盤
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20220527BHJP
H01H 73/00 20060101ALI20220527BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
H01H83/02 E
H01H73/00 Z
H02B1/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194573
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 史迅
(72)【発明者】
【氏名】宮村 雄介
【テーマコード(参考)】
5G030
5G211
【Fターム(参考)】
5G030XX15
5G030XX17
5G030YY13
5G211DD13
5G211DD21
5G211DD36
5G211DD37
5G211GG05
5G211GG06
5G211GG08
5G211GG10
(57)【要約】
【課題】任意のタイミングで異常状態の検出状況を確認できる異常検出ブレーカ、及び分電盤を提供すること。
【解決手段】異常検出ブレーカ4は、電気回路C1に含まれる給電路C11と接続されており、検出部41と、接点43と、異常提示部451と、記録部44と、を備える。検出部41は、異常状態を検出する検出処理を行う。接点43は、幹線電路C2と電気回路C1との電気的な接続を導通及び遮断することができ、検出部41が異常状態を検出した場合、電気的な接続を遮断する。異常提示部451は、異常状態を提示する。記録部44は、検出部41が検出した異常状態の履歴を記憶する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路に含まれる給電路と接続される異常検出ブレーカであって、
前記電気回路の異常状態を検出する検出処理を行う検出部と、
前記電気回路への電力供給を行う幹線電路と前記電気回路との電気的な接続を導通及び遮断することができ、前記検出部が前記異常状態を検出した場合、前記電気的な接続を遮断する接点と、
前記検出部が検出した前記異常状態を提示する異常提示部と、
前記検出部が検出した前記異常状態の履歴を記憶する記録部と、を備える、
異常検出ブレーカ。
【請求項2】
前記異常状態は、前記電気回路にアークが発生した状態である、
請求項1に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項3】
前記異常状態の履歴を提示する履歴提示部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項4】
前記履歴提示部は、前記異常状態の履歴を視覚的に提示する、
請求項3に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項5】
前記履歴提示部は発光素子で構成され、
前記発光素子が前記異常状態の履歴を視覚的に提示する、
請求項4に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項6】
前記履歴提示部は、前記異常状態の履歴を聴覚的に提示する、
請求項3~5のいずれか1項に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項7】
前記履歴提示部は、前記異常提示部を兼用する、
請求項3~6のいずれか1項に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項8】
前記検出部は、検出回路と診断回路とを備え、
前記診断回路は、前記検出回路が前記検出処理を正常に実行できるか否かを診断する診断処理を行い、
前記診断処理の結果を提示する診断結果提示部をさらに備え、
前記履歴提示部は、前記診断結果提示部を兼用する、
請求項3~7のいずれか1項に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項9】
操作によって前記接点による電気的な接続の導通及び遮断を切り替えるハンドルと
前記ハンドルの状態を提示するハンドル状態提示部と、をさらに備え、
前記履歴提示部は、前記ハンドル状態提示部を兼用する、
請求項8に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項10】
操作によって前記接点による電気的な接続の導通及び遮断を切り替えるハンドルと、
前記診断処理についての操作を受け付ける診断操作ボタンと、
前記履歴提示部における提示の開始、もしくは提示内容の変更についての操作を受け付ける操作部と、をさらに備え、
前記操作部は、前記ハンドルと前記診断操作ボタンとで構成される、
請求項8又は9に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項11】
外部システムと通信可能である通信部をさらに備え、
前記通信部は、前記記録部が記憶している前記異常状態の履歴を前記外部システムへ送信する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の異常検出ブレーカ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載されている異常検出ブレーカと、
前記異常検出ブレーカを収容する筐体と、を備える、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、異常検出ブレーカ、及び分電盤に関する。より詳細には、本開示は、ブレーカに接続されている電気回路の異常状態を検出する異常検出ブレーカ、及び分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路遮断器が開示されている。この回路遮断器は、開極機構部と、アーク検出回路と、を備える。開極機構部は、電源と負荷との間を結ぶ電路を遮断する。アーク検出回路は、電路に生じたアーク短絡を検出して開極機構部を動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアーク検出ブレーカは、異常状態の検出状況をアーク検出ブレーカの復旧後に確認できない、という問題があった。
【0005】
本開示の目的とするところは、任意のタイミングで異常状態の検出状況を確認できる異常検出ブレーカ、及び分電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る異常検出ブレーカは、電気回路に含まれる給電路と接続されており、検出部と、接点と、異常提示部と、記録部と、を備える。前記検出部は、前記電気回路の異常状態を検出する検出処理を行う。前記接点は、前記電気回路への電力供給を行う幹線電路と前記電気回路との電気的な接続を導通及び遮断することができ、前記検出部が前記異常状態を検出した場合、前記電気的な接続を遮断する。前記異常提示部は、前記検出部が検出した前記異常状態を提示する。前記記録部は、前記検出部が検出した前記異常状態の履歴を記憶する。
【0007】
本開示の一態様に係る分電盤は、上記の異常検出ブレーカと、筐体と、を備える。前記筐体は、前記異常検出ブレーカを収容する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、任意のタイミングで異常状態の検出状況を確認できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る異常検出ブレーカを備える分電盤の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、同上の異常検出ブレーカの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3Aは、パラレルアークの発生原理の説明図である。
図3Bは、シリーズアークの発生原理の説明図である。
【
図4】
図4は、同上の異常検出ブレーカを正面から見た平面図である。
【
図5】
図5は、同上の異常検出ブレーカにおける、異常状態の検出から復旧までの動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、同上の異常検出ブレーカにおける、異常状態の発生回数の提示動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る異常検出ブレーカ4は、
図1に示すように、分電盤1に収納されており、分電盤1の分岐ブレーカに該当する。異常検出ブレーカ4は、給電路C11を含む電気回路C1の異常状態を検出し、異常検出時に電気回路C1に至る電路を遮断するために用いられる。本実施形態の分電盤1は、分岐ブレーカである異常検出ブレーカ4と、主幹ブレーカ3と、異常検出ブレーカ4及び主幹ブレーカ3を収容する筐体10と、を備える。
【0011】
また、本実施形態の異常検出ブレーカ4は、
図2に示すように、検出部41と、接点43と、記録部44と、異常提示部451と、を備える。検出部41は、電気回路C1の異常状態を検出する。
【0012】
本開示でいう異常状態は、電気回路C1の配線における絶縁劣化又は半断線等の異常を含み得る。本開示でいう「半断線」は、断線しかかっている状態を意味し、具体的には、電気回路C1の配線がより線であれば、より線を構成する複数本の素線のうちの一部の素線が断線した状態である。異常状態は、一例として、電気回路C1が一対の電線C10で構成される場合に、一対の電線C10の両方が短絡することでアーク(いわゆるパラレルアーク)が発生した状態を含み得る。また、異常状態は、一例として、電気回路C1が一対の電線C10で構成される場合に、一対の電線C10のうちの一方が半断線することでアーク(いわゆるシリーズアーク)が発生する状態を含み得る。
【0013】
本実施形態の異常検出ブレーカ4は、制御部42をさらに備える。一般的に、異常検出ブレーカ4内の検出部41が異常状態を検出した場合、制御部42が異常検出ブレーカ4内の接点43で、電気回路C1への電力供給を行う幹線電路C2と電気回路C1との電気的な接続を遮断し、電流が電気回路C1に流れない状態にする。その後、異常検出ブレーカ4を操作する者(以下、ユーザとする)は、幹線電路C2と電気回路C1との電気的な接続を導通させるために、異常検出ブレーカ4を復旧させる。本実施形態では、異常状態の履歴を記憶する記録部44があり、ユーザの任意のタイミングで異常状態の履歴を確認できる。
【0014】
(2)詳細
以下、本実施形態での異常検出ブレーカ4又は、異常検出ブレーカ4を備える分電盤1について、
図1、2を用いて詳細に説明する。
【0015】
分電盤1は、例えば戸建て住宅又は集合住宅の住戸等の施設500に設置されて使用される。なお、分電盤1が設置される施設500は、戸建て住宅又は集合住宅の各住戸に限定されず、非住宅の建物(例えば、工場、商業用ビル、オフィスビル、病院、学校等)に設置されてもよい。
【0016】
(2.1)異常検出ブレーカ
本実施形態の異常検出ブレーカ4は、
図2に示すように、第一端子461と、第二端子462と、を備える。第一端子461は接点43よりも上流側にあり、幹線電路C2と電気的に接続される。一方、第二端子462は接点43より下流側にあり、電気回路C1に含まれる給電路C11と電気的に接続される。電気回路C1には、照明器具、給湯設備等の電気機器22、コンセント21又は、コンセント21に接続された電気機器22(例えば空調機器又はテレビ受像器等)が負荷として1つ以上接続される(
図1参照)。
【0017】
電流測定装置47は、第一端子461と第二端子462との間に流れる電流を測定する。その後、検出部41は、測定された電流に基づいて、異常状態を検出する。本実施形態では、異常状態は電気回路C1にてアークが発生した状態も含み得る。例えば、検出部41は、アーク短絡保護遮断器(AFCI:Arc Fault Circuit Interrupter)の様に、電気回路C1で発生するアーク故障に特有の電流特性及び電圧特性を認識し、電気回路C1で発生するアーク故障を検出できる装置である。また、検出部41は、電流測定装置47で測定した電流の波形に異常発生時の個別波形が含まれているか、否かの判定によって、電気回路C1で発生するアーク不良故障を検出できるシステムであってもよい。
【0018】
本実施形態では、電気回路C1の異常状態には、既に述べたように、パラレルアークの発生と、シリーズアークの発生と、が含まれる。パラレルアークは、
図3に示すように、電気回路C1の配線を構成する一対の電線C10の各導体が接触する等して短絡することにより発生し得る。
図3における点線の矢印は、パラレルアークの発生時において電気回路C1の配線を流れる電流の経路を表している。パラレルアークの発生時において配線を流れる電流の大きさは、例えば数十〔A〕~数百〔A〕である。パラレルアークは、例えば施設にある器物(例えば、家具等)の端縁に配線が引っ掛かることで被覆C12が損傷したり、ステップル等の金属製の部材で配線を挟み込んだりすることで生じ得る。また、パラレルアークは、例えば配線に過電流が流れて被覆C12が溶融したり、動物が電気回路C1の配線を噛んだりすることで生じ得る。その他、パラレルアークは、配線が長期的に紫外線を浴び続けることで劣化した場合にも生じ得る。よって、アーク故障は配線の周辺環境や接続される電気機器22に依存せず、どの配線においてもアーク故障が発生する危険がある。よって、
図1のように、異常検出ブレーカ4は電気回路C1のすべてに取り付けられることが多い。
【0019】
また、制御部42は、異常検出ブレーカ4の各部分の動作や演算、読み書き、入出力等の制御を行う。一例としては、検出部41での検出結果に基づく接点43の開極や、記録部44に記憶されている異常状態の履歴の読み出し、異常状態の有無を異常提示部451での提示等を行う。本実施形態では、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサである。
【0020】
異常検出ブレーカ4は、第一端子461と第二端子462との間に電気的に接続された接点43を備える。接点43を開閉させることで、幹線電路C2と電気回路C1との間の電気的な接続を遮断又は導通することが可能である。検出部41が電気回路C1の異常状態を検出した場合、制御部42が接点43を開極させ幹線電路C2と電気回路C1との電気的な接続を遮断し、異常状態が発生した電気回路C1への電力供給を遮断する。
【0021】
また、異常検出ブレーカ4は、接点43と連動したハンドル481をさらに備える。ハンドル481がユーザによって操作されることで、接点43が開閉する。具体的には、ユーザがハンドル481をオン位置に操作することで接点43が閉極して導通し、ユーザがハンドル481をオフ位置に操作することで接点43が開極して遮断する。
【0022】
検出部41が異常状態を検出し、制御部42が接点43を開極させ、幹線電路C2と電気回路C1との電気的な接続を遮断した場合、ハンドル481は、オンとオフの中間位置(以下、トリップ位置とする)に移動する。その後、ユーザが遮断した異常検出ブレーカ4を復旧させる場合は、オン位置にハンドル481を移動させる復旧作業が必要になる。
【0023】
制御部42は、検出部41の検出結果に基づき、異常提示部451に異常状態発生の有無をユーザへ提示させる。本実施形態では、検出部41で異常状態が検出され、制御部42が接点43で電気的な接続を遮断した場合に、ハンドル481が制御部42によってトリップ位置へ移動する。よって、異常提示部451は、異常検出の結果をユーザへ提示する。
【0024】
また、制御部42は、検出部41での異常状態の履歴を記録部44に記憶させる。本開示の記録部44は、例えば、磁気コアメモリや半導体メモリ等の記憶装置である。また、記録部44はSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置であってもよい。異常状態の履歴は、例えば、異常状態の発生回数、検出時刻、継続した期間、等を含み入る。
【0025】
本実施形態の異常検出ブレーカ4は履歴提示部452をさらに備える。制御部42が記録部44から異常状態の履歴のデータを読み出す。その後、制御部42から異常状態の履歴のデータを受け取った履歴提示部452が、ユーザへ異常状態の履歴を提示する。また、記録部44で記憶されている異常状態の履歴は、ユーザが異常検出ブレーカ4の復旧作業を行っても削除されず、記録部44に記憶された状態で保持される。このため、履歴提示部452は復旧作業後でも異常状態の履歴を提示できる。そして、ユーザは異常状態の履歴を任意のタイミングで確認することができる。
【0026】
また、本実施形態では、履歴提示部452は、異常状態の履歴を視覚的にユーザへ提示する。履歴提示部452は発光素子を備えており、発光素子が異常状態の履歴を視覚的にユーザへ提示する。発光素子は、例えば、LED(Light Emitting Diode)である。履歴提示部452は、発光素子の点滅回数で、異常状態の発生回数を提示することができる。
図4では、履歴提示部452は、異常検出ブレーカ4のハンドル481の上方に配置されている。なお、履歴提示部452の位置は、例えば、ハンドル481の下方等、他の位置であってもよい。また、ハンドル481内部に発光素子を備え、発光素子が点滅することで、異常状態の発生回数を提示してもよい。
【0027】
又は、履歴提示部452はスピーカー等の音響機器を備えて、周囲へ音を鳴らすことで、聴覚的にユーザに異常状態の発生回数を提示してもよい。音は、例えば、繰り返し再生されるビープ音である。具体的には、ビープ音の短音の繰り返し回数によって、異常状態の発生回数を提示する。また、人工的に作成した合成音声を使用し、異常状態の発生回数をテキストとして読み上げることで提示してもよい。本実施形態では、視覚的な提示と聴覚的な提示は両立することが可能である。一例としては、履歴提示部452が発光素子とスピーカーとを備える場合、発光素子が点滅するタイミングと同期して、ビープ音を鳴らすことで、視覚と聴覚で同時に異常状態の発生回数をユーザへ提示することができる。
【0028】
本実施形態の検出部41は、検出回路411と、診断回路412と、を備える。検出回路411は電気回路C1の異常状態を検出する検出処理を行う。診断回路412は、検出回路411による異常状態の検出処理が正常に実行されるか否かを診断する診断処理を行う。本実施形態の異常検出ブレーカ4は、
図2又は
図4に示すように、診断操作ボタン482をさらに備えている。診断操作ボタン482が操作されると、診断操作ボタン482から制御部42へ信号が伝わり、制御部42が診断回路412に診断処理を開始させる。
図4では、診断操作ボタン482は、異常検出ブレーカ4のハンドル481の下方に配置されている。なお、診断操作ボタン482の位置は、例えば、ハンドル481の上方等、他の位置であってもよい。
【0029】
異常検出ブレーカ4は診断結果提示部453をさらに備え、制御部42が診断結果提示部453に診断処理の結果を提示させる。本実施形態の履歴提示部452は、診断結果提示部453を兼用する。一例としては、履歴提示部452が発光素子で構成される場合、検出回路411が診断回路412によって正常と診断されたとき、履歴提示部452の発光素子が緑色に点灯する。一方、検出回路411が異常と診断されたときは発光素子が赤色に点灯し、診断処理の結果をユーザに提示する。
【0030】
また、異常検出ブレーカ4は、履歴提示部452における提示の開始、もしくは提示内容の変更についての操作を受け付ける操作部48をさらに備える。制御部42が、操作部48の操作に基づいて、履歴提示部452を制御する。本実施形態では、操作部48は、ハンドル481と、診断操作ボタン482と、で構成される。一例としては、診断操作ボタン482のみを操作すると診断が開始し、検出回路411が正常と診断されたとき、履歴提示部452の発光素子が緑色に点灯する。一方、検出回路411が異常と診断されたとき、発光素子が赤色に点灯し、診断処理の結果をユーザに提示する。その後、診断操作ボタン482を押しながらハンドル481をオン位置、又は、オフ位置に変更すると、履歴提示部452の発光素子が、異常状態の発生回数と同じ回数だけ点滅する。よって、ユーザに電気回路C1で発生した異常状態の発生回数を提示する。
【0031】
本実施形態の異常検出ブレーカ4は、通信部49をさらに備える。通信部49は、外部システムと通信可能である。ここでいう外部システムは、例えば、HEMS(Home Energy Management System)に対応するモニター、又は、情報端末である。情報端末は、例えばユーザが携帯する端末であり、具体的にはスマートフォン又はタブレット型のコンピュータである。また、情報端末は、例えばデスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0032】
通信部49と外部システムとの間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。通信部49と外部システムとの間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、通信部49と外部システムとの間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等である。また、通信部49は、インターネットのような広域ネットワークを介して、外部システムと通信してもよい。
【0033】
制御部42が記録部44から異常状態の履歴を読み出し、通信部49に外部システムへ送信させる。具体的には、通信部49が情報端末から異常状態の履歴に関する情報の要求を受けた場合、制御部42が記録部44から異常状態の履歴(異常状態の発生回数、異常状態を検出した時刻、異常状態の検出が継続した期間)を読み取る。その後、制御部42は、通信部49に異常状態の履歴を含む信号を情報端末へ送信させる。ユーザは、情報端末を操作して、例えば、メールを閲覧したり、情報端末にインストールされているアプリケーションを起動したりすることにより、異常状態の履歴を確認することができる。
【0034】
上述の異常検出ブレーカ4は、任意のタイミングで異常状態の履歴をユーザへ提示することができる。したがって、ユーザは、任意のタイミングで異常状態の検出状況を確認することが可能になる。
【0035】
(3)動作
(3.1)異常状態の検出から復旧まで
以下、本実施形態の異常状態の検出から復旧までの動作について
図5を用いて説明する。
【0036】
まずは、検出部41が、電流測定装置47が測定した電流の情報を取得する(S11)。そして、検出部41が、取得した電流の情報に基づいて、電気回路C1で異常状態が発生しているか、否かの判定を行う(S12)。
【0037】
異常状態を検出すると(S12:YES)、制御部42は接点43を開極させ、幹線電路C2と電気回路C1との電気的な接続を遮断する(S13)。その後、制御部42は、記録部44に異常状態の履歴を記憶させる(S15)そして、制御部42が異常提示部451であるハンドル481をトリップ位置へ移動させることで、ユーザに対して異常状態の発生を提示する(S14)。
【0038】
その後、ユーザは電気機器22を再度使用する等の目的のために、ハンドル481をオン位置まで移動させる(S16)。すると、接点43は閉極し、幹線電路C2と電気回路C1との電気的な接続は導通する。電気機器22への電力供給が復旧する(S17)。このとき、記録部44に記憶されている異常状態の履歴は削除されない。
【0039】
(3.2)異常状態の履歴提示
以下、本実施形態の異常状態の発生回数の提示の動作について
図6を用いて説明する。
【0040】
履歴提示部452の提示を開始する、又は、提示内容を変更するためには、診断操作ボタン482を押しながらハンドル481をオン位置、又は、オフ位置に変更する操作を行う必要がある。最初に、制御部42が提示開始、又は、提示内容の変更の操作が行われたか確認を行う(S21)。上記の操作を制御部42が確認すると(S21:YES)、制御部42が記録部44から異常状態の発生回数のデータを読み出す(S22)。そして、制御部42が履歴提示部452の発光素子を、異常状態の発生回数と同じ回数点灯させ、ユーザへ異常状態の履歴を提示する(S23)。
【0041】
(3.3)本実施形態の利点
(3.1)と(3.2)の記載のように、本実施形態では、検出部41が異常状態を検出したとき、制御部42は記録部44に異常状態の履歴を記憶させる。そして、操作部48で提示開始、又は、提示内容の変更の操作を行うことで、履歴提示部452が異常状態の履歴を提示する。このため、本実施形態では、任意のタイミングで、異常検出ブレーカ4の異常状態の履歴を確認できる、という利点がある。
【0042】
以下、本実施形態の利点について、比較例の異常検出ブレーカとの比較を交えて説明する。比較例の異常検出ブレーカは、記録部44を有しておらず、検出された異常状態の履歴データを記憶するという点で本実施形態の異常検出ブレーカ4と相違する。比較例の異常検出ブレーカでは、異常状態が検出された履歴が残らないため、復旧直前しか異常状態の履歴が確認できず、ユーザの任意のタイミングで異常状態の履歴を確認できない、という問題があった。
【0043】
一方、本実施形態では、異常検出ブレーカ4が記録部44を備えていることから、異常状態の履歴を記憶することができる。そのため、例えば、復旧作業から時間が経過した場合、又は、復旧作業を行ったユーザ以外の他のユーザが確認する場合でも、異常状態の履歴を確認することが可能である。
【0044】
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0045】
上述の実施形態において、履歴提示部452は異常状態の履歴を提示できる装置であればよく、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL、蛍光表示管等でもよい。この場合の履歴提示部452は、異常提示部451を兼用することができる。また、同時に、履歴提示部452は、診断結果提示部453を兼用してもよい。一例として、履歴提示部452がディスプレイで構成されている場合、操作部48を操作することで、ディスプレイに提示されている内容を切り替えることができ、検出部41検出した異常状態や、診断処理の結果の提示が可能である。
【0046】
また、履歴提示部452が、一つの画面に同時に複数の情報を提示することが可能である液晶ディスプレイ等である場合、履歴提示部452の提示内容を切り替えるのではなく、異常状態の発生回数、又は、診断処理の結果等の複数の情報を同時に提示してもよい。
【0047】
また、上述の実施形態において、履歴提示部452が詳細な情報を提示することが可能である液晶ディスプレイ等である場合、履歴提示部452は、異常状態の履歴として、異常状態の検出時刻を提示してもよい。例えば、分電盤1に複数の異常検出ブレーカ4が搭載されている場合、異常検出によって遮断された後に異常検出ブレーカ4を復旧してしまうと、どの異常検出ブレーカ4が直前に遮断したのか特定ができないと問題があった。しかし、ユーザが異常状態の検出時刻を確認することで、直前に遮断した異常検出ブレーカ4を特定することが可能となる。
【0048】
一態様に係る異常検出ブレーカ4は、ハンドル状態提示部454をさらに備えてもよい。ハンドル状態提示部454は、ハンドル481がオン位置、オフ位置、または、トリップ位置のどの状態であるかを提示する。この態様では、履歴提示部452はハンドル状態提示部454を兼用する。具体的には、履歴提示部452がディスプレイを備える場合、操作部48の操作により、ディスプレイの提示内容が、異常状態の発生回数と、診断処理の結果と、ハンドル状態と、で順々に切り替えられ提示される。
【0049】
また、上述の実施形態において、記録部44は、異常状態の履歴として異常状態の発生回数のデータを記憶していなくてもよい。記録部44が異常状態の発生回数をデータとして持っていない場合、記録部44が異常発生の履歴として持っているデータ(異常状態の検出した時刻等)に基づいて、制御部42が異常発生状態の発生回数を算出する。その後、履歴提示部452が異常発生状態の発生回数を提示する。
【0050】
制御部42は、コンピュータシステムを備えることが好ましい。コンピュータシステムでは、CPU(Central Processing Unit)、又はMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することによって、制御部42の一部又は全部の機能が実現される。コンピュータシステムは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。
【0051】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係る異常検出ブレーカ(4)は、電気回路(C1)に含まれる給電路(C11)と接続されており、検出部(41)と、接点(43)と、異常提示部(451)と、記録部(44)と、を備える。検出部(41)は、電気回路(C1)の異常状態を検出する検出処理を行う。接点(43)は、電気回路(C1)への電力供給を行う幹線電路(C2)と電気回路(C1)との電気的な接続を導通及び遮断することができ、検出部(41)が異常状態を検出した場合、電気的な接続を遮断する。異常提示部(451)は、検出部(41)が検出した異常状態を提示する。記録部(44)は、検出部(41)が検出した異常状態の履歴を記憶する。
【0052】
この態様によれば、任意のタイミングで異常状態の履歴を確認できる、という利点がある。
【0053】
第2の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第1の態様において、異常状態は、電気回路(C1)にアークが発生した状態である。
【0054】
この態様によれば、任意のタイミングでアークが発生した状態の履歴を確認できる、という利点がある。
【0055】
第3の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第1又は第2の態様において、異常状態の履歴を提示する履歴提示部(452)をさらに備える。
【0056】
この態様によれば、ユーザが詳細な情報を受け取ることができ、異常状態の履歴を確認しやすくなるという利点がある。
【0057】
第4の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第3の態様において、履歴提示部(452)は、異常状態の履歴を視覚的に提示する。
【0058】
この態様によれば、例えば、ユーザが表示された情報を読み取ることができ、異常状態の履歴を確認しやすくなるという利点がある。
【0059】
第5の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第4の態様において、履歴提示部(452)は発光素子で構成され、発光素子が異常状態の履歴を視覚的に提示する。
【0060】
この態様によれば、例えば、履歴提示部(452)の発光素子が異常状態の発生回数と同じ回数だけ点滅することで、ユーザが異常状態の履歴に含まれる異常状態の発生回数を確認できるという利点がある。
【0061】
第6の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第3~第5のいずれかの態様において、履歴提示部(452)は、異常状態の履歴を聴覚的に提示する。
【0062】
この態様によれば、例えば、ビープ音の短音の繰り返し回数によって、ユーザが異常状態の発生回数を提示できるという利点がある。
【0063】
第7の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第3~第6のいずれかの態様において、履歴提示部(452)は、異常提示部(451)を兼用する。
【0064】
この態様によれば、履歴提示部(452)は異常状態の履歴だけではなく、検出部(41)が検出した異常状態の有無も提示できるようになり、異常検出ブレーカ(4)の構造を簡略化できるという利点がある。
【0065】
第8の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第3~第7のいずれかの態様において、検出部(41)は、検出回路(411)と診断回路(412)とを備える。診断回路(412)は、検出回路(411)が検出処理を正常に実行できるか否かを診断する診断処理を行う。この態様の異常検出ブレーカ(4)は、診断処理の結果を提示する診断結果提示部(453)をさらに備え、履歴提示部(452)は、ハンドル状態提示部(454)を兼用する。
【0066】
この態様によれば、履歴提示部(452)は異常状態の履歴だけではなく、診断処理の結果も提示できるようになり、異常検出ブレーカ(4)の構造を簡略化できるという利点がある。
【0067】
第9の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第8の態様において、操作によって接点(43)による電気的な接続の導通及び遮断を切り替えるハンドル(481)と、ハンドル(481)の状態を提示するハンドル状態提示部(454)と、をさらに備える。そして、履歴提示部(452)は、ハンドル状態提示部(454)を兼用する。
【0068】
この態様によれば、履歴提示部(452)は異常状態の履歴だけではなく、ハンドル(481)の状態も提示できるようになり、異常検出ブレーカ(4)の構造を簡略化できるという利点がある。
【0069】
第10の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第8又は第9の態様において、ハンドル(481)と、診断操作ボタン(482)と、操作部(48)と、をさらに備える。ハンドル(481)は、操作によって接点(43)による電気的な接続の導通及び遮断を切り替える。診断操作ボタン(482)は、診断処理についての操作を受け付ける。操作部(48)は、履歴提示部(452)における提示の開始、もしくは提示内容の変更についての操作を受け付ける。さらに、操作部(48)は、ハンドル(481)と診断操作ボタン(482)とで構成される。
【0070】
この態様によれば、既存のハンドル(481)や診断操作ボタン(482)を操作部(48)に流用することで、専用の操作部(48)を異常検出ブレーカ(4)に新たに設けずに、履歴提示部(452)における提示の開始、もしくは提示内容の変更を操作できるという利点がある。
【0071】
第11の態様に係る異常検出ブレーカ(4)では、第1~第10のいずれかの態様において、外部システムと通信可能である通信部(49)をさらに備える。通信部(49)は、記録部(44)が記憶している異常状態の履歴を外部システムへ送信する。
【0072】
この態様によれば、例えば、ユーザが携帯する端末で異常状態の履歴を確認することができるという利点がある。
【0073】
第12の態様に係る分電盤(1)では、第1~第11のいずれかの態様の異常検出ブレーカ(4)と、筐体(10)と、を備える。筐体(10)は、異常検出ブレーカ(4)を収容する。
【0074】
この態様によれば、例えば、異常状態の履歴を任意のタイミングで確認可能な異常検出ブレーカ(4)を備えた分電盤(1)を提供することができる。
【0075】
第2~第12の態様に係る構成については、異常検出ブレーカ(4)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 分電盤
10 筐体
4 異常検出ブレーカ
41 検出部
411 検出回路
412 診断回路
43 接点
44 記録部
451 異常提示部
452 履歴提示部
453 診断結果提示部
454 ハンドル状態提示部
48 操作部
481 ハンドル
482 診断操作ボタン
49 通信部
C1 電気回路
C11 給電路
C2 幹線電路