(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083462
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】液体洗浄剤組成物及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 3/386 20060101AFI20220530BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20220530BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20220530BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20220530BHJP
C12N 9/50 20060101ALN20220530BHJP
【FI】
C11D3/386
C11D17/08
C11D1/04
C11D1/66
C12N9/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194780
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】吾田 圭司
【テーマコード(参考)】
4B050
4H003
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050HH01
4B050KK14
4B050LL04
4H003AB03
4H003AC08
4H003AC13
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB02
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB15
4H003EB16
4H003EC02
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA16
4H003FA23
4H003FA28
4H003FA47
(57)【要約】
【課題】 高いタンパク分解力と高い洗浄力を発揮する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上;
(2)EDTA-4Na0.2質量%添加時の酵素力価がEDTA-4Na無添加時の酵素力価に対して90%以上;
(3)至適温度60℃以上
の3つの特性をすべて有するプロテアーゼと、ノニオン界面活性剤を含む衣料用液体洗浄剤組成物、及びそれを用いた洗浄方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上;
(2)EDTA-4Na0.2質量%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上;
(3)至適温度60℃以上
の3つの特性をすべて有するプロテアーゼ(ただし、Esperase(登録商標)を除く)と、ノニオン界面活性剤を含む衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、脂肪酸または脂肪酸塩を含む請求項1に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、キレート剤を含む請求項1または2に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物を用いて衣類を洗浄する、洗浄方法。
【請求項5】
洗浄が、55℃以上の温度、かつ、アルカリ性下で行われる、請求項4に記載の洗浄方法。
【請求項6】
洗浄が、60~80℃の温度で行われる、請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項7】
洗浄が、pH9.0~13.0の条件下で行われる、請求項5または6に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、60℃以上の高温で洗浄してもタンパク汚れ除去力を含む高い洗浄力を有する液体洗浄剤組成物及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に商業洗濯では、長期間着用したワイシャツやユニフォーム、厨房白衣、機械工場の作業着など、皮脂汚れやタンパク汚れ、粒子汚れ等が複合的に付着した衣類を洗濯する場合、常温での洗浄では汚れが十分に除去できず、界面活性剤(液体洗剤や粉末洗剤)とアルカリ剤を併用した60℃以上の高温洗濯が行われる。
【0003】
しかしながら、これらの衣類をいきなり60℃以上の高温で洗濯した場合、タンパク汚れは除去される前に熱により変性固化するため返って落ち難い汚れとなる。そのため、まずはタンパク汚れを固化させないよう一旦温度を常温~40℃とし、アルカリ性の浴で洗浄し、その後、洗浄温度を60℃以上に上げて他の汚れを除去する、という2段階の洗浄工程が必要であった。
【0004】
しかし、前記2段階の洗浄を行ってもタンパク汚れの除去が不十分だったり、付着したタンパク汚れが熱や経日ですでに変質していたりする場合もあるため、タンパク分解酵素であるプロテアーゼを含む洗剤が用いられることも多いが、60℃以上の洗浄では、プロテアーゼが有効に作用せず汚れを十分に落とすことができない、という課題があった。
【0005】
また、汚れ部分に予め界面活性剤や酵素製剤を塗布し放置してから洗浄する方法も考えられるが、一度にたくさんの被洗物を処理する必要がある商業洗濯では、1点1点塗布するこのような方法は生産性を大きく低下させることとなり非効率的である。
このように、2段階の洗浄や、洗浄成分の塗布・放置後の洗浄といった手間のかかる手法を採用することなく、60℃以上の高温での洗浄において使用できる、タンパク汚れを除去する能力が高い洗浄剤が求められていた。
【0006】
たとえば、特許文献1には、(a)[R-O-(EO)n-H](R:炭素数10~20のアルキル基又はアルケニル基、EO:エチレンオキサイド、n:エチレンオキサイドの付加モル数)表わされエチレンオキサイドの平均付加モル数が2~10の非イオン界面活性剤5~40質量%、(b)炭素数14~18の飽和脂肪酸またはその塩を飽和脂肪酸換算として0.1~2.0質量%、(c)プロテアーゼ製剤、(d)クエン酸塩、を含有し、b成分由来の脂肪酸塩以外のアニオン界面活性剤を実質的に含まないことを特徴とする液体洗浄剤組成物、が報告されている。特許文献1では、洗浄時の低泡性、かつ、すすぎ性、25℃での皮脂汚れ塗布洗浄力、透明均一な外観安定性を検討している。
【0007】
特許文献2には、(a)R-O(AO)n-H[式中、Rは炭素数8~22の炭化水素基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは0,1及び2から選ばれる数である]で示される化合物を6~15質量%含有する非イオン界面活性剤 10~50質量%、(b)平均炭素数8~20の脂肪酸 0.5~10質量%、(c)キレート剤 0.5~5質量%、(d)プロテアーゼを含む酵素、(e)酵素安定化剤 を含有する液体洗剤組成物、が報告されている。特許文献2では、酵素の安定性と20℃での靴下の洗浄性を検討している。
【0008】
特許文献3には、(A)ノニオン界面活性剤と、(B)アニオン界面活性剤と、(C)プロテアーゼと、(D)アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単
位からなる群から選択される少なくとも1つの単位と、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位とを有する水溶性ポリマーと、(E)α-ヒドロキシ-モノカルボン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含有し、全ての界面活性剤の含有量の合計が、液体洗浄剤の総質量に対して、45質量%以上であり、かつ、前記(B)成分の含有量が、液体洗浄剤の総質量に対して、4質量%以上である、液体洗浄剤、が報告されている。特許文献3では、界面活性剤の高濃度下における酵素の安定性と外観安定性を検討している。
【0009】
特許文献4には、(A)(A-1)炭素数12の一価炭化水素基を有するアルコールのエチレンオキサイド平均10~20モル付加物及び(A-2)炭素数13又は14の一価炭化水素基を有するアルコールのエチレンオキサイド平均10~20モル付加物からなり、その質量比が(A-1)/(A-2)=0.1~4であるノニオン界面活性剤 36~70質量%、(B)プロテアーゼ 0.1~2質量%、(C)塩化カルシウム 0.0001~0.01質量%を含有することを特徴とする衣料用液体洗浄剤組成物、が報告されている。特許文献4では、酵素の安定性と20℃での皮脂汚れの洗浄性を検討している。
【0010】
特許文献5には、(a)10~30質量%のR-O―(EO)n-H(式中、Rは炭素数10~20のアルキル基又はアルケニル基であり、EOはオキシエチレン基であり、nは平均付加モル数で、8~26の範囲の数値である)で表わされる非イオン界面活性剤と、(b)0.05~1.0質量%のプロテアーゼ酵素と、(c)抗菌性溶剤と、(d)架橋型カルボキシビニルポリマーと、を含み、10~30℃の液温度における液粘度が50~1,000mPa・sである衣料用液体洗浄剤組成物が報告されている。特許文献5では、酵素の安定性と組成物の粘度、25℃での皮脂汚れの洗浄性を検討している。
【0011】
特許文献6には、(A)成分:ノニオン界面活性剤を(A)成分中60質量%以上含む界面活性剤;(B)成分:ホモポリアミノ酸および/またはその塩;(C)成分:プロテアーゼを含む酵素;(D)成分:水を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物、が報告されている。特許文献6では、酵素の安定性と20℃での皮脂汚れの洗浄性を検討している。
【0012】
特許文献7には、(a)成分が、R1(CO)mO-(A1O)n-R2〔式中、R1は炭素数9以上16以下の第1級の脂肪族炭化水素基であり、R2は水素原子又はメチル基であり、COはカルボニル基であり、mは0又は1の数であり、A1O基はエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基であり、nは平均付加モル数であって、2以上30以下の数である。〕で表される非イオン界面活性剤;(b)成分が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;(c)成分が、(Mx+)ySO4
2-(c1)〔式中、(Mx+)は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン、及び炭素数2以上6以下のアルカノールアンモニウムイオンから選ばれる1種以上のイオンである。xはイオンの価数であり1又は2の数である。xが1の時はyは2の数であり、xが2の時はyは1の数である。〕;(d)成分が、プロテアーゼであって、水を含有し、(a)成分の含有量が5質量%以上30質量%以下であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比が、〔(b)成分の含有量〕/〔(a)成分の含有量〕で0以上0.45以下であり、(c)成分の含有量が0.5質量%以上4質量%以下である、衣料用液体洗浄剤組成物、が報告されている。特許文献7では、酵素の安定性と20℃でのタンパク汚れの洗浄性を検討している。
【0013】
特許文献8には、(a)成分が、炭素数10以上18以下のアルキル硫酸エステル塩;(b)成分が、R-O-(AO)n-SO3M〔式中、Rは炭素数10以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、AOは炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基であり、nは1以上20以下の整数であり、Mは
陽イオンである。〕;(c)成分が、ノニオン界面活性剤;(d)成分が、炭素数1以上8以下の有機アンモニウム硫酸塩、及び無機硫酸塩(但し、硫酸カルシウムを除く)から選ばれる1種以上の硫酸塩;(e)成分が、プロテアーゼであって、水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との合計の含有量が5質量%以上40質量%以下であり、(d)成分の含有量が2質量%以上8質量%以下であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比が、〔(a)成分の含有量〕/〔(b)成分の含有量〕で0.5以上10以下である、衣料用液体洗浄剤組成物、が報告されている。特許文献8では、酵素の安定性と30℃でのタンパク汚れの洗浄性を検討している。
【0014】
特許文献1~8に示される洗浄剤組成物は、いずれも、プロテアーゼとノニオン界面活性剤を含む組成物を報告しているが、その洗浄力は、20~30℃程度の温度下で検討されているのみである。本発明者が検討したところでは、特許文献1~8が報告する組成物が示す、60℃以上の高温での洗浄におけるタンパク汚れの除去力は、十分なものではなかった。
【0015】
特許文献9には、Esperase(登録商標)が、高温での洗浄に適したプロテアーゼであることが報告されている。しかしながら、Esperase(登録商標)が有する耐キレート安定性、その至適温度については、何ら示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002-167600号公報
【特許文献2】特開2009-138056号公報
【特許文献3】国際公開第2014/109380号
【特許文献4】特開2004-307630号公報
【特許文献5】特開2002-327199号公報
【特許文献6】国際公開第2011/052501号
【特許文献7】特開2017-008135号公報
【特許文献8】特開2017-071664号公報
【特許文献9】特開2013-007049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、60℃以上の高温で、高いタンパク分解力と高い洗浄力を発揮する洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、特定の特性を有するプロテアーゼとノニオン界面活性剤とを含む衣料用液体洗浄剤組成物を使用することで、斯かる課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
【0019】
1.(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上;(2)EDTA-4Na0.2質量%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上;(3)至適温度60℃以上の3つの特性をすべて有するプロテアーゼ(ただし、Esperase(登録商標)を除く)と、ノニオン界面活性剤を含む衣料用液体洗浄剤組成物。
2.さらに、脂肪酸または脂肪酸塩を含む、衣料用液体洗浄剤組成物。
3.さらに、キレート剤を含む、衣料用液体洗浄剤組成物。
4.上記1~3のいずれかに記載の衣料用液体洗浄剤組成物を用いて衣類を洗浄する、洗浄方法。
5.洗浄が、55℃以上の温度、かつ、アルカリ性下で行われる、洗浄方法。
6.洗浄が、60~80℃の温度で行われる、洗浄方法。
7.洗浄が、pH9~13の条件下で行われる、上記5または6に記載の洗浄方法。
なお、ここでいう活性値とは、酵素(プロテアーゼ)のある特定条件下(pH、温度、時間等)でのタンパク分解能を表している。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、60℃以上の高温で、高いタンパク分解力と高い洗浄力を発揮する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の組成物は、(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上、(2)EDTA-4Na0.2質量%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上、(3)至適温度60℃以上という3つの特性をすべて有するプロテアーゼと、ノニオン界面活性剤とを含むものである。
プロテアーゼは、ペプチド結合加水分解酵素の総称であって、洗浄剤組成物において広く使用されている。本発明で使用されるプロテアーゼは、下記に説明する3つの特性をすべて満たすことが必要である。
【0022】
本発明の組成物に含まれるプロテアーゼが満たす3つの特性について、その決定方法を順番に説明する。
(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上(至適pH)
本発明の組成物に含まれるプロテアーゼは、pH12.0で使用しても、至適pHでの活性に比して85~100%活性の維持を示すものである。
本指標は、基質にミルクカゼインを用いた時のプロテアーゼ活性が最も高いpHを至適pHとし、pH=12.0におけるプロテアーゼの活性値が、至適pHの活性値の85%以上を有することをもって、「pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上」としたものである。
(2)EDTA-4Na0.2質量%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上(耐キレート安定性)
本発明の組成物に含まれるプロテアーゼは、高い耐キレート安定性を有している。
本指標は、プロテアーゼを0.01質量%含有する溶液に、EDTA-4Naが0.2質量%になるように添加し、pH=7.5にて40℃×30分保持した際の活性値を測定し、この値が、EDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上であったものを、「EDTA-4Na0.2%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上」としたものである。
(3)至適温度60℃以上(至適温度)
本発明の組成物に含まれるプロテアーゼは、60℃以上の温度で高い活性を示すものである。
本指標は、基質にミルクカゼインを用いてpH=10.0におけるプロテアーゼ活性を各温度で測定した際に、最も活性の高かった温度が60℃以上であったものを「至適温度60℃以上」としたものである。
なお、組成物中のプロテアーゼの割合は適宜調整されるが、洗浄性の観点から、0.005~20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5~15質量%であり、さらにより好ましくは、2~10質量%である。
【0023】
次に、本発明の組成物のもう一つの成分であるノニオン界面活性剤については、汚れが除去できれば、その種類は特に限定されるものではない。しかしながら、綿製品の洗浄性の観点からは、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物であるノニオン界面活性剤が望ましく、PET製品の洗浄性の観点からは、モノまたは/およびジまたは/およびトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物であるノニオン界面活性剤が好ましい。これらのノニオン界面活性剤は、単独でも混合でも使用することができる。より好ましくは、グリフィンのHLB値が13~15となる高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物(単独でも2種以上でも良く、2種以上の場合はそれぞれのHLB値にそれぞれの質量比を乗じた値の総和が13~15となればよい)とジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物との組み合わせを例示することができる。
組成物中のノニオン界面活性剤の割合は適宜調整されるが、洗浄性の観点や組成物の粘度、組成物の取り扱い性の観点から、0.02~99質量%であることが好ましく、より好ましくは10~70質量%である。さらに、より好ましくは15~50質量%である。
【0024】
本発明では、両成分を水(イオン交換水、純水、など)に溶解させて、液体組成物とする。
【0025】
本発明の組成物には、本発明の性能に影響を及ぼさない範囲で、洗浄剤の技術分野で、洗浄剤組成物に配合することが知られている他の成分を配合することができる。
そのような成分として、脂肪酸、脂肪酸塩、キレート剤、安定化剤、アニオン界面活性剤、水混和性有機溶剤、増粘剤、減粘剤、可溶化剤、アルカリ剤、他のキレート剤、酸化防止剤、防腐剤、他の酵素、香料、着色料、乳濁化剤、天然物、pH調整剤、消泡剤、風合い向上剤、保存安定性向上剤、蛍光剤、移染防止剤、再汚染防止剤、パール剤 を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
脂肪酸、脂肪酸塩は、主に消泡剤として機能する。このような脂肪酸、脂肪酸塩としては、炭素数12~18の脂肪酸(塩)を例示することができる。具体的には、ヤシ脂肪酸(塩)、ステアリン酸(塩)などを例示することができる。組成物に対して0.01~10質量%配合することができる。
キレート剤は、組成物中の各成分を安定化させる機能を有している。そのようなキレート剤としては、有機キレート剤を例示することができる。具体的には、アミノカルボン酸系キレート剤(たとえば、EDTA、NTA、DTPA、MGDA、GLDA、HEIDAなど)を用いることができる。組成物中のキレート剤の割合は適宜調整されるが、消泡性、組成物の安定性の観点から、組成物の酵素原料の配合量に対して0.5~10質量%配合することができる。
安定化剤としては、各種のものを使用することができ、特に制限は無いが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、などのグリコール系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、3-メチル-3-メトキシ-ブタノール、などのアルコール系溶剤を例示することができる。組成物中の配合量は、本発明の組成物による洗浄力を妨げない範囲で、その使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0027】
次に、洗浄方法について説明する。
本発明の組成物を用いた洗浄は、いわゆる衣料の洗浄に適している。
具体的な洗浄方法としては、攪拌、回転、落下、振動等の物理的な外力を加えて洗浄する方法が挙げられる。具体例として、本発明の組成物を用いて、業務用自動洗濯機、連続式洗濯機、家庭用洗濯機を用いた衣料の洗浄を行うことができる。
洗浄に際しての本発明の洗浄剤組成物の使用量は、、特に限定されるものではなく、洗浄に際して適宜決定される。洗浄性、消泡性の観点から、洗浄液中、洗浄剤組成物中のプロテアーゼが0.001~10質量%、あるいは、ノニオン界面活性剤が0.001~5質量%になるように、本発明の組成物を配合することが好ましい。
【0028】
洗浄温度は、特に限定されるものではなく、洗浄に際して適宜決定されるが、本発明の組成物の所望の効果を最も引き出すためには、55~85℃で洗浄することが好ましい。より好ましい洗浄温度は、60~80℃であり、さらにより好ましい洗浄温度は70~80℃である。
洗浄時間は、特に限定されるものではなく、洗浄に際して適宜決定されるが、洗浄性の観点から、1~60分であることが好ましい。より好ましくは、3~30分であり、さらにより好ましくは、5~20分である。
【0029】
洗浄液のpHは8以上であることが好ましい。洗浄性の観点および被洗浄物の衣類の脆化防止の観点から、より好ましくはpH9~13、さらにより好ましくはpH10~12である。洗浄液のpHを調整する方法は特に限定されるものではないが、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリ、メタ珪酸カリ、1号珪酸カリ、2号珪酸カリ、2号珪酸カリ、苛性ナトリウム、苛性カリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アルカノールアミン類、トリポリリン酸ナトリウムなどを用いることができる。
【0030】
洗浄に際しては、本発明の組成物による洗浄力を妨げない範囲で、例えば、液体洗剤、粉末洗剤;ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの各種界面活性剤;珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩などの無機化合物;トリポリリン酸塩やアミノカルボン酸塩などのキレート化合物;過酸化水素や次亜塩素酸ナトリウムなどの漂白剤;アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、炭化水素系溶剤、などの有機溶剤;他のプロテアーゼやリパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼなどの酵素;酸化防止剤、防腐剤、香料、着色料、乳濁化剤、抗菌剤、天然物、pH調整剤、消泡剤、風合い向上剤、保存安定性向上剤、蛍光剤、移染防止剤、再汚染防止剤、ソイルリリース剤、パール剤などを用いてもよい。これらの配合量は、本発明の組成物による洗浄力を妨げない範囲で、その使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0031】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【実施例0032】
[プロテアーゼの選定]
プロテアーゼとして、Progress UNO 100L、Esperase 8.0L、Savinase 16L、アルカラーゼ 2.5L(以上、NOVO製)、クリナーゼSAP-200L、クリナーゼCAP-200L、クリナーゼAP-200L(以上、日本酵研製)、ビオプラーゼAPL-30、ビオプラーゼ30L(以上、ナガセケムテックス製)、EFFECTENZ P150、PREFERENZ P300(以上、デュポン製)を用いて、以下の方法に従って、各プロテアーゼが、(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上<至適pH>、(2)EDTA-4Na0.2質量%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上<耐キレート安定性>、(3)至適温度60℃以上<至適温度>という、本発明での要件を満たすか否かを判定した。
【0033】
<(1)至適pH>
100mMの、リン酸-ナトリウム緩衝液(pH6.0-8.0)、トリス-塩酸緩衝
液(pH8.0-9.0)、グリシン-水酸化ナトリウム酸緩衝液(pH9.0-10.0)、ホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液(10.0-11.0)またはリン酸-水酸化ナトリウム緩衝液(pH11.0-12.0)を用いて、基質としてミルクカゼインを0.6質量%含有する、異なるpH値を示す種々の溶液を調整し、他は下記の酵素力価の測定方法に従って、種々のpH条件についてプロテアーゼ活性を測定した。最もプロテアーゼ活性の高いpHの条件をそのプロテアーゼの至適pHとした。またpH12におけるプロテアーゼ活性値を至適pH条件下のプロテアーゼ活性値に対する百分率で算出した。その結果、85%以上となるものを〇と評価し、それ以外を×と評価した。
【0034】
<(2)耐キレート安定性>
希釈液(塩化ナトリウム3g/l、酢酸カルシウム0.175g/l、酢酸ナトリウム1.667g/l、(pH7.5))にて0.01%に希釈した酵素原料溶液に、EDTA-4Naを0.2質量%になるように加え、pH7.5で40℃×30分保持した後に残存するプロテアーゼ活性を、下記の酵素力価の測定方法に従って測定した。同様に、EDTA-4Na未添加の場合のプロテアーゼ活性値を測定し、EDTA-4Na添加時のEDTA-4Na未添加時に対する割合を算出した。その結果、90%以上となるものを〇と評価し、それ以外を×と評価した。
【0035】
<(3)至適温度>
ホウ酸-水酸化ナトリウム緩衝液を用いてpH=10.0に調整したミルクカゼイン0.6質量%溶液を用い、下記の酵素力価の測定方法に準じて、各温度で10分間反応させた時のプロテアーゼ活性を求め、最も活性値の高かった温度を至適温度とした。至適温度が60℃以上となるものを〇と評価し、それ以外を×と評価した。
【0036】
<酵素力価>
反応液(0.6質量%ミルクカゼイン(メルク(株)製)、0.55質量%リン酸水素二ナトリウム(pH7.5))5mlに、希釈液(塩化ナトリウム3g/l、酢酸カルシウム0.175g/l、酢酸ナトリウム1.667g/l、(pH7.5))にて0.01質量%に希釈した酵素原料溶液1mlを加え、30℃で10分間反応させる。反応後、トリクロロ酢酸液(トリクロロ酢酸17.97g/l、無水酢酸ナトリウム18.04g/l、酢酸19.81g/l)5mlを加えて、30℃で30分間放置後、メンブランフィルター(0.45μm)でろ過する。ろ液2mlに0.55M炭酸ナトリウム5ml、Folin試薬(Folin試薬:イオン交換水=1:2)1mlを加えて30℃で30分間放置後、吸光度(660nm)を測定した。L-チロジンの呈するFolin呈色度(吸光度)を基準にとり、30℃で1分間に反応液全体で1μgのL-チロジンの呈する吸光度に相当する吸光度を与えた酵素活性を1プロテアーゼ単位(1PU)として酵素力価を算出した。
【0037】
なお、ここでいう「プロテアーゼ活性」の活性値とは、酵素(プロテアーゼ)のある特定条件下(pH、温度、時間等)でのタンパク分解能を表し、酵素力価とは、酵素の活性値を示す単位で、PU/mlで表す。
結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
表1が示すように、実験に用いた11種類のプロテアーゼのうち、Progress UNO 100L、Esperase 8.0Lの二種類のみが、(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上、(2)EDTA-4Na0.2%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上、(3)至適温度60℃以上を満たすことが確認できた。それ以外のものは、(1)~(3)の要件のうち、少なくとも1つの要件を満たさないものである。
【0040】
[組成物の調整]
表2に記載の組成(質量%)で、組成物を調整した。
使用した各成分は以下のとおりである。
<非イオン界面活性剤>
・C12アルコールEO9:日本触媒製 ソフタノール90
・C12アルコールEO12:日本触媒製 ソフタノール120
・C12アルコールEO15:日本触媒製 ソフタノール150
・C12アルコール(EO1/PO2)(EO3/PO1):日華化学製
・C12アルコールEO3(EO1.5/PO2.5)EO1.5:日華化学製
・C12アルコールEO3(EO2.5/PO2.5)EO3:日華化学製
・C12アルコールEO3(EO3/PO2.5)EO8:日華化学製
・ジスチレン化フェノールEO12:日華化学製
・C18アミンEO20:日華化学製
なおEOは、エチレンオキシ基を示し、POは、プロピレンオキシ基を示し、数字は付加モル数を示す。例えば、C12アルコール(EO1/PO2)(EO3/PO1)は炭素数12のアルコールにEO1モル、PO2モルをランダムに付加した後、EO3モル、PO1モルをランダムに付加した構造を表し、C12アルコールEO3(EO1.5/PO2.5)EO1.5は炭素数12のアルコールにEOを3モル付加した後、EO1.5モル、PO2.5モルをランダムに付加し、最後にEOを1.5モル付加した構造を表す。
【0041】
<キレート剤>
・NTA-3Na(ニトリロ三酢酸ナトリウム):ナガセケムテックス製 クレワットP
C-C3
・EDTA-4Na(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム):ナガセケムテックス製 クレワットS2
・DTPA-5Na(ジエチレンテトラミン五酢酸五ナトリウム):ナガセケムテックス製 クレワットDP-80
<脂肪酸>
・ヤシ脂肪酸:日本油脂製 ヤシシボウサン
・ステアリン酸:新日本理化製 ステアリン酸 300
<中和剤>
・水酸化ナトリウム:トクヤマ製 液体苛性ソーダ
【0042】
[洗浄方法]
洗浄装置としてはターゴトメータ((株)大栄科学精器製作所製)を用いた。
被洗物として、湿式人工汚染布(財団法人洗濯科学協会製)、EMPA116汚染布(スイス連邦材料試験研究所製)を用いた。上記湿式人工汚染布、及び4×5cmに裁断した上記EMPA116汚染布それぞれ4枚ずつを、実施例1~30、及び、比較例1~6の各種溶液500mlで洗浄した。洗浄温度は60℃、または70℃、または80℃で、洗浄時間は15分、回転数90rpmとした。
【0043】
[評価]
<外観安定性>
作成した組成物を200mlマヨネーズ瓶に入れ、45℃、25℃、-5℃の恒温槽にそれぞれ1週間静置した。1週間後の外観を目視し、沈降物や析出物が無いものを○とした。
<pH>
作成した直後の組成物のpHをpHメーターを用いて測定した。
【0044】
<洗浄率>
洗浄後、上記湿式人工汚染布及びEMPA116汚染布をすすぎ、乾燥し、前記汚染布の表面の反射率(550nm)を色彩計CM-53D(村上色彩技術研究所社製)により測定し、以下の式を用いて洗浄率を算出した。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率-洗浄前の反射率)/(白布の反射率-洗浄前の反射率)]
湿式人工汚染布の評価は洗浄温度60℃と70℃で行い、湿式人工汚染布の洗浄率については、汚染布4枚の洗浄率の平均値が45%未満を×、45%以上50%未満を△、50%以上55%未満を○、55%以上を◎とし、△以上を合格とした。
EMPA116汚染布の評価は、洗浄温度60℃、70℃、80℃で行い、EMPA116汚染布の洗浄率については、汚染布4枚の洗浄率の平均値が25%未満を×、25%以上30%未満を△、30%以上35%未満を○、35%以上を◎とし、△以上を合格とした。
【0045】
<すすぎ時の泡切れ>
高さ約10cm、容積約200mlのマヨネーズ瓶に、上記洗浄試験終了後の洗浄液を4ml採水し、Ca硬度60の水にて計100mlとする。密閉した後、容器を10秒間で40回、一定の速度で上下方向に振とうし、直ちに平らな台に静置する。静置直後から5秒後の泡高さを測定し、5秒後に泡高さが5mm未満を○、5mm以上を×とした。
【0046】
結果を表2、表3に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
表2が示すように、本発明の組成物は、いずれも、外観安定性に優れたものであった。
また、表3が示すように、本発明の組成物(組成物1~23)は、いずれも、湿式人工汚染布洗浄性試験、EMPA116汚染布洗浄性試験の両方で、60℃以上の温度で優れた洗浄性能を示した(実施例1~30)。
【0055】
これに対して、本発明の(1)~(3)の要件を満たさないプロテアーゼを使用したもの(組成物24~29、34~36)は、特に、EMPA116汚染布洗浄性試験で、60℃以上の温度では使用に適さないものであった(比較例1~6、11~13)。また、本発明の(1)~(3)の要件を満たすプロテアーゼと共に、ノニオン界面活性剤に替えてアニオン界面活性剤を使用したもの(組成物30、31)や(1)~(3)の要件を満たすプロテアーゼを単独で使用したもの(組成物33)、ノニオン界面活性剤を単独で使用したもの(組成物32)では、60℃以上の温度での湿式人工汚染布洗浄性試験あるいはEMPA116汚染布洗浄性試験で、洗浄性に劣るものであった(比較例7、8;比較例10;比較例9)。
【0056】
以上の結果から、(1)pH12.0の活性値が至適pHでの活性値の85%以上;(2)EDTA-4Na0.2質量%添加時の活性値がEDTA-4Na無添加時の活性値に対して90%以上;(3)至適温度60℃以上の3つの特性をすべて有するプロテアーゼと、ノニオン界面活性剤を使用した組成物を使用することで、衣料に対する優れた洗浄
力を示すことが確認できた。