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特開2022-83454光学素子駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083454
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】光学素子駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220527BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220527BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20220527BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20220527BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220527BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/02 Z
G03B15/00 V
G03B5/00 J
H04N5/225 700
H04N5/232 480
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048578
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2022516388の分割
【原出願日】2021-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】63/117,857
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大坂 智彦
【テーマコード(参考)】
2H044
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AJ06
2H044BE00
2H044BE05
2H044BE10
2H044BE20
2K005AA04
2K005CA22
2K005CA23
2K005CA44
2K005CA45
2K005CA55
5C122DA09
5C122DA14
5C122EA41
5C122FB03
5C122FC01
5C122FC02
5C122FD01
5C122GE06
5C122GE11
5C122GE17
5C122GE20
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】能動要素又は受動要素の摩耗に伴う経時的な駆動性能の低下を抑制できる、信頼性の高い光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供すること。
【解決手段】光学素子駆動装置は、固定部と、前記固定部に対して離間して配置される可動部と、前記固定部に対して前記可動部を支持する支持部と、圧電素子及び前記圧電素子の振動に共振する能動要素を有する超音波モーター、並びに前記能動要素に対して相対的に移動する受動要素を有し、前記能動要素及び前記受動要素が、付勢された状態で当接するよう構成され、前記固定部に対して前記可動部を移動させる駆動ユニットと、前記受動要素の受動側接触部と前記能動要素の能動側接触部との接触領域の少なくとも一部を前記受動要素上で囲う囲繞部と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して離間して配置される可動部と、
前記固定部に対して前記可動部を支持する支持部と、
圧電素子及び前記圧電素子の振動に共振する能動要素を有する超音波モーター、並びに前記能動要素に対して相対的に移動する受動要素を有し、前記能動要素及び前記受動要素が、付勢された状態で当接するよう構成され、前記固定部に対して前記可動部を移動させる駆動ユニットと、
前記受動要素の受動側接触部と前記能動要素の能動側接触部との接触領域の少なくとも一部を前記受動要素上で囲う囲繞部と、を備える、
光学素子駆動装置。
【請求項2】
前記囲繞部は、粘性流体で形成されている、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項3】
前記囲繞部は、粘性流体で形成され、前記可動部の移動に伴い弾性変形する弾性部を有する、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項4】
前記囲繞部は、
前記接触領域を取り囲むように枠状に形成された粘性流体と、
前記能動要素に固定され前記粘性流体の開口を密閉するフランジ部と、を有する、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子駆動装置と、
前記可動部に装着される光学素子と、
前記光学素子により結像された被写体像を撮像する撮像部と、を備える、
カメラモジュール。
【請求項6】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項5に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える、
カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うオートフォーカス機能(以下「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)及び撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減する振れ補正機能(以下「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を有する光学素子駆動装置が適用される(例えば特許文献1)。
【0003】
AF機能及びOIS機能を有する光学素子駆動装置は、レンズ部を光軸方向に移動させるためのオートフォーカス駆動ユニット(以下「AF駆動ユニット」と称する)と、レンズ部を光軸方向に直交する平面内で移動させるための振れ補正駆動ユニット(以下「OIS駆動ユニット」と称する)と、を備える。特許文献1では、AF駆動ユニット及びOIS駆動ユニットに、超音波モーター型の駆動ユニットが適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/123787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波モーター型の駆動ユニットにおいては、共振部からなる能動要素と、能動要素に対して相対的に移動する受動要素とが、付勢された状態で接触し、駆動時には両者が摺動することとなるため、摩耗によって経時的に駆動性能が損なわれる虞がある。特に、能動要素と受動要素との間で受動要素を移動できる程度の摩擦力が必要である一方、摩擦力が増大すると接触部分が摩耗しやすくなるため、これらをバランスさせることが重要となる。
【0006】
本発明の目的は、能動要素又は受動要素の摩耗に伴う経時的な駆動性能の低下を抑制できる、信頼性の高い光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学素子駆動装置の一態様は、
固定部と、
前記固定部に対して離間して配置される可動部と、
前記固定部に対して前記可動部を支持する支持部と、
圧電素子及び前記圧電素子の振動に共振する能動要素を有する超音波モーター、並びに前記能動要素に対して相対的に移動する受動要素を有し、前記能動要素及び前記受動要素が、付勢された状態で当接するよう構成され、前記固定部に対して前記可動部を移動させる駆動ユニットと、
前記受動要素の受動側接触部と前記能動要素の能動側接触部との接触領域の少なくとも一部を前記受動要素上で囲う囲繞部と、を備える。
【0008】
本発明に係るカメラモジュールは、
上記の光学素子駆動装置と、
前記可動部に装着される光学素子と、
前記光学素子により結像された被写体像を撮像する撮像部と、を備える。
【0009】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、能動要素又は受動要素の摩耗に伴う経時的な駆動性能の低下を抑制できる、信頼性の高い光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す図である。
図2図2は、カメラモジュールの外観斜視図である。
図3図3は、光学素子駆動装置の外観斜視図である。
図4図4は、光学素子駆動装置の外観斜視図である。
図5図5は、光学素子駆動装置の分解斜視図である。
図6図6は、光学素子駆動装置の分解斜視図である。
図7図7は、ベースの配線構造を示す平面図である。
図8図8A図8Bは、OIS駆動ユニットの斜視図である。
図9図9A図9Cは、OIS共振部とOISプレートとの接触部分を示す拡大図である。
図10図10は、OIS可動部の分解斜視図である。
図11図11は、OIS可動部の分解斜視図である。
図12図12は、OIS可動部の分解斜視図である。
図13図13A図13Bは、AF駆動ユニットの斜視図である。
図14図14A図14Bは、AF駆動ユニットの保持構造を示す図である。
図15図15は、OIS可動部を光軸方向受光側から見た平面図である。
図16図16A図16Bは、AF可動部及び第1ステージの平面図である。
図17図17A図17Bは、AF駆動ユニット14の周辺部分の横断面図及び縦断面図である。
図18図18A図18Bは、AF支持部の配置を示す拡大図である。
図19図19A図19Bは、車載用カメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置としての自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。図1AはスマートフォンMの正面図であり、図1BはスマートフォンMの背面図である。
【0014】
スマートフォンMは、2つの背面カメラOC1、OC2からなるデュアルカメラを有する。本実施の形態では、背面カメラOC1、OC2に、カメラモジュールAが適用されている。
カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うとともに、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0015】
図2は、カメラモジュールAの外観斜視図である。図3及び図4は、実施の形態に係る光学素子駆動装置1の外観斜視図である。図4は、図3をZ軸周りに180°回転した状態を示す。図2~4に示すように、実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。
【0016】
カメラモジュールAは、例えば、スマートフォンMで実際に撮影が行われる場合に、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光軸方向であり、図中上側(+Z側)が光軸方向受光側、下側(-Z側)が光軸方向結像側である。また、Z軸に直交するX方向及びY方向を「光軸直交方向」と称し、XY面を「光軸直交面」と称する。
【0017】
図2~4に示すように、カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を実現する光学素子駆動装置1、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2、及びレンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部3等を備える。すなわち、光学素子駆動装置1は、光学素子としてレンズ部2を駆動する、いわゆるレンズ駆動装置である。
【0018】
撮像部3は、光学素子駆動装置1の光軸方向結像側に配置される。撮像部3は、例えば、イメージセンサー基板301、イメージセンサー基板301に実装される撮像素子302及び制御部303を有する。撮像素子302は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成され、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。制御部303は、例えば、制御ICで構成され、光学素子駆動装置1の駆動制御を行う。光学素子駆動装置1は、イメージセンサー基板301に搭載され、機械的かつ電気的に接続される。なお、制御部303は、イメージセンサー基板301に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0019】
光学素子駆動装置1は、外側をカバー24で覆われている。カバー24は、光軸方向から見た平面視で矩形状の有蓋四角筒体である。実施の形態では、カバー24は、平面視で正方形状を有している。カバー24は、上面に略円形の開口241を有する。レンズ部2は、カバー24の開口241から外部に臨み、例えば、光軸方向における移動に伴い、カバー24の開口面よりも受光側に突出するように構成される。カバー24は、光学素子駆動装置1のOIS固定部20のベース21(図5参照)に、例えば、接着により固定される。
【0020】
図5図6は、実施の形態に係る光学素子駆動装置1の分解斜視図である。図6は、図5をZ軸周りに180°回転した状態を示す。図5は、OIS駆動ユニット30及びセンサー基板22をベース21に取り付けた状態を示し、図6は、OIS駆動ユニット30及びセンサー基板22をベース21から取り外した状態を示している。
【0021】
図5図6に示すように、本実施の形態において、光学素子駆動装置1は、OIS可動部10、OIS固定部20、OIS駆動ユニット30及びOIS支持部40を備える。OIS駆動ユニット30は、X方向駆動ユニット30X及びY方向駆動ユニット30Yを有する。
【0022】
OIS可動部10は、振れ補正時に光軸直交面内で移動する部分である。OIS可動部10は、AFユニット、第2ステージ13及びX方向基準ボール42A~42D(図10等参照)を含む。AFユニットは、AF可動部11、第1ステージ12、AF駆動ユニット14及びAF支持部15を有する(図10~12参照)。
OIS固定部20は、OIS支持部40を介してOIS可動部10が接続される部分である。OIS固定部20は、ベース21を含む。
OIS可動部10は、OIS固定部20に対して光軸方向に離間して配置され、OIS支持部40を介してOIS固定部20と連結される。また、OIS可動部10とOIS固定部20は、OIS用付勢部材50によって、互いに近づく方向に付勢されている。OIS用付勢部材50は、例えば、光学素子駆動装置1の平面視における四隅に配置される。
【0023】
本実施の形態では、Y方向の移動に関しては、AFユニットを含むOIS可動部10の全体が可動体として移動する。一方、X方向の移動に関しては、AFユニットだけが可動体として移動する。つまり、X方向の移動に関しては、第2ステージ13は、ベース21とともにOIS固定部20を構成し、X方向基準ボール42A~42CはOIS支持部40として機能する。
【0024】
ベース21は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)、又は液晶ポリマーからなる成形材料で形成される。ベース21は、平面視で矩形状の部材であり、中央に円形の開口211を有する。
【0025】
ベース21は、ベース21の主面を形成する第1ベース部212及び第2ベース部213を有する。第2ベース部213は、OIS可動部10の光軸方向結像側に突出する部分、すなわち、AF可動部11の突出部112A~112D及び第1ステージ12のAFモーター固定部125(図11参照)に対応して設けられている。第2ベース部213は、振れ補正時に干渉が生じないように、突出部112A~112D及びAFモーター固定部125よりも、平面視において一回り大きく形成されている。第2ベース部213のうち、端子金具23Bが配置される領域には、一部が露出するようにセンサー基板22が配置される。第2ベース部213は、第1ベース部212に対して凹んで形成され、これにより、AF可動部11の移動ストロークの確保と光学素子駆動装置1の低背化が図られている。
【0026】
本実施の形態では、センサー基板22は、AF駆動ユニット14及びOIS駆動ユニット30が配置されていない領域、すなわち、ベース21の平面形状である矩形の一辺(第4の辺)に対応する領域に設けられている。これにより、磁気センサー25X、25Y、25Z用の給電ライン及び信号ラインを集約することができ、ベース21における配線構造を簡略化することができる(図7参照)。
【0027】
ベース21は、Y方向駆動ユニット30Yが配置されるOISモーター固定部215を有する。OISモーター固定部215は、例えば、ベース21の角部に設けられ、第1ベース部212から光軸方向受光側に向けて突出して形成され、Y方向駆動ユニット30Yを保持可能な形状を有している。
【0028】
ベース21には、例えば、インサート成形により、端子金具23A~23Cが配置される。端子金具23Aは、AF駆動ユニット14及びX方向駆動ユニット30Xへの給電ラインを含む。端子金具23Aは、例えば、ベース21の四隅から露出し、OIS用付勢部材50と電気的に接続される。AF駆動ユニット14及びX方向駆動ユニット30Xへの給電は、OIS用付勢部材50を介して行われる。端子金具23Bは、磁気センサー25X、25Y、25Zへの給電ライン(例えば、4本)及び信号ライン(例えば、6本)を含む。端子金具23Bは、センサー基板22に形成された配線(図示略)と電気的に接続される。端子金具23Cは、Y方向駆動ユニット30Yへの給電ラインを含む。
【0029】
また、ベース21は、OIS支持部40を構成するY方向基準ボール41A~41Cが配置されるY方向基準ボール保持部217A~217Cを有する。Y方向基準ボール保持部217A~217Cは、Y方向に延びる矩形状に凹んで形成されている。Y方向基準ボール保持部217A~217Cは、底面側に向けて溝幅が狭くなるように断面形状が略V字状(テーパー形状)に形成される。
【0030】
本実施の形態では、Y方向基準ボール保持部217A、217Bは、ベース21のY方向駆動ユニット30Yが配置される辺(第3の辺)に設けられ、Y方向基準ボール保持部217Cは、センサー基板22が配置される辺(第4の辺)に設けられており、Y方向基準ボール保持部217A~217Cに配置されるY方向基準ボール41A~41CによってOIS可動部10(第2ステージ13)が3点で支持されるようになっている。
【0031】
センサー基板22は、磁気センサー25X、25Y、25Z用の給電ライン及び信号ラインを含む配線(図示略)を有する。センサー基板22には、磁気センサー25X、25Y、25Zが実装される。磁気センサー25X、25Y、25Zは、例えば、ホール素子又はTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサー等で構成され、センサー基板22に形成された配線(図示略)を介して、端子金具23Bと電気的に接続される。また、センサー基板22において、Y方向基準ボール保持部217Cに対応する部分には、開口221が設けられている。
【0032】
OIS可動部10の第1ステージ12において、磁気センサー25X、25Yに対向する位置にはマグネット16X、16Yが配置される(図12参照)。磁気センサー25X、25Y及びマグネット16X、16Yからなる位置検出部により、OIS可動部10のX方向及びY方向の位置が検出される。
また、OIS可動部10のAF可動部11において、磁気センサー25Zに対向する位置にはマグネット16Zが配置される(図12参照)。磁気センサー25Z及びマグネット16Zからなる位置検出部により、AF可動部11のZ方向の位置が検出される。なお、マグネット16X、16Y、16Zと磁気センサー25X、25Y、25Zに代えて、フォトリフレクター等の光センサーによりOIS可動部10のX方向及びY方向の位置並びにAF可動部11のZ方向の位置を検出するようにしてもよい。
【0033】
OIS用付勢部材50は、例えば、引張コイルバネで構成され、OIS可動部10とOIS固定部20を連結する。本実施の形態では、OIS用付勢部材50の一端は、ベース21の端子金具23Aに接続され、他端は、第1ステージ12の配線17A、17Bに接続されている。すなわち、本実施の形態では、OIS用付勢部材50は、AF駆動ユニット14及びX方向駆動ユニット30Xへの給電ラインとして機能する。
また、OIS用付勢部材50は、OIS可動部10とOIS固定部20を連結したときの引張荷重を受けて、OIS可動部10とOIS固定部20が互いに近づくように作用する。すなわち、OIS可動部10は、OIS用付勢部材50によって、光軸方向に付勢された状態(ベース21に押し付けられた状態)で、XY面内で移動可能に保持されている。これにより、OIS可動部10をがたつきのない安定した状態で保持することができる。
【0034】
OIS用付勢部材50には、振動を抑制するダンパー材(図示略)が配置されてもよい。ダンパー材は、例えば、OIS用付勢部材50を全体的に覆うように配置される。ダンパー材は、例えば、OIS用付勢部材50を組み付けた後、バネが伸張した状態で形成される。ダンパー材は、OIS用付勢部材50の中空部に留まることができ、かつ、OIS可動部10がXY面内で移動する際の追従性が損なわれない程度の粘性及び弾性を有するゲル状の樹脂材料で形成される。ダンパー材としては、例えば、シリコーン材又はシリコーン系の制振材などを適用できる。なお、ダンパー材は、軸方向に隣接するバネ要素間の隙間のみを埋めるように配置されてもよいし、コイルバネの内部(中空部)のみに充填されてもよい。
OIS用付勢部材50にダンパー材を配置することにより、OIS用付勢部材50の振動が短時間で効率よく減衰され、OIS用付勢部材50の振動に伴う空気振動も抑制される。したがって、駆動音の発生を抑制でき、光学素子駆動装置1の静音性能が格段に向上する。
【0035】
OIS支持部40は、OIS固定部20に対して、OIS可動部10を光軸方向に離間した状態で支持する。本実施の形態では、OIS支持部40は、OIS可動部10(第2ステージ13)とベース21の間に介在する3個のY方向基準ボール41A~41Cを含む。
また、OIS支持部40は、OIS可動部10において、第1ステージ12と第2ステージ13の間に介在する4個のX方向基準ボール42A~42Dを含む(図10等参照)。
【0036】
本実施の形態では、Y方向基準ボール41A~41C及びX方向基準ボール42A~42D(計7個)の転動可能な方向を規制することにより、OIS可動部10をXY面内で精度よく移動できるようになっている。なお、OIS支持部40を構成するY方向基準ボール及びX方向基準ボールの数は、適宜変更することができる。
【0037】
OIS駆動ユニット30は、OIS可動部10をX方向及びY方向に移動させるアクチュエーターである。具体的には、OIS駆動ユニット30は、OIS可動部10(AFユニットのみ)をX方向に移動させるX方向駆動ユニット30Xと、OIS可動部10全体をY方向に移動させるY方向駆動ユニット30Yとで構成される。
X方向駆動ユニット30Xは、第1ステージ12のX方向に沿うOISモーター固定部124に固定される(図11参照)。Y方向駆動ユニット30Yは、Y方向に沿って延在するように、ベース21のOISモーター固定部215に固定される。すなわち、X方向駆動ユニット30X及びY方向駆動ユニット30Yは、互いに直交する辺に沿って配置されている。X方向駆動ユニット30X及びY方向駆動ユニット30Yは、後述するように超音波モーターUSM1を含む。
【0038】
OIS駆動ユニット30の構成を図8A図8Bに示す。図8Aは、OIS駆動ユニット30の各部材を組み付けた状態を示し、図8Bは、OIS駆動ユニット30の各部材を分解した状態を示す。なお、図8A図8Bは、Y方向駆動ユニット30Yを示しているが、X方向駆動ユニット30Xの主要構成、具体的にはOIS電極33の形状を除く構成は同様であるので、OIS駆動ユニット30を示す図として扱う。
【0039】
図8A図8Bに示すように、OIS駆動ユニット30は、OIS用超音波モーターUSM1及びOIS動力伝達部34を有する。OIS用超音波モーターUSM1は、OIS共振部31、OIS圧電素子32及びOIS電極33で構成される。OIS超音波モーターUSM1の駆動力は、OIS動力伝達部34を介して第2ステージ13に伝達される。具体的には、X方向駆動ユニット30XはOIS動力伝達部34を介して第2ステージ13に接続され、Y方向駆動ユニット30YはOIS動力伝達部34を介して第2ステージ13に接続されている。すなわち、OIS駆動ユニット30において、OIS共振部31が能動要素を構成し、OIS動力伝達部34が受動要素を構成する。
【0040】
OIS圧電素子32は、例えば、セラミック材料で形成された板状素子であり、高周波電圧を印加することにより振動を発生する。OIS共振部31の胴部311を挟み込むように、2枚のOIS圧電素子32が配置される。
OIS電極33は、OIS共振部31及びOIS圧電素子32を挟持し、OIS圧電素子32に電圧を印加する。X方向駆動ユニット30XのOIS電極33は、第1ステージ12の配線17Aと電気的に接続され、Y方向駆動ユニット30YのOIS電極33は、ベース21の端子金具23Cと電気的に接続される。
【0041】
OIS共振部31は、導電性材料で形成され、OIS圧電素子32の振動に共振して、振動運動を直線運動に変換する。本実施の形態では、OIS共振部31は、OIS圧電素子32に挟持される略矩形状の胴部311、胴部311の上部及び下部からX方向又はY方向に延在する2つのアーム部312、胴部311の中央部からX方向又はY方向に延在する突出部313、及び、胴部311の中央部から突出部313とは反対側に延在する通電部314を有している。
2つのアーム部312は対称的な形状を有し、それぞれの自由端部がOIS動力伝達部34に当接し、OIS圧電素子32の振動に共振して対称的に変形する。本実施の形態では、2つのアーム部312は、OIS動力伝達部34のOISプレート341と当接する当接面が内側を向き、対向するように形成されている。
X方向駆動ユニット30Xの通電部314は、第1ステージ12の配線17Aと電気的に接続され、Y方向駆動ユニット30Yの通電部314は、ベース21の端子金具23Cと電気的に接続される。
【0042】
OIS共振部31は、所定の導電性、せん断強度、硬度、比重、ヤング率等を有する金属であればよく、例えば、ステンレス綱が好適である。ステンレス綱のビッカース硬度は、180~400HVである。OIS共振部31は、例えば、金属板のレーザー加工、エッチング加工又はプレス加工等により形成される。なお、OISプレート341と接触することとなるアーム部312の先端(能動側接触部)には、例えば、硬質メッキや塗装などのコーティング層が設けられてもよいし、コーティング層以外の表面処理が施されてもよい。
【0043】
OIS共振部31の胴部311に、厚さ方向からOIS圧電素子32が貼り合わされ、OIS電極33により挟持されることにより、これらは互いに電気的に接続される。例えば、給電経路の一方がOIS電極33に接続され、他方がOIS共振部31の通電部314に接続されることで、OIS圧電素子32に電圧が印加され、振動が発生する。
【0044】
OIS共振部31は、少なくとも2つの共振周波数を有し、それぞれの共振周波数に対して、異なる挙動で変形する。言い換えると、OIS共振部31は、2つの共振周波数に対して異なる挙動で変形するように、全体の形状が設定されている。異なる挙動とは、OIS動力伝達部34をX方向又はY方向に前進させる挙動と、後退させる挙動である。
【0045】
OIS動力伝達部34は、一方向に延在するチャッキングガイドであり、一端がOIS共振部31のアーム部312に接続され、他端が第2ステージ13に接続される。OIS動力伝達部34は、第1ステージ12又は第2ステージ13に接続されるステージ接続部材342、及び、OIS用超音波モーターUSM1(OIS共振部31)とステージ接続部材342を連結する板状のOISプレート341を有する。
【0046】
OISプレート341は、OIS共振部31の2つのアーム部312のそれぞれに当接するように、2つ設けられる。2つのOISプレート341は、互いに略平行に配置される。OISプレート341において、OIS共振部31と当接する側の面を「第1面」、反対側の面を「第2面」と称する。OISプレート341は、第2面同士が対向するように配置されている。
OISプレート341の一端部341bは、OIS共振部31のアーム部312の自由端部と摺動可能に当接する(以下、「OISモーター当接部341b」と称する)。OISプレート341の他端部(符号略)は、ステージ接続部材342に挿入され、固定される。OISプレート341において、OISモーター当接部341bから他端部に向かって延びる部分を「延在部341a」と称する。
【0047】
OISプレート341は、OIS共振部31と同等以上の剛性を有することが好ましく、例えば、ステンレス鋼が好適である。これにより、OISプレート341に自己復元性を付与して板バネとして機能させることができ、OIS共振部31とOISプレート341との間で所望の摩擦力を発現させやすくなる。なお、OIS共振部31を形成するステンレス綱とOISプレート341を形成するステンレス綱は、同じ鋼種であってもよいし、異なる鋼種であってもよい。例えば、OIS共振部31からOISプレート341への力の伝達等を考慮して、適切な鋼種が選択される。
【0048】
ステージ接続部材342は、第2ステージ13のOISチャッキングガイド固定部135(図10等参照)に固定される。ステージ接続部材342は、例えば、OISプレート341の延在部341aの根元を幅方向に挟み込む構造を有する。これにより、経時的にOISプレート341がずれて脱落するのを防止でき、信頼性が向上する。
【0049】
OISモーター当接部341b間の離隔幅は、OIS共振部31のアーム部312の自由端部間の離隔幅よりも広く設定される。本実施の形態では、ステージ接続部材342は、OISプレート341が接続される部分に、離隔部342a及びプレート固定部342bを有する。プレート固定部342bは、溝状に形成されており、OISプレート341の端部が挿入される。離隔部342aの幅を、プレート固定部342bの幅よりも大きくすることで、2つの延在部341aはOISモーター当接部341bに向かって離れるように配置され、OISモーター当接部341b間の幅も拡がる。OIS共振部31のアーム部312の間にOIS動力伝達部34を取り付けたときに、延在部341aが板バネとして機能し、アーム部312を押し広げる方向に付勢力が作用する。この付勢力により、アーム部312の自由端部間にOIS動力伝達部34が保持され、OIS共振部31からの駆動力がOIS動力伝達部34に効率よく伝達される。
【0050】
OIS共振部31とOIS動力伝達部34は、付勢された状態で当接しているだけなので、当接部分をX方向又はY方向に大きくするだけで、光学素子駆動装置1の外形を大きくすることなく、OIS可動部10の移動ストロークを長くすることができる。
【0051】
X方向駆動ユニット30Xは、OIS可動部10(第1ステージ12)に固定され、OIS動力伝達部34を介して第2ステージ13と接続されており、Y方向駆動ユニット30YによるY方向の振れ補正時は、OIS可動部10とともに移動する。一方、Y方向駆動ユニット30Yは、OIS固定部20(ベース21)に固定され、OIS動力伝達部34を介して第2ステージ13と接続されており、X方向駆動ユニット30XによるX方向の振れ補正に影響を受けない。すなわち、一方のOIS駆動ユニット30によるOIS可動部10の移動は、他方のOIS駆動ユニット30の構造によって妨げられない。したがって、OIS可動部10のZ軸周りの回転を防止することができ、OIS可動部10をXY面内で精度よく移動させることができる。
【0052】
2つの延在部341aの間には、ダンパー材(図示略)が配置されてもよい。ダンパー材は、例えば、OIS共振部31の2つのアーム部312の間にOIS動力伝達部34を接続した後に配置される。ダンパー材は、2つの延在部341aの間に留まることができ、かつ、OIS動力伝達部34の移動が損なわれない程度の粘性及び弾性を有するゲル状の樹脂材料で形成される。ダンパー材としては、例えば、シリコーン材又はシリコーン系の制振材などを適用できる。
2つの延在部341aの間にダンパー材が配置されることにより、2つの延在部341aの振動が短時間で効率よく減衰され、対向する第2面からの振動伝達による空気振動も抑制される。したがって、駆動音の発生を抑制でき、光学素子駆動装置1の静音性能が格段に向上する。
【0053】
ダンパー材は、OISプレート341の延在部341aにだけ配置され、OISモーター当接部341bには配置さないことが好ましい。これにより、OISモーター当接部341bとOIS共振部31との当接状態(摺動状態)に対するダンパー材の影響を抑制でき、ダンパー材を設けない場合と同様、安定した駆動性能を得ることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、OIS駆動ユニット30において、OIS共振部31のアーム部312とOISプレート341とが接触する接触部分に、摩耗に伴う駆動性能の低下を抑制するための構造が適用されている。図9A図9Cに、OIS共振部31とOISプレート341との接触部分を示す。図9Aは、OIS駆動ユニット30の斜視図、図9Bは、OIS駆動ユニット30お側面図、図9Cは、接触部分の拡大図である。
【0055】
図9A図9Cに示すように、OISプレート341のOISモーター当接部341bには、ジルコニア等のセラミック材で形成された摺動プレート343が配置されている。つまり、本実施の形態では、摺動プレート343が、OIS共振部31のアーム部312の先端(能動側接触部)と接触する受動側接触部となる。摺動プレート343は、例えば、OISモーター当接部341bに接着により固定される。
【0056】
摺動プレート343の平面視の大きさは、OIS可動部10がX方向又はY方向へ移動する際に、能動側接触部と接触することとなる領域よりも大きく設定される。また、摺動プレート343の厚さは、OISプレート341の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0057】
摺動プレート343がジルコニアで形成されている場合、ジルコニアのビッカース硬度は、1200~1400HVであり、能動側接触部を形成するステンレス鋼の硬度(180~400HV)よりも高い。また、摺動プレート343の表面粗さは、能動側接触部の表面粗さよりも小さく、滑らかになっている。摺動プレート343の表面粗さは、例えば、算術平均粗さRaで0.1μm以下であることが好ましい。
【0058】
このように、能動側接触部が金属で形成され、受動側接触部がセラミック材で形成されることで、摩耗の一因となる凝集を抑制することができる。また、主として能動側接触部であるOIS共振部31が削れることとなるので、能動側接触部の表面状態をコントロールすることで、容易に耐摩耗性を向上することができる。また、受動側接触部である摺動プレート343に摩耗を生じさせないことで、動作の安定性を向上することができる。すなわち、摺動プレート343が局所的に摩耗することにより接触面に筋状の摩耗跡が形成されると、この摩耗跡から能動側要素が外れたときに想定外の動作が生じる虞があるが、このような不具合が生じるのを防止することができる。
【0059】
さらに、本実施の形態では、摺動プレート343(受動側接触部)とOIS共振部31のアーム部312の先端(能動側接触部)とが接触する部分を囲むように、ダストトラップ部35(囲繞部)が設けられている。具体的には、ダストトラップ部35は、弾性部351及びフランジ部352を有する。ダストトラップ部35は、受動側接触部と能動側接触部との接触領域を含む空間を封止し、接触領域で発生した摩耗粉が飛散するのを防止する。
【0060】
弾性部351は、例えば、グリースやゲル状の樹脂等の粘性流体で形成される。弾性部351は、受動側接触部と能動側接触部との接触領域を取り囲むように、例えば、矩形枠状に形成される。弾性部351は、所定の形状を保持できるとともに、OIS可動部10の移動に追従して弾性変形しうる性状を有する。つまり、受動側接触部と能動側接触部との接触状態は、弾性部351によって影響を受けない。
【0061】
フランジ部352は、弾性部351の開口を密閉するように配置される。フランジ部352は、例えば、矩形枠状の硬質成形体をOIS共振部31のアーム部312に取り付けて弾性部351に押し付け、アーム部312と硬質成形体の間にエポキシ樹脂等の接着剤を流し込み、硬化させることで形成される。これにより、弾性部351の開口は、気密に封止される。
【0062】
このように、ダストトラップ部35を設けることにより、接触領域において摩耗粉が発生しても、この摩耗粉がダストトラップ部35の外部に飛散するのを防止できる。したがって、摩耗粉の飛散に起因する駆動性能の低下を抑制することができる。
【0063】
図10図12は、OIS可動部10の分解斜視図である。図11は、図10をZ軸周りに180°回転させた状態を示す。図12は、図10をZ軸周りに180°回転させた状態を示す下方斜視図である。なお、図11では、AF駆動ユニット14及びX方向駆動ユニット30Xが第1ステージ12から取り外した状態となっている。
以下において、光学素子駆動装置1の平面形状である矩形において、AF駆動ユニット14が配置される辺を「第1の辺」、X方向駆動ユニット30Xが配置される辺を「第2の辺」、Y方向駆動ユニット30Yが配置される辺を「第3の辺」、残りの一辺を「第4の辺」と称する。
【0064】
図10図12に示すように、本実施の形態において、OIS可動部10は、AF可動部11、第1ステージ12、第2ステージ13、AF駆動ユニット14及びAF支持部15等を有する。Y方向の移動に関しては、第1ステージ12及び第2ステージ13を含むOIS可動部10全体が可動体となるのに対して、X方向の移動に関しては、第2ステージ13はOIS固定部20として機能し、AFユニット(AF可動部11及び第1ステージ12)だけがOIS可動部10として機能する。また、第1ステージ12は、AF可動部11を支持するAF固定部として機能する。
【0065】
AF可動部11は、レンズ部2(図2参照)を保持するレンズホルダーであり、ピント合わせ時に光軸方向に移動する。AF可動部11は、第1ステージ12(AF固定部)に対して径方向内側に離間して配置され、AF支持部15を介して第1ステージ12に付勢された状態で支持される。
【0066】
AF可動部11は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ、液晶ポリマー等で形成される。AF可動部11は、筒状のレンズ収容部111を有する。レンズ収容部111の内周面には、レンズ部2が、例えば、接着により固定される。
【0067】
AF可動部11は、レンズ収容部111の外周面に、径方向外側に突出し光軸方向に延在する突出部112A~112Dを有する。突出部112A~112Dは、レンズ収容部111の下面よりも光軸方向結像側に突出し、ベース21の第2ベース部213と当接することにより、AF可動部11の光軸方向結像側(下側)への移動を規制する。本実施の形態では、突出部112A~112Dは、AF駆動ユニット14が駆動されていない基準状態において、ベース21の第2ベース部213に当接する。
【0068】
また、レンズ収容部111の外周面には、Z位置検出用のマグネット16Zを収容するマグネット収容部114が設けられている。マグネット収容部114にマグネット16Zが配置される。センサー基板22において、マグネット16Zと光軸方向に対向する位置に、Z位置検出用の磁気センサー25Zが配置される(図5参照)。
【0069】
第1ステージ12は、AF支持部15を介してAF可動部11を支持する。第1ステージ12の光軸方向結像側には、X方向基準ボール42A~42Dを介して第2ステージ13が配置される。第1ステージ12は、振れ補正時にX方向及びY方向に移動し、第2ステージ13は、振れ補正時にY方向のみに移動する。
【0070】
第1ステージ12は、光軸方向から見た平面視において略矩形状を有する部材であり、例えば、液晶ポリマーで形成される。第1ステージ12は、AF可動部11に対応する部分に略円形状の開口121を有する。開口121には、AF可動部11の突出部112A~112D及びマグネット収容部114に対応する切欠部122が形成されている。第1ステージ12において、X方向駆動ユニット30Xに対応する部分(第2の辺に沿う側壁の外側面)は、径方向外側にはみ出すことなくX方向駆動ユニット30Xを配置できるように、径方向内側に凹んで形成されている(OISモーター固定部124)。また、第1ステージ12において、Y方向駆動ユニット30Yに対応する部分(第3の辺に沿う側壁の外側面)も同様に、径方向内側に凹んで形成されている。
【0071】
第1ステージ12は、下面に、X方向基準ボール42A~42Dを保持するX方向基準ボール保持部123A~123Dを有する。X方向基準ボール保持部123A~123Dは、X方向に延びる矩形状に凹んで形成されている。X方向基準ボール保持部123A~123Dは、第2ステージ13のX方向基準ボール保持部133A~133DとZ方向において対向する。X方向基準ボール保持部123A、123Bは、底面側に向けて溝幅狭くなるように断面形状が略V字状(テーパー形状)に形成されており、X方向基準ボール保持部123C、123Dは、略U字状に形成されている。
【0072】
第1ステージ12において、X方向に沿う一方の側壁(第1の辺に沿う側壁)には、AF駆動ユニット14の能動要素であるAF共振部141等が配置されるAFモーター固定部125が形成されている。AFモーター固定部125は、上部固定板(符号略)及び下部固定板125aを有し、これらの間にAF共振部141が挟持される。AF共振部141は、例えば、上部固定板及び下部固定板125aに設けられた挿入穴(符号略)に挿入され、接着により固定される。上部固定板は、配線17Bの一部によって構成されており、AF共振部141は、配線17Bと電気的に接続される。
【0073】
第1ステージ12において、Y方向に沿う一方の側壁(第4の辺に沿う側壁)には、XY位置検出用のマグネット16X、16Yが配置される。例えば、マグネット16XはX方向に着磁され、マグネット16YはY方向に着磁される。センサー基板22において、マグネット16X,16Yと光軸方向に対向する位置に、XY位置検出用の磁気センサー25X、25Yが配置される(図5参照)。
【0074】
また、第1ステージ12には、例えば、インサート成形により、配線17A、17Bが埋設されている。配線17A、17Bは、例えば、第1の辺及び第2の辺に沿って配置される。配線17A、17Bは、第1ステージ12の四隅から露出しており、この部分に、OIS用付勢部材50の一端が接続される。配線17Aを介してX方向駆動ユニット30Xへの給電が行われる、配線17Bを介してAF駆動ユニット14への給電が行われる。
【0075】
第2ステージ13は、光軸方向から見た平面視において略矩形状を有する部材であり、例えば、液晶ポリマーで形成される。第2ステージ13の内周面131は、AF可動部11の外形に対応して形成されている。第2ステージ13において、X方向駆動ユニット30X及びY方向駆動ユニット30Yに対応する部分(第2の辺及び第3の辺に沿う側壁の外側面)は、第1ステージ12と同様に、径方向内側に凹んで形成されている。
【0076】
第2ステージ13は、下面に、Y方向基準ボール41A~41Cを収容するY方向基準ボール保持部134A~134Cを有する。Y方向基準ボール保持部134A~134Cは、Y方向に延びる矩形状に凹んで形成されている。Y方向基準ボール保持部134A~134Cは、ベース21のY方向基準ボール保持部217A~217CとZ方向において対向する。Y方向基準ボール保持部134A、134Bは、底面側に向けて溝幅狭くなるように断面形状が略V字状(テーパー形状)に形成されており、Y方向基準ボール保持部134Cは、略U字状に形成されている。
【0077】
また、第2ステージ13は、上面に、X方向基準ボール42A~42Dを収容するX方向基準ボール保持部133A~133Dを有する。X方向基準ボール保持部133A~133Dは、X方向に延びる矩形状に凹んで形成されている。X方向基準ボール保持部133A~133Dは、第1ステージ12のX方向基準ボール保持部123A~123DとZ方向において対向する。X方向基準ボール保持部133A~133Dは、底面側に向けて溝幅が狭くなるように断面形状が略V字状(テーパー形状)に形成されている。本実施の形態では、X方向基準ボール保持部133A、133Bは、第2ステージ13のX方向駆動ユニット30Xが配置される辺(第2の辺)に設けられ、X方向基準ボール保持部133C、133Dは、AF駆動ユニット14が配置される辺(第1の辺)に設けられており、X方向基準ボール42A~42Dによって第1ステージ12が4点で支持されるようになっている。
【0078】
OIS支持部40を構成するY方向基準ボール41A~41Cは、ベース21のY方向基準ボール保持部217A~217Cと第2ステージ13のY方向基準ボール保持部134A~134Cにより、多点接触で挟持される。したがって、Y方向基準ボール41A~41Cは、安定してY方向に転動する。
また、X方向基準ボール42A~42Dは、第2ステージ13のX方向基準ボール保持部133A~133Dと第1ステージ12のX方向基準ボール保持部123A~123Dにより、多点接触で挟持される。したがって、X方向基準ボール42A~42Dは、安定してX方向に転動する。
【0079】
AF支持部15は、第1ステージ12(AF固定部)に対してAF可動部11を支持する部分である。AF支持部15は、第1のZ方向基準ボール15A及び第2のZ方向基準ボール15Bで構成される。第1のZ方向基準ボール15A及び第2のZ方向基準ボール15Bは、AF可動部11及び第1ステージ12の間に、転動可能な状態で介在する。本実施の形態では、第1のZ方向基準ボール15A及び第2のZ方向基準ボール15Bは、それぞれ、Z方向に並んで配置された複数のボール(ここでは、2個)で構成されている。
【0080】
AF駆動ユニット14は、AF可動部11をZ方向に移動させるアクチュエーターである。AF駆動ユニット14は、OIS駆動ユニット30と同様に、超音波モーターで構成されている。AF駆動ユニット14は、アーム部141bがZ方向に延在するように、第1ステージ12のAFモーター固定部125に固定される。AF駆動ユニット14は、AF用超音波モーターUSM2及びAF動力伝達部144を有する。
【0081】
AF駆動ユニット14の構成(AF動力伝達部144を除く)を図13A図13Bに示す。図13Aは、AF駆動ユニット14の各部材を組み付けた状態を示し、図13Bは、AF駆動ユニット14の各部材を分解した状態を示す。AF駆動ユニット14の構成は、OIS駆動ユニット30とほぼ同様である。なお、AF動力伝達部144を含むAF駆動ユニット14の全体構成については後述する。
【0082】
AF用超音波モーターUSM2は、AF共振部141、AF圧電素子142及びAF電極143で構成される。AF用超音波モーターUSM2の駆動力は、AF動力伝達部144を介してAF可動部11に伝達される。すなわち、AF駆動ユニット14において、AF共振部141が能動要素を構成し、AF動力伝達部144が受動要素を構成する。
【0083】
AF圧電素子142は、例えば、セラミック材料で形成された板状素子であり、高周波電圧を印加することにより振動を発生する。AF共振部141の胴部141aを挟み込むように、2枚のAF圧電素子142が配置される。
AF電極143は、AF共振部141及びAF圧電素子142を挟持し、AF圧電素子142に電圧を印加する。
【0084】
AF共振部141は、導電性材料で形成され、AF圧電素子142の振動に共振して、振動運動を直線運動に変換する。AF共振部141は、AF圧電素子142に挟持される略矩形状の胴部141a、胴部141aからZ方向に延在する2つのアーム部141b、胴部141aの中央部からZ方向に延在し給電経路(第1ステージ12の配線17B(上部固定板))と電気的に接続される通電部141d、及び、胴部141aの中央部から通電部141dとは反対側に延在するステージ固定部141cを有している。
2つのアーム部141bは対称的な形状を有し、それぞれの自由端部がAF動力伝達部144に当接し、AF圧電素子142の振動に共振して対称的に変形する。本実施の形態では、2つのアーム部141bは、AF動力伝達部144のAFプレート61と当接する面が外側を向いて形成されており、自由端部がAFプレート61で挟持されるように配置される。
【0085】
AF共振部141は、所定の導電性、せん断強度、硬度、比重、ヤング率等を有する金属であればよく、例えば、OIS共振部31と同様に、ステンレス綱が好適である。OIS共振部31は、例えば、金属板のレーザー加工、エッチング加工又はプレス加工等により形成される。
【0086】
AF共振部141の胴部141aに、厚さ方向からAF圧電素子142が貼り合わされ、AF電極143により挟持されることにより、これらは互いに電気的に接続される。AF共振部141の通電部141d及びAF電極143が第1ステージ12の配線17Bに接続されることで、AF圧電素子142に電圧が印加され、振動が発生する。
【0087】
AF共振部141は、OIS共振部31と同様に、少なくとも2つの共振周波数を有し、それぞれの共振周波数に対して、異なる挙動で変形する。言い換えると、AF共振部141は、2つの共振周波数に対して異なる挙動で変形するように、全体の形状が設定されている。
【0088】
図14A図14Bは、AF駆動ユニット14の保持構造を示す図である。図14Bでは、AF駆動ユニット14の保持構造を分解して示している。図15は、OIS可動部10を光軸方向受光側から見た平面図である。図15では、第2ステージ13を省略している。図16A図16Bは、AF可動部11及び第1ステージ12の平面図である。図17A図17Bは、AF駆動ユニット14の周辺部分の横断面図及び縦断面図である。図17Aは、図17BのC-C矢視断面図であり、図17Bは、図15のB-B矢視断面図である。図18A図18Bは、AF支持部15の配置を示す拡大図である。
【0089】
図14A図14B等に示すように、AF可動部11の突出部112A、112Bは、X方向に対向するように配置され、レンズ収容部111の接線方向(ここでは、X方向)に延在する一つの空間を形成する。
【0090】
突出部112A、112Bは、第1ステージ12とともに、AF支持部15としてのZ方向基準ボール15A、15Bを保持する。一方の突出部112Aには、第1のZ方向基準ボール15Aを収容する第1のZ方向基準ボール保持部113aが形成されている。他方の突出部112Bには、第2のZ方向基準ボール15Bを収容する第2のZ方向基準ボール保持部113bが形成されている。第1のZ方向基準ボール保持部113a及び第2のZ方向基準ボール保持部113bは、溝底に向かって溝幅が狭くなるように断面形状が略V字状(テーパー形状)に形成される。
【0091】
AF可動部11において、突出部112A、112Bによって形成される空間は、AF駆動ユニット14が配置される駆動ユニット収容部115となる。突出部112A、112Bは、第1及び第2のZ方向基準ボール保持部113a、113bとは反対側の面にプレート収容部115cを有する。プレート収容部115cに、AF駆動ユニット14の受動要素であるAF動力伝達部144及び付勢部材62が配置される。
【0092】
AF動力伝達部144は、Z方向に所定の長さを有するチャッキングガイドである。本実施の形態では、AF動力伝達部144は、2枚のAFプレート61で構成されている。具体的には、AF駆動ユニット14のAF共振部141と付勢部材62との間に、AFプレート61が介在する。AF共振部141の動力は、AFプレート61を介してAF可動部11に伝達される。
【0093】
AFプレート61は、例えば、チタン銅、ニッケル銅、ステンレス等の金属材料からなる硬質の板状部材である。AFプレート61は、第1面がAF共振部141のアーム部141bと当接するように、移動方向に沿ってAF可動部11に配置され、AF可動部11と一体的に移動可能となっている。AFプレート61は、AF可動部11のプレート収容部115cに配置され、物理的に係止されている。具体的には、AFプレート61のガイド挿入部611が、AF可動部11に設けられたガイド溝115aに遊嵌されるとともに、固定片612がプレート収容部115cの底面と係止片115bとの間に配置されることにより、AF可動部11に固定されている。
AFプレート61は、AF共振部141の取付け状態(取付け位置の個体差)に追従できるように、AF可動部11に固定されていればよく、接着されなくてもよいし、弾性変形可能な軟質接着剤(例えば、シリコーンゴム)で接着されていてもよい。
【0094】
AFプレート61の第2面(第1面と反対側の面)と対向面との間には、ダンパー材(図示略)が配置されてもよい。具体的には、ダンパー材は、AFプレート61が配置されるプレート収容部115cを埋め込むように充填される。ダンパー材は、例えば、AF駆動ユニット14を組み付けた状態で形成される。ダンパー材は、プレート収容部115cに留まることができ、かつ、付勢部材62の付勢力が損なわれない程度の粘性及び弾性を有するゲル状の樹脂材料で形成される。ダンパー材としては、例えば、シリコーン材又はシリコーン系の制振材などを適用できる。
AFプレート61が配置されるプレート収容部115cにダンパー材を配置することにより、AFプレート61の振動が短時間で効率よく減衰され、第2面からの振動伝達による空気振動も抑制される。したがって、駆動音の発生を抑制でき、光学素子駆動装置1の静音性能が格段に向上する。
【0095】
付勢部材62は、AF共振部141のアーム部141bに向けてAFAFプレート61を付勢するための部材であり、2つのバネ部621を有している。バネ部621は、アーム部141bに対してAFプレート61を同じ付勢力で押し付けるように構成されている。なお、バネ部621の付勢力は、ダンパー材によって損なわれない。
付勢部材62は、例えば、板金加工により形成されており、バネ部621は連結部622から延在する板バネで構成されている。具体的には、バネ部621の板バネは、連結部622の下部からZ方向-側に延在し、外側にヘアピン状に折り返すとともにZ方向に対して内側に傾斜させることにより形成されている。
【0096】
付勢部材62の連結部622が駆動ユニット収容部115に設けられたバネ載置部115dに載置されるとともに、バネ部621がプレート収容部115cに配置されることにより、付勢部材62がAF可動部11に固定される。AFプレート61は、付勢部材62のヘアピン部位に位置し、バネ部621によって内側(アーム部141b側)に向けて付勢されることとなる。付勢部材62は、AF駆動ユニット14の取付位置に追従できるようにAF可動部11に接着されていない。すなわち、付勢部材62は、駆動ユニット収容部115の取付け面に沿って移動可能となっており、AF駆動ユニット14(AF共振部141及びAFプレート61)を挟持したときに、2つのバネ部621の付勢荷重が均等になる位置に保持される。なお、付勢部材62の構成は一例であり、適宜変更可能である。例えば、コイルバネや硬質ゴムなどの弾性体を適用してもよい。
【0097】
第1ステージ12には、AF可動部11の突出部112A、112B及びこれらに挟まれた空間に対応する部分が切り欠かれて、AFモーター固定部125が形成されている。また、AFモーター固定部125の両側には、第1のZ方向基準ボール保持部127a及び第2のZ方向基準ボール保持部127bが連設されている。
【0098】
第1のZ方向基準ボール保持部127aは、レンズ収容部111の接線方向D1に沿って形成されている(図18A参照)。また、第1のZ方向基準ボール保持部127aの内面(AFモーター固定部125側の面)は、溝底に向かって溝幅が狭くなるように断面形状が略V字状(テーパー形状)に形成されている。
【0099】
第2のZ方向基準ボール保持部127bは、レンズ収容部111の接線方向D1に対して傾斜して形成されている(図18B参照)。また、第2のZ方向基準ボール保持部127bの内面(AFモーター固定部125側の面)は、断面形状が略U字状に形成されている。第2のZ方向基準ボール保持部127bには、第2のZ方向基準ボール15Bとともに、第2のZ方向基準ボール15Bを介してAF可動部11を付勢するための付勢部18(板バネ181及びスペーサー182)が配置される。なお、図16Bでは、板バネ181を取り外した状態を示している。
【0100】
第2のZ方向基準ボール15Bは、レンズ収容部111の接線方向D1に対して、斜めに付勢される(図18B参照)。これにより、AF可動部11は、第2のZ方向基準ボール15Bを介して、直交する2方向であるX方向及びY方向に押し付けられ、光軸直交面内において安定した姿勢で保持される。接線方向D1と付勢方向D2のなす角をθ、板バネ181の予圧をFとした場合、Y方向の押し付け力はF1=F・sinθとなり、X方向の押し付け力はF2=F・cosθとなる。
【0101】
ここで、接線方向D1と付勢方向D2のなす角θは、例えば、0°~45°(0°を除く)である。付勢方向D2は、例えば、予圧Fとの兼ね合いで、AF可動部11の光軸周りの回転が規制されるように設定される。例えば、付勢方向D2と接線方向D1のなす角θを大きくすると、Y方向の押し付け力が大きくなるので板バネ181の予圧Fを小さくできるが、突出部112A、112Bの突出長を大きくする必要があるなど、スペース的に不利になる。逆に、付勢方向D2と接線方向D1のなす角θを小さくするとスペース的に有利であるが、Y方向の押し付け力が小さくなるので板バネ181の予圧を大きくする必要がある。
【0102】
AF可動部11及び第1ステージ12の第1のZ方向基準ボール保持部113a、127aの間に、第1のZ方向基準ボール15Aが転動可能な状態で保持される。また、第1ステージ12の第2のZ方向基準ボール保持部127bに配置されたスペーサー182とAF可動部11の第2のZ方向基準ボール保持部113bとの間に、第2のZ方向基準ボール15Bが転動可能な状態で保持される。AF可動部11は、第1のZ方向基準ボール15A及び第2のZ方向基準ボール15Bを介して、付勢された状態で第1ステージ12に支持され、安定した姿勢で保持される。
【0103】
第1のZ方向基準ボール15Aは、AF可動部11と第1ステージ12によって挟持され、光軸直交方向における移動(AF可動部11の回転)が規制されている。これにより、AF可動部11を、光軸方向に安定した挙動で移動させることができる。
【0104】
一方、第2のZ方向基準ボール15Bは、板バネ181及びスペーサー182を介してAF可動部11と第1ステージ12によって挟持され、光軸直交方向における移動が許容されている。これにより、AF可動部11及び第1ステージ12の寸法公差を吸収できるとともに、AF可動部11が移動する際の安定性が向上する。
【0105】
また、AF駆動ユニット14が配置されている部分は、第1のZ方向基準ボール15A及び第2のZ方向基準ボール15Bで挟み込み、第2のZ方向基準ボール15Bに予圧を与える構成、すなわち、第1ステージ12に対してAF可動部11を1箇所で支持する構成となっている。これにより、AF駆動ユニット14の駆動力を受ける力点から回転軸までの距離を小さくしやすく、モーメントを減少させて予圧を小さくすることができる。また、第2のZ方向基準ボール15Bを予圧ボールとして機能させることで、転がり抵抗を小さくすることができる。したがって、AF駆動ユニット14の駆動効率が向上し、大口径レンズ用のレンズ駆動装置としても好適なものとなる。また、予圧が同じであれば、チルト耐性が向上することになる。
【0106】
また、第1のZ方向基準ボール15A及び第2のZ方向基準ボール15Bは、それぞれ、2個のボールで構成されている。この場合、3個以上のボールで構成する場合に比較して、第1のZ方向基準ボール15A及び第2のZ方向基準ボール15Bの転がり抵抗が小さくなる。
【0107】
光学素子駆動装置1において、AF駆動ユニット14に電圧を印加すると、AF圧電素子142が振動し、AF共振部141が周波数に応じた挙動で変形する。AF駆動ユニット14の駆動力により、AF動力伝達部144がZ方向に摺動される。これに伴い、AF可動部11がZ方向に移動し、ピント合わせが行われる。AF支持部15がボールで構成されているので、AF可動部11はZ方向にスムーズに移動することができる。また、AF駆動ユニット14とAF動力伝達部144は、付勢された状態で当接しているだけなので、当接部分をZ方向に大きくするだけで、光学素子駆動装置1の低背化を損なうことなく、AF可動部11の移動ストロークを容易に長くすることができる。
【0108】
光学素子駆動装置1において、OIS駆動ユニット30に電圧を印加すると、OIS圧電素子32が振動し、OIS共振部31が周波数に応じた挙動で変形する。OIS駆動ユニット30の駆動力により、OIS動力伝達部34がX方向又はY方向に摺動される。これに伴い、OIS可動部10がX方向又はY方向に移動し、振れ補正が行われる。OIS支持部40がボールで構成されているので、OIS可動部10はX方向又はY方向にスムーズに移動することができる。
【0109】
具体的には、X方向駆動ユニット30Xが駆動され、OIS動力伝達部34がX方向に移動する場合、X方向駆動ユニット30Xが配置されている第1ステージ12から第2ステージ13に動力が伝達される。このとき、第2ステージ13とベース21とで挟持されているボール41は、X方向に転動できないので、ベース21に対する第2ステージ13のX方向の位置は維持される。一方、第1ステージ12と第2ステージ13とで挟持されているボール42は、X方向に転動できるので、第2ステージ13に対して第1ステージ12がX方向に移動する。つまり、第2ステージ13がOIS固定部20を構成し、第1ステージ12がOIS可動部10を構成する。
【0110】
また、Y方向駆動ユニット30Yが駆動され、OIS動力伝達部34がY方向に移動する場合、Y方向駆動ユニット30Yが配置されているベース21から第2ステージ13に動力が伝達される。このとき、第1ステージ12と第2ステージ13とで挟持されているボール42は、Y方向に転動できないので、第2ステージに対する第1ステージ12のY方向の位置は維持される。一方、第2ステージ13とベース21とで挟持されているボール41は、Y方向に転動できるので、ベース21に対して第2ステージ13がY方向に移動する。第1ステージ12も第2ステージ13に追従してY方向に移動することになる。つまり、ベース21がOIS固定部20を構成し、第1ステージ12及び第2ステージ13を含むAFユニットがOIS可動部10を構成する。
【0111】
このようにして、OIS可動部10がXY面内で移動し、振れ補正が行われる。具体的には、カメラモジュールAの角度振れが相殺されるように、振れ検出部(例えばジャイロセンサー、図示略)からの角度振れを示す検出信号に基づいて、OIS駆動ユニット30X、30Yへの通電電圧が制御される。このとき、マグネット16X、16Y及び磁気センサー25X、25Yで構成されるXY位置検出部の検出結果をフィードバックすることで、OIS可動部10の並進移動を正確に制御することができる。
【0112】
このように、本実施の形態に係る光学素子駆動装置1は、OIS固定部20(固定部)と、OIS固定部20に対して離間して配置されるOIS可動部10(可動部)と、OIS固定部20に対してOIS可動部10を支持するOIS支持部40(支持部)と、圧電素子32及び圧電素子32の振動に共振するOIS共振部31(能動要素)を有する超音波モーターUSM1、並びにOIS共振部31に付勢された状態で接触しOIS共振部31に対して相対的に移動するOISプレート341(受動要素)を有し、OIS固定部20に対してOIS可動部10を移動させるOIS駆動ユニット30(駆動ユニット)と、を備え、OISプレート341の受動側接触部としての摺動プレート343は、OIS共振部31のアーム部312の先端(能動側接触部)よりも硬度の高いセラミック材で形成されている。
これにより、摩耗の一因となる凝集を抑制することができるとともに、受動側接触部である摺動プレート343の摩耗を抑制することができる。したがって、能動要素又は受動要素の摩耗に伴う経時的な駆動性能の低下を抑制でき、光学素子駆動装置1の信頼性が向上する。
【0113】
また、光学素子駆動装置1において、摺動プレート343(受動側接触部)は、OIS共振部31のアーム部312の先端(能動側接触部)よりも表面粗さが小さい。これにより、能動側接触部であるOIS共振部31のアーム部312の摩耗をより効果的に抑制することができる。
【0114】
また、光学素子駆動装置1において、OISプレート341(受動要素)は、OIS共振部31のアーム部312の先端(能動側接触部)に対して摺動プレート343(受動側接触部)を付勢する付勢機能を有し、摺動プレート343は、OISプレート341とは別部材で構成されている。これにより、高硬度の受動側接触部を有する受動要素を容易に作製することができる。
【0115】
また、光学素子駆動装置1において、摺動プレート343(受動側接触部)及びOISプレート341(受動要素)は、板形状を有し、摺動プレート343の厚みは、OISプレート341の厚みよりも小さい。これにより、摺動プレート343はOISプレート341の動作に連動するため、OISプレート341の板バネとしての機能が阻害されることを防止できる。
【0116】
また、光学素子駆動装置1は、摺動プレート343(受動側接触部)とOIS共振部31のアーム部312の先端(能動側接触部)との接触領域の少なくとも一部を囲うダストトラップ部35(囲繞部)を備える。
具体的には、光学素子駆動装置1において、ダストトラップ部35は、粘性流体で形成され、OIS可動部10の移動に伴い弾性変形する弾性部351を有する。
また、弾性部351は、接触領域を取り囲むように枠状に形成され、ダストトラップ部35は、OIS共振部31のアーム部312(能動要素)に固定され弾性部351の開口を密閉するフランジ部352を有する。
これにより、接触領域において摩耗粉が発生しても、この摩耗粉がダストトラップ部35の外部に飛散するのを防止できる。したがって、摩耗粉の飛散に起因する駆動性能の低下を抑制することができる。
【0117】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0118】
例えば、実施の形態では、カメラモジュールAを備えるカメラ搭載装置の一例として、カメラ付き携帯端末であるスマートフォンMを挙げて説明したが、本発明は、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部を有するカメラ搭載装置に適用できる。カメラ搭載装置は、情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)を含む。また、輸送機器は、例えば自動車を含む。
【0119】
図19A図19Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。図19Aは自動車Vの正面図であり、図19Bは自動車Vの後方斜視図である。自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。図19A図19Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0120】
実施の形態では、受動要素であるOISプレート341に摺動プレート343を接着して受動側接触部を形成しているが、OISプレート341のモーター当接部341bに、コーティングによりセラミック製の受動側接触部を形成してもよい。
【0121】
また、実施の形態では、OIS駆動ユニット30において、OIS共振部31のアーム部312とOISプレート341とが接触する接触部分に、摩耗に伴う駆動性能の低下を抑制するための構造を適用した場合について説明したが、AF駆動ユニット14において、AF共振部141のアーム部141b(能動側接触部)とAFプレート61(受動側接触部)とが接触する接触部分に、同様の構造を適用してもよい。
【0122】
また、実施の形態では、能動側接触部よりも高硬度のセラミック材からなる受動側接触部を設けるという第1の発明と、能動側接触部と受動側接触部の接触領域にダストトラップ部を設けるという第2の発明を組み合わせて適用し、摩耗に伴う駆動性能の低下を抑制しているが、それぞれの発明を独立して適用してもよい。
【0123】
また、ダストトラップ部35は、実施の形態で開示した構造に限定されず、能動側接触部と受動側接触部との接触領域の少なくとも一部を囲い、接触領域で発生する摩耗粉の飛散を抑制できる構造であればよい。
【0124】
また、実施の形態では、光学素子としてレンズ部2を駆動する光学素子駆動装置1について説明したが、駆動対象となる光学素子は、ミラーやプリズムなどのレンズ以外の光学素子であってもよい。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0126】
2020年11月24日出願の米国仮出願63/117,857に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0127】
1 光学素子駆動装置
10 OIS可動部(可動部)
12 第1ステージ
13 第2ステージ
14 AF駆動ユニット
141 AF共振部(能動要素)
142 AF圧電素子
143 AF電極
144 AF動力伝達部
15 AF支持部
20 OIS固定部(固定部)
21 ベース
30 OIS駆動ユニット
31 OIS共振部(能動要素)
32 OIS圧電素子
33 OIS電極
34 OIS動力伝達部
35 ダストトラップ部(囲繞部)
341 OISプレート(受動要素)
40 OIS支持部
312 アーム部(能動側接触部)
343 摺動プレート(受動側接触部)
351 弾性部
352 フランジ部
A カメラモジュール
M スマートフォン(カメラ搭載装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19