(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083479
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】感染症対策支援装置および感染症対策支援方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/80 20180101AFI20220530BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20220530BHJP
【FI】
G16H50/80
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194810
(22)【出願日】2020-11-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和1年12月4日に株式会社日本経済新聞社が公開 (2)令和2年7月20日に丹藤匠、魚川大輔、立仙和巳が公開 (3)令和1年12月4日に株式会社帆風が公開 (4)令和2年10月1日に丹藤匠が公開 (5)令和2年11月1日に丹藤匠が公開 (6)令和2年10月1日に株式会社ヘルスビジネスマガジン社が公開 (7)令和2年11月1日に株式会社ヘルスビジネスマガジン社が公開 (8)令和2年9月28日に株式会社日立社会情報サービスが公開 (9)令和2年2月19日に株式会社日立製作所が公開 (10)令和1年12月6日に日本放送協会が公開
(71)【出願人】
【識別番号】596127554
【氏名又は名称】株式会社日立社会情報サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹藤 匠
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】感染症対策支援を向上させる。
【解決手段】感染症対策支援装置100は、現在の医療機関情報21から将来の感染症の流行を予測する予測部11と、予測の結果となる予報情報22、および、予報情報22が示す流行レベルおよび地域の少なくともいずれかに応じて予報情報22に関連付けられた対策情報23、の情報端末200での表示を処理する表示処理部12とを備える。また、情報端末200がスマートフォンまたはサイネージである場合、予報情報22が示す流行レベルが高いほど、予報情報22および対策情報23の情報端末200へのプッシュ通知の頻度を多くする通知部13をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在の医療機関情報から将来の感染症の流行を予測する予測部と、
前記予測の結果となる予報情報、および、前記予報情報が示す流行レベルおよび地域の少なくともいずれかに応じて前記予報情報に関連付けられた対策情報、の情報端末での表示を処理する表示処理部とを備える感染症対策支援装置。
【請求項2】
前記情報端末がスマートフォンまたはサイネージである場合、
前記予報情報が示す流行レベルが高いほど、前記予報情報および前記対策情報の前記情報端末へのプッシュ通知の頻度を多くする通知部をさらに備える請求項1に記載の感染症対策支援装置。
【請求項3】
感染症対策支援装置が、
現在の医療機関情報から将来の感染症の流行を予測するステップと、
前記予測の結果となる予報情報、および、前記予報情報が示す流行レベルおよび地域の少なくともいずれかに応じて前記予報情報に関連付けられた対策情報、の情報端末での表示を処理するステップとを実行する感染症対策支援方法。
【請求項4】
前記情報端末がスマートフォンまたはサイネージである場合、
前記感染症対策支援装置が、
前記予報情報が示す流行レベルが高いほど、前記予報情報および前記対策情報の前記情報端末へのプッシュ通知の頻度を多くするステップをさらに実行する請求項3に記載の感染症対策支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症対策支援装置および感染症対策支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症対策に関する技術開発が盛んである。例えば、特許文献1には、外気条件に基づいてインフルエンザの流行の予測を行って、その予測を表示することを特徴とするインフルエンザ予測表示装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、インフルエンザの流行は、外気条件以外にもさまざまな要因が存在する。このため、特許文献1の発明では、インフルエンザの流行の予測精度に限界があり、インフルエンザ対策支援に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて、感染症対策支援を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、現在の医療機関情報から将来の感染症の流行を予測する予測部と、前記予測の結果となる予報情報、および、前記予報情報が示す流行レベルおよび地域の少なくともいずれかに応じて前記予報情報に関連付けられた対策情報、の情報端末での表示を処理する表示処理部とを備える感染症対策支援装置である。
その他の発明については、後記する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、感染症対策支援を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における感染症対策支援装置の機能構成図である。
【
図2】本実施形態における支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、感染症としてインフルエンザを採り上げるが、他の種類の感染症(例:手足口病、伝染性紅斑(りんご病)、咽頭結膜熱(プール熱)、RSウィルス、麻疹(はしか)、風疹、(感染症ではないが)熱中症)にも本実施形態はあてはまる。
【0010】
[構成]
図1に示す本実施形態の感染症対策支援装置100は、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを含むコンピュータである。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータが含む記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供することができる。
【0011】
感染症対策支援装置100は、情報端末200に所定の情報を送信できるサーバである。情報端末200は、例えば、ユーザが保有するPC(Personal Computer)またはスマートフォン、所定のエリアに配置されているサイネージとすることができるが、これらに限定されない。感染症対策支援装置100は、予測部11と、表示処理部12と、通知部13を備えている。また、感染症対策支援装置100は、医療機関情報21と、予報情報22と、対策情報23を記憶している。
【0012】
予測部11は、将来におけるインフルエンザの流行を予測する。予測部11は、例えば、機械学習を用いた予測アルゴリズムとして実装できる。機械学習は、例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、サロゲートモデルを採り上げることができるが、これらに限定されない。予測部11は、医療機関情報21に基づいて、インフルエンザの現在(リアルタイム)の流行を解析できる。感染症対策支援装置100は、過去のインフルエンザの流行を示す履歴情報(図示略。例えば、タイムスタンプが付加された医療機関情報21として実現可。)を記憶している、または、外部から取得できる。予測部11は、現在から始まる所定時期の履歴情報(例:過去数年分)を参照し、現在の流行の解析結果に対し、将来(例:4週間先までの各日、各週)のインフルエンザの流行を予測できる。予測部11は、地域ごとに予測できる。予測部11は、予測結果を予報情報22として出力できる。感染症対策支援装置100は、予報情報22を情報端末200に送信できる。情報端末200が所定のコミュニケーションツールをインストールしたスマートフォンである場合、当該コミュニケーションツールによる予報情報22の閲覧や通信を実現できる。
【0013】
表示処理部12は、予報情報22の表示方式を処理する。例えば、表示処理部12は、地域ごとに流行レベルを色分け表示できる。流行レベルは、流行度合を示す指標である。表示処理部12は、情報端末200の種類に応じて予報情報22の表示方式を変えることができる。つまり、表示処理部12は、情報端末200での予報情報22の表示を処理する。
【0014】
通知部13は、情報端末200がスマートフォンまたはサイネージである場合、情報端末200に対し、予報情報22をプッシュ通知できる。通知部13は、流行レベルに応じてプッシュ通知の方式を変更できる。例えば、通知部13は、流行レベルが高いほどプッシュ通知の頻度を多くできる。通知部13がプッシュ通知する予報情報22は、表示処理部12が処理したものであってもよいし、なくてもよい。
【0015】
医療機関情報21は、複数の所定の医療機関が作成したインフルエンザに関する情報である。例えば、医療機関情報21は、ORCAサーベイランスによって得られる情報とすることができるが、これに限定されない。なお、ORCAサーベイランスで閲覧可能な医療機関情報21は、日医標準レセプトソフト(日レセ)への日々の入力(検査・投薬・傷病名)から症例の地域的な集積を探知でき、定点調査の安全なネットワークで自動収集可能な情報である。医療機関情報21は、日ごとかつ地域ごとの罹患者数を教示できる。
【0016】
予報情報22は、予測部11による予想結果である。
【0017】
対策情報23は、インフルエンザ対策を示す情報である。対策情報23は、例えば、生活習慣、食事、対策商品(例:アルコールハンドスプレー)のアドバイスであるが、これらに限定されない。感染症対策支援装置100は、予報情報22と対策情報23を関連付けることができる。例えば、予報情報22が示す流行レベルと、対策情報23が示す感染症対策を関連付けることができる。また、予報情報22が示す地域と、対策情報23が示す感染症対策を関連付けることができる。表示処理部12は、関連付けられた予報情報22および対策情報23の表示方式を送信先の情報端末200の種類に応じて変えることができる。つまり、表示処理部12は、情報端末200での予報情報22および対策情報23の表示を処理する。感染症対策支援装置100は、予報情報22を情報端末200に送信する際、送信された予報情報22に関連付けられた対策情報23(例:流行レベルに応じた対策法、地域に適した対策法)を併せて送信できる。
【0018】
[処理]
感染症対策支援装置100が実行する支援処理について、
図2等を参照して説明する。
【0019】
まず、感染症対策支援装置100は、現在の医療機関情報21を取得する(ステップS1)。次に、予測部11は、予測処理を実行する(ステップS2)。具体的には、予測部11は、取得した医療機関情報21を入力とし、将来におけるインフルエンザの流行の予測結果を予報情報22として出力する。
【0020】
次に、表示処理部12は、予報表示処理を実行する(ステップS3)。具体的には、表示処理部12は、情報端末200の種類に応じて予報情報22の表示方式を変える。感染症対策支援装置100は、表示方式を変えた予報情報22を情報端末200に送信する。
【0021】
次に、表示処理部12は、対策表示処理を実行する(ステップS4)。対策表示処理は、送信対象の予報情報22に対策情報23が関連付けられている場合に実行される。具体的には、表示処理部12は、情報端末200の種類に応じて予報情報22に関連付けられた対策情報23の表示方式を変える。感染症対策支援装置100は、表示方式を変えた予報情報22とともに、予報情報22に関連付けられ、表示方式を変えた対策情報23を情報端末200に送信する。なお、対策表示処理の有無は選択可能である。
【0022】
最後に、通知部13は、プッシュ通知処理を実行する(ステップS5)。プッシュ通知処理は、送信先の情報端末200がスマートフォンまたはサイネージである場合に実行される。具体的には、通知部13は、予報情報22が示す流行レベルに応じた頻度で、予報情報22、および、対策情報23を情報端末200に表示させる場合には予報情報22に関連付けられた対策情報23を、情報端末200に対し、プッシュ通知する。なお、プッシュ通知の頻度の変更は任意である。
【0023】
図2の支援処理によれば、将来の感染症予報に対して、情報端末200の種類に応じた対策法を情報端末200の閲覧者に提示できる。また、流行レベルに応じたプッシュ通知により、情報端末200の閲覧者に対する注意喚起をより強力にできる。
【0024】
[具体例1]
情報端末200がPCである場合、情報端末200は、感染症対策支援装置100から受信した予報情報22と対策情報23を、
図3に示すような画面で表示できる。
図3に示すように、情報端末200は、ユーザが指定した県(〇〇県)の地
図Mを表示できる。地
図Mには、市区町村単位の境界線が描かれている。また、地
図Mには、ユーザが任意の位置を指定したポインタ31(例えば、ユーザの居住地となる△△市の1点)が図示されている。
【0025】
情報端末200は、地
図M上に、予報情報22に従って、市区町村ごとに流行レベルを色分けして表示できる。地
図M上に色分け表示された流行レベルは、現在の医療機関情報21から導出される現在のインフルエンザの流行を提示できる。流行レベルの定義は、さまざまにすることができる。例えば、
図3に示すように、流行レベルを以下のレベル0~3に分けて定義できる。
【0026】
レベル3:昨年度の流行ピーク時期と同等以上の新規患者数の発生状態
レベル2:レベル3の約半数以上の新規患者数の発生状態
レベル1:レベル3の半数未満の新規患者数の発生状態
レベル0:新規患者数の発生がない状態
【0027】
図3に示すように、情報端末200は、「インフルエンザ流行レベル」ダイアログ32を表示できる。「インフルエンザ流行レベル」ダイアログ32には、ポインタ31で示した位置を含む△△市の将来のインフルエンザの流行が示されている。具体的には、現在までの流行状況と、4週間先までの流行予報が流行レベルとして週単位で示されている。例えば、流行予報が示す将来の流行レベルは、予測部11の演算結果を前述の定義に従ってレベル分けすることで導出できる。
【0028】
感染症対策支援装置100が対策表示処理(
図2ステップS4)を実行していた場合、
図3に示すように、情報端末200は、「インフォメーション」欄33に対策情報23を表示できる。よって、情報端末200のユーザは、将来の感染リスクの増大に備えてどのような対策を採るべきかを事前に判断できる。このため、感染症対策支援装置100は、情報端末200を有する市民に行動変容を促すことができ、感染リスクを低減させることができる。つまり、予報情報22の結果を変えることができる。上記のようにして、感染症対策支援装置100は、感染症対策支援を向上させることができる。
【0029】
[具体例2]
情報端末200がスマートフォンである場合、情報端末200は、感染症対策支援装置100から受信した予報情報22と対策情報23を、
図4に示すような画面で表示できる。
図4の画面は、情報端末200にインストールされているコミュニケーションツールを起動して表示された画面である。
図4に示すように、情報端末200は、現在(今週)および来週([週間予報]と表記)のインフルエンザの流行を示す情報41を表示できる。また、情報端末200は、将来(2~4週間先)のインフルエンザの流行を示す情報にアクセスするためのリンクの情報42を表示できる。リンク先の情報の表示態様は、例えば、
図3のものに従うとしてもよい。流行レベルの定義は、例えば、具体例1と同様としてもよい。
【0030】
感染症対策支援装置100が対策表示処理(
図2ステップS4)を実行していた場合、
図4に示すように、情報端末200は、情報43として対策情報23を表示できる。よって、情報端末200のユーザは、将来の感染リスクの増大に備えてどのような対策を採るべきかを事前に判断できる。このため、感染症対策支援装置100は、情報端末200を有する市民に行動変容を促すことができ、感染リスクを低減させることができる。つまり、予報情報22の結果を変えることができる。上記のようにして、感染症対策支援装置100は、感染症対策支援を向上させることができる。
【0031】
感染症対策支援装置100がプッシュ通知処理(
図2ステップS5)を実行していた場合、
図4に示す情報41~43を、情報端末200にプッシュ通知できる。このプッシュ通知は、例えば、情報端末200の位置における流行レベルに応じた頻度で実行される。つまり、流行レベルが高いほどプッシュ通知を多くできる。対象の流行レベルは、現在の流行レベルでもよいし、将来の流行レベルでもよい。よって、高い感染リスクが見込まれるときは、予報情報22および対策情報23の訴求力を高めることができ、情報端末200のユーザへの注意喚起をより強力にできる。
【0032】
[具体例3]
情報端末200がサイネージである場合、情報端末200は、感染症対策支援装置100から受信した予報情報22と対策情報23を、
図5に示すような複数種類の画面51~53で切替表示できる。
図5に示すように、情報端末200は、画面51で、現在(今週)および将来(来週および2週間後)のインフルエンザの流行を示す情報を表示できる。
【0033】
感染症対策支援装置100が対策表示処理(
図2ステップS4)を実行していた場合、
図5に示すように、情報端末200は、画面52,53で対策情報23を表示できる。画面52に示す対策情報23は、インフルエンザ対策の生活習慣に関するアドバイスである。画面53に示す対策情報23は、インフルエンザ対策の商品に関するアドバイスである。よって、情報端末200の表示を閲覧した市民は、将来の感染リスクの増大に備えてどのような対策を採るべきかを事前に判断できる。このため、感染症対策支援装置100は、市民に行動変容を促すことができ、感染リスクを低減させることができる。つまり、予報情報22の結果を変えることができる。上記のようにして、感染症対策支援装置100は、感染症対策支援を向上させることができる。
【0034】
感染症対策支援装置100がプッシュ通知処理(
図2ステップS5)を実行していた場合、
図5に示す画面51~53に示す情報を、情報端末200にプッシュ通知できる。このプッシュ通知は、例えば、情報端末200の位置における流行レベルに応じた頻度で実行される。つまり、流行レベルが高いほどプッシュ通知を多くできる。対象の流行レベルは、現在の流行レベルでもよいし、将来の流行レベルでもよい。よって、高い感染リスクが見込まれるときは、予報情報22および対策情報23の訴求力を高めることができ、情報端末200の表示を閲覧した市民への注意喚起をより強力にできる。
【0035】
[その他]
(a):本実施形態の感染症対策支援によって行動変容をした市民が市民全体の何%以上であれば、例えば1か月後に感染が収束するかを、予測部11がシミュレートするようにしてもよい。
(b):市民の行動変容によって例えば1か月後の市民全体の罹患率を1%以内に抑えることができた場合には各市民にインセンティブを付与する旨を示した対策情報23を用意してもよい。予測部11は、インセンティブの規模により、感染の収束タイミングがどのように推移するかをシミュレートするようにしてもよい。
【0036】
(c):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(d):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(e):その他、ハードウェア、ソフトウェア、フローチャートなどについて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
100 感染症対策支援装置
200 情報端末
11 予測部
12 表示処理部
13 通知部
21 医療機関情報
22 予報情報
23 対策情報