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特開2022-83243端末装置の位置を特定するシステム、無線中継装置、情報処理装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083243
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】端末装置の位置を特定するシステム、無線中継装置、情報処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 64/00 20090101AFI20220527BHJP
   H04W 84/00 20090101ALI20220527BHJP
   H04B 17/27 20150101ALI20220527BHJP
   H04B 17/391 20150101ALI20220527BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20220527BHJP
【FI】
H04W64/00 110
H04W84/00 110
H04W64/00 120
H04W64/00 173
H04B17/27
H04B17/391
G01S5/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194579
(22)【出願日】2020-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年8月31日に双葉電子勝間ラジコン飛行場(千葉県市原市勝間1197)にて試験
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB05
5J062CC07
5J062CC18
5J062FF01
5K067AA22
5K067DD44
5K067DD57
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067JJ55
5K067JJ56
(57)【要約】
【課題】移動通信の端末装置がGNSS信号の非受信又は受信不可の状態であっても、端末装置の現在位置を推定することができるシステムを提供する。
【解決手段】中継局がドローンに搭載された無線中継装置は、地上の対象エリアの上空を飛行しながら指向性アンテナから地上方向に向けて電波を送信し、GNSS信号に基づいて得られた自装置の位置情報を情報処理装置に送信する。端末装置は、無線中継装置から送信された電波の受信電力又は受信品質を測定し、情報処理装置に受信電力又は受信品質の測定結果に関する受信測定情報を送信する。情報処理装置は、無線中継装置が対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯において受信した無線中継装置からの位置情報と端末装置からの受信測定情報とに基づいて、対象エリアにおける端末装置の位置を推定する。情報処理装置は、端末装置からの受信電力又は受信品質が最大となる位置を端末装置の位置と推定してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信の端末装置の位置を特定するシステムであって、
移動通信の端末装置と、移動通信網の固定基地局と前記端末装置との間の無線通信を中継する中継局がドローンに搭載された無線中継装置と、前記移動通信網又は他の通信網に設けられた情報処理装置と、を備え、
前記無線中継装置は、
地上方向に指向性を有する指向性アンテナと、
人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と、
前記情報処理装置と通信する通信装置と、
地上の対象エリアの上空を飛行しながら、前記指向性アンテナから地上方向に向けて電波を送信し、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を前記情報処理装置に送信するように制御する制御装置と、を有し、
前記端末装置は、
前記無線中継装置から送信された電波の受信電力又は受信品質を測定する受信測定部と、
前記情報処理装置に前記受信電力又は受信品質の測定結果に関する受信測定情報を送信する情報送信部と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記無線中継装置が前記対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯において、前記無線中継装置から前記無線中継装置の位置情報を受信し、前記端末装置から前記受信測定情報を受信する情報受信部と、
前記無線中継装置の位置情報と前記受信測定情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定する位置推定部と、を有する、システム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記情報処理装置は、前記端末装置が無線中継装置から受信した電波の受信電力又は受信品質が最大となる位置を、前記端末装置の位置と推定する、システム。
【請求項3】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記情報処理装置は、前記飛行時間帯における複数の時刻に対応する複数組の前記ドローン型の無線中継装置の位置情報(x,y)及び前記受信測定情報(E)に基づいて、平面地図上の前記ドローン型の無線中継装置の位置(x,y)におけるz軸方向に前記受信測定情報(E)を3次元的に表示した画像、又は、平面地図上の前記ドローン型の無線中継装置の位置(x,y)における色相、彩度若しくは明度を前記受信測定情報(E)に応じて変化させた画像を生成する画像生成部を更に有する、システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかのシステムにおいて、
前記対象エリアの全体について、前記無線中継装置を飛行させて前記情報処理装置による前記端末装置の位置の推定を行う第1の位置推定処理と、
前記第1の位置推定処理で推定された前記端末装置の位置を含み前記対象エリアよりも狭い範囲について、前記無線中継装置をきめ細かく飛行させて前記情報処理装置による前記端末装置の位置の推定を行う第2の位置推定処理と、を段階的に行う、システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのシステムにおいて、
前記無線中継装置は、前記指向性アンテナの地上方向の指向性ビームの幅を切り替える手段を有する、システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかのシステムにおいて、
前記無線中継装置と前記対象エリアの地表面との間の鉛直方向の距離が一定になるように前記無線中継装置を飛行させる、システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかのシステムにおいて、
前記端末装置は、前記GNSS信号を受信できなくなったとき、又は、前記GNSS信号の受信機能が停止されたときに、前記情報処理装置に前記受信測定情報を送信する処理を行うアプリケーションプログラムが自動起動する、システム。
【請求項8】
移動通信網の固定基地局と端末装置との間の無線通信を中継する中継局がドローンに搭載された無線中継装置であって、
地上方向に指向性を有する指向性アンテナと、
人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と、
前記移動通信網又は他の通信網に設けられ移動通信の端末装置の位置を特定する情報処理装置と通信する通信装置と、
地上の対象エリアの上空を飛行しながら、前記指向性アンテナから地上方向に向けて電波を送信し、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を前記情報処理装置に送信するように制御する制御装置と、を備える無線中継装置。
【請求項9】
移動通信の端末装置の位置を特定する情報処理装置であって、
地上方向に指向性を有する指向性アンテナと人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と前記情報処理装置と通信する通信装置とを有する無線中継装置が、地上の対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯について、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を、前記無線中継装置から受信し、前記無線中継装置の前記指向性アンテナから地上方向に向けて送信された電波の受信電力又は受信品質を測定した前記端末装置から、前記受信電力又は受信品質の測定結果を含む受信測定情報を受信する情報受信部と、
前記無線中継装置の位置情報と前記受信測定情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定する位置推定部と、を備える情報処理装置。
【請求項10】
移動通信の端末装置の位置を特定する方法であって、
地上方向に指向性を有する指向性アンテナと人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置とを有する無線中継装置を、地上の対象エリアの上空を飛行させることと、
前記無線中継装置が地上の対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯について、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を、前記無線中継装置から受信し、前記無線中継装置の前記指向性アンテナから地上方向に向けて送信された電波の受信電力又は受信品質を測定した前記端末装置から、前記受信電力又は受信品質の測定結果を含む受信測定情報を受信することと、
前記無線中継装置の位置情報と前記受信測定情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信の端末装置の位置を特定するシステム、無線中継装置、情報処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星からGPS(全地球測位システム)等のGNSS(全球測位衛星システム)の信号の電波を受信して位置情報を取得した端末装置から位置情報を受信するシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、遭難者救助支援装置と遭難者が所持する携帯電話とにより構成された遭難者救助支援システムが開示されている。携帯電話は、GPS衛星からGPS信号を受信し、受信したGPS信号から自携帯電話の位置を計算し、その位置情報を遭難者救助支援装置に送信する。遭難者救助支援装置は、位置情報の送信を指示する指示信号を持つ電波を携帯電話に送信し、当該指示信号に対する応答として、携帯電話から送信された位置情報を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-043955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシステムでは、遭難者が持つ端末装置(携帯電話)が雪や土砂などに深く埋まってGNSS信号(GPS信号)を受信できない状態や端末装置のGNSS信号受信機能がOFFに設定されている状態(以下「GNSS非受信状態」という。)にある場合、端末装置から位置情報を受信して端末装置の位置を特定できない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシステムは、移動通信の端末装置の位置を特定するシステムである。このシステムは、移動通信の端末装置と、移動通信網の固定基地局と前記端末装置との間の無線通信を中継する中継局がドローンに搭載された無線中継装置と、前記移動通信網又は他の通信網に設けられた情報処理装置と、を備える。前記無線中継装置は、地上方向に指向性を有する指向性アンテナと、人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と、前記情報処理装置と通信する通信装置と、地上の対象エリアの上空を飛行しながら、前記指向性アンテナから地上方向に向けて電波を送信し、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を前記情報処理装置に送信するように制御する制御装置と、を有する。前記端末装置は、前記無線中継装置から送信された電波の受信電力又は受信品質を測定する受信測定部と、前記情報処理装置に前記受信電力又は受信品質の測定結果に関する受信測定情報を送信する情報送信部と、を有する。前記情報処理装置は、前記無線中継装置が前記対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯について、前記無線中継装置から前記無線中継装置の位置情報を受信し、前記端末装置から前記受信測定情報を受信する情報受信部と、前記無線中継装置の位置情報と前記受信測定情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定する位置推定部と、を有する。
【0007】
本発明の他の態様に係る無線中継装置は、移動通信網の固定基地局と端末装置との間の無線通信を中継する中継局がドローンに搭載された無線中継装置である。この無線中継装置は、地上方向に指向性を有する指向性アンテナと、人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と、前記移動通信網又は他の通信網に設けられ移動通信の端末装置の位置を特定する情報処理装置と通信する通信装置と、地上の対象エリアの上空を飛行しながら、前記指向性アンテナから地上方向に向けて電波を送信し、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を前記情報処理装置に送信するように制御する制御装置と、を備える。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る情報処理装置は、移動通信の端末装置の位置を特定する情報処理装置である。この情報処理装置は、地上方向に指向性を有する指向性アンテナと人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置と前記情報処理装置と通信する通信装置とを有する無線中継装置が、地上の対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯について、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を、前記無線中継装置から受信し、前記無線中継装置の前記指向性アンテナから地上方向に向けて送信された電波の受信電力又は受信品質を測定した前記端末装置から、前記受信電力又は受信品質の測定結果を含む受信測定情報を受信する情報受信部と、前記無線中継装置の位置情報と前記受信測定情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定する位置推定部と、を備える。
【0009】
本発明の更に他の態様に係る方法は、移動通信の端末装置の位置を特定する方法である。この方法は、地上方向に指向性を有する指向性アンテナと人工衛星からGNSS信号を受信するGNSS受信装置とを有する無線中継装置を、地上の対象エリアの上空を飛行させることと、前記無線中継装置が地上の対象エリアの上空を飛行した飛行時間帯について、前記GNSS受信装置で受信したGNSS信号に基づいて得られた前記無線中継装置の位置情報を、前記無線中継装置から受信し、前記無線中継装置の前記指向性アンテナから地上方向に向けて送信された電波の受信電力又は受信品質を測定した前記端末装置から、前記受信電力又は受信品質の測定結果を含む受信測定情報を受信することと、前記無線中継装置の位置情報と前記受信測定情報とに基づいて、前記対象エリアにおける前記端末装置の位置を推定することと、を含む。
【0010】
前記情報処理装置は、前記端末装置が無線中継装置から受信した電波の受信電力又は受信品質が最大となる位置を、前記端末装置の位置と推定してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記飛行時間帯における複数の時刻のそれぞれについて、同時刻に対応する前記無線中継装置の緯度及び経度を相対距離に換算した位置情報(x,y)と前記受信測定情報(E)を結合した受信測定データ(x,y,E)を記録してもよい。
【0012】
前記情報処理装置は、前記飛行時間帯における複数の時刻に対応する複数組の前記無線中継装置の位置情報(x,y)及び前記受信測定情報(E)に基づいて、平面地図上の前記無線中継装置の位置(x,y)におけるz軸方向に前記受信測定情報(E)を3次元的に表示した画像、又は、平面地図上の前記無線中継装置の位置(x,y)における色相、彩度若しくは明度を前記受信測定情報(E)に応じて変化させた画像を生成する画像生成部を更に有してもよい。
【0013】
前記システム、前記無線中継装置、前記情報処理装置及び前記方法において、前記対象エリアの全体について、前記無線中継装置を飛行させて前記情報処理装置による前記位置情報及び前記受信測定情報の記録並びに前記端末装置の位置の推定を行う第1の位置推定処理と、前記第1探索段階で推定された前記端末装置の位置を含み前記対象エリアよりも狭い範囲について、前記無線中継装置をきめ細かく飛行させて前記情報処理装置による前記位置情報及び前記受信測定情報の記録並びに前記端末装置の位置の推定を行う第2の位置推定処理と、を段階的に行ってもよい。
【0014】
前記無線中継装置は、前記指向性アンテナの地上方向の指向性ビームの幅を切り替える手段を有してもよい。
【0015】
前記システム、前記無線中継装置、前記情報処理装置及び前記方法において、前記無線中継装置と前記対象エリアの地表面との間の鉛直方向の距離が一定になるように前記無線中継装置を飛行させてもよい。
【0016】
前記端末装置は、前記GNSS信号を受信できないとき、又は、前記GNSS信号の受信機能が停止されているときに、前記情報処理装置に前記受信測定情報を送信する処理を行うアプリケーションプログラムが起動してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るドローン無線中継システムを用いた端末位置特定システムの概略構成の一例を示す説明図。
図2】(a)及び(b)は、実施形態に係る端末位置特定システムにおける携帯端末の位置推定の原理を示す説明図。
図3】実施形態に係る端末位置特定システムにおけるドローン無線中継装置、サーバ及び携帯端末の主要な構成の一例を示すブロック図。
図4】実施形態に係る端末位置特定システムにおける携帯端末の位置推定処理の一例を示すフローチャート。
図5】(a)は、図4の位置推定処理におけるドローン無線中継装置の対象エリア上空の飛行軌跡の一例を示す説明図。(b)は、図4の位置推定処理で推定された対象エリアにおける携帯端末40の推定位置の一例を示す説明図。
図6】実施形態に係る端末位置特定システムにおける携帯端末の位置推定処理の他の例を示すフローチャート。
図7】(a)及び(b)はそれぞれ、図6の第1探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置の対象エリア上空の飛行軌跡及びx軸方向の受信電力変化の一例を示す説明図。
図8】(a)及び(b)はそれぞれ、図6の第2探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置の絞り込み範囲上空の飛行軌跡及びx軸方向の受信電力変化の一例を示す説明図。
図9】(a)及び(b)はそれぞれ、粗い飛行経路での探索に用いる比較的広いビーム幅の第1狭ビーム及び探索アンテナのアンテナ素子の駆動制御の様子の一例を示す説明図。
図10】(a)及び(b)はそれぞれ、きめ細かい飛行経路での探索に用いるより狭いビーム幅の第2狭ビーム及び探索アンテナのアンテナ素子の駆動制御の様子の一例を示す説明図。
図11】実施形態に係る端末位置特定システムにおけるビーム切り替えを伴う携帯端末の位置推定処理の更に他の例を示すフローチャート。
図12】(a)及び(b)はそれぞれ、図11の第1探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置の対象エリア上空の飛行軌跡及びx軸方向の受信電力変化の一例を示す説明図。
図13】(a)及び(b)はそれぞれ、図11の第2探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置の絞り込み範囲上空の飛行軌跡及びx軸方向の受信電力変化の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、移動通信のユーザ装置や移動局等の端末装置(以下「携帯端末」という。)がGPS非受信状態にある場合に、ドローン搭載無線中継装置(以下「ドローン無線中継装置」という。)のGPS位置情報と携帯端末の受信電力又は受信品質の測定結果の情報だけで携帯端末の位置を推定して特定することができるシステムである。
【0019】
ドローン無線中継装置は、例えば、台風、地震などの災害発生箇所や雪崩などの遭難発生箇所等の対象エリアの上空に位置するように停止飛行(ホバリング)させ、移動通信網などの通信網と対象エリアの携帯端末との通信を中継する臨時又は緊急時のリピータ(子機)又は基地局(eNodeB)として機能させることができる。これにより、例えば、災害発生箇所での携帯電話やスマートフォンなどの通信を早期に復旧させたり、遭難発生箇所で遭難者の携帯電話やスマートフォンなどの通信を中継して遭難者の捜索や救助を支援したりすることができる。
【0020】
なお、以下の実施形態では、携帯端末の位置の推定に携帯端末の受信電力の測定結果の情報を用いているが、ドローン無線中継装置から受信した携帯端末の受信電力の測定結果の代わりに、又は、携帯端末の受信電力の測定結果に加えて、携帯端末の受信品質の測定結果の情報を用いてもよい。
【0021】
図1は、実施形態に係るドローン無線中継システム1を用いた端末位置特定システム2の概略構成の一例を示す説明図である。本実施形態の端末位置特定システム2は、ドローン無線中継システム1と、端末位置特定の情報処理を行う情報処理装置としてのサーバ81と、所定のアプリケーションプログラム(以下「探索支援アプリケーション」という。)が起動した位置特定対象の端末装置(「ユーザ装置」、「移動局」ともいう。)としての携帯端末40と、を含む。サーバ81は、例えば単体又は複数のコンピュータ装置で構成され、移動通信網80、又は、移動通信網80と通信可能な他の通信網に設けられている。
【0022】
端末位置特定システム2は、オペレータがサーバ81にアクセスするときに操作するコンピュータ装置などからなるコンソール装置85を含んでもよい。コンソール装置85は、移動通信網80又は他の通信網を介してサーバ81と通信することができる。コンソール装置85は、通信網を介さずにサーバ81に直接接続されたものであってもよい。
【0023】
図1において、本実施形態に係るドローン無線中継システム1は、地上に設置、又は地上に位置する車両である自動車(無線中継車)50に搭載された第1無線中継局としての網側中継局(以下「親機」という。)20と、ドローン無線中継装置10に搭載された第2無線中継局としての中継局(以下、「子機」という。)12と、を備える。
【0024】
親機20及び子機12は、通信オペレータ(通信事業者)の移動通信網80のコアネットワークそれぞれに接続されたマクロセル基地局などの固定基地局30と、通信オペレータに対応する携帯端末40との間の無線通信を中継する。この無線中継により、固定基地局30のセルの圏外エリア(サービスエリア外)に臨時にセル400を形成して圏内化することできる。
【0025】
親機20は、固定基地局30との間の中継対象の第1周波数(中継対象周波数)F1(下り信号)及びF1’(上り信号)の無線信号と、子機12との間の第2周波数(中間周波数)F2(下り信号)及びF2’(上り信号)の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。親機20は、固定基地局30向けの第1アンテナ201と、子機12向けの第2アンテナ202とを有する。
【0026】
子機12が搭載されたドローン無線中継装置10は、地上から所定高度(例えば100~150m)の上空に滞在するように飛行制御される。ドローン無線中継装置10は、GNSSとしてのGPSの人工衛星60からの電波を受信して自装置の位置情報を取得する測位機能を有する。ドローン無線中継装置10の測位機能は、GPS以外の他のGNSSの人工衛星の電波を受信して行ってもよい。
【0027】
子機12は、親機20向けのフィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」ともいう。)110Fと、臨時のセル400に位置する携帯端末40向けのサービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」ともいう。)110Sと、位置不明の携帯端末40の位置を推定する端末探索に用いる狭ビーム指向性アンテナ(以下「探索アンテナ」ともいう。)110Tと、を有する。
【0028】
探索アンテナ110Tは、ドローン無線中継装置10が基本姿勢を維持して飛行しているときに地上方向へ指向性を有するようにドローン本体に取り付けられる。探索アンテナ110Tは、地上方向の電波強度を強い指向性ビーム特性を有し、その指向性ビームのビーム幅がSLアンテナ110Sのビーム幅よりも狭い。
【0029】
なお、SLアンテナ110Sを探索アンテナ110Tとして兼用してもよい。この場合、携帯端末40の無線通信を中継するときはサービスリンク用のビーム幅にし、携帯端末40の位置を特定する端末探索を行うときはサービスリンク用のビーム幅よりも狭いビーム幅にするように、携帯端末40のSLアンテナ110Sのビーム幅を切り替える制御を行ってもよい。
【0030】
子機12は、親機20との間の第2周波数(中間周波数)F2/F2'の無線信号と、移動局40との間の第1周波数(中継対象周波数)F1/F1'の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。
【0031】
親機20及び子機12それぞれにおいて、第1周波数(中継対象周波数)F1/F1'及び第2周波数(中間周波数)F2/F2'は、親機20で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉及び子機12で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉が発生しないように互いに異なる周波数である。
【0032】
中継局12は、リピータ(子機)の機能のほか、基地局(eNodeB)の機能を有してもよい。また、ドローン無線中継装置10は、ドローン本体フレームに設けられた子機12、FLアンテナ110F、SLアンテナ110S、探索アンテナ110Tなどのほか、ドローン飛行制御装置、モータ駆動のプロペラ等を備える。ドローン飛行制御装置は、例えば、外部からの飛行制御信号を受信する通信部と、遠隔制御により又は自律制御により各プロペラの回転駆動を制御する制御部と、バッテリ等を有する電源部とを備える。
【0033】
上記構成のシステムにおいて、携帯端末40が雪や土砂などに深く埋まってGNSS信号としてのGPS信号を受信できない状態や携帯端末40のGPS信号受信機能がOFFに設定されている状態(以下「GPS非受信状態」という。)にある場合、携帯端末40から位置情報を受信して携帯端末40の位置を特定できない。
【0034】
そこで、本実施形態の端末位置特定システム2では、ドローン無線中継システム1とサーバ81と携帯端末40で起動されている探索支援アプリケーションとが連携することにより、携帯端末40がGPS非受信状態であっても携帯端末40の現在位置を推定して特定することができるようにしている。
【0035】
なお、携帯端末40の探索支援アプリケーションは、常時起動した状態にしておいてもよいし、携帯端末40がGPS非受信状態になったときに自動起動するようにしてもよい。
【0036】
図2(a)及び(b)は、実施形態に係る端末位置特定システム2における携帯端末40の位置推定の原理を示す説明図である。図2(a)は、携帯端末40が雪や土砂などに埋まっている地面Gの上空を、ドローン無線中継装置10が矢印Aの水平方向に飛行している様子を例示している。図示の例において、ドローン無線中継装置10は、上空の探索アンテナ110Tから対象エリアTAの地面Gに向けて地上方向に所定ビームBの電波Stを送信している。ビームBの電波Stは所定のフットプリントCのサイズで地面Gに到達する。
【0037】
図2(b)は、携帯端末40が埋まっている対象エリアTAの地面Gの上空を一方向(x軸方向)にドローン無線中継装置10が飛行しながら地上方向に電波Stを送信しているときに携帯端末40が電波Stを受信して測定した受信電力Eの変化の一例を示すグラフである。
【0038】
ドローン無線中継装置10は、狭ビーム指向性である探索アンテナ110Tを地上方向に向けていることから、ドローン無線中継装置10が送信した電波Stの電界強度は、ドローン無線中継装置10の真下が最も強く、ドローン無線中継装置10の真下に携帯端末40が位置するときに携帯端末40が測定する受信電力Eが最も高くなる。携帯端末40の受信電力Eの測定値が最も高くなるときに、その携帯端末40の真上方向にドローン無線中継装置10が位置していることになる。すなわち、携帯端末40の受信電力Eの測定値が最も高くなったときの携帯端末40の位置とドローン無線中継装置10の位置(x,y)は同じであり、そのドローン無線中継装置10のGPSで測位したGPS位置情報又はそのGPS位置情報に基づいて直交座標系における対象エリアの原点を基準にして算出した相対距離の飛行位置(x,y)を、携帯端末40の位置と推定することができる。
【0039】
図3は、実施形態に係る端末位置特定システム2におけるドローン無線中継装置10、サーバ81及び携帯端末40の主要な構成の一例を示すブロック図である。図3において、ドローン無線中継装置10は、前述の中継局(子機)12と、GNSS受信装置としてのGPS受信機101と、通信装置としての通信モジュール102と、制御装置103とを有する。
【0040】
GPS受信機101は、GPSの複数の人工衛星60からの電波を受信して自装置であるドローン無線中継装置10の現在位置(例えば、緯度、経度及び高度)の情報を算出する。通信モジュール102は、例えば移動通信の端末装置である携帯端末(ユーザ装置、移動局)の機能を有する携帯通信モジュールであり、移動通信網80を介してサーバ81と通信することができる。
【0041】
制御装置103は、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等で構成され、予め組み込まれた又は通信網を介してダウンロードした所定のプログラムコードからなる制御プログラムを実行することにより、データ処理を行ったり各部を制御したりする。本実施形態において、制御装置103は、地上の対象エリアTAの全体にわたって対象エリアTAの上空を飛行しながら、探索アンテナ110Tから地上G方向に向けて電波Stを送信し、GPS受信機101で受信したGNSS信号としてのGPS信号に基づいて得られたドローン無線中継装置10の位置情報(例えば緯度及び経度)をサーバ81に送信するように制御する。
【0042】
携帯端末40は、移動通信システムの端末装置(携帯端末、ユーザ装置、移動局)としての通常の構成を有するほか、受信測定部としての受信電力測定部401と、受信測定情報送信部としての受信電力情報送信部402と、制御装置403とを有する。
【0043】
受信電力測定部401は、ドローン無線中継装置10から送信された狭ビームの送信電波Stの受信電力Eを測定する。受信電力情報送信部402は、前記受信電力Eの測定結果を含む受信電力情報を、ドローン無線中継装置10の子機12及び移動通信網80を介してサーバ81に送信する。受信電力情報は、固定基地局30及び移動通信網80を介してサーバ81に送信してもよい。
【0044】
制御装置403は、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等で構成され、予め組み込まれた又は通信網を介してダウンロードした所定のプログラムコードからなる探索支援アプリケーションのプログラムを実行することにより、データ処理を行ったり各部を制御したりする。本実施形態において、制御装置403は、サーバ81からの情報要求に応じて、又は自律的に所定のタイミングに、受信電力測定部401で測定した受信電力Eの測定結果を含む受信電力情報をサーバ81に送信するように制御する。
【0045】
サーバ81は、例えば単数又は複数のコンピュータ装置で構成され、情報受信部811と、情報記録部812と、位置推定部813と、画像生成部814と、外部アクセス処理部815とを備える。
【0046】
情報受信部811は、ドローン無線中継装置10が対象エリアTAの上空を飛行した飛行時間帯について、ドローン無線中継装置10からドローン無線中継装置10のGPS位置情報を受信し、携帯端末40から受信測定情報としての受信電力情報を受信する。
【0047】
情報記録部812は、前記飛行時間帯について、ドローン無線中継装置10の位置情報及び携帯端末40の受信電力情報のそれぞれと、対応する時刻情報とを互いに関連付けて記録する。
【0048】
時刻情報は、例えばサーバ81が各情報を受信したときの受信時刻(タイムスタンプ)である。時刻情報としては、ドローン無線中継装置10がGPS位置情報を取得したときの時刻情報(タイムスタンプ)を受信して記録してもよいし、携帯端末40が受信電力を測定したときの時刻情報(タイムスタンプ)を携帯端末40から受信して記録してもよい。
【0049】
また、情報記録部812に記録するドローン無線中継装置10の位置情報は、ドローン無線中継装置10のGPS位置情報でもよいし、GPS位置情報に基づいて算出した、対象エリアTAに定義した直交座標系における原点を基準にした相対距離の位置情報(x,y)であってもよい。また、情報記録部812に記録する情報は、前記飛行時間帯における複数の時刻のそれぞれについて、同時刻に対応するドローン無線中継装置10の位置情報(x,y)と受信測定情報(E)を結合した受信測定データとしての受信電力データ(x,y,E)であってもよい。
【0050】
位置推定部813は、ドローン無線中継装置10の位置情報と受信電力情報と時刻情報とに基づいて、対象エリアTAにおける携帯端末40の位置を推定する。例えば、位置推定部813は、前記飛行時間帯における複数の時刻に対応する複数組の受信電力データ(x,y,E)に基づいて、受信電力Eが最大となるドローン無線中継装置10の位置(x、y)を検出し、そのドローン無線中継装置10の位置(x、y)を携帯端末40の位置として推定する。
【0051】
画像生成部814は、前記飛行時間帯における複数の時刻に対応する複数組のドローン無線中継装置10の位置情報(x,y)及び受信電力(E)に基づいて、平面地図上のドローン無線中継装置10の位置(x,y)におけるz軸方向に受信電力(E)を3次元的に表示した地図画像を生成する。画像生成部814が生成する画像は、平面地図上のドローン無線中継装置10の位置(x,y)の色相、彩度若しくは明度を受信電力(E)に応じて変化させた地図画像であってもよい。
【0052】
外部アクセス処理部815は、オペレータが操作する外部のコンソール装置85からサーバ81へのアクセスを処理する。オペレータはコンソール装置85を操作することにより、携帯端末40の探索を要求したり、携帯端末40の位置の表示を含む平面地図の画像をサーバ81から受信して表示したりすることができる。
【0053】
図4は、実施形態に係る端末位置特定システム2における携帯端末40の位置推定処理の一例を示すフローチャートである。図5(a)は、図4の位置推定処理におけるドローン無線中継装置10の対象エリアTA上空の飛行経路F(x,y)の一例を示す説明図であり、図5(b)は、図4の位置推定処理で推定された対象エリアにおける携帯端末40の推定位置P(x,y)の一例を示す説明図である。
【0054】
図4において、まず、ドローン無線中継装置10を捜索現場の対象エリアTAの上空に移動させ、対象エリアTAを携帯端末40の圏内エリア化する(S101,S102)。
【0055】
次に、ドローン無線中継装置10は、捜索現場の対象エリアTAの全体にわたって対象エリアTAの上空をくまなく飛行しながら、探索アンテナ110Tから地上に電波Stを送信するとともに自装置10のGPS位置情報をサーバ81に送信し、携帯端末40は、ドローン無線中継装置10から受信した電波の受信電力Eの測定結果の情報をサーバ81に送信する。サーバ81は、ドローン無線中継装置10の飛行中に、ドローン無線中継装置10からのGPS位置情報及び携帯端末40からの受信電力Eの測定結果の情報をそれぞれ時刻情報と関連付けて記憶する(S103)。
【0056】
ドローン無線中継装置10は、対象エリアTAの全体にわたって携帯端末40の位置推定に十分な飛行軌跡で飛行するまで、地上への電波Stの送信と自装置10のGPS位置情報のサーバ81への送信を繰り返し、携帯端末40は受信電力Eの測定結果の情報のサーバ81への送信を繰り返す(S103,S104)。なお、対象エリアTAの地表面の高度が変化している場合は、ドローン無線中継装置10と対象エリアTAの地表面との間の鉛直方向の距離が一定になるようにドローン無線中継装置10を上下移動させながら飛行させてもよい。
【0057】
次に、対象エリアTAにおける携帯端末40の飛行軌跡が位置推定に十分な飛行軌跡(図5(a)中の飛行位置Fsから飛行位置Feまでの飛行軌跡)になったら、サーバ81は、飛行位置Fsから飛行位置Feまでの飛行時間帯における受信電力データ(x,y,E)に基づいて、図5(b)に示すように受信電力Eが最大となる飛行位置座標P(x,y)を、携帯端末40の位置と推定して特定する(S105)。
【0058】
次に、サーバ81は、特定した携帯端末40の位置座標P(x,y)を表示した地図画像を生成する(S106)。サーバ81が生成した地図画像は、オペレータのコンソール装置85からアクセスして表示することができる。
【0059】
図6は、実施形態に係る端末位置特定システム2における携帯端末40の位置推定処理の他の例を示すフローチャートである。図7(a)及び(b)はそれぞれ、図6の第1探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置10の対象エリアTA上空の飛行経路F(x,y)及びx軸方向の受信電力E変化の一例を示す説明図である。図8(a)及び(b)はそれぞれ、図6の第2探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置10の絞り込み範囲TA’上空の飛行軌跡F’(x,y)及びx軸方向の受信電力E変化の一例を示す説明図である。
【0060】
図6図8の例では、2段階探索によって携帯端末40の位置を特定することにより、対象エリアTAが広範囲であった場合でも携帯端末40の位置を効率的に特定することができる。
【0061】
図6において、まず、ドローン無線中継装置10を捜索現場の対象エリアTAの上空に移動させ、対象エリアTAを携帯端末40の圏内エリア化する(S201,S202)。
【0062】
次に、第1の位置推定処理を行う第1探索段階において、ドローン無線中継装置10は、捜索現場の対象エリアTAの全体にわたって対象エリアTAの上空を粗い飛行経路F(x,y)で飛行しながら、探索アンテナ110Tから地上に電波Stを送信するとともに自装置10のGPS位置情報をサーバ81に送信し、携帯端末40は、ドローン無線中継装置10から受信した電波の受信電力Eの測定結果の情報をサーバ81に送信する。サーバ81は、ドローン無線中継装置10の粗い飛行経路での飛行中に、ドローン無線中継装置10からのGPS位置情報及び携帯端末40からの受信電力Eの測定結果の情報をそれぞれ時刻情報と関連付けて記憶する(S203)。
【0063】
ドローン無線中継装置10は、対象エリアTAの全体にわたって携帯端末40の位置推定に十分な飛行軌跡で飛行するまで、地上への電波Stの送信と自装置10のGPS位置情報のサーバ81への送信を繰り返し、携帯端末40は受信電力Eの測定結果の情報のサーバ81への送信を繰り返す(S203,S204)。なお、対象エリアTAの地表面の高度が変化している場合は、ドローン無線中継装置10と対象エリアTAの地表面との間の鉛直方向の距離が一定になるようにドローン無線中継装置10を上下移動させながら飛行させてもよい。
【0064】
次に、対象エリアTAにおける携帯端末40の飛行軌跡が探索範囲の絞り込みに十分な飛行軌跡(図7(a)中の飛行位置Fsから飛行位置Feまでの飛行軌跡)になったら、サーバ81は、飛行位置Fsから飛行位置Feまでの飛行時間帯における受信電力データ(x,y,E)に基づいて、図7(b)に示すように受信電力Eが最大となる飛行位置座標P’(x,y)を、携帯端末40の位置と想定し、その位置を中心とした絞り込み範囲TA’を設定する(S205)。
【0065】
次に、第2の位置推定処理を行う第2探索段階において、ドローン無線中継装置10は、絞り込み範囲TA’の全体にわたって絞り込み範囲TA’の上空をきめ細かい飛行経路F’(x,y)で飛行しながら、探索アンテナ110Tから地上に電波Stを送信するとともに自装置10のGPS位置情報をサーバ81に送信し、携帯端末40は、ドローン無線中継装置10から受信した電波の受信電力Eの測定結果の情報をサーバ81に送信する。サーバ81は、ドローン無線中継装置10のきめ細かい飛行経路での飛行中に、ドローン無線中継装置10からのGPS位置情報及び携帯端末40からの受信電力Eの測定結果の情報をそれぞれ時刻情報と関連付けて記憶する(S206)。
【0066】
ドローン無線中継装置10は、絞り込み範囲TA’の全体にわたって携帯端末40の位置推定に十分な飛行軌跡で飛行するまで、地上への電波Stの送信と自装置10のGPS位置情報のサーバ81への送信を繰り返し、携帯端末40は受信電力Eの測定結果の情報のサーバ81への送信を繰り返す(S206,S207)。なお、絞り込み範囲TA’の地表面の高度が変化している場合は、ドローン無線中継装置10と絞り込み範囲TA’の地表面との間の鉛直方向の距離が一定になるようにドローン無線中継装置10を上下移動させながら飛行させてもよい。
【0067】
次に、対象エリアTAにおける携帯端末40の飛行軌跡が位置推定に十分な飛行軌跡(図8(a)参照)になったら、サーバ81は、飛行時間帯における受信電力データ(x,y,E)に基づいて、図8(b)に示すように受信電力Eが最大となる飛行位置座標P(x,y)を、携帯端末40の位置と推定して特定する(S208)。
【0068】
次に、サーバ81は、特定した携帯端末40の位置座標P(x,y)を表示した地図画像を生成する(S209)。サーバ81が生成した地図画像は、オペレータのコンソール装置85からアクセスして表示することができる。
【0069】
上記構成の端末位置特定システムにおいて、ドローン無線中継装置10から探査用の電波を送信するとき地上方向に狭ビームで電力を集中させるほど、地上でのビーム幅(ビームのフットプリントのサイズ)が狭まることから位置推定精度が向上する。また、端末位置の探索のきめ細かさは探索アンテナ110Tの指向性ビームのビーム幅による。ビーム幅が狭いほど、一度の探索範囲が狭くなるため、同じのエリアを探索する探索時間が長くなる。
【0070】
そこで、本実施形態の端末位置特定システムにおいて、互いに異なるビーム幅の複数種類の狭ビーム(例えば、ビーム幅が比較的広い第1狭ビームB1と、ビーム幅がより狭い第2狭ビームB2)で電波を送信できるように、複数種類のビームを切り替え可能に探索アンテナ110Tを構成し、先ずは第1狭ビームB1で広域探索し、次に第2狭ビームB2に切り替えて精密探索することにより、短い時間で位置推定精度を向上させるようにしてもよい。
【0071】
図9(a)及び(b)はそれぞれ、粗い飛行経路での探索に用いる比較的広いビーム幅の第1狭ビームB1及び探索アンテナ110Tのアンテナ素子の駆動制御の様子の一例を示す説明図である。また、図10(a)及び(b)はそれぞれ、きめ細かい飛行経路での探索に用いるより狭いビーム幅の第2狭ビームB2及び探索アンテナ110Tのアンテナ素子の駆動制御の様子の一例を示す説明図である。なお、図9及び図10の例では、複数のアンテナ素子(図示の例では、個別に電流供給制御が可能な4つの平面アンテナであるパッチアンテナ111(1)~111(4))を2次元的に配置したアレイアンテナを用いた場合の例を示しているが、互いに異なるビーム幅の複数の狭ビームを切り替える制御が可能なものであれば他の構造の探索アンテナを用いてもよい。
【0072】
図9(a)に示すようにドローン無線中継装置10の子機12から地上でのビーム幅(フットプリントのサイズC1)が比較的広い第1狭ビームB1の電波Stを送信するときは、図9(b)に示すように、制御装置103がアンテナ制御装置104を制御し、探索アンテナ110Tの複数のパッチアンテナ111(1)~111(4)のうち1つのパッチアンテナ111(1)のみに電流を供給してアクティブ状態にする。これにより、探索アンテナ110Tの地上に向かう指向性ビームを、地上でのビーム幅が比較的広い広域探査用の第1狭ビームB1にすることができる。
【0073】
一方、図10(a)に示すようにドローン無線中継装置10の子機12から地上でのビーム幅(フットプリントのサイズC1)がより狭い第2狭ビームB2の電波Stを送信するときは、図10(b)に示すように、制御装置103がアンテナ制御装置104を制御し、探索アンテナ110Tの複数のパッチアンテナ111(1)~111(4)のすべてに、所定の振幅及び位相に調整された電流を供給してアクティブ状態にする。これにより、探索アンテナ110Tの地上に向かう指向性ビームを、地上でのビーム幅がよい狭い第2狭ビームB2にすることができる。
【0074】
図11は、実施形態に係る端末位置特定システムにおけるビーム切り替えを伴う携帯端末40の位置推定処理の更に他の例を示すフローチャートである。図12(a)及び(b)はそれぞれ、図11の第1探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置10の対象エリアTA上空の飛行軌跡及びx軸方向の受信電力変化の一例を示す説明図である。図13(a)及び(b)はそれぞれ、図11の第2探索段階の位置推定処理におけるドローン無線中継装置10の絞り込み範囲TA’上空の飛行軌跡及びx軸方向の受信電力変化の一例を示す説明図である。
【0075】
図11図13の例では、ビーム切替を伴う2段階探索によって携帯端末40の位置を特定することにより、より短い探索時間で、携帯端末40の位置推定精度を向上させることができる。
【0076】
図11において、まず、ドローン無線中継装置10を捜索現場の対象エリアTAの上空に移動させ、対象エリアTAを携帯端末40の圏内エリア化する(S301,S302)。
【0077】
次に、第1の位置推定処理を行う第1探索段階において、ドローン無線中継装置10は、捜索現場の対象エリアTAの全体にわたって対象エリアTAの上空を粗い飛行経路(広域探索コース)F(x,y)で飛行しながら、比較的広いビーム幅の第1狭ビームB1で探索アンテナ110Tから地上に電波Stを送信するとともに自装置10のGPS位置情報をサーバ81に送信し、携帯端末40は、ドローン無線中継装置10から受信した電波の受信電力Eの測定結果の情報をサーバ81に送信する。サーバ81は、ドローン無線中継装置10の粗い飛行経路での飛行中に、ドローン無線中継装置10からのGPS位置情報及び携帯端末40からの受信電力Eの測定結果の情報をそれぞれ時刻情報と関連付けて記憶する(S303)。
【0078】
ドローン無線中継装置10は、対象エリアTAの全体にわたって携帯端末40の位置推定に十分な飛行軌跡で飛行するまで、地上への電波Stの送信と自装置10のGPS位置情報のサーバ81への送信を繰り返し、携帯端末40は受信電力Eの測定結果の情報のサーバ81への送信を繰り返す(S303,S304)。なお、対象エリアTAの地表面の高度が変化している場合は、ドローン無線中継装置10と対象エリアTAの地表面との間の鉛直方向の距離が一定になるようにドローン無線中継装置10を上下移動させながら飛行させてもよい。
【0079】
次に、対象エリアTAにおける携帯端末40の飛行軌跡が探索範囲の絞り込みに十分な飛行軌跡(図12(a)中の飛行位置Fsから飛行位置Feまでの飛行軌跡)になったら、サーバ81は、飛行位置Fsから飛行位置Feまでの飛行時間帯における受信電力データ(x,y,E)に基づいて、図12(b)に示すように受信電力Eが最大となる飛行位置座標P’(x,y)を、携帯端末40のおおよその位置を特定し、その位置を中心とした絞り込み範囲TA’を設定する(S305)。
【0080】
次に、第2の位置推定処理を行う第2探索段階において、ドローン無線中継装置10は、絞り込み範囲TA’の全体にわたって絞り込み範囲TA’の上空をきめ細かい飛行経路(精密探索コース)F’(x,y)で飛行しながら、より狭いビーム幅の第2狭ビームB2で探索アンテナ110Tから地上に電波Stを送信するとともに自装置10のGPS位置情報をサーバ81に送信し、携帯端末40は、ドローン無線中継装置10から受信した電波の受信電力Eの測定結果の情報をサーバ81に送信する。サーバ81は、ドローン無線中継装置10のきめ細かい飛行経路での飛行中に、ドローン無線中継装置10からのGPS位置情報及び携帯端末40からの受信電力Eの測定結果の情報をそれぞれ時刻情報と関連付けて記憶する(S306)。
【0081】
ドローン無線中継装置10は、絞り込み範囲TA’の全体にわたって携帯端末40の位置推定に十分な飛行軌跡で飛行するまで、地上への電波Stの送信と自装置10のGPS位置情報のサーバ81への送信を繰り返し、携帯端末40は受信電力Eの測定結果の情報のサーバ81への送信を繰り返す(S306,S307)。なお、絞り込み範囲TA’の地表面の高度が変化している場合は、ドローン無線中継装置10と絞り込み範囲TA’の地表面との間の鉛直方向の距離が一定になるようにドローン無線中継装置10を上下移動させながら飛行させてもよい。
【0082】
次に、対象エリアTAにおける携帯端末40の飛行軌跡が位置推定に十分な飛行軌跡(図13(a)参照)になったら、サーバ81は、飛行時間帯における受信電力データ(x,y,E)に基づいて、図13(b)に示すように受信電力Eが最大となる飛行位置座標P(x,y)を、携帯端末40の位置と推定して特定する(S308)。
【0083】
次に、サーバ81は、特定した携帯端末40の位置座標P(x,y)を表示した地図画像を生成する(S309)。サーバ81が生成した地図画像は、オペレータのコンソール装置85からアクセスして表示することができる。
【0084】
以上、本実施形態によれば、移動通信の携帯端末(端末装置)40がGPS非受信状態であっても、携帯端末40の現在位置を推定して特定することができる。
【0085】
特に、本実施形態によれば、携帯端末40がGPS非受信状態の場合に、ドローン無線中継装置10のGPS位置情報と携帯端末40の受信電力Eの測定結果だけで携帯端末40の位置を推定(特定)できる。
また、移動通信の携帯端末40の受信電力Eの測定は携帯端末40が通常有する機能であり、新た測定機能は不要である。
更に、ドローン無線中継装置10はGPS受信機を一般に有しているので、新た機能は不要である。
【0086】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに中継局、無線中継装置、端末装置(携帯端末、ユーザ装置、移動局)、サーバ及び基地局における基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0087】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継局、無線中継装置、端末装置、サーバ及び基地局における基地局装置、コンピュータ装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0088】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0089】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0090】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0091】
10 :ドローン無線中継装置(ドローン搭載無線中継装置)
12 :子機(中継局)
20 :親機
30 :固定基地局
40 :携帯端末(端末装置)
50 :自動車(無線中継車)
60 :人工衛星
80 :移動通信網
81 :サーバ
85 :コンソール装置
110F :FLアンテナ(フィーダリンク用アンテナ)
110S :SLアンテナ(サービスリンク用アンテナ)
110T :探索アンテナ(狭ビーム指向性アンテナ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13