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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083366
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】全熱交換型コンタミレス換気ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/08 20060101AFI20220527BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
F24F7/08 101A
F24F13/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020205391
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】512331773
【氏名又は名称】株式会社横浜熱利用技術研究所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA03
3L080AD03
(57)【要約】
【課題】水蒸気選択透過性膜は薄膜であるため強度が低い。そのため従来は水蒸気選択透過性膜を用いる全熱交換器では膜を保持するため金属やプラスチックの型枠や金網を用いていた。その結果、従来の全熱交換器は形状自由度が低く、重く大型であったため、大換気量となる換気装置には向かないという欠点を有していた。
【解決手段】本発明では水蒸気選択透過性膜2枚により軽量シート材からなるコルゲート支持構造体をサンドイッチ状に挟んで通気路ユニットを形成し、この通気路ユニットをさらにコルゲート支持構造体にて一定間隔で積層した後、に筐体内にタイトな状態で収納し軽量で耐衝撃性も高く、フレキシブルで高強度の換気ユニット製造が可能となった。この換気ユニットにより軽量で高効率かつコンタミ発生の無い全熱交換型の換気装置が可能となった。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体を2枚の水蒸気選択透過性膜によりサンドイッチ状に挟み、前記水蒸気選択透過性膜の全域にわたり前記水蒸気選択透過性膜と前記波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体を接着して形成される通気路Aと、
複数の前記通気路Aを、別の波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体により前記通気路Aの全域にわたり一定間隔で積層することで通気路Aの間に通気路Bが形成された熱交換ユニットであって、
前記熱交換ユニットの上下に2枚のクッション板を設置した後に、所定の通風ダクトに繋がる所定の通風開口部を側面部に有する筐体内に密閉収納し、通気路Aを流れる空気流と通気路Bを流れる空気流との間で水蒸気選択透過性膜を介して熱および水蒸気の交換が行われることを特徴とする換気ユニット。
【請求項2】
前項記載の換気ユニットにおいて、熱交換ユニットに積層設置される通気路Aならびに通気路Bの積層方向の間隔はそれぞれが一定値で、
かつ通気路Bに設置される波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体の向きは通気路Aに設置された波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体の向きと直交することを特徴とする換気ユニット。
【請求項3】
請求項1,2に記載の換気ユニットにおいて、
換気ユニットの筐体の底面形状は長方形であり、
該筐体内に収納される複数個の熱交換ユニットの底面形状は長方形であり、
該筐体の短辺側の一対の側面部に空気の入口と出口が設置され、
該短辺側の空気入口から流入した空気は各熱交換ユニットの通気路Aまたは通気路Bを直進し、反対側の短辺側の空気出口から流出し、
前記筐体の長辺側の一対の側面部にも空気の入口、出口、ならびにユーターンを行う空気の出口と入口が設置され、
該長辺側の空気入口から流入した空気は、初めの熱交換ユニットの通気路Aまたは通気路Bを通過した後、筐体の反対側の長辺側の側面の出口を経たのちに、筐体側面部に設置したユーターン経路を経て、再び長辺側の側面の入口から筐体内へ流入し、次の熱交換ユニットの通気路Aまたは通気路Bへ進んだ後、ユーターン経路を経て、次の熱交換ユニットを通過して最終的に筐体長辺側の側面の空気出口から流出する構成であり、
前記筐体の短辺側の空気入口から流入した空気と、前記筐体の長辺側の入口から流入した空気は、筐体内の複数の熱交換ユニット内の空気流路を互いに直交しつつ、
各熱交換ユニット内にて水蒸気選択透過性膜を介して熱および水蒸気の交換を行う構成としたことを特徴とする換気ユニット。
【請求項4】
請求項1,2に記載の換気ユニットにおいて、
換気ユニットの筐体内に収納される複数個の熱交換ユニットの底面形状は正方形であり、
該熱交換ユニットの積層方向(縦方向)稜線を互いに接合して、複数個の熱交換ユニットから構成される熱交換ユニット群を形成し、
該熱交換ユニット群の他の積層方向(縦方向)稜線のすべてを換気ユニットの筐体内壁の側面部に空気タイトに接合し、
該筐体の短辺側の両側面に外気と排気の出入り口を独立させ設置し、外気と排気が互いに逆方向へ進む流路構成としたことを特徴とする換気ユニット
【請求項5】
請求項4,5に記載の換気ユニットにおいて、
換気ユニットの筐体内に収納される複数個の熱交換ユニットは水蒸気選択性透過膜の片側表面に波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体を接着貼付した片ダンボール形状の素材を所定寸法に切断し、切断された片ダンボール材を波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体の向きが交互に直交する方向で積層して熱交換ユニットを形成したことを特徴とする換気ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住居、事務所、商業施設、体育館、イベント会場、工場、乗り物などの室内空間に新鮮な外気を導入する換気装置において、室内気が保有する潜熱ならびに顕熱を導入外気へ移動する全熱交換を高効率に行うと共に、排気される室内気に含まれる汚れ成分が導入外気に混入して室内へ還流することを防止できる換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、COVIT-19の様なウイルスによる疫病が世界的に蔓延しており、その対策として居室や事業所の積極的な換気が奨励されている。
しかしながら、寒冷時や多湿時に外気を室内へ導入し、室内気を外部へ排出する事は、室内気に蓄えられた温熱や水蒸気の潜熱を戸外へ捨てることになり、空調のための追加的エネルギーが必要となるほか、居住者の快適性が損なわれるなどの課題がある。
【0003】
世界的に空調設備の導入は増加しつつあり、そのエネルギー使用量も拡大しつつある。これは地球温暖化の原因でもあるため、空調設備のエネルギー使用量削減は喫緊の課題である。
【0004】
一方、住宅、オフィス、事業所などでは省エネルギーのために住空間の高気密化が推進されてきたが、住空間の高気密化はCOVIT-19の様なウイルスによる感染拡大を助長する事から、積極的な換気と省エネルギーを両立させる必要がある。
【0005】
このような状況に対し、近年、水蒸気のみを選択的に通過させる水蒸気選択透過性膜が出現している。この機能は例えば高分子収着剤やフッ素系樹脂の様な特殊な樹脂を担持したシート、あるいは樹脂薄膜で確認されており、相対湿度が高い空気に接する一方の面から、相対湿度が低い空気に接する他方の面へ向けて水蒸気のみを通過させる特性を有している。
【0006】
しかしながら、これらの水蒸気選択透過性膜は薄膜であるため、この膜を介しての水蒸気や熱を交換する際には空気流間の圧力差や風の流れに耐える強度が求められる。従来の技術では水蒸気選択透過性膜を金属やプラスチックの枠材に固定して用いるため、枠材の制約があり、装置形状が制約され、重量、サイズの増大を伴うなどの欠点があった。
【0007】
例えば下記特許文献1、2には、水蒸気選択透過性膜を金属あるいはプラスチックの薄板開口部に接着したり、吸湿剤そのものを微細な金網の開口部に塗り込んだりして強度を持った水蒸気選択透過性膜を形成するデシカント換気システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4341924号
【特許文献2】特許第6352915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1、2記載のデシカント換気システムの構成要素となる換気ユニットでは、導入外気ならびに室内排気の流通時に両流体間で全熱交換を行う熱交換ユニットの形状を保つために水蒸気選択性透過膜を補強部材となる枠材に接着や塗り込みなどを行っている。このため、換気ユニットならびに熱交換ユニットの製作工程が複雑となり、コスト増大や熱交換ユニットの形状が制約されるなどの課題がある。
【0010】
本発明の主たる目的は、この課題を解決するため水蒸気選択透過性膜を軽量部材で強固に保持すると共に、水蒸気選択透過性膜を介して導入外気ならびに室内排気の間で全熱交換を行い、かつ室内排気中に含まれるウイルスを含む有害物質などのコンタミの室内への還流の無い熱交換ユニットおよび熱交換ユニットを収納した換気ユニットを提供し、換気装置の軽量化、コンパクト化、低コスト化、ならびに全熱交換効率の改善と、COVIT-19の様な感染力の強いウイルス対策としても有効なコンタミレス換気装置の普及を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による高効率な全熱交換とコンタミレスを実現する換気装置は、外気(1)の室内(2)への導入を行う外気導入ダクト(1-1)と室内気を室外へ排気する排気ダクト(2-1)とが接続される換気ユニット(3)の筐体(4)内に熱交換ユニット(5)を収納し、前記熱交換ユニット(5)は、波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体(6)を2枚の水蒸気選択透過性膜間(7)にてサンドイッチ状に挟んで接着形成される通気路Aと、別の支持部材を介して前記通気路Aを一定間隔で積層することで通気路Aの間に通気路Bのある熱交換ユニット(5)を形成し、該熱交換ユニット(5)の底面ならびに上面にクッション板(13)を粘着した上で、前記筐体(4)の内壁面に固定具(10)を介して固定する。
前記筐体(4)の側面部には外気および室内気の出入り口(4-1)を設置し、筐体(4)内に固定された熱交換ユニット(5)の通気路Aおよび通気路Bへの空気流を形成する。
熱交換ユニット(5)内では通気路Aと通気路Bを流れる空気流との間で水蒸気選択透過性膜(7)を介して熱および水蒸気の交換が行われる構成である。
【0012】
前記水蒸気選択透過性膜(7)の一方の面が接する空気と他方の面が接する空気の間の相対湿度差により高相対湿度の空気側で空気中の水蒸気分子が膜表面でトラップされて水分子となり、膜内に吸水され、吸水された水分子は膜内を移動して、低相対湿度の空気側で空気中に発散され、水蒸気のみが選択的に膜を透過する。
また、採用する水蒸気選択透過性膜(7)は膜の厚みが0.5mm以下であり、膜を介しての熱移動の際の熱抵抗が小さく、通気路A、通気路Bを通過する空気間の熱交換性も良好である。
【0013】
また、通気路A、および通気路Bに設置される波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体(6)のシート厚を0.1mm以上とし、かつシート材を短ピッチで波型とした形状であるため通気路Aあるいは通気路Bからなる熱交換ユニット積層体は軽量でフレキシブル性が高く、かつ通気路Aおよび通気路Bにおいて流下する空気の流れ方向が互いに直交する様にそれぞれの支持構造体(6)を構成しているので、熱交換ユニット(5)の強度も十分である。
【0014】
さらに本発明では、波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体(6)と水蒸気選択透過性膜(7)とを接着しているので、通気路Aならびに通気路Bの積層からなる熱交換ユニット(5)の強度が確保され、さらにこの熱交換ユニット(5)と固定具(10)を接着した上で筐体(4)内壁面に収納・接着しているので、熱交換ユニット(5)の稜線部からの通過空気の混入が防止される上、換気ユニット(3)の強度も確保されている。
このため、水蒸気選択透過性膜(7)を介して導入外気と室内からの排気が通過する際の空気圧の差で発生する通気路Aおよび通気路Bの形状変化や熱交換ユニット(5)ならびに換気ユニット(3)の変形・破損が防止される。
【0015】
さらに請求項4にかかる本発明では、通気路Aならびに通気路Bを交互に積層した状態で形成された複数個の熱交換ユニット(5)を筐体(4)内に設置する際に、各熱交換ユニット(5)の通気路Aが流れ方向に接続されるように各熱交換ユニット(5)を筐体(4)内に設置する。その際、筐体(4)の短辺となる一対の側面部(4-1)に通気路Aを通過する空気の入口と出口を設置し、筐体(4)の長辺となる一対の側面部(4-2)には通気路Bを通過する空気の入口と出口を複数設置すると共に、その長辺側の側面出口から出た空気がユーターンして再び長辺側の側面入口から隣接する別の熱交換ユニット(5)の通気路Bへ進むユーターンダクト(4-3)を設置した。これにより通気路Aを直進状態で進む空気流に対し通気路Bを通過する空気流がジグザグな流れとなる。その結果、両流体間の熱移動あるいは水蒸気移動を対向流に近い条件として構成できるため高い全熱交換効率の換気ユニット(3)が提供される。
【0016】
さらに請求項5にかかる本発明では、通気路Aならびに通気路Bを交互に積層した複数個の熱交換ユニット(5)の底面形状をほぼ正方形とした上で、互いに接触する熱交換ユニット(5)の積層方向(縦方向)稜線を固定具(10)により接着固定しているので、各熱交換ユニット(5)の積層方向(縦方向)稜線部からの空気の漏れを防ぐと同時に、筐体(4)内に熱交換ユニット群(8)としての設置が容易になった。
また、熱交換ユニット(5)の他の積層方向(縦方向)稜線のすべてを筐体(4)の内側の壁面に固定具(10)を介して接着固定したので、熱交換ユニット(5)の積層方向(縦方向)稜線部からの空気の漏れを防ぐと共に筐体(4)に強固に固定可能となっている。
【0017】
また、筐体(4)の一方の短辺側の側面部に一対の空気の出入り口(4-1)を設置し、筐体の反対側となる短辺側の側面部にも一対の空気の出入り口を設置したので、筐体の短辺側の入り口から流入した空気は熱交換ユニット(5)内の通気路を斜めに通過した後に隣接する熱交換ユニット(5)の通気路から流入し、再度斜めに進む。同様に筐体(4)の他方の短辺側(4-1)に設置される他の入り口から流入した空気は熱交換ユニット(4)内の別の通気路を経由して斜めに進み、隣接する熱交換ユニット(5)の通気路に再度流入して通気路を斜めに進む経路を取る。結果的に熱交換ユニット(5)と筐体(4)の内側壁面から構成される空間(14)、(15)を通過しつつ流れる二つの空気流は熱交換ユニット(5)内で互いに直交しつつ水蒸気選択透過性膜を介して熱と水蒸気を交換する対向流型のジグザグ流として高効率な全熱交換が形成される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したとおり本発明によれば、室内気を室外へ排出する際に室内気が保有する顕熱(温熱または冷熱のための空調負荷により付加された熱エネルギー)ならびに潜熱(加湿または除湿のために付加された熱エネルギー)を高効率に導入外気へ転嫁する全熱交換型の換気ユニットが形成される。
加えて、室内気に含まれる有害物質(例えば炭酸ガス、細菌、ウイルス、アンモニアなど)のコンタミが導入外気に乗り移り、室内へ還流する現象が防止される。
この効果から、冬季や夏季の空調負荷が増大する季節においても低いエネルギー消費量で清潔な外気を導入する高性能な全熱交換型コンタミレス換気ユニットの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】 本発明の重要技術である水蒸気選択透過性膜を介して、導入外気と室内からの排気が通気路を移動する際に、水蒸気が通気路内で交換される機能を示したイメージ図である。
図2】 本発明の基本的形態である通気路Aの構成と通気路Aが熱交換ユニット内で積層される状況を示した構成概要図である。
図3】 本発明の基本的形態例である熱交換ユニットの構成を示す概要図である。通気路Aならびに通気路Bの非開口部がパテにて密閉されて空気漏洩を防止する状況も併せ示されている。
図4】 本発明の第1形態例に係る全熱交換型コンタミレス換気ユニットの構成概要を示す平面図である。
図5】 本発明の第2形態例に係る全熱交換型コンタミレス換気ユニットの構成概要を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【第1形態例】
【0021】
本発明の第1形態例に係る全熱交換型コンタミレス換気装置は、図4に示されるように外気(1)を、室内へ導く供給ダクト(1-1)と、室内(2)から室内気を外部へ排出する排気ダクト(2-1)、ならびに、全熱交換型コンタミレスの換気ユニット(3)、図示していないが各空気ダクトに設置されている通気ファン(11)などから構成される。
【0022】
全熱交換型コンタミレスの換気ユニット(3)は、筐体(4)とその内部に設置される複数個の熱交換ユニット(5)からなる熱交換ユニット群(8)を有しており、熱交換ユニット群(8)はそれぞれの通気路A、通気路Bが接続される空気流路を有している。但し、通気路Aの次に通気路Bを経由する流れの形成でも良い。
また、熱交換ユニット群(8)を構成する熱交換ユニット(5)は互いに接触していても良いが、若干の間隔を保って設置することが望ましい。
【0023】
熱交換ユニット(5)は複数の通気路Aが一定間隔で波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)を介して積層し、通気路Aの間に通気路Bが形成されている。
通気路Aは2枚の水蒸気選択性透過膜(7)と波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)により構成されるが、前記波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)は前記水蒸気選択性透過膜(7)の全面にわたり設置されていることが望ましい。
同様に、通気路Bにおいても通気路Aの積層方向高さ間隔を規定する波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)は通気路Aの水蒸気選択透過性膜(7)の全面にわたり設置されていることが望ましい。
通気路Aの水蒸気選択性透過膜(7)と波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)ならびに通気路Bを形成する波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)はそれぞれが水蒸気選択性透過膜(7)と接着固定されているが、通気路Aあるいは通気路Bの空気の流れ方向の側面端部において、波板状の支持構造体(6)の端部と水蒸気選択性透過膜(7)の端部は互いに接着された上、パテ(12)にて空気の漏れが発生しない様に仕上げられている。
パテ(12)は接着材でも良く、通気路A,Bの側面端部において上下の水蒸気選択性透過膜(7)と波板状の支持構造体(6)の双方に接着して、側面端部からの空気の漏れが発生しないように仕上げられている。
【0024】
また、通気路Aの波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)と通気路Bの波板状(コルゲート状)の支持構造体(6)は互いに流れ方向が直交する方向で水蒸気選択性透過膜(7)に接着固定されている。
【0025】
複数個の熱交換ユニット(5)からなる熱交換ユニット群(8)を収納する筐体(4)の底面形状は長方形であり、その短辺側の筐体側面には室外から外気(1)を導く外気導入ダクト(1-1)が接続されており、反対側の筐体側面に熱交換ユニット群(8)を通過した外気を室内(2)へ導く外気導入ダクト(1-1)が接続されている。
一方、筐体(4)の長辺側の側面には室内(2)から室内気を外部へ排出する排気ダクト(2-1)が接続されており、排気ダクト(2-1)から流入した室内気は最初の熱交換ユニット(5)の通気路Bを経由して、筐体(4)の反対側にある側面開口部を通り筐体(4)から流出した後、前記開口部の外側に設置されているユーターン流路(4-3)を経由して筐体(4)内へ戻り、次の熱交換ユニット(5)の通気路Bへ流入する。
【0026】
この様に、室内(2)からの排気は、筐体(4)の長辺側の側面開口部から筐体(4)内へ流入した後、最初の熱交換ユニット(5)の通気路Bを通過した後、ユーターン流路(4-3)を経由するジグザグ流れを繰り返し、熱交換ユニット群(8)の最終熱交換ユニット(5)を経て筐体(4)に接続される排気ダクト(2-1)を経て外部へ排気される。
【0027】
室外からの外気(1)は換気ユニット(3)の筐体(4)内に設置される複数の熱交換ユニット(5)の通気路Aを直進する形で通過し、同時に室内(2)からの排気は複数の熱交換ユニット(5)の通気路Bと筐体(4)の長辺側の側面に設置されたユーターン流路(4-3)により流れ方向をユーターンさせながら熱交換ユニット(5)の通気路Bを通過する。
その結果、換気ユニット(3)を通過した後の外気が室内に供給される際には、その温度と絶対湿度は、室内気の温度と絶対湿度に近づいた状態となる。
【0028】
次に図1の原理図を用いて、本発明による全熱交換型コンタミレス換気ユニットの優れた点について説明する。
【0029】
水蒸気選択透過性膜(7)は表面に空気中の水蒸気分子をトラップする機能を有する樹脂が担持されている。
トラップされた水蒸気分子は水分子の形態となり樹脂内に取り込まれる。
取り込まれた水分子は樹脂内を移動し、水蒸気選択透過性膜(7)の反対側の面に到達する。反対側の面に接する空気の相対湿度が低い場合には水蒸気選択透過性膜(7)を通過した水分子はこの相対湿度の低い空気中へ水蒸気として蒸散する。
水蒸気をトラップした際に、水蒸気から水に相変化する際の発熱があり、この発熱は水蒸気選択透過性膜の反対側の面に伝わり、そこから水が蒸散する際の蒸発熱として消費されるため、厳密には水分子の移動と同時に相変化に伴う熱の移動が発生している。
すなわち、水蒸気選択透過性膜(7)は内部を水分子が移動可能であり、その膜厚が薄い事から高い熱移動の機能を有している。これらの特性から水蒸気のみを選択的に物質移動することが可能となっている。
【第2形態例】
【0030】
次に本発明の第2の形態例に係る全熱交換型コンタミレス換気装置について、図5を用いて説明する。
【0031】
全熱交換型コンタミレスの換気装置は図示していないが、室外からの導入外気ならびに室内からの排気を送風する通気ファン(11)を、各空気ダクトあるいは換気ユニットの内側あるいは外側に設置している。また、全熱交換型コンタミレスの換気装置は図5に示されるように室外から外気(1)を、室内2へ導く供給ダクト(1-1)と、室内(2)から室内気を室外へ排出する排気ダクト(2-1)ならびに、換気ユニット(3)、熱交換ユニット(5)などから構成される。
【0032】
換気ユニット(3)は、筐体(4)と筐体(4)の内部に設置される複数個の熱交換ユニット(5)を有しており、熱交換ユニット(5)は通気路Aと通気路Bの積層体からなり、その底面形状は正方形であり、各熱交換ユニット(5)はその積層方向(縦方向)稜線で固定具(10)を介して互いに接合して熱交換ユニット群(8)を構成する。
また、該熱交換ユニット群(8)は固定具(10)を介して、熱交換ユニットの積層方向(縦方向)稜線のすべてが筐体(4)の内側面に接合されている。
筐体(4)の短辺側の両側面部には一対の空気の出入り口が設置されている。すなわち、筐体(4)の一方の短辺端部にある空気の出入り口は外気導入ダクト(1-1)に接続されていて、そこから流入した外気は、一つ目の熱交換ユニット(5)の通気路Aあるいは通気路Bの開口部から熱交換ユニット(5)に流入し、その後、熱交換ユニット(5)と筐体(4)の内面で囲まれた空間(14)に流出する。
空間(14)に流出した外気は、下流側の熱交換ユニット(5)の通気路Aあるいは通気路Bの開口部から次の熱交換ユニット(5)内に流入する。
この流れを繰り返し、筐体4の一方の端部にある開口部を経て外気導入ダクト(1-1)から流入した外気は反対側の筐体短辺に設置した外気導入ダクト(1-1)を経て室内(2)へ向かう。
【0033】
同様に、外気(1)の入口側とは反対側の筐体(4)の短辺端部の開口部から排気ダクト(2-1)を経て室内(2)からの排気は筐体(4)内へ流入し、一つ目の熱交換ユニット(5)の通気路Aあるいは通気路Bの開口部に流入し、その後、熱交換ユニット(5)と筐体(4)内面で囲まれた空間(15)に流出する。
空間(15)へ流出した空気は、下流側の次の熱交換ユニット(5)の通気路Aあるいは通気路Bの開口部から次の熱交換ユニット(5)に流入する。
この流れを繰り返すことで、筐体(4)の一方の端部にある入口から流入した室内気は反対側の筐体短辺に設置した排気ダクト(2-1)を経て外部へ流出する。
【0034】
この様に、室外からの導入外気と室内からの排気が換気ユニット(3)の筐体(4)内部に設置された複数の熱交換ユニット(5)から構成される熱交換ユニット群(8)内にてそれぞれが対向するジグザグ流を形成する。この対向流効果で個々の熱交換ユニット(5)内では水蒸気選択透過性膜(7)を介して、熱ならびに水蒸気の交換が高効率に達成される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
このように構成された全熱交換型コンタミレス換気ユニットでは、換気ユニット(3)内に設置される熱交換ユニット(5)において、室外から室内へ導入される外気、および室内から室外へ排出される排気がそれぞれ通気路Aと通気路Bを独立して通過する際に、薄膜である水蒸気選択透過性膜(7)を介して熱と水蒸気を高効率に交換すると共に、その際、室内からの排気に含まれる有害物質(例えば炭酸ガス、細菌、ウイルス、アンモニアなど)のコンタミは水蒸気選択透過性膜(7)を通過できないので、排気中の有害物質が室内に還流する心配がない。
【0036】
また、換気ユニット(3)内に設置される複数個の熱交換ユニット(5)を熱交換ユニット群(8)として設置することで、室外から室内へ導入される外気、および室内から室外へ排出される排気の流れが、相互にジグザグな対向流を形成できるので、さらに効率よく導入外気と室内からの排気の間での熱および水蒸気の交換が可能となる。
【0037】
また、水蒸気選択透過性膜(7)を介しての熱および水蒸気を交換する際に、水蒸気選択性透過膜(7)の両面全域にわたり波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体(6)を互いに直交する方向で水蒸気選択性透過膜(7)に接着して通気路A、あるいは通気路Bを形成しているので、熱交換ユニット(5)は軽量であると共に、圧縮や振動に強い形状となる。
【0038】
さらに、水蒸気選択透過性膜(7)の両面に接着されている波板状(コルゲート状)あるいは三角を成す折り板状の支持構造体(6)にて形成される通気路A、Bの側面端部に接着性のパテ(12)を塗り込んで端部側面からの空気の漏れを防止している事に加えて、
熱交換ユニット(5)の積層方向(縦方向)稜線部においても、熱交換ユニット(5)どうしの接続部、あるいは筐体(4)の内側側面との接続部に固定具(10)を設置し、固定具(10)と熱交換ユニット(5)の積層方向(縦方向)稜線部ならびに筐体を接着剤で接合しているので、これらの部分からの空気の漏れや混入が防止されている。
【符号の説明】
【0039】
1:外気、1-1:外気導入ダクト
2:室内、2-1:排気ダクト
3:換気ユニット、4:換気ユニットの筐体
4-1、4-2:筐体の空気の出入り口
4-3:筐体に設置されるユーターン流路
5:熱交換ユニット
6:支持構造体
7:水蒸気選択透過性膜
8:熱交換ユニット群
10:固定具(熱交換ユニットの接続、固定に使用される)
11:ファン
12:パテまたは接着剤
13:クッション板
14,15:熱交換ユニットと筐体により形成される空間
通気路A・・・水蒸気選択透過性膜2枚と支持構造体で構成される通気路
通気路B・・・2つの通気路Aと支持構造体で構成される通気路
図1
図2
図3
図4
図5