(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083241
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】硬化性組成物、及び接着剤組成物、並びに硬化性組成物の製造方法。
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20220527BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220527BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20220527BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220527BHJP
C09J 171/02 20060101ALI20220527BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20220527BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C08L33/06
C08L71/02
C08F220/12
C09J133/00
C09J171/02
C09J133/06
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194576
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100136803
【弁理士】
【氏名又は名称】犬飼 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】望月 克信
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG04W
4J002BG05W
4J002CH05X
4J002GJ01
4J002GL00
4J040DF041
4J040DF061
4J040EE011
4J040GA31
4J040HC01
4J040HD41
4J040HD42
4J040JB04
4J040KA14
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA01
4J040MA06
4J040MB05
4J040NA14
4J040QA04
4J100AL03P
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100AL08Q
4J100AP16Q
4J100BA77Q
4J100DA01
4J100DA02
4J100DA04
4J100DA09
4J100JA03
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】低粘度であり作業性に優れ、硬化速度が速く、且つ硬化物の機械的特性、基材との接着特性や耐熱性にも優れた硬化性組成物、及び、接着剤組成物を提供する。
【解決手段】架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)、及び架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含み、該(メタ)アクリル系重合体(A)は、架橋性シリル基を1分子中に1.5個~3.0個有するとともに、該重合体の25℃における粘度が1,000mPa・s~7,000mPa・sであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)、及び架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含む硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、架橋性シリル基を1分子中に1.5個~3.0個有するとともに、25℃における粘度が1,000mPa・s~7,000mPa・sであることを特徴とする、硬化性組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、2,000~6,000であり、重量平均分子量(Mw)との比であるMw/Mnが、1.5~2.7である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、当該(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位中、(メタ)アクリル系単量体単位を70~98質量%、架橋性シリル基を有する単量体単位を2~30質量%有し、当該(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる(メタ)アクリル系単量体単位を100質量部とした場合に、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が60~100質量部である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のうち、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位が、全(メタ)アクリル系単量体を100質量部とした場合に、4~40質量部である請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する架橋性シリル基を有する単量体は、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルである請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、二重結合を0.01meq/g~1.0meq/g有する請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記オキシアルキレン系重合体(B)は、数平均分子量(Mn)が5,000~60,000である請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)及び前記オキシアルキレン系重合体(B)の使用量は、質量比で10~90/90~10である請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
硬化促進剤として、錫系触媒、チタン系触媒及び3級アミン類からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)が高温連続重合法で製造したものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、及び、その接着剤組成物としての利用に関するものであり、より詳しくは、大気中などの水分により硬化して、優れた弾性を発現するとともに、耐熱性にも優れた硬化物を形成し得る硬化性組成物、及び該硬化性組成物を含有する接着剤組成物、並びに該硬化性組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性接着剤は、硬化物がゴム弾性を有する接着剤のことであり、接着部にかかる内外の応力を吸収し緩和するため、接着界面に応力の集中を受けにくく、硬化後の体積収縮歪や衝撃に強く、温度変化などの影響を受けにくい。このため、建築関連用途、電気・電子関連用途、自動車関連用途、医療機器関連用途等で幅広く使用されている。
弾性接着剤としては、通常、室温硬化型の架橋性基を有する、シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系等の各種重合体を含む組成物が知られている。
変成シリコーン系重合体は、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体をベースとする硬化性組成物であり、建築工事の現場で施工する際に、硬化速度が比較的穏やかであるため施工後にも微調整が可能であり、耐候性がよく、かつ破断伸びや破断強度などの機械的物性のバランスが良い材料である。このことから、単独又はエポキシ化合物と組み合わせて弾性接着剤のベースポリマーとしたり、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体と組み合わせて高耐候性接着剤のベースポリマーとして用いられる。
例えば、特許文献1及び2には、変成シリコーン系重合体を単独又はエポキシ化合物と組み合わせて弾性接着剤用途に使用する例が開示されている。
特許文献3には、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレンとアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を、タイル貼り工法用弾性接着剤のベースポリマーとして利用することが開示されている。
【0003】
一方、変成シリコーン系重合体をベースポリマーとする弾性接着剤は、各種金属、プラスチック、セラミック、ゴムまで広範囲に接着するため、同種材料の張り合わせ用のみならず、金属と異種材料との接着や、建築・土木用の窯業系サイディング材、ALC、コンクリート等と各種材料との接着にも使用されている。これらの用途は、かならずしも高耐候性を必要としない場合も多く、工場の製造ラインで使用する場合も多い。例えば、電子部品の製造ラインにおいて、コンデンサーやコイルなど電子部品と回路基盤の接着や、自動車の製造ラインにおいて、ポリウレタンやポリプロピレン製の自動車内装材の張り合わせに使用されている。
特許文献4には、変成シリコーン系接着剤を工業用に使用する場合の例が開示されている。
また、サイディングボードやALC板の部材は、あらかじめ工場で作成しておき、工事現場で残りの組み立て作業をおこなう場合があり、その際には、接着作業は工場の製造ラインでおこなわれる。
特許文献5には、化粧合板やビニルクロスのような内壁材と石膏ボードやスレート板等の内壁下地材との接着を工場内でおこなう際に使用する弾性接着剤として、シリル基含有ポリアルキレンオキサイドとシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を主成分とする硬化性組成物が開示されている。
変成シリコーン系重合体をベースポリマーとする弾性接着剤を、工場ラインで使用する場合には、作業性を高める観点から、硬化性組成物は、できるだけ低粘度がよく、また、硬化速度の速いことが必要である。
特許文献6及び7には、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と加水分解性シリル基含有オキシアルキレン系重合体を含む硬化性組成物が開示されている。しかし、該特許公報で開示されている硬化性組成物を用いた弾性接着剤を工場ラインで使用する場合、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の中で、重量平均分子量の低いものは、1分子当たりのシリル基が少なく、硬化速度が遅いのみならず接着性にも難があった。一方、重量平均分子量の高いものは、1分子当たりのシリル基は増えるものの、粘度が高くなりすぎて使用し難かった。
さらに、近年の温暖化に代表される気候変動により、接着剤の温度環境も上昇する傾向があり、より耐熱性の高い硬化性組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-182350号公報
【特許文献2】特開昭61-247723号公報
【特許文献3】特開2010-185078号公報
【特許文献4】特開2000-290632号公報
【特許文献5】特開2008-121408号公報
【特許文献6】国際公開第2008/059872号
【特許文献7】特開2014-118502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、工場ラインで使用する場合に、低粘度であり且つ硬化速度が速いため、作業性に優れ、硬化物の接着強度や機械的物性及び耐熱性にも優れた硬化性組成物、及び該硬化性組成物を含有する弾性接着剤組成物を提供するものである。
なお、本発明において、工場の製造ライン又は工場ラインとは、ベルトコンベア等を使用したライン生産方式のみならず、台車等を人力やレール等の運搬機器を利用して1つの工程から次の工程に運ぶバッチ生産方式、連続生産方式、プロセス生産方式、個別生産方式等を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体と架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を含む硬化性組成物であって、当該(メタ)アクリル系重合体が特定量の架橋性シリル基を有することにより、硬化物並びに該硬化物を含有する接着剤の耐熱性が向上するのみならず、低粘度であり、且つ硬化速度が速いことを見出した。本発明は、当該知見に基づいて完成したものである。
本発明は、以下の手段を提供する。
【0007】
〔1〕架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)、及び架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含む硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、架橋性シリル基を1分子中に1.5個~3.0個有するとともに、25℃における粘度が1,000mPa・s~7,000mPa・sであることを特徴とする、硬化性組成物。
〔2〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、2,000~6,000であり、重量平均分子量(Mw)との比であるMw/Mnが、1.5~2.7である〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔3〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、当該(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位中、(メタ)アクリル系単量体単位を70~98質量%、架橋性シリル基を有する単量体単位を2~30質量%有し、当該(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる(メタ)アクリル系単量体単位を100質量部とした場合に、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が60~100質量部である〔1〕又は〔2〕に記載の硬化性組成物。
〔4〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のうち、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位が、全(メタ)アクリル系単量体を100質量部とした場合に、4~40質量部である〔3〕に記載の硬化性組成物。
〔5〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する架橋性シリル基を有する単量体は、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルである〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔6〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、二重結合を0.01meq/g~1.0meq/g有する〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔7〕前記オキシアルキレン系重合体(B)は、数平均分子量(Mn)が5,000~60,000である〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔8〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)及び前記オキシアルキレン系重合体(B)の使用量は、質量比で10~90/90~10である〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔9〕硬化促進剤として、錫系触媒、チタン系触媒及び3級アミン類からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔10〕〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の硬化性組成物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
〔11〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)が高温連続重合法で製造したものである、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の硬化性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性組成物は、低粘度であり、作業性に優れる。また、当該組成物を用いると強度及び伸び、接着性並びに耐熱性にも優れる硬化物が得られる。このため、工場ラインで使用される弾性接着剤として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0010】
本発明の硬化性組成物は、(A)成分である架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体及び(B)成分である架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を必須成分とするものである。以下に、各成分の詳細について説明する。
【0011】
<(A)成分:架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体>
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有する重合体であり、例えば、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物を重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系単量体は、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する単量体であり、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体の使用量は、該重合体の全単量体を100質量%とすると、70~98質量%が好ましく、75~95質量%がより好ましい。
【0012】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸トリアコンチル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸テトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸ヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸オクタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸テトラコンチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソウンデシル、(メタ)アクリル酸イソラウリル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソペンタデシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサデシル、(メタ)アクリル酸イソヘプタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸イソノナデシル、(メタ)アクリル酸イソエイコシル、(メタ)アクリル酸イソヘンイコシル、(メタ)アクリル酸イソベヘニル、(メタ)アクリル酸イソテトラコシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサコシル、(メタ)アクリル酸イソオクタコシル、(メタ)アクリル酸イソトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソテトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソオクタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソテトラコンチル等の直鎖状若しくは分岐状脂肪族アルキル基又は脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、得られた(メタ)アクリル系重合体が、(B)成分である架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体との相溶性に優れ、かつ低粘度であるうえ、耐熱性にも優れることから、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル系単量体の中で、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、全(メタ)アクリル系単量体を100質量部とした場合に、60~100質量部が好ましく、80~100質量部がより好ましい。
【0013】
また、上記の(メタ)アクリル系単量体の一部として、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用すると、該オキシアルキレン系重合体(B)と更に良好な相溶性が確保され、機械物性及び耐熱性が良好となるので、より好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは10~20であり、より好ましくは12~18であり、さらに好ましくは14~16である。
炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体を構成する全(メタ)アクリル系単量体100質量部に対し、好ましくは4~40質量部であり、より好ましくは10~30質量部である。
(メタ)アクリル系重合体(A)に炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用する場合は、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、残りの単量体には炭素数4~9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することになる。この場合、炭素数4~9アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、全(メタ)アクリル系単量体100質量部中に20~96質量部である。
【0014】
上記の(メタ)アクリル系単量体の中で、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、入手の容易性や取り扱いのし易さから、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸テトラデシルが好ましい。
【0015】
本発明の(メタ)アクリル系重合体(A)は、20質量%を超えない範囲で、炭素数1~3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、その他の単量体を共重合することができる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシヘキシル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ブトキシメチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシブチル及び(メタ)アクリル酸ブトキシヘキシル等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、硬化物の機械的物性の観点から炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、炭素数2~4のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルがより好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル系重合体には、分子中に架橋性シリル基を有する単量体単位を含む。架橋性シリル基の種類は特に限定されず、アルコキシシリル基、ハロゲノシリル基、シラノール基等が挙げられるが、架橋性を制御し易い点からアルコキシシリル基が好ましい。
アルコキシシリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基及びメトキシジエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基及びエチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基;ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、ジエチルメトキシシリル基及びジエチルエトキシシリル基等のモノアルコキシシリル基が挙げられる。これらの内でも、硬化物が良好な伸びを示し、耐熱性にも優れる点で、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル系重合体(A)の1分子に含まれる架橋性シリル基の数の平均値は、硬化物の接着強度や耐熱性の観点から1.5~3.0個である。より好ましくは1.7~2.8個であり、さらに好ましくは1.8~2.3個である。1.5個未満では、硬化速度が遅くなりすぎ、工場ラインの生産性が低下する。3.0個を超えると硬化速度が速すぎ、可使時間が短くなって、作業性が悪くなる。
上記(メタ)アクリル系重合体に含まれる架橋性シリル基の位置は、特に限定されるものではなく、重合体の側鎖及び/又は末端とすることができる。
【0019】
架橋性シリル基は、(メタ)アクリル系単量体及び架橋性シリル基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物を共重合することにより得ることができる。
架橋性シリル基を有するビニル系単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル及び(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
(メタ)アクリル系単量体同士の共重合のし易さの観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル類であり、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジエトキシシリルプロピル、の1種類以上を使用するのが好ましい。
かかる架橋性シリル基を含む単量体は、低粘度でありながら硬化性を高める観点から、前記(メタ)アクリル系重合体(A)の中で、2~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましい。
【0020】
前記(メタ)アクリル系重合体は、上記の単量体以外にこれらと共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。
上記の他の単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の官能基含有単量体;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;
パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有オレフィン類;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族単量体;
無水マレイン酸;マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸、並びに、これらのモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;
マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;
エチレン、プロピレン等のアルケン類;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられるが、これらに限らない。また、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
かかる単量体を使用する場合は、(メタ)アクリル系重合体(A)の全単量体単位を100質量%として、20質量%未満が好ましい。
【0021】
前記(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)によるポリスチレン換算分子量で、作業性と硬化性及び硬化物の機械的強度や耐熱性の観点から、1,000~7,000が好ましく、1,500~6,000がより好ましく、2,000~5,000がさらに好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル系重合体の分子量分布は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)として算出される。Mw/Mnは、引張物性と作業性とのバランスの観点から、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、より一層好ましくは2.5以下である。尚、Mw/Mnの下限値は通常1.0であり、好ま1.2であり、より一層好ましくは1.5である。Mw/Mnが大きいと、(メタ)アクリル系重合体中の低分子量の高分子鎖は、高分子量の高分子鎖よりも分子の運動性が高いため架橋性シリル基と反応する確率が高くなり、低分子量の高分子鎖が高分子量の高分子鎖より優先的に反応する。これにより、低分子量の高分子鎖から形成された架橋密度が高いミクロゲルと高分子量の高分子鎖から形成された架橋密度が高いミクロゲルができるため、不均一な架橋構造が形成される。一方、Mw/Mnが小さいと、より均一な架橋構造が形成されるため、硬化組成物内部の架橋密度差が小さくなり、破壊靭性の値が大きくなる。
【0023】
本発明の(メタ)アクリル系重合体は、1分子当たりの架橋性シリル基の個数と平均分子量のバランスが重要である。すなわち、架橋性シリル基1個当たりの平均分子量が大きいと、硬化が遅くなるうえ、架橋点間の距離が大きくなりすぎ接着強度が低下する。逆に小さすぎると、架橋密度が高すぎて接着剤が硬くなる。架橋性シリル基1個当たりの数平均分子は800~3,000が好ましく、1,000~2,500がより好ましい。また、架橋性シリル基1個当たりの重量平均分子量は、1,500~6,500が好ましく、2,000~5,000がより好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体の粘度は、25℃において1,000~7,000mPa・sである。好ましくは1,500~6,500mPa・sであり、より好ましくは2,000~5,500mPa・sである。(メタ)アクリル系重合体の粘度が7,000mPa・sを超えると、硬化性組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する。
粘度を最適範囲に収めるためには、分子量を制御するとともに、重合体の単量体単位を特定のものする必要がある。このために、炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用し、かつ炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを特定比率で共重合することが好ましい。
【0025】
本発明では、(メタ)アクリル系重合体は分子中に二重結合を有することが好ましい。(メタ)アクリル系重合体が適当量の二重結合を有すると、例えば、架橋性シリル基が硬化した後でも、酸素により当該二重結合が反応し、適度に高分子量化するため、接着強度や耐熱性の向上することが期待される。また、密着性付与剤として添加するアミノシランと当該二重結合が反応し、接着性がより高まることが期待できる。さらに、接着剤がはみ出して硬化した場合における外部環境からの汚染や、内部からの未硬化成分のブリード等による汚染を緩和する効果が期待される。
【0026】
(メタ)アクリル系重合体に含まれる二重結合の量は、上記性能、特に耐汚染性向上への効果を発現する観点から0.01meq/g以上有することが好ましい。一方、二重結合の量が多過ぎると、硬化物の架橋度が高くなりすぎて柔軟性が不足する結果、内部応力が増加したり歪が発生し易くなる傾向がある。過度の架橋反応による硬化物の柔軟性低下を抑制するため、二重結合の量は、0.01以上1.0meq/g以下であり、好ましくは0.05以上0.70meq/g以下であり、より好ましくは0.1以上0.50meq/g以下である。二重結合の量を0.01以上とすることにより、耐汚染性が発現する。1.0以下にすることにより、経時的な柔軟性低下が抑制される。
【0027】
二重結合の導入方法には特別の制限はなく、当業者に公知の方法を採用することができる。例えば、分子中に二重結合を複数有する単量体を共重合する方法や、官能基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造した後、当該官能基と反応し得る官能基及び二重結合を有する化合物と反応する方法等が挙げられる。
【0028】
また、(メタ)アクリル酸系重合体の製造を高温条件下で行うことによっても二重結合を導入することができる。例えば、100℃以上の重合温度であれば、高温重合のために高分子鎖からの水素引き抜き反応に始まる切断反応が起こるため、分子末端に下記一般式(1)で表されるエチレン性不飽和結合を有する重合体が得られる。重合温度は好ましくは120℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。重合温度は高い方が重合体中の二重結合濃度が高くなる傾向がある。上記方法によれば、簡便かつ生産性良く二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。さらに、分子量制御に多量の開始剤や連鎖移動剤等の不純物を含まず容易に製造することが可能となる。メルカプタン等の連鎖移動剤は臭気や着色のみならず接着剤の物性低下につながるため、注意が必要である。一方、分解反応による重合液の着色や分子量低下等の虞がなくなる点から、重合温度の上限は350℃以下とすることが好ましい。上記の温度範囲で重合することにより、適度な分子量を有し、粘度が低く、無着色で夾雑物の少ない共重合体を効率よく製造することができる。すなわち、当該重合方法によれば、極微量の重合開始剤を使用すればよく、メルカプタンのような連鎖移動剤や、重合溶剤を使用する必要がなく、純度の高い共重合体を得ることができる。
【0029】
【化1】
〔式中、Mは単量体単位を表し、nは重合度を表す自然数である。R
1は一価の有機基を表す。〕
【0030】
上記一般式(1)におけるR1としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、その他の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ポリアルキレングリコール基、ジアルキルアミノアルキル基、トリアルコキシシリルアルキル基、アルキルジアルコキシシリルアルキル基又は水素原子が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル系重合体は、通常のラジカル重合によって製造することができる。溶液重合、塊状重合、分散重合いずれの方法を採用してもよく、また、リビングラジカル重合法を利用してもよい。反応プロセスは、バッチ式、セミバッチ式、連続重合のいずれの方法でもよい。これらの中でも、100~350℃の高温連続重合方法が好ましい。
【0032】
一般に、重合体中に均一に架橋性官能基が導入された場合、該重合体を含む硬化性組成物の硬化性、及び得られる硬化物の耐熱性等の物性が良好となる。この点、反応器に撹拌槽型反応器を用いるプロセスは、組成分布(架橋性官能基の分布)や分子量分布の比較的狭い(メタ)アクリル系重合体を得ることができる点で、採用するのが好ましい。また、連続撹拌槽型反応器を用いるプロセスが、組成分布、分子量分布を狭くする点でより好ましい。
【0033】
高温連続重合法としては、特開昭57-502171号公報、特開昭59-6207号公報、特開昭60-215007号公報等に開示された公知の方法に従えば良い。例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応器へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。また、単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を配合することもできる。その配合する場合の配合量としては、単量体混合物100質量部に対して0.001~2質量部であることが好ましい。圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、前記反応温度を維持できる圧力であればよい。単量体混合物の滞留時間は、1~60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が十分に反応しない恐れがあり、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2~40分である。
【0034】
(メタ)アクリル系重合体を得るために用いる重合開始剤の例としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば何でもよい。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)などのアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤はこれらの内の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤として水素引き抜き能が高いものを使用した場合、得られる重合体の二重結合濃度が高くなる傾向がある。例えば、アゾ系化合物よりも有機過酸化物を使用した方が、二重結合濃度の高い重合体が得られる傾向がある。
重合開始剤の使用量は、重合開始剤及び単量体の種類、所望する分子量、重合条件等により適宜調整することができるが、一般的には、使用する単量体100質量部に対して0.001~10質量部である。同じ分子量の重合体を得る場合、重合開始剤の使用量が少ないほど、得られる重合体中の二重結合濃度は高くなる傾向がある。
【0035】
(メタ)アクリル系重合体の製造に有機溶媒を用いる場合、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体をよく溶解しない溶剤では、反応器の壁にスケールが成長しやすく洗浄工程等で生産上の問題がおきやすい。また、例えばイソプロパノール等の連鎖移動能の高い有機溶媒を使用した場合、得られる重合体中の二重結合濃度は低くなる傾向がある。
溶媒の使用量は、全ビニル単量体100質量部に対して、80質量部以下とすることが好ましい。80質量部以下とすることにより、短時間で高い転化率が得られる。より好ましくは、1~50質量部である。また、オルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
【0036】
(メタ)アクリル系重合体の製造には、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を使用した場合、得られる重合体中の二重結合濃度は低くなる傾向がある。また、一般に、連鎖移動剤の使用量を増加することにより二重結合濃度は低下する。
【0037】
反応器から抜き出された反応液は、そのまま次の工程に進むか、あるいは蒸留等により未反応単量体、溶剤、及び低分子量オリゴマー等の揮発性成分を留去することによって重合体を単離することができる。反応液から留去した未反応単量体、溶剤、及び低分子量オリゴマーなどの揮発性成分の一部を原料タンクに戻すか又は直接反応器に戻し、再度重合反応に利用することもできる。
このように未反応単量体及び溶剤をリサイクルする方法は経済性の面から好ましい方法である。リサイクルする場合には、反応器内で望ましい単量体比と望ましい溶剤量を維持するように新たに供給する単量体混合物の混合比を決定する必要がある。
【0038】
重合体中に導入された二重結合は、ラジカル発生剤を添加して加熱条件下にて後処理することによりその量を低減することができる。ラジカル発生剤の添加量は、重合体100質量部に対して0.1~10質量部程度であるが、当該添加量が多いほど、二重結合濃度の低減効果は大きい。
加熱処理の際の加熱温度は50~130℃程度であるが、温度が低いほど二重結合濃度の低減効果は大きい。加熱温度は、好ましくは50~110℃の範囲であり、より好ましくは50~100℃の範囲である。
加熱処理時間は特に制限されるものではないが、残存するラジカル発生剤量が、重合体に対して1質量%未満となるよう設定することが好ましい。当業者であれば、当該残存するラジカルを、使用するラジカル発生剤の活性化エネルギー、頻度因子及び反応温度から計算することができる。
【0039】
二重結合濃度は、後処理として(メタ)アクリル系重合体に水素付加を行うことによっても低減することができる。水素付加は、従来公知の方法を採用することができる。即ち、重合体反応液に均一系触媒又は不均一系触媒を添加した後、系内を水素雰囲気にし、圧力を常圧~10MPa、温度を20~180℃程度に加熱し、2~20時間ほど反応させる。均一系触媒の具体例としては、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム錯体、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等のルテニウム錯体、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金等の白金錯体、カルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等のイリジウム錯体等が挙げられる。一方、不均一系触媒としては、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金等の遷移金属をカーボン、シリカ、アルミナ、繊維、有機ゲル状物等に担持させた固体触媒が挙げられる。不均一系触媒の方が、ろ過等により容易に触媒が除去できるため、品質が安定する、高価な触媒が再利用できるといった点で好ましい。添加する触媒量としては、均一系触媒の場合、ビニル重合体に対して、10~1,000ppm程度である。不均一系触媒の場合、1,000~10,000ppm程度である。
【0040】
<(B)成分:架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体>
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)は下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含むものであれば、特に限定されない。
-O-R2- (2)
(式中、R2は、2価の炭化水素基である。)
上記一般式(2)におけるR2としては、以下のものが例示される。
(CH2)n(nは1~10の整数)
CH(CH3)CH2
CH(C2H5)CH2
C(CH3)2CH2
上記オキシアルキレン系重合体は、上記繰り返し単位を1種又は2種以上を組み合わせて含んでもよい。これらの中でも、作業性に優れる点で、CH(CH3)CH2が好ましい。
【0041】
架橋性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体に含まれる架橋性シリル基は特に限定されず、アルコキシシリル基、ハロゲノシリル基、シラノール基等が挙げられるが、架橋性を制御し易い点からアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等が
挙げられる。
【0042】
オキシアルキレン系重合体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば対応するエポキシ化合物又はジオールを原料として、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、フォスファゼンを用いた重合法等が挙げられる。
また、上記オキシアルキレン系重合体は、直鎖状重合体又は分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0043】
オキシアルキレン系重合体1分子に含まれる架橋性シリル基の数の平均値は、硬化物の接着性及び機械的特性等の性能の観点から、好ましくは1.2~4個の範囲であり、より好ましくは1.3~3.0個の範囲であり、最も好ましくは1.5~2.8個である。1分子当たりのシリル基が1.2個未満では、硬化性組成物の硬化速度が遅く、機械的物性や耐熱性が劣る。一方、4個を越えると弾性が不十分となる。
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を弾性接着剤に使用する場合には、通常、架橋性シリル基が1個~3個の重合体を任意の割合で混合し使用される。当該用途で2個と3個の重合体を使用する際には、2個の重合体/3個の重合体の質量部比は、70/30~10/90である場合が多い。
なお、上記オキシアルキレン系重合体に含まれる架橋性シリル基の位置は、特に限定されるものではなく、重合体の側鎖及び/又は末端とすることができる。
また、上記オキシアルキレン系重合体は、直鎖状重合体及び分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0044】
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体の数平均分子量(Mn)は、機械物性の観点と作業性の観点から、好ましくは5,000~60,000であり、より好ましくは10,000~40,000であり、さらに好ましくは15,000~30,000である。
【0045】
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体の粘度は、硬化性組成物の機械的特性と耐熱性を両立するため、25℃において、4,000~50,000mPa・sが好ましく、9,000~25,000mPa.sがより好ましい。
【0046】
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体として市販品を使用してもよい。具体例としては、株式会社カネカ社製「MSポリマーS203」、「MSポリマーS303」、「MSポリマーS810」、「サイリルSAT200」、「サイリルSAT350」、「サイリルEST280」及び「サイリルSAT30」、並びに、AGC株式会社製「エクセスターES-S2410」、「エクセスターES-S2420」、「エクセスターES-S3430」、及び「エクセスターES-S3630」(いずれも商品名)が例示される。
【0047】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の粘度は、ポリオキシアルキレン重合体(B)の粘度より低いことが好ましい。こうすることにより、(A)成分は、作業時には(B)成分の希釈剤(粘度低減剤)として働き、作業性を向上させる。一方、硬化時には、架橋のネットワークに組み込まれ、強靭な接着剤層を形成する。このため耐熱性や機械的強度が向上できる。
【0048】
<硬化性組成物>
上記の通り、本発明の硬化性組成物は、(A)成分及び(B)成分を必須成分とするものである。ここで、得られる硬化物の耐熱性及び機械物性が良好となる点で、上記(A)成分及び(B)成分の割合((A)/(B))は、質量比で好ましくは10~90/90~10であり、より好ましくは20~80/80~20であり、さらに好ましくは25/75~75/25である。
【0049】
本発明の硬化性組成物は、本発明により奏される効果を妨げない限りにおいて、(A)成分及び(B)成分以外の成分を含むことができる。かかる成分には、充填材、可塑剤、老化防止剤、硬化促進剤、タック防止剤、密着性付与剤等が含まれる。
【0050】
充填材としては平均粒径0.02~2.0μm程度の軽質炭酸カルシウム、平均粒径1.0~5.0μm程度の重質炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、合成ケイ酸、タルク、ゼオライト、マイカ、シリカ、焼成クレー、カオリン、ベントナイト、水酸化アルミニウム及び硫酸バリウム、ガラスバルーン、シリカバルーン、ポリメタクリル酸メチルバルーンが例示される。これら充填材により、硬化物の機械的な性質が改善され、強度や伸度を向上させることができる。
これらの中でも、物性改善の効果が高い、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム及び酸化チタンが好ましく、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムとの混合物がより好ましい。充填剤の添加量は、(A)及び(B)成分の総量を100質量部とした場合、20~300質量部が好ましく、より好ましくは、50~200質量部である。上記のように軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの混合物とする場合には、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウムの質量割合が90/10~50/50の範囲であることが好ましい。
【0051】
可塑剤としては、液状ポリウレタン樹脂、ジカルボン酸とジオールとから得られたポリエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのエーテル化物あるいはエステル化物;スクロース等の糖類多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合した後、エーテル化又はエステル化して得られた糖類系ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤;ポリ-α-メチルスチレン等のポリスチレン系可塑剤;架橋性官能基を有さないポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内、架橋性官能基を有さないポリ(メタ)アクリレートが硬化物の耐熱性等の耐久性の点で好ましい。中でも、Mwが1,000~7,000の範囲であり、且つ、ガラス転移温度が-30℃以下のものがより好ましい。
【0052】
硬化性組成物における可塑剤の使用量は、(A)成分及び(B)成分を含めた総量を1
00質量部とした場合、好ましくは0~100質量部の範囲であり、0~80質量部の範囲であってもよく、0~50質量部の範囲であってもよい。
【0053】
老化防止剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びシュウ酸アニリド系化合物などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤、ヒンダードフェノール系などの酸化防止剤、熱安定剤、又はこれらの混合物である老化防止剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、BASF社製の商品名「チヌビン571」、「チヌビン1130」、「チヌビン327」が例示される。光安定剤としては同社製の商品名「チヌビン292」、「チヌビン144」、「チヌビン123」、三共社製の商品名「サノール770」が例示される。熱安定剤としては、BASF社製の商品名「イルガノックス1135」、「イルガノックス1520」、「イルガノックス1330」が例示される。紫外線吸収剤/光安定剤/熱安定剤の混合物であるBASF社製の商品名「チヌビンB75」を使用してもよい。
【0054】
硬化促進剤としては、錫系触媒、チタン系触媒及び3級アミン類等の公知の化合物を使用することができる。
錫系触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセトナート、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられる。具体的には、日東化成社製の商品名「ネオスタンU-28」、「ネオスタンU-100」、「ネオスタンU-200」、「ネオスタンU-220H」、「ネオスタンU-303」、「SCAT-24」等が例示される。
チタン系触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラn-ブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセチルアセトナート、ジブトキシチタンジアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタンジアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート等が挙げられる。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8-ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン-7(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等が挙げられる。
【0055】
硬化促進剤の使用量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.5~2質量部である。
【0056】
密着性付与剤としては、信越シリコーン社製の商品名「KBM602」、「KBM603」、「KBE602」、「KBE603」、「KBM902」、「KBM903」などのアミノシラン類等が例示される。加水分解によりアミノ基を生成するケチミン構造を有するシラン類でもよい。
その他にも、アクリル系オリゴマーである東亞合成社製の商品名「アロニックスM8030」、「M8100」,「M309」、出光石油社製の商品名「R15HT」、日本曹達社製の商品名「PBB3000」、日本合成化学社製の商品名「ゴーセラック500B」、桐油、ひまし油等の脂肪酸油、などのタック防止剤;オルト蟻酸メチル、オルト酢酸メチル、及びビニルシラン等の脱水剤;有機溶剤等を配合してもよい。
【0057】
本発明の接着剤組成物は、エポキシ樹脂が添加されたものであっても良い。かかるエポキシ樹脂としては、例えばエピクロルヒドリン-ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン-ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p-オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m-アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂などが例示される。さらに、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、グリセリンなどのごとき多価アルコールのグリシジルエーテル、石油樹脂などのごとき不飽和重合体のエポキシ化物等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用されうる。これらのエポキシ樹脂のうちではとくにエポキシ基を少なくとも分子中に2個含有するものが、硬化に際し架橋性が高く、また硬化物が3次元的網目をつくりやすいなどの点から好ましい。これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂類又はノボラック型エポキシ樹脂などがより好ましい。
【0058】
エポキシ樹脂は、本発明の全重合体(架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)及びオキシアルキレン系重合体(B)の合計質量)100質量部を基準として、1~100質量部となるように配合して使用することが好ましい。エポキシ樹脂が100質量部を超えると弾性が低下する場合がある。
【0059】
また、エポキシ樹脂を使用する場合は、エポキシ樹脂の硬化剤を併用することが好ましい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、m-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の1級アミン、(CH3)2N(CH2)nN(CH3)2(式中nは1~10の整数)で示される直鎖状ジアミン、(CH3)2-N(CH2)n-CH3(式中nは0~10の整数)で示される直鎖第3級アミン、テトラメチルグアニジン、N{(CH2)nCH3}3(式中nは1~10の整数)で示されるアルキル第3級モノアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、N,N'-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、ジアザビシクロウンデセン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、BASF社製ラミロンC-260、CIBA社製Araldit HY-964及びロームアンドハース社製メンセンジアミン等の第2級又は第3級アミン、1,2-エチレンビス(イソペンチリデンイミン)、1,2-ヘキシレンビス(イソペンチリデンイミン)、1,2-プロピレンビス(イソペンチリデンイミン)、p,p′-ビフェニレンビス(イソペンチリデンイミン)、1,2-エチレンビス(イソプロピリデンイミン)、1,3-プロピレンビス(イソプロピリデンイミン)、p-フェニレンビス(イソペンチリデンイミン)等のケチミン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、各種ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド及びその誘導体及び各種イミダゾール類等が例示される。かかる硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、5質量部~100質量部が好ましい。
【0060】
本発明で提供される接着剤組成物は架橋性シリル基を有するため、上記エポキシ樹脂を
使用する場合は、架橋性シリル基とエポキシ基の両方に反応可能な基を有する化合物を添加することにより硬化した接着剤組成物の強度を向上させることもできる。架橋性シリル基とエポキシ基の両方に反応可能な基を有する化合物の具体例としては、例えばN-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びγ-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
本発明で提供される接着剤組成物は、前記硬化性組成物を含有する。そのため、金属、プラスチック、ゴム、窯業系等の同種基材又は異種基材間の接着性を向上させることができる。また、低粘度かつ硬化速度が速いことにより生産性を高め、強靭な接着層により耐熱性が向上する。このため、特に工場ラインに適した弾性接着剤が提供できる。
また、耐候性にも優れるため、外装タイル等接着剤としても使用可能である。
【0062】
本発明の硬化性組成物は、全ての配合成分を予め配合後密封保存し、塗布後空気中の湿分を吸収することにより硬化する1成分型として調製することが可能である。また、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と硬化性組成物を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。取扱いが容易で、塗布時の調合混合の間違いも少ない1成分型がより好ましい。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
合成例、比較合成例、実施例及び比較例で得られた重合体の分析方法、並びに硬化性組成物から得られた硬化物の評価方法について以下に記載する。
【0064】
<二重結合量の定量方法>
1H-NMRの測定により、5.5ppm付近にある二重結合に結合した水素に由来するシグナルの積分値、及び3.0~4.5ppmにあるエステル基に隣接した炭素に結合した水素に由来するシグナルの積分値の比、並びに重合体の組成から、重合体の質量当たりの二重結合濃度を算出した。
【0065】
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC-8320」、東ソー社製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
【0066】
<(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる架橋性シリル基の平均数>
架橋性シリル基であるアルコキシシリル基の数(平均数)f(Si)は、重合体を構成する全単量体を100質量部とした場合の架橋性シリル基を有する単量体の質量部から、下記式を用いて算出した。
f(Si)=(シリル基単量体の質量部)/(シリル基単量体の分子量×100/Mn)
【0067】
<架橋性シリル基1個当たりの平均分子量>
上記GPCで得たMwとMnの値とf(Si)より、下記式を用いて算出した。
・架橋性シリル基1個当たりの重量平均分子量=Mw/f(Si)
・架橋性シリル基1個当たりの数平均分子量=Mn/f(Si)
【0068】
<(メタ)アクリル系重合体の粘度>
TVE-20H型粘度計(塩水/平板方式、東機産業社製)を用いて、下記の条件下で
E型粘度を測定した。
○測定条件
コーン形状:角度1°34′、半径24mm(10000mPa・s未満)
角度3°、半径7.7mm(10000mPa・s以上)
温度:25℃±0.5℃
【0069】
<合成例1>(架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A-1の製造)
オイルジャケットを備えた容量1000mLの加圧式攪拌槽型反応器の温度を200℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、アクリル酸n-ブチル(以下、「BA」という)を60部、アクリル酸テトラデシル(以下、「TDA」という。)を2部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「TMS」という)を15部、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」という)5部、オルソ酢酸トリメチル(以下、「MOA」という)5部、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)を10部、重合開始剤としてジ-t-ヘキシルパーオキサイド(日油社製、商品名「パーヘキシルD」、以下、「DTHP」という)を0.2部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットの温度を制御することにより、反応温度を199~201℃に保持した。
単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して、(メタ)アクリル系重合体A-1を得た。重合体の性状を表1に示す。
【0070】
<合成例2~11、比較合成例1~3>(架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A-2~A-11、A-13~A-15の製造)
単量体と溶媒の供給組成と反応器内温を表1のように変更した以外は、合成例1と同様にして重合し、(メタ)アクリル系重合体A-2~A-11及びA-13~A-15を得た。該重合体の性状を表1~2に示す。
【0071】
<合成例12>(架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸系重合体A-12の製造)
還流冷却器のついたフラスコに、酢酸ブチル(100部)を入れ、オイルバスで内温を92℃に保ち、攪拌を行った。滴下ロートにて、BA(60部)、TDA(25部)、TMS(15部)、DM(n-ドデシルメルカプタン)(6.1部)、ABN-E(2,2‘-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、株式会社日本ファインケム製)(1部)、の混合液を、4時間かけて滴下した。さらに92℃に保ちながら、3時間攪拌した。その後、エバポレーターにより、90℃、10mmHgの条件下、反応液の脱溶剤を行い、揮発成分を分離することにより(メタ)アクリル系重合体A-12を得た。該重合体の性状について、表2に示した。
【0072】
【0073】
【0074】
表1:2に示された化合物の詳細は以下のとおりである。
BA:アクリル酸ブチル
TDA:アクリル酸トリデシル
DMS:3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
TMS:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
IPA:イソプロピルアルコール
MOA:オルソ酢酸メチル
MEK:メチルエチルケトン
DTHP:ジ-t-ヘキシルパーオキシド
DM:n-ドデシルメルカプタン
ABN-E:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)
【0075】
<硬化性組成物の調整>
実施例1~14、比較例1~5
上記合成例で得られた架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)に、シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)として、AGC株式会社製商品名「エクセスターES-S3430」(1分子中の架橋性シリル基の平均数=3、Mn=20,000、25℃における粘度=9,600mPa.s、主鎖骨格が分岐構造のポリプロピレンオキサイドからなり且つ主鎖の末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン)及び「エクセスターES-S2420」(1分子中の架橋性シリル基の平均数=2、Mn=16,000、25℃における粘度=15,600mPa.s、主鎖骨格が直鎖構造のポリプロピレンオキサイドからなり且つ主鎖の末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン)を用い、表3~5の割合でよく混合して、硬化性組成物を調整した。
次いで、該硬化性組成物及びその他原料を配合し、プラネタリーミキサーを用いて、温度60℃、10Torrの条件で1時間混合することにより接着剤組成物を得た。各組成物について、作業性、硬化性の評価をおこなった。また、各組成物から得られた硬化物について、引張物性、接着強度試験及び耐熱性試験をおこなった。結果を表3~5に示す。
【0076】
<作業性>
上記調製によって得られた組成物について速やかに粘度測定(前述と同様)を行い、作業性の評価を行った。粘度が低いほど作業性がよいと判断した。
【0077】
<硬化性>
上記調整によって得られた組成物について、厚さ約2mmに塗布し、指触を15分ごとに行うことにより、指に組成物の付着がなくなるまでの時間を硬化時間とした。
【0078】
<シートの引張物性>
各硬化性組成物を厚さ2mmでテフロン(登録商標)のシートに塗布し、23℃、50
%RHの条件下で1週間養生して硬化シートを作成した。得られた硬化物より引張試験用
ダンベル(JIS K 6251 3号型)を作成し、引張試験機(オートグラフAGS
-J、島津製作所社製)を用いて、引張速度200mm/分の条件下での破断伸び及び破
断強度を測定した。
【0079】
<接着強度試験>
JIS A5557(2006)有機系接着剤における接着強さ試験方法に準拠して、モルタル板と外装モザイクタイルを用いて試験を行った。
モルタル板(TP技研製、10×50×50mm)に、硬化性組成物を約5mmの厚みで塗布し、くし目ごてで引いたのち、JIS A5209の規定に適合する市販の外装モザイクタイル(45×45mm)を接着させた。23℃、50%RHの条件で4週間養生させた後、タイル側及びモルタル側に専用治具を取り付け、引張試験機(オートグラフAGS-J、島津製作所社製)を用いて、23℃条件下、引張速度3mm/分で引張試験を行うことにより、接着強さを測定した。
【0080】
<耐熱性試験>
各硬化性組成物を厚さ2mmでテフロン(登録商標)のシートに塗布し、23℃、50
%RHの条件下で1週間養生して硬化シートを作成した。得られた硬化物より引張試験用
ダンベル(JIS K 6251 3号型)を作成し、90℃に調節した通風乾燥機にダンベルを入れ、2週間加熱した。引張試験機(オートグラフAGS-J、島津製作所社製)を用いて、引張速度200mm/分の条件下での破断伸び及び破断強度を測定した。前述のシートの引張物性の値を基準として、それぞれ、破断強度及び破断伸びの保持率を算出した。
【0081】
<耐汚染性試験>
各硬化性組成物を厚さ3mmでスレート板に塗布し、23℃、50%RHの条件下で1
週間養生して硬化シートを作成した。得られた硬化物を200メッシュ金網に通した汚染
粉(試験用ダスト8種(日本紛体工業技術協会製)9g、新オーカ(ホルベイン工業社製
)27g、試験用ダスト3種(日本紛体工業技術協会製)2gの混合物)を振りかけ、5
分静置後、粉を払い落とした(エアーブロー、水洗い)。その後、日本電色社製分光色彩
計SE-2000を用いて、黄色度(YI)を測定した(YIは下式の通り)。養生直後
のYI(YI0)との差である黄変度(ΔYI)の大きさにより、耐汚染性を評価した。
これを汚染試験1回後とした。
測定後70℃3時間、23℃1時間放置し、上記同様に汚染粉を振りかけ、ΔYIを測
定することを1サイクルとし、4サイクル繰り返し、4サイクル後のΔYIを表2に示した。
YI=100(1.28X-1.06Z)/Y(X,Y,Zは色座標系)
ΔYI=YI-YI0 (YI0は養生直後のYIを示す)
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
表3~5に示された化合物の詳細は以下のとおりである。
UP-1110:可塑剤(東亞合成社製アクリル系可塑剤、商品名「ARUFON UP-1110)
CCR:軽質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名「白艶華CCR」)
スーパーSS:重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名「スーパーSS」)
R820:酸化チタン(石原産業社製、商品名「タイペークR820」)
チヌビンB75:老化防止剤(BASFジャパン社製、商品名「チヌビンB75」)
U220H:ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成社製、商品名「ネオスタンU220H」)
OFS-6020:3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(ダウ・東レ社製、商品名「DOWSIL OFS-6020」)
Z-6300:ビニルトリメトキシシラン(ダウ・東レ社製、商品名「DOWSIL Z-6300」)
【0086】
評価結果は、以下のようである。
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)のみを使用した接着剤組成物(比較例5)と比べ、本発明の組成物(実施例1~14)は、作業性、硬化性、接着強度、耐熱性のいずれの項目において優れていた。
また、実施例と比較して、比較例は以下のように劣った。
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)について、比較合成例1(1分子当たりのシリル基数が1.17)を用いた場合(比較例1)は、硬化性が悪くなり、比較合成例2(1分子当たりのシリル基数が3.33)を用いた場合(比較例2)は、固くなりすぎ引張伸びが悪くなった。
(A)の粘度が高く、Mwが大きい比較合成例3を用いた場合(比較例3)は、実施例より作業性が極端に悪くなった。
なお、(A)/(B)では、(B)が多くなりすぎると硬化性、作業性、耐熱性が低下し、(A)が多すぎると柔軟性が損なわれた(比較例4)。
二重結合が検出下限以下であるA-12を使用した場合(実施例14)では、二重結合が存在するA-1~A-6を使用した場合(実施例1~4、実施例9~10)と比較して、耐汚染性が不十分であった。なお、表3~4の耐汚染性の欄が「-」は、未測定を表す。
本発明の硬化性組成物は、常温で硬化し、優れた作業性、硬化性、引張特性、耐熱性を有し、工場ラインでの弾性接着剤として、好適に使用することができる。また、耐汚染性が良く、高耐候性であることも予想されるので、屋外用の建築現場で使用する外装タイル用接着剤等にも利用可能である。