(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083292
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20220527BHJP
E06B 7/36 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/36 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194647
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591092925
【氏名又は名称】株式会社クマヒラ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】星野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】内藤 良介
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 卓也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀之
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】片開き扉体が閉方向へ移動する際に、扉体の戸先と開口の周囲壁の間に手指の進入を阻止することができる高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造を提供する。
【解決手段】シール扉において、閉塞板部11の戸先側には、閉塞板部11の当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11aと隔壁70の壁面71の間への手指の侵入を阻止する阻止部40が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁に設けられた開口の周縁壁面部に対して、または周縁壁面部に設けられた枠体に対して当接する扉側当接部を備えた閉塞板部を有するとともに、前記開口を閉塞した状態で前記閉塞板部の片側の面が低圧の流体圧を受けて反対側の面が高い流体圧を受ける高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造において、
前記閉塞板部の戸先側には、前記扉側当接部と前記周縁壁面部の間への手指の侵入を阻止する阻止部が設けられている高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造。
【請求項2】
前記阻止部は、前記閉塞板部の片側の面、または戸先の端面に対して固定された阻止板を含む請求項1に記載の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造。
【請求項3】
前記阻止板は、上下方向に延出して配置されている請求項2に記載の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造。
【請求項4】
前記阻止板は、不燃材からなる請求項2または請求項3に記載の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造。
【請求項5】
前記閉塞板部は、前記開口が設けられた位置よりも高圧の流体圧が印加される室内側において前記周縁壁面部に対して開閉回転自在に支持されており、
前記阻止部は、閉動作する前記閉塞板部の前記扉側当接部が前記周縁壁面部に当接する以前に前記開口内に入るように前記閉塞板部の片側の面から突出して配置されている請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造。
【請求項6】
前記閉塞板部は、前記開口が設けられた位置よりも低圧の流体圧が印加される室内側において前記周縁壁面部に対して開閉回転自在に支持されており、
前記阻止部は、前記閉塞板部の戸先の開閉時の円弧状の移動軌跡よりも、径方向に延長した移動軌跡を有するように配置されている請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造。
【請求項7】
前記阻止部は、前記閉塞板部の片側の面から前記戸先端面を越すように、または前記戸先端面からさらに戸先が向かう方向へ延びるように、または、前記閉塞板部の片側の面に対して交差するように配置されている請求項6に記載の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
片開きドアを開閉自在に支持するヒンジ取付け側のドア枠(すなわち、縦枠)とドアとの間には、開閉時に形成される間隙に手指が入ることが予想される。従来、扉体において、手指挟まれ防止を行うものとしては、特許文献1~特許文献7が公知である。
【0003】
特許文献1、及び特許文献2では、前記間隙に手指が入らないように該間隙を覆うようにカバーが設けられている。
特許文献3では、片開きドアを開閉自在に支持するヒンジ取付け側のドア枠(すなわち、縦枠)に対して、被覆材で覆った補助枠を固定し、片開きドアのヒンジ取付け側の縦框とドア枠間との間隙を塞ぐようにしている。
【0004】
特許文献4、及び特許文献5では、片開きドアのヒンジ取付け側のドア枠に指はさみ防止材を固定して、片開きドアのヒンジ取付け側の戸尻とドア枠間との間隙を指はさみ防止材にて覆うように配置されている。
【0005】
特許文献6では、片開きドアの戸先側の縦枠の正面縁部に、該正面縁部と閉動作の扉体の戸先との間で手指を挟まれた時の衝撃力を緩和するための緩衝材が取り付けられている。
【0006】
特許文献7では、両開きドアの各ドアの戸先に人の指で押す程度の力で容易に変形可能な柔軟な弾性材料からなる長尺体が配置され、手指が両ドア間に挟まれた際にそのときの衝撃を緩和する構成が開示されている。
【0007】
ところで、地下街や地下鉄等の地下構造物、地下室等を有する地上建築物、船舶等の海上構造物、津波避難ビルや原子力発電所の建屋等の海岸構造物等では、水害、ゲリラ豪雨、河川の氾濫、津波、高潮等が生じた際、重要部分を保護する必要がある。このため、前記重要部分を防水壁で取り囲むとともに、前記防水壁の出入り開口に防潮扉、防水扉等の防災ゲートが設けられて、防災ゲートで囲まれた重要部分を例えば防水構造や水密構造としている。
【0008】
この防災ゲート、例えば水密扉を片開き扉体とした場合は、開口の周囲壁に扉体を押し付ける構造となっている。
また、このような浸水時の水圧に耐える、片開き扉体は剛性を高くするために必然的に重量物となることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6617262号公報
【特許文献2】特許第6510725号公報
【特許文献3】実開昭54-163038号公報
【特許文献4】実開昭56-3976号公報
【特許文献5】実開昭59-75874号公報
【特許文献6】特開2003-321968号公報
【特許文献7】実開昭54-89034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
片開き扉体が開口を閉鎖する際、扉体と開口の周囲壁間に作業者の手指が挟まらないようにする必要がある。特に、重量物である片開き扉体は、開口の周囲壁に衝接する際の慣性力が大きいため、手指を挟まれないようにする必要がある。
【0011】
特許文献1~特許文献3では、挟まれ防止構造は、片開きドアのヒンジ取付け側と、ヒンジ取付け側のドア枠にそれぞれ連結して覆うものであるため、この構成を水密扉の戸先側に配置することは、人の出入りが不能となるため、採用できないことは明白である。
【0012】
特許文献4、及び特許文献5では、戸尻とドア枠間との間隙を指はさみ防止材にて覆うものとなってはいるが、ドア開放中から閉鎖する間では、指挟み防止材とドアとの間には、指の侵入を許容する空間が形成される構成であり、この指はさみ防止材を戸口側のドア枠側に配置しても、手指の侵入阻止を行うことはできない不十分な配置構成である。
【0013】
特許文献6、及び特許文献7は、その図面及び記載の内容から、手指が挟まった場合においても、そのときの衝撃を緩和する構成である。従って、この構成を、重量物である片開き扉体と、開口の周囲壁との間において、このような構成を配置しても、重量物である片開き扉体が、開口の周囲壁に衝接する際の扉体の戸先と開口の周囲壁の間に手指の進入を阻止することはできない構成である。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を解決して、片開き扉体が閉方向へ移動する際に、扉体の戸先と開口の周囲壁の間に手指の進入を阻止することができる高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題点を解決するために、本発明の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造は、隔壁に設けられた開口の周縁壁面部に対して、または周縁壁面部に設けられた枠体に対して当接する扉側当接部を備えた閉塞板部を有するとともに、前記開口を閉塞した状態で前記閉塞板部の片側の面が低圧の流体圧を受けて反対側の面が高い流体圧を受ける高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造において、前記閉塞板部の戸先側には、前記扉側当接部と前記当接部位の間への手指の侵入を阻止する阻止部が設けられているものである。
【0016】
上記構成によれば、閉塞板部の戸先側に設けられた阻止部により、扉側当接部と当接部位の間への手指の侵入が阻止される。
また、前記阻止部は、前記閉塞板部の片側の面、または戸先の端面に対して固定された阻止板を含むことが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、閉塞板部の片側の面、または戸先の端面に対して固定された阻止板により、扉側当接部と当接部位の間への手指の侵入が阻止される。
また、前記阻止板は、上下方向に延出して配置されていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、上下方向に延出して配置された阻止板により、片開き扉体が、開口の周囲壁に衝接する際の扉体の戸先と開口の周囲壁の間の上下方向において手指の進入を阻止することができる。
【0019】
また、前記阻止板は、不燃材からなることが好ましい。
上記構成によれば、阻止部が、不燃材からなるため、片開き扉体が開口を閉塞した状態において、低圧の流体圧側の室内の防火性が高まる。
【0020】
また、前記閉塞板部は、前記開口が設けられた位置よりも高圧の流体圧が印加される室内側において前記周縁壁面部に対して開閉回転自在に支持されており、前記阻止部は、閉動作する前記閉塞板部の前記扉側当接部が前記周縁壁面部に当接する以前に前記開口内に入るように前記閉塞板部の片側の面から突出して配置されていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、閉塞板部が、開口が設けられた位置よりも高圧の流体圧が印加される室内側において開閉回転自在に支持されている場合、阻止部が閉動作する閉塞板部の扉側当接部が周縁壁面部に当接する以前に開口内に入るように閉塞板部の片側の面から突出している。このため、扉側当接部が周縁壁面部に当接する以前に、阻止板により手指の侵入を阻止する。
【0022】
また、前記閉塞板部は、前記開口が設けられた位置よりも低圧の流体圧が印加される室内側において前記周縁壁面部に対して開閉回転自在に支持されており、前記阻止部は、前記閉塞板部の戸先の開閉時の円弧状の移動軌跡よりも、径方向に延長した移動軌跡を有するように配置されていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、閉塞板部が、開口が設けられた位置よりも低圧の流体圧が印加される室内側において周縁壁面部に対して開閉回転自在に支持されている場合、阻止部が閉塞板部の戸先の開閉時の円弧状の移動軌跡よりも、径方向に延長した移動軌跡を有する阻止部によって、扉側当接部と当接部位の間への手指の侵入が阻止される。
【0024】
また、前記阻止部は、前記閉塞板部の片側の面から前記戸先端面を越すように、または前記戸先端面からさらに戸先が向かう方向へ延びるように、または、前記閉塞板部の片側の面に対して交差するように配置されていてもよい。
【0025】
阻止部の上記の具体的な構成により、上記の阻止部が閉塞板部の戸先の開閉時の円弧状の移動軌跡よりも、径方向に延長した移動軌跡を有することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、片開き扉体が閉方向へ移動する際に、扉体の戸先と開口の周囲壁の間に手指の進入を阻止することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の高圧流体流入阻止用片開き扉体を低圧室側から見た正面図。
【
図2】第1実施形態の高圧流体流入阻止用片開き扉体の閉じた状態の横断面図。
【
図3】第1実施形態の高圧流体流入阻止用片開き扉体の閉じた状態における阻止部の拡大断面図。
【
図4】第1実施形態の阻止部である阻止板の斜視図。
【
図5】第2実施形態の高圧流体流入阻止用片開き扉体を低圧室側から見た正面図。
【
図6】第2実施形態の高圧流体流入阻止用片開き扉体の閉じた状態の横断面図。
【
図7】第2実施形態の高圧流体流入阻止用片開き扉体の閉じた状態における阻止部の拡大断面図。
【
図8】第2実施形態の阻止部である阻止板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の高圧流体流入阻止用片開き扉体の配置構造を、シール扉(水密扉)の配置構造に具体化した第1実施形態を
図1~
図4を参照して説明する。
本実施形態のシール扉10は、原子力発電所の建屋等の海岸構造物、或いは津波避難ビルに設けられるものである。
【0029】
図1、
図2に示すように高圧室50と低圧室60とを区分する隔壁70には、開口80が形成されている。高圧室50側の隔壁70には、シール扉10が開閉回転自在に配置されている。高圧室50は、浸水した場合に高い流体圧(本実施形態では、浸水圧)を受ける室である。低圧室60は、開口80がシール扉10より閉塞されて浸水が防御されることにより、流体圧が低圧となる室である。
【0030】
開口80は、略矩形状をなしている。開口80が形成されている隔壁70において、コーナ72には、略矩形状の枠体82が固定されている。
図2に示すように枠体82は、高圧室50側を向く隔壁70の開口周面に対して固定された側板84と、開口80の内周面に固定された側板86とにより、断面L字状をなしている。側板84が固定される隔壁70の壁面71は、開口80の周縁壁面部に相当する。なお、本明細書では、
図2に示すように、低圧室側からシール扉10を見たときの左右方向を見付け方向として定義する。
【0031】
図2に示すようにシール扉10は、鉄製であって、四角板状の閉塞板部11と、閉塞板部11の四方の側縁に枠状に配置された戸先側板12、戸尻側板13、上部板14及び下部板15(
図3参照)とを備え、これらの部材により有底箱状に形成されている。
図3に示すように、閉塞板部11の四方端面、並びに戸尻側板13、上部板14及び下部板15の外側面には、四角枠状をなす当接枠20が固定されている。当接枠20は、閉塞板部11が開口80を閉塞した状態で閉塞板部11から低圧室60側に突出するように配置されている。
【0032】
図3に示すように、枠体82の側板84には、一対のパッキン保持金具30、32が固定されている。パッキン保持金具30、32は相互に離間して平行に配置されている。パッキン保持金具30、32間の溝内には、一対の水密パッキン33、34が保持されている。水密パッキン33は開口80を閉塞した状態で当接枠20に水密状に押圧される。水密パッキン34は、水密パッキン33より高さが高くされていて、閉塞板部11が開口80を閉塞した状態で閉塞板部11に対して水密状に押圧される。ここで、水密パッキン33、34を押圧する当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11aは、扉側当接部に相当する。
【0033】
シール扉10は、扉開閉機構22を備えている。扉開閉機構22は、ヒンジ装置24と、締込み装置26とにより構成されている。
図2に示すように、ヒンジ装置24は、シール扉10を隔壁70に対して、シール扉10を高圧室50側へ開閉回転自在に片持ち支持している。
【0034】
開口80を閉塞するときは、ヒンジ装置24によりシール扉10を
図2に示す閉塞位置に移動させる。そして、隔壁70の開口80周縁面に対して側板84を介して対向させて、操作ハンドル27の操作により、締込み装置26を作動させることによりシール扉10を隔壁70の開口80周縁面に押し付ける。これにより、当接枠20及び閉塞板部11が水密パッキン33、34に対して押し付けて圧着し、水密パッキン33、34を圧縮することにより、シール扉10は、開口80を水密状に閉塞する。
【0035】
また、上記の閉塞状態からシール扉10を開ける場合には、操作ハンドル27を操作して締込み装置26を前述の閉塞する場合とは逆方向に作動させることにより、シール扉10の隔壁70の開口80周縁面に対する押し付けを解除する。この後、シール扉10を開放方向へ回動させて、開口80を開けると、当接枠20及び閉塞板部11の水密パッキン33、34に対する押し付けが解除される。これにより、水密パッキン33、34は、自身の弾性により、元の非圧縮状態に復帰する。
【0036】
図1、
図2及び
図3に示すように、シール扉10の閉塞板部11において、戸先側には阻止部40が設けられている。
図3及び
図4に示すように、阻止部40は、阻止板41と、阻止板41を閉塞板部11に対して固定する金属製の取付部材42とから構成されている。取付部材42は、逆L字状をなす第1取付板43と、第1取付板43と協働して阻止板41の基端側を挟着して保持する板状の第2取付板44とから構成されている。第1取付板43は、阻止板41を挟着している板部43aと、閉塞板部11に対してビス45により固定された板部43bとにより構成されている。阻止板41は、不燃材からなることが好ましい。不燃材としては、グラスファイバにポリ塩化ビニルを含浸させて、防汚処理がされたターポロン(登録商標)等を挙げることができる。なお、不燃材としては、ガラス繊維にシリコーン系樹脂を含浸させたもの、シリカ繊維に有機系樹脂を含浸させたものがあり、これらであってもよく、限定するもまのではない。
【0037】
図1、
図2に示すように、本実施形態ではシール扉10において、見付け方向の右側が戸先となっており、この戸先側に近接するように、かつ、上下方向に延出するように阻止板41が配置されている。また、本実施形態では、阻止部40は、操作ハンドル27よりも上方に位置するように、かつ、操作ハンドル27と戸先との間に位置するように配置されている。阻止部40の配置は、操作ハンドル27よりも上方に配置することに限定するものではなく、操作ハンドル27よりも下方へ延出して配置してもよい。なお、本実施形態において、阻止部40を操作ハンドル27よりも上方に配置する理由は、操作ハンドル27を操作していない作業者の手指の高さが、操作ハンドル27の位置よりも高くなることが多いためである。
【0038】
また、阻止板41は、閉動作する閉塞板部11の水密パッキン33、34を押圧する当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11aが周縁壁面部に当接する以前に開口80内に入るように閉塞板部11の面から突出して配置されている。
【0039】
(第1実施形態の作用)
上記のように構成されたシール扉10の作用について説明する。
シール扉10は、緊急時には開口80を閉塞する必要があるが、緊急時以外のときは、
図2に二点鎖線で示すように開放位置に位置して、開口80が開けられている。
【0040】
作業者は、緊急時に低圧室60側の操作ハンドル27を把持して、閉方向へシール扉10を閉動作(回転)させる。
シール扉10が閉動作すると、閉塞板部11の当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11a(扉側当接部)が隔壁70の壁面71(周縁壁面部)に当接する以前に開口80内に入る。その後、閉塞板部11の当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11a(扉側当接部)が隔壁70の壁面71(周縁壁面部)に当接する。そして、低圧室60側の操作ハンドル27を操作して、締込み装置26を作動させることによりシール扉10を隔壁70の開口80周縁面に押し付ける。これにより、当接枠20及び閉塞板部11が水密パッキン33、34に対して押し付けて圧着し、水密パッキン33、34を圧縮することにより、シール扉10は、開口80を水密状に閉塞する。
【0041】
このシール扉10の閉動作中に、不注意により、阻止部40よりも操作ハンドル27側に立っている作業者が戸先側に向かって手指を移動しようとしても、阻止部40の阻止板41が、その手指の移動を阻止する。
【0042】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態のシール扉10の配置構造では、閉塞板部11の戸先側には、閉塞板部11の当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11a(扉側当接部)と隔壁70の壁面71(周縁壁面部)の間への手指の侵入を阻止する阻止部40が設けられている。この結果、閉塞板部11の戸先側に設けられた阻止部40により、閉塞板部11の当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11a(扉側当接部)と当接部位の間への手指の侵入が阻止される。
【0043】
(2)本実施形態のシール扉10では、阻止部40は、閉塞板部11の片側の面(低圧室60側の面)に固定された阻止板41を含む。
上記の構成により、閉塞板部11の片側の面に対して固定された阻止板41により、閉塞板部11の当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11a(扉側当接部)と当接部位の間への手指の侵入が阻止できる。また、人は、物に対して無意識に手指が触れた場合には、反射行動的に手を引っ込める習性があるため、阻止板41に無意識に触れた人の反射行動を期待することによって、手指の侵入を阻止できる。 (3)本実施形態のシール扉10の配置構造では、阻止板41は、上下方向に延出して配置されている。
【0044】
(4)本実施形態では、阻止板41は、不燃材からなる。この不燃材により、開口80をシール扉10により閉塞した状態では、低圧室60におけるシール扉10は一般に金属製であるため、阻止板41を不燃材にすることにより、シール扉10の近傍も不燃化することができる。
【0045】
(5)本実施形態では、閉塞板部11は、開口80が設けられた位置よりも高圧の流体圧が印加される高圧室50側において隔壁70の壁面71(周縁壁面部)に対して開閉回転自在に支持されている。また、阻止部40は、閉動作する閉塞板部11の当接枠20及び閉塞板部11の当接部位11a(扉側当接部)が隔壁70の壁面71に当接する以前に開口80内に入るように閉塞板部11の片側の面から突出して配置されている。
【0046】
この結果、扉側当接部が隔壁70の壁面71(周縁壁面部)に当接する以前に、阻止板41により手指の侵入を阻止することができる。
(第2実施形態)
次に、
図5~
図8を参照して、第2実施形態のシール扉110について、第1実施形態と異なる構成について説明する。本実施形態のシール扉110も、第1実施形態と同様に原子力発電所の建屋等の海岸構造物、或いは津波避難ビルに設けられるものである。
【0047】
第1実施形態のシール扉110は、高圧室50側において、隔壁70に対して開閉回動自在に支持されていたが、本実施形態では、低圧室60側において、シール扉110が隔壁70に対して開閉回動自在に支持されているところが異なっている。以下、詳説する。
【0048】
図6に示すように高圧室150と低圧室160とを区分する隔壁170には、開口180が形成されている。低圧室160側の隔壁170には、シール扉110が開閉回転自在に配置されている。
【0049】
開口180は、略矩形状をなしている。開口180が形成されている隔壁170において、低圧室160側のコーナ172には、略矩形状の枠体182が固定されている。
図6及び
図7に示すように枠体182は、低圧室160側を向く隔壁170の開口周面に対して固定された側板184と、開口180の内周面に固定された側板186とにより、断面略T字状をなしている。すなわち、側板184の一部は、開口側に突出する突出部184aを有する。側板184が固定される隔壁170の壁面171は、開口180の周縁壁面部に相当する。
【0050】
図7に示すように、突出部184aの先端端面には、四角枠状の枠部材187が一体固定されている。
枠部材187の低圧室160側端部は、突出部184aの低圧室160側の面よりも低圧室160側に向けて突出している。
【0051】
図5及び
図6に示すように、シール扉110は、四角板状の閉塞板部111を備えている。
図7に示すように、閉塞板部111において、高圧室50側の面の四方周縁には、一対のパッキン保持金具130、132が固定されている。
【0052】
パッキン保持金具130、132は相互に離間して平行に配置されている。パッキン保持金具130、132間の溝内には、一対の水密パッキン133、134が保持されている。水密パッキン133は開口180を閉塞した状態で枠部材187に水密状に押圧される。水密パッキン134は、水密パッキン133より高さが高くされていて、閉塞板部111が開口180を閉塞した状態で側板184の突出部184aに対して水密状に押圧される。ここで、水密パッキン133、134は、枠部材187及び側板184の突出部184aに押圧される扉側当接部に相当する。また、
図7に示すように、水密パッキン133、134にて当接される突出部184a及び枠部材187の部位は、当接部位188に相当する。
【0053】
シール扉110は、扉開閉機構122を備えている。扉開閉機構122は、ヒンジ装置124と、閉塞板部111の高圧室50側の面に設けられた締込み装置126(
図6参照)とにより構成されている。
図5及び
図6に示すように、ヒンジ装置124は、シール扉110を隔壁170に対して、シール扉110を低圧室160側へ開閉回転自在に片持ち支持している。閉塞板部111の反開口側の側面において、戸先側には、取っ手112が設けられている。取っ手112は、閉塞板部111の上下方向の略中央に位置しており、後述する操作ハンドル127と同じ高さに配置されている。
【0054】
開口180を閉塞するときは、シール扉110を
図6に示す閉塞位置に移動させる。そして、
図7に示すように、開口180に配置された側板184の突出部184aに対して閉塞板部111の周縁部を対向させて、操作ハンドル127の操作により、締込み装置126を作動させることによりシール扉110を突出部184aに押し付ける。これにより、水密パッキン133、134が、枠部材187及び側板184の突出部184a水密状に押圧される。このように押圧された水密パッキン133、134が圧縮されることにより、シール扉110は、開口180を水密状に閉塞する。
【0055】
また、上記の閉塞状態からシール扉110を開ける場合には、操作ハンドル127を操作して締込み装置26を前述の閉塞する場合とは逆方向に作動させることにより、シール扉110の側板184の突出部184aに対する押し付けを解除する。この後、シール扉110を開放方向へ回動させて、開口180を開けると、水密パッキン133、134の押し付けが解除される。これにより、水密パッキン133、134は、自身の弾性により、元の非圧縮状態に復帰する。
【0056】
図5、
図6及び
図7に示すように、シール扉110の閉塞板部111において、戸先側には阻止部140が設けられている。
図6~
図8に示すように、阻止部140は、阻止板141と、阻止板141を閉塞板部111に対して固定する金属製の取付部材142とから構成されている。取付部材142は、一対の板材143からなる。取付部材142は、閉塞板部111の低圧室160側の面の戸先側の縁部に対してビス145により固定されている。阻止板141は、第1実施形態の阻止板41と同様に不燃材からなることが好ましい。
【0057】
図5、
図6に示すように、本実施形態ではシール扉110において、見付け方向の左側が戸先となっている。このシール扉110の反開口側の側面において、戸先側の縁部には、上下方向に延出するように阻止板141が配置されている。また、本実施形態では、阻止部140は、操作ハンドル127及び取っ手112よりも上方に位置するように、かつ、操作ハンドル127と戸先との間に位置するように配置されている。本実施形態においても、阻止部140の配置は、操作ハンドル127よりも上方に配置することに限定するものではなく、操作ハンドル127よりも下方へ延出して配置してもよい。
【0058】
なお、本実施形態において、阻止部140を操作ハンドル127及び取っ手112よりも上方に配置する理由は、操作ハンドル127を操作する作業者の手指、または、取っ手112を把持していない作業者の手指の高さが、操作ハンドル127及び取っ手112の高さよりも高くなることが多いためである。
【0059】
また、
図7に示すように、阻止板141は、閉塞板部111の水密パッキン133、134が突出部184a及び枠部材187に押圧されて、開口180を閉塞状態としている場合、側板184と略平行となるように閉塞板部111の戸先端面から、見付け方向の左方へ突出して配置されている。
【0060】
(第2実施形態の作用)
上記のように構成されたシール扉110の作用について説明する。
シール扉110は、緊急時以外のときは、
図6に二点鎖線で示すように開放位置に位置して、開口180が開けられている。作業者は、緊急時に低圧室160側の取っ手112を把持して、閉方向へシール扉110を閉動作(回転)させる。
【0061】
ここで、閉塞板部111の戸先は、開閉時においては、
図6の二点鎖線で示すように円弧軌跡を描く、また、阻止部140の阻止板141の先端は、開閉時における閉塞板部111の円弧状の移動軌跡よりも曲率半径を大きくした二点鎖線で示す円弧状の移動軌跡を描く。すなわち、阻止部140の阻止板141の先端は、開閉時における閉塞板部111の円弧状の移動軌跡よりも径方向に延長した移動軌跡を有する。
【0062】
その後、閉塞板部11の水密パッキン134、133が側板184の突出部184a及び枠部材187に当接する。そして、低圧室160側の操作ハンドル127を操作して、締込み装置126を作動させることによりシール扉110を隔壁170の開口180周縁面に押し付ける。これにより、水密パッキン133、134が側板184の突出部184a及び枠部材187に対して押し付けて圧着し、水密パッキン133、134を圧縮することにより、シール扉110は、開口180を水密状に閉塞する。
【0063】
このシール扉110の閉動作中に、不注意により、阻止部140よりも取っ手112側に立っている作業者が戸先側に向かって手指を移動しようとしても、阻止部140の阻止板141が、閉塞板部111の戸先よりもさらに、左方へ突出している。このことにより、水密パッキン134、133と、側板184の突出部184a及び枠部材187の間にその手指が入ることを阻止する。
【0064】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態のシール扉110の配置構造では、閉塞板部111は、開口180が設けられた位置よりも低圧の流体圧が印加される室内側において壁面171(周縁壁面部)に対して開閉回転自在に支持されている。阻止部140は、閉塞板部111の戸先の開閉時の円弧状の移動軌跡よりも、径方向に延長した移動軌跡を有する。
【0065】
この結果、水密パッキン133、134(扉側当接部)と水密パッキン133、134にて当接される突出部184a及び枠部材187の部位(当接部位188)の間への手指の侵入が阻止できる。
【0066】
(2)本実施形態の阻止部140は、閉塞板部111の片側の面から前記戸先端面を越すように配置されている。この結果、阻止部140により、閉塞板部111の戸先の開閉時の円弧状の移動軌跡よりも、径方向に延長した移動軌跡を有することができる。
【0067】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・上述した各実施形態では、シール扉として水密扉に具体化したが、水密扉に限定されるものではない。例えば、水密扉に代えて、クリーンルーム施設、バイオセイフティー施設、ラディエーションハザード施設等において、片側から反対側より高い流体圧(気圧)を受ける気密扉に適用してもよい。これらの場合、前記実施形態における、水密パッキンを気密パッキンに変更すればよい。また、水密扉に代えて、防水扉等を含む他の防災ゲートに具体化してもよい。
【0069】
・前記各実施形態では重量物である水密扉としているが、片開き扉体は、重量物に限定されるものではなく、軽量の片開き扉体に具体化してもよい。 ・上述した各実施形態では阻止板41は不燃材から構成したが、不燃材に限定するものではない。
【0070】
・上述した各実施形態では、枠体82、182に対して、シール扉10、110を水密状または気密状に当接したが、周壁の周縁壁面部に対してシール扉10、110を水密状または気密状に当接してもよい。また、水密状の当接ではなく、多少の漏水があっても防水性がある扉体に具体化してもよい。
【0071】
・第2実施形態では、
図7に示すように、阻止板141が開口180を閉塞状態にした場合、阻止部140の阻止板141を側板184と略平行となるように閉塞板部111の戸先端面から、見付け方向の左方へ突出して配置した。阻止板141の延出方向は、閉塞状態にした場合、阻止部140の阻止板141を側板184と略平行に限定するものではなく、非平行であってもよい。すなわち、閉塞板部111の片側の面に対して交差するように配置してもよい。
【0072】
・第2実施形態では、阻止部140は、閉塞板部111の反開口側の面に取付けしているが、これに代えて、阻止部140を閉塞板部111の戸先端面に取付けしてもよい。この場合、阻止板141は、戸先よりもさらに、見付け方向において、戸先が向かう方向へ延びるように、すなわち、突出するように配置する。
【0073】
・阻止板141は、上記した各実施形態では、平板状としているが、上下方向に湾曲形成してもよく、或いは、先端と基端との間を湾曲形成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…シール扉
11…閉塞板部
11a…当接部位
20…当接枠
40…阻止部
41…阻止板
42…取付部材
71…壁面
80…開口
82…枠体
110…シール扉
111…閉塞板部
140…阻止部
141…阻止板
142…取付部材
171…壁面
180…開口
182…枠体
188…当接部位