(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083338
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】小型車両用シートの薄型サスペンション装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/54 20060101AFI20220527BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B60N2/54
F16F15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194721
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】520461602
【氏名又は名称】NPW横浜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(72)【発明者】
【氏名】小西 正洋
【テーマコード(参考)】
3B087
3J048
【Fターム(参考)】
3B087DD02
3B087DD10
3B087DD17
3J048AA01
(57)【要約】
【課題】限定されたスペースに収納することができる、小型車両用シートの薄型サスペンション装置を提供する。
【解決手段】本薄型サスペンション装置は、車両の床面側に設置されるロアフレームと、該ロアフレームの上部に配置され、車両用シートの背もたれを構成するフレームの下部に一体的に設けられるアッパーフレームと、ロアフレームとアッパーフレームの左右側面にそれぞれ配置され、ロアフレームに対してアッパーフレームを上下に並進移動可能にするための平行リンク機構を構成する前方リンク及び後方リンク、互いに平行となる一端と他端をもつトーションバーと、前方リンクのそれぞれの一端が回転自在に支持される支持点を結ぶ直線と平行にトーションバーの一端を固定して、アッパーフレームに取り付ける取り付け部材と、前方リンクの他端に固定され、トーションバーの他端を摺動可能に支持する平面を有するブラケットとを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型車両用シートの薄型サスペンション装置であって、
車両の床面側に設置されるロアフレームと、
該ロアフレームの上部に配置され、前記車両の車両用シートの下部に設けられるアッパーフレームと、
前記ロアフレームと前記アッパーフレームの左右側面にそれぞれ配置され、前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下に並進移動可能にするための平行リンク機構を構成する前方リンク及び後方リンクと、
ここで、
左右側面に配置された前記前方リンクのそれぞれの一端は、前記アッパーフレームに支持点を中心に回動自在に支持され、前記前方リンクのそれぞれの他端は、前記ロアフレームに支持点を中心に回動自在に支持され、
左右側面に配置された前記後方リンクのそれぞれの一端は、前記アッパーフレームに支持点を中心に回動自在に支持され、前記後方リンクのそれぞれの他端は、前記ロアフレームに支持点を中心に回動自在に支持されており、
互いに平行となる一端と他端をもつトーションバーと、
前記前方リンクのそれぞれの一端が回転自在に支持される前記支持点を結ぶ直線と平行に前記トーションバーの一端を固定して、前記アッパーフレームに取り付ける取り付け部材と、
前記前方リンクの他端に固定され、前記トーションバーの他端を摺動可能に支持する平面を有するブラケットと、
を有し、
前記トーションバーには、前記トーションバーの一端が固定されたとき、前記トーションバーの他端に、前記トーションバーの一端を中心とする回転力が生ずるように捩じれが加えられており、
前記トーションバーの他端が前記ブラケットに前記回転力を作用させるとき、前記前方リンクが前記アッパーフレームに回動自在に支持された支持点を中心としたトルクが前記前方リンクに生じ、その結果前記アッパーフレームは、前記ロアフレームに対して並進移動しながら上昇する、ことを特徴とする車両用シートの薄型サスペンション装置。
【請求項2】
前記取付け部材が、前記アッパーフレームにそって移動可能に設けられ、前記取付け部材を移動させると、前記トルクが変化する、請求項1に記載の車両用シートの薄型サスペンション装置。
【請求項3】
互いに平行となる一端と他端もつ第二のトーションバーと、
前記第一の前記トーションバーとは対称的にかつ干渉しないように配置された前記第二のトーションバーの一端を前記直線と平行に固定して、前記アッパーフレームに取り付けるための第二の取り付け部材と、
前記アッパーフレームに固定され、前記第二のトーションバーの前記他端を摺動可能に支持する平面を有する第二のブラケットと、
をさらに有し、
前記第二のトーションバーには、前記第二のトーションバーの一端が固定されたとき、前記第二のトーションバーの他端に、前記第二のトーションバーの一端を中心とする回転力が生ずるように捩じれが加えられており、
前記第二のトーションバーの他端が前記第二のブラケットに前記回転力を作用させるとき、前記前方リンクが前記アッパーフレームに回動自在に支持された支持点を中心としたトルクが生じる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の小型車両用シートの薄型サスペンション装置。
【請求項4】
さらに、前記アッパーフレームにそって移動可能なロッドを備え、
該ロッドに前記取付け部材及び前記第二の取付け部材が固定され、
前記ロッドの移動により前記取付け部材及び前記第二の取付け部材を移動させると、前記トルクが変化する、ことを特徴とする請求項3に記載の小型車両用シートの薄型サスペンション装置。
【請求項5】
前記第一のトーションバーと前記第二のトーションバーは同じ略S字の形状をもつ、ことを特徴とする請求項3に記載の小型車両用シートの薄型サスペンション装置。
【請求項6】
前記ロッドの移動により、前記トーションバーの他端が前記ブラケットの前記平面上を摺動し、前記第二のトーションバーの他端が前記第二のブラケットの前記平面上を摺動できるように、前記ブラケットの前記平面及び前記第二のブラケット前記平面は傾斜している、ことを特徴とする請求項4に記載の小型車両用シートの薄型サスペンション装置。
【請求項7】
前記アッパーフレームと前記ロアフレームとがテザーベルトで連結され、
前記テザーベルトは、前記アッパーフレームの並進移動による上昇を妨げない長さをもつ、請求項1に記載の小型車両用シートの薄型サスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型トラックなどの小型車両の座席シートの薄型サスペンション装置に関し、特に、エアスプリングを備えることなくサスペンション機構を備え、さらに搭乗者の体重の差異に応じたサスペンション機構を備えた、小型車両用シートの薄型サスペンション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の運転を快適かつ安全に行うために、車両用シートの高さを搭乗者の体型に適合した所望の位置に設定可能とし、衝撃や振動等を的確に減衰吸収させるエア薄型サスペンション装置が車両用シートに使用されている。
【0003】
このエア薄型サスペンション装置は、車両用シートの高さ変動に応じて、エアスプリングに外部から空気を供給、又はエアスプリングから空気を外部に排気させることで、搭乗者の体重の軽重によらず所定の設定高さの基準位置に調整維持する機能を有するものである(特許文献1、2)。
【0004】
エアスプリングを利用したエアサスペンション機構は、エアスプリングを含む複雑な装置構成と制御動作を伴うものが多く、これを収容するスペースを必要としている。
【0005】
エアスプリングに代えて捩じれが加えられたトーションバーの復元力により、車両用シートを上昇させる機構も考えられるが、復元力は最初が大きいため、最初に急激な上昇(突き上げ感)があり、そして捩じれが解けてくると復元力が小さくなってしまう。
【0006】
座席シートに搭乗する者の体重により、たとえば体重が重い搭乗者の場合には、強く車両用シートを押し上げることが望ましく、逆に体重が軽い搭乗者の場合には、弱く車両用シートを押し上げることが望ましいが、トーションバー自体の物性を体重に対応して変化させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-241270公報
【特許文献2】特開2014-162397公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
小型トラックのような小型車両では、上記エア薄型サスペンション装置を収容するスペースの確保は困難である。そのため、収納するスペースに収まる装置が必要となる。
【0009】
さらに、小型車両であっても、搭乗者の体重に対応してサスペンション機能を果たす必要がある。
【0010】
さらにまた、装置の操作が、限定されたスペースで、可能でなければならない。
【0011】
かかる課題を解決するために、本発明は、限定されたスペースに収納することができる、小型車両用シートの薄型サスペンション装置を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明の目的は、搭乗者の様々な体重に対応できる、上記小型車両用シートの薄型サスペンション装置を提供することである。
【0013】
さらにまた、本発明の目的は、装置を限定されたスペースでかつ容易に操作することができる、上記小型車両用シートの薄型サスペンション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置は、
車両の床面側に設置されるロアフレームと、
該ロアフレームの上部に配置され、前記車両用シートの背もたれを構成するフレームの下部に一体的に設けられるアッパーフレームと、
前記ロアフレームと前記アッパーフレームとの間の左右側面にそれぞれ配置され、前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下に並行移動可能にするために平行リンク機構を構成する前方リンク及び後方リンクと(ここで、左右側面に配置された前記前方リンクのそれぞれの一端は、前記アッパーフレームに支持点を中心に回動自在に支持され、前記前方リンクのそれぞれの他端は、前記ロアフレームに支持点を中心に回動自在に支持され、左右側面に配置された前記後方リンクのそれぞれの一端は、前記アッパーフレームに支持点を中心に回動自在に支持され、前記後方リンクのそれぞれの他端は、前記ロアフレームに支持点を中心に回動自在に支持されており)、
互いに平行となる一端と他端をもつトーションバーと、
前記前方リンクのそれぞれの一端が回転自在に支持される前記支持点を結ぶ直線と平行に前記トーションバーの一端を固定して、前記アッパーフレームに取り付ける取り付け部材と、
前記前方リンクの他端に固定され、前記トーションバーの他端を摺動可能に支持する平面を有するブラケットと、
を有する。
【0015】
前記トーションバーには、前記トーションバーの一端が固定されたとき、前記トーションバーの他端に、前記トーションバーの一端を中心とする回転力が生ずるように捩じれが加えられている。
【0016】
前記トーションバーの他端が前記ブラケットに前記回転力を作用させるとき、前記前方リンクは前記アッパーフレームに回動自在に支持された支持点を中心としたトルクが前記前方リンクに生じ、その結果前記アッパーフレームは、前記ロアフレームに対して並進移動しながら上昇する。
【0017】
前記取付け部材が、前記アッパーフレームにそって移動可能に設けられ、前記取付け部材を移動させると、前記トルクが変化する。
【0018】
本小型車両用シートの薄型サスペンション装置は、さらに、
互いに平行となる一端と他端もつ第二のトーションバーと、
前記第一の前記トーションバーとは対称的にかつ干渉しないように配置された前記第二のトーションバーの一端を前記直線と平行に固定して、前記アッパーフレームに取り付けるための第二の取り付け部材と、
前記アッパーフレームに固定され、前記第二のトーションバーの前記他端を摺動可能に支持する平面を有する第二のブラケットと、
をさらに有することができる。
【0019】
前記第二のトーションバーには、前記第二のトーションバーの一端が固定されたとき、前記第二のトーションバーの他端に、前記第二のトーションバーの一端を中心とする回転力が生ずるように捩じれが加えられている。
【0020】
前記第二のトーションバーの他端が前記第二のブラケットに前記回転力を作用させるとき、前記前方リンクは前記アッパーフレームに回動自在に支持された支持点を中心としたトルクが生じる、
前記本小型車両の薄型サスペンション装置は、さらに、前記アッパーフレームにそって移動可能なロッドを備え、該ロッドに前記取付け部材及び前記第二の取付け部材が固定される。前記ロッドの移動により前記取付け部材及び前記第二の取付け部材を移動させると、前記トルクが変化する。
【0021】
前記第一のトーションバーと前記第二のトーションバーは同じ略S字の形状とすることできる。
【0022】
前記ロッドの移動により、前記トーションバーの他端が前記ブラケットの前記平面上を摺動でき、前記第二のトーションバーの他端が前記第二のブラケットの前記平面上を摺動できるように、前記ブラケットの前記平面及び前記第二のブラケット前記平面は傾斜している。
【0023】
前記アッパーフレームと前記ロアフレームとは、前記アッパーフレームの並進移動により上昇を妨げない長さをもつテザーベルトで連結されてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明にしたがった小型車両用シートの薄型サスペンション装置は、ロアフレームに対してアッパーフレームを上昇させる力がトーションバーによるため、薄型サスペンション装置の機構が簡素化され、小型車両用シートが配置される限定されたスペースに据え付けることができる。
【0025】
さらに、この装置に利用されるトーションバーの一端は、アッパーフレームに設けられる取り付け部材に固定されるが、その他端は、前方リンクの他端に固定されたブラケットの平面上を摺動可能に支持されることから、ロアフレームに対してアッパーフレームが上昇して、トーションバーのブラケットに作用する回転力が小さくなっても、トルク自体は実質的に維持され、アッパーフレームは円滑に上昇する。
【0026】
また、取り付け部材をアッパーフレームにそって移動させると、前方リンクに生ずるトルクが変化することから、搭乗者の体重に対応させてトルクを設定することができる。
【0027】
さらにまた、車両用シートの背もたれを構成するフレームとアッパーフレームが一体的に構成されることから、車両用シートが一層小型化され、簡素化される。
【0028】
アッパーフレームとロアフレームとがテザーベルトで連結されることにより、衝突のような過度の荷重を受けても、荷重がロア―フレームに伝えられるために、サスペンション装置の変形が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1(a)は、車両用シートの背もたれを構成するフレームの下部が一体的に設けられた本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の斜視図であり、
図1(b)は同装置の側面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の上方から見た斜視図であり、
図2(b)は、下方からみた同装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の平面図である。
【
図4】
図4は、
図3の本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の線A-Aにそった端面図である。
【
図5】
図5は、
図3の本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の線B-Bにそった端面図である。
【
図6】
図6は、
図3の本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の線C-Cにそった端面図である。
【
図7】
図7は、
図3の本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の線D-Dにそった端面図である。
【
図8】
図8は、
図3の本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の線E-Eにそった端面図である。
【
図9】
図9は、
図3の本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の線F-Fにそった端面図である。
【
図10】
図10は、本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置が備える昇降機構の説明図である(搭載者の体重が130kg程度の場合で、最下段の状態)。
【
図11】
図11は、本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置が備える昇降機構の説明図である(搭載者の体重が130kg程度の場合で、最上段の状態)。
【
図12】
図12は、本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置が備える昇降機構の説明図である(搭載者の体重が50kg程度の場合で、最下段の状態)。
【
図13】
図13は、本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置が備える昇降機構の説明図である(搭載者の体重が50kg程度の場合で、最上段の状態)。
【
図14】
図14(a)は本発明の他の実施例の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の右側面図であり、
図14(b)は同装置の右上方から見た斜視図であり、
図14(c)は同装置の左上方から見た斜視図である。
【
図15】
図15(a)はトーションバーの一端をロッド(体重調整シャフトが螺合するネジ穴も示す)に取り付ける構造を示し、
図15(b)はトーションバーの一端をロッドに取り付ける他の構造(体重調整シャフトが螺合するネジ穴(ナット)が設けられたブラケットも示す)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置1が、
図1及び2に示されている。
図1(a)は、車両用シートの背もたれを構成するフレーム2の下部が一体的に組み付けられた状態の薄型サスペンション装置の斜視図であり、
図1(b)は同装置の側面図である。
図2(a)は、薄型サスペンション装置の上からみた斜視図であり、
図2(b)は薄型サスペンション装置の下からみた斜視図である。
【0031】
図1(a)、(b)、
図2(a)、(b)に示されているように、薄型サスペンション装置1は、車両の床面又は床面上のスライドレールに取り付けられるロアフレーム3と、ロアフレーム3の上部に配置され、車両用シート(図示せず)の背もたれを構成するフレームの下部に一体的に設けられるアッパーフレーム4とから構成されている。
【0032】
従来は、アッパーフレームの上にシートクッションフレームが取り付けられているが、本発明では、車両用シートの背もたれを構成するフレームとアッパーフレームを一体的に構成されることから、車両用シートが一層小型化され、簡素化される。
【0033】
ロアフレーム3は、左右の側面側が断面U字形状の部材(
図2(a)、(b)、
図3を参照)から構成され、ロアフレーム同士の前方には第一のロッド5が、支持点を中心に回転自在に支持されている。ロアフレーム同士の後方には、後部連結部材6が固定されている。
【0034】
アッパーフレーム4は、下側に断面U字形状をもつ左右の部材7a、7b(
図2(b))と、それらの前方を連結するU字形のパイプ部材8とから構成されるものである。アッパーフレーム4の部材7a、7b同士にはパイプ部材9が連結され、さらに車両用シートを支持するための面部材10が備え付けられ、パイプ部材8に連結部材11が固定されている。
【0035】
本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の特徴の一つとして、ロアフレームに対してアッパーフレームを上下に並進移動可能にするためのへ平行リンク機構を構成する前方リンク20a、20b及び後方リンク22a、22bが、アッパーフレーム及びロアフレームの左右に対称的に備えられていることである。
【0036】
左右の前方リンク20a、20bの一端は、
図2(b)、
図3によく示されているように、アッパーフレーム4に固定されている連結部材11の裏面に固定された固定具12a、12bに支持点を中心に回動自在に支持されている。
【0037】
左右の前方リンク20a、20bの他端は、
図2(b)、
図8によく示されているように、ロアフレーム3に回転自在に取り付けられている第一のロッド5に固定されている。第一のロッド5は、ロアフレーム3に支持点を中心に回転自在支持されていることから、前方リンク20a、20bは、その支持点を中心に回動自在に支持されていることになる。
【0038】
左右の後方リンク22a、22bの一端は、
図2(a)、
図5~
図9によく示されているように、アッパーフレーム4に支持点を中心に回動自在支持されている。
【0039】
左右の後方リンク22a、22bの他端は、
図2(a)、
図5~
図9によく示されているように、ロアフレーム3に支持点を中心に回動自在支持されている。
【0040】
これらリンクは、アッパーフレームの内側に配置されることから、サスペンション装置を小型にすることができる。
【0041】
本発明の小型車両用シートの他の実施例の薄型サスペンション装置101が
図14に図示されている。
図14(a)は他の実施例の薄型サスペンション装置の右側面図であり、
図14(b)は他の実施例の薄型サスペンション装置の右前方斜視図であり、
図14(c)は他の実施例の薄型サスペンション装置の右前方斜視図である。この薄型サスペンション装置101の構成と、薄型サスペンション装置1の構成とは基本的には同じであり、詳細な説明は省略する。
【0042】
この実施例においても、後方リンク122a、122bがアッパーフレーム104、ロアフレーム103に回動自在に支持さてれているが、後部連結部材106の端部が、後方リンク122a、122bに固定されている点について、薄型サスペンション装置1と異なる。
【0043】
図8に示されているように、前方リンク20a(20b)と後方リンク22a(22b)とで平行リンク機構が形成され、両リンクの回動にともない、アッパーフレーム4は、ロアフレーム3に対して上下に並進移動することができる。
【0044】
第一のロッド5と後部連結部材6との間に、ショックアブソーバー13が取り付けられているが(
図2(b)、
図4、
図5)、アッパーフレーム4がロアフレーム3に対して急激に上下動しないようにするためである。
【0045】
他の実施例(
図14)では、ショックアブソーバーを設けないで、急激な上下動を調節するもので、U字形(又は逆U字形)のダンパーゴムDRがアッパーフレーム4に複数個下向きに取り付けられ、ロアフレーム3に複数個上向きに取り付けられている(好適には四隅)。これらのダンパーゴムDRは、アッパーフレームの最下降位置付近で圧縮される。また、下述するようにトーションバーの他端に被せられた樹脂製又は金属製キャップ、或はその他端に設けられたローラーやベアリングが摺動抵抗を発生させる。これらの作用が、アッパーフレームの急激な下降を緩和する。
【0046】
上述のとおり、車両用シートの背もたれを構成するフレームがアッパーフレームに一体的に設けられているために、シートベルトバックルBがアッパーフレーム104に取り付けられている。
【0047】
さらに、アッパーフレームとロアフレームとがテザーベルトTBより連結される。テザーベルトは、前記アッパーフレームの並進移動による上昇を妨げない長さである。
【0048】
車両が、たとえば衝突のような過度の荷重を受けたとき、荷重はシートベルト(図示せず)、シートベルトバックルBを介してアッパーフレームに伝えられるが、アッパープフレーム4とロアプフレーム3とはテザーベルトTBにより連結されていることから、その衝撃は、ロアフレーム3にも伝えられる。その結果、サスペンション装置の変形が抑制される。
【0049】
本発明の小型車両用シートの薄型サスペンション装置の他の特徴として、下述するとおり、トーションバーが備えられ、トーションバーの捩じれに基づいたリンクに発生するトルクにより、アッパーフレーム4がロアフレーム3に対して上下動するが、搭乗者の体重に対応してトルクを変化させることができる体重調節機構をもつことである。さらに、そのトルクがアッパーフレームの上下動に関わらず実質的に変動しない構成をもつことである。
【0050】
体重調節機構30の構成を説明する。体重調節機構30は、その断面図が、
図5に示されているが、平行に対面する前壁部31と後壁部31’と、同じく平行に対面する側壁部32、32’を有する枠33を有する。枠部材33はパイプ部材8と連結部材11の前方裏側に固定される。
【0051】
前壁部31と後壁部31’には対応して穴が設けられ、両側壁部32、32’には、同じ形状の凹部が形成されている。これら凹部内に前述の前方リンクの一端の支持点同士を結ぶ直線に平行に配置されるロッド35にネジ穴が形成されている(
図15(a)を参照)。このネジ穴のネジと螺合するネジが形成された体重調整シャフト36が、前壁部31の穴を通り、ロッド35のネジ穴を通り、さらに、後壁部31’の穴を通るように配置される。体重調整シャフト36の外側端部には、
図2ないし
図5に示されているとおり、体重調整ダイヤル36’が固定されている。
【0052】
体重調整シャフト36は、前壁部31と後壁部31’の穴に関しては、空回りする(その軸線方向に進退しない)が、体重調整シャフト36のネジとロッド35のネジ穴とは螺合することから、体重調整ダイヤル36’を回転させると、凹部内に位置するロッド35は、体重調整ダイヤル回転方向に従って、進退することになる。このロッド35の進退により、下述するように、搭乗者の体重に対応してトルクを変化させることができる。
【0053】
ロッド35には、下述するトーションバーの一端を固定して取り付けるための取り付け部材37a、37bが固定されている(
図2(b)、
図6、
図7、
図15(a)を参照)。ロッド35の設けられたネジ穴(
図15(a)を参照)に体重調整シャフト36が螺合する。
【0054】
他の実施例(
図15(b))では、ロッド35のほぼ中央にブラケット35bが設けられ、そのブラケット35bに設けられた穴にナット35nが固定され、そのナット35nと体重調整シャフト36とが螺合する。このように、ブラケット35bを介在させることにより、体重調整シャフト36の配置場所を変更することができる。
【0055】
前方リンクの他端が固定された第一のロッド5(ロアフレーム3に支持点を中心に回転自在支持されている)には、同じく下述するトーションバーの他端を摺動可能に支持するブラケット40a、40bが固定されている。したがって、ブラケット40a、40bは前方リンクに固定されていたことにより、前方リンクが回動すると、第一のロッド5を介しブラケットも回動する。
【0056】
ブラケット40a(40b)のそれぞれは、略三角形で対面する側壁41a、41a’(41b、41b’)とその底部を連結する平面部42a(42b)とから構成され、その平面部42a、42b上で、トーションバーの他端が摺動可能となる。
【0057】
本発明を構成するトーションバーは、図示の実施例では二つ、互いに干渉しないように対称的に配置され、上記の取付け部材とブラケットに下述のとおりに取り付けられる。
【0058】
トーションバーは、S字形状をもち、中央が長く、両端は短く互いに平行になっている。トーションバーは、一端を固定し、その一端を中心とする回転力が他端に生ずるように捩じれが加えられているものである(つまり、一端を固定し、その一端を中心として他端を回転させると(捩じると)、トーションバーの復元力により、他端は元の位置に戻ろうとする(一端を中心とする)回転力が生ずる)。この回転力(復元力)により、アッパーフレームが、ロアフレームに対して上昇することが可能となる。
【0059】
図2(b)、
図15(a)に示されているとおり、一方のトーションバーT1の一端R1は、上記の直線と平行になるように、ロッド35の取り付け部材37aに固定される。一方、トーションバーT1の他端R2(一端R1と平行になっている)は、第一のロッド5に固定されたブラケット40aの平坦部42a上に単に配置され、摺動可能となっている(図、3、
図7を参照(ただし、この図ではブラケット40bの平坦部42b上に他のトーションバーの他端の配置を示す))。
【0060】
他方のトーションバーT2の一端R3は、二つのトーションバーが干渉しないようにずれた位置に固定された取り付け部材37b(
図15(a)を参照)に固定される。一方、トーションバーT2の他端R4(一端R3と平行になっている)は、第一のロッド5に固定されたブラケット40bの平坦部42b上に単に配置され、摺動可能となっている(
図7を参照)。
【0061】
トーションバーT1、T2の他端R2、R4には、円滑な摺動ができるように樹脂製もしくは金属製のキャップが被せられている。キャップに代え、ローラー、ベアリングを設けても良い。
【0062】
トーションバーの他端がブラケットに配置されるときは、上述のとおり、すでに捩じれが加えられており、他端は、ブラケットの平坦部に回転力(復元力)を作用させることができる。
【0063】
図示の実施例では二つのトーションバーが取り付けられているが、一つでも実施可能である。また、S字形状のほかU字形状も可能である。
【0064】
さらにまた、トーションバーの一端と他端は平行であるが、一端が固定され、他端が摺動可能で、回転力がブラケットに作用できれば、厳密に平行である必要なない。
【0065】
こうしたトーションバーはほぼ平面状であることから、アッパーフレームとロアフレーム内に配置でき、サスペンション装置を薄型にすることができる。
【0066】
つぎに、
図10から
図13を用いて、リンクに生ずるトルクを説明するとともに、および体重調整器により、トルクの大きさを調節し、搭乗者の体重に対応する体重調整を説明し、アッパーフレームが上昇してもリンクに生ずるトルクが事実上変動しないことを説明する。
【0067】
図10から
図13は、説明の簡略化のために、体重調整機構を含むアッパーフレームおよびロアフレームの前方部分を図示する。前述のとおり、捩じれが加えられたトーションバーT1、T2の他端R2、R4には回転力(復元力)に基づき、その他端が接する平坦部の地点に力が作用する。
【0068】
この力の平坦部42に垂直な方向の成分をFとし、前方リンク20a、20bの一端が回転支持された支持点から、力Fの方向にそった直線への垂線の距離をLとする。
【0069】
トーションバーT1、T2の一端R1、R3はロッド35に固定され、ロッド35の位置はアッパーリンク4に対して一定であるから、前方リンク20、20の一端が支持される支持点を中心として前方リンクに生ずるトルクはF・Lで表すことができる。
【0070】
図8に示されているように、前方リンク20a(20b)と後方リンク22a(22b)とで平行リンク機構が形成されていることから、上記トルクF・Lに基づき、両リンクが回動し、アッパーフレーム4は、ロアフレーム3に対して上下に並進移動することができる。
【0071】
図10は、搭乗者の体重が重い場合(図では130kg)を想定した場合の体重調整機構を示す。アッパーフレームが最下位に位置するようにアッパーフレームをロックしておく。次に、体重調整ダイヤルを一方向に回転させる。この回転にともない、体重調整シャフト36’は、進退することなく空回りするが、体重調整シャフト36と螺合するロッド35は後退する。ロッド35が最も奥に位置するまで、体重調整ダイヤル36’を回転させる。ロッド35に固定された取り付け部材37a、37bもそのまま後方に移動する。
【0072】
取り付け部材37a、37bに一端が固定されたトーションバーT1、T2のそれぞれの他端はブラケット40a、40bの平坦部42a、42b上で摺動し、奥へと移動する。ブラケット40a、40bが、トーションバーの端部が円滑に移動できるように、平坦面が傾斜するように(
図10では、右上がりに傾斜)、第一のロッド5に固定されている。
【0073】
図11は、搭乗者の体重が軽い場合(図では50kg)を想定した場合の体重調整機構を示すが、この場合も、アッパーフレームが最下位に位置するようにアッパーフレームをロックしておく。次に、体重調整ダイヤルを、反転させる。この回転にともない、体重調整シャフト36’は空回りするが、体重調整シャフト36と螺合するロッド35は前進する。ロッド35に固定された取り付け部材37a、37bもそのまま前方に移動する。取り付け部材37a、37bに一端が固定されたトーションバーT1、T2のそれぞれの他端はブラケット40a、40bの平坦部42a、42b上で摺動し、前方に移動する。
【0074】
他端R2、R4が手前に移動し、平坦部に作用する力Fの方向にそった直線に、支持点から下した垂線の距離Lは小さくなり、前方リンクに生ずるトルクF・Lは、130Kgの場合よりも小さい。
【0075】
このように、トーションバーの回転力(復元力)(すなわち、トーションバー自体の物性)を変更しなくとも、体重調整ダイヤルを回転させてロッド35の移動位置を変える、すなわちトーションバーの他端の位置へ変えることで、アッパーフレームを上昇させるトルクを搭乗者の体重に対応させて調整することができる。
【0076】
このように体重調整機構によりトルクを調整して搭乗者の体重の変化に対応するが、サスペンション装置はトーションバーに基づいて座席シートを上昇させるものであることから、サスペンション装置の機能を「サスペンションとしてのバネ定数」で特定することができる。 そうすると、体重調整機構は、軽い人には「サスペンションとしてのバネ定数」を低く、重い人には「サスペンションとしてのバネ定数」を高く変化させることができるものとなる。
【0077】
体重調整ダイヤルの回転は、狭いスペースで容易に行うことができることから、限定されたスペースでサスペンション装置の操作を行うことができる。
【0078】
本体重調整機構は、アッパーフレームとロアフレームの間に位置することから、本サスペンション装置は薄型になり、したがって、限定されたスペースに収納することができる。
【0079】
図10、11に示されたロックされたアッパーフレームのロックが外されると、
図12、13に示されているように、上述したトルクに基づき、前方リンク20a、20b(後方リンク22a、22bは前方リンクと平行リンクを構成することから、後方リンクも)は、前方リンク20a、20b(後方リンクも同様)の他端がロアフレームに支持された支持点を中心として、前方リンク(後方リンク)が回転し、アッパーフレーム4が上方に並進移動する。
【0080】
前方リンクが回転すると、前方リンクの他端が固定された第一のロッド5も回転する。第一のロッド5に固定されたブラケット40a、40bも回動する。トーションバーT1、T2の一端R1、R3は固定されていることから、その他端R2、R4は、ブラケットの平坦部41’a、41’bにそって摺動しながら奥(後方)に移動する。このとき、トーションバーT1、T2の捩じれは解けてくる。しかし、支持点から力のFを通る直線への垂線Lは長くなり、トルク・Lは実質的に変化しない。
【0081】
トルクF・Lが実質的に変化しなければ、アッパーフレームを押し上げる力は維持され、所定の高さまで座席シートを円滑に上昇させることができる。
【0082】
アッパーフレーム4(104)を元の位置に戻すためには、アッパーフレームを上からトーションバーの捩じれ抗して押さえつける。このとき、トーションバーの他端R2、R4は平坦部41’a、41b’にそって摺動しながら手前(前方)に移動する。アッパーフレームが最下位に位置したときロックする。
【0083】
本発明の薄型サスペンション装置が組み付けられる小型車両シートは、体重が50kgから130kgと幅広い体重の搭乗者に対して利用できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、この実施形態や実施例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の思想を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその実施例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された考案に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 薄型サスペンション装置
2 フレーム
3(103) ロアフレーム
4(104) アッパーフレーム
5 第一のロッド
6(106) 後部連結部材
7a(107a)、7b(107b) 部材
8 U字形パイプ部材
9 パイプ部材
10 面部材
11 連結部材
12 固定具
20a、20b 前方リンク
22a(122a)、22b(122b) 後方リンク
30 体重調整機構
31 前壁部
31’ 後壁部
32、32’ 側壁部
33 枠部材
35(35’) ロッド
35b ブラケット
35n ナット
36 体重調整シャフト
36’ 体重調整ダイヤル
37a、37b 取り付け部材
40a、40b ブラケット
41a、41b 側壁
42a、42b 平面部
T1、T2 トーションバー
R1、R3 一端
R2、R4 他端
B シートベルトバックル
TB テザーベルト
DR ダンパーゴム