(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083375
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】スタッドジベル溶接装置及び加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/20 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
B23K9/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010823
(22)【出願日】2021-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2020193960
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020197748
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000161356
【氏名又は名称】宮地エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】西垣 登
(72)【発明者】
【氏名】上原 正
(72)【発明者】
【氏名】吉元 大介
(72)【発明者】
【氏名】越中 信雄
(57)【要約】
【課題】スタッドジベルの溶接を行う作業員の身体への負担を軽減する。さらに、スタッドジベルの溶接作業の効率化を図る。
【解決手段】スタッドジベル溶接装置Wが、スタッドジベル4を保持し、当該保持したスタッドジベル4の先端部を溶接対象面Sに溶接するための溶接ガン10と、溶接ガン10を支持するとともに、溶接ガン10を、溶接対象面Sに対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台20と、を備えており、可動機構は、溶接ガン10を垂直方向のうち溶接対象面Sから離間する方向に移動させるための付勢部材24を備える。また、スタッドジベル溶接装置Wは、溶接対象面Sに設けられた目印に合致させることでスタッドジベル4の溶接位置を位置決めする位置決め手段を更に備える。さらに、支持台20は、当該支持台20を走行させるための走行部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッドジベルを保持し、当該保持したスタッドジベルの先端部を溶接対象面に溶接するための溶接ガンと、
前記溶接ガンを支持するとともに、前記溶接ガンを、前記溶接対象面に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台と、を備えており、
前記可動機構は、前記溶接ガンを前記垂直方向のうち前記溶接対象面から離間する方向に移動させるための付勢部材を備えることを特徴とするスタッドジベル溶接装置。
【請求項2】
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有することを特徴とする請求項1に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項3】
前記可動機構は、
前記溶接ガンが取り付けられた垂直スライダと、
前記垂直方向に延在し、前記垂直スライダがスライド可能に組み合わせられた垂直ガイドレールと、
前記横方向に延在し、前記垂直ガイドレールがスライド可能に組み合わせられた横ガイドレールと、
前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に設けられ、前記垂直スライダに対し、前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する前記付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項4】
前記垂直ガイドレールは、前記横ガイドレールに対してスライド可能に組み合わせられる横スライダを有しており、
前記横スライダは、前記横ガイドレールに沿うスライドを規制するストッパー部を備えることを特徴とする請求項3に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項5】
前記溶接ガンは、
前記スタッドジベルの頭部を保持する第一チャックと、
前記スタッドジベルの先端部に一体的に装着されたフェルールを保持する第二チャックと、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項6】
前記溶接ガンは、前記垂直方向に長尺に形成され、作業員が把持して前記溶接ガンを前記垂直方向に沿って操作するための操作レバーを更に有しており、
前記操作レバーは、前記溶接対象面とは反対側の端部に溶接スイッチを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項7】
前記溶接対象面に設けられた目印に合致させることで前記スタッドジベルの溶接位置を位置決めする位置決め手段を更に備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項8】
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、
前記支持台の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部と、
前記支持台の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部と、
前記第一走行部と前記第二走行部の間隔を調整する間隔調整部と、を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項9】
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、前記溶接対象面の面方向に沿って旋回自在に構成された複数の車輪であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項10】
付け替え可能な先端工具を保持し、当該保持した先端工具の先端部を加工対象面に押し付けて加工するためのドリル工具と、
前記ドリル工具を支持するとともに、前記ドリル工具を、前記加工対象面に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台と、を備えており、
前記可動機構は、前記ドリル工具を前記垂直方向のうち前記加工対象面から離間する方向に移動させるための付勢部材を備えることを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドジベル溶接装置及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁や高架道路を構成する床版の1つとして、鋼製型枠となる鋼板に、コンクリート層(コンクリートスラブ)が打設されて構成された合成床版が用いられている。そして、鋼板におけるコンクリート打設箇所には、鋼板とコンクリート層とを接合して一体性を高めるために多数のスタッドジベルが設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、スタッドジベルを鋼板に溶接する場合は、スタッドジベルを保持する保持機構を備えたスタッド溶接ガンを使用する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-19386号公報
【特許文献2】特開平11-285828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スタッドジベルの溶接は、例えば工場等で、溶接作業員がスタッド溶接ガンを持って移動し、スタッドジベルを一本ずつ手作業でスタッド溶接ガンにセットして中腰や前屈みの状態で行われる。ところが、スタッド溶接ガンは重量物で、溶接機から伸びる長い溶接ケーブルも繋がっているため、持ち運びが不便であるだけでなく、無理な体勢での溶接作業が続くこととなり、作業員の身体への負担が大きいという問題があった。また、ハンマードリルや振動ドリル等のドリル工具も同様に重量物で持ち運びが不便であるだけでなく、加工対象面の加工時において作業員が感じる振動も大きい。そのため、無理な体勢での加工作業が続くと、作業員の身体への負担が大きくなりやすいという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、スタッドジベルの溶接を行う作業員の身体への負担を軽減することである。加えて、加工対象面の加工を行う作業員の身体への負担を軽減することである。
【0006】
また、スタッドジベルが溶接される位置に、例えば塗料や汚れが付着していると、スタッドジベルの溶接の精度が低下するため、例えばディスクサンダー等の動力工具や手工具を使って研磨し、素地調整を行う場合がある。ところが、スタッドジベルが溶接される位置を研磨して素地調整を行うと、目印として十字状に書き入れたケガキ線も消えてしまうことになる。そのため、従来は、素地調整を行っても消えない目印として、十字状のケガキ線の交点にポンチマークを打刻していたが、ケガキ線を書き入れた上でポンチマークの打刻も行うとなると手間であり、スタッドジベルの溶接位置におけるポンチマークの打刻作業の省略が求められていた。
上記事情に鑑み、本発明の他の課題は、スタッドジベルの溶接作業の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、スタッドジベルを保持し、当該保持したスタッドジベルの先端部を溶接対象面に溶接するための溶接ガンと、
前記溶接ガンを支持するとともに、前記溶接ガンを、前記溶接対象面に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台と、を備えており、
前記可動機構は、前記溶接ガンを前記垂直方向のうち前記溶接対象面から離間する方向に移動させるための付勢部材を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記可動機構は、
前記溶接ガンが取り付けられた垂直スライダと、
前記垂直方向に延在し、前記垂直スライダがスライド可能に組み合わせられた垂直ガイドレールと、
前記横方向に延在し、前記垂直ガイドレールがスライド可能に組み合わせられた横ガイドレールと、
前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に設けられ、前記垂直スライダに対し、前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する前記付勢部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記垂直ガイドレールは、前記横ガイドレールに対してスライド可能に組み合わせられる横スライダを有しており、
前記横スライダは、前記横ガイドレールに沿うスライドを規制するストッパー部を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記溶接ガンは、
前記スタッドジベルの頭部を保持する第一チャックと、
前記スタッドジベルの先端部に一体的に装着されたフェルールを保持する第二チャックと、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記溶接ガンは、前記垂直方向に長尺に形成され、作業員が把持して前記溶接ガンを前記垂直方向に沿って操作するための操作レバーを更に有しており、
前記操作レバーは、前記溶接対象面とは反対側の端部に溶接スイッチを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記溶接対象面に設けられた目印に合致させることで前記スタッドジベルの溶接位置を位置決めする位置決め手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、
前記支持台の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部と、
前記支持台の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部と、
前記第一走行部と前記第二走行部の間隔を調整する間隔調整部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置において、
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、前記溶接対象面の面方向に沿って旋回自在に構成された複数の車輪であることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、付け替え可能な先端工具を保持し、当該保持した先端工具の先端部を加工対象面に押し付けて加工するためのドリル工具と、
前記ドリル工具を支持するとともに、前記ドリル工具を、前記加工対象面に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台と、を備えており、
前記可動機構は、前記ドリル工具を前記垂直方向のうち前記加工対象面から離間する方向に移動させるための付勢部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スタッドジベルの溶接を行う作業員の身体への負担を軽減することができる。加えて、加工対象面の加工を行う作業員の身体への負担を軽減することができる。
さらに、本発明によれば、スタッドジベルの溶接作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】スタッドジベルの溶接対象面の一例を示す斜視図である。
【
図2】スタッドジベル溶接装置を示す斜視図である。
【
図3】スタッドジベル溶接装置を示す側面図である。
【
図4】溶接ガンを降下させた状態のスタッドジベル溶接装置を示す側面図である。
【
図6】目印が設けられた溶接対象面を示す平面図である。
【
図7】スタッドジベルの位置決め手段について説明する斜視図である。
【
図8】スタッドジベルの溶接手順を説明する図である。
【
図9】溶接対象面の縁部に沿ってスタッドジベルを溶接する場合について説明する図である。
【
図10】壁面にスタッドジベルを溶接する場合について説明する図である。
【
図11】スタッドジベル溶接装置の他の例について説明する図である。
【
図12】スタッドジベル溶接装置の他の例について説明する図である。
【
図13】第二チャックの変形例を示し、(a)は縦断面図であり、(b)はB-B線断面図であり、(c)はC-C線断面図である。
【
図15】ドリル工具を降下させた状態の加工装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1において符号1は、橋梁や高架道路を構成する合成桁を示す。この合成桁1は、鋼桁2と、当該鋼桁2の上面に打設されるコンクリート床版3と、を備えており、鋼桁2とコンクリート床版3は、鋼桁2の上面(フランジ部の上面)に設けられた多数のスタッドジベル4によって一体的に接合されている。換言すれば、コンクリート床版3は、コンクリート打設時に多数のスタッドジベル4が食い込んだ状態に形成され、これによって鋼桁2と接合されている。
すなわち、本実施形態においては、スタッドジベル溶接装置Wによってスタッドジベル4が溶接される溶接対象面Sは、合成桁1を採用した橋梁や高速道路等におけるコンクリート床版3に接する鋼桁2の上面とされている。
ただし、溶接対象面Sは、鋼桁2の上面に限られるものではなく、例えば、鋼桁2以外のものの上面でもよいし、側面でもよいが、スタッドジベル4の溶接が可能な材料とされている。
【0021】
スタッドジベル4は、頭付きスタッドとも呼ばれ、円柱状の本体軸部と、本体軸部における長さ方向両端部のうち溶接対象面Sとは反対側に配置される端部に一体形成された頭部と、を有する。頭部の径は、本体軸部の径よりも長く設定されている。
また、本体軸部における長さ方向両端部のうち溶接対象面S側に配置される端部(頭部とは反対側の端部)は先端部とされ、先端面には溶け代4aが設けられる。
そして、本実施形態におけるスタッドジベル4は、先端部は下向きとされ、頭部は、先端部よりも上方に位置した状態で溶接されることになる。
なお、本実施形態においては、スタッドジベル4として頭付きスタッドを採用するものとしたが、これに限られるものではなく、スタッドボルトや異形鉄筋(異形スタッドジベル)を採用してもよい。
【0022】
スタッドジベル4の先端部には、フェルール5が一体的に装着されている。フェルール5の内径は、スタッドジベル4における本体軸部の外径と略等しく設定されている。そのため、スタッドジベル4の本体軸部がフェルール5に嵌まった状態となり、これにより、スタッドジベル4の先端部にフェルール5が一体的に装着されることになる。
このフェルール5は、スタッドジベル4の先端部(溶け代4a)と溶接対象面Sにおける溶接箇所とを包囲するセラミック製の凸筒状部材であり、下段部より径が細く形成された上段部5aを備える。溶接時には、このフェルール5における下段部の筒内部でアークが発生する。
なお、このフェルール5は、スタッドジベル4の溶接後に撤去される。
【0023】
フェルール5が一体的に装着されたスタッドジベル4は、収納ケース6に収納され、スタッドジベル溶接装置Wによって運搬される。
【0024】
以上のようなスタッドジベル4を溶接対象面Sに溶接するためのスタッドジベル溶接装置Wは、
図1~
図5等に示すように、溶接ガン10と、溶接ガン10を支持する支持台20と、スタッドジベル4の溶接位置を位置決めする位置決め手段と、を備える。
【0025】
まず、溶接ガン10について説明する。
溶接ガン10は、スタッドジベル4を保持し、当該保持したスタッドジベル4の先端部を溶接対象面Sに溶接するためのものであり、支持台20側に取り付けられる本体部11と、操作レバー12と、第一チャック13と、第二チャック14と、を有する。
【0026】
本体部11は、支持台20側に取り付けられる部位であり、具体的には、支持台20の可動機構を構成する垂直スライダ21に対して取り付けられている。
また、本体部11は、保持したスタッドジベル4の本体軸部に沿って配置され、かつ、本体部11によって垂直方向に進退可能に保持された吊持ロッド11a(レグとも言う)を備える。このような吊持ロッド11aは、ストッパーによって任意の位置でその進退が固定可能となっている。
さらに、吊持ロッド11aは、本体部11によって、保持したスタッドジベル4の本体軸部の軸回りに旋回可能に保持されている。つまり、本体部11は、吊持ロッド11aを垂直方向に進退可能に保持しつつ、スタッドジベル4の軸回りに旋回可能に保持する保持部を備えるものとする。また、この保持部は、前後左右に90度ずつ、その旋回位置を停止できるように構成されている。
なお、本実施形態における吊持ロッド11aは複数本用いられている。
そして、吊持ロッド11aの下端部(溶接対象面S側の端部)には、第二チャック14が取り付けられている。
【0027】
操作レバー12は、垂直方向に長尺に形成され、作業員が把持して溶接ガン10を垂直方向に沿って操作するためのものであり、本体部11の側面(支持台20とは反対側の側面)に固定されている。そして、垂直方向に長尺な当該操作レバー12は、本体部11から溶接対象面Sとは反対側に伸びるように配置されている。つまり、操作レバー12の上端部は、作業員が、中腰や前屈みにならないように、手で把持しやすい高さに配置されることとなる。
このような操作レバー12は、溶接対象面Sとは反対側の端部に、溶接のための通電を開始する溶接スイッチ12aを備える。すなわち、溶接スイッチ12aを押せば通電が開始されて溶接が行われ、溶接スイッチ12aを離して元に戻せば通電が止まり、溶接が中断される。なお、本体部11には、通電のための溶接ケーブル11bが接続されている。
【0028】
第一チャック13は、スタッドジベル4の頭部を保持するジベルチャックであり、本体部11の下端部(溶接対象面S側の端部)に設けられたチャックアダプタ11cに取り付けられている。
この第一チャック13は、筒壁に複数のスリットが形成された筒状体であり、スタッドジベル4の頭部を弾性的に保持できるようになっている。
【0029】
第二チャック14は、スタッドジベル4の先端部に一体的に装着されたフェルール5を保持するフェルールチャック(フートとも言う)である。そして、上記のように、吊持ロッド11aの下端部に取り付けられている。すなわち、第二チャック14は、本体部11から伸びる吊持ロッド11aによって吊持されている。
【0030】
また、吊持ロッド11aは、本体部11によって垂直方向に進退可能に保持されているため、第二チャック14は、使用するスタッドジベル4の長さに応じて位置調整できる。つまり、異なる長さのスタッドジベル4が用いられても、第二チャック14の位置を適宜調整し、この第二チャック14によってフェルール5を保持できるようになっている。
【0031】
さらに、第二チャック14は、略U字型に形成されており、フェルール5の上端部5aを挟持できるようになっている。略U字型に形成された第二チャック14がU字開口している方向にスタッドジベル4及びフェルール5を抜くことができる。
そのため、スタッドジベル溶接装置Wの走行方向と、本体部11における吊持ロッド11aを保持する旋回可能な保持部と、第二チャック14の向きを適宜選択すれば、施工の効率化を図ることができる。
【0032】
そして、以上のように構成された溶接ガン10は、支持台20が有する可動機構によって、移動可能な状態に支持されている。
【0033】
続いて、支持台20について説明する。
支持台20は、溶接ガン10を支持するものであり、本実施形態においては、複数のフレーム材が連結されてフレーム状に形成されている。そのため、スタッドジベル溶接装置W全体の軽量化に貢献している。
そして、このような支持台20は、可動機構と、走行部25と、収納ケース載置部29と、を有する。
【0034】
可動機構は、溶接ガン10を、溶接対象面Sに対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とするための機構であり、垂直スライダ21と、垂直ガイドレール22と、複数の横ガイドレール23と、付勢部材24と、を備える。
【0035】
垂直スライダ21は、垂直ガイドレール22の長さ方向に沿ってスライド移動するスライダであり、支持台20(垂直ガイドレール22)とは反対側の側面に、溶接ガン10が取り付けられている。
【0036】
垂直ガイドレール22は、溶接対象面Sに対する垂直方向に長尺に形成され、垂直スライダ21がスライド可能に組み合わせられている。
垂直スライダ21は、垂直ガイドレール22に沿うスライドを規制するストッパー部を備えない状態で、垂直ガイドレール22に組み合わせられている。そのため、仮に可動機構が付勢部材24を備えない場合、垂直スライダ21は、垂直ガイドレール22の下端部に配置されることが自然状態となる。
【0037】
複数の横ガイドレール23は、溶接対象面Sに対する垂直方向に直交する横方向に長尺に形成された円筒状部材であり、垂直方向(上下方向)に間隔を空けて配置されている。
これら複数の横ガイドレール23は、支持台20を構成するフレーム材のうち左右に離間して配置されたフレーム材間に架け渡されて設けられているので、支持台20の一部としても機能することになる。
【0038】
複数の横ガイドレール23には、垂直ガイドレール22がスライド可能に組み合わせられている。より具体的に説明すると、垂直ガイドレール22は、複数の横ガイドレール23のそれぞれに対してスライド可能に組み合わせられる複数の横スライダ22aを有している。そのため、垂直ガイドレール22が、複数の横ガイドレール23に対してスライド可能に組み合わせられている。
また、複数の横スライダ22aのうち少なくとも一方は、複数の横ガイドレール23に沿うスライドを規制するストッパー部22bを備える。したがって、ストッパー部22bを使うことで、溶接ガン10の横方向への移動を一時的に停止させることができる。
【0039】
付勢部材24は、垂直ガイドレール22の長さ方向一端部(上端部:溶接対象面Sとは反対側の端部)に設けられている。そして、このような付勢部材24は、垂直スライダ21に対し、垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する。
より具体的に説明すると、本実施形態における付勢部材24は、巻き取り式の定荷重バネが用いられている。定荷重バネは、垂直ガイドレール22に取り付けられる巻取部(ドラム)と、この巻取部に巻き取られる金属製の帯体と、を備えており、帯体を巻取部から引き出すことで、帯体には元の状態に戻ろうとする付勢力が生じる。この付勢力により、垂直スライダ21は、垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に向かってスライドする方向に付勢される。つまり、垂直ガイドレール22に沿って下方(溶接対象面S側)に移動させられた垂直スライダ21は、この付勢部材24の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻ることとなる。
なお、付勢部材24における帯体の先端には、垂直スライダ21の上端部に連結された板状の連結部24aを有する。
【0040】
支持台20が、以上のような可動機構を備えることにより、溶接ガン10を、溶接対象面Sに対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動させることができる。
【0041】
走行部25は、溶接対象面S(鋼桁2の上面:走行面)に沿って支持台20を走行させるためのものであり、支持台20の下端部に設けられている。
より具体的に説明すると、走行部25は、支持台20の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部26と、支持台20の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部27と、第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整する間隔調整部28と、を備える。
【0042】
第一走行部26は、前後方向(平面視において横ガイドレール23と直交する方向)に間隔を空けて配置された複数の車輪26aと、これら複数の車輪26aが旋回自在に取り付けられた脚フレーム26bと、脚フレーム26bがスライド可能に組み合わせられた複数のレール部26cと、を有する。
複数のレール部26cは、脚フレーム26bと支持台20の下端部との間に設けられ、互いに前後方向に間隔を空けて配置されており、横ガイドレール23に沿う横方向に長尺に形成されている。すなわち、脚フレーム26bは、複数のレール部26cに沿って横方向にスライド可能とされている。
【0043】
第二走行部27も同様に、前後方向に間隔を空けて配置された複数の車輪27aと、これら複数の車輪27aが旋回自在に取り付けられた脚フレーム27bと、脚フレーム26bがスライド可能に組み合わせられた複数のレール部27cと、を有する。
【0044】
間隔調整部28は、第一走行部26と第二走行部27のそれぞれに用いられて、第一走行部26を複数のレール部26cに沿って横方向にスライドさせて第二走行部27との間隔を調整するとともに、第二走行部27を複数のレール部27cに沿って横方向にスライドさせて第一走行部26との間隔を調整する。すなわち、間隔調整部28は、第一走行部26用と第二走行部27用に2セット用意されている。
【0045】
このような間隔調整部28は、支持台20の下端面に設けられた保持片によって軸回りに回転自在に保持された棒部材28aと、棒部材28aに係合し、棒部材28aの長さ方向に沿って移動可能な係合部28bと、係合部28bを棒部材28aの長さ方向に沿って移動させる操作を行うための操作部28cと、を有する。操作部28cは、棒部材28aを軸回りに回転させるハンドルである。
より詳細には、棒部材28aの外周面には雄ネジが形成されており、係合部28bは、棒部材28aの雄ネジに対応する雌ネジが形成された貫通孔を備える。
ここで、第一走行部26を例に挙げて説明すると、係合部28bは、第一走行部26の脚フレーム26b上面に固定されている。そして、操作部28cによって棒部材28aを回転させることで、係合部28bが棒部材28aの長さ方向に沿って移動する。つまり、係合部28bが固定された第一走行部26が、棒部材28aの長さ方向に沿って移動することになる。
第二走行部27の場合も同様に、操作部28cによって棒部材28aを回転させることで、第二走行部27が、棒部材28aの長さ方向に沿って移動することになる。
【0046】
第一走行部26側の間隔調整部28における棒部材28aと、第二走行部27側の間隔調整部28における棒部材28aは、互いに近接する端面同士が接合されてもよいし、接合されていなくてもよい。
なお、棒部材28aの端面同士が接合される場合は、これら棒部材28aは同一方向に回転するため、第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整するためには、互いの雄ネジの向きを逆方向に形成する必要がある。互いの雄ネジの向きが逆方向に形成されていれば、端面同士が接合された双方の棒部材28aを一方向に回転させることで、第一走行部26と第二走行部27の間隔を広げ、他方向に回転させることで、第一走行部26と第二走行部27の間隔を狭めることができる。
【0047】
なお、本実施形態における走行部25は、第一走行部26及び第二走行部27に、複数の車輪26a,27aを採用したが、これに限られるものではなく、例えば無限軌道式の走行部を採用してもよい。また、他の形態の走行部25を採用してもよい。
さらに、車輪26a,27aは、溶接時のスパーク等を避けるために樹脂材質とされ、その上、ゴム被覆を施した構成となっている。
また、走行部25は、支持台20を溶接対象面Sから所定の高さに支持する機能を有するが、本実施形態においては、支持台20は、溶接対象面Sに溶接されたスタッドジベル4よりも上方に支持されているものとする。これに加えて、上記のように第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整できるので、溶接したスタッドジベル4によってスタッドジベル溶接装置Wの進路が妨害されない。
しかも、走行部25は、ストッパー部25aを備えており、溶接作業時におけるスタッドジベル溶接装置Wの移動を防ぐことができる。仮に、鋼桁2の上面が傾斜していても、ストッパー部25aによって走行部25の移動を一時的に停止できるので、正確な溶接作業を行うことができる。ストッパー部25aの操作は、作業員の手や足で直接行うことができる。
また、支持台20の把手20aに、ブレーキ操作部を設けて走行部25の停止操作を行えるようにしてもよい。このようなブレーキ操作部は、例えば、把手20aと共に握り込むレバーと、複数の車輪26a,27aの回転をストップするブレーキ本体と、これらレバーとブレーキ本体とを繋ぐブレーキワイヤーと、を有する構成となっており、自転車のように操作することができる。
【0048】
収納ケース載置部29は、支持台20の中央に設けられたテーブルであり、上面に、収納ケース6が載置される。なお、収納ケース6は、可動機構における垂直ガイドレール22を挟んで溶接ガン10とは反対側に配置されるため、収納ケース6にスタッドジベル4が収納されることで錘として機能することになる。
なお、収納ケース6には、40本程度のスタッドジベル4が収納される。
【0049】
以上のようなスタッドジベル溶接装置Wは、幅寸法(横方向の寸法)が715mm前後とされ、前後方向の寸法が720mm前後とされている。
また、
図3に示すように、操作レバー12が最も上方まで上昇した場合の、鋼桁2上面から溶接スイッチ12aまでの高さ寸法(最大高さ寸法)は1530mm前後とされるとともに、鋼桁2上面から第一チャック13の下端部までの高さ寸法は740mm前後とされている。
さらに、
図4に示すように、操作レバー12が最も下方まで降下した場合の、鋼桁2上面から溶接スイッチ12aまでの高さ寸法は1000mm前後とされるとともに、鋼桁2上面から付勢部材24の上端部までの高さ寸法は1230mm前後とされている。
溶接ガン10の移動可能距離については、垂直移動は最大で500~600mm程度とされ、横移動も最大で500~600mm程度とされている。
以上のような寸法設定とされていると、平均的な身長の作業員であれば、中腰や前屈みの姿勢で溶接作業を行うことが格段に少なくなる。
【0050】
また、支持台20を形成するフレーム材はアルミニウム材によって構成されており、スタッドジベル溶接装置W全体の重量は40kg前後に設定されているため、軽量で、人の手による運搬が可能となっている。
【0051】
なお、本実施形態においては、垂直ガイドレール22は、溶接ガン10が取り付けられた状態の垂直スライダ21が組み合わせられたまま、複数の横ガイドレール23から取り外し可能となっている。すなわち、横ガイドレール23に組み合わせられる横スライダ22aは分割可能に構成されている。横スライダ22aを分割することで、垂直ガイドレール22を横ガイドレール23から取り外すことができるので、盛替え時等に溶接ガン10側と支持台20側とに分けて運搬しやすい。また、溶接ガン10が取り付けられた状態の垂直スライダ21が組み合わせられたままの垂直ガイドレール22は、よりコンパクト化された支持台(例えば、
図11,
図12における支持台20A,20B)に付け替えることも可能となっている。
【0052】
また、支持台20には水準器(図示省略)が設けられるとともに、支持台20を垂直に調整することができるネジ調整機能(図示省略)を有する。すなわち、スタッドジベル溶接装置Wを水平面に置いて水準器を見た場合に傾きが生じていたら、ネジ調整機能を働かせて、支持台20の姿勢を微調整して垂直にすることができる。
【0053】
また、支持台20の上端部には、把手20aが設けられている。より詳細には、支持台20を構成するフレーム材のうち、複数の横ガイドレール23が架け渡されている上下方向に最も長尺な左右のフレーム材の上端部に把手20aがそれぞれ設けられている。
本実施形態においては、スタッドジベル溶接装置Wを走行させる場合に、作業員が、これらの把手20aを掴んでスタッドジベル溶接装置Wを後方に引っ張るようにして走行させることを想定している。
【0054】
続いて、位置決め手段について説明する。
位置決め手段は、スタッドジベル4の溶接位置を位置決めするものであり、本実施形態においては、第一マーカー31と、第二マーカー32と、が採用されている。第二マーカー32は、第一マーカー31が使用できない場合の予備として採用されているが、これに限られるものではない。すなわち、どちらの位置決め手段を用いるかは、作業員が適宜選択することができる。
【0055】
また、位置決め手段を有効に機能させるために、
図6に示すように、鋼桁2の上面である溶接対象面Sにはケガキ線33が格子状に書き入れられている。
ケガキ線33は、複数のスタッドジベル4が並設される方向に沿って直線状に書き入れられており、平面視において鋼桁2の長さ方向に沿う第一方向に伸びるケガキ線33と、第一方向と直交する第二方向に伸びるケガキ線33と、を含む。
そして、第一方向のケガキ線33と第二方向のケガキ線33との交点がスタッドジベル4の溶接位置とされている。
【0056】
溶接対象面Sにおけるスタッドジベル4の溶接位置は、例えば塗料や汚れが付着していたり、錆が生じていたりするため、素地調整が必要となる。すなわち、例えばディスクサンダー等の動力工具や手工具からなる仕上げ部34を使って研磨して錆や汚れ等を除去し、鋼桁2の素地2aを出すようにする。素地2aを出すことによりスタッドジベル4の溶接強度を向上させることができるが、その一方で、ケガキ線33が消えてしまうことになる。そこで、本実施形態においては、スタッドジベル4の溶接位置を位置決めする位置決め手段が採用される。
【0057】
第一マーカー31は、クロスレーザーマーカー(クロスレーザーポインター)であり、十字状のレーザー光31aを照射する装置本体が、垂直ガイドレール22の下端部に設けられている。十字状のレーザー光31aにおける交点部分は、
図7に示すように、溶接ガン10にセットされたスタッドジベル4の先端部が降下する位置である。そのため、十字状のレーザー光31aと、溶接対象面Sに書き入れられた格子状のケガキ線33とが合致するように、スタッドジベル溶接装置Wを鋼桁2の上面で位置取りすれば、スタッドジベル4の溶接位置の位置決めが完了することになる(
図6参照)。位置決めが完了したら、溶接ガン10を降下させてスタッドジベル4の溶接を行うようにする。
なお、垂直ガイドレール22は、上記のように、複数の横ガイドレール23に沿って横方向にスライド移動はするものの、垂直方向には移動しないため、スタッドジベル溶接装置Wを平面上で移動させる限りは溶接対象面Sまでの距離に変動がない。
【0058】
第二マーカー32は、第一マーカー31と代替可能な位置決め部材(ポインター部材)であり、上記の吊持ロッド11aに装着される(
図2等参照)。
位置決め部材である第二マーカー32は、正方形の一つの角をカットしたような平面形状で90度に設定された三つの角を有する本体板部32aと、吊持ロッド11aの下端部を挟持する挟持部32bと、を備える。
挟持部32bによって吊持ロッド11aの下端部を挟持することで第二マーカー32を吊持ロッド11aに装着できるようになっている。
【0059】
本体板部32aには、当該本体板部32aの中央を厚み方向に貫通する孔が形成され、溶接ガン10の下端部(第二チャック14及び吊持ロッド11aの下端部)が通される。孔の中心と、溶接ガン10にセットされたスタッドジベル4の中心軸とが合致する位置関係となっている。
また、本体板部32aには、三つの角から本体板部32aの中央(上記孔の中心)に向かって伸びる三つのスリット部32cが形成されている。これら三つのスリット部32cも、本体板部32aを厚み方向に貫通しており、上から見た場合に溶接対象面Sが見えるようになっている。
これら三つのスリット部32cは、平面視において90度間隔で三方に伸び、かつ、その延長線が本体板部32aにおける中央の孔の中心で直交する位置関係となっている。そのため、三つのスリット部32cと、溶接対象面Sに書き入れられた格子状のケガキ線33とが合致するように、スタッドジベル溶接装置Wを鋼桁2の上面で位置取りすれば、スタッドジベル4の溶接位置の位置決めが完了することになる(
図6参照)。位置決めが完了したら、溶接ガン10を降下させてスタッドジベル4の溶接を行うようにする。
【0060】
図8は、スタッドジベル4の溶接手順を示している。なお、スタッドジベル4の溶接作業員は1人の作業員によって行われることを想定している。
溶接作業を進めるにあたって、まずは、
図8(a)に示すように、フェルール5が一体的に装着されたスタッドジベル4を溶接ガン10にセットする。
位置決め手段(第一マーカー31又は第二マーカー32)によるスタッドジベル4の位置決めが完了したら、複数の横ガイドレール23に対する垂直ガイドレール22のスライドをストッパー部22bで一時的に固定する。
そして、溶接ガン10を垂直方向に降下させて、
図8(b)に示すように、スタッドジベル4を定位置(溶接位置)にセットし、
図8(c)に示すように、溶け代4aを溶接対象面Sに押し付ける。
続いて、溶接スイッチ12aを押し、
図8(d)に示すように溶接作業を開始し、溶接が完了したらスタッドジベル4から溶接ガン10を外し、
図8(e)に示すように、フェルール5を斫って撤去する。
また、このように一本のスタッドジベル4の溶接が完了したら、ストッパー部22bを操作して垂直ガイドレール22の固定を解除し、垂直ガイドレール22を、複数の横ガイドレール23に沿って移動させて隣のスタッドジベル4の溶接作業を開始する。
【0061】
なお、溶接ガン10は、スタッドジベル4の溶接作業によって発熱する。次の溶接を行うためには、その熱の低下を待つ必要がある。このような時間のロスを軽減するため、スタッドジベル溶接装置Wを2台用意して交互に使用することが好ましい。すなわち、一方のスタッドジベル溶接装置Wにおける溶接ガン10の熱の低下を待っている間に、他方のスタッドジベル溶接装置Wで次のスタッドジベル4の溶接を行うことができるので、時間のロスを軽減できる。
【0062】
以上のような本実施の形態によれば、スタッドジベル溶接装置Wが、スタッドジベル4を保持し、当該保持したスタッドジベル4の先端部を溶接対象面Sに溶接するための溶接ガン10と、この溶接ガン10を支持するとともに、溶接ガン10を、溶接対象面Sに対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台20と、を備えるので、可動機構によって、溶接ガン10を横方向に移動させ、溶接ガン10を溶接対象面Sに対する垂直方向に移動させてスタッドジベル4の溶接ができるようになる。これにより、重量物である溶接ガン10を手で持って移動する機会を極力減らしてスタッドジベル4の溶接が可能となるので、無理な体勢で溶接作業が行われることを防ぎ、スタッドジベル4の溶接を行う作業員の身体への負担を軽減することができる。
【0063】
また、支持台20は、当該支持台20を走行させるための走行部25を有するので、走行部25で走行可能な場所においては支持台20及び溶接ガン10を移動させることができる。これにより、重量物である溶接ガン10を手で持って移動する機会を極力減らすことができるので、スタッドジベル4の溶接を行う作業員の身体への負担を軽減することができる。
【0064】
また、可動機構は、溶接ガン10が取り付けられた垂直スライダ21と、垂直方向に延在し、垂直スライダ21がスライド可能に組み合わせられた垂直ガイドレール22と、横方向に延在し、垂直ガイドレール22がスライド可能に組み合わせられた横ガイドレール23と、垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に設けられ、垂直スライダ21に対し、垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する付勢部材24と、を備えるので、可動機構によって、溶接ガン10を垂直方向と横方向に確実に移動させることができる。
さらに、付勢部材24によって、溶接ガン10を垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢して移動させることができるので、スタッドジベル4の溶接時に溶接対象面Sに向かって移動させた溶接ガン10を、容易に元の位置に戻すことができる。
【0065】
また、垂直ガイドレール22は、横ガイドレール23に対してスライド可能に組み合わせられる横スライダ22aを有しており、横スライダ22aは、横ガイドレール23に沿うスライドを規制するストッパー部22bを備えるので、溶接ガン10の横方向へのスライド移動を一時的に停止し、スタッドジベル4の溶接を正確に行うことができる。
【0066】
また、溶接ガン10は、スタッドジベル4の頭部を保持する第一チャック13と、スタッドジベル4の先端部に一体的に装着されたフェルール5を保持する第二チャック14と、を有するので、スタッドジベル4とフェルール5を別々に取り扱う手間を省略でき、スタッドジベル4の溶接作業の効率化に貢献できる。
【0067】
また、溶接ガン10は、垂直方向に長尺に形成され、作業員が把持して溶接ガン10を垂直方向に沿って操作するための操作レバー12を更に有しているので、作業員が把持する部分をより高い位置に配置できることとなり、中腰や前屈みの状態ではなく、自然体に近い状態で溶接ガン10の操作を行うことができる。
さらに、操作レバー12は、溶接対象面Sとは反対側の端部に溶接スイッチ12aを備えるので、溶接スイッチ12aの位置も手指で扱いやすい位置に配置できることとなり、スタッドジベル4の溶接作業がしやすくなる。
【0068】
また、スタッドジベル溶接装置Wは、溶接対象面Sに設けられた目印(ケガキ線33)に合致させることでスタッドジベル4の溶接位置を位置決めする位置決め手段(第一マーカー31、第二マーカー32)を更に備えるので、位置決め手段を、溶接対象面Sに設けられた目印(ケガキ線33)に合致させることで、スタッドジベル4を位置ずれなく正確に溶接することができる。
【0069】
また、走行部25は、支持台20の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部26と、支持台20の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部27と、第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整する間隔調整部28と、を備えるので、現場の状況に応じて第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整できることとなり、なるべく場所を選ばずにスタッドジベル4の溶接作業を行うことができる。
さらに、第一走行部26と第二走行部27の間隔を広げるように調整すれば、スタッドジベル溶接装置Wの走行が安定的になる。
【0070】
また、走行部25は、溶接対象面Sの面方向に沿って旋回自在に構成された複数の車輪26a,27aであるため、スタッドジベル溶接装置Wの走行方向を適宜変更できる。これにより、支持台20及び溶接ガン10を所望の場所に移動させやすくなり、なるべく場所を選ばずにスタッドジベル4の溶接作業を行うことができる。
【0071】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0072】
〔変形例1〕
図9(a),(b)は、スタッドジベル溶接装置Wによって、溶接対象面Sの縁部に沿ってスタッドジベル4を溶接する場合について説明している。
なお、本変形例における溶接対象面Sは、鋼製の箱桁(ボックスガーダー)7の上面とされている。すなわち、本変形例では、スタッドジベル溶接装置Wによって、その箱桁7の上面における側縁部7aに沿ってスタッドジベル4を溶接する。
【0073】
本変形例においては、溶接ガン10が箱桁7の上面における側縁部7aの上方に位置した状態となるように、スタッドジベル溶接装置Wを箱桁7の上面に配置する。
そのうえで、支持台20における走行部25の各車輪26a,27aを左右方向(複数の横ガイドレール23に沿う方向であって、かつ、箱桁7の長さ方向)に向けた状態で、スタッドジベル溶接装置Wを走行させるようにする。
【0074】
なお、走行部25における各車輪26a,27aには、当該各車輪26a,27aの旋回を90度ごと(前後左右)に一時的に止める旋回ストッパー部が備えられてもよいものとする。
【0075】
本変形例によれば、複数の車輪26a,27aを溶接対象面Sの面方向に沿って旋回させて、スタッドジベル溶接装置Wの走行方向を適宜変更できる。これにより、溶接対象面Sの縁部に沿ってスタッドジベル4を溶接する場合においても、支持台20及び溶接ガン10を移動させやすくなり、なるべく場所を選ばずにスタッドジベル4の溶接作業を行うことができる。
そして、このように溶接対象面Sの縁部に沿ってスタッドジベル4を溶接する場合においても、重量物である溶接ガン10を手で持って移動する機会を極力減らしてスタッドジベル4の溶接が可能となるので、無理な体勢で溶接作業が行われることを防ぎ、スタッドジベル4の溶接を行う作業員の身体への負担を軽減することができる。
【0076】
〔変形例2〕
上記の実施形態における溶接対象面Sは鋼桁2等の上面とされているが、本変形例における溶接対象面Sは、壁や柱等における側面とされている。
図10は、壁8(柱でもよい)の側面が溶接対象面Sとされている。また、溶接対象面Sは、地面から高い位置(高所)での溶接作業を想定している。
【0077】
そして、壁8や柱等の側面にスタッドジベル4を溶接する場合は、スタッドジベル溶接装置W用の移動装置40が用いられる。
また、壁8には、移動装置40を支持するため、壁面から側方に突出する複数のブラケット8aが横方向に間隔を空けて設置されている。さらに、複数のブラケット8aにおける先端部の上面及び下面には、壁8側とその反対側とに分かれた複数の横行フレーム8bが架け渡されて設けられている。
【0078】
スタッドジベル溶接装置W用の移動装置40は、上下移動用フレーム41と、補助フレーム42と、作業架台43と、を備える。
【0079】
上下移動用フレーム41は、スタッドジベル溶接装置Wが取り付けられた作業架台43が上下移動するためのフレームであり、上下方向に長尺に形成されている。
上端部には、ブラケット8aの上側に位置する複数の横行フレーム8bの上面に接する車輪41aと、ブラケット8aの下側に位置する複数の横行フレーム8bの下面に接する車輪41aと、が設けられている。さらに、上下移動用フレーム41は、当該上下移動用フレーム41を横移動させるための駆動部(図示省略)を備えることにより、複数のブラケット8aに架け渡されて設けられた複数の横行フレーム8bに沿って横移動が可能となる。
【0080】
補助フレーム42は、上下移動用フレーム41から壁8に向かって突出して接触することで、上下移動用フレーム41の姿勢を維持するためのフレームである。
突出方向先端部には、図示しない車輪が設けられてもよいし、摩擦係数の低い摺動面が形成されてもよい。
【0081】
作業架台43は、作業員が乗って作業を行うためのものであり、作業架台43を昇降移動させるための駆動部(図示省略)を備えることにより、上下移動用フレーム41に沿って上下方向に移動可能に構成されている。
このような作業架台43は、駆動部によって昇降移動する昇降床部43aと、昇降床部43aの周縁部に設けられた柵43bと、を有する。
【0082】
スタッドジベル溶接装置Wは、作業架台43のうち壁8側の柵43bに一体的に装着されている。また、スタッドジベル溶接装置Wにおける走行部25は、上下移動用フレーム41に接し、当該上下移動用フレーム41の側面に沿って走行する。
また、溶接ガン10は、支持台20の上面もしくは側面に設けられている。
さらに、溶接ガン10における操作レバー12Aは、作業員が操作しやすいように、上方又は側方に突出して設けられている。
支持台20は、適宜、作業架台43に設置しやすい構成を備えていてもよい。
【0083】
以上のように構成された移動装置40とスタッドジベル溶接装置Wによれば、溶接ガン10を、溶接対象面Sに対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動させながらスタッドジベル4の溶接作業を行うことができる。また、作業架台43が上下移動用フレーム41に沿って昇降可能であり、かつ、上下移動用フレーム41が横行フレーム8bに沿って横移動可能であるため、壁8の側面(壁面)の広い範囲に多くのスタッドジベル4を溶接することができる。
【0084】
なお、本変形例においては、以上のような作業架台43を備えた移動装置40によって壁や柱等における側面にスタッドジベル4を溶接するものとしたが、これに限られるものではなく、例えばスタッドジベル溶接装置Wを搭載した作業架台43が設けられた高所作業車(はしご車、リフト車)などを用いてスタッドジベル4の溶接作業を行ってもよい。
【0085】
〔変形例3〕
本変形例におけるスタッドジベル溶接装置W1は、
図11に示すように、上記の実施形態におけるスタッドジベル溶接装置Wよりもコンパクト化されている。
すなわち、本変形例におけるスタッドジベル溶接装置Wは、幅寸法(横方向の寸法)が350mm前後とされ、前後方向の寸法が430mm前後とされている。
操作レバー12の長さも、上記の実施形態のスタッドジベル溶接装置Wにおける操作レバー12よりも100mm程度短く設定されている。
溶接ガン10の移動可能距離については、垂直移動は最大で500~600mm程度とされ、横移動は最大で250mm程度とされている。
【0086】
スタッドジベル溶接装置W1の支持台20Aは、当該支持台20Aの下端部を構成するフレーム材20bを備える。当該フレーム材20bには、支持台20Aを走行させるための走行部25Aが設けられている。
本変形例における走行部25Aは、フレーム材20bの一端側に位置する二つの車輪26a,27aと、他端側に位置する支持脚20cと、を有する。
二つの車輪26a,27aは、横方向(複数の横ガイドレール23に沿う方向)に間隔を空けて配置されている。そのため、スタッドジベル溶接装置W1の軽量化に寄与する一方で、支持台20A下端部のフレーム材20bは、支えがなければ二つの車輪26a,27aによって下方に回転してしまう。このようなフレーム材20bの回転を防止して支持台20Aを支持するために、上記の支持脚20cが設けられている。また、支持脚20cは、フレーム材20bの傾きを調整することも可能となっている。
【0087】
支持脚20cは、上下方向に長尺な本体軸部と、本体軸部の上端部に設けられた横方向に伸びる把持部と、本体軸部の下端部に設けられた接地面となる緩衝部と、を備える。
本体軸部の外周面には雄ネジが形成され、フレーム材20bのうち支持脚20cが配置される箇所には雌ネジ部が設けられている。支持脚20cの操作を行う場合、作業員は、把持部を持って軸回りに回転させることで、本体軸部を上下方向に進退させ、フレーム材20bの傾きを調整することができる。
【0088】
なお、本変形例におけるスタッドジベル溶接装置W1は、支持台20Aがコンパクト化されているだけでなく、操作レバー12も短く形成され、走行部25Aの構成も簡略化されている。そのため、スタッドジベル溶接装置W全体の重量が20kg前後に設定されている。これにより、上記の実施形態におけるスタッドジベル溶接装置Wよりも人の手による運搬が容易となる。
【0089】
〔変形例4〕
図12に示すスタッドジベル溶接装置W2もコンパクト化の一例であり、本変形例におけるスタッドジベル溶接装置W2は、走行部25を備えていない。その代わりに、本変形例におけるスタッドジベル溶接装置W2は、上面に支持台20Bが固定されるとともに溶接対象面Sの上面に載せられる接地フレーム50を備える。
また、本変形例のスタッドジベル溶接装置W2における支持台20Bは、上記のスタッドジベル溶接装置W1における支持台20Aよりも、幅寸法及び前後方向の寸法が共に小さいサイズに設定されており、重量も軽く設定されている。
本変形例によれば、人の手による運搬が格段に容易となる。
【0090】
〔変形例5〕
第二チャックによるフェルールの挟持力が弱いと、スタッドジベルの溶接作業中にフェルールが落下するなどして、スタッドジベルの溶接作業にも影響が出るため、第二チャックによるフェルールの挟持力を向上させたいという要望がある。
本変形例における第二チャック60は、
図13に示すように、第一挟持片61と、第二挟持片62と、回転軸63と、付勢部64と、掴み部65と、を備える。
【0091】
第一挟持片61と第二挟持片62は、セットで用いられて、互いの間に掴み部65を挟み込んで設けるものであり、中央の回転軸63を中心として回転するように構成されている。
より詳細に説明すると、第一挟持片61は、長さ方向の中央部に、第二挟持片62側に突出し、かつ回転軸63が通される貫通孔が形成された中央突出部61aを有する。
第二挟持片62も、長さ方向の中央部に、第一挟持片61側に突出し、かつ回転軸63が通される貫通孔が形成された中央突出部62aを有する。
そして、第一挟持片61の中央突出部61aと、第二挟持片62の中央突出部62aが上下方向に重ねられ、回転軸63が双方の中央突出部61a,62aの貫通孔にいっぺんに通されることで、第一挟持片61と第二挟持片62は、中央の回転軸63を中心として回転する。
【0092】
第一挟持片61と第二挟持片62は、本体部11から伸びる複数本(例えば2本)の吊持ロッド11aによって吊持されている。
より詳細に説明すると、まず、複数本の吊持ロッド11aは、第一挟持片61及び第二挟持片62よりも上方の位置で、間隔保持材11dによって連結されて撓みが抑制されている。
吊持ロッド11aの下端部には、第一挟持片61及び第二挟持片62の下面に接する支持片11eが設けられ、当該支持片11eの上方には、第一挟持片61及び第二挟持片62の上面に接する抑え片11fが設けられている。そして、支持片11eと抑え片11fとの間に、第一挟持片61と第二挟持片62がそれぞれ挟み込まれるようにして設けられて吊持されている。
第一挟持片61及び第二挟持片62のそれぞれには、吊持ロッド11aを上下方向に通すロッド挿通孔61b,62bが貫通形成されている。なお、ロッド挿通孔61b,62bの孔径は、吊持ロッド11aの直径よりも大きく(例えば2mm程度)、遊びが形成された状態となっている。
【0093】
また、第一挟持片61及び第二挟持片62における前端部の掴み部65側に位置する面は、掴み部65の外形に対応する形状に形成されている。具体的には、平面視において湾曲して形成されている。
【0094】
付勢部64は、第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部間に設けられており、
図13(b)における双方向矢印のように、これら第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部同士を離間させる方向(開く方向)に付勢力を付与する。換言すれば、第一挟持片61と第二挟持片62は、中央部が回転軸63によって回転自在に連結されているため、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部同士を接近させる方向(閉じる方向)に付勢力を付与できるようになっている。なお、付勢部64としては、例えば圧縮コイルばね64が用いられており、圧縮コイルばね64の一端部が第一挟持片61の後端部に接し、他端部が第二挟持片62の後端部に接している。
【0095】
また、第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部間には、これら後端部同士間の寸法を調整する調整ボルト64aが、第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部を左右に貫通して設けられている。調整ボルト64aの両端部には、第一挟持片61及び第二挟持片62それぞれの側面に接するナット64bが設けられている。
すなわち、一方又は両方のナット64bを、互いに接近する方向に回転させることで、第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部間の寸法が縮まり、一方又は両方のナット64bを、互いに離間する方向に回転させることで、第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部間の寸法が拡がる。
また、付勢部64である圧縮コイルばね64は、軸方向(リングの内側)に調整ボルト64aが通されることで、第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部間から脱落しないようになっている。
【0096】
なお、第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部のそれぞれには、調整ボルト64aが通される貫通孔が形成されるが、当該貫通孔の孔径は、調整ボルト64aの直径よりも大きく、遊びが形成された状態となっている。
【0097】
また、本変形例における付勢部64は、第一挟持片61及び第二挟持片62の上部側と下部側に2つ設けられている。これに伴って、調整ボルト64aも、第一挟持片61及び第二挟持片62の上部側と下部側に2本設けられており、それぞれの調整ボルト64aの両端部にナット64bが設けられている。
【0098】
掴み部65は、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間に挟み込まれて保持されるとともに、フェルール5の上端部5aを挟持するものである。
より詳細に説明すると、掴み部65は、平面視においてC字型に形成されており、上下方向に開放されているとともに、一部の側方に開放されている。
掴み部65のうち、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間に挟み込まれる部位よりも下方に位置する下端部65aは、下方に向かうにつれて、すぼまるように形成されており、最も下方に位置する部位でフェルール5の上端部5aを挟持する。なお、この下端部65aには、複数のスリットが形成されており、フェルール5の上端部5aを弾性的に挟持できるようになっている。
掴み部65のうち側方に開放されている部位(以下、開放部65b)は、掴み部65自体に弾性を生じさせている。また、掴み部65は、開放部65bが付勢部64とは反対向きとなるように、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間に挟み込まれる。これにより、掴み部65は、付勢部64による付勢力によって第一挟持片61と第二挟持片62の前端部同士が接近したときに、弾性的に径が小さくなるように縮まり、フェルール5の上端部5aを弾性的に挟持できるようになっている。
【0099】
掴み部65の外周面には、ずれ止め部65cが設けられている。ずれ止め部65cは、第一挟持片61及び第二挟持片62側に突出する突条とされている。一方、第一挟持片61及び第二挟持片62における掴み部65側面には、ずれ止め部65cに合致する溝部が形成されている。
掴み部65を、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間に挟み込ませるときに、第一挟持片61及び第二挟持片62の溝部に、ずれ止め部65cを合致させることにより、掴み部65の上下方向への位置ずれを防止できるようになっている。
【0100】
掴み部65は、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間に挟み込まれた状態において、軸心が、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端面よりも後方に位置するように設けられている。そのため、掴み部65は、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間から前方に向かって位置ずれすることを防止できるようになっている。
すなわち、スタッドジベル4の溶接作業が終わったときには、開放部65bが開放されている方向にスタッドジベル4及びフェルール5を抜くことができるが、その際に、掴み部65が、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間から抜け出ることがない。
【0101】
以上のような第二チャック60によれば、フェルール5を直接挟持する掴み部65を、付勢部64によって付勢力が付与された第一挟持片61及び第二挟持片62によって挟み込んで保持できるので、フェルール5を挟持する力が低下することを抑制できる。これにより、スタッドジベル4の溶接作業中にフェルール5が落下するようなことを抑制できるので、スタッドジベルの溶接作業に影響が出にくい。
【0102】
なお、掴み部65は、多数のフェルール5が脱着されるので劣化が早い。そのため、フェルール5を弾性的に挟持する力が弱まった場合には、調整ボルト64a及びナット64bによって第一挟持片61及び第二挟持片62の後端部間の寸法を拡げることで、第一挟持片61及び第二挟持片62の前端部間の寸法を縮め、これにより、掴み部65を絞って径を縮めて、フェルール5を弾性的に挟持する力を強めるようにする。
【0103】
また、第一挟持片61及び第二挟持片62は、吊持ロッド11aに対するロッド挿通孔61b,62bの孔径の遊びの分だけ、吊持ロッド11aに対して僅かに動くことができるので、これら第一挟持片61及び第二挟持片62で保持された掴み部65によってフェルール5を弾性的に挟持するのに貢献できる。
【0104】
さらに、第一挟持片61及び第二挟持片62は、後端部のそれぞれに形成された調整ボルト64a用の貫通孔の孔径が、調整ボルト64aの直径よりも大きく、遊びが形成された状態となっているので、その遊びの分だけ、回転軸63を中心とした第一挟持片61及び第二挟持片62の回転が可能となる。
【0105】
〔第2実施形態〕
次に、図面を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記の第1実施形態との共通部分には同一符号を付して説明を省略又は簡略し、上記の第1実施形態とは異なる構成部分に重点を置いて説明する。また、本実施形態は、上記の各変形例と可能な限り組み合わせてもよい。
【0106】
図14において符号S2は、加工対象面を示す。加工対象面S2は、本実施形態においては例えばコンクリート床版3の表面とされている。ただし、これに限られるものではなく、上記の鋼桁2の上面でもよいし、その他のものの上面でもよい。加工される対象の材質もコンクリートに限られるものではないし、その他、金属や木、樹脂、アスファルト等に限られるものでもなく、加工が必要とされ、かつ加工が可能であれば、特に限定されるものではない。
【0107】
本実施形態における加工対象面S2の加工は、加工対象面S2を加工するための加工装置Pによって行われる。
このような加工装置Pは、
図14,
図15等に示すように、ドリル工具100と、ドリル工具100を支持する支持台20と、ドリル工具100による加工位置を位置決めする位置決め手段と、を備える。
【0108】
ドリル工具100は、ハンマードリルや振動ドリル等の動力工具である。このようなドリル工具100は、付け替え可能な先端工具110dを保持し、当該保持した先端工具110dの先端部を加工対象面に押し付けて加工するためのものであり、本体部110と、操作レバー120と、を有する。
【0109】
本体部110は、支持台20側に取り付けられる部位であり、具体的には、支持台20の可動機構を構成する垂直スライダ21に対して取り付けられている。
また、本体部110は、保持した先端工具110dに沿って配置され、かつ、本体部110によって垂直方向に進退可能に保持された吊持ロッド11a(レグとも言う)を備える。このような吊持ロッド110aは、ストッパーによって任意の位置でその進退が固定可能となっている。
さらに、吊持ロッド110aは、本体部110によって、保持した先端工具110dの軸回りに旋回可能に保持されている。つまり、本体部110は、吊持ロッド110aを垂直方向に進退可能に保持しつつ、先端工具110dの軸回りに旋回可能に保持する保持部を備えるものとする。また、この保持部は、前後左右に90度ずつ、その旋回位置を停止できるように構成されている。
なお、本実施形態における吊持ロッド110aは複数本用いられている。
そして、吊持ロッド110aの下端部(溶接対象面S側の端部)には、第二マーカー32が取り付けられている。
【0110】
また、本体部110は、先端工具110dを保持するチャックアダプタ110cを更に備える。チャックアダプタ110cは、先端工具110dの基端部を着脱可能に構成されており、本体部110に格納された駆動部によって駆動される。
【0111】
先端工具110dは、穴あけ用ドリルが好適に採用されるが、これに限られるものではなく、例えば斫り用のチゼル(タガネとも言う)や、破砕に適したブルポイント等を採用してもよい。
なお、本体部110の側面には、先端工具110dの動作を、「回転のみ」、「打撃のみ」、「回転+打撃」のいずれかに切り替えるための切り替えツマミ110eが設けられている。したがって、加工対象面S2をどのように加工するかによって最適な先端工具110dを選択し、選択された先端工具110dに応じて切り替えツマミ110eを適宜操作する。これにより、加工対象面S2の加工作業を効率良く行うことが可能となる。
【0112】
操作レバー120は、垂直方向に長尺に形成され、作業員が把持してドリル工具100を垂直方向に沿って操作するためのものであり、本体部110の側面(支持台20とは反対側の側面)に固定されている。そして、垂直方向に長尺な当該操作レバー120は、本体部110から加工対象面S2とは反対側に伸びるように配置されている。つまり、操作レバー120の上端部は、作業員が、中腰や前屈みにならないように、手で把持しやすい高さに配置されることとなる。
このような操作レバー120は、加工対象面S2とは反対側の端部に、ドリル工具100に通電を開始するスイッチ120aを備える。すなわち、スイッチ120aを押せば通電が開始されてドリル工具100が稼働し、スイッチ120aを離して元に戻せば通電が止まり、ドリル工具100が停止する。なお、本体部110には、通電のためのケーブルが接続されているものとする。
【0113】
そして、以上のように構成されたドリル工具100は、支持台20が有する可動機構によって、移動可能な状態に支持されている。
【0114】
支持台20は、本実施形態においては、ドリル工具100を支持するものであり、可動機構と、走行部25と、を有する。
可動機構は、ドリル工具100を、加工対象面S2に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とするための機構であり、垂直スライダ21と、垂直ガイドレール22と、複数の横ガイドレール23と、付勢部材24と、を備える。
可動機構の動作や機能は、上記の第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0115】
走行部25は、加工対象面S2(コンクリート床版3の上面:走行面)に沿って支持台20を走行させるためのものであり、支持台20の下端部に設けられている。そして、第一走行部26と、第二走行部27と、第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整する間隔調整部28と、を備える。
走行部25の動作や機能は、上記の第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0116】
続いて、位置決め手段について説明する。
位置決め手段は、ドリル工具100における先端工具110dの位置を位置決めするものであり、本実施形態においては、第一マーカー31と、第二マーカー32と、が採用されている。第二マーカー32は、第一マーカー31が使用できない場合の予備として採用されているが、これに限られるものではない。すなわち、どちらの位置決め手段を用いるかは、作業員が適宜選択することができる。
第一マーカー31及び第二マーカー32の動作や機能は、上記の第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
なお、位置決め手段を有効に機能させるために、加工対象面S2にはケガキ線が格子状に書き入れられているものとする。
【0117】
以上のように構成された加工装置Pによる加工対象面S2の加工作業は1人の作業員によって行われることを想定している。
加工作業を進めるにあたって、まずは
図14に示すように、加工作業に必要な先端工具110dを、ドリル工具100にセットする。ここでは先端工具110dとして、穴あけ用ドリルがセットされている。
位置決め手段(第一マーカー31又は第二マーカー32)による先端工具110dの位置決めが完了したら、複数の横ガイドレール23に対する垂直ガイドレール22のスライドをストッパー部22bで一時的に固定する。
そして、ドリル工具100を垂直方向に降下させて、先端工具110dの先端部を加工対象面S2に接触させる。
続いて、スイッチ120aを押し、
図15に示すように、先端工具110dの先端部を加工対象面S2に押し付けて加工作業(ここでは穴あけ作業)を開始し、加工が完了したら、付勢部材24の付勢方向に沿って先端工具110dを引き抜く。
また、このように一か所の穴あけ作業が完了したら、ストッパー部22bを操作して垂直ガイドレール22の固定を解除し、垂直ガイドレール22を、複数の横ガイドレール23に沿って移動させて隣の箇所の穴あけ作業を開始する。
【0118】
以上のような本実施の形態によれば、加工装置Pが、付け替え可能な先端工具110dを保持し、当該保持した先端工具110dの先端部を加工対象面S2に押し付けて加工するためのドリル工具100と、ドリル工具100を支持するとともに、ドリル工具100を、加工対象面S2に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台20と、を備えるので、可動機構によって、ドリル工具100を横方向に移動させ、ドリル工具100を加工対象面S2に対する垂直方向に移動させて加工作業ができるようになる。これにより、重量物であるドリル工具100を手で持って移動する機会を極力減らしての加工作業が可能となるので、無理な体勢で加工作業が行われることを防ぎ、作業員の身体への負担を軽減することができる。
【0119】
また、支持台20は、当該支持台20を走行させるための走行部25を有するので、走行部25で走行可能な場所においては支持台20及びドリル工具100を移動させることができる。これにより、重量物であるドリル工具100を手で持って移動する機会を極力減らすことができるので、加工作業を行う作業員の身体への負担を軽減することができる。
【0120】
また、可動機構は、ドリル工具100が取り付けられた垂直スライダ21と、垂直方向に延在し、垂直スライダ21がスライド可能に組み合わせられた垂直ガイドレール22と、横方向に延在し、垂直ガイドレール22がスライド可能に組み合わせられた横ガイドレール23と、垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に設けられ、垂直スライダ21に対し、垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する付勢部材24と、を備えるので、可動機構によって、ドリル工具100を垂直方向と横方向に確実に移動させることができる。
さらに、付勢部材24によって、ドリル工具100を垂直ガイドレール22の長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢して移動させることができるので、加工作業時に加工対象面S2に向かって移動させたドリル工具100を、容易に元の位置に戻すことができる。
【0121】
また、垂直ガイドレール22は、横ガイドレール23に対してスライド可能に組み合わせられる横スライダ22aを有しており、横スライダ22aは、横ガイドレール23に沿うスライドを規制するストッパー部22bを備えるので、ドリル工具100の横方向へのスライド移動を一時的に停止し、加工作業を正確に行うことができる。
【0122】
また、ドリル工具100は、垂直方向に長尺に形成され、作業員が把持してドリル工具100を垂直方向に沿って操作するための操作レバー120を更に有しているので、作業員が把持する部分をより高い位置に配置できることとなり、中腰や前屈みの状態ではなく、自然体に近い状態でドリル工具100の操作を行うことができる。
さらに、操作レバー120は、加工対象面S2とは反対側の端部にスイッチ120aを備えるので、スイッチ120aの位置も手指で扱いやすい位置に配置できることとなり、加工作業がしやすくなる。
【0123】
また、加工装置Pは、加工対象面S2に設けられた目印(ケガキ線)に合致させることで先端工具110dの加工位置を位置決めする位置決め手段(第一マーカー31、第二マーカー32)を更に備えるので、位置決め手段を、加工対象面S2に設けられた目印(ケガキ線)に合致させることで、先端工具110dを加工対象面S2の加工箇所に位置ずれなく正確に移動させることができる。
【0124】
また、走行部25は、支持台20の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部26と、支持台20の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部27と、第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整する間隔調整部28と、を備えるので、現場の状況に応じて第一走行部26と第二走行部27の間隔を調整できることとなり、なるべく場所を選ばずに加工作業を行うことができる。
さらに、第一走行部26と第二走行部27の間隔を広げるように調整すれば、加工装置Pの走行が安定的になる。
【0125】
また、走行部25は、加工対象面S2の面方向に沿って旋回自在に構成された複数の車輪26a,27aであるため、加工装置Pの走行方向を適宜変更できる。これにより、支持台20及びドリル工具100を所望の場所に移動させやすくなり、なるべく場所を選ばずに加工作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0126】
S 溶接対象面
W スタッドジベル溶接装置
1 合成桁
2 鋼桁
2a 素地
3 コンクリート床版3
4 スタッドジベル
5 フェルール
6 収納ケース
10 溶接ガン
11 本体部
11a 吊持ロッド
11b 溶接ケーブル
11c チャックアダプタ
12 操作レバー
12a 溶接スイッチ
13 第一チャック
14 第二チャック
20 支持台
21 垂直スライダ
22 垂直ガイドレール
22a 横スライダ
22b ストッパー部
23 横ガイドレール
24 付勢部材
24a 連結部
25 走行部
25a ストッパー部
26 第一走行部
26a 車輪
26b 脚フレーム
26c レール部
27 第二走行部
27a 車輪
27b 脚フレーム
27c レール部
28 間隔調整部
28a 棒部材
28b 係合部
28c 操作部
29 収納ケース載置部
31 第一マーカー
31a レーザー光
32 第二マーカー
32a 本体板部
32b 挟持部
32c スリット部
33 ケガキ線
34 仕上げ部
S2 加工対象面
P 加工装置
100 ドリル工具
110 本体部
110a 吊持ロッド
110c チャックアダプタ
110d 先端工具
110e 切り替えツマミ
120 操作レバー
120a スイッチ
【手続補正書】
【提出日】2021-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項10に記載の発明は、付け替え可能な先端工具を保持し、当該保持した先端工具の先端部を加工対象面に押し付けて加工するためのドリル工具と、
前記ドリル工具を支持するとともに、前記ドリル工具を、前記加工対象面に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台と、を備えており、
前記可動機構は、
前記ドリル工具が取り付けられた垂直スライダと、
前記垂直方向に延在し、前記垂直スライダがスライド可能に組み合わせられた垂直ガイドレールと、
前記横方向に延在し、前記垂直ガイドレールがスライド可能に組み合わせられた横ガイドレールと、
前記ドリル工具を前記垂直方向のうち前記加工対象面から離間する方向に移動させるための付勢部材と、を備えており、
前記付勢部材は、前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に設けられ、前記垂直スライダに対し、前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する巻き取り式の定荷重バネであることを特徴とする。
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の加工装置において、
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、
前記支持台の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部と、
前記支持台の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部と、
前記第一走行部と前記第二走行部の間隔を調整する間隔調整部と、を備えることを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッドジベルを保持し、当該保持したスタッドジベルの先端部を溶接対象面に溶接するための溶接ガンと、
前記溶接ガンを支持するとともに、前記溶接ガンを、前記溶接対象面に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台と、を備えており、
前記可動機構は、前記溶接ガンを前記垂直方向のうち前記溶接対象面から離間する方向に移動させるための付勢部材を備えることを特徴とするスタッドジベル溶接装置。
【請求項2】
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有することを特徴とする請求項1に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項3】
前記可動機構は、
前記溶接ガンが取り付けられた垂直スライダと、
前記垂直方向に延在し、前記垂直スライダがスライド可能に組み合わせられた垂直ガイドレールと、
前記横方向に延在し、前記垂直ガイドレールがスライド可能に組み合わせられた横ガイドレールと、
前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に設けられ、前記垂直スライダに対し、前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する前記付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項4】
前記垂直ガイドレールは、前記横ガイドレールに対してスライド可能に組み合わせられる横スライダを有しており、
前記横スライダは、前記横ガイドレールに沿うスライドを規制するストッパー部を備えることを特徴とする請求項3に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項5】
前記溶接ガンは、
前記スタッドジベルの頭部を保持する第一チャックと、
前記スタッドジベルの先端部に一体的に装着されたフェルールを保持する第二チャックと、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項6】
前記溶接ガンは、前記垂直方向に長尺に形成され、作業員が把持して前記溶接ガンを前記垂直方向に沿って操作するための操作レバーを更に有しており、
前記操作レバーは、前記溶接対象面とは反対側の端部に溶接スイッチを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項7】
前記溶接対象面に設けられた目印に合致させることで前記スタッドジベルの溶接位置を位置決めする位置決め手段を更に備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項8】
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、
前記支持台の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部と、
前記支持台の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部と、
前記第一走行部と前記第二走行部の間隔を調整する間隔調整部と、を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項9】
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、前記溶接対象面の面方向に沿って旋回自在に構成された複数の車輪であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のスタッドジベル溶接装置。
【請求項10】
付け替え可能な先端工具を保持し、当該保持した先端工具の先端部を加工対象面に押し付けて加工するためのドリル工具と、
前記ドリル工具を支持するとともに、前記ドリル工具を、前記加工対象面に対する垂直方向と、当該垂直方向に直交する横方向に移動可能とする可動機構を有する支持台と、を備えており、
前記可動機構は、
前記ドリル工具が取り付けられた垂直スライダと、
前記垂直方向に延在し、前記垂直スライダがスライド可能に組み合わせられた垂直ガイドレールと、
前記横方向に延在し、前記垂直ガイドレールがスライド可能に組み合わせられた横ガイドレールと、
前記ドリル工具を前記垂直方向のうち前記加工対象面から離間する方向に移動させるための付勢部材と、を備えており、
前記付勢部材は、前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に設けられ、前記垂直スライダに対し、前記垂直ガイドレールの長さ方向一端部に向かってスライドさせる方向に付勢力を付与する巻き取り式の定荷重バネであることを特徴とする加工装置。
【請求項11】
前記支持台は、当該支持台を走行させるための走行部を有し、
前記走行部は、
前記支持台の下端部における幅方向一方側に位置する第一走行部と、
前記支持台の下端部における幅方向他方側に位置する第二走行部と、
前記第一走行部と前記第二走行部の間隔を調整する間隔調整部と、を備えることを特徴とする請求項10に記載の加工装置。