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特開2022-83464ラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083464
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置
(51)【国際特許分類】
   B07B 1/00 20060101AFI20220530BHJP
   B26D 3/16 20060101ALI20220530BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B07B1/00 Z
B26D3/16 A
B26D7/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194782
(22)【出願日】2020-11-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】520461853
【氏名又は名称】有限会社大進工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 秀明
【テーマコード(参考)】
3C021
4D021
【Fターム(参考)】
3C021CC02
4D021AA01
4D021AB02
4D021AC01
4D021AC02
4D021AC03
4D021AC08
4D021DB20
4D021EA05
(57)【要約】
【課題】生産性を高めコスト低減を図りつつ、目詰まり等を抑制できるラバースクリーンを製造できるラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置を提供する。
【解決手段】回転する回転体に配置された樹脂製の横ワイヤRWhに対し、樹脂製の縦ワイヤRWvを交差するように当接させて溶着を行うラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置200は、縦ワイヤRWvを切断する一対のカッタ刃210,220と、前記カッタ刃210,220にそれぞれ固定されて一体的に移動する保持部230,240及び係止部250,260とを有し、前記保持部230,240は、縦ワイヤRWvを面で保持する把持板部232,242を備え、前記係止部250,260は、縦ワイヤRWvに当接して係止する鋸刃状部254,264を備えた。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する回転体に配置された樹脂製の行方向ワイヤに対し、樹脂製の列方向ワイヤを交差するように当接させて溶着を行うラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置であって、
列方向ワイヤを切断する一対のカッタ刃と、
前記カッタ刃にそれぞれ固定されて一体的に移動する保持部及び係止部とを有し、
前記保持部は、前記列方向ワイヤを面で保持する把持板部を備え、
前記係止部は、前記列方向ワイヤに当接して係止する鋸刃状部を備えた、
ことを特徴とするラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置。
【請求項2】
前記把持板部は、前記列方向ワイヤに対して両側から挟持可能に配置され、前記鋸刃状部は、前記列方向ワイヤの長手方向に対して角度付けされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置。
【請求項3】
前記係止部は、前記カッタ刃に固定されるベース部と、前記ベース部に対して折り曲げられた中間板部と、前記中間板部に対して折り曲げられた係止板部とを有し、前記鋸刃状部は、前記係止板部の対向する縁に配設されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置。
【請求項4】
前記係止板部は、前記中間板部と前記鋸刃状部との間で、互い違いに2回折り曲げられている、
ことを特徴とする請求項3に記載のラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉱石、コークス、砕石などの篩別に使用する振動篩用スクリーンとして、例えばポリウレタン弾性体からなる細いワイヤ状素材を縦横に交錯積層し、その全接点を溶着により接合したラバースクリーンが使用されていた。かかるラバースクリーンには、目開きが正方形のものと、長方形のものがある。
【0003】
しかし、目開き正方形を有するラバースクリーンにおいては、網目に被選別物が突き刺さることによる目詰まりが生じやすく、特に水分の多い粉状物を選別する場合には、目詰まりが頻繁に発生するという問題がある。
【0004】
一方、目開きを長方形(いわゆるスロツトタイプ)にしたラバースクリーンは、目詰まり防止に一定の効果を発揮する。しかしながら、縦長スロツトタイプの場合には、網強度が低下し、ワイヤ状素材の切断が発生しやすく、また、横長スロツトタイプでは横辺が長いため、処理物の衝突頻度が多く、ワイヤ状素材の摩耗が激しく摩耗寿命が著しく低下するという問題がある。
【0005】
かかる問題に鑑みて、ワイヤ状素材を縦横に交錯積層した全接点のうち、所定個所のみを溶着し、他の接点を溶着しない構造を備えることにより、目詰まり防止等の効果を発揮するスクリーンが特許文献1により開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57-184787号公報
【特許文献2】特公平03-5303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、手作業でラバースクリーンを製造することにより、生産性の低下とコストの増大を招いている。これに対し、軸線方向に沿ってワイヤ状素材を所定間隔で外周に配置したドラムを回転させながら、所定ピッチでスパイラル状に別のワイヤ状素材を巻き付けて溶着する自動化技術が、特許文献2に開示されている。
【0008】
特許文献2の自動化技術によれば、ラバースクリーンの生産性を高めコスト低減を図れる。しかし、特許文献2には具体的な開示はないが、ワイヤ状素材の切断を手作業で行うとすると手間がかかるため、自動化の効果が薄れるという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、生産性を高めコスト低減を図りつつ、目詰まり等を抑制できるラバースクリーンを製造できるラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置は、
回転する回転体に配置された樹脂製の行方向ワイヤに対し、樹脂製の列方向ワイヤを交差するように当接させて溶着を行うラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置であって、
列方向ワイヤを切断する一対のカッタ刃と、
前記カッタ刃にそれぞれ固定されて一体的に移動する保持部及び係止部とを有し、
前記保持部は、前記列方向ワイヤを面で保持する把持板部を備え、
前記係止部は、前記列方向ワイヤに当接して係止する鋸刃状部を備えた、
ことを特徴とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性を高めコスト低減を図りつつ、目詰まり等を抑制できるラバースクリーンを製造できるラバースクリーン製造装置用のワイヤ切断保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施の形態にかかるラバースクリーン製造装置を側面視した図である。
図2図2は、回転ユニットの要部を示す斜視図である。
図3A図3Aは、ラバースクリーン製造装置の溶着ユニットを模式的に示す図である。
図3B図3Bは、図3AのC方向から熱風吹き出しノズル周辺を側面視した拡大図である。
図4図4は、ワイヤ切断保持装置の分解斜視図である。
図5図5は、ワイヤ切断保持装置の動作時の斜視図である。。
図6図6は、ラバースクリーン製造装置の製造工程を示すフローチャート図である。
図7図7は、ラバースクリーン製造装置による製造工程を説明するための図である。
図8図8は、ラバースクリーン製造装置による製造工程を説明するための図である。
図9図9は、ラバースクリーン製造装置による製造工程を説明するための図である。
図10図10は、ラバースクリーン製造装置による製造工程を説明するための図である。
図11図11は、縦ワイヤを通る面でワイヤ切断保持装置を切断して示す断面図であり、(a)は縦ワイヤを開放した状態を示し、(b)は縦ワイヤを切断して保持した状態を示す。
図12図12は、ラバースクリーン製造装置により製造されたラバースクリーンの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるラバースクリーン製造装置を側面視した図であり、内部構造の一部を透視した状態で示している。なお、ここで用いる図面において、説明の便宜上、構成の一部を誇張して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0014】
(ラバースクリーン製造装置の構成)
図1に示すように、ラバースクリーン製造装置100は、定盤GD上に設置されたフレーム101と、回転ユニット110と、溶着ユニット120と、移動ユニット140と、これらを制御する制御装置150とを有する。
図1において、定盤GDに垂直な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交し且つ回転ユニット110の回転軸線Oに沿った方向をX軸方向とし、Z軸方向とX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。
また、本明細書中、「熱風」とは樹脂ワイヤの素材の溶融温度以上である空気流をいい、「冷風」とは樹脂ワイヤの素材の溶融温度未満である空気流をいう。
【0015】
図2は、回転ユニット110の要部を示す斜視図である。図1,2において、回転ユニット110は、一対の円盤111,111と、円盤111,111と一体的に回転する回転軸112と、回転軸112の端部に連結されたサーボモータ113(図2において不図示)と、を有する。円盤111が回転体を構成する。
【0016】
円盤111の外周には、等間隔で形成された歯114が形成されている。回転軸112は、不図示の軸受によりフレーム101に対して回転可能に支持されている。サーボモータ113は、フレーム101に固定されており、回転軸112の角度を検出するレゾルバ(角度センサ)を内蔵しており、レゾルバからの角度信号は、制御装置150に入力される。この角度信号に基づいて制御装置150は、制御信号をサーボモータ113に出力することで、回転軸112の回転角度を制御することができる。
【0017】
図3Aは、ラバースクリーン製造装置の溶着ユニット120を模式的に示す図である。溶着ユニット120は、機械系装置群120Gと、空気系装置群130Gとを有する。機械系装置群120Gは、不図示のワイヤ源から供給される樹脂ワイヤ(縦ワイヤRWv)に転接しつつ保持する押さえローラ121と、押さえローラ121をY軸方向に駆動するエアシリンダ122と、ワイヤ切断保持装置200と、ワイヤ切断保持装置200を駆動する駆動部125とを有する。エアシリンダ122と駆動部125は、制御装置150の制御に従い動作する。押さえローラ121が押さえ部を構成する。
【0018】
空気系装置群130Gは、工場エアなどの空気圧源ASに熱風系配管HPを介して連結された熱風吹き出しノズル132と、熱風系配管HPの途中に配置されたヒータ133と、空気圧源ASに第1冷風系配管CP1を介して連結された第1冷風吹き出しノズル134と、第1冷風系配管CP1の途中に配置された第1バルブ135と、空気圧源ASに第2冷風系配管CP2を介して連結された第2冷風吹き出しノズル136と、第2冷風系配管CP2の途中に配置された第2バルブ137と、を有する。
【0019】
ヒータ133と、第1バルブ135と、第2バルブ137は、制御装置150の制御に従い動作する。第1バルブ135と第2バルブ137が、切換部を構成する。
【0020】
なお、空気圧源ASと熱風系配管HPとの間を遮断可能に配置された第1メインバルブMV1と、空気圧源ASと第1冷風系配管CP1及び第2冷風系配管CP2との間を遮断可能に配置された第2メインバルブMV2は、ラバースクリーン製造時には常に開放されている。
【0021】
熱風吹き出しノズル132は、下端の熱風吹き出し口から吹き出された温風が所定の範囲に広がって吹き出されるように構成されている。すなわち、熱風吹き出しノズル132の熱風吹き出し方向は、吹き出された熱風が縦ワイヤRWv及び横ワイヤRWhの両方に向かい、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの接触点に当たるように定められている。
【0022】
詳細に説明すると、押さえローラ121に沿って円弧状に曲げられて案内される縦ワイヤRWvの円弧外周表面部分と、該縦ワイヤRWvに接合される横ワイヤRWhの接合表面部分とに向けて、熱風吹き出しノズル132の熱風吹き出し方向が設定されている。したがって、一箇所の縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhとの接合が終了し、次の箇所で縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhとの接合を行う際に、両者が向き合った状態から円盤111がA方向(後述)に回転して、両者が接合されるまでの間に、熱風吹き出しノズル132は、それぞれの接合表面部分に対してほぼ均等に熱風を吹き付けて溶融接合可能な温度に加熱し、両者が接触した状態で溶融することを可能とする。
【0023】
なお、熱風吹き出しノズル132から吹き出される熱風の温度は、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhのそれぞれの接合面に熱風が当てられ、円盤111が回転して、両者が接合されるまでの間に、各ワイヤ表面が溶融接合可能な温度に達するように設定されている。
【0024】
図3Bは、図3AのC方向から熱風吹き出しノズル132周辺を側面視した拡大図である。本実施形態では、第1冷風吹き出しノズル134と第2冷風吹き出しノズル136とを設けている。
【0025】
図3Bに示すように、第1冷風吹き出しノズル134は、熱風吹き出しノズル132の熱風吹き出し方向に対して交差する方向に(斜め上方に向かって)、その冷風吹き出し口を向けて配置されている。第1冷風吹き出しノズル134は、熱風吹き出しノズル132から吹き出される熱風に対して、吹き出した冷風を側方から当てて熱風の向きを変更し、熱風を吹き飛ばす機能を有する。
【0026】
具体的には、第1冷風吹き出しノズル134の冷風吹き出し方向は、熱風吹き出しノズル132の熱風吹き出し方向に対して交差し、且つ円盤111の回転軸線に平行なX軸方向に沿った方向である。
【0027】
図3Aに示すように、第2冷風吹き出しノズル136は、熱風吹き出しノズル132の熱風吹き出し方向及び第1冷風吹き出しノズル134の冷風吹き出し方向に対してそれぞれ交差する方向に、冷風吹き出し口を向けて配置されている。具体的には、第2冷風吹き出しノズル136の冷風吹き出し方向は、熱風吹き出しノズル132の熱風吹き出し方向に対して交差し、且つ円盤111の外周接線に沿った方向である。
第2冷風吹き出しノズル136は、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhとが近接した状態で、両方に冷風を吹きかけて、それら表面を冷却する機能を有する。
【0028】
熱風吹き出しノズル132、第1冷風吹き出しノズル134、及び第2冷風吹き出しノズル136は、連係した動作を行うことで、接合位置を選択して縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhを溶融接合することができる。この動作について説明する。
【0029】
まず、熱風吹き出しノズル132は、ワイヤ接合作業時には常時熱風を吹き出しており、縦ワイヤRWvが押さえローラ121で案内された状態で、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの表面に向けて熱風を吹き付ける。したがって、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhを接合する位置では、第1冷風吹き出しノズル134と第2冷風吹き出しノズル136から冷風を吹き出させないことで、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの接合が行われる。
【0030】
一方、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhを接合しない位置でも、熱風吹き出しノズル132が熱風を吹き出し続けているため、それによるワイヤの加熱溶融を阻止する必要がある。そこで、第1冷風吹き出しノズル134から吹き出した冷風を、熱風吹き出しノズル132から吹き出された熱風に当てることで、熱風が縦ワイヤRWv及び横ワイヤRWhに当たらないような方向へ吹き飛ばす。さらに、それまでに熱風吹き出しノズル132からの熱風で加熱されていた縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの表面を、第2冷風吹き出しノズル136から吹き出された冷風により冷却する。
【0031】
このように、熱風吹き出しノズル132からの熱風を第1冷風吹き出しノズル134の冷風で吹き飛ばし、かつ、第2冷風吹き出しノズル136からの冷風で縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの表面を冷却することにより溶融が阻止されるため、円盤111を矢印A方向に回転させながら縦ワイヤRWvを横ワイヤRWhに押付けても、溶融していない両者が接合されることはない。
【0032】
図4は、ワイヤ切断保持装置200の分解斜視図であり、図5は、ワイヤ切断保持装置200の動作時の斜視図である。図4,5において、ワイヤ切断保持装置200は、一対のカッタ刃210,220と、カッタ刃210,220に固定されて一体的に移動する一対の保持部230,240、及び係止部250,260とを有する。
【0033】
カッタ刃210,220は、駆動部125(図3A)から供給されるエア圧により不図示の枢軸回りに水平方向に開閉駆動され、対向する刃先211,221を接近または離間させる。また、カッタ刃210,220の上面には、2つのねじ穴212,222がそれぞれ形成されている。
【0034】
対称的に配置される保持部230,240は、金属製の板材をプレス成形することにより形成され、ベース板部231,241と、ベース板部231,241に対して垂直に折り曲げられ、鉛直面に沿ってカッタ刃210,220の長手方向に延在する把持板部232,242とを連設してなる。ベース板部231,241には、それぞれ2つの長孔233,243が形成されている。
【0035】
対称的に配置される係止部250,260は、金属製の板材をプレス成形することにより形成され、ベース板部251,261と、ベース板部251,261に対して垂直に折り曲げられ鉛直面に沿った中間板部252,262と、中間板部252,262に対して折り曲げられた係止板部253,263とを連設してなる。
【0036】
係止板部253,263は、カッタ刃210,220の先端側から見たときに(後述する図11参照)、水平面に対して45度前後傾くように角度けされて、中間板部252,262に対して連結されている。係止板部253,263において、刃先211,221側の端部近傍の対向縁に、鋭利な刻み目を持つ鋸刃状部254,264が形成されている。係止板部253,263は、中間板部252,262から鋸刃状部254,264側に向かう間に、互い違いに2回折り曲げられており、これにより鋸刃状部254,264の高さ位置を調整している。ベース板部251,261には、それぞれ2つの長孔255,265が形成されている。
【0037】
ワイヤ切断保持装置200の組み付け時には、カッタ刃210,220の上面に、保持部230,240のベース板部231,241を載置し、さらに係止部250,260のベース板部251,261を重ねて載置する。そして、重なった長孔233,255と、長孔243,265に、小ねじ270を挿通させ、カッタ刃210,220のねじ穴212,222に螺合させることで、カッタ刃210に保持部230と係止部250を固定し、カッタ刃220と保持部240と係止部260を固定する。ワイヤ切断保持装置200の組付けられた状態を、図5に示す。
【0038】
ワイヤ切断保持装置200を組みつけた状態で、カッタ刃210と保持部230と係止部250は一体的に移動し、カッタ刃220と保持部240と係止部260も一体的に移動する。
【0039】
図1において、溶着ユニット120は、フレーム101に対して、移動ユニット140によりX軸方向に移動可能に支持されている。詳細は図示していないが、移動ユニット140は、制御装置150により制御されるアクチュエータと、アクチュエータから出力された回転運動をX軸方向の運動に変換して溶着ユニット120に伝達するボールねじ機構と、フレーム101においてX軸方向に沿って配置されたガイドレールと、ガイドレール上に摺動可能に配置され溶着ユニット120を支持するスライダと、を有する。すなわち、制御装置150は、X軸方向における所望の位置に溶着ユニット120を移動させることができる。
【0040】
なお、不図示の位置センサからの信号により、制御装置150は、円盤111に対する溶着ユニット120(押さえローラ121)のX軸方向の相対位置を検出できるようになっている。
【0041】
(ラバースクリーン製造工程)
図6は、ラバースクリーン製造装置100による製造工程を示すフローチャート図である。図7~10は、ラバースクリーン製造装置100による製造工程を説明するための図である。ただし、図7~10においては、ラバースクリーン製造装置100の要部のみを示す。図11は、縦ワイヤRWvを通る面でワイヤ切断保持装置200を切断して示す断面図であり、(a)は縦ワイヤRWvを開放した状態を示し、(b)は縦ワイヤRWvを切断して保持した状態を示す。
以下、図を参照して、ラバースクリーン製造装置100による製造工程を説明する。
【0042】
ラバースクリーンを形成する樹脂ワイヤは、ポリウレタンやゴムなどの弾性物質を主成分とする(ただし金属線の周囲に弾性物質が被覆されていてもよい)線状体であり、溶融温度以上の熱風を吹き付けることで表面が溶融し、また溶融温度未満に冷却することで固化する性質を有する。したがって、溶融温度以上の熱風を吹き付けることにより、両者の表面が溶け合った状態で樹脂ワイヤ同士を重ね、その後に冷却することで、溶け合った表面が固化して樹脂ワイヤ同士が接合する。この作用を溶着という。
【0043】
また、図7は、一対の円盤111に対して、樹脂ワイヤを交差して張設した状態を模式的に示している。ここで、X軸方向に沿って張設される樹脂ワイヤを横ワイヤ(行方向ワイヤともいう)RWhとし、円盤111の周方向(R方向という)に沿って張設される樹脂ワイヤを縦ワイヤ(列方向ワイヤともいう)RWvという。
【0044】
図6において、まずステップS101で、横ワイヤのRWhの張設を行う。具体的には、図2において、1本の横ワイヤRWhの端部を、不図示のクリップなどで一方側(図2で左側)の円盤111に固定する。その後、固定された端部より延在する横ワイヤRWhを、一方側の円盤111の歯114の間を通して、X軸方向に沿って引き回し、さらに他方側(図2で右側)の円盤111の歯114に引っ掛けた後に折り返し、再びX軸方向に沿って引き回し、一方側の円盤111の歯114に引っ掛けた後に折り返すというように、横ワイヤRWhを連続してジグザグに且つ弛みのない状態で張設する。円盤111の間に張設する横ワイヤのRWhの本数は、ラバースクリーンの大きさによって任意に設定できる。横ワイヤRWhの自由端は、いずれかの円盤111に固定する。
【0045】
次いで、ステップS102で、不図示のワイヤ供給源から矢印B方向(図3A)に引き出した縦ワイヤRWvを、押さえローラ121の周囲に巻き回した後に、その端部をワイヤ切断保持装置200の保持部230,240及び係止部250,260により把持させる(図5図11(b))。以上が、作業者が行うラバースクリーン製造の準備工程になり、以降は制御装置150の自動制御により、ラバースクリーンの製造を実行する。
【0046】
なお、あらかじめ制御装置150は、樹脂ワイヤを溶着すべきでない位置の情報として、X軸方向位置と角度位置(図7のR方向位置)を記憶し、また製造するラバースクリーンのサイズの情報として、溶着の開始角度θ1と、溶着の終了角度θ2と、溶着する縦ワイヤRWvの規定本数を記憶しているものとする。
【0047】
制御装置150は、ステップS103で,ヒータ133を駆動制御して、空気圧源ASから熱風系配管HPに供給されるエアを加熱する。これにより、熱風系配管HPを介して熱風吹き出しノズル132から、樹脂ワイヤの溶融温度以上に加熱された熱風を吹き出させることができる。
【0048】
一方、制御装置150は、第1バルブ135及び第2バルブ137を遮断したままとする。このため、第1冷風吹き出しノズル134及び第2冷風吹き出しノズル136から冷風が吹き出されない状態となる。
【0049】
ステップS104で、制御装置150は、サーボモータ113を駆動して円盤111を、図7で矢印A方向に所定速度で回転させる。サーボモータ113のレゾルバより、基準位置SPに対する円盤111の回転角度を示す角度信号が、制御装置150に随時入力される。
【0050】
ステップS105で、制御装置150は、入力された角度信号により、ラバースクリーン製造を開始する開始角度θ1(図7)まで円盤111が回転したか否かを判断し、開始角度θ1に達しなければ(ステップS105の判断No)、円盤111がさらに回転して開始角度θ1になるまで待機する。
【0051】
これに対し、ステップS105で開始角度θ1まで円盤111が回転したと判断した制御装置150は、続くステップS106で、エアシリンダ122を駆動して押さえローラ121を、図9に示す突き出し位置(当接位置ともいう)へと移動させる。これにより押さえローラ121は、外周に保持している縦ワイヤRWvを、熱風吹き出しノズル132の吹き出し口の下方で横ワイヤRWhに対して押し付ける(当接させる)ことができる。
【0052】
また制御装置150は、ステップS107で、駆動部125を駆動することによりワイヤ切断保持装置200で挟持していた縦ワイヤRWvの端部を開放する(図11(a))。縦ワイヤRWvの端部を固定位置に保持したままであると、以降の溶着動作が妨げられるからである。
【0053】
熱風吹き出しノズル132から、樹脂ワイヤの溶融温度以上に加熱された熱風が吹き出されているため、熱風吹き出しノズル132の直下にある縦ワイヤRWvの表面と、これと交差した横ワイヤRWhの表面を加熱して溶融させることができる。これによりワイヤ溶着部が形成されることとなる。
【0054】
表面が溶融した縦ワイヤRWvの一部は、円盤111の回転に伴ってA方向へと移動し、熱風吹き出しノズル132の熱風が十分届かない位置で室温によって冷却されて横ワイヤRWhに固着した状態となり、分離不能となる。横ワイヤRWhに対して一部が溶着した縦ワイヤRWvは、円盤111の回転に伴って引き出され、また押さえローラ121が回転することで、縦ワイヤRWvの連続的な引き出しが支援される。
【0055】
ステップS108で、制御装置150は、入力された角度信号により、現在のX軸方向位置において、縦ワイヤRWvを横ワイヤRWhに溶着しない角度位置(不溶着位置)になったか否かを判断する。不溶着位置でないと判断した場合、制御装置150は、ステップS110にフローを進めて、ラバースクリーン製造を終了する終了角度θ2(図7)まで円盤111が回転したか否かを判断する。終了角度θ2でないと判断した場合、制御装置150は、ステップS108にフローを戻して、同様に角度位置の監視を続ける。
【0056】
一方、ステップS108で不溶着位置になったと判断した場合、制御装置150は、ステップS109で、第1バルブ135と第2バルブ137を開放する。これにより、第1冷風吹き出しノズル134から吹き出した冷風を、横ワイヤRWhの1本(1ピッチ)分に対応する角度範囲(所定時間内)で、熱風吹き出しノズル132から吹き出される熱風に当てて、横ワイヤRWhと縦ワイヤRWvに当たる手前で向きを変えさせ、熱風が横ワイヤRWhと縦ワイヤRWvに当たりにくくする。これと同時に、第2冷風吹き出しノズル136から吹き出した冷風で、熱風吹き付けによって加熱された縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの表面冷却を促す。これにより、重なった縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの表面の温度を溶融温度以上に上昇させることができなくなるため、ワイヤ溶着が生じず、すなわちワイヤ不溶着部を形成することができる。
さらに円盤111が回転して横ワイヤRWhの1本分に対応する角度範囲を超えた時点で、制御装置150は、第1バルブ135と第2バルブ137を遮断するため、次の横ワイヤRWhに対して溶着動作を続行できる。
【0057】
その後、制御装置150は、ステップS110で終了角度θ2になったと判断するまで、ステップS108、S109の動作を繰り返す。これにより、あらかじめ記憶されていた角度位置に応じて、ワイヤ不溶着部が形成されることとなる。
【0058】
ステップS110で、終了角度θ2まで円盤111が回転したと判断した場合、制御装置150は、ステップS111でエアシリンダ122を駆動して、押さえローラ121を図10に示す引き込み位置(離間位置ともいう)へと移動させる。これにより押さえローラ121は、外周に保持している縦ワイヤRWvを、横ワイヤRWhから離間させることができるため、それ以降は、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの溶着が生じないこととなる。
【0059】
図10に示すように、押さえローラ121が引き込み位置へと移動したときに、縦ワイヤRWvが、ワイヤ切断保持装置200のカッタ刃210、保持部230、係止部250と、カッタ刃220、保持部240、係止部260との間に進入する。そこで、制御装置150は、ステップS112で、駆動部125を駆動することによって、カッタ刃210,220を閉じて、保持部230,240の把持板部232,242により縦ワイヤRWvを挟持するとともに、刃先211,221により縦ワイヤRWvを切断する。かかる状態を図5、7、11(b)に示す。
【0060】
仮に、把持板部232,242がないとすると、刃先211,221により縦ワイヤRWvを切断する際に縦ワイヤRWvが、その長手方向にずれてしまい、適切にワイヤ切断を行えない恐れがある。これに対し本実施形態によれば、把持板部232,242の2平面で縦ワイヤRWvの切断端近傍を保持することで、縦ワイヤRWvのずれを抑えて、刃先211,221により確実にワイヤ切断を行うことができる。
【0061】
一方、縦ワイヤRWvにはZ軸方向上方に向かうように所定の張力が付与されているため、把持板部232,242のみでは、縦ワイヤRWvを確実に保持できない場合がある。これに対し、本実施の形態においては、把持板部232,242により保持された縦ワイヤRWvの上方において、鋸刃状部254,264を縦ワイヤRWvに当接させて挟持することで、縦ワイヤRWvがワイヤ切断保持装置200から脱け出さないよう係止することができる。縦ワイヤRWvにZ軸方向上方に向かうように張力が付与されている場合、角度付けされた鋸刃状部254,264が縦ワイヤRWvの表面に食い込むことで、係止を有効に行える。
以上により、図8に示す元の状態へと戻るとともに、縦ワイヤRWvの引き出しが中断される。
【0062】
ステップS113において、制御装置150は、現在のX軸方向位置において、ラバースクリーンを製造するのに必要な規定本数の縦ワイヤRWvを溶着したか否かを判断する。規定本数の縦ワイヤRWvを溶着していないと判断した場合、制御装置150は、ステップS114で、移動ユニット140のアクチュエータを駆動して、溶着ユニット120をX軸方向に、縦ワイヤRWvの1本(1ピッチ)分だけずらす。その後、制御装置150は、フローをステップS105へと戻して、上記のステップを続行する。
なお開始角度θ1から終了角度θ2までの(製造時)回転速度に対し、終了角度θ2から次の開始角度θ1までの(非製造時)回転速度を速めてもよい。
【0063】
一方、ステップS113で、必要な規定本数の縦ワイヤRWvを溶着したと判断した場合、制御装置150は、ステップS115でサーボモータ113を制御して、円盤111の回転を停止させ、ヒータ133の加熱を中断する。その後、作業者は、円盤111の歯114の近傍で各横ワイヤRWhを切断することにより、製造されたラバースクリーンを取り外すことができる。
【0064】
図12は、ラバースクリーン製造装置により製造されたラバースクリーンRSの部分平面図である。本実施形態のラバースクリーン製造装置100を使用することで、図12に示すように、ラバースクリーンRSにおいて、縦ワイヤRWvと横ワイヤRWhの交差する任意の位置に、ワイヤ溶着部WDとワイヤ不溶着部NDとを自動的に形成することができる。これにより生産性を高めコスト低減を図りつつ、目詰まり等を抑制できるラバースクリーンRSを製造することができる。
【0065】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0066】
例えば、第1水平冷風吹き出しノズルと第2斜め冷風吹き出しノズルの冷風吹き出し方向は任意に変更可能であり、また第1水平冷風吹き出しノズルと第2斜め冷風吹き出しノズルの一方を省略してもよい。さらに、横ワイヤを張設するために、円盤の代わりに円筒ドラムを用いてもよい。
また、保持部230、240と係止部250,260をそれぞれ別部品から構成しているが、保持部230と係止部250とを一部品とし、保持部240と係止部260とを一部品としてもよい。さらに、横ワイヤを張設するために、円盤の代わりに円筒ドラムを用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 ラバースクリーン製造装置
110 回転ユニット
120 溶着ユニット
120G 機械系装置群
121 押さえローラ
130G 空気系装置群
132 熱風吹き出しノズル
134 第1冷風吹き出しノズル
136 第2冷風吹き出しノズル
140 移動ユニット
150 制御装置
200 ワイヤ切断保持装置
210,220 カッタ刃
230,240 保持部
250,260 係止部
RWh 横ワイヤ
RWv 縦ワイヤ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12