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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083398
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】入力回路及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/48 20060101AFI20220527BHJP
   H03F 1/34 20060101ALI20220527BHJP
   G01R 13/20 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
H03F1/48
H03F1/34
G01R13/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162527
(22)【出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2020194739
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
(72)【発明者】
【氏名】林 和延
(72)【発明者】
【氏名】関 憲一
(72)【発明者】
【氏名】依田 元
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA11
5J500AC18
5J500AC64
5J500AF07
5J500AF12
5J500AF17
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK01
5J500AM13
5J500AS15
5J500AT01
5J500AT03
5J500NH16
5J500NM02
(57)【要約】
【課題】簡易な手法により周波数特性の平坦性の悪化を抑制する。
【解決手段】電位信号Vinが入力される入力回路100は、反転増幅回路を構成するオペアンプ10と、オペアンプ10の反転入力端子(-)に接続される入力抵抗11と、オペアンプ10の出力端子から反転入力端子(-)に信号が帰還する経路に配置される帰還抵抗12と、を備える。帰還抵抗12は、直列接続された複数の抵抗素子121,122からなり、入力回路100は、抵抗素子121,122同士の接続点と電位信号Vinの基準となる基準電位(GND)との間に接続され、入力抵抗11に寄生する容量Cpを補償するための補償容量13を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位信号が入力される入力回路であって、
反転増幅回路を構成するオペアンプと、
前記オペアンプの反転入力端子に接続される入力抵抗と、
前記オペアンプの出力端子から前記反転入力端子に信号が帰還する経路に配置され、直列接続された複数の抵抗素子からなる帰還抵抗と、
前記抵抗素子同士の接続点と前記電位信号の基準となる基準電位との間に接続され、前記入力抵抗に寄生する容量を補償するための補償容量と、
を含む入力回路。
【請求項2】
請求項1に記載の入力回路であって、
前記補償容量は、前記入力抵抗に寄生する容量の容量値と、前記帰還抵抗の抵抗値に対する前記入力抵抗の抵抗値の比率と、に基づいて定められる、
入力回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の入力回路であって、
前記補償容量は、セラミックコンデンサである、
入力回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の入力回路であって、
前記入力抵抗に対して並列に接続される入力容量と、
前記帰還抵抗を構成する前記抵抗素子に対してそれぞれ並列に接続される複数の容量素子と、
を含む入力回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の入力回路であって、
分圧抵抗を有し、
前記入力抵抗は、直列接続された複数の抵抗素子からなり、
前記分圧抵抗は、前記入力抵抗における隣接する抵抗素子同士の接続点と前記基準電位との間に接続され、
前記入力抵抗に対して並列に接続される入力容量は、前記入力抵抗を構成する抵抗素子に対してそれぞれ並列に接続される複数の容量素子を有する、
入力回路。
【請求項6】
請求項5に記載の入力回路であって、
前記補償容量は、前記入力回路の入力端子と前記接続点との間に接続される一又は複数の抵抗素子に寄生する容量の容量値と、前記帰還抵抗の抵抗値に対する前記一つの抵抗素子の抵抗値の比率と、に基づいて定められる、
入力回路。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の入力回路であって、
前記入力抵抗は、直列接続された複数の抵抗素子からなり、
前記帰還抵抗を構成する抵抗素子の個数は、前記入力抵抗を構成する抵抗素子の個数以上である、
入力回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の入力回路であって、
前記オペアンプは、有効周波数帯域の上限が数MHz以上である高速オペアンプである、
入力回路。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の入力回路と、
前記入力回路から出力される信号に基づいて電圧を測定する測定部と、
を含む測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位信号が入力される入力回路及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力端子に印加された電圧を変換するための複数の抵抗と、入力端子に接続された抵抗の寄生容量に起因する周波数特性の平坦性の悪化を補償するためのマッチングボックスと、を備える回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-258273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回路では、入力端子に印加される電圧を変換するための構成の他に、回路構成が複雑であるマッチングボックスを設けることが必要になる。また、周波数特性の平坦性の悪化を補償する際にはマッチングボックスを構成する複数の可変素子を調整するための手順も複雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、簡易な手法により周波数特性の平坦性の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、電位信号が入力される入力回路は、反転増幅回路を構成するオペアンプと、前記オペアンプの反転入力端子に接続される入力抵抗と、前記オペアンプの反転入力端子及び出力端子間に接続され、直列接続された複数の抵抗素子からなる帰還抵抗とを含む。さらに入力回路は、前記抵抗素子同士の接続点と前記電位信号の基準となる基準電位との間に接続され前記入力抵抗に寄生する容量を補償するための補償容量を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様によれば、帰還抵抗を構成する抵抗素子同士の接続点と基準電位との間に補償容量を配置することにより、入力抵抗の寄生容量に相当する容量成分を補償することが可能となる。したがって、簡易な手法により、入力抵抗の寄生容量に起因する周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第一実施形態における入力回路の構成を示す回路図である。
図2図2は、第二実施形態における入力回路の構成を示す回路図である。
図3図3は、入力回路の周波数特性と補償容量素子の個数との関係を説明するための図である。
図4図4は、入力回路の周波数特性と補償容量の合成値との関係を説明するための図である。
図5図5は、第三実施形態における入力回路の構成を示す回路図である。
図6図6は、第四実施形態における測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0010】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態における入力回路100の構成を示す回路図である。
【0011】
入力回路100は、電位信号を変換するための電気回路であり、入力端子1に入力される直流又は交流の電位信号を異なる電位信号に昇圧又は減圧する。入力回路100は、例えば、オシロスコープのプローブ又は測定装置内の入力部などに設けられる。
【0012】
入力回路100の入力端子1には、例えば1[Hz]から数[MHz]までの電位信号Vinが入力される。本実施形態における電位信号Vinは、数[kV]の高電位を示す信号である。
【0013】
入力回路100は、あらかじめ定められた利得で入力信号を増幅する反転増幅回路によって構成される。入力回路100は、本実施形態では、入力端子1に入力された電位信号Vinを減圧し、電位信号Vinを減圧した電圧値を示す減圧信号Voutを出力端子2に伝達する。
【0014】
本実施形態における入力回路100は、オペアンプ10と、入力抵抗11と、帰還抵抗12と、補償容量13と、入力容量21と、帰還容量22とを備える。
【0015】
オペアンプ10は、反転増幅回路の一部を構成する回路素子である。オペアンプ10は、一般のオペアンプでもよく、又は有効周波数帯域の上限が数MHz以上である高速オペアンプであってもよい。本実施形態では、オペアンプ10は、高速オペアンプによって構成される。
【0016】
オペアンプ10は、入力回路100の入力端子1に入力される信号を所定の利得で増幅する。ここで所定の利得Gは、次式(1)によって定められる。
【0017】
【数1】
【0018】
なお、入力インピーダンスZ1は、入力端子1とオペアンプ10の反転入力端子(-)との間のインピーダンスであって、入力抵抗11及び入力容量21を合成したインピーダンスである。帰還インピーダンスZ2は、オペアンプ10の出力端子と反転入力端子(-)との間のインピーダンスであって、帰還抵抗12及び帰還容量22を合成したインピーダンスである。
【0019】
上式(1)のように、入力回路100の利得Gは、入力インピーダンスZ1に対する帰還インピーダンスZ2の比率に相当し、例えば1000分の1に調整される。
【0020】
オペアンプ10の非反転入力端子(+)には、電位信号Vinの基準となる基準電位が入力される。本実施形態では一例として概ね0[V]を示すグランド電位GNDが基準電位として用いられる。
【0021】
入力抵抗11は、入力端子1から電位信号Vinが入力される電気抵抗であり、入力回路100を構成する反転増幅回路の利得(増幅率)を調整するために用いられる。入力抵抗11は、一又は複数の抵抗素子からなり、例えば、一般の抵抗器又は一般の抵抗器よりも高い電圧で使用可能な高耐圧抵抗器によって実現される。
【0022】
本実施形態における入力抵抗11は、抵抗素子の一例として数[MΩ]から数十[MΩ]の抵抗値を有する高耐圧抵抗器110によって構成される。この高耐圧抵抗器110には、抵抗パターンの経路が長くなるよう、電極間に多数の折り返し部を有する蛇行形状の抵抗パターンが形成されている。
【0023】
その結果、高耐圧抵抗器110の抵抗パターンに形成された多数の折り返し部とグランド電位GNDとの間で、分布定数回路のように多数の容量結合が連続して分布する。それゆえ、高耐圧抵抗器110には、その電極間に沿って多数の静電容量成分が連続的に寄生している。図1においては、高耐圧抵抗器110の電極間に沿って連続的に分布する多数の容量結合を合成した合成容量が寄生容量Cpとして示されている。
【0024】
このように、本実施形態の入力抵抗11には寄生容量Cpが付加される。寄生容量Cpの合成値は、例えば数[pF]の容量値を有し、この寄生容量Cpの存在により反転増幅回路からなる入力回路100の振幅周波数特性の平坦性が悪化する。以下では入力回路の振幅周波数特性のことを単に周波数特性と称する。
【0025】
入力容量21は、電位信号Vinの交流成分が入力される静電容量である。入力容量21は、入力抵抗11に対して並列接続される。入力容量21は、一又は複数の容量素子からなる。
【0026】
本実施形態では、入力容量21は、一つの容量素子210によって構成される。容量素子210は、周波数特性の平坦性を高めるために、後述する帰還容量22と共に用いられる。容量素子210においては一端が高耐圧抵抗器110の一端に接続され、他端が高耐圧抵抗器110の他端に接続される。
【0027】
帰還抵抗12は、オペアンプ10の出力端子から反転入力端子(-)に帰還される電流経路に配置される電気抵抗である。帰還抵抗12は、オペアンプ10の出力端子と反転入力端子(-)との間に接続されるとともに入力抵抗11の出力端に接続される。帰還抵抗12の抵抗値を調整することで入力回路100の利得を変更可能である。
【0028】
本実施形態では、入力回路100が減衰器として機能するよう、帰還抵抗12の抵抗値は、入力抵抗11の抵抗値よりも小さな値に設定される。帰還抵抗12の抵抗値は、例えば数十[kΩ]に設定される。
【0029】
帰還抵抗12は、帰還抵抗12に静電容量を付加するために、複数の抵抗素子によって構成される。帰還抵抗12に静電容量を付加することで、オペアンプ10において入力抵抗11の寄生容量Cpに起因する入力信号の乱れを相殺することが可能となる。
【0030】
本実施形態では、帰還抵抗12は、互いに直列接続された二つの抵抗素子121,122によって構成される。なお、帰還抵抗12を構成する抵抗素子の個数は、二個に限られず、三個以上であってもよい。
【0031】
帰還容量22は、オペアンプ10の出力端子から反転入力端子(-)に向かって流れる帰還電流の交流成分が入力される静電容量である。帰還容量22は、上述の入力容量21と共に、入力回路100の反転増幅回路の動作可能な有効周波数の上限を高くするために用いられる。帰還容量22は、帰還抵抗12に対して並列接続される。
【0032】
帰還容量22は、直列接続された複数の容量素子からなり、本実施形態では一例として二つの容量素子221,222によって構成される。容量素子221,222はそれぞれ抵抗素子121,122に並列接続されている。
【0033】
本実施形態では、入力回路100の周波数特性を平坦にするために、帰還容量22の合成容量値は、次式(2)の関係が成立するよう定められる。帰還容量22の容量値は、例えば数千[pF]の容量値に設定される。
【0034】
【数2】
【0035】
なお、抵抗値R1は入力抵抗11の抵抗値であり、抵抗値R2は帰還抵抗12の合成抵抗値である。そして容量値C1は入力容量21の容量値であり、容量値C2は、帰還容量22の合成容量値である。
【0036】
上式(2)の関係が成立するよう帰還容量22の容量値を設定することにより、入力回路100の入力端子1に印加される直流及び高周波の電位信号Vinが共に同じ利得で増幅することが可能となる。
【0037】
しかしながら、入力抵抗11に付加された寄生容量Cpに起因して入力回路100の周波数特性の平坦性が悪化してしまう。この対策として本実施形態では、入力回路100に補償容量13が備えられている。
【0038】
補償容量13は、入力抵抗11の寄生容量Cpを補償するための静電容量である。本実施形態における補償容量13は、一つの容量素子130によって構成される。容量素子130は、例えば、一般のコンデンサ又はセラミックコンデンサなどにより実現される。
【0039】
本実施形態では、容量素子130の一端が抵抗素子121と抵抗素子122との接続点に対して接続され、容量素子130の他端がグランド電位GNDを有する筐体又はグランド線に接続される。すなわち、容量素子130は、互いに接続された抵抗素子121,122の接続点とグランド電位GNDとの間に接続される。
【0040】
本実施形態における容量素子130は、セラミックコンデンサによって構成される。これにより、一般のコンデンサに比べて熱変動又は経年劣化などに起因する容量変化が小さいので、入力回路100の周波数特性の変動が抑えられる。
【0041】
補償容量13の容量値は、入力回路100の周波数特性が概ね平坦になるように設定される。例えば、補償容量13の容量値は、入力抵抗11の寄生容量Cpと帰還抵抗12に対する入力抵抗11の比率とに基づいて定められる。より詳細には、補償容量13の容量値は、次式(3)のように、入力抵抗11の寄生容量Cpを、帰還抵抗12に対する入力抵抗11の比率(R1/R2)に乗じて得られる値C3に設定される。
【0042】
【数3】
【0043】
なお、上式(3)に示す入力抵抗11の寄生容量Cpは、実際に計測することが困難である。そのため、実験又はシミュレーションを通して、入力回路100の周波数特性の平坦性の悪化が抑制されるように補償容量13の容量値が調整される。
【0044】
このように、本実施形態では、入力抵抗11に寄生容量Cpが寄生する入力回路100において、反転増幅回路を構成する帰還抵抗12に補償容量13を付加することによって、利得の周波数特性に生じる平坦性の悪化を抑制することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態では入力抵抗11及び帰還抵抗12に対してそれぞれ入力容量21及び帰還容量22を並列に接続する構成例について説明したが、これに限られない。入力回路100から入力容量21及び帰還容量22を取り除いた回路構成であっても、帰還抵抗12に補償容量13を付加することにより、入力抵抗11の寄生容量Cpに起因する周波数特性の平坦性の悪化を抑制することが可能である。
【0046】
また、本実施形態では帰還抵抗12を構成する抵抗素子121,122の個数が二個である例について説明したが、これに限られず、三個以上であってもよい。帰還抵抗12を構成する抵抗素子の個数が三個以上の場合は、抵抗素子同士の接続点と基準電位間に容量素子をそれぞれ配置する。
【0047】
次に、第一実施形態における作用効果について詳細に説明する。
【0048】
本実施形態において、電位信号Vinが入力される入力回路100は、反転増幅回路を構成するオペアンプ10と、オペアンプ10の反転入力端子に接続される入力抵抗11と、オペアンプ10の出力端子から反転入力端子に信号が帰還する経路に配置される帰還抵抗12とを備える。
【0049】
さらに入力回路100は、入力抵抗11に寄生する容量である寄生容量Cpを補償するための補償容量13を備える。そして、帰還抵抗12は、直列接続された複数の抵抗素子としての二つの抵抗素子121,122からなり、補償容量13は、抵抗素子121,122同士の接続点とグランド電位GNDとの間に接続される。グランド電位GNDは、電位信号Vinの基準となる基準電位としての役割を果たす。
【0050】
この構成によれば、入力抵抗11および寄生容量Cpからなる入力インピーダンスと帰還抵抗12及び補償容量13からなる帰還インピーダンスとを比例関係に近づける補償容量13を設けることで、周波数特性の平坦性の悪化を補償することが可能になる。それゆえ、入力抵抗11の寄生容量Cpに起因する入力回路100における周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。
【0051】
したがって、寄生容量Cpを補償するために設けられたマッチングボックスを入力回路100の出力端子2に接続した一般的な回路構成に比べて、簡易な構成により入力回路100の周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。
【0052】
これに加え、上述のマッチングボックスは、回路構成が複雑であり、かつ、可変素子の調整手順も複雑であるのに対し、本実施形態では、帰還抵抗12に補償容量13を付加してその容量値を調整すればよい。それゆえ、本実施形態によれば、一般的な回路構成に比べて、入力回路100の回路構成が簡素であり、かつ、入力回路100の周波数特性を比較的平坦にすることが容易である。
【0053】
また、本実施形態における補償容量13は、上式(3)に示したように、入力抵抗11の寄生容量Cpと、帰還抵抗12に対する入力抵抗11の比率(R1/R2)と、に基づいて定められる。
【0054】
この構成によれば、寄生容量Cpの実測値又は想定値に基づいて補償容量13の容量値を設定できるので、入力回路100の周波数特性の調整に要する作業負担を軽減することができる。
【0055】
また、本実施形態における補償容量13は、セラミックコンデンサである。このセラミックコンデンサは、一般のコンデンサに比べて熱変動及び経年劣化に伴う容量変化が小さいので、補償容量13の熱変動及び経年劣化に起因する入力回路100の周波数特性の変動を抑制するこができる。
【0056】
また、本実施形態における入力回路100は、入力抵抗11に対して並列に接続される入力容量21と、帰還抵抗12の各抵抗素子121,122に対して並列に接続される複数の容量素子221,222とを含む。
【0057】
この構成によれば、入力回路100は、入力容量21及び帰還容量22を削除した回路構成に比べて、高周波側の周波数特性を平坦な特性に近づけることが可能となる。それゆえ、電位信号Vinが高周波信号であっても、入力回路100は、直流信号を増幅する時の利得と同程度の利得で高周波の電位信号Vinを増幅することが可能となる。
【0058】
(第二実施形態)
入力端子1に印加される電位信号Vinが数[kV]を超えるような高電位である場合、安全基準で定められた沿面距離を確保するために、入力抵抗11を複数の抵抗素子を用いて構成することが必要となることも想定される。そこで、入力抵抗11を複数の抵抗素子で構成した入力回路の構成例を第二実施形態として説明する。
【0059】
図2は、第二実施形態における入力回路101の構成を示す回路図である。
【0060】
入力回路101は、図1に示した入力回路100のように、オペアンプ10と、入力抵抗11と、帰還抵抗12と、補償容量13と、入力容量21と、帰還容量22とを備える。なお、本実施形態のオペアンプ10は、第一実施形態の構成と同じ構成であるため、オペアンプ10についての説明を省略する。
【0061】
入力抵抗11は、直列接続された複数の抵抗素子からなり、本実施形態では沿面距離に応じて定めされたk個の抵抗素子11(1)乃至(k)によって構成される。入力抵抗11の分割数である個数kは、二以上の整数である。個数kは、必要に応じて定められるものであり、例えば十個程度に設定される。
【0062】
本実施形態における抵抗素子11(1)乃至(k)は、高耐圧抵抗器によって実現される。抵抗素子11(1)乃至(k)の各抵抗値は、共に同じ値でもよく、互いに異なる値であってもよい。
【0063】
入力抵抗11には、第一実施形態と同様、グランド電位GNDとの間で静電容量が寄生する。例えば、抵抗素子11(1)乃至(k)には、それぞれ抵抗パターンとグランド電位GNDとの間の容量結合に起因する寄生容量Cp(1)乃至(k)が形成される。
【0064】
さらに、抵抗素子11(1)乃至(k)のうち隣接する二つの抵抗素子同士の接続点ごとに接続点とグランド電位GNDとの間に寄生容量Cp2(1)乃至(k-1)が形成される。例えば、第一の抵抗素子11(1)と第二の抵抗素子11(2)との接続点には寄生容量Cp2(1)が形成され、第二の抵抗素子11(2)と第三の抵抗素子11(3)との接続点にも寄生容量Cp2(2)が形成される。
【0065】
したがって、本実施形態における入力抵抗11の寄生容量は、図2に示す寄生容量Cp1(1)乃至Cp1(k)の各容量値と寄生容量Cp2(1)乃至(k-1)の各容量値とを合成した値となる。
【0066】
一般的に、寄生容量Cp1(1)乃至(k)の容量値のほうが寄生容量Cp2(1)乃至(k-1)の容量値よりも大きい。しかしながら、入力抵抗11の寄生容量は、寄生容量Cp2(1)乃至(k-1)の存在により第一実施形態の寄生容量Cpに比べて増加する場合もある。このような場合、帰還抵抗12に補償容量13を付加しなければ、寄生容量が増加した分だけ入力回路101の周波数特性の平坦性がさらに悪化してしまう。
【0067】
入力容量21は、入力抵抗11と同様、直列接続された複数の容量素子からなり、本実施形態ではk個の容量素子21(1)乃至(k)によって構成される。容量素子21(1)乃至(k)は、それぞれ抵抗素子11(1)乃至(k)に対して並列に接続される。
【0068】
例えば、第一の容量素子21(1)は、第一の抵抗素子11(1)に並列接続され、第二の容量素子21(2)は、第二の抵抗素子11(2)に並列接続され、入力容量素子21(k)は、抵抗素子11(k)に並列接続される。
【0069】
帰還抵抗12は、直列接続された複数の抵抗素子からなり、本実施形態では一例としてn個の抵抗素子12(1)乃至(n)によって構成される。帰還抵抗12の分割数を示す個数nは、二以上の整数である。帰還抵抗12の分割数nは、入力抵抗11の分割数k以上であることが望ましい。
【0070】
帰還抵抗12の分割数nは、入力回路101のスペース又は定格電力などに応じて定められ、例えば8個に設定される。抵抗素子12(1)乃至(n)の各抵抗値は、共に同じ値でもよく、互いに異なる値であってもよい。
【0071】
帰還容量22は、帰還抵抗12と同様、直列接続された複数の容量素子からなり、本実施形態ではn個の容量素子22(1)乃至(n)によって構成される。容量素子22(1)乃至(n)は、それぞれ容量素子22(1)乃至(n)に対して並列に接続される。
【0072】
補償容量13は、入力抵抗11の寄生容量Cp1(1)乃至(k)と寄生容量Cp2(1)乃至(k-1)との合成容量を補償するための静電容量である。補償容量13は、帰還抵抗12とグランド電位GNDとの間に並列接続される複数の容量素子からなり、本実施形態では一例としてn-1個の容量素子13(1)乃至(n-1)によって構成される。
【0073】
例えば、第一の容量素子13(1)は、第一及び第二の抵抗素子12(1),12(2)同士の接続点とグランド電位GNDとの間に接続され、第二の容量素子13(2)は、第二及び第三の抵抗素子12(2),12(3)同士の接続点とグランド電位GNDとの間に接続される。
【0074】
容量素子13(1)乃至(k-1)の各容量値は、互いに同じ値でも、異なる値であってもよい。容量素子13(1)乃至(k-1)の各容量値を合成した補償容量13の合成値は、第一実施形態と同様、入力回路101の周波数特性の平坦性の悪化が抑制されるような値に調整される。
【0075】
このように、本実施形態では入力抵抗11を複数の抵抗素子11(1)乃至(k)で分割した場合でも、帰還抵抗12に複数の容量素子13(1)乃至(n-1)からなる補償容量13を付加することで、入力回路101の周波数特性の平坦性を改善させることができる。
【0076】
なお、本実施形態においても第一実施形態と同様、入力抵抗11及び帰還抵抗12に対してそれぞれ入力容量21及び帰還容量22を並列に接続する構成例について説明したが、これに限られない。例えば、入力回路101から入力容量21及び帰還容量22を取り除いた回路構成であっても、帰還抵抗12に補償容量13を付加することで周波数特性平坦性の悪化を抑制することが可能である。
【0077】
続いて、シミュレーション解析によって得られた入力回路101の周波数特性について図3及び図4を参照して説明する。
【0078】
入力回路101のシミュレーション条件は、入力抵抗11の抵抗値R1を24.2[MΩ]とし、抵抗素子11(1)乃至(k)の個数を11個とし、抵抗素子11(1)乃至(k)の各抵抗値を2.2[MΩ]とした。さらに、帰還抵抗12の抵抗値R2を24.2[kΩ]とし、入力回路101の減衰利得を1/1000とした。
【0079】
また、入力抵抗11の寄生容量の容量値を3.3[pF]とし、寄生容量Cp1(1)乃至(k)の各容量値を0.3[pF]とした。なお、寄生容量Cp2(1)乃至(k)は、解析結果に与える影響が無視できるほど小さいものとして考慮しなかった。
【0080】
図3は、帰還抵抗12に付加される容量素子13(1)乃至(n-1)の個数と入力回路101の周波数特性との関係を説明するための図である。
【0081】
図3に示すように、帰還抵抗12に補償容量13が付加されていない状態を指す「補償無し」では、入力抵抗11の寄生容量によって入力回路101の周波数特性にリップルが生じ周波数特性の平坦性が悪化してしまう。
【0082】
これに対し、帰還抵抗12に補償容量13を付加することによって、入力回路101の周波数特性の平坦性の悪化が抑制されることがわかる。より詳細には、帰還抵抗12の分割数が3個、5個、10個、20個と増加するにつれ、すなわち容量素子13(1)乃至(n-1)の個数が多くなるにつれて、入力回路101の周波数特性が平坦な特性に近づいている。
【0083】
この理由は、入力抵抗11の寄生容量が分布定数回路のように多数の容量結合が連続的に分布していることが要因であると考えられる。それゆえ、入力抵抗11の寄生容量と同じように多数の容量素子13(1)乃至(n-1)を連続して分布させることで周波数特性の平坦性が改善しやすくなる。
【0084】
このように、入力抵抗11の寄生容量は、分布定数回路のように電極間に沿って多数の容量結合が連続的に分布していることから、補償容量13を構成する容量素子の個数が多いほど入力回路100,101の周波数特性の平坦性の悪化は抑制される。それゆえ、帰還抵抗12を構成する抵抗素子12(1)乃至(n)の個数は、入力抵抗11を構成する抵抗素子11(1)乃至(k)の個数よりも多くすることが好ましい。
【0085】
図4は、帰還抵抗12に付加される補償容量13の容量値と入力回路101の周波数特性との関係を説明するための図である。ここでは、補償容量13を構成する容量素子13(1)乃至(n-1)の個数を7個とした。
【0086】
図4に示すように、補償容量13の容量値が大きくなるほど入力回路101の周波数特性に生じるリップルの最小点が上昇している。補償容量13の容量値を、上記式(3)で得られる値C3に相当する容量値に設定することにより、入力抵抗11の寄生容量に起因する周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。
【0087】
なお、図4において、補償容量13に上式(3)の容量値C3を設定した「中(最適値)」であっても周波数特性が完全に平坦にできていない理由は、容量素子13(1)乃至(n-1)の個数が十分でないことが要因であると考えられる。
【0088】
次に、第二実施形態における作用効果について詳細に説明する。
【0089】
本実施形態における入力回路101は、図1に示した入力回路100と同様の構成を有する。これにより、入力抵抗11の寄生容量に起因する入力回路101の周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。その他に第一実施形態での作用効果と同様の作用効果を得ることもできる。
【0090】
また、本実施形態における入力抵抗11は、直列接続された複数の抵抗素子11(1)乃至(k)からなり、入力容量21は、入力抵抗11を構成する抵抗素子11に対してそれぞれ並列に接続される複数の容量素子21(1)乃至(k)からなる。
【0091】
この構成によれば、安全基準で定められた沿面距離を確保できる。一方、抵抗素子11(1)乃至(k)同士の各接続点とグランド電位GNDとの間に形成される寄生容量Cp2(1)乃至(k-1)により、入力抵抗11の寄生容量が増加して入力回路101の周波数特性に与える影響が大きくなることも想定される。
【0092】
このように入力抵抗11の分割に起因して入力回路101の周波数特性の平坦性がさらに悪化するような状況であっても、帰還抵抗12に対して補償容量13を付加することによって、入力回路101の周波数特性の平坦性を改善させることができる。それゆえ、簡易な手法により、入力回路101における沿面距離の確保と周波数特性の平坦性の改善との相反する課題を同時に解決することができる。
【0093】
また、本実施形態において帰還抵抗12を構成する抵抗素子12(1)乃至(n)の個数は、入力抵抗11を構成する抵抗素子11(1)乃至(k)の個数以上にすることが好ましい。
【0094】
この構成によれば、帰還抵抗12に付加される容量素子13(1)乃至(n-1)が入力抵抗11に形成される寄生容量の分布に近づくので、入力回路101の周波数特性をより平坦な特性に近づけることが可能となる。
【0095】
(第三実施形態)
図5は、第三実施形態における入力回路102の構成を示す回路図である。
【0096】
入力回路102は、図2に示した入力回路101のように、オペアンプ10と、入力抵抗11と、帰還抵抗12と、補償容量13と、入力容量21と、帰還容量22とを備える。
【0097】
これに加え、入力回路102は、入力抵抗11からオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される電位信号を分圧するための分圧抵抗113と、分圧抵抗113に並列接続された分圧容量213と、を備えている。また、本実施形態では、入力抵抗11は、直列接続された複数の分割抵抗111,112を有する。
【0098】
分圧抵抗113は、入力抵抗11における隣接する分割抵抗111,112同士の接続点とグランド電位GNDとの間に接続される。具体的には、分圧抵抗113の一端は、入力抵抗11のうちオペアンプ10の反転入力端子(-)に接続された一つの分割抵抗112と当該一つに直列接続された他の一つの分割抵抗111との接続点に接続され、分圧抵抗113の他端はグランド電位GNDに接続される。
【0099】
分割抵抗111,112及び分圧抵抗113の各抵抗値は、共に同じ値でもよく、互いに異なる値であってもよい。分割抵抗111,112及び分圧抵抗113の各々は、一つの抵抗素子でもよく、直列接続された複数の抵抗素子によって構成されてもよい。本実施形態では抵抗素子の一例として高耐圧抵抗器が用いられる。
【0100】
入力容量21は、分割抵抗111,112に対してそれぞれ並列接続された分割容量211,212を有する。分割容量211,212及び分圧容量213の各容量値は、共に同じ値でもよく、互いに異なる値であってもよい。
【0101】
ここで、補償容量13の容量値の設定手法について説明する。まず、入力回路102の利得Gは、次式(4)のように表される。
【0102】
【数4】
【0103】
なお、入力インピーダンスZ11は、第一の分割抵抗111及び第一の分割容量211を合成したインピーダンスであり、入力インピーダンスZ12は、第二の分割抵抗112及び第二の分割容量212を合成したインピーダンスである。そして、入力インピーダンスZ13は、分圧抵抗113及び分圧容量213を合成したインピーダンスであり、帰還インピーダンスZ2は、上述の通り、帰還抵抗12及び帰還容量22を合成したインピーダンスである。
【0104】
上式(4)において次式(5)の条件が成立する場合、上式(4)は、次式(6)のように近似することができる。
【0105】
【数5】
【数6】
【0106】
上式(5)の関係が成立するような場合、入力回路102の利得Gについては、入力インピーダンスZ11及び帰還インピーダンスZ2のみが寄与する。それゆえ、補償容量13の容量値は、インピーダンスZ11の寄生容量Cp1のみに基づいて、上式(3)と同じように定めればよいことがわかる。
【0107】
したがって、補償容量13の容量値は、次式(7)のように、分割抵抗111の寄生容量Cp1と、帰還抵抗12の抵抗値R2に対する分割抵抗111の抵抗値R11の比率(R11/R2)と、を乗じて得られる値C3に相当する容量値に設定される。
【0108】
【数7】
【0109】
このように、補償容量13の容量値C3は、分割抵抗111の寄生容量Cp1の容量値と帰還抵抗12の抵抗値R2に対する分割抵抗111の抵抗値R11の比率(R11/R2)とに基づいて定められる。これにより、簡易な手法により、入力回路102の周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。
【0110】
なお、本実施形態では入力抵抗11が二つの分割抵抗111,112で構成されているが、三個以上の抵抗素子で構成されてもよい。この場合、一端がグランド電位GNDに接続された分圧抵抗113の他端は、入力抵抗11を構成する抵抗素子同士の接続点のうちのいずれか一つに接続される。
【0111】
続いて、第三実施形態における作用効果について説明する。
【0112】
本実施形態における入力回路102は、図1及び図2に示した入力回路100,101と同様の構成を有する。これにより、入力抵抗11の寄生容量に起因する入力回路102の周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。その他に第一及び第二実施形態での作用効果と同様の作用効果を得ることもできる。
【0113】
また、本実施形態における入力抵抗11は、直列接続された複数の抵抗素子として、二つの分割抵抗111,112を有する。さらに入力回路102は、分圧抵抗113を有し、この分圧抵抗113は、入力抵抗11における隣接する分割抵抗111,112同士の接続点と基準電位(GND)との間にそれぞれ接続される。また、入力容量21は、入力抵抗11を構成する分割抵抗111,112に対してそれぞれ並列に接続される複数の容量素子として、分割容量211,212を有する。
【0114】
この構成によれば、分割抵抗111,112の接続点と基準電位(GND)との間に分圧抵抗113を配置することで、第一及び第二実施形態に比べてオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される電位を下げることができる。これにより、第一及び第二実施形態と同じように入力回路102の周波数特性の平坦性を改善しつつ、使用する部品の仕様に合わせて回路構成をさらに柔軟に変更することができる。
【0115】
また、本実施形態における補償容量13は、上式(7)に示したように、分割抵抗111に寄生する寄生容量Cp1の容量値と、帰還抵抗12の抵抗値R2に対する分割抵抗111の抵抗値R11の比率(R11/R2)と、に基づいて定められる。分割抵抗111は、入力抵抗11を構成する分割抵抗111,112のうちオペアンプ10の非反転入力端子から最も離れて接続された一つの抵抗素子であり、入力回路102の入力端子1と分割抵抗111,112の接続点との間に接続されている。
【0116】
なお、入力回路102の入力端子1と、一端が基準電位(GND)に接続された分圧抵抗113の他端、すなわち入力抵抗11と分圧抵抗113との接続点と、の間には、分割抵抗111の代わりに複数の抵抗素子が直列接続されている場合もある。このような場合、補償容量13は、複数の抵抗素子に寄生する寄生容量の容量値の総和と、帰還抵抗12の抵抗値R2に対する複数の抵抗素子の抵抗値の総和R11の比率と、に基づいて定められる。
【0117】
この構成によれば、分圧抵抗113を配置する入力回路102であっても、簡易に補償容量13の容量値が得られるので、簡易な手法により、入力抵抗11の寄生容量に起因する入力回路102における周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。
【0118】
(第四実施形態)
図6は、第四実施形態における測定装置300の構成例を示すブロック図である。
【0119】
測定装置300は、測定対象物に生じる電位信号を測定する装置であり、測定対象物の電圧を検出するための一対のプローブ310と、プローブ310が接続可能に構成される測定部320とを備える。
【0120】
一対のプローブ310は、上記実施形態の入力回路100、101又は102と、接触子311と、ケーブル312とを備える。
【0121】
本実施形態では、各プローブ310の先端部において接触子311と入力回路の入力端子1とが互いに接続され、入力回路の出力端子2がケーブル312に接続されている。各プローブ310は、入力回路の入力端子1に印加される電位信号Vinを減圧し、減圧した信号である検出信号を、ケーブル312を介して測定部320に出力する。
【0122】
測定部320は、プローブ310から出力される検出信号に基づいて接触子311間の電圧を測定する。すなわち、測定部320は、入力回路100、101又は102から出力される信号に基づいて測定対象物の電圧を測定する。測定部320は、測定した電圧の数値又は波形を表示する。測定部320は、例えばオシロスコープによって構成される。
【0123】
なお、本実施形態では入力回路100、101又は102が測定装置300のプローブ310に適用されているが、これに代えて又はこれに加えて、測定部320に入力回路100、101又は102が内蔵されてもよい。
【0124】
続いて、第四実施形態における作用効果について説明する。
【0125】
本実施形態における測定装置300は、図1図2又は図5に示した入力回路100、101又は102と、入力回路100、101又は102から出力される信号に基づいて電圧を測定する測定部320とを含む。
【0126】
この構成によれば、測定装置300は、上記実施形態と同様、入力回路100、101又は102の周波数特性の平坦性の悪化を抑制することができる。したがって、入力回路100、101又は102に起因する検出信号の歪みが小さくなるので、測定対象物の電圧を精度よく測定することができる。
【0127】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0128】
100~102 入力回路
10 オペアンプ
11 入力抵抗
12 帰還抵抗
13 補償容量
21 入力容量
22 帰還容量
11(1)~(k)、110 抵抗素子
12(1)~(n) 抵抗素子
13(1)~(n-1)、130 容量素子
21(1)~(k)、210 容量素子
22(1)~(n) 抵抗素子
111、112 分割抵抗(抵抗素子)
113 分圧抵抗(抵抗素子)
211、212 分割容量(容量素子)
213 分圧容量(容量素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位信号が入力される入力回路であって、
反転増幅回路を構成するオペアンプと、
前記オペアンプの反転入力端子に接続される入力抵抗と、
前記オペアンプの出力端子から前記反転入力端子に信号が帰還する経路に配置され、直列接続された複数の抵抗素子からなる帰還抵抗と、
前記抵抗素子同士の接続点と前記電位信号の基準となる基準電位との間に接続され、前記入力抵抗に寄生する容量を補償するための補償容量と、
を含む入力回路。
【請求項2】
請求項1に記載の入力回路であって、
前記補償容量は、前記入力抵抗に寄生する容量の容量値と、前記帰還抵抗の抵抗値に対する前記入力抵抗の抵抗値の比率と、に基づいて定められる、
入力回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の入力回路であって、
前記補償容量は、セラミックコンデンサである、
入力回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の入力回路であって、
前記入力抵抗に対して並列に接続される入力容量と、
前記帰還抵抗を構成する前記抵抗素子に対してそれぞれ並列に接続される複数の容量素子と、
を含む入力回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の入力回路であって、
分圧抵抗を有し、
前記入力抵抗は、直列接続された複数の抵抗素子からなり、
前記分圧抵抗は、前記入力抵抗における隣接する抵抗素子同士の接続点と前記基準電位との間に接続され、
前記入力抵抗に対して並列に接続される入力容量は、前記入力抵抗を構成する抵抗素子に対してそれぞれ並列に接続される複数の容量素子を有する、
入力回路。
【請求項6】
請求項5に記載の入力回路であって、
前記補償容量は、前記入力回路の入力端子と前記接続点との間に接続される一又は複数の抵抗素子に寄生する容量の容量値と、前記帰還抵抗の抵抗値に対する前記一又は複数の抵抗素子の抵抗値の比率と、に基づいて定められる、
入力回路。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の入力回路であって、
前記入力抵抗は、直列接続された複数の抵抗素子からなり、
前記帰還抵抗を構成する抵抗素子の個数は、前記入力抵抗を構成する抵抗素子の個数以上である、
入力回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の入力回路であって、
前記オペアンプは、有効周波数帯域の上限が数MHz以上である高速オペアンプである、
入力回路。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の入力回路と、
前記入力回路から出力される信号に基づいて電圧を測定する測定部と、
を含む測定装置。