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特開2022-8325ワックスを基剤とした組成物、それから作製される物品、ならびに、製造および使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008325
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ワックスを基剤とした組成物、それから作製される物品、ならびに、製造および使用の方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/06 20060101AFI20220105BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20220105BHJP
   A63B 71/08 20060101ALI20220105BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20220105BHJP
   A61C 7/08 20060101ALI20220105BHJP
   A61C 19/05 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 6/90 20200101ALI20220105BHJP
【FI】
A61C19/06 Z
A61K6/60
A63B71/08 Z
A61C19/00 M
A61C7/08
A61C19/05
A61K6/90
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144062
(22)【出願日】2021-09-03
(62)【分割の表示】P 2019153119の分割
【原出願日】2014-03-07
(31)【優先権主張番号】61/889,880
(32)【優先日】2013-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】399128493
【氏名又は名称】ウルトラデント プロダクツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ビー.ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ローレンス マーゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】バリー リー ホブソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ディー.スコヴィル
(72)【発明者】
【氏名】ニール ティー.ジェソップ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エム.オールレッド
(72)【発明者】
【氏名】ダン イー.フィッシャー
【テーマコード(参考)】
4C052
4C089
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052JJ09
4C089AA14
4C089BC01
4C089BD19
4C089BE01
4C089CA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の結果が達成される前に使用者が落胆するようになることを引き起こすことがない経口治療用装置を提供する。
【解決手段】少なくとも45℃の温度まで安定であり、室温において塑性変形可能であるワックスを基剤とした組成物から立体形状に形成され、組成物は、ポリマー画分と均質に混合されたワックス画分とを含み、ワックス画分はワックスを含み、ポリマー画分は、ワックスおよびポリマーが一緒に均質に混合された場合、それらが、熱的安定性および塑性変形の所望の特性を有するワックスを基剤とした組成物を生み出すように選択されたポリマーを含む。さらに、経口治療用装置が外からの支えなしで、40℃の温度まで寸法的に安定であり、また、使用者の固有の歯列、および/または、使用者の口の中の装置のサイズおよび形状に少なくとも部分的に特注されるように、使用者の口の中で塑性変形され得る構成とする。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用トレイ、歯ぎしり防止トレイ、顎関節(TMJ)障害、スポーツマウスガード、スポーツマウスガードに関するインサート、歯列矯正ガードトレイ、手術後の口腔保護装置、または、患者の歯の咬合面箇所を記録するための変形可能な装置のうちから選択され、立体の形態を有するバリア層を形成するワックスを基剤とした組成物と、を含み、
前記ワックスを基剤とした組成物は、50重量%~95重量%のワックスと、前記ワックスと混合されて混合物を形成する熱可塑性エラストマーと、をからなる経口治療用装置。
【請求項2】
使用者の歯のうちの少なくとも一部に位置付けられるような大きさであり、使用者の歯のうちの少なくとも一部に位置付けられるように構成され、少なくとも40度の温度まで加熱される場合、熱的に安定であるバリア層を形成するワックスを基剤とした組成物と、を含み、
前記ワックスを基剤とした組成物は、50重量%~95重量%のワックスと、前記ワックスと混合されて混合物を形成する熱可塑性エラストマーと、をからなる経口治療用装置。
【請求項3】
1.5mm未満の厚さを有し、使用者の歯のうちの少なくとも一部に位置付けられるような大きさであり、使用者の歯のうちの少なくとも一部に位置付けられるように構成されるバリア層を形成するワックスを基剤とした組成物と、を含み、
前記ワックスを基剤とした組成物は、50重量%~95重量%のワックスと、前記ワックスと混合されて混合物を形成する熱可塑性エラストマーと、をからなる経口治療用装置。
【請求項4】
前記ワックスは、パラフィンワックス、中間ワックス、および、マイクロクリスタリンワックから選択された少なくとも2つの石油ワックスを含む請求項1乃至請求項3のうちのいずれか記載の経口治療用装置。
【請求項5】
前記ワックスを基剤とした組成物は、前記ワックス、および、前記熱可塑性エラストマーから実質的になる請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載の経口治療用装置。
【請求項6】
前記バリア層は少なくとも1つの側壁部および前記少なくとも1つの側壁部と隣接し、前記少なくとも1つの側壁部から横方向に延在している少なくとも1つの底部壁部を含む請求項1乃至請求項5のうちのいずれか記載の経口治療用装置。
【請求項7】
前記バリア層は、1つ以上の歯の咬合面または表面に接触するように構成される厚くされた咬合面壁部と、前記厚くされた咬合面壁部に隣接したより薄い唇側壁部、および、舌側壁部と、を含む請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の経口治療用装置。
【請求項8】
前記バリア層は、少なくとも45℃で熱的に安定し、25℃において塑性変形可能である請求項1乃至請求項7のうちのいずれかに記載の経口治療用装置。
【請求項9】
前記ワックスを基剤とした組成物は、50重量%~5重量%の熱可塑性エラストマーを含む請求項1乃至請求項8のうちのいずれかに記載の経口治療用装置。
【請求項10】
前記ワックスを基剤とした組成物は、60重量%~93重量%の前記ワックスと、40重量%~7重量%の前記熱可塑性エラストマーと、を含む請求項9に記載の経口治療用装置。
【請求項11】
前記熱可塑性エラストマーは、オレフィンを基剤としたエラストマーを含む請求項1乃至請求項10のうちのいずれかに記載の経口治療用装置。
【請求項12】
前記オレフィンを基剤としたエラストマーは、エチレンを基剤としたエラストマー、プロピレンを基剤としたエラストマー、および、ブチレン基剤のエラストマーのうちから選択された請求項11に記載の経口治療用装置。
【請求項13】
前記バリア層は、1.25mm未満の厚さを有し、または、1mm未満の厚さを有し、または、0.75mm未満の厚さを有し、または、0.5mm未満の厚さを有する請求項1乃至請求項12のうちのいずれかに記載の経口治療用装置。
【請求項14】
前記バリア層に隣接し、または、前記バリア層の中に含浸させられている、経口治療組成物をさらに含む請求項1乃至請求項13のうちのいずれかに記載の経口治療用装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のうちのいずれかに記載の経口治療用装置と、初期には経口治療用装置から分離されている経口治療組成物と、を含む経口治療用キット。
【請求項16】
経口治療用装置を製造する方法であって、
50重量%~95重量%のワックスを含む混合物を形成するようにワックスおよび熱可塑性エラストマーを組み合わせ、
混合されたワックスと熱可塑性エラストマーとからなるワックスを基剤とした組成物を形成するように、前記混合物を加工し、
前記ワックスを基剤とした組成物をバリア層に形成し、前記バリア層は治療用トレイ、歯ぎしり防止トレイ、顎関節(TMJ)障害、スポーツマウスガード、スポーツマウスガードに関するインサート、歯列矯正ガードトレイ、手術後の口腔保護装置、または、患者の歯の咬合面箇所を記録するための変形可能な装置のうちから選択され、立体の形態を有する経口治療用装置にする方法。
【請求項17】
経口治療用装置を製造する方法であって、
50重量%~95重量%のワックスを含む混合物を形成するようにワックスおよび熱可塑性エラストマーを組み合わせ、
混合されたワックスと熱可塑性エラストマーとからなるワックスを基剤とした組成物を形成するように、前記混合物を加工し、
前記ワックスを基剤とした組成物をバリア層に形成し、前記バリア層は少なくとも40度の温度まで加熱される場合、熱的に安定である経口治療用装置にする方法。
【請求項18】
経口治療用装置を製造する方法であって、
50重量%~95重量%のワックスを含む混合物を形成するように、ワックスおよび熱可塑性エラストマーを組み合わせ、
混合されたワックスと熱可塑性エラストマーとからなるワックスを基剤とした組成物を形成するように、前記混合物を加工し、
前記ワックスを基剤とした組成物をバリア層に形成し、前記バリア層は1.5mm未満の厚さを有し、使用者の歯のうちの少なくとも一部に位置付けられるような大きさであり、使用者の歯のうちの少なくとも一部に位置付けられるように構成される経口治療用装置にする方法。
【請求項19】
前記ワックスは、パラフィンワックス、中間ワックス、およびマイクロクリスタリンワックから選択された少なくとも2つの石油ワックスを含む請求項16乃至請求項18のうちのいずれか記載の方法。
【請求項20】
前記ワックスを基剤とした組成物は、前記ワックス、および、前記熱可塑性エラストマーから実質的になる請求項16乃至請求項19のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記加工は、50℃から225℃までの範囲にある温度まで前記混合物を加熱すること、および1000psiから30,000psiまでの範囲において、前記混合物に圧力を加えることを含む請求項16乃至請求項20のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記経口治療用装置は、25℃において塑性変形可能であり、少なくとも45℃で熱的に安定する請求項16乃至請求項21のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記ワックスおよび前記熱可塑性エラストマーが組み合わせられ、押し出し成形機を使って加工される請求項16乃至請求項22のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記押し出し成形機は前記ワックスを基剤とした組成物をシートに形成し、
前記方法は前記シートを成形して前記バリア層を形成することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記押し出し成形機は前記ワックスを基剤とした組成物をストランドに形成し、
前記方法は前記ストランドをペレットに分け、前記ペレットを射出成形してバリア層を形成することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックスを基剤とした組成物、バリア層、および経口治療用装置、および、そのような組成物から作製された他の物品、ならびに、上述のものを作製および使用するための方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療トレイおよび帯片は、普通、漂白組成物および薬剤を使用者の歯に送出するために使用されている。「トレイ」は、事前に形状決めされたバリアであり、それは、使用者の歯のうちのいくつかまたはすべての上に装着するように設計されており、個別化されていてもよく、または個別化されていなくてもよい。トレイは、経口治療組成物によって事前に添加され、または、使用のときに使用者によって治療組成物で充填され得る。「帯片」は、一般的に、個別化されていないシート状のバリアであり、それは、一方の側部に治療組成物を含み、または、バリア層の中に埋め込まれた治療組成物を含み、それは、使用者の歯の上に配置され、トレイ状の構成で、使用者の歯の周りに折り畳まれ得る。
【0003】
個別化された歯科用トレイの1つのタイプは、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)などのような、耐湿性で熱可塑性のポリマー材料のシートを、使用者の歯のストーンモデルの上に熱成形することによって作製され、それから、中間成形された形態を切り落とし、所望のトレイ状の形状を生み出す。ブロックアウト材料が、ストーンモデルに適用され、個別化されたトレイの中に貯蔵部を形成することが可能であり、それは、人の歯表面の隣への付加的な治療組成物の配置に応えることが可能である。貯蔵部は、とりわけ、より硬質のトレイを用いて、歯列矯正力を低減させることによって、付加的な快適さをもたらすことが可能である。このように形成された個別化されたトレイの欠点は、典型的に歯科医院において、人の歯の歯形を形成し、歯型を使用してストーンモデルを形成し、シートを熱成形し、成形された形態を切り落とし、個別化されたトレイを生み出す時間およびコストを含むということである。主な利益は、そのようなトレイが、典型的に、口腔帯片および他のタイプの歯科用トレイと比較して、使用者の歯に薬剤を送出する際に、最良の装着、快適さ、および有効性をもたらすということである。
【0004】
他のタイプの個別化されたトレイは、人の自分自身の歯をテンプレートとして使用して作製される(たとえば、いわゆる「ボイル-アンド-バイト」トレイ)。典型的な個別化方法において、熱的に軟化可能なポリマー材料から作製されている、個別化されていないトレイブランクは、(たとえば、熱水または電子レンジの中で)初期に加熱され、ポリマートレイ材料を一時的に軟化させる。軟化されたトレイは、それから、使用者の歯の上に配置され、また、噛むこと、吸引すること、または、指を使用して外部から加えられた圧力のうちの1以上の加えられた力を使用して、使用者の歯に特注で形成される。個別化されたトレイがその形態を保つのに十分に冷却されたとき、それは、使用者の口から除去され得、それから、使用のための準備ができている。自己個別化されたトレイの欠点は、それらが、とりわけスポーツマウスガードの形態のときに、かさ張って快適でない可能性があり、それは、典型的に、少なくとも3mmおよび通常はそれ以上の壁部厚さを有するということである。そして、薄壁の自己個別化可能なトレイに関する特許は存在しているが、そのようなトレイは、歯科医師でない者が使用するには困難であり、不十分な装着を有し、ほとんど市場で受け入れられてこなかった可能性がある。
【0005】
個別化されていないトレイは、使用者の固有の歯列に対応する特徴を欠いているが、異なってサイズ決めおよび形状決めされているさまざまな歯列弓のサイズおよび形状を概ね近似するように作製され得る。個別化されていないトレイの主要な欠点は、不十分な装着である。より厚い壁のトレイは、かさ張り、快適でなく、また、側壁部と使用者の歯表面との間に大きいギャップを有することが多い可能性がある。より薄く、より可撓性のトレイは、使用者の歯の形状により良好に適合することが可能であるが、それら自身の欠点を有している。そのようなトレイの最も薄く最も快適なものは、取り付けるには脆弱であり困難である可能性があり、また、特注されたトレイまたはより剛体の個別化されていないトレイと比較して、使用中、より容易に外れる。それらのトレイ状の形状をより良好に維持するように、および、トレイを使用者の歯の上に取り付けすることを促進させるために、十分に剛体のおよび/または弾性の材料から作製された薄壁のトレイは、適合可能性が小さく、また、使用中、使用者の歯から、とりわけ舌側壁部から、より引き離しやすいトレイ壁部を有している。これは、使用者にとって迷惑であり、またトラフの中への唾液の進入を許容する可能性があり、それは、人の口腔の中への治療組成物の拡散を引き起こす可能性がある。
【0006】
従来の歯科治療用帯片は、典型的に、可撓性のプラスチックバリア層を含み、それは、使用者の歯に面する帯片の側部において、治療組成物によってコーティングまたは含浸させられている。帯片を取り付けするために、帯片の一部分は、使用者の歯の前部表面の上に配置されており、残りの部分は、歯の咬合面縁部の周りに、および、舌側表面に対抗して折り畳まれる。帯片の欠点は、それらが、一般的に、トレイと比較して、適正な場所において、使用者の歯の上に取り付けすることがより困難であるということであり、トレイは、歯がその中に配置されることとなるトラフをすでに有しており、それは、正しい取り付けを導く。それにもかかわらず、適正に配置された帯片は、適切な場所にあるままであり、治療の間に高レベルの快適さを提供することが可能であり、恐らく歯科用トレイよりも快適である。しかし、不適正に配置された帯片は、治療されることとなるすべての歯表面を適正にカバーすることができない可能性があり、調節を必要とする可能性があり、治療組成物が使用者の口腔の中へ急速に拡散することを許容し得る。さらに、より接着性がない治療組成物を備える帯片は、使用者の口、顎、または舌の最小移動の結果としてでも、使用中、歯から滑り落ちる傾向がある。使用者が、治療用帯片を着用している間に、食べること、飲むこと、喫煙すること、または、睡眠することをしないということが、通常、推奨される。いくつかの場合では、帯片は、外され、または、ずたずたにされる可能性があり、所望の治療を完了するために、それは、除去され、新しい帯片と交換されなければならないようになっている。
【0007】
最終的に、成功的な治療に対する主な障害は、使用者が処方された治療計画を完了することを履行しないことである。治療装置が、着用するのに快適でなく、取り付けすることが困難であり、および/または、使用者の歯から時期尚早に外れる傾向がある場合には、使用者は、処方された計画を単に諦め、処方された計画を時期尚早に打ち切る可能性がある。したがって、特定の治療装置または方法を使用して歯科治療が可能である場合でも、治療装置または方法の不十分な点が、所望の結果が達成される前に使用者が落胆するようになることを引き起こす場合には、それらは、適正に完了されない傾向がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示されているのは、熱的に安定であり、塑性変形可能であるシートまたは物品を作製するのに適切なワックスを基剤とした組成物である。例示的なワックスを基剤とした組成物は、少なくとも1つのワックスから構成されるワックス画分と、少なくとも1つのポリマーからなる、ワックス画分と均質に混合されたポリマー画分とを含む。一実施例によれば、ワックスを基剤とした組成物は、室温(25℃)において塑性変形可能であり、また、平坦なシートまたは立体の物品へと形成されるときに、少なくとも40℃、または、少なくとも約42.5℃、または、少なくとも約45℃、または、少なくとも約48℃、または、少なくとも約50℃、または、少なくとも約52.5℃、または、少なくとも約55℃、または、少なくとも約60℃、または、少なくとも約65℃、または、少なくとも約70度の温度まで、熱的に安定である。
【0009】
また、開示されているのは、熱的に安定であり、塑性変形可能であるシートまたは物品を作製するのに適切なワックスを基剤とした組成物を製造する方法であり、その方法は、(1)少なくとも1つのワックスおよび少なくとも1つのポリマーを組み合わせ、混合物を形成し、(2)混合物を処理し、ワックスを基剤とした組成物を形成することを含み、(a)ワックスを基剤とした組成物は、ポリマー画分と均質に混合されたワックス画分から構成されており、(b)ワックスを基剤とした組成物は、平坦なシートまたは立体の物品へと形成されるときに、少なくとも45℃の温度まで熱的に安定であり、および、(c)ワックスを基剤とした組成物は、室温(25℃)において塑性変形可能である。
【0010】
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製された平坦なシートおよび立体の物品は、任意の所望の使用のために使用され得、その例は、経口治療用装置の上のパーツを形成するバリア層としてである。一実施例によれば、バリア層は、歯科治療用トレイの形態であることが可能であり、歯科治療用トレイは、少なくとも1つの側壁部および少なくとも1つの底部壁部を有しており、少なくとも1つの底部壁部は、少なくとも1つの側壁部から横方向に延在している。他の実施例によれば、バリア層は、帯片の形態であることが可能である。経口治療用装置は、経口治療組成物を含み、経口治療組成物は、所望の経口治療を施すための1以上の活性剤を含む。
【0011】
一実施例によれば、ワックスを基剤とした組成物から作製されたバリア層は、個別化されておらず、使用者の固有の歯列に対応する特徴を持っていない。本明細書で開示されているワックスを基剤とした組成物の固有の特性に起因して、バリアは、使用者の口の中へ配置され、体温まで加熱されるときに、少なくとも部分的に個別化可能であり得、使用者の固有の歯列に、とりわけ、咬合面表面に少なくとも部分的に一致するようになっている。このように、経口治療用装置は、使用中、使用者によって自己個別化され得る。これは、少なくとも部分的に個別化された経口治療用装置として機能するように、使用者の固有の歯列に厳密に従う装置を得るために、バリア層に隣接して経口治療組成物を配置する前に個別化手順を最初に行う必要性を排除する。そして、バリア層を形成するワックスを基剤とした組成物が弾性的ではないが塑性変形可能であるという限りにおいて、トレイが使用者の歯の上に装着させられると、弾性、および/または、エラストマー材料から作製された可撓性のバリア層の場合においてよく起こるように、バリア層が使用者の歯から離れることとなる可能性はより少なくなる。
【0012】
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製された物品の他の例は、それに限定されないが、口内乾燥、感染症、歯科条件、および歯の過敏症などを含む、さまざまな条件を治療するために、高齢者患者、回復期患者、衛生状態が悪い患者、挿管されている人間、または他の患者に、昼または夜に、治療薬を送出するために使用される治療用送出装置(たとえば、トレイまたは帯片)を含む。活性経口剤の例は、それに限定されないが、フッ化物、除痛剤、麻酔薬、再石灰化剤、抗歯垢形成剤、抗歯石剤、抗菌剤、抗生物質、クロルヘキシジン、ドキシサイクリン、または、軟質口腔組織のための治癒剤を含む。活性経口剤は、それに限定されないが、粘り気のある粘着性の組成物、実質的に固形の組成物、パテ状の組成物、粘着性の小さいまたは流動性を持つ組成物を含む、種々のレオロジー(rheology)の組成物の中に含有され得る。例として、フッ化物治療組成物は、粘り気のある粘着性のゲルであることが可能であり、代替的には、患者の歯から容易にすすがれ得る、粘着性の小さい、より流動性を持つ組成物であることが可能である。代替的には、固形の活性剤(たとえば、ドキシサイクリン、または、歯周ポケットを治療するための他の抗生物質)は、ワックスを基剤としたトレイまたは帯片の壁部の中に埋め込まれ、持続的な治療のために、口腔組織の領域に対して、または、口腔組織の領域の近くに保持され得る。
【0013】
治療用装置は、ワックスを基剤とした組成物およびその中に事前に添加された経口治療組成物(たとえば、粘り気のある粘着性の組成物、実質的に固形の組成物、またはパテ状の材料)から作製されたバリアライナーを含むことが可能である。代替的には、治療用装置は、ワックスを基剤とした組成物および吸収剤インサートまたはライニング(たとえば、吸収紙またはスポンジ材料)から作製されたバリアライナーを含むことが可能であり、それは、貯蔵部としての役割を果たし、より流動性を持つ粘着性の小さい口腔組成物を、トレイの中に、ならびに、歯、および/または、口腔組織に隣接して保ち、それは、そうでなければ、望ましくない様式で、装置から口腔の中へ拡散するかまたは発現される可能性がある。
【0014】
他の治療用装置は、それに限定されないが、歯列矯正ガード装置(たとえば、トレイまたは帯片)を含み、とりわけ最初に取り付けされるときに炎症を引き起こす可能性がある歯列矯正装置から軟質口腔組織を保護し、それは、歯列矯正装置の刺激性の特徴と軟質口腔組織との間のバリアを形成し得る歯列矯正ガードトレイおよび帯片;顎関節(「TMJ」)の障害(「TMJ障害」または「TMD」)を治療するための装置;歯ぎしり防止装置;スポーツマウスガードのための個別化可能なインサート、および、2色の成形されたスポーツマウスガードを含む、個別化可能なスポーツマウスガード;咬合面箇所を記録するための変形可能な帯片またはシート;および、口腔外科手術の後に口腔組織を保護するように、および/または、治療薬を送出するように設計されている外科用トレイを含む。
【0015】
本発明のこれらの利点および特徴、ならびに他の利点および特徴は、以下の説明および添付の請求の範囲からより完全に明らかになることとなり、または、以降に述べられているような本発明の実践によって学ばれ得る。
【0016】
本発明の上述の利点および特徴、ならびに他の利点および特徴をさらに明確化するために、本発明のより多くの特定の説明が、その特定の実施例を参照することによってなされることとなり、その特定の実施例は、添付の図面に図示されている。これらの図面は、本発明の典型的な実施例だけを示しており、したがって、その範囲を限定するように考慮されるべきではないということが明らかである。本発明は、添付の図面の使用を通して、付加的な特殊性および詳細を用いて記載および説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製された例示的な経口治療用トレイを示す。
図1B図1Bは、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製された例示的な経口治療用トレイを示す。
図1C図1Cは、歯科治療用トレイ、および、トレイの中のゲルまたは固形の経口治療用組成物を含む、例示的な経口治療用装置を示す。
図1D図1Dは、歯科治療用トレイ、および、トレイの中のゲルまたは固形の経口治療組成物を含む、例示的な経口治療用装置を示す。
図2A図2Aは、治療用装置が使用者の歯列弓の形状に密着して支援するフィーチャーを有する歯科治療トレイ、および、トレイの中のゲルまたは固形の経口治療組成物を含む、例示的な経口治療用装置を示す。
図2B図2Bは、治療用装置が使用者の歯列弓の形状に密着して支援するフィーチャーを有する歯科治療トレイ、および、トレイの中のゲルまたは固形の経口治療組成物を含む、例示的な経口治療用装置を示す。
図3A図3Aは、治療用装置が使用者の歯列弓の形状に密着して支援するカット部、即ち、不連続部を備える歯科治療トレイ、および、トレイの中のゲルまたは固形の経口治療組成物を含む、例示的な経口治療用装置を示す。
図3B図3Bは、治療用装置が使用者の歯列弓の形状に密着して支援するカット部、即ち、不連続部を備える歯科治療トレイ、および、トレイの中のゲルまたは固形の経口治療組成物を含む、例示的な経口治療用装置を示す。
図4A図4Aは、引き剥がし可能なカバーを有する保護用シールパッケージの中に収容されている経口治療用装置を示す。
図4B図4Bは、引き剥がし可能なカバーを有する保護用シールパッケージの中に収容されている経口治療用装置を示す。
図5A図5Aは、経口治療組成物によって表面が覆われた、初期には平坦な帯片から成るバリア層を含む経口治療用装置を示す。
図5B図5Bは、経口治療組成物によって表面が覆われた、初期には平坦な帯片から成るバリア層を含む経口治療用装置を示す。
図6A図6Aは、ワックスを基剤としたバリア層の非常に適応できる性質、および、経口治療組成物の接着性の性質の結果として、使用者の歯の形状の周りに巻き付けられ、使用者の歯の形状に密にしっくり合う経口治療帯片を示す。
図6B図6Bは、ワックスを基剤としたバリア層の非常に適応できる性質、および、経口治療組成物の接着性の性質の結果として、使用者の歯の形状の周りに巻き付けられ、使用者の歯の形状に密にしっくり合う経口治療帯片を示す。
図7A図7Aは、本発明に従う経口治療用装置を作る際に使用され得る帯状のバリア層のさまざまな形状を示す。
図7B図7Bは、本発明に従う経口治療用装置を作る際に使用され得る帯状のバリア層のさまざまな形状を示す。
図7C図7Cは、本発明に従う経口治療用装置を作る際に使用され得る帯状のバリア層のさまざまな形状を示す。
図7D図7Dは、本発明に従う経口治療用装置を作る際に使用され得る帯状のバリア層のさまざまな形状を示す。
図7E図7Eは、本発明に従う経口治療用装置を作る際に使用され得る帯状のバリア層のさまざまな形状を示す。
図8A図8Aは、厚くされた咬合壁部、ならびに、より薄い唇側壁部および舌側壁部を有するバリア層を有する例示的な経口治療用装置を示す斜視図である。
図8B図8Bは、より薄い唇側壁部および舌側壁部と比較して厚くされた咬合壁部を概略的に示す図8Aの8B-8B線に沿った治療用装置の断面図である。
図8C図8Cは、厚くされた咬合壁部と、より薄い唇側壁部および舌側壁部と、ならびに、バリア層の舌側側部に位置決めされた経口治療組成物とを有するバリア層を有する例示的な事前に充填された経口治療用装置を図示する斜視図である。
図8D図8Dは、より薄い唇側壁部および舌側壁部と比較して厚くされた咬合壁部、ならびに、治療組成物を概略的に示す図8Cの8D-8D線に沿った事前に充填された経口治療用装置の断面図である。
図9A
図9B図9Bは、より薄い唇側壁部および舌側壁部と比較して厚くされた咬合面壁部、ならびに、実質的に固形の治療組成物を概略的に示す図9Aの9B-9B線に沿った事前に充填された経口治療用装置の断面図である。
図10A図10Aは、唇側壁部および舌側壁部と比較して厚くされた咬合壁部と、ならびに、着用された場合、隣接する臼歯の中の窪みに嵌め合い、経口治療用装置と人の歯列弓との間の嵌め合いを改善するように構成されている、咬合壁部における個別調整しないV字形状の突出部と、を有する例示的な経口治療用装置を図示する斜視図である。
図10B図10Bは、より薄い唇側壁部および舌側壁部と比較して厚くされた咬合面壁部と、ならびに、V字形状の突出部とを概略的に示す図10Aの10B-10B線に沿った経口治療用装置の断面図である。
図11A図11Aは、臼歯の凹部内で嵌め合いを強化するためのV字形状の突出部と厚くされた咬合壁部とを有し、使用中、臼歯に経口治療組成物を維持した例示的な経口治療用装置を示す。
図11B図11Bは、厚くされた咬合壁部を有し、使用中、前歯に経口治療組成物を維持した例示的な経口治療用装置を示す。
図12図12は、歯の前庭面に対応する湾曲を有する唇側壁部を有する例示的な経口治療用装置の断面図である。
図13図13は、患者の歯の一部分だけを覆う唇側壁部および舌側壁部を有する例示的な経口治療用装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.序論
本明細書で開示されているのは、熱的に安定であるとともに塑性変形可能となるように、ワックス成分およびポリマー成分から形成されているワックスを基剤とした組成物である。ワックスを基剤とした組成物は、熱的に安定であるので、それから作製された物品は、そのような物品が曝され得る温度まで加熱される場合、外力がない限り、ほとんど変形なし(すなわち、寸法的に安定である)にそれらの形状を維持することが可能である。ワックスを基剤とした組成物は、塑性変形可能であるので、それから作製された物品は、変形力を加えるによって塑性変形され得る。
【0019】
また、開示されているのは、所望の物質、および/または、機械的な特性を有するように、1以上の種類のワックス、1以上の種類のポリマー、および、随意的に1以上の補助成分から、ワックスを基剤とした組成物を製造する方法である。1以上の種類のワックス、および、1以上の種類のポリマーは、ワックス画分、および、ポリマー画分を含有するワックスを基剤とした組成物を形成するように、一緒に均質に混合され得る。熱、および/または、圧力が、所望の物質、および/または、機械的な特性を有するワックスを基剤とした組成物を生み出すように、加えられえる。
【0020】
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製され得る物品の実例は、複数のシート、および、立体の形態を含む。複数のシート、および、立体の物品は、熱的に安定であり塑性変形可能である。複数のシートは、いずれかの所望の目的のために使用可能とされ、その複数の例は、使用者の歯、および/または、歯肉に経口治療組成物を付けるために使用される経口治療用帯片におけるバリア層として、歯科治療用トレイに熱成形される中間基板として、また、容器の開口部を可逆的にシールするための被覆として含む。有用な立体の物品の複数の例は、ワックスを基剤とした組成物を射出成形することによって、または、ワックスを基剤としたシートを熱成形することによって、作製されるものなどの歯科治療トレイを含む。
【0021】
経口治療用装置は、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製された物品の実例における特定の用途の例である。経口治療用装置は、帯片またはトレイなどのようなバリア層と、バリア層に隣接し、および/または、バリア層の中に含浸させられている、1以上の経口治療組成物とを含むことが可能である。経口治療帯片の実例は、初期には平坦であるワックスを基剤としたシートや、シートに隣接して、および/または、シートの中に含浸される経口治療組成物とを含む。経口治療帯片は、使用者の歯の少なくとも一部分に配され、使用者の歯の少なくとも一部分の周りに巻き付けられ得る。経口治療用装置における他の例は、ワックスを基剤とした組成物から形成されている事前に形成された歯科治療トレイと、歯科治療トレイ内に配され、および/または、歯科治療トレイに含浸されている、経口治療組成物とを含む。事前に形成された歯科治療トレイは、経口治療帯片と比較して、経口治療用装置における人の歯への装着を非常に容易することを助長する。
【0022】
一実施例によれば、経口治療用装置は、初期には特注されておらず、使用者の固有の歯列に対応する特徴を欠いているが、使用中、人の歯に適応できるバリア層を含む。一実施例によれば、バリア層は、体温まで温められ、また、吸い込み、噛むこと、および/または、指圧などのような、整形力が加えられる場合、バリア層は、少なくとも部分的に個別化可能である。このように、自己個別化可能な経口治療用装置は、経口治療組成物がバリア層に装着された後、使用者の口の中で自己個別化可能とされることがもたらされる。これは、経口治療中、作製され得る、快適に取り付け個別化した装置をもたらされるので経口治療を非常に容易にする。これは、人の歯のストーンモデルを使用するか、「ボイルアンドバイト」法であろうと、個別化されたトレイを作製する際、典型的に伴う厄介な設定変更処置、および、時間遅延を排除する。設定変更(カスタマイゼーション)は、従来、特注された歯科用トレイに、経口治療組成物を付ける前に、必要な設定変更を有する。使用者の口の中で自己個別化される治療組成物をすでに含む経口治療用装置の機能は、驚くべきものであり、かつ、予期せぬものであり、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物における類のない、発明の本質をさらに強調する。
【0023】
また、キットは、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製されたバリア層と、バリア層、および、バリア層に隣接して、または、バリア層の中に含浸されている、1以上の経口治療組成物を含む経口治療用装置とを利用することをもたらす。キットは、バリア層および1以上の事前に付けられた経口治療組成物を含む多数の経口治療用装置を含むことが可能である。代替的には、キットは、バリア層と使用者によってバリア層に取り付け可能な1以上の経口治療組成物とを含む、1以上の経口治療用装置を含むことが可能である。
【0024】
使用者の歯、および/または、歯肉に治療を施す方法は、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製されたバリア層と、バリア層に事前に付けられるか、または、使用のときに使用者によってバリア層に付けられ得る1以上の経口治療組成物とを利用する。一実施例によれば、使用者は、ワックスを基剤としたバリア層と、経口治療組成物とを含む経口治療用装置を使用者の口の中へ配置し、それから、より良好な装着および快適さをもたらすために使用者の固有の歯列により良好に合うようにワックスを基剤としたバリア層を塑性変形させる。その経口治療用装置は、本明細書で説明されているように使用者によって、使用者の口腔内でバリア層を体温まで温め、また、使用者の固有の歯列に合うくぼみを含むように、バリア層を少なくとも部分的に設定変更するために力を加え、バリア層を塑性変形させることにより、自己個別化可能とされる。
【0025】
II.ワックスを基剤とした組成物
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物は、ワックス画分と、ワックス画分と均質に混合されたポリマー画分と、および、随意的に1以上の補助成分とを含む。使用され得るワックスの例は、石油ワックス、蒸留されたワックス、合成ワックス、ミネラルワックス、ベジタブルワックス、および動物ワックスを含む。使用され得るポリマーの例は、合成ポリマーおよび天然ポリマーを含む。補助成分の例は、可塑剤、流動性改良剤、および充填剤を含む。
【0026】
石油ワックスの例は、パラフィンワックス(長鎖アルカン炭化水素から作製されている)(たとえば、IGI 1260A)、中間ワックス(長鎖アルカンおよび分岐アルカンの混合)、マイクロクリスタリンワックス(パラフィンワックスよりも高い分子量であり、より非結晶質の分岐アルカン炭化水素)(たとえば、IGI 5909A)、蒸留されたワックス(たとえば、Astorstat 6988、Astorstat 6920、Astorstat 10069、Astorstat 95、Astorstat 90、Astorstat 75、およびAstorstat 10316などのような、Astorstat(登録商標)蒸留されたワックス)、およびワセリンを含む。合成ワックスの例は、ポリエチレンワックス(ポリエチレンを基剤とする)、フィッシャー・トロプシュワックス(合成ガスから作製される)、化学的に変えられたワックス(それは、通常は、エステル化されるかまたは鹸化される)、置換アミドワックス、および、重合したα-オレフィンを含む。ミネラルワックスの例は、セレシンワックス、モンタンワックス(亜炭および褐炭から抽出される)、オゾケライト(亜炭鉱床の中に見出される)、および泥炭ワックスを含む。ベジタブルワックスの例は、ベイベリーワックス(ベイベリーの低木、ミリカファヤ(Myrica faya)の果実の表面ワックスから作製される)、キャンデリラワックス(メキシコの低木のユーフォルビアセリフェラ(Euphorbia cerifera)およびユーフォルビアアンティシフィリティカ(Euphorbia antisyphilitica)から作製される)、カルナバワックス(カルナバ椰子、コペルニカセリフェラ(Copernica cerifera)の葉から作製される)、キャスターワックス(触媒的に水素化されたキャスターオイル)、エスパルトワックス(エスパルト草、マクロクロアテナシッシマ(Macrochloa tenacissima)製の紙を作製する副産物)、ジャパンワックス(ルス(Rhus)およびトキシコデンドロン(Toxicodendron)種の液果から作製されるベジタブルトリグリセリド)、ホホバオイル(ホホバブッシュ、シモンドシアチネンシス(Simmondsia chinensis)の種子から搾られる)、オウリキュリーワックス(ブラジルの羽状椰子、シアグルスコロナタ(Syagrus coronata)から作製される)、ライスブランワックス(ライスブラン、オリザサティバ(Oryza sativa)から得られる)、および、大豆ワックス(大豆オイルから作製される)を含む。動物ワックスの例は、ビーズワックス(ミツバチによって作り出される)、チャイニーズワックス(カイガラムシのセロプラステスセリフェラス(Ceroplastes ceriferus)によって作り出される)、ラノリン(羊の皮脂腺から作製されるウールワックス)、およびシェラックワックス(ラックカイガラムシのケリアラッカ(Kerria lacca)から作製される)を含む。
【0027】
ワックスの混合は、異なるワックスからの材料特性を組み込むのに有用であり得る。たとえば、パラフィンワックス、中間ワックス、および/または、マイクロクリスタリンワックスは、室温における所望のレベル塑性変形、および、より高い温度における寸法安定性をもたらすように、混合され得る。パラフィンワックス、中間ワックス、およびマイクロクリスタリンワックスは、すべて、化学式Cn2n+2-を有する完全に飽和した炭化水素混合物である。パラフィンワックスは、直鎖アルカンを主に含み、マイクロクリスタリンワックスは、パラフィンワックスの中のアルカンよりも高い分子量の枝分れアルカンを主に含み、中間ワックスは、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスのものの中間の成分および特性を有している。枝分れの効果は、融点を低減させ、粘度を増大させることである。普通、パラフィンワックスは、主に、直鎖のC18アルカンからC40アルカンを含み、中間ワックスは、増大された枝分れを有し、主に、C25アルカンからC60アルカンを含み、マイクロクリスタリンワックスは、直鎖のアルカンをほとんど含有しないか、または、まったく含有しないが、むしろ複雑な枝分れC25アルカンからC85アルカンを含有している。
【0028】
一般的な原則として、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスの特性は、以下のように概括され得る。
【0029】
パラフィンワックス マイクロクリスタリンワックス
低い融点 より高い融点
白色 有色
硬質 軟質
脆性 可鍛性
半透明 不透明
結晶質 非結晶質
光沢あり 接着性あり
【0030】
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物のワックス画分を含む1以上のワックスは、典型的に、ワックスを基剤とした組成物の約40重量%から約95重量%の範囲、好ましくは、約50重量%から約93重量%の範囲、より好ましくは、約60重量%から約90重量%の範囲、最も好ましくは、約70重量%から約85重量%の範囲にある量で含まれている。
【0031】
ポリマー画分は、少なくとも1つのタイプのポリマーを含むことが可能であり、その例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性のエラストマー、熱硬化性のエラストマー、および、それらの混合物から選択される1以上のポリマーを含む。ポリオレフィンの例は、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、HDPE)、低密度ポリエチレン、LDPE)、または、超低密度ポリエチレン、ULDPEを含む)、ポリプロピレン(PP)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(たとえば、テフロン)、熱可塑性のポリオレフィン(たとえば、熱可塑性のポリエチレン、熱可塑性のポリプロピレン、熱可塑性のオレフィン)、ならびに、プロピレンを基剤としたエラストマーを含む。他の合成ポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVAL)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート、即ち、PETEなど)、ポリカーボネート、メタクリレート、アクリレート、ポリアミド(たとえば、ナイロン)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、合成ゴム、フェノールホルムアルデヒド樹脂(ベークライト)、ネオプレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、PVB、シリコーンエラストマー、および、熱可塑性のエラストマー(たとえば、エチレンを基剤としたエラストマー、プロピレンを基剤としたエラストマー、またはブチレン基剤のエラストマーなどのような、オレフィンを基剤としたエラストマー)(たとえば、Engage(商標)、熱可塑性エラストマー、Vistamaxx(商標)6102、Vistamaxx(商標)6202、および、Vistamaxx(商標)3020などのような、Vistamaxx(商標)、熱可塑性エラストマー、Duragrip(登録商標)DGR 6250CL、および、Thermolast(登録商標)M TM6LFT)を含む。天然ポリマー材料は、シェラック、天然ゴム、多糖類、セルロースエーテル、セルロースアセテート、およびタンパク質を含む。
【0032】
一実施例によれば、ポリマー画分は、高い過酸化物安定性(すなわち、過酸化物漂白剤の分解を引き起こさないようになっている)、および/または、良好な熱的安定性(すなわち、出荷および保管の間の上昇した温度に曝されるときにその形状を維持する帯片またはトレイを生み出すようになっている)を有することが可能である。
【0033】
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物のポリマー画分を含む1以上のポリマーは、典型的に、ワックスを基剤とした組成物の約5重量%から約60重量%の範囲、好ましくは、約7重量%から約50重量%の範囲、より好ましくは、約10重量%から約40重量%の範囲、最も好ましくは、約15重量%から約30重量%の範囲の量で含まれる。
【0034】
1以上の補助成分(たとえば、可塑剤、流動性改良剤、および/または充填剤)は、含まれる場合、補助成分が、ワックスを基剤とした組成物の約0.01重量%から約5重量%の範囲、好ましくは、ワックスを基剤とした組成物の約0.1重量%から約4重量%の範囲、より好ましくは、約1重量%から約3重量%の範囲の量で含まれ得る。
【0035】
ワックス画分、ポリマー画分、および/または、補助成分における少なくとも一部分は、シートの形態で販売されワックスおよびポリオレフィンにおける工業所有権により保護されている混合物を含有しているParafilm(登録商標)の中に含有される物質と同様であり、および/または、Parafilm(登録商標)の中に含有される物質によってもたらされる。ParafilmM(登録商標)は、粘着を防止するために裏紙を備える可撓性のシート材料であり、通常、化学実験室においてフラスコまたはキュベットを一時的にシールするために使用されている。ParafilmF(登録商標)は、通常、植物の接ぎ木において使用されている。Parafilm(登録商標)シートは、代表的には、約100°F(または、約38℃)で軟化し、もし、Parafilm(登録商標)シートが歯科治療トレイに熱成形されるならば、シートは、約38℃以上の温度で曲がり始める。結果として、バリア層として天然(native)のParafilm(登録商標)を使用して作製された経口治療用帯片は、出荷および保管の間の上昇した温度(すなわち、それは、50℃以上に到達する可能性がある)において、しわになり、即ち、縮んでしわが寄る状態になる可能性がある。さらに、バリア層として天然のParafilm(登録商標)を使用して作製された経口治療用帯片は、長時間にわたって口の中に配置されて体温に曝される場合、過度に軟らかくゴム状になる可能性があり、使用者がParafilm(登録商標)バリア層を容易に噛み貫いて穿孔することを可能にし、唾液に対するバリアとしての機能を果たすその能力を損なわせる。
【0036】
しかし、予想外なことには、Parafilm(登録商標)シート材料が、複数個に切り分けられ、射出成形プロセスにおいて、供給材料として使用されるときには、結果としての射出成形されたトレイは、40℃を超える温度まで(たとえば、射出成形条件に応じて、最大約50~52℃まで)熱的に安定である。したがって、「天然の」Parafilm(登録商標)の組成物は、本明細書で説明されているものなどのように、射出成形プロセスに関連付けられる温度、および/または、圧力を受ける場合、新しい物質の組成物へと明らかに変えられている。加えて、Parafilm(登録商標)は、本明細書で開示されている他の成分との混合成分として使用可能とされ、少なくとも40℃の温度において熱的安定性を有するトレイまたは帯片を生み出す。
【0037】
いくつかの実施例によれば、ワックスを基剤とした組成物は、平坦なシートまたは立体の物品へと形成される場合、および、シートまたは物品が典型的に輸送および保管の間に受ける温度まで加熱される場合、熱的に安定である(すなわち、寸法的に安定であり、かなりの変形に耐える)。一実施例によれば、ワックスを基剤とした組成物は、少なくとも40℃、または、少なくとも約42.5℃、または、少なくとも約45℃、または、少なくとも約48℃、または、少なくとも約50℃、または、少なくとも約52.5℃、または、少なくとも約55℃、または、少なくとも約60℃、または、少なくとも約65℃、または、少なくとも約70度の温度まで加熱される場合、熱的に安定である。
【0038】
加えて、ワックスを基剤とした組成物は、塑性変形可能であり得る。すなわち、組成物は、所望の形状へと形成され、それから、外力を加えない限りその形状を保つことが可能である。一実施例によれば、ワックスを基剤とした組成物は、室温(25℃)において、塑性変形可能であり、非脆性である。換言すれば、ワックスを基剤とした組成物は、破壊または亀裂なしに、所望の形状へと構成可能とされ、室温を超える温度まで加熱しなければ、その形状を保つようになっている。他の実施例では、ワックスを基剤とした組成物は、シートに押し出し成形され、または、上昇した温度において、特定の厚さの所望の立体の物品へと熱成形もしくは射出成形される場合、室温において塑性変形可能になる。いくつかの実施例では、ワックスを基剤とした組成物は、室温において半硬質であり、また、たとえば、ワックスを基剤としたバリア層を含む経口治療用装置のケースでは体温など、室温を超える温度まで加熱される場合、より可撓性および変形可能になる。
【0039】
ワックス画分およびポリマー画分の相対的な濃度に応じて、ワックス画分は、連続相を含むことが可能であり、ポリマー画分は、連続的なワックス相の中に分散相を含むことが可能である。代替的には、ポリマー画分は、連続相を含むことが可能であり、ワックス画分は、連続的なワックス相の中に分散相を含むことが可能である。いくつかのケースでは、ワックス画分およびポリマー画分が、連続相および分散相なしに、相互貫入網目構造(an interpenetrating network)を形成することが可能である。
【0040】
熱的に安定であり塑性変形可能であるシートまたは物品を作製に適したワックスを基剤とした組成物を製造する例示的な方法は、(1)少なくとも1つのワックスと少なくとも1つのポリマーとを組み合わせて、混合物を形成し、(2)ポリマー画分と均質に混合されたワックス画分からなるワックスを基剤とした組成物を形成するように、混合物を処理することを含む。
【0041】
一実施例によれば、少なくとも1つの種類のワックスおよび少なくとも1つの種類のポリマーが、押出機(たとえば、単軸スクリュー押出機または2軸スクリュー押出機)を使用して、混合され、加工される。押出機は、ワックスを基剤とした組成物を、所望の厚さを有するシートの形態へと形成することが可能である。シートは、そのまま使用可能とされ、または、たとえば熱成形することなどによって、製造の物品の所望の形状(たとえば、歯科治療トレイ)形造られ得る。代替的には、押出機は、ワックスを基剤とした組成物を、個々のペレットに分けられたストランドへと形成することが可能であり、それから、たとえば射出成形することなどによって、製造の物品の所望の形状を形成するようにさらに加工され得る。当技術分野で知られている他の混合装置は、押し出され、射出成形され、代替的には、別の方法で所望の形状へと形成されるワックス-ポリマー混合を形成するために使用可能とされる。
【0042】
例示的な押出機は、混合域、加熱域、および加圧域などのような、複数の区域(たとえば、10の区域)を含むことが可能である。ワックス材料、ポリマー材料、および補助材料は、異なる区域の中に別々に、または、同じ区域の中に一緒に、押出機の中へ供給され得る。たとえば、1以上のポリマー成分は、区域1の中へ供給され得、1以上のワックス成分は、区域3の中へ供給され得る。補助成分は、使用される場合には、これらの区域または異なる区域のうちの1つの中へ供給され得る。その複数の区域は、同一の、または、異なる温度を有することが可能である。普通、押出機の中へ供給され押出機の中で混合される材料は、約50℃から約225℃までの範囲内、好ましくは、約55℃から約210℃までの範囲内にある、1つまたは複数の温度にさらされることが可能である。より好ましくは、より前の区域の中の材料が、約135℃から約220℃までの範囲にある、より高い温度を受け、より後の区域の中の材料が、押出機における他の部分において、約50℃から約125℃までの範囲にある、より低い温度にさらされ、最も好ましくは、より前の区域において、約140℃から約210℃までの範囲にある、より高い温度にさらされ、より後の区域において、約55℃から約120℃までの範囲にある、より低い温度にさらされる。押出機の中の圧力は、最大約1000psiまで、好ましくは、最大約100psiまで、より好ましくは、最大約50psiまで、最も好ましくは、約1psiから約25psiまでの範囲にあることが可能である。
【0043】
例示的な射出成形装置は、ホッパー、フィーダースクリューを備えるバレル、インジェクションノズル、バルブゲート、型穴、およびモールドコアを含む。射出成形工程において、ワックスを基剤とした組成物は、約40℃から約200℃までの範囲、好ましくは、約45℃から約150℃までの範囲、より好ましくは、約50℃から約120℃までの範囲にある、組成物を溶融または軟化させるための1つまたは複数の初期温度にさらされる。フィーダーバレルは、温度を高める多数の加熱域を有することが可能である。普通、最高温度は、バルブゲートにおいて到達される。たとえば、約1000psiから約50,000psiまでの範囲内、好ましくは、約2500psiから約40,000psiまでの範囲内、より好ましくは、約5000psiから約30,000psiまでの範囲内、さらにより好ましくは、約7500psiから約20,000psiまでの範囲内、および最も好ましくは、約10,000psiから約15,000psiまでの範囲内にある圧力において、軟化または溶融された組成物は、型穴を充填するために型穴の中へ圧力下で導入される。固化された射出成形された物品をもたらすために、モールドコアおよびキャビティーは、約-10℃から約40℃までの範囲内、好ましくは、約-5℃から約30℃までの範囲内、より好ましくは、約0℃から約25℃までの範囲内、さらにより好ましくは、約2℃から約20℃までの範囲内、最も好ましくは、約3℃から約10℃までの範囲内にある、低くされた温度を有することが可能である。
【0044】
III.ワックスを基剤とした組成物から作製される物品
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製され得る物品の例は、それに限定されないが、シート、経口治療用帯片、開口をシールするためのシート、成形された立体の物品、および歯科治療用トレイを含む。シート状の物品は、平坦で、かつ、物体の上に置かれ、それから、その形状を維持することができる所望の形となるように物体の周りに巻き付けられ得るように可撓性および塑性変形可能である。いくつかのケースでは、シートは、それが巻き付けられる物体の立体の特徴を含むために、「個別化可能である」ことが可能である。同様に、成形された立体の物品は、
物体に配置され、それから、物体により良好に装着されるとともに、合わされた物体における立体の特徴によりしっくり合うように、塑性変形可能である。
【0045】
いくつかの実施例によれば、室温(25℃)において塑性変形可能であり、少なくとも40℃、または、少なくとも約42.5℃、または、少なくとも約45℃、または、少なくとも約48℃、または、少なくとも約50℃、または、少なくとも約52.5℃、または、少なくとも約55℃、または、少なくとも約60℃、または、少なくとも約65℃、または、少なくとも約70度の温度において(たとえば、配合に応じて、50℃から75℃までの間の温度において)、熱的に安定している、平坦な、または、湾曲した複数のシートがもたらされる。これにより、本明細書で開示されているワックスを基剤とした組成物から作製されたシート状の物品が、50~75℃以上の温度において、それらの所望の形状を失うことなく、製造され、輸送され、および、保管されることを可能にする。その複数のシートは、ワックス画分と、ワックス画分と均質に混合されたポリマー画分とを含むワックスを基剤とした組成物からなる。そのワックス画分は、少なくとも1つのワックスを含む。ポリマー画分は、少なくとも1つのポリマーを含む。そのシートは、ワックスを基剤とした組成物を押し出すことによって形成され得る。
【0046】
他の実施例によれば、室温(25℃)において塑性変形可能であり、少なくとも40℃、または、少なくとも約42.5℃、または、少なくとも約45℃、または、少なくとも約48℃、または、少なくとも約50℃、または、少なくとも約52.5℃、または、少なくとも約55℃、または、少なくとも約60℃、または、少なくとも約65℃、または、少なくとも約70度の温度において(たとえば、配合に応じて、50℃から75℃までの間の温度において)、熱的に安定であり、したがって、上昇した温度において寸法的に安定している立体の物品がもたらされる。
【0047】
IV.経口治療用装置およびキット
A.ジェネラルデスカッション
本明細書で開示されているのは、ワックスを基剤とした組成物、および、バリア層に隣接して配設されており、および/または、バリア層の中に含浸される経口治療組成物からなるバリア層を含む経口治療用装置である。バリア層は、トレイまたは帯片の形であることが可能である。歯科治療用トレイは、典型的に、少なくとも1つの側壁部と(たとえば、少なくとも唇側壁部、および、随意的に舌側壁部も)、少なくとも1つの側壁部に隣接し、少なくとも1つの側壁部から横方向に延在している底部壁部(たとえば、唇側壁部から舌側に延在し、または、唇側壁部と舌側壁部との間の移行部またはブリッジを形成する)とを含む。帯片状のバリア、および/または、歯科治療用トレイの少なくとも1つの側壁部および底部壁部は、少なくとも1つのワックスと、ワックスと均質に混合された少なくとも1つのポリマーとを含む、ワックスを基剤とした組成物を含む。経口治療用装置は、ワックスを基剤としたシートを熱成形することによって、ワックスを基剤とした組成物を射出成形することによって、または、当技術分野で知られている任意の他の適当な方法によって、形成され得る。
【0048】
いくつかの実施例によれば、本明細書で開示されているワックスを基剤とした組成物から作製された経口治療用装置は、室温(25℃)において塑性変形可能であり、少なくとも40℃、または、少なくとも約42.5℃、または、少なくとも約45℃、または、少なくとも約47.5℃、または、少なくとも約50℃、または、少なくとも約53℃、または、少なくとも約55℃、または、少なくとも約60℃、または、少なくとも約65℃、または、または、少なくとも約70℃の温度において(たとえば、配合に応じて、50℃から75℃までの間の温度において)、熱的に安定であり、したがって、上昇した温度において寸法的に安定である。これにより、本明細書で開示されているワックスを基剤とした組成物から作製された経口治療用装置が、50℃~75℃以上の温度において、それらの所望の形状を失うことなく、製造され、輸送され、および、保管されることを可能にする。それにもかかわらず、使用者の口の中に配される場合、本明細書で開示されているワックスを基剤とした組成物から作製された歯科治療用トレイおよび帯片状のバリア層は、使用者の固有の歯列のサイズおよび形状に容易に従わせることが可能である(たとえば、使用者の口の中で自己個別化可能である)。それらは、体温においてそれほど軟化されてはいないので、それらは、未だ穿孔に耐えている咬合面表面に容易に従わせることが可能である。
【0049】
一実施例によれば、トレイまたは帯片は、特注されていなくてもよく、使用者の固有の歯列に対応する特徴を持っていなくてもよい。使用者の口の中に配されたならば、体温まで温まることが可能であり、使用者の固有の歯列に少なくとも部分的に従うためのトレイまたは帯片の機能を助長し、それによって、少なくとも部分的に個別化されることになる。たとえば、トレイまたは帯片は、吸引すること、噛むこと、および/または指圧などのような、整形力を使用して、使用者の口の中で少なくとも部分的に個別化され得る。他の実施例によれば、トレイは、(たとえば、使用者の固有の歯列に対応するへこみをトレイの中に記録するために、使用者の歯のストーンモデルを使用して)個別化され得る。好都合なことには、口腔帯片およびトレイは、唾液に対しバリアを維持するために、使用者がトレイまたは帯片の咬合面表面を介し噛むことが困難、即ち、不可能となるように、考案されている。
【0050】
経口治療をもたらすためのキットは、ワックスを基剤としたバリア層および1以上の事前に適用された経口治療組成物を含む、複数の経口治療用装置を含むことが可能である。代替的には、キットは、1以上のワックスを基剤としたバリア層と、使用のときに使用者によってバリア層に適用され得る1以上の経口治療組成物とを含むことが可能である。キットは、人の上側歯に装着するように構成されているいくつかのバリア層と、人の下側歯に装着するように構成されている他のバリア層とを含むことが可能である。
【0051】
代替的には、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製された複数の一回使い切り、使い捨ての個別化された歯科治療用トレイは、キットの中で使用者にもたらされ得る。一実施例によれば、個別化された歯科治療トレイのキットにより、使用者は、治療の成り行きごとに、新しく個別化された歯科用トレイの利益を有することができる。さらに、ワックスを基剤とした組成物の塑性変形可能な性質に起因して、作製されたトレイは、したがって、専門的に特注されたトレイよりも快適で良好に装着することが可能である。
【0052】
1回使い切り、使い捨ての個別化された歯科治療用トレイのキットを製造する方法は、(1)歯型の材料を使用して使用者の歯の歯形をとり、(2)使用者の歯の歯形から使用者の歯のストーンモデルを作製し、(3)本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物からなる複数のシートを用意し、(4)ストーンモデルを使用してシートを熱成形し、複数の個別化された歯科治療用トレイを形成し、(5)随意的に、余剰なトレイ材料を切り落とし、適当なサイズおよび装着を最大化することを含む。1回使い切り、使い捨ての個別化されたワックスを基剤とした歯科治療用トレイは、使用者によってトレイの中へ入れられた経口治療組成物を含むキットで使用可能とされ、または、経口治療組成物によって予め入れられる。
【0053】
その形態にかかわらず、バリア層は、典型的に、使用者の口の中の唾液から経口治療組成物を保護するために耐湿性である。ワックスおよびポリマーは、疎水性の傾向があるので、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物は、典型的に、耐湿性である。ワックスを基剤としたバリア層は、典型的には、約0.025mmから約1.5mmまでの範囲、または、約0.05mmから約1.25mmまでの範囲、または、約0.075mmから約1mmまでの範囲、または、約0.09mmから約0.75mmまでの範囲、または、約0.1mmから約0.5mmまでの範囲、または、約0.15mmから約0.35mmまでの範囲にある厚さを有することとなる。
【0054】
一実施例によれば、例示的な歯科治療用トレイの咬合面壁部は、1以上の側壁部よりも大きな断面厚さを有することが可能である(たとえば、約20~100%厚い、または、約30~75%厚い、または、約40~60%厚い)。これは、使用者が咬合面壁部を噛み貫くことおよび穿孔することなく、歯科治療トレイが使用者の歯に自己個別化される機能を含むいくつかの利益をもたらす。それは、1以上の側壁部が快適さおよび装着について妥協することなく、取り付けられるより硬質の基部をもたらすことにより、
歯科治療用トレイの寸法安定性を高めることができる。咬合面壁部は、典型的には、高められた咬合面壁部の硬さが、使用者の唇側の歯表面、および/または、舌側の歯表面に個別化または適応されるより薄い側壁部の機能を著しく低下させることがないように、取り付け中、使用者の歯に接触するための最後の壁部である。さらに、咬合面壁部は、噛むことによって、使用者の咬合歯表面に容易に自己個別化され得るので、使用者は、肉厚の増大にかかわらず、咬合面壁部を容易に自己個別化することが可能である。そして、実際に、肉厚の増大は、最大の個別化力(すなわち、噛むこと)を受ける咬合面領域において最も有益である。
【0055】
厚くされた咬合面壁部を設ける他の利益は、それが、本明細書で開示されているワックスを基剤とした組成物から、相対的に薄壁である歯科治療トレイを射出成形することを容易にするという点にある。成形されたトレイの咬合面壁部は、典型的に、唇側壁部と舌側壁部との間のおおよそ中間にあるので、厚くされた咬合面壁部に対応する領域の中の型穴は、より薄い唇側壁部および舌側壁部に対応する隣接領域よりも幅が広くなることとなる。型の中間領域の中のより幅の広い型穴は、型穴の全体を通して、軟化されたワックスを基剤とした組成物のより良好な流れをもたらすことによって、射出成形を容易にする。
【0056】
経口治療組成物は、少なくとも1つの活性剤、少なくとも1つの組織接着(または、濃厚剤)剤、液体またはゲル溶媒、活性剤および組織接着剤がその中へ分散される担体または賦形剤(vehicle)、ならびに、必要に応じて他の成分およびアジュバント(adjuvents)を含むことが可能である。治療組成物は、人の歯表面、および/または、歯肉の少なくとも一部分に接触するように位置決めされている、連続的なまたは非連続的なビード(beads)または層を含むことが可能である。治療組成物は、液体、ゲル、粘り気のある粘着性の材料、パテ、または固形における粘度を有することが可能である。固形およびパテは、水または唾液によって湿らせられると、歯、および/または、歯肉に対して、より粘り気が出て接着するようになることが可能である。いくつかの場合では、「ゲル」と「パテ」または「固形」との間の主な差は、組成物の中の溶媒または担体の濃度である。普通、組織接着剤に対する溶媒または担体の濃度が、大きくなればなるほど、組成物は、粘着性が小さくなる。組織接着剤に対する溶媒または担体の濃度が低くなればなるほど、組成物は、より粘着性のパテ状または固形になる。
【0057】
経口治療組成物のための活性剤における複数の例としては、歯科用漂白剤、除痛剤、再石灰化剤、抗菌剤、抗歯垢形成剤、抗歯石剤、歯肉無痛化剤、麻酔薬、抗酸化剤、および口内清涼剤を含む。歯科用漂白剤における複数の例としては、過酸化水素水溶液、過酸化カルバミド、過ホウ酸塩金属(たとえば、過ホウ酸ナトリウム)、過炭酸塩金属(たとえば、過炭酸ナトリウム)、過酸化物金属(たとえば、過酸化カルシウム)、亜塩素酸塩金属および次亜塩素酸金属、ペルオキシ酸(たとえば、ペルオキシ酢酸)、ならびにペルオキシ酸塩を含む。
【0058】
本発明に従う歯科用漂白組成物の中の漂白剤は、たとえば、歯科用漂白組成物の1~90重量%の間の任意の所望の濃度を有することが可能である。歯科用漂白剤の濃度は、それぞれの漂白期間のための意図した治療時間に応じて調節され得る。漂白剤は、好ましくは、約1重量%から約60重量%までの範囲、より好ましくは、約3重量%から約40重量%までの範囲、最も好ましくは、約5重量%から約30重量%までの範囲にある量で含まれている。歯科用漂白剤が使用されるときには、ワックスを基剤とした組成物を作製するために使用される材料は、漂白剤と時期尚早に反応しないように、および、漂白剤を不安定化させないように、選択され得る。
【0059】
除痛剤の複数の例としては、硝酸カリウム、他のカリウム塩、クエン酸、クエン酸塩、およびフッ化ナトリウムを含む。再石灰化剤の例は、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、および、他のフッ化物塩である。抗菌剤および防腐剤の例は、クロルヘキシジン、トリクロサン、安息香酸ナトリウム、パラベン、テトラサイクリン、フェノール、塩化セチルピリジウム、および塩化ベンザルコニウムを含む。抗歯垢形成剤または抗歯石剤の例は、ピロリン酸塩である。歯肉無痛化剤の例は、アロエベラ、マイルド硝酸カリウム、および等張液形成塩を含む。麻酔薬の例は、ベンゾカインおよびリドカインを含む。抗酸化剤の例は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、他のビタミン、およびカロテンを含む。口内清涼剤の例は、ショウノウ、ウィンターグリーンのオイル、ペパーミント、スペアミント、およびサリチル酸メチルを含む。
【0060】
組織接着剤、粘着付与剤、または増粘剤は、多種多様な親水性のポリマーを含むことが可能である。例は、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP-酢酸ビニルコポリマー、カルボキシポリメチレン(たとえば、Novean,Inc.によって販売されているCARBOPOL)、ポリエチレンオキシド(たとえば、Union Carbide製のPOLYOX)、ポリアクリル酸ポリマーまたはコポリマー(たとえば、Novean,Inc.によって販売されているPEMULEN)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸およびポリアクリルアミドのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、セルロースエーテル、多糖類樹脂、およびタンパク質などを含む。PVPの例は、Kollidon 30(50,000の分子量を有する、BASFによって販売されているポリビニルピロリドンポリマー)、Kollidon VA 60(60,000の分子量を有するポリビニルピロリドンポリマー)、およびKollidon 90 F(1千3百万の分子量を有するポリビニルピロリドンポリマー)を含む。
【0061】
経口治療組成物がゲルであるケースでは、1以上の組織接着剤は、好ましくは、治療ゲルの約1重量%から約50重量%の範囲、より好ましくは、約3重量%から約30重量%までの範囲、最も好ましくは、約5重量%から約20重量%までの範囲にある量で含まれる。
【0062】
経口治療組成物がパテまたは固形である場合、1以上の組織接着剤が、好ましくは、実質的に固形の治療組成物の約10重量%から約90重量%までの範囲、より好ましくは、約20重量%から約80重量%までの範囲、最も好ましくは、約40重量%から約75重量%までの範囲にある量で含まれている。
【0063】
粘り気のある粘着性のゲルを含む、液体およびゲルは、活性剤、組織接着剤、および他の成分がその中に溶解または分散されている、1以上の液体またはゲル、溶媒、担体または賦形剤を含むことが可能である。液体またはゲル溶媒、担体または賦形剤の例は、水、アルコール(たとえば、エチルアルコール)、およびポリオール(たとえば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、他の糖アルコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、およびポリプロピレングリコール)を含む。
【0064】
固形または固いパテに関して、溶媒、担体または賦形剤の濃度は、典型的に、治療ゲルと比較して希釈されることとなる。ゲルをパテまたは固形の組成物に変化させることが望まれる場合、蒸発によって除去され得る1以上の揮発性の溶媒(たとえば、水、アルコール、アセトン、および他の有機溶媒)を含むことが有利である可能性がある。水に関する親水性のポリマーの親和性に起因して、固形であるように見える治療組成物でも、かなりの量の結合水を含むことが可能である(たとえば、治療組成物の最大約10重量%以上)。治療組成物が高度に粘着性のまたは固いパテの粘度を有する場合、組成物は、一般的に、可塑剤または軟化剤としての役割を果たす溶媒、担体、または賦形剤を含むこととなる。
【0065】
経口治療組成物は、随意的に、必要に応じて他の成分を含み、所望の特性を有する治療組成物を生み出すことが可能である。複数の例は、漂白剤安定剤(たとえば、EDTA、EDTAの塩、クエン酸およびその塩、リン酸およびその塩、フェノールホスホン酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、アルカリ金属ピロリン酸、アルカリ金属ポリホスフェート、およびアルキル硫酸塩)、中和剤(たとえば、水酸化ナトリウムおよびトリエタノールアミン)、無機の増粘剤(たとえば、フュームドシリカ)、着色剤、香味剤、ならびに甘味料などを含む。
【0066】
一実施例によれば、経口治療用装置は、従来の漂白トレイの場合のように、馬蹄形状の長手方向の外形、および、U字形状の断面を備えるトラフを有することが可能である。代替的には、経口治療用装置は、平坦な帯片などのような、他の形状を有するバリア層を有することが可能であり、平坦な帯片は、長方形であり、または、使用者の歯の周りに折り畳まれるように、および、使用者の歯の上に装着するように輪郭形状をしている。
【0067】
本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製された物品の他の例は、それに限定されないが、口内乾燥、感染症、歯科条件、および歯の過敏症などを含む、さまざまな条件を治療するために、高齢者患者、回復期患者、衛生状態が悪い患者、挿管されている人間、または他の患者に、昼または夜に、治療薬を送出するために使用される治療用送出装置(たとえば、トレイまたは帯片)を含む。活性経口剤の例は、それに限定されないが、フッ化物、除痛剤、麻酔薬、再石灰化剤、抗歯垢形成剤、抗歯石剤、抗菌剤、抗生物質、クロルヘキシジン、ドキシサイクリン、または、軟質口腔組織のための治癒剤を含む。活性経口剤は、それに限定されないが、粘り気のある粘着性の組成物、実質的に固形の組成物、パテ状の組成物、粘着性の小さいまたは流動性を持つ組成物を含む、種々のレオロジーの組成物の中に含有され得る。例として、フッ化物治療組成物は、粘り気のある粘着性のゲルであることが可能であり、代替的には、患者の歯から容易に洗い流すことが可能な粘着性の小さい、より流動性を持つ組成物であることが可能である。代替的には、固形の活性剤(たとえば、ドキシサイクリン、または、歯周ポケットを治療するための他の抗生物質)は、ワックスを基剤としたトレイまたは帯片の壁部の中に埋め込まれ、持続的な治療のために、口腔組織の領域に対して、または、口腔組織の領域の近くに保持され得る。
【0068】
治療用装置は、ワックスを基剤とした組成物およびその中に事前に添加された経口治療組成物(たとえば、粘り気のある粘着性の組成物、実質的に固形の組成物、またはパテ状の材料)から作製されたバリアライナーを含むことが可能である。代替的には、治療用装置は、ワックスを基剤とした組成物から作られたバリアライナーと、より流動性を持つ粘着性の小さい口腔組成物を、トレイの中に保持するように貯蔵部としての役割を果たし、歯および/または、不所望な方法で、装置から口腔の中へ拡散するかまたは滲出される場合がある口腔組織に隣接した吸収剤インサートまたはライニング(たとえば、吸収紙またはスポンジ材料)と、を含んでもよい。
【0069】
他の治療用装置は、それに限定されないが、とりわけ最初に配置されるときに炎症を引き起こす可能性がある歯列矯正装置から軟質口腔組織を保護するための歯列矯正ガード装置(たとえば、トレイまたは帯片)と、歯列矯正装置の刺激性の特徴と軟質口腔組織との間のバリアを形成し得る歯列矯正ガードトレイおよび帯片と;顎関節(「TMJ」)の障害(「TMJ障害」または「TMD」)を治療するための装置と;歯ぎしり防止装置と;スポーツマウスガードのための個別化可能なインサート、および、2色の成形されたスポーツマウスガードを含む、個別化可能なスポーツマウスガードと;咬合面場所を記録するための変形可能な帯片またはシートと;口腔外科手術の後に口腔組織を保護するように、および/または、治療薬を送出するように設計されている外科用トレイなどを含む。
【0070】
B.実例の説明
ここで、図面が参照され、図面は、本明細書で開示されているような経口治療用装置のいくつかの実施例を図示している。図1Aおよび図1Bは、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした材料から作られる経口治療用トレイ、即ち、インサート100を図示している。トレイ、即ち、インサート100は、普通、可撓性の立体の本体部102を含み、可撓性の立体の本体部102は、概して馬蹄形状の構成を有しており、概して馬蹄形状の構成は、唇側壁部104と、唇側壁部104から横方向に(たとえば、舌側に)延在する咬合面壁部106と、咬合面壁部106から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部108とによって画定されている。唇側壁部104、咬合面壁部106、および舌側壁部108は、概してU字形状の断面を有するトラフ110を一緒に画定している。
【0071】
図1Bは、1B-1B線に沿った図1Aのトレイ、即ち、インサート100の断面図である。この図に図示されているように、唇側壁部104と、咬合面壁部106、および舌側壁部108とは、実質的に連続的な壁部厚さ112を有する本体部102をもたらす。しかし、トレイ、即ち、インサート100は、所望の機能をもたらすように異なる領域において可変の厚さを有することが可能であるということが認識されることとなる。
【0072】
経口治療用トレイ、即ち、インサート100は、さまざまな異なる機能をもたらすように使用可能とされ、その意図した使用に応じて、異なる、および/または、種々の厚さを有することが可能である。薬剤または他の活性経口剤を送出するために治療トレイとして使用される場合、トレイ100は、良好な装着および快適さを提供するために、薄壁であり、可撓性であり、および、人の歯に容易に適合可能であり得る。トレイ100のワックスを基剤とした組成物は塑性変形可能であるので、トレイ本体部102は、人の固有の歯列の固有の形状およびサイズを記録および維持することが可能である。経口剤を送出するために経口治療用トレイとして使用されるときには、唇側壁部104、舌側壁部106、および咬合面壁部108は、約0.001”(インチ)から約0.04” (インチ)までの範囲、または、約0.002” (インチ)から約0.02” (インチ)までの範囲、または、約0.004” (インチ)から約0.01” (インチ)までの範囲、または、約0.005” (インチ)から約0.008(インチ)までの範囲にある、同じまたは異なる厚さを有することが可能である。
【0073】
経口治療用装置100が、たとえば軟質口腔組織を炎症から保護するなど、単に薬剤または他の口腔ケア組成物を送出する以外の目的のために使用されるケースでは、本体部102は、断面厚さを有し、その断面厚さは、少なくともいくつかの理由で、より厚くなっており、潜在的に、より軟質であり、かつ、より可撓性がある。たとえば、患者が、歯列矯正装置を装着されたか、または、最近、口腔外科手術をうけた(たとえば、口の中にワイヤーまたはロッドを有している)場合には、トレイは、鋭くとがった先または突出部を登録し、改善し、かつ和らげるのに十分に厚く、さらに可撓性であるべきであり、鋭くとがった先または突出部は、そうでなければ、それと接触させられるときに、軟質口腔組織に炎症を起こす可能性がある。軟質のワックスを基剤としたトレイ100は、軟質口腔組織に優しい、より滑らかでより均一な表面を提供することが可能である。また、トレイ100は、特定のタイプのハードウェアまたは歯列矯正器具(appliance)を人の口の中に収容するために、固有の形状を有することが可能であり、および/または、それは、ハードウェアまたは歯列矯正器具に容易に一致するために、高度に適合可能であり得る。
【0074】
経口治療用装置100がTMJ障害を治療するために使用されるケースでは、トレイ本体部102が、所望の治療効果を提供するのに十分な断面厚さおよび硬さを有する咬合面壁部108を有することが可能である。たとえば、臼歯が一緒になることを防ぐことが望ましい可能性がある。そのようなケースでは、咬合面壁部108の後方部分は、所望のブリッジング効果および/またはレバーイング(levering)効果を提供するための厚さおよび硬さを有し、TMJの痛みを軽減し、治癒を促進することが可能である。正確な厚さは、ケースバイケースで変化する可能性があり、歯科医または口腔外科医によって処方され得る。普通、本明細書で開示されているようなTMJトレイの厚さは、約0.01” (インチ)から約0.2” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.025” (インチ)から約0.15” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.05” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲であることが可能である。
【0075】
経口治療用装置100が歯ぎしり防止装置として使用されるケースでは、トレイ本体部102が、所望の治療効果を提供するのに十分な断面厚さおよび硬さを有する咬合面壁部108を有することが可能である。たとえば、臼歯および他の歯が夜に睡眠中に一緒に擦り合わせることを防ぐことが望ましい可能性がある。そのようなケースでは、咬合面壁部108の後方部分は、所望の歯ぎしり防止効果を提供するための厚さおよび硬さを有し、歯を保護することが可能である。正確な厚さは、ケースバイケースで変化する可能性があり、歯科医によって処方され得る。普通、本明細書で開示されているような歯ぎしり防止トレイの厚さは、約0.001” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.005” (インチ)から約0.08” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.01” (インチ)から約0.05” (インチ)までの範囲であることが可能である。
【0076】
また、経口治療用装置100は、スポーツマウスガードとして使用され、または、ワックスを基剤とした材料から作製された個別化可能なインサートを収容するように設計されているトラフを備える成形されたポリマーマウスガードシェルのための自己個別化可能なインサートとして使用され得る。経口治療用装置100がスポーツマウスガード構造体を提供するケースでは、トレイ本体部102は、約3mm(約1/8”)から約6mm(約1/4”)までの範囲にある厚さを有することが可能であり、スポーツイベントの間の鋭い一撃または衝撃から歯を保護するようになっている。トレイ本体部102は、可撓性であるが硬く耐久性のある外側マウスガードシェルおよび内側個別化可能な層を備える、2色の成形品によって形成され得、外側マウスガードシェルは、スポーツイベントの間に起こり得る衝撃力を受け取って分配することが可能であり、また、それは、任意の適切なポリマー材料から作製され得、内側個別化可能な層は、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製され得、それは、使用者の固有の歯列を記録し、装着および快適さを最大化するように、使用者によって個別化され得る。そのようなケースでは、マウスガードシェルは、約0.1” (インチ)から約0.3” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.12”(インチ)から約0.275” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.14” (インチ)から約0.2” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能であり、また、ワックスを基剤とした組成物から作製された内側個別化可能な層は、約0.005” (インチ)から約0.15” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.125” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能である。
【0077】
トレイ本体部102がスポーツマウスガードに関する個別化可能なインサートであるときには、それは、約0.005” (インチ)から約0.15” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.125” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能である。いくつかのケースでは、トレイ本体部102は、使い捨てのインサートであることが可能であり、それは、単一のまたは複数のスポーツイベントのために使用され、除去され、それから、将来のスポーツイベントのために新しいトレイ本体部102によって交換される。このように、トレイ本体部102は、それが1以上のスポーツイベントの間に時間をかけて変形させられ、または引き伸ばされるようになる場合には、容易に個別化され、それから、交換され得る。
【0078】
以下の図面は、歯科治療組成物を送出する際に使用するための歯科治療トレイであるという観点から議論されているが、任意のものが、図1Aおよび図1Bならびに本開示の他の部分を参照して上記に説明されているさまざまな装置および使用を含む、任意の所望の使用に関して機能するように修正され得るということが理解されるべきである。
【0079】
図1Cは、ワックスを基剤としたバリア層102を含む経口治療用装置100の斜視図であり、ワックスを基剤としたバリア層102は、馬蹄の全体を通して概してU字形状の断面を有するトラフ110を一緒に画定する、前部側壁部104、後部側壁部106、および馬蹄形状の底部壁部108を有している。トラフ110の中に配設されているのは、経口治療組成物112であり、経口治療組成物112は、粘り気のある粘着性のゲルなどのようなゲルであることが可能であり、それは、使用の間に使用者の歯の上の適正な位置に歯科治療トレイを信頼性高く保持するのを支援することが可能である。経口治療組成物112は、ゲル、粘り気のある粘着性のゲルから、固形の治療組成物までの範囲にある粘度を有することが可能である。経口治療組成物112は、約1mmから約5mmまでの範囲、より好ましくは、約2mmから約4mmまでの範囲にある断面直径または厚さを有する粘着性のゲルであることが可能である。ゲルは、連続的なビードの組成物であることが可能である。
【0080】
図1Dは、経口治療用装置100’を示しており、経口治療用装置100’は、実質的にU字形状の断面を備える馬蹄形状を有する歯科用トレイの形態のワックスを基剤としたバリア層102を含む。バリア層102は、概してU字形状の断面を有するトラフ110を一緒に画定する、前部側壁部104、後部側壁部106、および底部壁部108を含む。トラフ110の中には、経口治療組成物112’があり、経口治療組成物112’は、ビードの組成物になっているというよりもむしろ、内部壁部を実質的にカバーしている。経口治療組成物112’は、ゲル、粘り気のある粘着性のゲル、パテ、または固形の組成物であることが可能である。治療組成物112’は、好ましくは、約0.2mmから約2mmまでの範囲、より好ましくは、約0.5mmから約1mmまでの範囲にある厚さを有する、固いパテまたは固形である。
【0081】
代替的実施例では、図1Dは、上述したような、実質的にU字形状の断面を備える馬蹄形状を有する歯科用トレイの形態のワックスを基剤としたバリア層102と、トラフ110の中に、および、使用の間に歯(図示せず)に対抗して、経口治療組成物を保つために、トラフ110の内側に位置決めされている吸収剤ライナー112’とを含む経口治療用装置100’を図示するものとして理解され得る。吸収剤ライナー112’は、任意の公知の吸収剤材料を含むことが可能であり、その例は、吸収紙およびオープンセルフォーム(open cell foam)などを含む。経口治療組成物が、ワックスを基剤としたバリア層に加えられる軽度の圧力の結果として、トラフ110から容易に流れ出るように、または、トラフ110から容易に搾り出されように、たとえば十分に流動性を持ち、または低い粘度のものであるときに、吸収剤ライナー112’が使用され得る。経口治療用装置100’が、病人に治療薬を提供するために、および、長時間にわたって(たとえば、4時間以上)口の中に維持するために使用されるケースでは、吸収剤ライナー112’は、経口治療組成物と歯および/または歯肉との間の持続的な接触を維持することを助ける。
【0082】
図2Aおよび図2Bは、経口治療用装置200、200’を示しており、経口治療用装置200、200’のそれぞれは、バリア層202を含み、バリア層202は、トラフ210を一緒に画定する、前部側壁部204、後部側壁部206、および底部壁部208を有しており、ビードの治療組成物212(図2A)または連続的な層の治療組成物212’(図2B)のいずれかが、トラフ210の中に配設されている。加えて、経口治療用装置200、200’は、前部側壁部204の中の第1のノッチ214、および、後部側壁部206の中の第2のノッチ216を含む。ノッチ214および216は、経口治療用装置200、200’がさまざまにサイズ決めおよび形状決めされている歯列弓に一致するのを支援する。
【0083】
図3Aおよび図3Bは、バリア層がさまざまな歯列弓のサイズおよび形状により良好に一致するのを支援する特徴を備えた経口治療用装置300、300’を示している。連続的な側壁部の代わりに、経口治療用装置300、300’は、前部側壁部304と、後部側壁部306と、前部側壁部304および後部側壁部306を相互接続する底部壁部308とを有するバリア層302を含む。後部側壁部306は、第1のカット部、即ち、不連続部307を含む第1の後部側壁部セクション306a、および、第2のカット部、即ち、不連続部309によって第1の後部側壁部セクション306aから分離されている第2の後部側壁部セクション306bをさらに含む。第1の後部側壁部セクション306aは、人の切歯および犬歯の内側表面の周りを包むように、および、人の切歯および犬歯の内側表面に隣接して位置するように構成されている。第2の後部側壁部セクション306bは、人の小臼歯および随意的に1以上の臼歯の内側表面の周りを包んで接触するように構成されている。
【0084】
第1の側壁部セクション306aと第2の側壁部セクション306bとの間のカット部、即ち、不連続部309は、人の切歯および犬歯に対して、とりわけ、犬歯と小臼歯の接合部において、良好な装着を促進させる。カット部、即ち、不連続部309は、第2の後部側壁部セクション306bに隣接する人の小臼歯と、第1の後部側壁部セクション306aに隣接する犬歯との間の急激な幅の差を補償している。第1の側壁部セクション306aの中の不連続部またはカット部307は、第1の側壁部セクション306aを人の切歯および犬歯の内側表面に一致させるのをさらに支援している。
【0085】
図3Aは、前部側壁部304、後部側壁部306、および底部壁部308によって画定された内部領域またはトラフの中の連続的なビードの経口治療組成物312をさらに示している。代替的には、図3Bは、前部側壁部304、後部側壁部306、および底部壁部308によって画定された内部領域またはトラフの中に配設されている実質的に連続的な層の経口治療組成物312’を示している。
【0086】
保管の間に、および、使用の前に、汚染物質から経口治療用装置を保護するために、治療用装置は、シールされたコンテナまたはパッケージの中にパッケージ化され得る。図4Aおよび図4Bに図示されているように、例示的なシールされた経口治療パッケージ400、400’は、保護パッケージ404、404’の中にシールされている経口治療用装置402、402’(たとえば、歯科治療トレイ)を含む。保護パッケージ404、404’は、剛性の高いサポート層406、406’および引き剥がし可能なカバー408、408’を含む。経口治療用装置402、402’を使用することが望まれるときには、引き剥がし可能なカバー408、408’が除去され、治療用装置402、402’が、サポート層406、406’から除去され、または分離される。
【0087】
図5Aおよび図5Bは、治療トレイというよりもむしろ治療帯片の形態の経口治療用装置の実施例を示している。経口治療帯片500は、ワックスを基剤とした材料502の帯片を含み、それは、初期には実質的に平坦であり、随意的に、丸められた角部を有することが可能である。ワックスを基剤とした材料502の帯片は、ワックスおよびポリマーの均質な混合から構成されたワックスを基剤とした材料の単一の層であることが可能である。経口治療組成物504は、ワックスを基剤とした材料502の帯片の上にコーティングされ、および/または、ワックスを基剤とした材料502の帯片の中へ含浸させられている。経口治療組成物504は、ワックスを基剤とした材料502の帯片の上に均一におよび連続的にコーティングされた均質な材料であることが可能である。
【0088】
図6Aおよび図6Bは、歯602の表面に適用され、歯602の表面に厳密に一致する経口治療用装置600を図示している。経口治療用装置600は、歯科治療トレイの形態の、または、トレイ状の構成を形成するように歯602の周りに巻き付けられている帯片状のシートの形態の、バリア層を含むことが可能である。また、経口治療用装置600は、歯および/または歯肉に所望の治療を提供することができる経口治療組成物を含む。経口治療用装置600は、それが歯602だけをカバーし、かつ、隣接する軟質口腔組織604をカバーしないように示されているが、経口治療用装置600が歯肉縁606を越えて延在し、軟質口腔組織604に少なくとも部分的に重なるということは、本開示の範囲の中にある。
【0089】
図7A図7Eは、さまざまな実施例の帯片状のバリア層を図示しており、それは、使用者の歯および/または歯肉の上に配置され、唇側表面および舌側表面の両方の周りを包んで接触するように適合され得る。図7Aは、形状が実質的に台形であるワックスを基剤とした材料700の帯片の実施例を図示している。帯片700は、第1の側部701、第2の側部702、第3の側部703、および第4の側部704を有している。第1の側部7011および第2の側部702は、第4の側部704から第3の側部703に向かって内向きに角度を有する概して真っ直ぐな側部である。第3の側部703は、凹形であり、第4の側部704よりも短いことが可能であり、一方、第4の側部704は、凸形であることが可能である。使用時に、第4の側部704は、使用者の歯と歯肉との間の交差部において、歯肉縁に隣接して配置され得る。折り畳み線705が、帯片700の中に含まれ得、帯片700は、第1の側部701から第2の側部702へ延在している。折り畳み線705は、使用の間に折り畳まれるときの装置の所望のサイズおよび形状に応じて、第3の側部703または第4の側部704のより近くに位置付けされ得る。折り畳み線705は、使用者の歯のサイズによって、および、使用者の歯の上の経口治療帯片の配置の様式によって、決定され得る。第3の側部703は、折り畳み線705に沿って帯片700を折り畳むと、使用者の歯の舌側表面に隣接して位置決めされることとなる。
【0090】
図7Bは、形状が実質的に階段付きの側部を備える台形であるワックスを基剤とした材料720の帯片の別の実施例を図示している。帯片720は、第1の側部721、第2の側部722、第3の側部723、および第4の側部724を有している。第3の側部723は、凹形であり、第4の側部724よりも短いことが可能である。第4の側部724は、凸形であることが可能である。第1の側部721および第2の側部722は、両方とも、内側角部726、727をそれぞれ含む階段側部である。折り畳み線725は、典型的には、それぞれ第1の側部721および第2の側部722の中の階段の内側角部726と内側角部727との間に延在している。
【0091】
図7Cは、形状が実質的に階段付きの側部を備える長方形であるワックスを基剤とした材料730の帯片の代替的実施例を図示している。帯片730は、第1の側部731、第2の側部732、第3の側部733、および第4の側部734を含む。第1の側部731および第2の側部732は、両方とも、内側角部726、727をそれぞれ含む階段側部である。折り畳み線735は、それぞれ第1の側部731および第2の側部732の中の階段の角部736および737から延在している。折り畳み線35は、使用者の歯の咬合面表面の上に配置され得、それは、帯片700が使用者の歯の唇側表面および舌側表面の両方の周りおよび上に折り畳まれることを可能にする。帯片700は、使用者の2つの犬歯が角部736および737のちょうど外側になるように配置され得る。第4の側部734は、使用者の歯の前部側の歯肉縁の近くに位置付けされ得る。第3の側部733は、使用者の歯の舌側表面に沿って位置付けされることとなる。
【0092】
図7Dは、形状が実質的に長方形であるがノッチ付きの側部を備える、ワックスを基剤とした材料740の帯片の代替的実施例を図示している。帯片740は、第1の側部741、第2の側部742、第3の側部743、および第4の側部744を有している。第3の側部743および第4の側部744は、両方とも、実質的に真っ直ぐな側部であり、同じ長さであることが可能である。第1の側部741および第2の側部742は、ノッチ746、747をそれぞれ含み、ノッチ746、747は、帯片740が使用者の歯の上に配置されているときに、使用者の犬歯の咬合面表面がカバーされないことを可能にする。折り畳み線745が、第1の側部741の中のノッチ746から第2の側部742の中のノッチ747へ延在することが可能である。ノッチ746、747は、示されているような横向きのV形状を有することが可能である。しかし、ノッチは、任意の所望の形状のものであることが可能であり、それは、長方形、正方形、半円形、および楕円形などを含み、使用者の歯の上に着用されるときに、犬歯の先端部が帯片740によってカバーされないことを可能にする。
【0093】
図7Eは、形状が実質的に長方形であるが、取り付けの間に使用者の歯の咬合面縁部の周りに折り畳まれることを促進させるために、側部756と側部757との間に折り畳み線755を備える、ワックスを基剤とした材料750の帯片の代替的実施例を図示している。人の歯の上に取り付けされると、帯片またはシート750は、治療されることとなる口腔組織に対抗して、または、治療されることとなる口腔組織の近くに、経口治療組成物を維持することが可能である。
【0094】
図7Eに図示されている平坦な帯片またはシート750は、経口治療薬を送出する以外の目的のために使用され得る。たとえば、帯片またはシート750は、歯科検診手順の間に咬合面箇所を記録するために使用された。帯片またはシート750は、変形可能なワックスを基剤とした材料から作製され得、変形可能なワックスを基剤とした材料は、恒久的に変形し、および咬合面箇所を記録することが可能であり、それは、歯科医師が適正な方式で歯科修復物を作ることを可能にし、修復される歯が、咀嚼する間に対応する歯に適正に接触し、一緒に機能するようになっている。
【0095】
図8Aおよび図8Bは、厚くされた咬合面壁部と、より薄い唇側壁部および舌側壁部とを有する、例示的な経口治療用装置またはトレイを図示している。厚くされた咬合面壁部は、いくつかの利益を提供することが可能であり、それは、自己カスタマイゼーションの間に最も変形させられる傾向があり、および/または、所望の機能を提供するために増加した厚さを必要とする領域において、付加的なワックスを基剤とした材料を提供することを含む。
【0096】
図8Aは、バリア層802を含む経口治療用装置800の斜視図であり、バリア層802は、概して馬蹄形状の構成を有しており、概して馬蹄形状の構成は、唇側壁部804と、唇側壁部804から横方向に(たとえば、舌側に)延在する咬合面壁部806と、咬合面壁部806から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部808とによって画定されている。唇側壁部804、咬合面壁部806、および舌側壁部808は、概してU字形状の断面を有するトラフ810を一緒に画定している。
【0097】
図8Bは、唇側壁部804、咬合面壁部806、および舌側壁部808の相対的な断面厚さ818を概略的に図示している8B-8B線に沿った図8Aの経口治療用装置800の断面図である。唇側壁部804は、唇側壁部厚さ812aを有しており、咬合面壁部806は、咬合面壁部厚さ812bを有しており、舌側壁部808は、舌側壁部厚さ812cを有している。経口治療組成物を送出するために、唇側壁部厚さ812aおよび/または舌側壁部厚さ812cは、約0.001” (インチ)から約0.01” (インチ)までの範囲、約0.002” (インチ)から約0.008” (インチ)までの範囲、または、約0.004” (インチ)から約0.007” (インチ)までの範囲にあることが可能である。咬合面壁部厚さ812bは、約0.002” (インチ)から約0.04” (インチ)までの範囲、約0.005” (インチ)から約0.025” (インチ)までの範囲、または、約0.008” (インチ)から約0.015” (インチ)までの範囲にあることが可能であり、また、唇側壁部厚さおよび/または舌側壁部厚さ812a、812cよりも、少なくとも約25%、30%、40%、50%、75%、または100%大きいことが可能である。
【0098】
経口治療用装置800が他の目的のために(たとえば、TMJ装置、歯ぎしり防止装置、スポーツマウスガード、スポーツマウスガードライナー、歯列矯正ガードトレイ、または外科用トレイとして)使用されるケースでは、さまざまな壁部厚さが、経口治療用装置800が設計される特定の目的のために調節され得る。
【0099】
経口治療用装置800がTMJトレイとして使用されるときには、少なくとも咬合面壁部806は、約0.01” (インチ)から約0.2” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.025” (インチ)から約0.15” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.05” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能である。
【0100】
経口治療用装置800が歯ぎしり防止トレイとして使用されるときには、少なくとも咬合面壁部806は、約0.001” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.005” (インチ)から約0.08” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.01” (インチ)から約0.05” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能である。
【0101】
経口治療用装置800がスポーツマウスガードとして使用されるときには、少なくとも咬合面壁部806は、約3mm(約1/8”)から約6mm(約1/4”)の範囲にある厚さを有することが可能であり、スポーツイベントの間の鋭い一撃または衝撃から歯を保護するようになっている。バリア層802は、可撓性であるが硬く耐久性のある外側マウスガードシェルおよび内側個別化可能な層を備える、2色の成形品によって形成され得、外側マウスガードシェルは、スポーツイベントの間に起こり得る衝撃力を受け取って分配することが可能であり、また、それは、任意の適切なポリマー材料から作製され得、内側個別化可能な層は、本明細書で開示されているようなワックスを基剤とした組成物から作製され得、それは、使用者の固有の歯列を記録し、装着および快適さを最大化するように、使用者によって個別化され得る。そのようなケースでは、少なくとも咬合面壁部806の外側シェル部分は、約0.1”(2.54mm)から約0.3” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.12” (インチ)から約0.275” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.14” (インチ)から約0.2” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能であり、また、ワックスを基剤とした組成物から作製された内側個別化可能な層は、約0.005” (インチ)から約0.15” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.125” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能である。
【0102】
経口治療用装置800がスポーツマウスガードに関する個別化可能なインサートとして使用されるときには、少なくとも咬合面壁部806は、約0.005” (インチ)から約0.15” (インチ)までの範囲、好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.125” (インチ)までの範囲、および、より好ましくは、約0.02” (インチ)から約0.1” (インチ)までの範囲にある厚さを有することが可能である。
【0103】
図8Cおよび図8Dは、厚くされた咬合面壁部と、より薄い唇側壁部および舌側壁部とを有するバリア層を備える、例示的な事前に充填された経口治療用装置またはトレイを図示している。図8Cは、事前に充填された経口治療用装置800の斜視図であり、経口治療用装置800は、可撓性のバリア層802を含み、可撓性のバリア層802は、概して馬蹄形状の構成を有しており、概して馬蹄形状の構成は、唇側壁部804と、唇側壁部804から横方向に(たとえば、舌側に)延在する咬合面壁部806と、咬合面壁部806から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部808とによって画定されている。唇側壁部804、咬合面壁部806、および舌側壁部808は、概してU字形状の断面を有するトラフ810を一緒に画定しており、トラフ810は、その中に経口治療組成物814を保持している。一実施例によれば、経口治療組成物814は、ビードのゲルまたは粘着性のパテであることが可能である。
【0104】
図8Dは、8D-8D線に沿った図8Cの事前に充填された経口治療用装置800の断面図であり、それは、唇側壁部804、咬合面壁部806、および舌側壁部808の相対的な断面厚さ812を概略的に図示している。唇側壁部804は、唇側壁部厚さ812aを有しており、咬合面壁部806は、咬合面壁部厚さ812bを有しており、舌側壁部808は、舌側壁部厚さ812cを有している。唇側壁部厚さ812a、咬合面壁部厚さ812b、および舌側壁部厚さ812cは、本明細書で説明されているようになっていることが可能である。
【0105】
図9Aおよび図9Bは、厚くされた咬合面壁部と、より薄い唇側壁部および舌側壁部とを有するバリア層を備える、例示的な事前に充填された経口治療用装置またはトレイを図示している。図9Aは、事前に充填された経口治療用装置900の斜視図であり、経口治療用装置900は、可撓性のバリア層902を含み、可撓性のバリア層902は、概して馬蹄形状の構成を有しており、概して馬蹄形状の構成は、唇側壁部904と、唇側壁部904から横方向に(たとえば、舌側に)延在する咬合面壁部906と、咬合面壁部906から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部908とによって画定されている。唇側壁部904、咬合面壁部906、および舌側壁部908は、概してU字形状の断面を有するトラフ910を一緒に画定しており、トラフ910は、その中に経口治療組成物914を保持している。一実施例によれば、経口治療組成物914は、実質的に固形であり、および/または、初期には指触乾燥状態であることが可能であるが、唾液または水によって湿らせられると、歯および/または歯肉により接着するようになることが可能である。
【0106】
図9Bは、唇側壁部904、咬合面壁部906、および舌側壁部908の相対的な断面厚さ912を概略的に図示している9B-9B線に沿った図9Aの事前に充填された経口治療用装置900の断面図である。唇側壁部904は、唇側壁部厚さ912aを有しており、咬合面壁部906は、咬合面壁部厚さ912bを有しており、舌側壁部908は、舌側壁部厚さ912cを有している。唇側壁部厚さ912a、咬合面壁部厚さ912b、および舌側壁部厚さ912cは、本明細書で説明されているようになっていることが可能である。
【0107】
代替的実施例では、経口治療用装置900は、代替的には、吸収剤ライナー914を含むことが可能であり、吸収剤ライナー914は、より流動性を持ち、より粘着性の小さい口腔組成物をその中に保持する。
【0108】
図10Aおよび図10Bは、V字形状の突出部を備える厚くされた咬合面壁部と、より薄い唇側壁部および舌側壁部とを有する例示的な経口治療用装置またはトレイを図示している。図10Aは、経口治療用装置1000の斜視図であり、経口治療用装置1000は、可撓性のバリア層1002を含み、可撓性のバリア層1002は、概して馬蹄形状の構成を有しており、概して馬蹄形状の構成は、唇側壁部1004と、唇側壁部1004から横方向に(たとえば、舌側に)延在する咬合面壁部1006と、咬合面壁部1006から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部1008とによって画定されている。唇側壁部1004、咬合面壁部1006、および舌側壁部1008は、経口治療組成物を受け入れるためのトラフ1010を一緒に画定している。トラフは、咬合面壁部1006の中に形成された個別化されていないV字形状の突出部1016によってさらに画定されており、それは、咬合面壁部1006と後方歯(すなわち、小臼歯および臼歯)の中に自然に見出されるインデンテーションとの間の装着を強化するために含まれている。そして、これは、人の固有の歯列に対して装着するように個別化されるときに、咬合面壁部1006のより少ない全体的な変形を結果として生じさせる。
【0109】
図10Bは、唇側壁部1004、咬合面壁部1006、および舌側壁部1008の相対的な断面厚さ1012、ならびに、咬合面壁部1006によって形成されているV字形状の突出部1016を概略的に図示している10B-10B線に沿った図10Aの経口治療用装置1000の断面図である。唇側壁部1004は、唇側壁部厚さ1012aを有しており、咬合面壁部1006は、咬合面壁部厚さ1012bを有しており、舌側壁部1008は、舌側壁部厚さ1012cを有している。唇側壁部厚さ1012aおよび/または舌側壁部厚さ1012cは、約0.001” (インチ)から約0.01” (インチ)までの範囲、約0.002” (インチ)から約0.008” (インチ)までの範囲、または、約0.004” (インチ)から約0.007” (インチ)までの範囲にあることが可能である。咬合面壁部厚さ1012bは、約0.002” (インチ)から約0.04” (インチ)までの範囲、約0.005” (インチ)から約0.025” (インチ)までの範囲、または、約0.008” (インチ)から約0.015” (インチ)までの範囲にあることが可能であり、また、唇側壁部厚さおよび/または舌側壁部厚さ1012a、1012cよりも、少なくとも約25%、30%、40%、50%、75%、または100%大きいことが可能である。
【0110】
経口治療用装置1000が他の目的のために(たとえば、TMJ装置、歯ぎしり防止装置、スポーツマウスガード、スポーツマウスガードライナー、歯列矯正ガードトレイ、または外科用トレイとして)使用されるケースでは、さまざまな壁部厚さが、経口治療用装置1000が設計される特定の目的のために調節され得る。
【0111】
図11Aおよび図11Bは、より薄い唇側および舌側壁部を備える厚くされた咬合面壁部を有する例示的な経口治療用装置またはトレイを図示している。図11Aは、経口治療用装置またはバリア1100を図示しており、経口治療用装置、即ち、バリア1100は、唇側壁部1104と、唇側壁部1104から横方向に(たとえば、舌側に)延在する厚くされた咬合面壁部1106と、咬合面壁部1106から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部1108とを含む。経口治療用装置、即ち、バリア1100は、歯1120の上に取り付けされるように示されており、経口治療組成物1114が、経口治療用装置またはバリア1100と歯1120との間に位置決めされている。咬合面壁部1106は、V字形状の突出部1116を含み、とりわけ、歯1120の咬合面表面1124の中の凹部1122に対して、歯1120の生体構造をより良好に近似している。V字形状の突出部1116は、咬合面壁部1106と歯1120の咬合面表面1124との間のより厳密な接近をもたらす。使用者が自分の口を閉じ、臼歯を緊密に接触した状態にすると、対応する歯の対向する咬合歯表面同士の間の圧力は、経口治療用装置、即ち、バリア1100を適正な位置から歯1120に対して移動させる傾向は少ない(たとえば、咬合面壁部1106が凹部1122の中へより深く押され、唇側壁部1104および/または舌側壁部1108を歯1120に対して下向きに引くようになっている結果として)。
【0112】
図11Bは、経口治療用装置またはバリア1140を図示しており、経口治療用装置、即ち、バリア1140は、唇側壁部1144と、唇側壁部1144から横方向に(たとえば、舌側に)延在する厚くされた咬合面壁部1146と、咬合面壁部1146から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部1148とを含む。経口治療用装置またはバリア1140は、歯1160の上に取り付けされるように示されており、経口治療組成物1154が、経口治療用装置またはバリア1140と歯1160との間に位置決めされている。厚くされた咬合面壁部1146は、唇側壁部1144および舌側壁部1148よりも厚い断面を有し、咬合面縁部または歯1160の表面1164の近辺において、より大きい量の変形可能なおよび/または保護的なワックスを基剤とした材料を提供する。咬合面壁部1146における、より大きい量のワックスを基剤とした材料は、咬合面縁部または歯1160の表面1164が、たとえば、対応する歯の対向する咬合面縁部、または、人の口の中に配置されている物体などの、二次的な表面に接触するときの穿孔に耐える。
【0113】
図12は、経口治療用装置、即ち、バリア1200を図示しており、経口治療用装置、即ち、バリア1200は、唇側壁部1204と、唇側壁部1204から横方向に(たとえば、舌側に)延在する厚くされた咬合面壁部1206と、咬合面壁部1206から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部1208とを含む。経口治療用装置またはバリア1200は、歯1220の上に取り付けされるように示されており、経口治療組成物1214が、経口治療用装置またはバリア1200と歯1220との間に位置決めされている。唇側壁部1204は、強化された湾曲を有しており、強化された湾曲は、とりわけ、歯1220の前庭面1226の湾曲に対して、歯1220の生体構造をより良好に近似している。唇側壁部1204の強化された湾曲は、より厳密な接近、および、唇側壁部1204と歯1220の前庭面1226との間のより良好な装着をもたらす。そして、これは、歯1220に対して適正な位置に経口治療用装置1200を保つこと、および、治療用装置1200の脱落または滑りに抵抗することを助け、脱落または滑りは、そうでなければ、使用の間に(たとえば、人の唇または頬によって)唇側壁部1204に印加される圧縮力および/または横方向力から結果として生じ得る。
【0114】
図13は、経口治療用装置、即ち、バリア1300を図示しており、経口治療用装置またはバリア1300は、唇側壁部1304と、唇側壁部1304から横方向に(たとえば、舌側に)延在する厚くされた咬合面壁部1306と、咬合面壁部1306から横方向に(たとえば、咬合面側-歯肉側)延在する舌側壁部1308とを含む。この実施例では、唇側壁部1304および舌側壁部1308は、患者の歯の一部だけをカバーしている(たとえば、装置の侵襲性を最小化しながら、所望のバリアまたは保護領域を提供するようになっている)。経口治療用装置またはバリア1300は、歯1320の一部分の上に取り付けされるように示されている。
【0115】
代替的には、経口治療用装置(図示せず)は、歯肉縁を越えて延在する唇側壁部を有することが可能であり、唇側壁部は、骨格の上顎または歯槽堤の唇側表面の湾曲に少なくとも部分的に対応する湾曲を有し、着用されたときの歯科治療用装置と人の歯列弓との間の装着を改善するようになっている。
【0116】
V.実例
以下は、歯科治療トレイおよび帯片状のバリア層を含む、経口治療用装置を製造するために使用され得るワックスを基剤とした組成物の例である。例示的な配合および製造条件は、例として与えられており、限定によって与えられてはいない。別段の指示がない限り、すべてのパーセンテージは、重量によるものである。
【0117】
比較例
Parafilm(登録商標) Mのシートが、シートを軟化温度まで加熱することによって、および、それから、歯科治療トレイの形状を有する金型の上に、軟化されたシートを真空成形することによって、歯科治療トレイが熱成形された。結果として生じる歯科治療トレイは、室温において、トレイとしてその形状を維持することができ、経口治療用トレイの中のバリア層として使用されることができた。しかし、トレイは、約100°F(約38℃)以上の温度において、熱的安定性を欠いており、寸法安定性を失っていた。結果として、Parafilm(登録商標) Mを熱成形することによって作製された歯科治療トレイは、出荷および保管の間により高い温度(すなわち、最大50℃まで)を受ける経口治療用装置を製造する際に使用するには適切でないということが決定された。
【0118】
以下の例の中の歯科用トレイは、下記に説明されているように、ワックスを基剤とした組成物を射出成形することによって、製造されたか、または製造される。それぞれの例のワックスを基剤とした組成物は、複数の区域を有する2軸スクリュー押出機の中へ材料を導入し、押出機の中で材料を加熱および混合し、ストランドになるように組成物を押し出し、押し出されたストランドを水槽の中で冷却し、ストランドをペレットへと切り刻むことによって、初期に形成されたか、または形成される。ペレットは、それから、射出成形機の中へ供給され、歯科用トレイへと射出成形されたか、または射出成形される。射出成形機は、型穴の中への導入の前にワックスを基剤とした組成物を初期に加熱し、それから、材料を冷却し、固化されたトレイを形成するように構成された。射出成形されたトレイは、約0.007~0.008mil(約0.18~0.2mm)の平均側壁部厚さを有し、約0.010~0.013mil(25~33mm)の厚くされた咬合面表面を備えていた。
【0119】
【表1】
【0120】
1パラフィンワックスおよびポリオレフィンの特許で守られた混合
2凝固点:129.5~135.1℃;開始点(start to open point):115.6~121.2℃;終点(terminal point):129.5~135.1℃;膨張の体積:16~18%;トラベル:6.37~6.89mm
3凝固点:124~129.5℃;開始点:107.3~112.9℃;終点:126.8~132.3℃;膨張の体積:16~18%;トラベル:6.37~6.89mm
4凝固点:105.1~106.2℃;開始点:98.4~100.0℃;終点:114.5~116.2℃;膨張の体積:14~16%;トラベル:5.88~6.37mm
5凝固点:100~101.2℃;開始点:89.0~90.1℃;終点:105.6~106.8℃;膨張の体積:14~16%;トラベル:5.88~6.37mm
例1~10にしたがって作製された歯科治療トレイは、種々のレベルの熱的安定性、塑性変形能、および快適さを有していた。すべてが、比較例の熱成形されたトレイと比較して、より良好な熱的安定性を有しており、それは、Parafilm(登録商標) Mの組成物を射出成形することによって作製された例1の射出成形されたトレイでさえもそうである。比較によって、100%Parafilm(登録商標) Mを射出成形することによって作製された例1のトレイが、最大約50~52℃の温度まで、寸法的に安定していた。Parafilm(登録商標) Mの量が低減され、パラフィンワックス、熱可塑性のポリオレフィンエラストマー、および/または蒸留ワックスなどのような、他の成分によって交換されるにつれて、トレイの温度安定性が高められ、同様に、使用者の口の中で塑性変形可能であるというトレイの能力が高められた。
【0121】
【表2】
【0122】
1パラフィンワックスおよびポリオレフィンの特許で守られた混合
2凝固点:129.5~135.1℃;開始点:115.6~121.2℃;終点:129.5~135.1℃;膨張の体積:16~18%;トラベル:6.37~6.89mm
3凝固点:124~129.5℃;開始点:107.3~112.9℃;終点:126.8~132.3℃;膨張の体積:16~18%;トラベル:6.37~6.89mm
4凝固点:100~101.2℃;開始点:89.0~90.1℃;終点:105.6~106.8℃;膨張の体積:14~16%;トラベル:5.88~6.37mm
5凝固点:95.1~96.2℃;開始点:89.5~90.6℃;終点:100.6~101.7℃;膨張の体積:14~16%;トラベル:5.88~6.37mm
6凝固点:80.1~81.2℃;開始点:74.5~75.6℃;終点:85.6~86.7℃;膨張の体積:14~16%;トラベル:5.88~6.37mm
7凝固点:109~110.6℃;開始点:104~105.6℃;終点:125.7~127.9℃;膨張の体積:15~17%;トラベル:6.13~6.63mm
例11~19にしたがって作製された歯科治療トレイは、種々のレベルの熱的安定性、塑性変形能、および快適さを有していた。例11~19にしたがって作製されたトレイは、比較例のトレイと比較して改善された熱的安定性を有していた。Parafilm(登録商標) Mの量を低減させること、および、パラフィンワックスおよび/または蒸留ワックスなどのような、他の成分とそれを交換することは、温度安定性、および使用者の口の中で塑性変形可能であるというトレイの能力を高める。
【0123】
【表3】
【0124】
1密度:0.862g/cm3;MFR(230℃/2.16kg):3.0g/10min;エチレン含有量:16.0wt%;デュロメーター硬度(ショアA、15秒、23℃);67;曲げ弾性率(23℃):11.4MPa;引張設定(23℃):13%;100%における引張応力(23℃):2.12MPa;300%における引張応力(23℃):2.68MPa;破断点における引張強度(23℃):13.9MPa;破断点伸び(23℃):860%;引裂強度(23℃):31.0kN/m;ビカット軟化温度:59.0℃
2密度:0.861g/cm3;メルトインデックス:7.4g/10min;MFR(230℃/2.16kg):18g/10min;エチレン含有量:15.0wt%;デュロメーター硬度(ショアA、15秒、23℃);61;曲げ弾性率(23℃):11.0MPa;引張設定(23℃):13%;100%における引張応力(23℃):1.70MPa;300%における引張応力(23℃):2.10MPa;破断点における引張強度(23℃):>7.29MPa;破断点伸び(23℃):>2000%;引裂強度(23℃):33.0kN/m;ビカット軟化温度:48.0℃
3密度:0.874g/cm3;メルトインデックス:0.90g/10min;MFR(230℃/2.16kg):2.2g/10min;エチレン含有量:10.5wt%;ショアA硬度(23℃);85;曲げ弾性率(23℃):60.4MPa;引張設定(23℃):49%;100%における引張応力(23℃):4.40MPa;300%における引張応力(23℃):4.50MPa;破断点における引張強度(23℃):17.8MPa;破断点伸び(23℃):1800%;引裂強度(23℃):64kN/m;ビカット軟化温度:70.0℃;ピーク結晶化温度:65.0℃;結晶化度、Hf:28.0J/g;結晶化ピーク、Tc:64℃
4ドロップ融点:88.9℃ min;動粘度(100℃):16.5cSt min;オイル含有量:1.8wt% max;引火点:260℃;ASTMカラー:0.5 max;臭気:2 max;針貫通力(25℃):10dmm max
5凝固点:66.7~74.4℃;動粘度(100℃):5.7~7.9cSt;オイル含有量:1.0wt% max;セーボルトカラー:+25 min;針貫通力(25℃):18dmm max;比重(25℃):0.927
例20~28にしたがって作製された歯科治療トレイは、比較例にしたがって作製されたトレイと比較して、改善された熱的安定性および塑性変形をもたらす。
【0125】
【表4】
【0126】
1密度:0.861g/cm3;メルトインデックス:7.4g/10min;MFR(230℃/2.16kg):18g/10min;エチレン含有量:15.0wt%;デュロメーター硬度(ショアA、15秒、23℃);61;曲げ弾性率(23℃):11.0MPa;引張設定(23℃):13%;100%における引張応力(23℃):1.70MPa;300%における引張応力(23℃):2.10MPa;破断点における引張強度(23℃):>7.29MPa;破断点伸び(23℃):
2ドロップ融点:88.9℃ min;動粘度(100℃):16.5cSt min;オイル含有量:1.8wt% max;引火点:260℃;ASTMカラー:0.5 max;臭気:2 max;針貫通力(25℃):10dmm max
3凝固点:66.7~74.4℃;動粘度(100℃):5.7~7.9cSt;オイル含有量:1.0wt% max;セーボルトカラー:+25 min;針貫通力(25℃):18dmm max;比重(25℃):0.927
例29~38にしたがって作製された歯科治療トレイは、比較例にしたがって作製されたトレイと比較して、改善された熱的安定性および塑性変形をもたらす。
【0127】
【表5】
【0128】
1比重:885;密度:0.883g/cm3;MFR(190℃/2.16kg):31g/10min;デュロメーター硬度(ショアA、5秒):50;引張応力(100%歪み):1.54MPa;引張応力(300%歪み):2.27MPa;引張強度(降伏):6.85MPa;引張伸び(破断):800%;引裂強度(Die C):23.6kN/m;溶融粘度(374°F(190℃)、200sec-1):136Pa-s.
3ドロップ融点:88.9℃ min;動粘度(100℃):16.5cSt min;オイル含有量:1.8wt% max;引火点:260℃;ASTMカラー:0.5 max;臭気:2 max;針貫通力(25℃):10dmm max
4凝固点:66.7~74.4℃;動粘度(100℃):5.7~7.9cSt;オイル含有量:1.0wt% max;セーボルトカラー:+25 min;針貫通力(25℃):18dmm max;比重(25℃):0.927
例39~48にしたがって作製された歯科治療トレイは、比較例にしたがって作製されたトレイと比較して、改善された熱的安定性および塑性変形をもたらす。
【0129】
【表6】
【0130】
1密度:0.890g/cm3;引張応力(降伏):10.6MPa;引張伸び:780%;引裂強度16kN/m;圧縮設定(23℃):18%;圧縮設定(70℃):35%;圧縮設定(100℃):52%;ショアA硬度:60
2ドロップ融点:88.9℃ min;動粘度(100℃):16.5cSt min;オイル含有量:1.8wt% max;引火点:260℃;ASTMカラー:0.5 max;臭気:2 max;針貫通力(25℃):10dmm max
3凝固点:66.7~74.4℃;動粘度(100℃):5.7~7.9cSt;オイル含有量:1.0wt% max;セーボルトカラー:+25 min;針貫通力(25℃):18dmm max;比重(25℃):0.927
例49~58にしたがって作製された歯科治療トレイは、比較例にしたがって作製されたトレイと比較して、改善された熱的安定性および塑性変形をもたらす。
【0131】
例59
例2~58の組成物のいずれかが押し出され、または、そうでなければ、熱成形可能となるような厚さを有するシートへと形成され、それから、当技術分野で知られている熱成形技法を使用して、トレイへと形成される。例59にしたがって形成されたトレイは、比較例にしたがって作製されたトレイと比較して、改善された熱的安定性および塑性変形をもたらす。
【0132】
本発明は、その要旨または本質的特質から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。説明されている実施例は、すべての点において、単に例示目的として考慮されるべきであり、制限的に考慮されるべきではない。したがって、本発明の範囲は、先述の説明によってというよりもむしろ、添付の請求の範囲によって指示されている。請求の範囲の均等の意味および範囲の中に入るすべての変更は、それらの範囲内に含まれるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13