(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083490
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/28 20060101AFI20220530BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20220530BHJP
H04R 7/26 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
H04R1/28 310Z
H04R17/00
H04R7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194826
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】▲イェ▼ 載憲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
【テーマコード(参考)】
5D004
5D016
5D018
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004CD09
5D004DD01
5D016AA17
5D018AD24
(57)【要約】
【課題】 所望の周波数特性を容易に実現可能な音響装置を得ること。
【解決手段】 入力された音声信号に応じて振動する圧電素子と、前記圧電素子の振動に応じて振動する振動部材と、前記圧電素子に接続された第1磁石と、前記第1磁石に対向するように配された第2磁石と、を備えることを特徴とする音響装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音声信号に応じて振動する圧電素子と、
前記圧電素子の振動に応じて振動する振動部材と、
前記圧電素子に接続された第1磁石と、
前記第1磁石に対向するように配された第2磁石と、
を備えることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記第1磁石は、前記第2磁石と離隔して配されていることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記第1磁石と前記第2磁石は、同じ磁極が対向するように配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記第1磁石と前記第2磁石は、異なる磁極が対向するように配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の音響装置。
【請求項5】
前記第1磁石は、前記圧電素子と前記第2磁石との間に配されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項6】
前記圧電素子は、前記第1磁石と前記第2磁石との間に配されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項7】
前記第1磁石は、前記圧電素子の内部に配されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項8】
底壁と、前記底壁の縁部の周囲に形成された側壁とを備え、前記側壁によって形成された開口部が前記振動部材によって閉止される筐体を更に備え、
前記圧電素子は、前記振動部材における前記筐体内側の面に弾性体を介して接続されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項9】
前記第2磁石は、前記底壁における前記筐体の内側の面に配されることを特徴とする請求項8に記載の音響装置。
【請求項10】
前記第2磁石は、前記底壁における前記筐体の外側の面に配されることを特徴とする請求項8に記載の音響装置。
【請求項11】
前記第1磁石と前記振動部材との間に配された第3磁石を更に備え、
前記第1磁石と前記第3磁石とは、異なる磁極が対向するように配されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項12】
前記圧電素子は、前記第1磁石と前記第3磁石との吸引力によって、前記振動部材に着脱自在に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の音響装置。
【請求項13】
複数の前記第1磁石と、
複数の前記第1磁石にそれぞれ対向して配された複数の前記第3磁石とを備える、
ことを特徴とする請求項11または12に記載の音響装置。
【請求項14】
複数の前記第1磁石のうちの一の第1磁石は、前記第2磁石に対向し、かつ、前記第3磁石に対向せず、
複数の前記第1磁石のうちの前記一の第1磁石以外の他の第1磁石は、前記第2磁石に対向せず、かつ、前記第3磁石に対向することを特徴とする請求項13に記載の音響装置。
【請求項15】
前記一の第1磁石は2つの前記他の第1磁石の間に配されることを特徴とする請求項14に記載の音響装置。
【請求項16】
前記振動部材は、ガラス、樹脂、硬質紙、圧縮紙のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の音響装置 。
【請求項17】
前記振動部材は、画像が表示される表示パネルであって、
前記表示パネルは、有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode;OLED)または液晶ディスプレイを含むことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響装置は、入力された電気信号を物理的な振動に変換する振動系を有している。強誘電性セラミックスなどからなる圧電スピーカは、軽量かつ低消費電力の利点を有することから、様々な用途で用いられている。
【0003】
一方において、圧電スピーカは、低域周波数における音圧が十分ではないという技術的課題を有している。一般に、圧電スピーカに用いられる強誘電性セラミックスは、高い剛性を有し、大きいばね定数を有している。このため、振動系の最低共振周波数が高くなり、低周波数帯域の音圧が不十分となり易い。また、圧電素子の振動系の内部抵抗は小さいことから、振動系の共振尖鋭度が大きくなり、周波数特性にピークおよびディップが生じ易い。特許文献1に記載された技術は、圧電スピーカのプレートの材質及び質量を調整することによって、所望の周波数特性を実現することを試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、圧電スピーカを構成する各部材の材質、質量などの調整を要するものである。このため、所望の周波数特性が得られるまで圧電スピーカの設計変更を繰り返さなければならず、所望の周波数特性を実現するのは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、所望の周波数特性を容易に実現可能な音響装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、入力された音声信号に応じて振動する圧電素子と、前記圧電素子の振動に応じて振動する振動部材と、前記圧電素子に接続された第1磁石と、前記第1磁石に対向するように配された第2磁石と、を備えることを特徴とする音響装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、磁力を用いて圧電素子の振動を制御することにより、所望の周波数特性を容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る音響装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る音響装置の具体的構成の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る音響装置の具体的構成の断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る圧電素子の構造をより詳細に示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る圧電素子に電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る圧電素子に電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
【
図7】比較例による音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る音響装置の周波数特性を説明するための図である。
【
図9】第2実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図10】第3実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図11】第4実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図12】第5実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図13】第6実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図14】第7実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図15】第8実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図16】第9実施形態に係る音響装置の具体的構成の平面図である。
【
図17】第9実施形態に係る音響装置の具体的構成の断面図である。
【
図18】第10実施形態に係る音響装置の構造を示す概略断面図である。
【
図19】第11実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面を通じて共通する機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化することがある。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る音響装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1を参照しつつ、音響装置1に流れる信号の流れについて説明する。音響装置1は、単独でスピーカとして用いられてもよく、広告用看板、ポスター、案内板等に内蔵されるものであってもよい。本実施形態の音響装置1の用途は、特に限定されるものではない。
【0012】
音響装置1は、圧電素子11を有する。圧電素子11は、入力された音声信号に基づく電圧が印加されると、逆圧電効果により変位する素子である。圧電素子11は、例えば、バイモルフ(Bimorph)、ユニモルフ(Unimorph)、マルチモルフ(Multimorph)等の電圧に応じて屈曲変位する素子であり得る。入力される音声信号は通常は交流電圧であるため、圧電素子11は、入力された音声信号に応じて振動する振動素子として機能する。
【0013】
ホストシステム2は、音声信号を供給することにより音響装置1を制御する装置又は複数の装置を含むシステムである。しかしながら、ホストシステム2は、音響装置1の用途に応じて、画像信号(例えばRGBデータ)、タイミング信号(垂直同期信号、水平同期信号、データイネーブル信号等)等の他の信号を更に供給する場合もある。ホストシステム2は、例えば、音源再生装置、構内放送装置、ラジオ放送再生システム、テレビシステム、セットトップボックス、ナビゲーションシステム、光ディスクプレーヤー、コンピュータ、ホームシアターシステム、ビデオ電話システム等であり得る。なお、音響装置1とホストシステム2は一体の装置であってもよく、別の装置であってもよい。
【0014】
ホストシステム2は、入力部201、D/A(Digital/Analog)変換器211、PWM(Pulse Width Modulation)回路212、トランジスタ221,222、コイル223、キャパシタ224を備える。入力部201は、圧電素子11を制御するためのデジタル信号を入力する。D/A変換器211は、入力部201から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。PWM回路212は、D/A変換器211から入力されたアナログ信号をパルス幅変調し、パルス信号を出力する。PNP型のトランジスタ221およびNPN型のトランジスタ222はプッシュプル回路を形成する。すなわち、トランジスタ221、222のコレクタ端子は互いに接続され、トランジスタ221、222のベース端子は互いに接続されている。トランジスタ221のエミッタ端子には正の電圧+Vddが印加され、トランジスタ222のエミッタ端子には負の電圧-Vddが印加される。トランジスタ221、222のベース端子には、PWM回路212からパルス信号が印加され、トランジスタ221、222はパルス信号に応じて相補的にオンまたはオフに駆動される。例えば、正のパルス信号がトランジスタ221、222のベース端子に印加されると、トランジスタ221はオンとなり、トランジスタ222はオフとなる。このため、トランジスタ221、222のコレクタ端子の電圧は電圧+Vddとなる。一方、負のパルス信号がトランジスタ221、222のベース端子に印加されると、トランジスタ221はオフとなり、トランジスタ222はオンとなる。このため、トランジスタ221、222のコレクタ端子の電圧は電圧-Vddとなる。また、パルス信号の電位が接地電位になると、トランジスタ221、222はともにオフとなる。コイル223、キャパシタ224はローパスフィルタとして機能し、トランジスタ221、222のコレクタ端子におけるパルス信号を平滑化し、駆動信号として圧電素子11に出力する。
【0015】
図2は、第1実施形態に係る音響装置1の具体的構成の平面図である。
図3は、第1実施形態に係る音響装置1の具体的構成の断面図である。
図3は、
図2における3-3’線における断面図を示している。
図2及び
図3を相互に参照しつつ、第1実施形態に係る音響装置1の具体的構成を説明する。
【0016】
図2、
図3に示されているように、音響装置1は、圧電素子11、振動部材12、弾性部材13、筐体14、第1磁石15及び第2磁石16を有する。
【0017】
筐体14は、4つの側壁および1つの底壁を備える箱状をなしている。筐体14は、例えば、ガラス、樹脂、金属、木材、硬質紙等の材料から構成され得るが、筐体14の材料は特定の材料に限定されない。筐体14の側壁の内側には、矩形の開口部が形成されている。振動部材12は矩形の薄板状をなし、開口部を塞ぐように筐体14に取り付けられている。振動部材12と筐体14との間は、例えば、不図示の圧着樹脂材料、接着剤、接着テープ等により、隙間なく接続され得る。振動部材12は、ガラス、樹脂、硬質紙、圧縮紙等のように振動し易い部材であることが望ましい。筐体14の容積および形状を適宜変更することにより、音響装置1の周波数特性を変更することができる。例えば、筐体14の容積を大きくすることにより、低域周波数における音圧を向上させることが可能となる。
【0018】
圧電素子11は、
図2の平面視において、例えば、長手方向(図中のy方向)及び短手方向(図中のx方向)を有する矩形をなしている。これにより、長手方向に沿う断面(3-3’線)から見て屈曲するような変形が生じる。圧電素子11は振動部材12の中央位置に配され、圧電素子11の振動は振動部材12の中央位置から周囲に伝播される。なお、圧電素子11の形状は限定されず、円形、楕円形、正多角形などであっても良い。また、圧電素子11の数も1つに限定されず、複数の圧電素子11が設けられても良い。
【0019】
弾性部材13は、柱状をなし、圧電素子11と振動部材12との間に配されている。平面視において、弾性部材13は圧電素子11の中央に配されている。弾性部材13の数および位置は必ずしも、
図2、
図3の例に限定されず、例えば2つの弾性部材13が平面視において圧電素子11の両端部近傍に配されてもよい。弾性部材13は、弾性を有する材料により構成され、典型的には、圧電素子11及び振動部材12よりも小さい弾性率を有するゴム等の弾性体により構成される。弾性部材13は最低共振周波数を下げる効果を奏する。このため、圧電素子11の高周波振動に比べて低周波振動が振動部材12に伝達され易くなり、振動部材12における低周波振動の音圧を向上させることができる。圧電素子11と弾性部材13とは接着部材121により接続され、振動部材12と弾性部材13とは接着部材131により接続される。接着部材121及び131は、圧着樹脂材料、接着剤、接着テープ等により構成され得る。
【0020】
第1磁石15、第2磁石16は、薄板状をなすとともに、例えば、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等から構成され得る。第1磁石15は、圧電素子11の面のうち、振動部材12の側の面とは逆の面に配される。また、第2磁石16は、第1磁石15と対向するように、筐体14の底壁の内側の面に配される。
図2の平面視において、第1磁石15、第2磁石16、弾性部材13は重なるように配されることが望ましい。すなわち、第1磁石15、第2磁石16、弾性部材13はz方向において互いに対向するように配される。このような構成により、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力が、弾性部材13を介して振動部材12に効率よく伝達されるようになる。圧電素子11と第1磁石15との間は接着部材151により接続され、筐体14と第2磁石16との間は接着部材161により接続される。接着部材151及び161は、接着部材121及び131と同様に構成される。なお、第1磁石15、第2磁石16は、同じ磁極(N極とN極、またはS極とS極)が対向するように配されても良く、異なる磁極(N極とS極)が対向するように配されてもよい。また、第1磁石15と第2磁石16とは距離dをもって離隔して配されている。距離dは0より大きい任意の値であり得る。また、第1磁石15、第2磁石16のそれぞれの磁束密度も任意の値であり得る。第1磁石15、第2磁石16の磁束密度、距離dの値に応じて、振動部材12に及ぼす力が適宜設定され得る。
【0021】
図4は、第1実施形態に係る圧電素子11の構造をより詳細に示す断面図である。
図4は、
図2における3-3’線における断面図を示している。また、
図4は、2層の圧電層が積層されたバイモルフの圧電素子11を例として、圧電素子11に含まれる各電極の接続を回路図により模式的に示している。
【0022】
圧電素子11は、電極111、113、115及び圧電層112、114を含む圧電部116を有する。最も振動部材12に近い側に設けられている電極111(第1電極)は、弾性部材13に接続されている。電極111及び電極113(第2電極)は、圧電層112(第1圧電層)を厚さ方向に挟むように配されている。電極113及び電極115(第3電極)は、圧電層114(第2圧電層)を厚さ方向に挟むように配されている。圧電層112、114の内部に図示されている矢印は、圧電層112、114の分極方向を示している。すなわち、圧電層112及び圧電層114の分極方向は同一である。なお、電極111、113、115には、ハンダ付けなどにより各電極に電圧を印加するための配線が接続され得るが、
図4においては配線の図示は省略されている。
【0023】
圧電素子11に印加される電圧は、音声信号の周波数に応じた交流電圧と考えることができる。
図4は、この交流電圧を交流電源Vとして示している。交流電源Vの一方の端子は、電極111、115に接続されており、他方の端子は、電極113に接続される。言い換えると、電極111と電極115には同相の電圧が印加され、電極111と電極113には逆相の電圧が印加され、電極113と電極115にも逆相の電圧が印加される。これにより、圧電層112と圧電層114には逆向きの電圧が印加される。
【0024】
圧電層112、114の材料は、特に限定されるものではないが、変位量を大きくする、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電性が良好な強誘電性セラミックス等であることが望ましい。また、
図4の構成では不図示であるが、圧電素子11の外周は他の部材とのショートを避けるために樹脂等の絶縁体で覆われていてもよい。
【0025】
図5及び
図6は、第1実施形態に係る圧電素子11に電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
図4に示されているように圧電層112、114の分極方向は同じ向きであり、圧電層112、114の印加電圧は逆向きである。これにより、圧電層112と圧電層114との伸縮方向は互いに逆になる。
【0026】
図5に示されているように、圧電層112が横方向(y方向または-y方向)に収縮する際、圧電層114は、横方向に伸長する。これにより、圧電素子11の端部は下方向(z方向)に変形し、圧電素子11の中央部は上方向(-z方向)に変形する。印加電圧が逆極性になると、
図6に示されているように、圧電層112は横方向に伸張し、圧電層114は横方向に収縮する。これにより、圧電素子11の端部は上方向に変形し、圧電素子11の中央部は下方向に変形する。
【0027】
音声信号に基づく交流電圧が圧電素子11に印加されると、圧電素子11は
図5の状態と
図6の状態とを交互に繰り返す。このようにして、圧電素子11の振動が振動部材12に伝わり、振動部材12が振動する。したがって、振動部材12からは音声信号に基づく音が発せられる。
【0028】
本実施形態において、圧電素子11および振動部材12を含む振動系は、第1磁石15と第2磁石16との磁力によって付勢されている。磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。振動系の質量が実質的に増加することにより、振動系の最低共振周波数が低くなり、低域周波数の音圧を向上させることができる。また、振動系の機械抵抗が増加することによって、振動系の共振尖鋭度は小さくなり、周波数特性のピークおよびディップを抑えることができる。
【0029】
距離dあるいは第2磁石16の材質を調整することで、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力を調整することができる。特に、距離dの調整は、振動系を構成する各部材の材質または質量の変更を要せず、振動系の周波数特性を容易に調整することができる。このように、本実施形態によれば、磁力を用いて圧電素子11の振動を制御することにより、所望の周波数特性を容易に実現可能な音響装置1が得られる。特に、圧電素子11を含む振動系の材質または質量を変更することなく、従来より不十分とされていた低域の音圧を向上させることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態において、筐体14に設けられた第2磁石16は、圧電素子11に設けられた第1磁石15と接触していない。このため、圧電素子11の振動が筐体14に伝達し難くなり、筐体14の不要な振動を抑え、振動部材12から発せられる音圧を向上させることが可能となる。ここで、比較例として、
図7に示された音響装置を参照しながら説明する。
図7において、第1磁石15、第2磁石16に代えて、弾性部材17が筐体14と圧電素子11との間に設けられている。弾性部材17は、ゴムなどの弾性を有する材料により構成され得る。圧電素子11と弾性部材17とは接着部材171により接続され、筐体14の底壁と弾性部材17とは接着部材172により接続される。圧電素子11は弾性部材17によって振動部材12の側に向かう応力を受け、比較例による構成においても弾性部材17によって振動系の周波数特性を調整し得る。
【0031】
しかしながら、
図7の比較例において、圧電素子11の振動は、弾性部材17を介して筐体14の底壁にも伝達される。その際、筐体14の底壁は、振動部材12の振動と逆位相の振動をする。筐体14の底壁から発する音は、振動部材12へと回りこみ、振動部材12から発する音を打ち消してしまう。このため、特に低域周波数の音圧が不十分となり得る。一方、本実施形態によれば、圧電素子11と筐体14の底壁とが接触していないため、比較例における課題を回避することができる。すなわち、本実施形態によれば、音圧の低下を防ぎつつ、所望の周波数特性を得ることが可能となる。
【0032】
図8は、本実施形態に係る音響装置1の周波数特性を説明するための図である。
図8において、横軸は圧電素子11に印加された信号の周波数を示し、縦軸は音響装置1から発せられた音圧を示している。横軸、縦軸は対数にて表記されている。また、実線は本実施形態における音響装置1の周波数特性を示し、破線は磁石が設けられていない従来の音響装置の周波数特性を示している。なお、従来の音響装置の振動系には磁石が設けられていないが、振動系の質量は本実施形態における振動系の質量と同等であるとする。
【0033】
図8からも明らかなように、本実施形態によれば、低域周波数、特に200Hzから500Hz付近の音圧が従来技術と比較して顕著に向上している。すなわち、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力によって、振動系の低域周波数における音圧が特に向上することが確認できる。また、第1実施形態の方が200Hzから1500Hz付近の低音域から中音域において安定した音圧が得られていることがわかる。さらに、本実施形態において、中音域から高音域の音圧のピークおよびディップが低減され、周波数特性の平坦性が向上していることが確認できる。
【0034】
以上述べたように、本実施形態によれば、磁力を用いて圧電素子11の振動を制御することにより、所望の周波数特性を容易に実現することが可能となる。
【0035】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態に係る音響装置1を
図9を参照しながら説明する。本実施形態は、第1磁石15が圧電素子11の下面に配されている点において第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0036】
図9は、第2実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図2の3-3’線の断面図に対応している。第1磁石15は、圧電素子11の下面であって、圧電素子11と弾性部材13との間に配されている。弾性部材13と第1磁石15とは接着部材131によって接続され、圧電素子11と第1磁石15とは接着部材151により接続される。第1磁石15と第2磁石16とは距離dを隔てて配されている。
【0037】
本実施形態においても、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。従って、第1磁石15、第2磁石16の磁束密度、距離dの値に応じて、振動部材12に及ぼす力が適宜設定され得る。よって、本実施形態により第1実施形態と同様の効果を有する音響装置1が提供される。また、本実施形態における第1磁石15の配置は、第1実施形態における第1磁石15の配置と異なる。すなわち、本実施形態における距離dは第1実施形態における距離dよりも長くなる。したがって、所望の周波数特性を得るために、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力を弱める必要がある場合には、本実施形態における構成は有効となり得る。
【0038】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る音響装置1を
図10を参照しながら説明する。本実施形態は、第2磁石16が筐体14の外面に配されている点において、第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0039】
図10は、第3実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図2の3-3’線の断面図に対応している。第2磁石16は、筐体14の底壁の外面に配され、第2磁石16とは、接着部材161により筐体14に接続される。第1磁石15と第2磁石16とは距離dを隔てて対向して配されている。
【0040】
本実施形態においても、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。従って、第1磁石15、第2磁石16の磁束密度、距離dの値に応じて、振動部材12に及ぼす力が適宜設定され得る。よって、本実施形態により第1実施形態と同様の効果を有する音響装置1が提供される。また、本実施形態における第2磁石16の配置は、第1実施形態における第2磁石16の配置と異なる。すなわち、本実施形態における距離dは第1実施形態における距離dよりも長くなる。したがって、所望の周波数特性を得るために、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力を弱める必要がある場合には、本実施形態における構成は有効となり得る。
【0041】
また、本実施形態においては、筐体14の外面に配されている第2磁石16を変更することによって、音響装置1の周波数特性を調整することができる。言い換えると、音響装置1の内部の部材を変更することなく、音響装置1の周波数特性を調整することができる。したがって、本実施形態によれば、磁力を用いて圧電素子11の振動を制御することにより、周波数特性をより容易に調整することが可能となる。
【0042】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る音響装置1を
図11を参照しながら説明する。本実施形態は、第3磁石18をさらに備える点において、第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0043】
図11は、第4実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図2の3-3’線の断面図に対応している。音響装置1は、第3磁石18を更に有する。第3磁石18は、第1磁石15、第2磁石16と同様の形状および大きさを有し得る。第3磁石18は、圧電素子11の面のうち、第1磁石15が配されている面と逆の面に配されている。第1磁石15と第3磁石18とは、互いに異なる磁極同士が対向するように配され、第1磁石15と第3磁石18との間に吸引力が働いている。これにより、第1磁石15における磁束密度が向上し、第1磁石15と第2磁石16との間の付勢力を高めることができる。第3磁石18は接着部材131を介して弾性部材13に接続されている。また、
図2の平面視において、第1磁石15、第2磁石16、第3磁石18、弾性部材13は重なるように配されることが望ましい。すなわち、第1磁石15、第2磁石16、第3磁石18、弾性部材13はz方向において互いに対向するように配されている。このような構成により、第1磁石15、第2磁石16、第3磁石18の間に働く磁力が、弾性部材13を介して振動部材12に効率よく伝達されるようになる。
【0044】
本実施形態において、第1磁石15、第2磁石16、第3磁石18の間に働く磁力は振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。従って、第1磁石15、第2磁石16、第3磁石18の磁束密度、距離dの値に応じて、振動部材12に及ぼす力が適宜設定され得る。上述したように、第1磁石15の磁束密度は第3磁石18によって強められ得る。また、本実施形態における距離dは、第1実施形態と比較して、第3磁石18の厚さ(z方向の長さ)の分だけ短くなる。したがって、所望の周波数特性を得るために、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力を強める必要がある場合には、本実施形態における構成は有効となり得る。さらに、圧電素子11は第1磁石15と第3磁石18との吸引力によって挟持されてもよい。これにより、第1磁石15、第3磁石18、圧電素子11を互いに着脱自在に構成することが可能となる。すなわち、圧電素子11は分離部Aにおいて振動部材12に対して着脱自在に接続され、圧電素子11の取り付けおよび交換を容易に行うことが可能となる。
【0045】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る音響装置1を
図12を参照しながら説明する。本実施形態においては、第1磁石15が圧電素子11の下面に配されている点において、第4実施形態と相違する。以下、第4実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0046】
図12は、第5実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図2の3-3’線の断面図に対応している。本実施形態における音響装置1は、第1磁石15が圧電素子11の下面、すなわち、振動部材12の側の面に配されている点を除いて、第4実施形態と同様に構成されている。第1磁石15は接着部材151を介して圧電素子11の下面に接続され、圧電素子11は第1磁石15と第2磁石16との間に配される。第3磁石18は接着部材121を介して振動部材12に接続されている。第1磁石15と第3磁石18との間には弾性部材13が配されている。第1磁石15、第3磁石18は、異なる磁極が対向するように配されている。これにより、第1磁石15と第3磁石18との間に働く吸引力によって、第1磁石15と第3磁石18とが弾性部材13を挟んで着脱自在に接続され得る。本実施形態によれば、圧電素子11は分離部Aにおいて振動部材12に着脱自在に接続され、圧電素子11の取り付けおよび交換を容易に行うことが可能となる。
【0047】
本実施形態において、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力および第2磁石16と第3磁石18との間に働く磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し、第4実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0048】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る音響装置1を
図13を参照しながら説明する。本実施形態は、第1磁石15が圧電素子11の内部に配されている点において、第5実施形態と異なる。以下、第5実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0049】
図13は、第6実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図2の3-3’線の断面図に対応している。圧電素子11は、圧電部116、保護膜117A、117B、絶縁基板118、接着層119を有する。絶縁基板118は、紙フェノール、ガラスエポキシ等の絶縁材料により構成される。絶縁基板118の下面には圧電部116が形成され、圧電部116は保護膜117Aによって覆われている。保護膜117Aは、耐湿性に優れた絶縁性無機材料あるいは絶縁性樹脂材料等により構成され得る。絶縁基板118の上面には、第1磁石15が配され、第1磁石15の周囲には接着層119が配される。保護膜117Bは第1磁石15、接着層119の上に形成される。すなわち、第1磁石15、接着層119は絶縁基板118と保護膜117Bとの間に配される。保護膜117Bは保護膜117Aと同様に耐湿性に優れた絶縁性無機材料あるいは絶縁性樹脂材料等により構成され得る。
【0050】
保護膜117Aの下面には接着部材131を介して弾性部材13が接続される。弾性部材13の下面には第3磁石18が配され、第3磁石18は接着部材121を介して振動部材12に接続される。第1磁石15と第3磁石18とは、互いに異なる磁極同士が対向するように配され、第1磁石15と第3磁石18との間には吸引力が働いている。これにより、圧電素子11は振動部材12に対して分離部Aにおいて着脱自在に接続され得る。
【0051】
第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力および第2磁石16と第3磁石18との間に働く磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。このように、本実施形態においても、第5実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
[第7実施形態]
第7実施形態に係る音響装置1を
図14を参照しながら説明する。本実施形態は、第1磁石15が圧電素子11の上面に配されている点において、第6実施形態と異なる。以下、第6実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0053】
図14は、第7実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図2の3-3’線の断面図に対応している。圧電素子11は、圧電部116A、116B、保護膜117A、117B、絶縁基板118を有する。絶縁基板118の下面には圧電部116Aが形成され、絶縁基板118の上面には圧電部116Bが形成されている。圧電部116A、116Bは圧電部116と同様に構成される。圧電部116Aは保護膜117Aによって覆われており、圧電部116Bは保護膜117Bによって覆われている。
【0054】
保護膜117Aの下面には接着部材131を介して弾性部材13が接続され、弾性部材13の下面には第3磁石18が配されている。保護膜117Bの上面には接着部材151を介して第1磁石15が接続される。第3磁石18の下面は接着部材121を介して振動部材12に接続されている。
【0055】
第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力および第2磁石16と第3磁石18との間に働く磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。また、第1磁石15と第3磁石18との間に働く吸引力によって、圧電素子11は分離部Aにおいて振動部材12に対して着脱自在に接続される。このように、本実施形態においても、第6実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0056】
[第8実施形態]
第8実施形態に係る音響装置1を
図15を参照しながら説明する。本実施形態は、第1磁石15が圧電素子11の内部に配されている点において、第7実施形態と異なっている。以下、第7実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0057】
図15は、第8実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図2の3-3’線の断面図に対応している。本実施形態の圧電素子11は、所定の間隔で配された一対の絶縁基板118A、118Bを備える。絶縁基板118A、118Bの間には第1磁石15と、第1磁石15の周囲の接着層119が配されている。絶縁基板118Aの下面には圧電部116Aが形成され、圧電部116Aは保護膜117Aによって覆われている。絶縁基板118Bの上面には圧電部116Bが形成され、圧電部116Bは保護膜117Bによって覆われている。
【0058】
保護膜117Aの下面には接着部材131を介して弾性部材13が接続され、弾性部材13の下面には第3磁石18が配されている。第3磁石18は接着部材121を介して振動部材12に接続されている。
【0059】
本実施形態においても、第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力および第2磁石16と第3磁石18との間に働く磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。また、第1磁石15と第3磁石18との間に働く磁力によって、圧電素子11は分離部Aにおいて振動部材12に対して着脱自在に接続される。このように、本実施形態においても、第7実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0060】
[第9実施形態]
第9実施形態に係る音響装置1を
図16、
図17を参照しながら説明する。本実施形態は、圧電素子11の複数の箇所に磁石が配されている点において、第1実施形態の構成と異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0061】
図16は、第9実施形態に係る音響装置1の具体的構成の平面図である。
図17は、第9実施形態に係る音響装置1の具体的構成の断面図である。
図17は、
図16における17-17’線における断面図を示している。
図16及び
図17を相互に参照しつつ、第9実施形態に係る音響装置1の具体的構成を説明する。
【0062】
図16、
図17に示されているように、圧電素子11のy方向の中央の上面には第1磁石15が接着部材151を介して接続されている。第2磁石16は、第1磁石15に対向するように、接着部材161を介して筐体14に接続されている。圧電素子11の中央の下面には、磁石、弾性部材が配されておらず、圧電素子11の中央は振動部材12に非接触である。
【0063】
圧電素子11の一方の端部の上面には第1磁石15aが接着部材151aを介して接続されている。一方、第1磁石15aの上方には磁石は設けられていない。代わりに、第3磁石18aが弾性部材13a、接着部材131aを介して圧電素子11の一方の端部の下面に配されている。また、第3磁石18aは接着部材121aを介して振動部材12に接続されている。第1磁石15a、第3磁石18aは異なる磁極が対向するように配されている。第1磁石15aと第3磁石18aとの間に働く吸引力によって、第1磁石15aと第3磁石18aとが弾性部材13aを挟んで着脱自在に接続され得る。同様に、圧電素子11の他方の端部において、第1磁石15b、接着部材151b、接着部材131b、弾性部材13b、第3磁石18b、接着部材121bが設けられる。第1磁石15bと第3磁石18bとの間に働く吸引力によって、第1磁石15bと第3磁石18bとが弾性部材13bを挟んで着脱自在に接続され得る。本実施形態においても、圧電素子11は振動部材12に対して分離部Aにおいて着脱自在接続され、圧電素子11の取り付けおよび交換を容易に行うことが可能となる。
【0064】
上述したように、圧電素子11の中央は第1磁石15、第2磁石16によって下方に付勢され、圧電素子11の両端は第1磁石15a、15b、第3磁石18a、18bによって下方に付勢されている。すなわち、圧電素子11の全域が磁力によって付勢され、さらに効果的に周波数特性および音圧を制御し易くなる。
【0065】
また、本実施形態においては、複数の弾性部材13a、13bによって圧電素子11の振動が振動部材12に伝達されるため、圧電素子11の低周波振動が振動部材12に更に伝達され易くなる。これにより、振動部材12における低周波振動の音圧を更に向上させることができる。
【0066】
なお、本実施形態における圧電素子11は、第5実施形態における圧電素子11と同様に構成され得るが、第7実施形態における圧電素子11のように複数の保護膜、圧電部を有してもよい。
【0067】
[第10実施形態]
第10実施形態に係る音響装置1を
図18を参照しながら説明する。本実施形態は、第1磁石15、15a、15bが圧電素子11の内部に配されている点において、第9実施形態と異なっている。以下、第9実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0068】
図18は、第10実施形態に係る音響装置1の構造を示す概略断面図であって、
図16の17-17’線の断面図に対応している。圧電素子11は、圧電部116、保護膜117A、117B、絶縁基板118、接着層119を有する。絶縁基板118の下面には圧電部116が形成され、圧電部116は保護膜117Aによって覆われている。絶縁基板118の上面には、第1磁石15、15a、15bが配され、第1磁石15、15a、15bの周囲には接着層119が配される。保護膜117Bは第1磁石15、接着層119の上に形成される。すなわち、第1磁石15、15a、15b、接着層119は絶縁基板118と保護膜117Bとの間に配される。
【0069】
保護膜117Aの下面には接着部材131aを介して弾性部材13aが接続されており、接着部材131bを介して弾性部材13bが接続されている。弾性部材13aの下面には第3磁石18aが配され、弾性部材13bの下面には第3磁石18bが配されている。第3磁石18aの下面は接着部材121aを介して振動部材12に接続され、第3磁石18bの下面は接着部材121bを介して振動部材12に接続されている。本実施形態においても、圧電素子11は分離部Aにおいて振動部材12に着脱自在に接続され、圧電素子11の取り付けおよび交換を容易に行うことが可能となる。
【0070】
第1磁石15と第2磁石16との間に働く磁力、第1磁石15a、15bと第3磁石18a、18bとの間にそれぞれ働く磁力は、振動系に付加された質量および機械抵抗として作用し得る。また、第1磁石15aと第3磁石18aとの間に働く磁力および第1磁石15bと第3磁石18bとの間に働く磁力によって、圧電素子11は分離部Aにおいて振動部材12に対して着脱自在に接続される。このように、本実施形態においても、第9実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0071】
[第11実施形態]
本実施形態では、第1乃至第10実施形態に係る音響装置1が表示装置であり、振動部材12が表示装置の表示パネルの機能を兼ねている場合の具体的な構成例を説明する。第1乃至第10実施形態と共通する要素については説明を省略又は簡略化することがある。
【0072】
図19は、第11実施形態に係る表示装置3の概略構成図である。本実施形態の表示装置3の用途は、例えば、電子ポスター、デジタル掲示板、電子広告板、コンピュータのスクリーン、テレビジョン受像機等であり得る。ホストシステム2、圧電素子11の構造は第1乃至第10実施形態のいずれかと同様であるため説明を省略する。
【0073】
図19に示されているように、表示装置3は、圧電素子11、制御部20、パネル制御部30、データ駆動回路40、ゲート駆動回路50及び表示パネル60を有する。表示装置3は、入力されたRGBデータ等に基づいて表示パネル60に画像を表示し、入力された音声信号等に基づいて音声を発する装置である。
【0074】
パネル制御部30は、ホストシステム2から入力された画像データ及びタイミング信号に基づいてデータ駆動回路40及びゲート駆動回路50を制御する。データ駆動回路40は、複数の画素Pの列ごとに配された駆動線41を介して複数の画素Pにデータ電圧等を供給する。ゲート駆動回路50は、複数の画素Pの行ごとに配された駆動線51を介して複数の画素Pに制御信号を供給する。なお、駆動線41及び駆動線51の各々は、複数の配線により構成されていてもよい。
【0075】
表示パネル60は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素Pを含む。表示装置3は、例えば、画素Pの発光素子として有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode;OLED)が配された表示パネル60を用いたOLEDディスプレイであり得る。あるいは、表示装置3は、液晶材料、偏光板等を備える液晶パネルを表示パネル60として用いた液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)であってもよい。これらの構造によれば、表示パネル60を薄くすることができるため、表示装置3の薄型化に好適である。表示装置3がカラー画像を表示可能である場合には、画素Pは、カラー画像を構成する複数の色(例えばRGB)のいずれかを表示する副画素であり得る。
【0076】
制御部20、パネル制御部30、データ駆動回路40及びゲート駆動回路50の各々は、1又は複数の半導体集積回路によって構成され得る。また、制御部20、パネル制御部30、データ駆動回路40及びゲート駆動回路50のうちの一部又は全部は、1つの半導体集積回路として一体に構成されていてもよい。
【0077】
本実施形態の表示装置3は、ホストシステム2から画像信号(例えばRGBデータ)、音声信号及びタイミング信号(垂直同期信号、水平同期信号、データイネーブル信号等)が供給されることにより、画像を表示し、かつ音を発する。表示パネル60は、画像の表示を行う画像表示面と、画像表示面と対向する裏面を有する。表示パネル60の裏面には、弾性部材13を介して圧電素子11が接続されている。これにより表示パネル60は、画像表示の機能と、第1乃至第10実施形態における振動部材12の機能とを有する。本実施形態では、表示パネル60から表示された画像から音が発せられるような音響効果を有する表示装置3を提供することができる。なお、表示パネル60は必ずしも振動部材12に配されることを要せず、例えば
図3の筐体14の底壁の外面に配されてもよい。
【0078】
[その他の実施形態]
上述の実施形態は、本発明を適用しうるいくつかの態様を例示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲は、上述の実施形態によって限定的に解釈されてならない。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜修正や変形を行って様々な態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 音響装置
11 圧電素子
12 振動部材
15 第1磁石
16 第2磁石