(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083322
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】塗装設備用のフィルタモジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 45/08 20060101AFI20220527BHJP
B05B 14/43 20180101ALI20220527BHJP
B05B 16/40 20180101ALI20220527BHJP
【FI】
B01D45/08 B
B05B14/43
B05B16/40
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194693
(22)【出願日】2020-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392010094
【氏名又は名称】アイロップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】横山 良
(72)【発明者】
【氏名】東野 優紀
【テーマコード(参考)】
4D031
4D073
【Fターム(参考)】
4D031AB08
4D031BA01
4D031BA03
4D031BA10
4D031BB10
4D031DA01
4D031EA01
4D073AA01
4D073BB03
4D073DC02
4D073DC19
4D073DD05
4D073DD14
4D073DD25
(57)【要約】
【課題】塗料ミストの除去効率を向上させることができ、かつ外部への塗料ミストの流出を防止できる塗装設備用のフィルタモジュールを提供すること。
【解決手段】本発明のフィルタモジュール40は、可燃性材料からなり、外箱41、エリミネータ51及びバッフル板71を備える。外箱41では、塗料ミストを含む空気A2が外箱入口45から内部に流れ込んで外箱出口46から排出される。エリミネータ51は、ジグザグ状をなすエリミネータエレメント52を並設してなり、空気A2から塗料ミストを分離する。バッフル板71は、エリミネータ51の流入側空間S2に空気A2を導く傾斜面を有するバッフル板エレメント72を並設してなり、外箱入口45から導入された空気A2を流入側空間S2に導く。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装設備の排気経路上に設けられ、可燃性材料からなるフィルタモジュールであって、
上面にて開口する外箱入口及び側面にて開口する外箱出口を有し、塗料ミストを含む空気が前記外箱入口から内部に流れ込んで前記外箱出口から排出される外箱と、
前記外箱内における前記外箱出口付近にて流入側に空間を有した状態で収容され、ジグザグ状をなす複数の板状のエリミネータエレメントを並設してなり、前記空気から前記塗料ミストを分離するエリミネータと、
前記外箱内における前記外箱入口付近に収容され、前記エリミネータの流入側空間に前記空気を導く傾斜面を有する複数のバッフル板エレメントを並設してなり、前記外箱入口から導入された前記空気を前記流入側空間に導くバッフル板と
を備えることを特徴とする塗装設備用のフィルタモジュール。
【請求項2】
前記流入側空間に、上下方向に延びる複数の整流板エレメントを並設してなる整流板が収容され、
隣接する前記整流板エレメント間のピッチは、隣接する前記エリミネータエレメント間のピッチよりも大きく、かつ、隣接する前記バッフル板エレメント間のピッチよりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の塗装設備用のフィルタモジュール。
【請求項3】
前記外箱の底面に複数の突片が突設され、隣接する前記突片間の空間が塗料を溜める領域となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装設備用のフィルタモジュール。
【請求項4】
前記エリミネータの流出側に、前記エリミネータを通過した前記空気を通過させる2次フィルタが、その一部を前記外箱出口から突出させた状態で設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装設備用のフィルタモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気から塗料ミストを分離する塗装設備用のフィルタモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気から塗料ミストを分離するフィルタモジュールが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図10,
図11に示されるように、フィルタモジュール101は、外箱102と障害壁103とを備えている。外箱102は、直方体状をなし、上面にて開口する外箱入口104及び側面にて開口する外箱出口105を有している。また、障害壁103は、外箱102内における外箱出口105付近に寄せて配置され、かつ流入側に空間S1を有した状態で収容されている。そして、塗料ミストを含む空気A1は、外箱入口104を介して空間S1に流れ込み、90°程度向きを変えてから障害壁103を通過し、外箱出口105から排出される。なお、塗料ミストは、障害壁103の通過時に空気A1から分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6475241号公報(
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のフィルタモジュール101の場合、空間S1が外箱102内における偏った位置(
図10,
図11では左寄りの位置)にあり、流路が急に狭くなっているため、外箱入口104から空間S1に導かれる空気A1に圧力損失が生じてしまう。この場合、空気A1が外箱102の内側面や障害壁103等の特定の部分に偏って流れるため、塗料ミストの除去効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料ミストの除去効率を向上させることができ、かつ外部への塗料ミストの流出を防止できる塗装設備用のフィルタモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、塗装設備の排気経路上に設けられ、可燃性材料からなるフィルタモジュールであって、上面にて開口する外箱入口及び側面にて開口する外箱出口を有し、塗料ミストを含む空気が前記外箱入口から内部に流れ込んで前記外箱出口から排出される外箱と、前記外箱内における前記外箱出口付近にて流入側に空間を有した状態で収容され、ジグザグ状をなす複数の板状のエリミネータエレメントを並設してなり、前記空気から前記塗料ミストを分離するエリミネータと、前記外箱内における前記外箱入口付近に収容され、前記エリミネータの流入側空間に前記空気を導く傾斜面を有する複数のバッフル板エレメントを並設してなり、前記外箱入口から導入された前記空気を前記流入側空間に導くバッフル板とを備えることを特徴とする塗装設備用のフィルタモジュールをその要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によると、外箱内における外箱入口付近にバッフル板が収容され、バッフル板を構成する複数のバッフル板エレメントが、エリミネータの流入側空間に空気を導く傾斜面を有している。このため、外箱入口から外箱内に導入された空気が各バッフル板エレメントに衝突して方向を変えることで、空気が流入側空間に導かれる。その結果、外箱入口から流入側空間に空気がスムーズに導かれる。この場合、流入側空間に導かれた空気が、外箱の内側面やエリミネータエレメントの表面に対して万遍なく流れるため、空気に含まれる塗料ミストが外箱の内側面やエリミネータエレメントの表面のより多くの領域に付着しやすくなり、塗料ミストの除去効率が向上する。また、外箱入口から外箱内に導入された空気は、バッフル板エレメントによって案内されて確実に流入側空間に流れ込むため、空気に含まれる塗料ミストのフィルタモジュール外への流出を防止することができる。
【0008】
さらに、請求項1では、フィルタモジュールが可燃性材料からなるため、フィルタモジュールの焼却や使い捨て交換が可能である。ここで、可燃性材料としては、紙、樹脂、木材などが挙げられる。なお、可燃性材料として、段ボール紙やプラスチック段ボールを用いれば、フィルタモジュールの強度が向上する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記流入側空間に、上下方向に延びる複数の整流板エレメントを並設してなる整流板が収容され、隣接する前記整流板エレメント間のピッチは、隣接する前記エリミネータエレメント間のピッチよりも大きく、かつ、隣接する前記バッフル板エレメント間のピッチよりも小さいことをその要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、流入側空間に整流板が収容され、整流板を構成する複数の整流板エレメントが上下方向に延びている。このため、バッフル板から流入側空間に導入された空気が各整流板エレメントに衝突して方向を変えることで、空気が下流側のエリミネータに導かれる。その結果、空気が偏りなく均一に流れる。即ち、単位流量当りの空気の接触面積が増加する。このため、空気に含まれる塗料ミストが整流板エレメントの表面に付着しやすくなり、下流側のエリミネータエレメントの表面にも付着しやすくなるため、塗料ミストの除去効率がよりいっそう向上する。
【0011】
また、請求項2では、下流側に行くに従って、隣接するエレメント間のピッチが小さくなるため、塗料ミストの分級を行うことができる。具体的に言うと、ピッチが最も大きいバッフル板エレメントにより、粒子径が大きい塗料ミストを付着させて回収し、ピッチが中程度の整流板エレメントにより、粒子径が中程度の塗料ミストを付着させて回収し、ピッチが最も小さいエリミネータエレメントにより、粒子径が小さい塗料ミストを付着させて回収することができる。その結果、粒子径が大きい塗料ミストによって、隣接するエレメント間のピッチが小さい下流側の流路が詰まりにくくなるため、フィルタモジュールの長寿命化を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記外箱の底面に複数の突片が突設され、隣接する前記突片間の空間が塗料を溜める領域となっていることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、外箱の底面に空気を接触させることにより、空気に含まれる塗料ミストを、塗料を溜める領域(隣接する突片間の空間)に付着させることができる。その結果、隣接する突片間の空間外への塗料流出を防止することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記エリミネータの流出側に、前記エリミネータを通過した前記空気を通過させる2次フィルタが、その一部を前記外箱出口から突出させた状態で設けられていることをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によると、エリミネータの流出側に2次フィルタを設けることにより、エリミネータの通過後に空気から除去し切れていない塗料ミストを、2次フィルタで確実に除去することができる。また、2次フィルタが、その一部を外箱出口から突出させた状態で設けられるため、2次フィルタの容積を確保することができる。仮に、2次フィルタの全体を外箱に収容してしまうと、エリミネータ等を所望の位置に配置できない可能性がある。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、請求項1~4に記載の発明によると、塗料ミストの除去効率を向上させることができ、かつ外部への塗料ミストの流出を防止できる塗装設備用のフィルタモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態における塗装設備を示す概略断面図。
【
図8】外箱、エリミネータ、スペーサ、バッフル板、整流板を展開した状態及び折畳んだ状態を示す写真。
【
図9】他の実施形態におけるフィルタモジュールを示す概略断面図。
【
図10】従来技術におけるフィルタモジュールを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態のフィルタモジュール40は、塗装設備10の排気経路E1上に設けられる。塗装設備10を構成する塗装室11内には、搬送レール12と、搬送レール12上を移動する搬送台車13と、搬送レール12の両側に配置された複数の塗装ロボット14とが設けられている。なお、塗装室11では、塗装ロボット14の塗装ガン15からワークW1(本実施形態では自動車ボディ)に霧化した塗料(塗料ミスト)が吹き付けられることにより、ワークW1の表面に塗膜が形成される。
【0020】
また、塗装室11の上部には天井壁16が設けられている。天井壁16は、メッシュ構造をなしており、上側に圧縮した空気A2が供給されるようになっている。その結果、空気A2は、天井壁16を通過して塗装室11内を流下するため、ワークW1に付着しなかった塗装ミストが下方に導かれる。一方、塗装室11の床17は、桟構造をなしており、下方には床下壁18が配置されている。床下壁18は、中央部19が最も低くなっており、中央部19の両側に一対の傾斜部20を備えている。そして、中央部19には排気口21が設けられており、排気口21には塗料ミスト除去装置30を介して排気ダクト22が接続されている。
【0021】
なお、排気ダクト22内は、図示しないブロアーにより負圧状態となっている。これにより、塗装室11内の空気A2は、塗料ミスト除去装置30を通過した後、排気ダクト22に流れ込む。また、空気A2に含まれる塗料ミストは、塗料ミスト除去装置30の通過時に除去される。そして、排気ダクト22内の空気A2は、図示しない脱臭装置で例えばVOC(揮発性有機ガス)の除去処理を受けた後、塗装設備10外に排出される。
【0022】
図1に示されるように、床下壁18の中央部19には、排気口21に連通しかつ下方に延びる中継ダクト23が接続されている。そして、塗料ミスト除去装置30は、中継ダクト23の下端部と、排気ダクト22の吸引孔(図示略)とに接続されている。詳述すると、塗料ミスト除去装置30は、上流側ダクト31及び下流側ダクト32を備えている。そして、上流側ダクト31の上端から張り出した上端フランジ(図示略)と、中継ダクト23の下端から張り出した下端フランジ(図示略)とを重ね合わせた状態でネジ止めすることにより、中継ダクト23に塗料ミスト除去装置30が接続される。また、下流側ダクト32の下流側端部が排気ダクト22の吸引孔に挿入されることにより、排気ダクト22に塗料ミスト除去装置30が接続される。
【0023】
そして、塗料ミスト除去装置30における上流側ダクト31と下流側ダクト32との間には、フィルタモジュール40が着脱可能に取り付けられている。フィルタモジュール40は、全体が可燃性材料(具体的には、段ボール紙)で形成されている。
図2~
図7に示されるように、フィルタモジュール40は、外箱41、エリミネータ51、スペーサ61、バッフル板71及び整流板81を備えている。外箱41は、上面42、下面43、及び、4つの側面44a,44b,44c,44dを有する直方体状をなしている。また、外箱41は、上面42にて開口する矩形状の外箱入口45と、下流側(
図3では右側)の側面44cにて開口する矩形状の外箱出口46とを有している。外箱入口45の開口面積は、外箱出口46の開口面積よりも大きく、上面42の面積とほぼ等しくなっている。なお、本実施形態の外箱41では、塗料ミストを含む空気A2が外箱入口45から内部に流れ込んで、外箱出口46から排出されるようになっている。さらに、外箱41の側面44cには、外箱出口46を包囲する矩形枠状のダクト接続部47が突設されている。そして、ダクト接続部47が下流側ダクト32に挿入されることにより、フィルタモジュール40が下流側ダクト32に接続される。
【0024】
図2,
図3,
図5,
図6に示されるように、エリミネータ51は、外箱41内における外箱出口46付近にて流入側に空間(流入側空間S2)を有した状態で収容されている。エリミネータ51は、複数の板状のエリミネータエレメント52を並設してなり、空気A2から塗料ミストを分離する機能を有している。各エリミネータエレメント52は、上下方向であるZ方向(
図3,
図5参照)に延びており、下端が外箱41の底面48に接触している。また、各エリミネータエレメント52は、水平方向であるX方向(
図3,
図6参照)にも延びている。詳述すると、各エリミネータエレメント52は、大部分が平面視でジグザグ状をなしており、流入側の端部53(
図6では下端部)のみが平面視で直線状をなしている。よって、隣接するエリミネータエレメント52間には、蛇行した通路が形成される。
【0025】
図2~
図5に示されるように、スペーサ61は、外箱41内における外箱入口45付近において、各エリミネータエレメント52の上端上に載置された状態で収容されている。スペーサ61は、断面三角形の柱状をなし、各エリミネータエレメント52の上端に当接する底面62と、外箱41の下流側の内側面41aに当接する背面63と、流入側空間S2に空気A2を導く傾斜面64とを有している。
【0026】
そして、外箱41内における外箱入口45付近には、バッフル板71が収容されている。バッフル板71は、流入側空間S2に空気A2を導く傾斜面を上面側に有する複数のバッフル板エレメント72を並設してなり、外箱入口45から導入された空気A2を流入側空間S2に導く機能を有している。各バッフル板エレメント72は、水平方向であるY方向(
図4,
図5参照)に延びている。なお、外箱41の上面42に対する各バッフル板エレメント72の傾斜角度θ1は、互いに等しくなっている。また、傾斜角度θ1は、スペーサ61の底面62に対する傾斜面64の傾斜角度θ2よりも大きくなっている。さらに、隣接するバッフル板エレメント72間のピッチP1は、互いに等しくなっている。
【0027】
さらに、
図2~
図5に示されるように、バッフル板71は、各バッフル板エレメント72に直交するとともに、各バッフル板エレメント72同士を連結する複数の連結板73を有している。各連結板73は、水平方向であるX方向(
図3,
図4参照)に延びている。また、各連結板73は、整流板81の上側連結板83の上端に当接する下端縁74と、外箱41の上流側の内側面41bに当接する側縁75と、スペーサ61の傾斜面64に当接する傾斜縁76とを有している。なお、隣接する連結板73間のピッチP2は、互いに等しくなっている。また、各バッフル板エレメント72の下端は、各連結板73の下端よりも上方に位置している。
【0028】
図2,
図3,
図5,
図6に示されるように、外箱41内の流入側空間S2には、整流板81が収容されている。整流板81は、複数の整流板エレメント82を並設してなる。各整流板エレメント82は、上下方向であるZ方向(
図3,
図5参照)に延びており、下端が外箱41の底面48に接触している。また、各整流板エレメント82は、水平方向であるX方向(
図3,
図6参照)にも延びており、下流側端がエリミネータエレメント52の上流側端に接続されている。このようにすれば、整流板81とエリミネータ51とを互いに補強することができる。また、隣接する整流板エレメント82間のピッチP3を一定に保持しやすくなる。さらに、整流板エレメント82の下流側端とエリミネータエレメント52の上流側端との間に隙間が生じなくなるため、空気A2が隙間に入り込んで乱れるといった問題を解消することができる。そして、それぞれの隣接する整流板エレメント82間には、エリミネータエレメント52の端部53が1つずつ配置されている。よって、隣接する整流板エレメント82間のピッチP3は、隣接するエリミネータエレメント52間のピッチP4よりも大きくなっており、具体的には、ピッチP4の2倍の大きさになっている。また、ピッチP3は、隣接するバッフル板エレメント72間のピッチP1や隣接する連結板73間のピッチP2よりも小さくなっている。
【0029】
また、整流板81は、各整流板エレメント82の上端部同士を連結する複数の上側連結板83と、各整流板エレメント82の下端部同士を接続する複数の下側連結板84を備えている。各上側連結板83及び各下側連結板84は、各整流板エレメント82に直交しており、水平方向であるY方向(
図5,
図6参照)に延びている。また、各上側連結板83の上端は、バッフル板71を構成する各連結板73の下端に当接している。一方、各下側連結板84の下端は、外箱41に底面48に当接している。なお、本実施形態の各下側連結板84は、底面48に突設される突片として用いられている。そして、隣接する下側連結板84間の空間S3が、塗料(塗料ミスト)を溜める領域となる。
【0030】
図8に示されるように、上述した外箱41、エリミネータ51、スペーサ61、バッフル板71、整流板81は、折畳み可能な構造を有している。また、エリミネータ51及び整流板81は、互いに連結されており、同時に展開及び折畳みされるようになっている。なお、本実施形態では、フィルタモジュール40の構成部品(外箱41、エリミネータ51及び整流板81、スペーサ61、バッフル板71)が、平形状に折畳まれた状態で搬送される。そして、各構成部品を展開した状態で組み立てることにより、フィルタモジュール40が完成する。なお、完成したフィルタモジュール40は、塗装設備10外の待機位置(図示略)に載置される。その後、使用位置T2(
図1参照)にあるフィルタモジュール40が塗料ミストで汚れてくると、そのフィルタモジュール40は使用位置T2から取り外されて、折畳まれることなく、そのまま焼却処分される。即ち、塗料ミストは、フィルタモジュール40ごと破棄される。そして、待機位置にあるフィルタモジュール40が、使用位置T2に載置されて用いられる。
【0031】
次に、塗装設備10の作用を説明する。
【0032】
まず、塗装ガン15から塗料を噴霧してワークW1の塗装を行うと、オーバースプレーされた塗料ミストが、塗装室11内の空気A2とともに、塗装室11の床17を通過して床下壁18側に案内される。
【0033】
その後、塗料ミストを含む空気A2は、床下壁18の排気口21から中継ダクト23内に導かれ、上流側ダクト31を通過して、外箱入口45から外箱41(フィルタモジュール40)内に流れ込む。そして、空気A2は、スペーサ61の傾斜面64、バッフル板71のバッフル板エレメント72の表面、及び外箱41の上流側の内側面41bに衝突することにより、外箱41の内側面41bに沿うように誘導される。このとき、空気A2に含まれる塗料ミストの一部が、スペーサ61の傾斜面64、バッフル板エレメント72の表面及び外箱41の内側面41bに付着することにより除去される。
【0034】
次に、空気A2は、バッフル板71の下流側にある整流板81に導かれ、隣接する整流板エレメント82間に流れ込む。このとき、空気A2は、整流板エレメント82の表面に接触することにより、整流板エレメント82の表面に沿うように誘導される。その結果、空気A2の流れが均一になる。また、空気A2に含まれる塗料ミストの一部は、整流板エレメント82の表面に付着することにより除去される。さらに、空気A2は、整流板81内で円弧を描くように流れ、バッフル板71で誘導された方向とはほぼ逆方向に向きを変える(
図3参照)。このとき、空気A2の一部が外箱41の底面48に衝突するため、空気A2に含まれる塗料ミストの一部は、底面48に付着することにより除去される。
【0035】
さらに、空気A2は、整流板81の下流側にあるエリミネータ51に導かれ、隣接するエリミネータエレメント52間に流れ込む。なお、各エリミネータエレメント52は平面視でジグザグ状をなすため、隣接するエリミネータエレメント52間は蛇行した通路となっている。その結果、空気A2は、蛇行した通路内をエリミネータエレメント52の表面に衝突しながら流れるため、空気A2に含まれている塗料ミストの殆どは、エリミネータエレメント52の表面に付着することにより除去される。その後、エリミネータ51を通過した空気A2は、外箱出口46から外箱41外に排出され、下流側ダクト32及び排気ダクト22を順番に通過して塗装設備10外に排出される。
【0036】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施形態の塗装設備10によれば、バッフル板71を構成するバッフル板エレメント72が、エリミネータ51の流入側空間S2に空気A2を導く傾斜面を上面側に有している。このため、外箱入口45から外箱41内に導入された空気A2がバッフル板エレメント72に衝突して方向を変えることで、空気A2が流入側空間S2に導かれる。その結果、外箱入口45から流入側空間S2に空気A2がスムーズに導かれる。この場合、流入側空間S2に導かれた空気A2が、外箱41の内側面41bやエリミネータエレメント52の表面に対して万遍なく流れるため、空気A2に含まれる塗料ミストが外箱41の内側面41bやエリミネータエレメント52の表面のより多くの領域に付着しやすくなり、塗料ミストの除去効率が向上する。また、外箱入口45から外箱41内に導入された空気A2は、バッフル板エレメント72によって案内されて確実に流入側空間S2に流れ込むため、空気A2に含まれる塗料ミストのフィルタモジュール40外への流出を防止することができる。
【0038】
(2)本実施形態では、フィルタモジュール40の構成部品である外箱41、エリミネータ51及び整流板81、スペーサ61、バッフル板71が、折畳み可能な構造となっている。その結果、フィルタモジュール40の構成部品を折畳んで小さくした状態で搬送できるため、搬送の負荷を低減することができる。また、構成部品を折畳んで小さくした状態で保管できるため、保管場所の確保も容易になる。
【0039】
(3)本実施形態では、フィルタモジュール40が可燃性材料である段ボール紙からなるため、フィルタモジュール40を焼却して容易に処分することができる。また、フィルタモジュール40を低コストで形成できる。
【0040】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、フィルタモジュール40を構成する外箱41内に、エリミネータ51、スペーサ61、バッフル板71及び整流板81が収容されていたが、整流板81やスペーサ61は省略されていてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、整流板81を構成する複数の下側連結板84が、外箱41の底面48に突設される突片として用いられていた。しかし、突片は、下側連結板84とは別体であって、底面48に接続されたものであってもよい。また、突片は省略されていてもよい。
【0043】
・
図9に示されるように、エリミネータ50の流出側(
図9では上側)に、エリミネータ51を通過した空気A2を通過させる2次フィルタ91を設けてもよい。2次フィルタ91は、ケース92内において、断面く字状をなすフィルタ93をY方向に並設することにより構成されている。また、2次フィルタ91の一部は、外側出口46から突出している。このようにすれば、エリミネータ51の通過後に空気A2から除去しきれていない塗料ミストを、2次フィルタ91で確実に除去することができる。また、2次フィルタ91が、その一部を外箱出口46から突出させた状態で設けられるため、2次フィルタ91の容積を確保することができる。仮に、2次フィルタ91の全体を外箱41に収容してしまうと、エリミネータ51等を所望の位置に配置できない可能性がある。
【0044】
・上記実施形態では、塗料が吹き付けられるワークW1は自動車ボディであった。しかし、ワークW1は、空力付加物(スポイラーなど)やバンパーなどの自動車用部品であってもよい。なお、ワークW1は、必ずしも自動車用部品でなくてもよい。
【0045】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0046】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記外箱内における外箱入口付近にて複数の前記エリミネータエレメントの上端上に載置された状態で収容され、前記エリミネータエレメントの上端に当接する底面と、前記流入側空間に前記空気を導く傾斜面とを有するスペーサを備え、前記外箱の上面に対する前記バッフル板エレメントの傾斜角度は、前記底面に対する前記傾斜面の傾斜角度よりも大きいことを特徴とする塗装設備用のフィルタモジュール。
【0047】
(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記バッフル板は、前記複数のバッフル板エレメントに直交するとともに、前記複数のバッフル板エレメント同士を連結する複数の連結板を有しており、前記バッフル板エレメントの下端は、前記連結板の下端よりも上方に位置していることを特徴とする塗装設備用のフィルタモジュール。
【符号の説明】
【0048】
10…塗装設備
40…フィルタモジュール
41…外箱
42…外箱の上面
44c…外箱の側面
45…外箱入口
46…外箱出口
48…外箱の底面
51…エリミネータ
52…エリミネータエレメント
71…バッフル板
72…バッフル板エレメント
81…整流板
82…整流板エレメント
84…突片としての下側連結板
91…2次フィルタ
A2…空気
E1…排気経路
P3…隣接する整流板エレメント間のピッチ
P4…隣接するエリミネータエレメント間のピッチ
S2…流入側空間
S3…隣接する突片間の空間