(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083345
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】樹脂粉収集用部材、プランジャユニット、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20220527BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20220527BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B29C45/26
H01L21/56 T
B29C45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194737
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】市橋 秀男
(72)【発明者】
【氏名】中山 和己
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AM10
4F202CA12
4F202CB01
4F202CS02
4F206AM10
4F206JA02
4F206JQ81
4F206JQ86
4F206JQ90
5F061AA01
5F061CA21
5F061DA12
5F061DC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉による装置の汚染を効率的に低減可能な樹脂粉収集用部材を提供する。
【解決手段】樹脂粉収集用部材100は、屋根部110と側壁部120とを含み、プランジャが取り付けられるプランジャユニットの上部に配置することが可能であり、屋根部110と側壁部120とで囲まれた空間121内に樹脂粉を収集可能であり、屋根部110には、プランジャユニットのプランジャ取付部が挿入されるためのプランジャ取付部挿入用貫通孔101と、樹脂粉が空間121内に落ちるための樹脂粉落下用貫通孔102とが形成され、屋根部上面110は、プランジャ取付部挿入用貫通孔101及びプランジャ取付部挿入用貫通孔101とは反対側から樹脂粉落下用貫通孔102に向かって凹状に傾斜していることを特徴とする樹脂粉収集用部材100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉を収集するのに用いる樹脂粉収集用部材であって、
前記樹脂粉収集用部材は、屋根部と側壁部とを含み、前記プランジャが取り付けられるプランジャユニットの上部に配置することが可能であり、
前記屋根部と前記側壁部とで囲まれた空間内に樹脂粉を収集可能であり、
前記屋根部には、前記プランジャユニットのプランジャ取付部が挿入されるためのプランジャ取付部挿入用貫通孔と、樹脂粉が前記空間内に落ちるための樹脂粉落下用貫通孔とが形成され、
前記屋根部上面は、前記プランジャ取付部挿入用貫通孔及び前記プランジャ取付部挿入用貫通孔とは反対側から前記樹脂粉落下用貫通孔に向かって凹状に傾斜していることを特徴とする樹脂粉収集用部材。
【請求項2】
前記樹脂粉落下用貫通孔の形状が、スリット状である請求項1記載の樹脂粉収集用部材。
【請求項3】
前記樹脂粉収集用部材が前記プランジャユニットに取り付けられる取付面に投影した場合において、前記プランジャ取付部挿入用貫通孔側端部から前記樹脂粉落下用貫通孔までの距離が、前記側壁部側端部から前記樹脂粉落下用貫通孔までの距離よりも大きい請求項1又は2記載の樹脂粉収集用部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂粉収集用部材を有することを特徴とするトランスファ成形用のプランジャユニット。
【請求項5】
さらに、プランジャ取付部と、前記プランジャ取付部が内部を上下動可能な孔とを有し、前記孔の周囲に、樹脂粉落下防止用のシール材が設けられている請求項4記載のプランジャユニット。
【請求項6】
請求項4又は5記載のプランジャユニットと、樹脂成形用の成形型とを含むことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項7】
さらに、前記屋根部と前記側壁部とで囲まれた空間内を吸引するための吸引機構を含む請求項6記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の樹脂成形装置を用いて樹脂材料を成形する樹脂成形工程を含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記屋根部と前記側壁部とで囲まれた空間内に収集した樹脂粉を前記樹脂成形装置外部に廃棄する樹脂粉廃棄工程を含む、請求項8記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂成形装置が、請求項7記載の樹脂成形装置であり、前記樹脂粉廃棄工程は、前記吸引機構による吸引を停止して行う、請求項9記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粉収集用部材、プランジャユニット、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品の製造において、トランスファ成形(トランスファーモールド法などともいう)は、広く用いられている方法である。
【0003】
トランスファ成形では、樹脂カスによる装置の汚染を低減する目的で、樹脂カスを集める(収集する)ための仕組みが用いられることがある。例えば、特許文献1では、その
図1~4に記載のとおり、プランジャ(5)の先端と基端との中間部に、樹脂カスを収容する収容器(20)を、スプリング(26)を介して設け、収容器(20)の樹脂カスは除去手段(33)で吸引除去する。除去手段(33)は、空気圧送機構(34)と吸引排出機構(35)とから構成されている。ここで、樹脂カスとは、ポット内の樹脂材料をプランジャによってキャビティに押し出した際に、ポット外に移送されずに、ポットの内面とプランジャとの摺動部に侵入して生じる残りカス(残滓)のことである。樹脂カスは、トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂カスのような樹脂粉による装置の汚染を、さらに効率的に低減するために、別の構成による樹脂粉の収集も検討する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉による装置の汚染を効率的に低減可能な樹脂粉収集用部材、プランジャユニット、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の樹脂粉収集用部材は、
トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉を収集するのに用いる樹脂粉収集用部材であって、
前記樹脂粉収集用部材は、屋根部と側壁部とを含み、前記プランジャが取り付けられるプランジャユニットの上部に配置することが可能であり、
前記屋根部と前記側壁部とで囲まれた空間内に樹脂粉を収集可能であり、
前記屋根部には、前記プランジャユニットのプランジャ取付部が挿入されるためのプランジャ取付部挿入用貫通孔と、樹脂粉が前記空間内に落ちるための樹脂粉落下用貫通孔とが形成され、
前記屋根部上面は、前記プランジャ取付部挿入用貫通孔及び前記プランジャ取付部挿入用貫通孔とは反対側から前記樹脂粉落下用貫通孔に向かって凹状に傾斜していることを特徴とする。
【0008】
本発明のプランジャユニットは、前記本発明の樹脂粉収集用部材を有することを特徴とするトランスファ成形用のプランジャユニットである。
【0009】
本発明の樹脂成形装置は、前記本発明のプランジャユニットと、樹脂成形用の成形型とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、前記本発明の樹脂成形装置を用いて樹脂材料を成形する樹脂成形工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉による装置の汚染を効率的に低減可能な樹脂粉収集用部材、プランジャユニット、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の樹脂粉収集用部材の一例を示す図である。
図1(a)は、平面図である。
図1(b)は、下面図である。
図1(c)は、側面図である。
図1(d)は、
図1(a)のI-I’方向に見た断面図である。
図1(e)は、斜め上方向から見た斜視図である。
図1(f)は、斜め下方向から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のプランジャユニットの一例を示す図である。
図2(a)は、斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)とは異なる方向から見た斜視図である。
図2(c)は、左側面図である。
図2(d)は、正面図である。
図2(e)は、右側面図である。
図2(f)は、
図2(d)のIII-III’方向に見た断面図である。
図2(g)は、
図2(c)のII-II’方向に見た断面図である。
【
図3】
図3(a)及び(b)は、
図1の樹脂粉収集用部材及び
図2のプランジャユニットを用いた樹脂粉収集の仕組みを模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の樹脂粉収集用部材の構造の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の樹脂成形装置の一例における一部の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の樹脂粉収集用部材の構造の別の一例と、それを用いたプランジャユニットによる樹脂粉収集の仕組みとを模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、樹脂粉収集用部材を有しないプランジャユニットの一例を示す図である。
図7(a)は、斜視図である。
図7(b)は、
図7(a)とは異なる方向から見た斜視図である。
図7(c)は、左側面図である。
図7(d)は、正面図である。
図7(e)は、
図7(d)のV-V’方向に見た断面図である。
図7(g)は、
図7(c)のIV-IV’方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0014】
本発明の樹脂粉収集用部材は、例えば、前記樹脂粉落下用貫通孔の形状が、スリット状であってもよい。
【0015】
本発明の樹脂粉収集用部材は、例えば、前記樹脂粉収集用部材が前記プランジャユニットに取り付けられる取付面に投影した場合において、前記プランジャ取付部挿入用貫通孔側端部から前記樹脂粉落下用貫通孔までの距離が、前記側壁部側端部から前記樹脂粉落下用貫通孔までの距離よりも大きくてもよい。
【0016】
本発明の樹脂粉収集用部材は、例えば、前記プランジャ取付部挿入用貫通孔の周囲に、樹脂粉落下防止用のシール材が設けられていてもよい。
【0017】
本発明のプランジャユニットは、例えば、さらに、プランジャ取付部と、前記プランジャ取付部が内部を上下動可能な孔とを有し、前記孔の周囲に、樹脂粉落下防止用のシール材が設けられていてもよい。
【0018】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、さらに、前記屋根部と前記側壁部とで囲まれた空間内を吸引するための吸引機構を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、さらに、前記屋根部と前記側壁部とで囲まれた空間内に収集した樹脂粉を前記樹脂成形装置外部に廃棄する樹脂粉廃棄工程を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、前記本発明の樹脂成形装置が、前記吸引機構を含む樹脂成形装置であり、前記樹脂粉廃棄工程は、前記吸引機構による吸引を停止して行ってもよい。
【0021】
本発明において、樹脂成形方法は、前述のとおり、トランスファ成形を用いる。
【0022】
本発明において、「成形型」は、例えば金型であるが、これに限定されず、例えば、セラミック型等であってもよい。
【0023】
本発明において、樹脂成形品は、特に限定されず、例えば、単に樹脂を成形した樹脂成形品でもよいし、チップ等の部品を樹脂封止した樹脂成形品でもよい。本発明において、樹脂成形品は、例えば、電子部品等であってもよい。電子部品としては、特に限定されず任意であり、例えば、チップ、ワイヤ等の任意の部品を樹脂封止した任意の電子部品でもよい。チップとしては、特に限定されず、例えば、IC、LEDチップ、半導体チップ、電力制御用の半導体素子等のチップが挙げられる。
【0024】
本発明において、成形前の樹脂材料及び成形後の樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を一部に含んだ複合材料であってもよい。本発明において、成形前の樹脂材料の形態としては、例えば、顆粒状樹脂、液状樹脂、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂、粉状の樹脂等が挙げられる。なお、本発明において、液状樹脂とは、常温で液状であってもよいし、加熱により溶融されて液状となる溶融樹脂も含む。
【0025】
本発明において、樹脂成形の成形対象物は、特に限定されないが、例えば、基板であってもよい。また、本発明において、例えば、基板(成形対象物)に実装された部品(例えばチップ、フリップチップ等)を樹脂封止(樹脂成形)して樹脂成形品を製造してもよい。
【0026】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
【実施例0027】
本実施例では、本発明の樹脂粉収集用部材、プランジャユニット、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。
【0028】
図1に、本発明の樹脂粉収集用部材の一例を示す。
図1(a)は、平面図である。
図1(b)は、下面図である。
図1(c)は、側面図である。
図1(d)は、
図1(a)のI-I’方向に見た断面図である。
図1(e)は、斜め上方向から見た斜視図である。
図1(f)は、斜め下方向から見た斜視図である。
【0029】
図1に示すとおり、この樹脂粉収集用部材100は、屋根部110と側壁部120とを含む。この樹脂粉収集用部材100では、屋根部110と側壁部120とは一体に形成されている。後述するように、樹脂粉収集用部材100は、プランジャユニットの上部に配置することが可能である。屋根部110と側壁部120とで囲まれた空間121内には、後述するように、トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉を収集可能である。屋根部110には、後述するプランジャユニットのプランジャ取付部が挿入されるためのプランジャ取付部挿入用貫通孔101と、樹脂粉が空間121内に落ちるための樹脂粉落下用貫通孔102とが形成されている。この樹脂粉収集用部材100は、
図1(a)及び(b)に示すように、上又は下から見て矩形をしており、9つのプランジャ取付部挿入用貫通孔101が、屋根部110の長手方向の中心に沿って直列に配置されている。なお、プランジャ取付部挿入用貫通孔101の数は、
図1では9つであるが、これに限定されず任意である。樹脂粉落下用貫通孔102は2つあり、2つのスリット状の樹脂粉落下用貫通孔102が、直列に配置された9つのプランジャ取付部挿入用貫通孔101を挟むように、屋根部110の長手方向に沿って配置されている。なお、樹脂粉落下用貫通孔102の数は、
図1では2つであるが、これに限定されず任意である。また、樹脂粉落下用貫通孔102の形状は、
図1ではスリット状であるが、これに限定されず任意である。屋根部110の上面は、樹脂粉落下用貫通孔102からプランジャ取付部挿入用貫通孔101に向かって凸状(山状)に傾斜するとともに、プランジャ取付部挿入用貫通孔101及びプランジャ取付部挿入用貫通孔101の反対側から樹脂粉落下用貫通孔102に向かって凹状(谷状)に傾斜している。これにより、トランスファ成形用成形型のポットとプランジャとの隙間から落下する樹脂粉が、プランジャ取付部挿入用貫通孔101とプランジャ取付部との隙間から落ちにくいとともに、樹脂粉落下用貫通孔102から空間121内に落ちやすくなっている。より具体的には、屋根部110は、長手方向の中心に沿って凸部111が形成され、凸部111を挟むように2本の凹部112が形成されている。そして、プランジャ取付部挿入用貫通孔101は凸部111に沿って配置され、樹脂粉落下用貫通孔102は凹部112に配置されている。また、屋根部110には、その長手方向の中心の両端部に、直列に配置された9つのプランジャ取付部挿入用貫通孔101を挟むように、2つの樹脂粉収集用部材取付部103が形成されている。樹脂粉収集用部材取付部103は、屋根部110の上面から下面まで貫通する貫通孔を有し、その貫通孔にねじ等を通すことで、後述するように、樹脂粉収集用部材100をプランジャユニット本体に取り付けることが可能である。なお、樹脂粉収集用部材取付部103は、本発明の樹脂粉収集用部材においては任意であり、あっても無くてもよく、その形態、数、配置位置等も任意である。ただし、本発明の樹脂粉収集用部材をプランジャユニット本体に固定しやすくする等の観点から、樹脂粉収集用部材取付部があることが好ましい。
【0030】
図2に、本発明のプランジャユニットの一例を示す。
図2(a)は、斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)とは異なる方向から見た斜視図である。
図2(c)は、左側面図である。
図2(d)は、正面図である。
図2(e)は、右側面図である。
図2(f)は、
図2(d)のIII-III’方向に見た断面図である。
図2(g)は、
図2(c)のII-II’方向に見た断面図である。なお、
図2(f)及び(g)は断面図であるが、図示の簡略化のために、ハッチは適宜省略して描いている。
図3以下の各断面図においても同様である。
【0031】
図示のとおり、このプランジャユニット200は、プランジャユニット本体210を主要な構成要素とする。プランジャユニット本体210の上面には、ラバー(ゴム)製のカバー部材220が固定されている。プランジャユニット本体210におけるプランジャ取付部201の周囲は、カバー部材220でカバーされており、これにより、プランジャ取付部201の駆動部分(図示している孔211内)への樹脂粉の侵入が抑制されている。さらに、プランジャユニット200は、
図1で説明した本発明の樹脂粉収集用部材100を有する。樹脂粉収集用部材100は、プランジャユニット200の上部に配置されている。より具体的には、樹脂粉収集用部材100は、
図1で説明したプランジャユニット取付部103によって、カバー部材220の上面に、ねじ止めにより固定されている。また、樹脂粉収集用部材100の一端には、吸引用部材130が取り付けられている。吸引用部材130は、内部が空洞であり、その空洞は、樹脂粉収集用部材100の屋根部110と側壁部120とで囲まれた空間121と連通している。吸引用部材130は、吸引穴131を有し、吸引穴131を介して、後述する吸引機構により、樹脂粉収集用部材100の空間121内を吸引可能である。プランジャユニット本体210は、9本の略円筒形のプランジャ取付部201を有する。また、プランジャユニット本体210は、その上部に孔211を有し、孔211は、カバー部材220の上面まで貫通している。プランジャ取付部201は、孔211の内部を上下動可能であり、プランジャ取付部201の上部は、カバー部材220の上面から突出している。
図2(f)及び(g)に示すとおり、孔211の内部には、バネ(弾性部材)212が配置されている。プランジャ取付部201は、バネ212の上に載置され、バネ212は、プランジャ取付部201の上下動とともに伸縮可能である。また、プランジャユニット本体210の左端には、棒状のレバー202が取り付けられ、さらに、レバー202の先端には、球状のノブ203が取り付けられている。
【0032】
図3(a)の断面図に、
図2のプランジャユニット200を含む本発明の樹脂成形装置における樹脂粉収集の仕組みを模式的に示す。
図3(a)の断面図は、
図2(f)と同様の断面図における上部を拡大した図である。すなわち、この図は、プランジャ取付部201が並ぶ方向に対して垂直な方向で、かつ、プランジャ取付部挿入用貫通孔101の直径の位置において切断した様子を示す断面図である。樹脂粉収集用部材100内の空間121は、吸引路801を介して吸引機構800に接続され、吸引機構800により空間121内を吸引して減圧することができる。吸引路801は、
図2で説明した吸引用部材130及び吸引穴131(
図3(a)では図示せず)を介して空間121内と連通している。また、吸引機構800は特に限定されず、例えば、吸引ポンプ、真空ポンプ等であってもよい。また、樹脂成形装置は、さらに、
図3(a)で図示していないプランジャ、ポット及び成形型を有する。プランジャは、プランジャ取付部201の上端に取り付けられている。プランジャ取付部201の上下動によって、プランジャがポット内部を上下動可能である。ポット内には樹脂材料を収容可能である。プランジャの上昇により、ポット内部の樹脂材料を成形型内に供給して樹脂成形可能である。プランジャ、ポット及び成形型の構成は、特に限定されず、例えば、一般的なトランスファ成形用の樹脂成形装置と同様であってもよい。
【0033】
図3(a)を用いて、本発明の樹脂成形装置を用いた本発明の樹脂成形品の製造方法及び樹脂粉収集の一例について説明する。まず、樹脂成形装置を用いて樹脂材料を成形する、樹脂成形工程を行う。この樹脂成形工程は、特に限定されず、例えば、一般的なトランスファ成形と同様の方法で行うことができる。前述のとおり、プランジャの上昇により、ポット内部の樹脂材料を成形型内に供給可能であり、これにより樹脂成形工程を行い、樹脂成形品を製造できる。この樹脂成形工程において、プランジャとポットとの隙間から、樹脂粉収集用部材100の屋根部110の上に、図示のとおり樹脂粉10aが落ちてくる。前述のとおり、屋根部110の上面は、プランジャ取付部挿入用貫通孔101に向かって凸状(山状)に傾斜するとともに、樹脂粉落下用貫通孔102に向かって凹状(谷状)に傾斜している。すなわち、屋根部110の上面は、樹脂粉落下用貫通孔102の部分が最も低くなっている。このため、樹脂粉10aは、図示のとおり、樹脂粉落下用貫通孔102に向かって落ちる。さらに、樹脂粉10aは、樹脂粉落下用貫通孔102から樹脂粉収集用部材100の空間121内に落ちる。このとき、空間121内を吸引機構により吸引して減圧にすることで、さらに樹脂粉10aが空間121内に落ちやすくなり、樹脂粉10aの収集がしやすくなる。なお、本発明において、吸引機構800は任意であり、あってもなくてもよい。また、吸引機構800による吸引も任意であり、行っても行わなくてもよい。しかし、前述のとおり、吸引機構800による吸引を行うと、さらに樹脂粉10aの収集がしやすくなるため好ましい。また、吸引機構800による吸引を行うタイミングも特に限定されない。例えば、樹脂成形工程を行うに先立ち、あらかじめ吸引機構800によって空間121内を吸引し、減圧にすることが好ましい。また、この吸引による空間121内の減圧は、樹脂成形工程が終了するまで持続させることが好ましい。なお、吸引機構800による吸引により、空間121内の樹脂粉10aを集塵することになる。さらに、樹脂成形品の製造方法において、樹脂成形工程後に、さらに、樹脂粉収集用部材100の空間121内から吸引機構800により集塵した樹脂粉10aを樹脂成形装置外部に廃棄する樹脂粉廃棄工程を行ってもよい。この樹脂粉廃棄工程は、吸引機構800による吸引を停止して行ってもよい。この樹脂粉廃棄工程は、例えば、自動で行うようにしてもよく、その方法は特に限定されないが、例えば、空間121内から吸引機構800により集塵した樹脂粉10aを、吸引機構800とは別の吸引機構(図示せず)により吸引して除去してもよい。この場合、集塵力を高く保つためには、吸引機構800による吸引は、樹脂粉10a除去用の別の吸引機構による吸引を停止して行うことが好ましい。
【0034】
図3(b)の断面図に、
図3(a)の変形例を示す。
図3(b)のプランジャユニット200は、図示のとおり、樹脂粉落下防止用のシール材(Oリング)701及び702を有すること以外は、
図3(a)のプランジャユニット200と同じである。Oリング701は、図示のとおり、プランジャユニット本体210及びカバー部材220の孔211(プランジャ取付部201が内部を上下動可能な孔)の周囲に設けられている。Oリング701により、樹脂粉10aが孔211内に落ちることをさらに低減できる。また、Oリング702は、樹脂粉収集用部材100の一部を構成している。
図3(b)の樹脂粉収集用部材100は、Oリング702を有すること以外は、
図1、2及び3(a)の樹脂粉収集用部材100と同じである。図示のとおり、Oリング702は、プランジャ取付部挿入用貫通孔101の周囲に設けられている。Oリング702により、樹脂粉10aがプランジャ取付部挿入用貫通孔101内に落ちることをさらに低減できる。
図3(b)のプランジャユニットを含む樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法及び樹脂粉の収集を行う方法は、特に限定されず、例えば、
図3(a)と同様の方法で行うことができる。
【0035】
なお、本発明の樹脂成形装置の構成は、本発明のプランジャユニットと、樹脂成形用の成形型とを含むこと以外は、特に限定されず、任意である。例えば、本発明の樹脂成形装置の構成は、プランジャユニットが本発明のプランジャユニットであること以外は、一般的なトランスファ成形用の樹脂成形装置と同様であってもよい。例えば、
図2のプランジャユニット200を含む本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、さらに、プランジャ、ポット及び成形型を有していてもよい。
図5の断面図に、そのような樹脂成形装置の構成の一例を示す。同図では、樹脂成形装置の要部のみ示している。図示のとおり、この樹脂成形装置1000は、プランジャユニット200と、ベース部材300と、プランジャ400と、下型500及び上型600により構成された成形型と、下型チェイスフォルダ510とを主要構成要素とする。ベース部材300の中心部には、プランジャユニット200を配置するための空間が形成され、プランジャユニット200はその空間内に配置されている。プランジャ400は、プランジャユニット200におけるプランジャ取付部201の上端に取り付けられている。ベース部材300上には下型チェイスフォルダ510が載置されている。下型チェイスフォルダ510上には下型500が載置されている。さらに、下型500の上方には上型600が配置されている。上型600の型面(下型500と対向する側の面)には、型キャビティ601が形成され、型キャビティ601内で樹脂成形が可能である。下型500には貫通孔501が形成され、貫通孔501が、樹脂材料収容用のポットになっている。プランジャ400は、貫通孔501内部を上下動可能である。下型500を、ベース部材300及び下型チェイスフォルダ510とともに上下動させることで、下型500と上型600とを型締め及び型開きすることができる。図示のとおり、型締めして下型600の上面と上型600の型面とを接触させることで、樹脂成形を行うことができる。より具体的には、この状態でプランジャ400を上昇させることで、貫通孔501(ポット)内の樹脂材料10を型キャビティ601内に注入し、樹脂成形することができる。なお、図の樹脂材料10は液状樹脂であるが、例えば、室温で液状である樹脂でもよいし、加熱して溶融させ液状にした樹脂であってもよい。この樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法及び樹脂粉の収集を行う方法は、特に限定されず、例えば、前述の
図3(a)を用いて説明したとおりに行うことができる。
【0036】
また、
図7に、樹脂粉収集用部材を有しないプランジャユニットの構成の一例を示す。
図7(a)は、斜視図である。
図7(b)は、
図7(a)とは異なる方向から見た斜視図である。
図7(c)は、左側面図である。
図7(d)は、正面図である。
図7(e)は、
図7(d)のV-V’方向に見た断面図である。
図7(g)は、
図7(c)のIV-IV’方向に見た断面図である。
図7に示すプランジャユニット200aは、樹脂粉収集用部材100及び吸引用部材130を有しないことと、カバー部材220に代えてカバー部材220aを有すること以外は、
図2のプランジャユニット200と同じである。カバー部材220aは、樹脂粉収集用部材100取付用のねじ穴を有しないこと以外は、
図2のカバー部材220と同じである。
【0037】
図7のように樹脂粉収集用部材を有しないプランジャユニットを用いて樹脂成形品の製造を行なった場合、ポットとプランジャの隙間から落ちた樹脂粉が、カバー部材200の上面に溜まることになる。このカバー部材200上面に溜まった樹脂粉を、定期的に手動でクリーニングして除去する必要がある。クリーニング不足でたまった樹脂粉が、カバー部材200上面から落ちてプランジャ本体内の等圧装置部分又はプランジャ取付部201の駆動部分(図示している孔211内)に侵入すると、プランジャの動作不良に繋がるおそれがある。そこで、
図1~3で説明したように、本発明の収集用部材100を用いれば、樹脂粉10aがカバー部材200上面から落ちることを低減できるため、樹脂粉10aがプランジャ本体内の等圧装置部分又はプランジャ取付部201の駆動部分等に進入することを低減可能であり、プランジャの動作不良をも低減できる。本発明の樹脂粉収集用部材を用いれば、
図7のように樹脂粉収集用部材を有しない場合と比較して、樹脂粉のクリーニングを頻繁に行う必要がない。このため、本発明によれば、樹脂粉の収集を効率的に行うことができ、その結果、樹脂成形品の製造も効率的に行うことができる。また、本発明によれば、例えば、前述のとおり、溜まった樹脂粉を、吸引等によって自動的に除去することも可能である。これによれば、樹脂粉の収集をさらに効率的に行うことができる。
【0038】
また、本発明の樹脂粉収集用部材は、前述のとおり、屋根部を有する。これにより、本発明の樹脂粉収集用部材の上端において、プランジャ取付部挿入用貫通孔及び樹脂粉落下用貫通孔以外の部分は、常に閉じておくことができる。これにより、例えば、吸引又は空気の圧送等を行った際に、樹脂粉収集用部材内に収容された樹脂粉が上方から収集部材の外に舞い上がることを低減できる。これにより、例えば、特許文献1よりもさらに効率のよい樹脂粉の収集を行うことも可能である。
【0039】
また、本発明の樹脂粉収集用部材は、例えば、前述のとおり、樹脂粉収集用部材がプランジャユニットに取り付けられる取付面に投影した場合において、プランジャ取付部挿入用貫通孔側端部から樹脂粉落下用貫通孔までの距離が、側壁部側端部から樹脂粉落下用貫通孔までの距離よりも大きくてもよい。
図4の断面図に、その一例を示す。
図4は、
図2(f)又は
図3(a)において、樹脂粉収集用部材100及びプランジャ取付部201の部分のみを示した断面図である。図示のとおり、樹脂粉収集用部材100は、樹脂粉収集用部材100がプランジャユニット本体210に取り付けられる取付面140に投影した場合において、プランジャ取付部挿入用貫通孔101側端部から樹脂粉落下用貫通孔102までの距離l2が、側壁部120側端部から樹脂粉落下用貫通孔102までの距離l1よりも大きい。これにより、図示のとおり、プランジャ取付部挿入用貫通孔101側端部から樹脂粉落下用貫通孔102までの傾斜面の傾斜角φがなだらかになっている。したがって、プランジャが摺動(上下動)する摺動隙間から鉛直方向に落下する樹脂粉が、プランジャ取付部201とプランジャ取付部挿入用貫通孔101との隙間から、樹脂粉収集用部材100の空間121内に落下することを低減できる。これにより、空間121内におけるプランジャ取付部201周囲の空間121内部にある領域Xに溜まる樹脂粉を低減できる。したがって、樹脂粉がプランジャユニット本体210及びカバー部材220の孔211(プランジャ取付部201が内部を上下動可能な孔、
図2参照)に入り込むことを低減できる。よって、樹脂粉がプランジャ本体内の等圧装置部分又はプランジャ取付部201の駆動部分等に進入することを、さらに低減可能であり、プランジャの動作不良をさらに低減できる。また、
図3(b)のOリング701及び702の一方又は両方を併用することで、樹脂粉がプランジャユニット本体210及びカバー部材220の孔211に入り込むことを、さらに効果的に低減できる。なお、
図4の樹脂粉収集用部材100では、図示のとおり、側壁部120側端部から樹脂粉落下用貫通孔102までの傾斜面(外側傾斜面)の傾斜角θと、プランジャ取付部挿入用貫通孔101側端部から樹脂粉落下用貫通孔102までの傾斜面(内側傾斜面)の傾斜角φとの関係は、θ>φとなっている。また、屋根部底面から外側傾斜面頂点までの高さt1と、屋根部底部から内側傾斜面頂点までの高さt2との関係は、t1>t2となっている。さらに、同図では、樹脂粉収集用部材100の左半分の寸法のみ示しているが、左右対称であるため、右半分も左半分と同寸である。
【0040】
また、本発明の樹脂粉収集用部材の構造、形状、製造方法等は、
図1~4に示した例に限定されない。例えば、
図1~4に示した樹脂粉収集用部材100は、金属製ブロック状材料の切削加工等により製造できる。しかし、本発明の樹脂粉収集用部材は、これに限定されず、例えば、金属製平板状材料を折り曲げる板金加工等の塑性加工により製造してもよい。
図6の断面図に、そのような本発明の樹脂粉収集用部材の構造の一例を示すとともに、それを用いたプランジャユニットによる樹脂粉収集の仕組みを模式的に示す。
図6は、
図2のプランジャユニット200に本発明の樹脂粉収集用部材100aを取り付けた状態を示す図である。
図6は、樹脂粉収集用部材100を樹脂粉収集用部材100aに変更したこと以外は
図3(a)と同じである。また、
図6のプランジャユニットを含む樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法及び樹脂粉の収集を行う方法は、特に限定されず、例えば、
図3(a)と同様の方法で行うことができる。樹脂粉収集用部材100aは、屋根部110に代えて屋根部110aを有し、側壁部120に代えて側壁部120aを有すること以外は、
図1~4の樹脂粉収集用部材100と同様である。屋根部110aは、形状が平板状であること以外は屋根部110と同様である。屋根部110aの上面の形状は、樹脂粉収集用部材100の屋根部110と同様である。すなわち、屋根部110aの上面は、屋根部110と同様に、プランジャ取付部挿入用貫通孔101に向かって凸状(山状)に傾斜するとともに、樹脂粉落下用貫通孔102に向かって凹状(谷状)に傾斜している。これにより、樹脂粉10aが樹脂粉落下用貫通孔102に向かって落ちやすくなっている。また、
図6の屋根部110aでは、図示のとおり、樹脂粉落下用貫通孔102において、外側(側壁部120a側)の屋根部110aの端部が、内側(プランジャ取付部挿入用貫通孔101側)の端部の下方に入り込んでいる。このような構成により、空間121内に入り込んだ樹脂粉10aが樹脂粉落下用貫通孔102から出にくくなる。また、この樹脂粉収集用部材100aは、例えば、前述のとおり、金属製平板状材料を折り曲げる板金加工等の塑性加工により製造することができる。より具体的には、例えば、1枚の金属製平板状材料に孔を開けてプランジャ取付部挿入用貫通孔101、樹脂粉落下用貫通孔102等を形成するとともに、その1枚の金属製平板状材料を折り曲げて屋根部110a及び側壁部120aを形成することができる。また、本発明の樹脂粉収集用部材の製造方法は、金属製ブロック状材料の切削加工、及び金属製平板状材料を折り曲げる板金加工等の塑性加工に限定されず、これら以外の任意の製造方法により製造してもよい。
【0041】
以上、実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されない。例えば、本発明の樹脂粉収集用部材において、樹脂粉落下用貫通孔の数は、前述のとおり、特に限定されず任意である。例えば、
図1~4及び6では、樹脂粉10aが樹脂粉落下用貫通孔102から落下しやすいように、プランジャ取付部挿入用貫通孔101の両側のそれぞれにスリット(長孔)状の樹脂粉落下用貫通孔102を1つずつ設けている。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、プランジャ取付部挿入用貫通孔の両側に樹脂粉落下用貫通孔をそれぞれ複数設けてもよい。また、本発明の樹脂粉収集用部材は、前述のとおり屋根部と側壁部とを含むが、底面部は無くてもよい。例えば、
図2、3及び6で示したとおり、樹脂粉収集用部材100又は100aをカバー部材220の上面に固定することで、カバー部材220の上面が樹脂粉収集用部材100又は100aの底面としての機能を果たすためである。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、樹脂粉収集用部材が底面部を有していてもよい。
【0042】
さらに、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。