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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083273
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】バスバー、セル電池、組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/572 20210101AFI20220527BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20220527BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20220527BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220527BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220527BHJP
   H01M 50/30 20210101ALI20220527BHJP
   H01M 50/147 20210101ALI20220527BHJP
【FI】
H01M2/34 A
H01M2/20 A
H01M2/12 101
H01M10/0566
H01M2/10 S
H01M2/12 Z
H01M2/04 A
H01M2/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194621
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亨知
(72)【発明者】
【氏名】忠内 宏記
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
5H029
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC06
5H011DD13
5H011KK04
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD05
5H012EE04
5H012FF01
5H029AJ12
5H029AL07
5H029AM01
5H029BJ02
5H029BJ14
5H040AA06
5H040AS04
5H040AT02
5H040DD03
5H043AA04
5H043BA19
5H043CA05
5H043CA08
5H043CA13
5H043FA04
5H043FA33
5H043GA06
5H043HA11F
5H043JA03F
5H043JA06F
5H043JA13F
5H043LA41F
(57)【要約】
【課題】複数のセル電池をスタックした組電池において、いずれかのセル電池において異常があった場合に確実に電池の電流を遮断すること。
【解決手段】蓋体5に設けられ電池ケース4内の気体を設定された内圧を超した場合に外部に排気ガスを排出する圧力開放弁7を備えた非水二次電池のセル電池3bにおいて、セル電池3bの正極外部端子9と、他のセル電池3bの負極外部端子10を電気的に接続するように装着されるバスバー2a、2bであって、バスバー2a、2bが他の部分より破断しやすく構成された脆弱部23が、圧力開放弁7から排出された排気ガスと接触する位置に配設され、圧力開放弁7が開弁したときに、排気ガスにより脆弱部23を破断し、回路電流を遮断する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースと、電池ケースに収容された正極と負極とセパレータからなる電極群と、前記電極群が収容された電池ケース内を充填する非水電解液と、前記電池ケースを封止する蓋体と、蓋体に設けられた正極及び負極の外部端子と、前記蓋体に設けられ前記電池ケース内の気体を設定された内圧を超した場合に外部に排気ガスを排出する圧力開放弁とを備えた非水二次電池のセル電池において、
前記セル電池の正極外部端子と、他のセル電池の負極外部端子を電気的に接続するように装着されるバスバーであって、
当該バスバーが他の部分より破断しやすく構成された脆弱部が、前記圧力開放弁から排出された排気ガスと接触する位置に配設されたことを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記バスバーは、板状に形成されているとともに、前記脆弱部は、前記バスバーの長手方向と直交する方向に板厚を溝状に薄くして強度を低下させたことを特徴とする請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記バスバーを前記セル電池に装着した場合に、前記セル電池の圧力開放弁からの排気ガスの圧力が前記バスバーの脆弱部に作用するように配置された圧力保持構造を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバスバー。
【請求項4】
前記脆弱部に前記セル電池の圧力開放弁からの排気ガスを誘導する排ガス誘導構造を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のバスバー。
【請求項5】
前記セル電池は板状であり、前記バスバーは、一方の外部端子に接続されるとともに、前記脆弱部が前記圧力開放弁の直上を通過し屈折して、スタックされている隣接する他の非水二次電池の一方の外部端子とは異なる極性の外部端子に接続されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のバスバー。
【請求項6】
前記バスバーは、前記脆弱部が破断したときに、破断部が相互に離間するように付勢するように弾性力を付与されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のバスバー。
【請求項7】
前記バスバーは、前記脆弱部が破断した時に、破断部が相互に離間するように容易に屈曲する屈曲部を備えたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のバスバー。
【請求項8】
前記バスバーは、前記外部端子に溶接されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のバスバー。
【請求項9】
前記バスバーの脆弱部は、他の部分より引張強度が小さい材質で構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のバスバー。
【請求項10】
前記バスバーの脆弱部は、他の部分より融点が低いことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のバスバー。
【請求項11】
前記セル電池の圧力開放弁に配置されたピストン状の部材で、当該圧力開放弁から排出される排気ガスにより外側に突出して請求項1~10のいずれか一項に記載のバスバーを破断する破断部材を備えたセル電池。
【請求項12】
複数の前記セル電池がスタックされ、各セル電池が請求項1~10のいずれか一項に記載のバスバーを用いて接続されている組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー、セル電池、組電池に係り、より詳しくは、圧力開放弁の開弁時における電流遮断機能を備えたバスバー、セル電池、及びこれを用いた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両、例えば電気自動車や、またはモータ及びエンジンを車両の駆動源とするハイブリッド車両では、電源としてリチウムイオン二次電池などの二次電池が用いられている。
【0003】
例えば、車載用のリチウムイオン二次電池では、大出力に対応するためリチウムイオン二次電池の単電池であるセル電池をスタックして組み合わせる。そして、これらのセル電池の電極をバスバーで電気的に接続して組電池として樹脂ケースなどに封入し、バッテリーパックとして、電圧計や温度計などのセンサや制御装置などの機器を付して車載する。
【0004】
ところで、リチウムイオン二次電池などの非水二次電池では、過充電や短絡によりセル電池内部の温度が上昇することがある。このため、これまでも何重にも安全性を考慮した構造となっている。一般に、温度が80~90°Cに達すると、グラファイト系負極では電解液と反応し気体が発生しセル電池の内圧が上昇する。120~140℃になると、セパレータのポリオレフィン系微多孔膜セパレータはポリオレフィン樹脂が熱収縮することで微孔が閉じ、電池反応を阻止させる電流遮断機構によりシャットダウンするようなものもある。さらに140℃を超えるような状態となると、セパレータがメルトダウンして全面短絡に至ったりする場合もある。このようなメルトダウンを防止するため、セパレータをPP+PE+ベーマイト(AlHOH)や、PE+アラミド樹脂+アルミニウム酸化物という材料とする場合もある。しかしながらこのまま反応が進み温度が600~700°Cに上昇するとさらに内圧が高まり、密閉されたケースの蓋体に設けられた圧力開放弁の圧力設定値を超えると、圧力開放弁が開弁してセル電池内から排気ガスが排出される。このため電槽の内圧は低下して、セル電池の破裂は回避される。
【0005】
しかしながら、開弁して破裂が回避されても二次電池の電流が通電したままであると、温度はさらに上昇する場合がある。
そこで、特許文献1に記載した発明では、このような熱暴走を回避するため、以下のようなバッテリーモジュールが開示される。図14は、特許文献1に開示されたバスバー200の遮断ユニット300を示す参考図である。特許文献1に記載されたバッテリーモジュールは、複数のバッテリーセル110が積層されるバッテリーセル積層体100と、複数のバッテリーセル110に各々備えられた電極リード111を電気的に接続するバスバー200を備える。複数のバッテリーセル110の間に配置され、バッテリーセル110の内部で発生したガスのガス圧によって作動することで電極リード111とバスバー200との電気的接続を切断する遮断ユニット300とを含む。このような発明であれば、バッテリーセル110の内部で発生したガスのガス圧によって遮断ユニット300が作動することでばねの弾性力で射出された作動本体310により電極リード111とバスバー200との電気的接続を切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2019-537829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、バッテリーセル積層体100全体の膨張を検出して遮断ユニット300が作動するため、バッテリーセル積層体100の中の1つのバッテリーセル110だけに異常がある場合では、遮断ユニット300が作動しないような場合が考えられる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、複数のセル電池をスタックした組電池において、いずれかのセル電池において異常があった場合に確実に電池の電流を遮断することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のバスバーでは、電池ケースと、電池ケースに収容された正極と負極とセパレータからなる電極群と、前記電極群が収容された電池ケース内を充填する非水電解液と、前記電池ケースを封止する蓋体と、蓋体に設けられた正極及び負極の外部端子と、前記蓋体に設けられ前記電池ケース内の気体を設定された内圧を超した場合に外部に排気ガスを排出する圧力開放弁とを備えた非水二次電池のセル電池において、
前記セル電池の正極外部端子と、他のセル電池の負極外部端子を電気的に接続するように装着されるバスバーであって、当該バスバーが他の部分より破断しやすく構成された脆弱部が、前記圧力開放弁から排出された排気ガスと接触する位置に配設されたことを特徴とする。
【0010】
また、前記バスバーは、板状に形成されているとともに、前記脆弱部は、前記バスバーの長手方向と直交する方向に板厚を溝状に薄くして強度を低下させてもよい。
前記バスバーを前記セル電池に装着した場合に、前記セル電池の圧力開放弁からの排気ガスの圧力が前記バスバーの脆弱部に作用するように配置された圧力保持構造を備えてもよい。
【0011】
前記脆弱部に前記セル電池の圧力開放弁からの排気ガスを誘導する排ガス誘導構造を備えてもよい。
前記セル電池は板状であり、前記バスバーは、一方の外部端子に接続されるとともに、前記脆弱部が前記圧力開放弁の直上を通過し屈折して、スタックされている隣接する他の非水二次電池の一方の外部端子とは異なる極性の外部端子に接続してもよい。
【0012】
前記バスバーは、前記脆弱部が破断したときに、破断部が相互に離間するように付勢するように弾性力を付与してもよい。
前記バスバーは、前記脆弱部が破断した時に、破断部が相互に離間するように容易に屈曲する屈曲部を備えてもよい。
【0013】
前記バスバーは、前記外部端子に溶接してもよい。
前記バスバーの脆弱部は、他の部分より引張強度が小さい材質で構成してもよい。
前記バスバーの脆弱部は、他の部分より融点を低くしてもよい。
【0014】
本発明のセル電池は、前記セル電池の圧力開放弁に配置されたピストン状の部材で、当該圧力開放弁から排出される排気ガスにより外側に突出して、前記バスバーを破断する破断部材を備えてもよい。
【0015】
本発明の組電池は、複数の前記セル電池がスタックされ、各セル電池が前記バスバーを用いて接続されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバスバー、セル電池、組電池では、複数のセル電池をスタックした組電池において、いずれかのセル電池において異常があった場合に確実に電池の電流を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】組電池の分解斜視図。
図2】バスバーで連結された組電池。
図3】セル電池の断面図。
図4】セル電池の平面図。
図5図4のC部分の圧力開放弁の拡大図。
図6図3のB部分の圧力開放弁の断面図。
図7】(a)バスバーの平面図、(b)バスバーの正面図、(c)バスバーの端部の側面図、(d)バスバーの圧力開放弁近傍の側面図。
図8】(a)セル電池の圧力開放弁の開弁前の状態、(b)セル電池の圧力開放弁の開弁時の状態、(c)セル電池の圧力開放弁の開弁後の状態を示す模式図。
図9】別の実施形態のセル電池の側面図。
図10】別の実施形態のセル電池をバスバーで連結した組電池。
図11】排気ガスの圧力保持構造を示す断面図。
図12】排気ガスの圧力保持構造を示す分解斜視図。
図13】破断部材を示す断面図。
図14】従来技術のバスバーの遮断ユニットを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のバスバー、セル電池、組電池を、バスバー2により接続されるセル電池3からなる組電池1の実施例により説明する。
(第1の実施形態)
(実施形態の構成)
<組電池1>
図1は、組電池1の分解斜視図であり、図2は、バスバー2で接続された組電池1の平面図である。
【0019】
組電池1は、複数(ここでは4個)の板状のセル電池3(3a~3d)がスタックされ、バスバー2(2a~2d)により直列に接続されて構成される。本実施形態の組電池1は、図示しない温度計や電流計、制御装置などの装置が組付けられて、樹脂ケースが装着されて車載用の電池モジュールとして使用されるリチウムイオン二次電池である。
【0020】
図1の4つのセル電池3(3a~3d)は正極外部端子9が同じ側になるように極性を揃えて積層され、図示しない固定手段で図2のように固定される。バスバー2の一端の正極固定孔21が、セル電池3の一端にある円柱ポスト状の正極外部端子9の接続端子9bに篏合され、例えば、ナットなどの固定部材9dにより固定される。バスバー2の他端の負極固定孔22が、隣接するセル電池3の他端にある円柱ポスト状の負極外部端子10の接続端子10bに篏合され、固定部材10dにより固定される。
【0021】
このとき、例えばバスバー2bは、正極外部端子9の接続端子9bに接続された一端からセル電池3bの蓋体5に沿って斜め下方向(図3参照)に延び、バスバー2bが圧力開放弁7の直上でこれを覆うように近接した状態で配置される。このとき、バスバー2bの脆弱部23は、圧力開放弁7と対向する位置となり、開弁時の排気ガスを受ける状態となる(図3参照)。バスバー2bは、圧力開放弁7の正極外部端子9側とは反対側の屈折部24において、隣接するセル電池3cの負極外部端子10の接続端子10bの方向に向けて、その幅と平面性を維持したまま、水平方向が概ね30度程度屈折され、斜め上方のセル電池3cの負極外部端子10の接続端子10bの方向に延びる(図3参照)。そしてバスバー2bの他端が、隣接するセル電池3cの負極外部端子10の接続端子10bに接続される。
【0022】
<セル電池3>
図3は、図2のセル電池3bのA-A断面図である。セル電池3bは、上方が開口した板状の直方体の容器であるAl製の電池ケース4を備える。電池ケース4には、電極群11が収容される。電極群11は、シート状の正極12と負極13と、これらを分離するセパレータ14が積層され、捲回されて圧縮されて扁平に整形されたものである。この電極群11の捲回された軸方向の両端部には、正極12の集電体と負極13の集電体が露出している。電池ケース4の開口部は、Al製の蓋体5が溶接されることで封止されている。この正極12の集電体には正極集電端子16が溶接されて蓋体5を絶縁した状態で貫通して正極外部端子9に接続されている。正極外部端子9と正極集電端子16と蓋体5とが、相互に絶縁された状態でカシメにより固定されている。
【0023】
一方負極13の集電体には負極集電端子17が溶接されて蓋体5を絶縁した状態で貫通して負極外部端子10に接続されている。負極外部端子10と負極集電端子17と蓋体5とが、相互に絶縁された状態でカシメにより固定されている。
【0024】
<正極外部端子9、負極外部端子10>
図3に示すように正極外部端子9は、両端に開口部がある段差のついたAl板からなる長方形の接続板9aの開口部の一方が、カシメで固定される。それとともに、接続板9aの他端は蓋体5の内側において一段高くなっている。接続板9aの下部には、絶縁体9cが、蓋体5の間に配置されている。この絶縁体9cと、接続板9aの他端の開口部には、円柱状の接続用のポストとして立設された接続端子9bが篏合される。そして固定部材9dが接続端子9bに螺合して接続板9aを固定する。
【0025】
負極外部端子10も同様に、両端に開口部がある段差のついたAl板からなる長方形の接続板10aの開口部の一方が、カシメで固定される。それとともに、接続板9aの他端は蓋体5の内側において一段高くなっている。接続板10aの下部には、絶縁体10cが、蓋体5の間に配置されている。この絶縁体10cと、接続板10aの他端の開口部には、円柱状の接続用のポストとして立設された負極の接続端子10bが篏合される。そして固定部材9dが接続端子9bに螺合して接続板9aを固定する。
【0026】
<注液孔5a>
蓋体5の中央より負極外部端子10側には、注液孔5aが穿設され、ここから非水電解液が注液されたのち、封止部材が溶接されて封止される。
【0027】
<圧力開放弁7>
図4は、セル電池3の平面図である。図5図4のC部分の圧力開放弁7の拡大図である。図6は圧力開放弁の図3のA-A断面図のB部分の部分拡大図である。図4に示すように蓋体5の中央部分には圧力開放弁7がそれぞれ設けられている。圧力開放弁7は、電槽の内部圧力が、電池ケース4の耐圧以下の圧力であるとともに、通常使用時の内部圧力を超過する圧力である異常圧力になった場合に開裂して開弁し、電槽内の異常圧力を開放させるものである。開弁することで蓋体5により密封された電池ケース4の破裂を回避する。
【0028】
図5に示すように、圧力開放弁7は、電池ケース4と同様のAl製の膜で、電池長手方向に沿った平面視概ねトラック型で、中央に電池長手方向に沿った直線状の薄肉部7aを備える。薄肉部7aは、さらにこの直線状の部分から、その両端部で、中心角がおおむね90度で2本の直線部分に分岐し、圧力開放弁7の周縁部に延びる概ねH形である。図7に示すように、圧力開放弁7の開弁時は、二点鎖線で示すように、薄肉部7aが断裂して、弁体7bがセル電池3の外側に屈曲することで電槽内の排気ガスを排出する。
【0029】
本実施形態のセル電池3では開弁圧はおよそ1MPa(10KGf/cm2)で、排出される排気ガスの温度は、600~700°Cである。
<バスバー2>
図7(a)はバスバー2の平面図、図7(b)はバスバー2の側面図、図7(c)は図7(a)のバスバー2のD部分の正極外部端子9側の拡大側面図、図7(d)はバスバー2の図7(b)の部分の拡大側面図である。
【0030】
図2に示したとおり、図3に示すA-A断面のバスバー2bは、セル電池3bの正極外部端子9と、セル電池3cの負極外部端子10を電気的に接続するように装着される。また、セル電池3bの負極外部端子10には、セル電池3aからのバスバー2aが接続されている。
【0031】
バスバー2は、全体が概ね帯状の厚さが0.5mm程度のAl製の薄板から構成される。
図7(a)に示すように、バスバー2の一端は正極固定孔21を備えた平面として構成される。
【0032】
図3に示すように、セル電池3bの正極固定孔21に正極外部端子9の円柱ポスト状の接続端子9bが貫入されて接続されるとともに固定部材9dで固定される。図7(b)に示すように、この一端部から蓋体5の中央部に近接するように折り曲げ部27において斜め下方に折り曲げられる。この折り曲げられた部分の近傍には、上面が幅方向の溝状の屈曲部25が設けられる。この屈曲部25は、脆弱部23が破断したときに、破断した部分が蓋体5から離れる方向に屈曲しやすいように、曲げ強度を意識的に低下させた部分である。
【0033】
図7(d)に示すように、一端部から折り曲げ部27で斜め下方に折り曲げられた平面部は、図3に示したように圧力開放弁7の近傍で、折り曲げ部28により蓋体5の上面と平行になるように水平に折り曲げられる。また、圧力開放弁7より他端側で、折り曲げ部29で、斜め上方に折り曲げられる。したがって、バスバー2の中央部は、圧力開放弁7の直上で、圧力開放弁7を覆うように近接した平面として構成されている。このバスバー2の中央部には、脆弱部23が設けられる。
【0034】
図7(a)に示すように、折り曲げ部29で斜め上方に折り曲げられたバスバー2は、屈折部24において、隣接するセル電池3の負極外部端子10の方向に向けて、その幅と平面性を維持したまま、概ね30度程度屈折される。そして、図3に示したとおり、隣接するセル電池3の負極外部端子10の近傍の屈折・折り曲げ部30において、隣接するセル電池3の長手方向と平行になるように、概ね30度程度逆方向に屈折される。また、屈折・折り曲げ部30において、隣接するセル電池3の蓋体5の上面と平行になるように折り曲げられる。
【0035】
バスバー2の他端部は、負極固定孔22を備えた平面として構成される。図3に示すように、この負極固定孔22に負極外部端子10の円柱ポスト状の接続端子10bが貫入されて接続されるとともに固定部材10dで固定される。
【0036】
<脆弱部23>
前述のようにバスバー2の中央部は、圧力開放弁7の直上で、圧力開放弁7を覆うように近接した平面として構成され、脆弱部23が設けられる。
【0037】
脆弱部23は、略圧力開放弁7の電池長手方向中央部で、バスバー2の電池長手方向と直交する幅方向に直線状に横断するように、バスバー2の板厚をV字型の溝状に薄くして強度を低下させた部分である。一例としてバスバー2の他の部分を0.5mmとすると、脆弱部23の最も板厚の薄い部分を0.25mm程度とする。
【0038】
<排気ガス誘導部23a>
脆弱部23の近傍は、バスバー2の板厚が徐々に脆弱部23に向かって薄くなるような長手方向の断面がV字状の溝からなる排気ガス誘導構造としての排気ガス誘導部23aが形成される。排気ガス誘導部23aの幅は例えば、10mm程度である。この排気ガス誘導部23aは、開弁時に圧力開放弁7から排出された排気ガスを拡散させないで脆弱部23に誘導する機能を有する。
【0039】
<脆弱部の強度>
脆弱部23は、その厚さがバスバー2の他の部分より薄くなっている。開弁時に圧力開放弁7から排出される排気ガスは、およそ1MPa(10kgf/cm2)で、排出される排気ガスの温度は、600~700°Cである。Alの融点は、およそ660°Cで、概ね480°Cから軟化する。脆弱部23の厚さは、例えば0.25mmであれば、温度が600~700°Cの排気ガスが脆弱部23に速い風速で接触すれば、脆弱部23は瞬時に加熱されて温度が上昇する。このため、温度上昇で強度が低下した脆弱部23は応力が集中して破断する。破断したバスバー2の端部は、蓋体5から離間するため、再び電気的な接続をすることがない。
【0040】
<屈曲部25>
本実施形態のバスバー2は、両端の折り曲げ部27の中心側に配置され、屈折・折り曲げ部30の中心側に配置された屈曲部25,25を備える。屈曲部25は、バスバー2の上面に幅方向に横断する断面V字状の溝を設けて、曲げ強度を意識的に低下させた部分である。脆弱部23が破断したときに、この屈曲部25,25を軸に、破断した部分が蓋体5から離れる方向に屈曲しやすいようになっている。脆弱部23で破断したバスバー2の端部は、このように屈曲することで、相互に離間する方向に変位する。
【0041】
<バスバー2の弾性力>
バスバー2は、脆弱部23が破断したときに、脆弱部23が相互に離間するように付勢するように弾性力を付与されている。本実施形態のバスバー2は、一端が正極外部端子9の接続端子9bにナットなどの固定部材9dにより固定される。また、他端は負極外部端子10の接続端子10bにナットなどの固定部材10dにより固定される。一方、バスバー2は、Alなどの弾性を有した金属性の部材である。そのため、例えば、両端を固定するときに、ひねりや曲げを加えて固定する。そのような場合、例えば、図7(a)に示す矢印F1のような方向に固定するときにテンションを加えて固定した場合にはひずみが生じ、残留応力が存在する場合がある。この場合、脆弱部23が破断したときに、破断したバスバー2の端部が離間する方向に付勢される。また、図7(b)に示す矢印F2のような残留応力が存在すれば、脆弱部23が破断したときに、破断したバスバー2の端部が離間する方向に付勢される。また、図7(a)に示す矢印F3のような方向にバスバー2の長手方向を軸にひねりを加えた状態で固定することで、破断したバスバー2の端部を離間する方向に付勢する残留応力を生じさせることができる。
【0042】
(第1の実施形態の作用)
リチウムイオン二次電池では、過充電やリチウムのデンドライトによる短絡などで、電槽内の温度が上昇することがある。このような温度上昇に対して、リチウムイオン二次電池では、何重もの安全策を施している。
【0043】
例えば、電池パックでは、温度を監視して電流を遮断又は抑制する制御を行う。しかしながら局所的な温度上昇などは検出できない場合がある。このような場合電池内の温度が80~90℃になるとグラファイト系負極と電解液が反応し、さらに温度が上昇するとともに気体が発生する。
【0044】
例えば、本実施形態のリチウムイオン二次電池では、温度が120~140℃となるとポリオレフィン系微多孔膜セパレータは、ポリオレフィン樹脂が熱収縮することで微孔が閉じ、電池反応を阻止させる電流遮断機構(シャットダウン機能)する。このようなシャットダウン機能がない場合や、シャットダウン機能が有効に働らかなかった場合には、さらに温度が上昇し、140℃を超えるとセパレータがメルトダウンして全面短絡に至る場合がある。メルトダウンを防止するためには、セパレータにPP+PE+ベーマイト(AlHOH)や、PE+アラミド樹脂+アルミニウム酸化物などが採用される。
【0045】
しかしながら、このような温度上昇が続き、温度が220~300℃以上となると、層状酸化物系正極材量が熱分解して酸素を放出し、気化した電解液と激しく燃焼し熱暴走に至る。この段階で、電池内部の温度が600~700°Cとなり、電槽の内圧が例えば1MPa(10kgf/cm2)となると、圧力開放弁の耐圧限界を超し、圧力開放弁の薄肉部が断裂し、開弁する。圧力開放弁が開弁すると電槽外部に排気ガスを放出し、電槽内の内圧を下げ、セル電池の破裂を回避する。
【0046】
しかしながら、この段階で、未だ電流が流れていると、さらに温度が上昇することになる。660℃を超えると正極集電体のアルミニウム(Al)箔が溶融し、熱暴走末期には正極酸化物とAlとのテルミット反応が起こり1000℃以上もの高温となる。
【0047】
図8は、本実施形態のバスバー2の作用を示す図である、図8(a)はセル電池の圧力開放弁の開弁前の状態、図8(b)はセル電池の圧力開放弁の開弁時の状態、図8(c)はセル電池の圧力開放弁の開弁後の状態を示す模式図である。
【0048】
本実施形態の組電池1では、図8(a)に示す状態から、図8(b)に示すように圧力開放弁7の開弁時の排気ガスEGの噴出の圧力をバスバー2の脆弱部23が受け止める。この排気ガスEGにより、図8(c)に示すようにバスバー2の脆弱部23を破断させ、そのセル電池3に流れる電流を遮断する。このことで、多数のセル電池3がスタックされバスバー2で直列に接続された組電池1全体の電流を遮断する。電流を遮断することで、セル電池の温度上昇を抑制する。
【0049】
(第1の実施形態の変形例)
〇脆弱部23は断面V字状の溝を例示したが、溝の形状や深さ、幅などは、排気ガスの状況に応じて、適宜変更できる。また、脆弱部23は、バスバー2の厚さではなく、幅方向に切れ込みを入れて、強度を低下させてもよい。さらに、厚みと幅の双方を変更してもよい。
【0050】
〇排気ガス誘導部23aは、排気ガスを脆弱部23に誘導することができれば、その形状は限定されるものではなく、断面が円弧状の面を持つような形状でもよい。また、バスバー2の形状をプレスなどで、下方に向かって突条を設けて排気ガスを脆弱部23に誘導してもよい。
【0051】
〇さらに、バスバー2の形状をプレスなどで、上方に向かってドーム状に形成して、排気ガスを脆弱部23に誘導してもよい。
〇バスバー2の形状は、屈折部24で屈折する形状を例示したが、正極外部端子9と負極外部端子10を接続するとともに、圧力開放弁7の位置に脆弱部23が配置でき、隣接するバスバー2同士が干渉しなければ、このような形状には限定されない。例えば、S字状のような形状や、上下に間隔を置いて重なるような形状でもよい。
【0052】
〇バスバー2は、正極外部端子9と負極外部端子10を接続するとともに、圧力開放弁7の位置に脆弱部23が配置できれば、例えばセル電池3の極性を相互に反対に配置し、バスバー2は、V字状とする構成も可能である。
【0053】
〇二次電池は、板状の形状のリチウムイオン二次電池のセル電池3を例示したが、電池形状は板状に限定されず、正極外部端子9と負極外部端子10を接続するとともに、圧力開放弁7の位置に脆弱部23が配置できれば、円柱状などの形状であってもよい。
【0054】
〇二次電池は、板状の形状のリチウムイオン二次電池のセル電池3を例示したが、圧力開放弁7とバスバー2を備えていれば、各種非水二次電池に応用することができる。
〇圧力開放弁7は、薄肉部7aを備えた薄膜状の弁を例示したが、電槽内部の圧力が閾値以上に高まったときに開弁する構成であれば、硬質の弁体を備えたような構成でもよい。
【0055】
〇正極及び負極の配置は、逆の構成であってもよい。
(第1の実施形態の効果)
(1)圧力開放弁7の位置にバスバー2の脆弱部23を配置したので、圧力開放弁7が開弁したときに、確実にバスバー2を切断して、電流を遮断することができる。
【0056】
(2)複数のセル電池3が組み合わせられた組電池1において、各セル電池3の圧力開放弁7のそれぞれに、脆弱部23を備えたバスバー2が配置されているため、複数のセル電池3を有する組電池において、いずれのセル電池3の異常があっても確実に電流を遮断することができる。
【0057】
(3)基本的に、バスバー2の構成だけで本発明は実施できるので、別途制御装置や、安全機構、部品などを追加する必要なく実施できる。
(4)基本的に、バスバー2の構成だけで本発明は実施できるので、既存の二次電池のセル電池3の構成を改造・変更することなく、本発明を実施することができる。
【0058】
(5)組電池1の組立工程において、所定の脆弱部23を備えたバスバー2を取り付けるだけで、本発明を実施できるので、特別な装置や、材料、治具などを必要としない。
(6)組電池1の組立工程において、所定の脆弱部23を備えたバスバー2を取り付けるだけで、本発明を実施できるので、作業員のスキルをほとんど必要としない。
【0059】
(7)電池の異常時に回路電流が遮断されるため、トラブルの対処において、より安全に対応することができる。
(8)開弁において組電池全体の回路の電流を遮断するため、その後の熱暴走を有効に抑制することができる。
【0060】
(9)セル電池3を同じ極性の向きで積層するため、生産時に短絡の可能性が低くなり安全に作業することができる。また、バスバー2は、その形状から、取り付けた場合に隣接するバスバー2と干渉することがない。
【0061】
(10)セル電池3を同じ極性の向きで積層するため、配列時の誤操作が抑制でき、生産を単純化することができる。
(11)本実施形態の脆弱部23は、その厚さや材質が、圧力開放弁7からの排気ガスにより、確実に切断する構成となっている。
【0062】
(12)脆弱部23は、排気ガス誘導部23aを備えるため、圧力開放弁7からの排気ガスを有効に利用することができる。
(13)屈曲部25,25は、脆弱部23が破断したときに、破断したバスバー2の端部が離間する方向にバスバー2を容易に変形させるため、開弁後の再接続が生じないように抑制できる。
【0063】
(14)本実施形態のバスバー2は、セル電池3に取り付けた場合に、その残留応力により、脆弱部23が破断したときに、破断したバスバー2の端部が離間する方向にバスバー2を変形させるため、開弁後の再接続が生じないように抑制できる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図9は、第2の実施形態のセル電池3の側面図である。図10は、第2の実施形態の組電池1の平面図である。第2の実施形態は、第1の実施形態と、正極外部端子9、負極外部端子10の構成が異なる。バスバー2は、第1の実施形態のようにナットからなる固定部材9d、10dにより固定されるのではなく、第2の実施形態では接続端子9b、10bに溶接により固定される。このため、バスバー2の両端の正極固定孔21、負極固定孔22はない。また、第2の実施形態では、第1の実施形態のように接続板9a、10aにより、接続端子9b、10bが中央よりにオフセットされていないため、第1の実施形態のバスバー2よりも蓋体5の端部方向に延長されている。
【0065】
また、第2の実施形態では、バスバー2をセル電池3に装着した場合に、セル電池3の圧力開放弁7からの排気ガスの圧力がバスバー2の脆弱部23に作用するように配置された圧力保持構造を備えている。
【0066】
以下、第1の実施形態と異なる構成のみを説明し、共通の部分の説明は省略する。
(第2の実施形態の具体的構成)
<正極外部端子9、負極外部端子10>
正極外部端子9、負極外部端子10が蓋体5の両端近傍に配置されるが、第1の実施形態のカシメ、カシメに相当する部材が、そのまま接続端子9b、10bの機能を有している。バスバー2の両端は、この接続端子9b、10bに溶接され、電気的、機械的に接続される。
【0067】
<バスバー2>
バスバー2は、基本的に第1の実施形態と共通する構成であるが、図9に示すように、全体が平坦な構成となっている。これは、接続端子9b、10bの接続面が、蓋体5の上面に近接しているからである。また、第2の実施形態では、圧力保持構造8を備えるため、圧力開放弁7の直上において、圧力開放弁7を覆うように近接させる必要がないからである。このため、バスバー2は、平坦な形状で構成することができる。したがって、第1の実施形態に示す、折り曲げ部27、折り曲げ部28、折り曲げ部29、屈折・折り曲げ部30は、第2の実施形態においては採用されていない。
【0068】
<圧力保持構造8>
第2の実施形態の圧力保持構造8は、圧力開放弁7からの排気ガスを有効に利用する点に特徴がある。図11は、図8のB-B断面図における、圧力保持構造8の部分を示す拡大断面図である。図12は、圧力保持構造8の分解斜視図である。圧力保持構造8は、蓋体5において、圧力開放弁7の周囲を囲む開口部を有する絶縁材料からなる矩形枠状の部材である絶縁部材8aを備える。
【0069】
この絶縁部材8aの上面には、バスバー2の脆弱部23が配置される。バスバー2の幅は、この絶縁部材8aの幅方向の内寸よりわずかに小さい。このため、バスバー2は、絶縁部材8aの開口部をほとんど覆う。バスバー2の幅方向端部は、絶縁部材8aの開口部端部とは、僅かな隙間がある。また、バスバー2の上には、絶縁部材8aと同じ形状の絶縁材料からなる押圧部材8bが配置される。この押圧部材8bとバスバー2と絶縁部材8aとは、固定部材8cにより、蓋体5に固定される。固定部材8cは、逆U字状の部材で、その上側の部分が押圧部材8bの蓋体5の長手方向端部に配置され、その両端から延びる足部が蓋体5に固定される。
【0070】
このため、圧力開放弁7の開弁時には、排気ガスEGは、絶縁部材8aとバスバー2に囲まれた空間に排出され、バスバー2の下面に排気ガスEGの圧力が強く作用し、脆弱部23に応力が集中する、このため、確実に開弁時にバスバー2を破断することができる。このとき、破断したバスバー2の端部は、押圧部材8bの内面に干渉することなく、図11に一点鎖線で示すように、屈曲部25,25を軸に上方に折り曲げられ、破断したバスバー2の端部は確実に離間する。
【0071】
(第2の実施形態の作用)
第2の実施形態のバスバー2は、圧力開放弁7の開弁時に、排出された排気ガスが、圧力保持構造8の絶縁部材8aとバスバー2に囲まれて圧力が保持され、保持された圧力がバスバー2の下面に強く作用する。このため、排気ガスの圧力を効率よくバスバー2の脆弱部23の破断に作用させることができる。
【0072】
(第2の実施形態の効果)
(15)第2の実施形態では、圧力保持構造8を備えるため、開弁時の排気ガスの圧力を有効にバスバー2の脆弱部23の破断に用いることができる。
【0073】
(16)第2の実施形態の正極外部端子9及び負極外部端子10は、蓋体5から大きく突出しない。かつ、バスバー2を溶接により固定しているので、セル電池3及び組電池1の高さを低くすることができる。また、バスバー2に正極固定孔21、負極固定孔22を穿設する必要もない。
【0074】
(17)また、圧力保持構造8により、バスバー2を圧力開放弁7に近接させる必要がない。
(18)そのため、バスバー2は平坦な形状とすることができ、バスバー2の加工を簡単にすることができる。
【0075】
(その他の別例)
<破断部材7c>
図13は、圧力開放弁7の破断部材7cを示す断面図である。図13に示す別例では、圧力開放弁7において、弁体7bの上に筒状部7dを備える。筒状部7dは内径の均一な筒状の部分で、蓋体5から上方に突出した構成である。この筒状部7dにピストン状の破断部材7cを備える。破断部材7cは、筒状部7dの内壁に密着するようになっており、筒状部7dの中を上下方向に移動可能となっている。
【0076】
通常は、破断部材7cは、筒状部7dの中で、弁体7bの上に載置された状態となっている。バスバー2は、この筒状部7dに近接した位置に配置される。このため、破断部材7cは、筒状部7dから離脱することはない。
【0077】
一方、圧力開放弁7が開弁した場合には、弁体7bが薄肉部7aから破断し、破断した弁体7bは、排気ガスにより図6に一点鎖線で示すような方向に押し上げられる。このとき破断部材7cは、その下面に排気ガスの圧力が無駄なく作用し、上方に極めて大きな力で押し上げられる。そうすると、破断部材7cの直上に配置されたバスバー2を極めて大きな力で押し上げ、バスバー2の脆弱部23に応力が集中し、脆弱部23が確実に破断される。
【0078】
なお、破断部材7cの形態は実施例に限定されず、例えば、脆弱部23に尖った部分が当接するような形状としてもよい。さらに、鋭利な刃体を備えて、確実に脆弱部23を破断させるような形状でもよい。
【0079】
<材質の変更1>
上記実施形態では、バスバー2は、Al製の薄板を例示したが、例えば、脆弱部の部分を、機械的に引張強度が低い材質とすることもできる。このような材質を採用することで、より確実に脆弱部23を破断することができる。
【0080】
<材質の変更2>
また、バスバー2の脆弱部23は、他の部分より融点が低い材質とすることもできる。開弁時の排気ガスの温度は、600~700°Cとなるため、Alより融点が低い金属を接合して脆弱部を構成するようにしてもよい。このように構成することで、より確実に脆弱部23を破断することができる。
【0081】
<その他別例>
〇本実施形態では、車載用の電池パックを例に説明したが、その用途は限定されず、船舶や航空機はもちろん、地上載置用の電池として用いることができる。
【0082】
〇本実施形態のセル電池は、板状のリチウムイオン二次電池を例に説明したが、円柱形などその形状は限定されない。
〇本実施形態のセル電池は、リチウムイオン二次電池を例に説明したが、これに限定されず、過充電やデンドライトなどによる微小短絡を原因として熱暴走が生じうる非水二次電池においても適用できる。
【0083】
○組電池1は、必ずしも図1、2に示すように、セル電池3の厚み方向にスタックするものに限定されず、車両の床下に配置するように、長手方向に直列に組み合わせたようなものでもよい。さらに、このような列を複数設け、面上に配置された組電池1も好ましい。
【0084】
〇各実施形態及び変形例に記載された態様は、矛盾がない限り相互に置換して実施することができる。
○本実施形態は、本発明の一例であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、当業者によりその構成を付加し、削除し、または変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
不図示…バッテリーパック(図示を省略)
1…組電池
2(2a~2d)…バスバー
3…セル電池
4…電池ケース
5…蓋体
5a…注液孔
6…電槽
7…圧力開放弁
7a…薄肉部
7b…弁体
7c…破断部材
7d…筒状部
8…圧力保持構造
8a…絶縁部材
8b…押圧部材
8c…固定部材
9…正極外部端子
9a…接続板
9b…接続端子
9c…絶縁体
9d…固定部材
10…負極外部端子
10a…接続板
10b…接続端子
10c…絶縁体
10d…固定部材
11…電極群(捲回体)
12…正極
13…負極
14…セパレータ
15…非水電解液
16…正極集電端子
17…負極集電端子
21…正極固定孔
22…負極固定孔
23…脆弱部
23a…排気ガス誘導部
24…屈折部
25…屈曲部
27…折り曲げ部
28…折り曲げ部
29…折り曲げ部
30…屈折・折り曲げ部
EG…排気ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14