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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083500
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】高炉の原料装入方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
C21B5/00 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194840
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 泰志
(72)【発明者】
【氏名】柏原 佑介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
(72)【発明者】
【氏名】若井 造
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BC07
4K012BC08
(57)【要約】
【課題】鉱石原料とコークスの混合装入を行う高炉の原料装入方法において、原料の装入形態を適切に制御することで高い還元率を得る。
【解決手段】鉱石原料と混合装入用のコークスを別々の炉頂バンカーに貯留しておき、1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料とコークスを各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料とコークスの混合層xを形成し、次いで、鉱石原料のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層xの上層に、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%の鉱石原料からなる鉱石原料単独層yを形成する。混合層xにおいてコークスのソルーションロス反応で発生したCOガスを混合層xの上層の鉱石原料単独層yの還元に利用することができるので、鉱石の還元効率が向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルレス型装入装置を有するベルレス高炉において鉱石原料とコークスの混合装入を行う原料装入方法であって、
鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、
1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層(x)を形成し、次いで、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層(x)の上層に、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【請求項2】
鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出する混合装入と、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出する装入を交互にそれぞれ複数回行うことにより、混合層(x)と鉱石原料単独層(y)が上下方向で交互にそれぞれ複数層形成され、全鉱石原料単独層(y)は、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%の鉱石原料(a)からなることを特徴とする請求項1に記載の高炉の原料装入方法。
【請求項3】
1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数nに対し、炉頂バンカー数がn+2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高炉の原料装入方法。
【請求項4】
鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(y)が複数層形成される場合には全鉱石原料単独層(y))は、当該チャージの全鉱石原料装入量の40~80質量%の鉱石原料(a)からなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項5】
混合層(x)は、炉径方向において炉中心部領域以外の領域に形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項6】
混合層(x)とその上層の鉱石原料単独層(y)を1バッチで形成するに当たり、炉頂バンカーから鉱石原料(a)を排出する時間に対して、炉頂バンカーからコークス(b)を排出する時間を短くすることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項7】
3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)を鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)に2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b)の装入を終了させることにより混合層(x)を形成し、
第2バッチでは、他の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)を炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする請求項1、4、5のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項8】
3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)とコークス(b)を、鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b-1)の装入を終了させることにより混合層(x)の一部を形成し、
第2バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、混合層(x)の残部を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)を装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする請求項1、4、5のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項9】
3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)を鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)に2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、混合層(x)を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-1)を装入した時点でコークス(b)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)を装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(y)の一部を形成し、
第2バッチでは、他の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)を炉頂バンカーから排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)の残部を形成することを特徴とする請求項1、4、5のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項10】
3基または4基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)とコークス(b)を、鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、1層目の混合層(x)を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)を装入することにより、混合層(x)の上層に1層目の鉱石原料単独層(y)を形成し、
第2バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、2層目の混合層(x)を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)を装入することにより、混合層(x)の上層に2層目の鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項11】
4基の炉頂バンカーを用い、
第1バッチで装入する鉱石原料(a-1)およびコークス(b-1)を、第1および第2の炉頂バンカーに貯留しておき、
第1バッチの装入が終了する前に、第2バッチで装入する鉱石原料(a-2)およびコークス(b-2)を、第3および第4の炉頂バンカーに貯留しておくことを特徴とする請求項10に記載の高炉の原料装入方法。
【請求項12】
コークス(b)は、高炉装入用の塊コークスを得るためにコークスを分級した際の篩下コークスであることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルレス型装入装置を備えた高炉における原料装入方法であって、詳細には、鉱石原料にコークスを混合して装入する、いわゆるコークス混合装入を行う原料装入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では、炉頂から鉄鉱石や副原料等の鉱石原料とコークスを交互に装入し、層状構造を有する装入層(充填層)を形成する。この鉱石原料層、コークス層の一層分の量をそれぞれ1チャージの鉱石原料、コークスと呼ぶ。これら1チャージ分の鉱石原料、コークスは必ずしもそれぞれ一度の装入で炉内へ装入されるわけではなく、1チャージ分の鉱石原料、コークスをそれぞれ複数回に分割して高炉内へ装入することも行われている。この分割された鉱石原料、コークスをそれぞれ1バッチの鉱石原料、コークスと呼ぶ。
【0003】
高炉の操業では、炉下部から熱風と微粉炭等の補助還元材が炉内に吹き込まれ、補助還元材やコークスの燃焼により発生するCOガスで鉱石原料が還元及び溶融する。これにより鉱石原料中の鉄分が溶銑となり、出銑孔から排出される。溶銑1トン製造するために必要となるコークス、補助還元材の量が還元材比であり、CO削減のために還元材比を削減するためには、還元効率を高める必要がある。
鉱石原料層内にコークスを一部混合することにより還元効率を高めることができることが知られている。これは、鉱石の還元によって生じるCOガスが高濃度で存在する鉱石近傍にコークスを混在させることにより、コークスのソルーションロス反応(C+CO→2CO)が促進されて、還元ガスであるCOガスが高濃度に維持され、鉱石の還元効率を向上させるからである。
【0004】
従来、鉱石原料とコークスを混合装入する技術に関して、以下のような方法が知られている。
特許文献1には、炉頂バンカーに鉱石とコークスを混合して装入するに際し、ベルトコンベア上でのコークスの重ね位置を調整することで、炉頂バンカーから排出されるコークス混合率を制御する原料装入方法が示されている。
また、特許文献2には、鉱石とコークスを別々の炉頂バンカーに貯留しておき、炉頂バンカーからのコークスの排出を開始した後に鉱石の排出を開始することで、コークスと鉱石を混合装入する原料装入方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-150642号公報
【特許文献2】特開2004-107794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来技術には、以下のような問題がある。
特許文献1の方法では、鉱石とコークスとを混合して炉頂バンカーに投入するため、炉頂バンカー内でコークスの偏析を生じることが避けられない。このため、炉内での鉱石とコークスの混合状態の制御には限界があり、想定した位置で想定した鉱石とコークスの混合状態を得ることが難しいという問題がある。
また、特許文献2の方法は、鉱石とコークスとを別々の炉頂バンカーに貯留し、鉱石とコークスとを同時に排出することが可能であるため、コークス混合率の制御性は向上する。この方法では、1バッチの中でコークスを炉中心から装入し始めて、その後に鉱石を混合して鉱石・コークスの混合層を形成するため、混合層を形成するコークスとしては、中心コークスを形成するために使用される大塊のコークスが使用される。そのため、混合層中のコークスの表面積は相対的に小さくなり、鉱石・コークスの混合層において期待されるソリューションロス反応が進みにくく、還元効率の向上が不十分であるという問題がある。
【0007】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、ベルレス型装入装置により鉱石原料とコークスの混合装入を行う高炉の原料装入方法において、原料の装入形態を適切に制御することで高い還元率が得られる原料装入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]ベルレス型装入装置を有するベルレス高炉において鉱石原料とコークスの混合装入を行う原料装入方法であって、
鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、
1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層(x)を形成し、次いで、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層(x)の上層に、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0009】
[2]上記[1]の原料装入方法において、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出する混合装入と、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出する装入を交互にそれぞれ複数回行うことにより、混合層(x)と鉱石原料単独層(y)が交互にそれぞれ複数層形成され、全鉱石原料単独層(y)は、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%の鉱石原料(a)からなることを特徴とする高炉の原料装入方法。
[3]上記[1]または[2]の原料装入方法において、1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数nに対し、炉頂バンカー数がn+2以上であることを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0010】
[4]上記[1]~[3]のいずれかの原料装入方法において、鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(y)が複数層形成される場合には全鉱石原料単独層(y))は、当該チャージの全鉱石原料装入量の40~80質量%の鉱石原料(a)からなることを特徴とする高炉の原料装入方法。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの原料装入方法において、混合層(x)は、炉径方向において炉中心部領域以外の領域に形成されることを特徴とする高炉の原料装入方法。
[6]上記[1]~[5]のいずれかの原料装入方法において、混合層(x)とその上層の鉱石原料単独層(y)を1バッチで形成するに当たり、炉頂バンカーから鉱石原料(a)を排出する時間に対して、炉頂バンカーからコークス(b)を排出する時間を短くすることを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0011】
[7]上記[1]、[4]、[5]のいずれかの原料装入方法において、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)を鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)に2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b)の装入を終了させることにより混合層(x)を形成し、
第2バッチでは、他の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)を炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0012】
[8]上記[1]、[4]、[5]のいずれかの原料装入方法において、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)とコークス(b)を、鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b-1)の装入を終了させることにより混合層(x)の一部を形成し、
第2バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、混合層(x)の残部を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)を装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0013】
[9]上記[1]、[4]、[5]のいずれかの原料装入方法において、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)を鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)に2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、混合層(x)を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-1)を装入した時点でコークス(b)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)を装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(y)の一部を形成し、
第2バッチでは、他の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)を炉頂バンカーから排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)の残部を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0014】
[10]上記[1]、[2]、[4]、[5]のいずれかの原料装入方法において、3基または4基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)とコークス(b)を、鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、1層目の混合層(x)を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)を装入することにより、混合層(x)の上層に1層目の鉱石原料単独層(y)を形成し、
第2バッチでは、別々の炉頂バンカーに貯留された鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、2層目の混合層(x)を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)を装入することにより、混合層(x)の上層に2層目の鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0015】
[11]上記[10]の原料装入方法において、4基の炉頂バンカーを用い、
第1バッチで装入する鉱石原料(a-1)およびコークス(b-1)を、第1および第2の炉頂バンカーに貯留しておき、
第1バッチの装入が終了する前に、第2バッチで装入する鉱石原料(a-2)およびコークス(b-2)を、第3および第4の炉頂バンカーに貯留しておくことを特徴とする高炉の原料装入方法。
[12]上記[1]~[11]のいずれかの原料装入方法において、コークス(b)は、高炉装入用の塊コークスを得るためにコークスを分級した際の篩下コークスであることを特徴とする高炉の原料装入方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベルレス型装入装置により鉱石原料とコークスの混合装入を行う高炉の原料装入方法において、原料の装入形態を適切に制御することで高い還元率を得ることができる。具体的には、鉱石原料とコークスの混合層xでのコークスのソルーションロス反応で発生したCOガスを、混合層xの上層の鉱石原料単独層yの還元に利用することができるため、鉱石の還元効率を向上させることができ、高い還元率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の原料装入方法で形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の一例を模式的に示す説明図
図2】本発明の原料装入方法で形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の他の例を模式的に示す説明図
図3】焼結鉱とコークスの混合層の上に焼結鉱単独層を設けて実施した還元試験において、焼結鉱単独層の質量(焼結鉱単独層の全焼結鉱に対する質量比率)と焼結鉱の還元率との関係を調べた結果を示すグラフ
図4図3と同様の還元試験において、焼結鉱とコークスの混合層を1層とした場合と2層とした場合の焼結鉱の還元率を比較して示すグラフ
図5】本発明の原料装入方法の実施形態において、鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示す説明図
図6】本発明の原料装入方法において、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを2バッチで形成する場合の一実施形態を示す説明図
図7】本発明の原料装入方法において、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを2バッチで形成する場合の他の実施形態を示す説明図
図8】各実施例(発明例、比較例)において、鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ベルレス型装入装置(旋回シュートなど)を有するベルレス高炉において鉱石原料とコークスの混合装入を行う原料装入方法であって、複数の炉頂バンカーを用い、鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入する場合、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出することで、両者を混合しながら炉内に装入する。この装入方法によれば、コークス(b)の装入のタイミングや装入時間を調整することで、任意の混合範囲、混合濃度でコークス(b)の混合装入を行うことが可能となる。例えば、1バッチの装入において、鉱石原料(a)の装入時間に対してコークス(b)の装入時間を短く設定することで、事前に鉱石原料(a)とコークス(b)を混合した状態で炉頂バンカーに投入して高炉に装入する均一混合装入の場合よりも、コークス(b)が混合している鉱石原料層部分(混合層)のコークス混合率を容易に高めることができる。
【0019】
鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する場合、例えば、1バッチの装入において、鉱石原料(a)の装入時間に対してコークス(b)の装入時間を短く設定することで、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層と鉱石原料のみからなる鉱石原料単独層が形成される。これらの装入層の適切な配置形態に関して本発明者らは鋭意検討を重ね、その結果、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xの上層に、コークス(b)を混合しない鉱石原料単独層yを配置させることで、混合層x中のコークス(b)のソルーションロス反応で発生したCOガスを上層の鉱石原料単独層yの還元に利用することができ、鉱石の還元効率を向上させることができるとの着想を得た。
【0020】
このような着想に基づきさらに検討を進めた結果、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xの上層に、所定量の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yを形成することにより、鉱石の還元効率が効果的に向上することが判った。このような知見に基づき、本発明は、1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、下層側に鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xを形成し、次いで、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層xの上層に、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%、好ましくは40~80質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層y(鉱石原料(a)のみからなる層)を形成するものである。
【0021】
ここで、鉱石原料(a)は、焼結鉱、塊鉱石、ペレットなどの1種以上からなり、さらに、スラグの成分調整などを目的とした副原料(例えば、石灰石、珪石、蛇紋岩など)を含むことがある。
また、混合装入用のコークス(b)としては、室炉コークス、成形コークス、フェロコークスなどの1種以上を用いることができる。また、室炉コークスのなかでも粒径が小さいコークス、いわゆる小塊コークスを使用した場合には、低粒径による比表面積の増加によりソリューションロス反応によるガス化が促進され、還元効率をより高めることができる。通常、この小塊コークスとしては、高炉装入用の塊コークスを得るために室炉コークスを分級した際の篩下コークスが用いられる。
【0022】
図1は、本発明の原料装入方法により形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の一例を模式的に示す説明図である。図において、Aは1チャージ分の鉱石原料層、Bは同じく塊コークスからなるコークス層であり、これら鉱石原料層Aとコークス層Bが上下方向で交互に積層した状態に装入(充填)される。
鉱石原料層Aは、下層側に鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xが形成され、この混合層xの上層に鉱石原料単独層yが形成される。上述したように、混合層xは、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより形成され、鉱石原料単独層yは、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより形成される。この実施形態では、通気性を確保するため、炉中心部領域eには混合層xを設けず、炉中心部領域eは鉱石原料(a)のみで構成されている。そして、鉱石原料単独層y(炉中心部領域eの鉱石原料のように、混合層xの上に存在しない鉱石原料は鉱石原料単独層yには含まれない)は、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%、好ましくは40~80質量%の鉱石原料(a)で構成される。したがって、残りの90~10質量%(好ましくは60~20質量%)のコークスは、混合層xに含まれるか、混合層xの上部以外の領域(炉中心部側領域eなど)に存在することになる。
混合層xにおけるコークス(b)の混合割合は特に限定しないが、一般には、鉱石原料(a)に対して7質量%以下程度の割合で混合するのが好ましい。これは、コークス(b)の混合割合が多すぎると、鉱石が昇温して溶融するまでにコークス(b)がガス化(ソリューションロス反応によるガス化)しきれずに小粒のコークスとして炉下部に残留してしまい、炉下部の通気性を阻害する恐れがあるためである。コークス(b)の混合割合が少なくても、鉱石原料(a)中に混合されるコークス(b)があれば、上記したガス化反応により鉱石の還元の促進に寄与するため、コークス混合装入の効果を得ることができる。コークス(b)の混合割合は、鉱石原料(a)に対して好ましくは2質量%以上あればよい。
【0023】
本発明では、鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出することで鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入するため、混合層xのコークス混合率を任意に制御することができ、上述したように、事前に鉱石原料とコークスを混合した状態で炉頂バンカーに投入して高炉に装入する均一混合装入に較べて、混合層xのコークス混合率を容易に高めることができる。また、ベルレス型装入装置(旋回シュートなど)を用いて混合装入するため、混合層xの形成位置や範囲についても任意に選択することができる。
そして、混合層xの上層に所定量(当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%、好ましくは40~80質量%)の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yを形成することにより、混合層x内でコークス(b)のソルーションロス反応で発生したCOガスを、上層の鉱石原料単独層yの還元に利用することができるため、鉱石の還元効率を向上させることができる。これに対して、コークス(b)の全部を鉱石原料(a)に均一混合装入した場合には、混合層xから上層のコークス層へ流れるガス中に、鉱石の還元に使われなかったCOガスが含まれた状態となり、鉱石の還元効率を十分向上できない。
【0024】
また、本発明の原料装入方法では、混合層xと鉱石原料単独層yを上下方向で複数層設けることができる。すなわち、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出する混合装入と、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出する装入を交互にそれぞれ複数回行うことにより、混合層xと鉱石原料単独層yを上下方向で交互にそれぞれ複数層形成する。そして、この場合には、形成された複数の鉱石原料単独層y(全鉱石原料単独層y)は、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%、好ましくは40~80質量%の鉱石原料(a)で構成される。したがって、残りの90~10質量%(好ましくは60~20質量%)の鉱石原料(a)は、混合層xに含まれるか、混合層xの上部以外の領域(炉中心部側領域eなど)に存在することになる。
【0025】
図2は、その場合の炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内原料装入層の縦断面)の一例を模式的に示す説明図であり、鉱石原料層Aは、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yが上下方向で交互に積層し、それぞれ複数層形成されている。この実施形態では、上下方向で各2層の混合層x,xと鉱石原料単独層y,yが交互に積層し、鉱石原料層Aを構成している。
この場合も、混合層xは、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより形成され、鉱石原料単独層yは、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより形成される。
また、この実施形態でも、通気性を確保するため、炉中心部領域eには混合層xを設けず、炉中心部領域eは鉱石原料のみで構成されている。そして、複数の鉱石原料単独層y(炉中心部領域eの鉱石原料のように、混合層xの上に存在しない鉱石原料は鉱石原料単独層yには含まれない)を合わせた鉱石原料は、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%、好ましくは40~80質量%の鉱石原料(a)で構成される。
【0026】
混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成する場合において、鉱石原料層の還元率について評価するために、内径70mmの坩堝にCOおよびCOガスを導入できる電気炉を用いて実験を行った。高炉内の雰囲気を想定して、温度は900℃とし、CO=30%、CO=15%、N=55%の混合ガス15NL/minの雰囲気下で3時間保持して還元試験を行った。
粒径15-20mmの焼結鉱を1000g、粒径15-20mmのコークスを25g準備し、試験材に供した。試験材の層厚は約140mmであり、電気炉の均熱帯よりも長くなったため、試験材を層厚方向に2分割して各70mmとし、下層試験材の排ガスデータから上層試験材のガス条件を算出した上で試験を行い、上層試験材と下層試験材の平均還元率を求めた。試験材の層構造は、焼結鉱とコークスが均一に混合した層(以下、混合層という)の上層に焼結鉱のみの層(以下、焼結鉱単独層という)を形成させ、焼結鉱単独層の質量を変化させて試験を行った。その結果を図3に示す。ここで、焼結鉱の還元率とは、2分割した試験材それぞれの還元率の平均値である。還元率は、試験材の実験前後の質量を測定し、質量減少分が還元により除去された酸素量であるとして算出した。
【0027】
図3によれば、焼結鉱単独層の全焼結鉱に対する質量比率が10質量%以上では、焼結鉱とコークスとを均一に混合した条件(焼結鉱単独層の全焼結鉱に対する質量比率が0質量%の条件)よりも還元率が増加している。これは、焼結鉱単独層の全焼結鉱に対する質量比率が10質量%以上では、焼結鉱単独層の層厚が確保され、混合層のコークスのソリューションロス反応により発生したCOガスが上層の焼結鉱単独層の還元に寄与したためと考えられる。一方、焼結鉱単独層の全焼結鉱に対する質量比率が90質量%を超えると、焼結鉱とコークスとを均一に混合した条件よりも還元率が低下している。これは、焼結鉱単独層の全焼結鉱に対する質量比率が90質量%を超えると、混合層中のコークスの濃度が過剰となり、コークスのソリューションロス反応の反応量が低下し、ソリューションロス反応により発生するCOガス量が低下するためであると考えられる。また、焼結鉱単独層の全焼結鉱に対する質量比率が40~80質量%、そのなかでも特に40~60質量%の範囲において、特に高い還元率が得られている。
以上の結果から、本発明では、混合層xの上層に形成される鉱石原料単独層yは、当該チャージの全鉱石原料装入量の10~90質量%、好ましくは40~80質量%、より好ましくは40~60質量%の鉱石原料(a)で構成する。
【0028】
また、図3と同様の還元試験として、混合層xを1層とした試験と2層とした試験を実施し、両者の還元率を比較した。混合層xを1層とした試験では、焼結鉱500gにコークス25gを均一に混合した混合層を設け、その上に焼結鉱500gからなる焼結鉱単独層を配置した。また、混合層xを2層とした試験では、焼結鉱250gにコークス12.5gを均一に混合した混合層を設け、その上に焼結鉱250gからなる焼結鉱単独層を配置し、さらにその上に焼結鉱250gにコークス12.5gを均一に混合した混合層を設け、その上に焼結鉱250gからなる焼結鉱単独層を配置した。その結果を図4に示す。ここで、焼結鉱の還元率は、図3と同様の方法にて算出した。図4によれば、混合層が2層の方が還元率は高位となることが判る。これは混合層を2層にすることで、混合層と焼結単独層の接触界面積が増加し、COガスによる還元効率が増加したためであると考えられる。
【0029】
本発明において、1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数nに対し、炉頂バンカー数がn+2以上であることが好ましい。したがって、炉頂バンカー数は、n=1(混合層xが1層)の場合には3基以上、n=2(混合層xが2層)の場合には4基以上とすることが好ましい。これにより、炉頂バンカーに原料を補充するための待ち時間(炉内装入の待ち時間)を無くすことができるため、原料を連続的に装入することが可能となり、出銑量を落とすことなく本発明法を実施することができる。
炉頂バンカーの大きさは、装入する鉱石原料(a)やコークス(b)の量に応じて決められる。炉頂バンカーは、鉱石原料(a)の貯留とコークス(b)の貯留を兼用できるものでもよいし、鉱石原料(a)の貯留専用とコークス(b)の貯留専用のものでもよいが、前者の方が炉頂バンカー数を少なくできるので好ましい。
なお、コークス(b)を炉頂バンカーに投入して貯留するには、炉頂バンカーに原料を搬送するためのベルトコンベア上に切出しホッパーを設置し、この切出しホッパーからベルトコンベア上にコークス(b)が切り出されるようにすることが望ましい。
【0030】
以下、本発明において、鉱石原料層A(混合層xとその上層の鉱石原料単独層y)を形成するための原料装入方法の具体例について説明する。
鉱石原料層Aを構成する1チャージ分の原料は、1バッチ、複数バッチ(例えば2バッチ)のいずれで装入してもよい。
鉱石原料(a)とコークス(b)は、ベルレス型装入装置を構成する旋回シュートを通じて装入され、旋回シュートの傾動角を調整(変更)することにより、炉半径方向で炉中心部側から炉壁側に向けて、若しくは炉壁側から炉中心部側に向けて原料が順次装入される。ここで、1バッチ内で混合層xを形成し、さらにその上層に鉱石単独層yを形成する場合、例えば、鉱石原料(a)とコークス(b)を同時排出する期間に旋回シュートの傾動角を変更していた方向に対して、コークス(b)の同時排出を終了した時点以降は逆の方向に旋回シュートの傾動角を変更するようにすることで、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成することができる。
【0031】
図5(A)~(E)は、鉱石原料層A(混合層xとその上層の鉱石原料単独層y)を2バッチで形成する実施形態について、各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示している。これらのうち、図5(A)~(C)は混合層xを1層設ける実施形態、図5(D),(E)は混合層xを2層設ける実施形態を示している。なお、図5(およびこれに関する以下の説明)は、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対する原料装入に関するものであり、通常、図1図2に示すように炉中心部領域eに対しては鉱石原料(a)のみを装入するものである。すなわち、鉱石原料(a)(鉱石原料(a-1)および/または鉱石原料(a-2))の一部は、図示しないタイミングで炉中心部領域eに装入されることになる。
【0032】
図5(A)の実施形態では、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)を鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)に2分割し、第1バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー1、3)に貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b)の装入を終了させることにより混合層xを形成する。続く第2バッチでは、他の炉頂バンカー(炉頂バンカー2)に貯留された鉱石原料(a-2)を炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成する。この鉱石原料(a-2)で構成される鉱石原料単独層yの鉱石原料量は、全鉱石原料装入量の10~90質量%である。
【0033】
図5(B)の実施形態では、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)とコークス(b)を、鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、第1バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー1、2)に貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b-1)の装入を終了させることにより混合層xの一部を形成する。続く第2バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー2、3)に貯留された鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、混合層xの残部を形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)を装入することにより、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成する。この鉱石原料(a-2)の一部で構成される鉱石原料単独層yの鉱石原料量は、全鉱石原料装入量の10~90質量%である。
なお、本実施形態のように、1つバッチ(第2バッチ)において、混合層xの残部を形成し、さらにその上層に鉱石原料(a)を装入して鉱石単独層yを形成するには、上述したように、混合層xの残部を形成した後、旋回シュートをそれまでとは逆向きに傾動させて鉱石原料(a)を装入すればよい。
【0034】
図5(C)の実施形態では、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)を鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)に2分割し、第1バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー1、3)に貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、混合層xを形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-1)を装入した時点でコークス(b)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)を装入することにより、混合層xの上層に鉱石原料単独層y一部を形成する。続く第2バッチでは、他の炉頂バンカー(炉頂バンカー2)に貯留された鉱石原料(a-2)を炉頂バンカーから排出して装入することにより、鉱石原料単独層yの残部を形成する。この鉱石原料(a-1)の一部と鉱石原料(a-2)で構成される鉱石原料単独層yの鉱石原料量(図中のa+a)は、全鉱石原料装入量の10~90質量%である。
なお、本実施形態のように、1つのバッチ(第1バッチ)において、混合層xの残部を形成し、さらにその上層に鉱石原料(a)を装入して鉱石原料単独層yの一部を形成する場合も、上述したと同様に、混合層xの残部を形成した後、旋回シュートをそれまでとは逆向きに傾動させて鉱石原料(a)を装入すればよい。
【0035】
図5(D)の実施形態では、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)とコークス(b)を、鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、第1バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー1、3)に貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、1層目の混合層xを形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)を装入することにより、混合層xの上層に1層目の鉱石原料単独層yを形成する。続く第2バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー1、2)に貯留された鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、2層目の混合層xを形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)を装入することにより、混合層xの上層に2層目の鉱石原料単独層yを形成する。この鉱石原料(a-1)の一部と鉱石原料(a-2)の一部で構成される鉱石原料単独層y,y、の合計鉱石原料量(図中のa+a)は、全鉱石原料装入量の10~90質量%である。
【0036】
図5(E)の実施形態では、4基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチで装入するに際し、1チャージ分の鉱石原料(a)とコークス(b)を、鉱石原料(a-1)および鉱石原料(a-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、第1バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー1、2)に貯留された鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、1層目の混合層xを形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)を装入することにより、混合層xの上層に1層目の鉱石原料単独層yを形成する。続く第2バッチでは、別々の炉頂バンカー(炉頂バンカー3、4)に貯留された鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を、それぞれの炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、2層目の混合層xを形成するとともに、所定量の鉱石原料(a-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)を装入することにより、混合層xの上層に2層目の鉱石原料単独層yを形成する。この鉱石原料(a-1)の一部と鉱石原料(a-2)の一部で構成される鉱石原料単独層y,y、の合計鉱石原料量(図中のa+a)は、全鉱石原料装入量の10~90質量%である。
【0037】
ここで、図5(D)と図5(E)の実施形態を較べると、3基の炉頂バンカーを用いる図5(D)の実施形態では、1層目の混合層xを形成するための原料装入で空になった炉頂バンカー(炉頂バンカー1)に原料を再投入(貯留)してから、2層目の混合層xを形成するための原料装入を行うため、1チャージ分の鉱石原料の装入時間が長くなり、その分出銑量が低下する。これに対して4基の炉頂バンカーを用いる図5(E)の実施形態では、1層目の混合層xを形成するための原料装入中に別の炉頂バンカーに原料を投入して貯留し、2層目の混合層xを形成するために使用できるため、炉頂バンカーに原料を補充する際の装入待ち時間がなくなり、出銑量を低下させることなく実施することができる。
なお、図5(D)と図5(E)の実施形態のように1つのバッチ(第1バッチ、第2バッチ)において、混合層x、xを形成し、さらにそれらの上層に鉱石原料(a)を装入して鉱石原料単独層y、yを形成する場合も、上述したと同様に、混合層x、xを形成した後、旋回シュートをそれまでとは逆向きに傾動させて鉱石原料(a)を装入すればよい。
【0038】
次に、炉半径方向における炉中心部領域eへの原料装入を含めた原料装入方法の具体例について説明する。
なお、以下の具体例において、例えば、1つバッチ内で混合層x(またはその一部)とその上層の鉱石原料単独層y(またはその一部)を形成するには、旋回シュートによる原料装入中に、旋回シュートの傾動の向きや、炉半径方向での旋回シュートの装入方向を適宜変えればよい。
まず、図1に示すように混合層xを1層設ける場合であって、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを2バッチで形成する場合について説明すると、図6はその一実施形態を示すものであり、第1バッチでは、図6(ア)に示すように、炉半径方向における炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入し、それ以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成する。続く第2バッチでは、図6(イ)に示すように、炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eの残部を形成する。
【0039】
また、図6の実施形態以外の他の実施形態としては、第1バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入し、それ以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成するとともに、引き続き、この混合層xの上層に鉱石原料(a)のみを装入して、鉱石原料単独層yの一部を形成する。続く第2バッチでは、炉半径方向における全部または一部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yの残部と炉中心部領域eの鉱石原料層の残部を形成する。
同じく他の実施形態としては、第1バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入し、それ以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xの一部を形成する。続く第2バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域の一部または全部に対して、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xの残部を形成した後、引き続き、炉半径方向における全部または一部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の残部を形成する。
【0040】
また、図7は、混合層を1層設ける場合であって、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを2バッチで形成する場合の他の実施形態を示すものであり、第1バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することで混合層xを形成する。続く第2バッチでは、炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することで、鉱石原料単独層yと炉中心部領域eの鉱石原料層を形成する。
【0041】
また、図2に示すように混合層xを2層設ける場合であって、混合層x,xとそれらの上層の鉱石原料単独層y,yを2バッチで形成する場合の一実施形態としては、例えば、第1バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入し、それ以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成するとともに、引き続き、この混合層xの上層に鉱石原料(a)のみを装入することで、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成する。第2バッチでは、以上のような原料装入を再度行うことで、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域の鉱石原料層の残部を形成する。
なお、図2に示すように混合層xを2層設ける場合、混合層x,xとそれらの上層の鉱石原料単独層y,yを、それぞれ別々のバッチ(計4バッチ)で形成するようにしてもよい。
【0042】
また、本発明では、以下のように混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを1バッチで形成することができる。
その一実施形態としては、旋回シュートにより、炉半径方向で炉壁側から炉中心部側に向けて原料装入を行った後、折り返して炉中心部側から炉壁側に向けて原料装入を行うことにより、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを1バッチで形成するに当たり、炉壁側から炉中心部側に向けて行う原料装入では、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入を開始し、この混合装入を継続して混合層xを形成した後、炉半径方向における炉中心部領域eに対しては、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入し、続く炉中心部側から炉壁側に向けて行う原料装入では、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eに鉱石原料層を形成する。
【0043】
また、他の実施形態としては、旋回シュートにより、炉半径方向で炉中心部側から炉壁側に向けて原料装入を行った後、折り返して炉壁側から炉中心部側に向けて原料装入を行うことにより、混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを1バッチで形成するに当たり、炉中心部側から炉壁側に向けて行う原料装入では、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入を開始し、炉半径方向における炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入した後、それ以降は、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することで混合層xを形成し、続く炉壁側から炉中心部側に向けて行う原料装入では、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eに鉱石原料層を形成する。
また、以上のような各実施形態(混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを1バッチで形成する実施形態)の原料装入を2回繰り返すこと(2バッチ)により、図2に示すような混合層xと鉱石原料単独層yをそれぞれ2層設けた層構造とすることもできる。
【実施例0044】
並列した複数基の炉頂バンカーとベルレス型装入装置(旋回シュートなど)を備えたベルレス高炉(炉口径11.4m)において、塊コークスからなるコークス層Bと、一部または全部が鉱石原料とコークスの混合層からなる鉱石原料層Aが交互に形成されるように原料装入を行った。なお、以下の説明において、コークス(b),(b-1),(b-2)は混合装入用の小塊コークスを指す。
図8(ア)~(キ)は、各実施例(発明例、比較例)において鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示している。なお、図8(ア)~(キ)(およびこれに関する以下の説明)は、炉径方向における炉中心部領域以外の領域に対する原料装入に関するものであり、炉中心部領域に対しては鉱石原料(a)のみを装入した(図1図2参照)。すなわち、鉱石原料(a)(鉱石原料(a-1)および/または鉱石原料(a-2))の一部を、図示しないタイミングで炉中心部領域eに装入した。
【0045】
比較例1では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成した。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を図8(ア)に示す。貯鉱槽から供給される全鉱石原料(a)の半量の鉱石原料(a-1)を炉頂バンカー1に貯留するとともに、貯骸槽から供給される全コークス(b)の半量のコークス(b-1)を炉頂バンカー2に貯留し、第1バッチとして、炉頂バンカー1および炉頂バンカー2から鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b-1)の装入を終了させた。炉頂バンカー1および炉頂バンカー2からの鉱石原料(a-1)およびコークス(b-1)の装入が終了するまでに、残りの半量のコークス(b-2)を炉頂バンカー3に貯留するとともに、炉頂バンカー2からのコークス(b-1)の装入が終了した後、残りの半量の鉱石原料(a-2)を炉頂バンカー2に貯留し、第2バッチとして、炉頂バンカー2および炉頂バンカー3から鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-2)の装入終了とともにコークス(b-2)の装入を終了させた。すなわち、この比較例1では、1チャージ分の鉱石原料を2バッチで装入し、鉱石原料(a-1),(a-2)とコークス(b-1),(b-2)をともに混合装入し、鉱石原料層Aとした。したがって、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層の上層には鉱石原料単独層を形成しなかった。
【0046】
発明例1では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、図1に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を図8(イ)に示す。貯鉱槽から供給される全鉱石原料(a)の半量の鉱石原料(a-1)を炉頂バンカー1に貯留するとともに、貯骸槽から供給される全コークス(b)の半量のコークス(b-1)を炉頂バンカー2に貯留し、第1バッチとして、炉頂バンカー1および炉頂バンカー2から鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b-1)の装入を終了させた。炉頂バンカー1および炉頂バンカー2からの鉱石原料(a-1)およびコークス(b-1)の装入が終了するまでに、残りの半量のコークス(b-2)を炉頂バンカー3に貯留するとともに、炉頂バンカー2からのコークス(b-1)の装入が終了した後、残りの半量の鉱石原料(a-2)を炉頂バンカー2に貯留し、第2バッチとして、炉頂バンカー2および炉頂バンカー3から鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-2)の80質量%を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ(以上により混合層xが形成)、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)(残り20質量%の鉱石原料(a-2))が混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ残りの鉱石原料(a-2)の装入を行った(以上により鉱石原料単独層yが形成)。すなわち、この発明例1では、1チャージ分の鉱石原料を2バッチで装入し、下層側に混合層xを形成し、その上層に当該チャージの全鉱石原料装入量の10質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yを形成して、鉱石原料層Aとした。鉱石装入後のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0047】
発明例2では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、図1に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を図8(ウ)に示す。貯鉱槽から供給される全鉱石原料(a)の半量の鉱石原料(a-1)を炉頂バンカー1に貯留するとともに、貯骸槽から供給されるコークス(b)を炉頂バンカー3に貯留し、第1バッチとして、炉頂バンカー1および炉頂バンカー3から鉱石原料(a-1)とコークス(b)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の装入終了とともにコークス(b)の装入を終了させた(以上により混合層xが形成)。炉頂バンカー1および炉頂バンカー3からの鉱石原料(a-1)およびコークス(b)の装入が終了するまでに、残りの半量の鉱石原料(a-2)を炉頂バンカー2に貯留し、第2バッチとして、炉頂バンカー2から鉱石原料(a-2)を排出し、この鉱石原料(a-2)が混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ装入を行った(以上により鉱石原料単独層yが形成)。すなわち、この発明例2では、1チャージ分の鉱石原料を2バッチで装入し、下層側に混合層xを形成し、その上層に当該チャージの全鉱石原料装入量の50質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yを形成して、鉱石原料層Aとした。鉱石装入後のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0048】
発明例3では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、図1に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を図8(エ)に示す。貯鉱槽から供給される全鉱石原料(a)の半量の鉱石原料(a-1)を炉頂バンカー1に貯留するとともに、貯骸槽から供給されるコークス(b)を炉頂バンカー3に貯留し、第1バッチとして、炉頂バンカー1および炉頂バンカー3から鉱石原料(a-1)とコークス(b)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の20質量%を装入した時点でコークス(b)の装入を終了させ(以上により混合層xが形成)、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)(残り80質量%の鉱石原料(a-1))が混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ残りの鉱石原料(a-1)の装入を行った。炉頂バンカー1からの鉱石原料(a-1)の装入が終了するまでに、残りの半量の鉱石原料(a-2)を炉頂バンカー2に貯留し、第2バッチとして、炉頂バンカー2から鉱石原料(a-2)を排出し、この鉱石原料(a-2)が混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ鉱石原料(a-2)の装入を行った(以上により鉱石原料単独層yが形成)。すなわち、この発明例3では、1チャージ分の鉱石原料を2バッチで装入し、下層側に混合層xを形成し、その上層に当該チャージの全鉱石原料装入量の90質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yを形成して、鉱石原料層Aとした。鉱石装入後のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0049】
比較例2では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成した(図1に準じた原料装入層最上部の堆積状態)。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を図8(オ)に示す。貯鉱槽から供給される全鉱石原料(a)の半量の鉱石原料(a-1)を炉頂バンカー1に貯留するとともに、貯骸槽から供給されるコークス(b)を炉頂バンカー3に貯留し、第1バッチとして、炉頂バンカー1および炉頂バンカー3から鉱石原料(a-1)とコークス(b)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の10質量%を装入した時点でコークス(b)の装入を終了させ(以上により混合層xが形成)、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)(残り90質量%の鉱石原料(a-1))が混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ残りの鉱石原料(a-1)の装入を行った。炉頂バンカー1からの鉱石原料(a-1)の装入が終了するまでに、残りの半量の鉱石原料(a-2)を炉頂バンカー2に貯留し、第2バッチとして、炉頂バンカー2から鉱石原料(a-2)を排出し、この鉱石原料(a-2)が混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ鉱石原料(a-2)の装入を行った(以上により鉱石原料単独層yが形成)。すなわち、この比較例2では、1チャージ分の鉱石原料を2バッチで装入し、下層側に混合層xを形成し、その上層に当該チャージの全鉱石原料装入量の95質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yを形成して、鉱石原料層Aとした。鉱石装入後のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0050】
発明例4では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、図2に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を図8(カ)に示す。貯鉱槽から供給される全鉱石原料(a)の半量の鉱石原料(a-1)を炉頂バンカー1に貯留するとともに、全コークス(b)の半量のコークス(b-1)を炉頂バンカー3に貯留し、第1バッチとして、炉頂バンカー1および炉頂バンカー3から鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の50質量%を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ(以上により1層目の混合層xが形成)、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)(残り50質量%の鉱石原料(a-1))が1層目の混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ残りの鉱石原料(a-1)の装入を行った(以上により1層目の鉱石原料単独層yが形成)。炉頂バンカー1からの鉱石原料(a-1)の装入が終了するまでに、残りの半量の鉱石原料(a-2)を炉頂バンカー2に貯留するとともに、炉頂バンカー1からの鉱石原料(a-1)の装入が終了した後、残りの半量のコークス(b-2)を炉頂バンカー1に貯留し、第2バッチとして、炉頂バンカー2および炉頂バンカー1から鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-2)の50質量%を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ(以上により2層目の混合層xが形成)、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)(残り50質量%の鉱石原料(a-2))が2層目の混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ残りの鉱石原料(a-2)の装入を行った(以上により2層目の鉱石原料単独層yが形成)。すなわち、この発明例4では、1チャージ分の鉱石原料を2バッチで装入し、下層側から順に1層目の混合層x、1層目の鉱石原料単独層y、2層目の混合層x、2層目の鉱石原料単独層yを形成し、鉱石原料層Aとした。そして、1層目の鉱石原料単独層yと2層目の鉱石原料単独層yの鉱石原料(a)の合計量を、当該チャージの全鉱石原料装入量の50質量%とした。鉱石装入後のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0051】
発明例5では、4基の並列した炉頂バンカー1~4を用いて、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、図2に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を図8(キ)に示す。貯鉱槽から供給される全鉱石原料(a)の半量の鉱石原料(a-1)を炉頂バンカー1に貯留するとともに、全コークス(b)の半量のコークス(b-1)を炉頂バンカー2に貯留し、第1バッチとして、炉頂バンカー1および炉頂バンカー2から鉱石原料(a-1)とコークス(b-1)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-1)の50質量%を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ(以上により1層目の混合層xが形成)、引き続き、残りの鉱石原料(a-1)(残り50質量%の鉱石原料(a-1))が1層目の混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ残りの鉱石原料(a-1)の装入を行った(以上により1層目の鉱石原料単独層yが形成)。炉頂バンカー1からの鉱石原料(a-1)の装入が終了するまでに、残りの半量の鉱石原料(a-2)を炉頂バンカー3に貯留するとともに、残りの半量のコークス(b-2)を炉頂バンカー4に貯留し、第2バッチとして、炉頂バンカー3および炉頂バンカー4から鉱石原料(a-2)とコークス(b-2)を同時に排出して混合装入し、鉱石原料(a-2)の50質量%を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ(以上により2層目の混合層xが形成)、引き続き、残りの鉱石原料(a-2)(残り50質量%の鉱石原料(a-2))が2層目の混合層xの上層となるように、旋回シュートの傾動角を調整しつつ残りの鉱石原料(a-2)の装入を行った(以上により2層目の鉱石原料単独層yが形成)。すなわち、発明例4と同様に、この発明例5でも、1チャージ分の鉱石原料を2バッチで装入し、下層側から順に1層目の混合層x、1層目の鉱石原料単独層y、2層目の混合層x、2層目の鉱石原料単独層yを形成し、鉱石原料層Aとした。そして、1層目の鉱石原料単独層yと2層目の鉱石原料単独層yの鉱石原料(a)の合計量を、当該チャージの全鉱石原料装入量の50質量%とした。鉱石装入後のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0052】
ここで、発明例1~5および比較例1、2では、コークス(b)は鉱石原料(a)の合計量に対して2.5質量%の割合で混合した。また、鉱石原料(a)の装入量は出銑比とコークス比に応じて決められ、1チャージ当たり95~100tの範囲となった。
表1に各実施例の操業結果を示す。
3基の炉頂バンカーを用い、混合層xの上層に当該チャージの全鉱石原料装入量の10質量%、50質量%、90質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yをそれぞれ形成した発明例1、2、3は、混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成しなかった比較例1に較べて還元材比が低下した。一方、3基の炉頂バンカーを用い、混合層xの上層に当該チャージの全鉱石原料装入量の95質量%の鉱石原料(a)からなる鉱石原料単独層yを形成した比較例2は、混合層xにおけるコークス(b)の量が過剰となり、ソリューションロス反応によるCOガスの発生量が減少したため、還元材比は比較例1と同等であった。また、比較例1および発明例1では、1バッチ目の原料装入で空になった炉頂バンカーに原料を再装入(貯留)してから、2バッチ目の原料装入を行うため、1チャージ分の鉱石原料の装入時間が長くなり、出銑量が発明例2、3および比較例2よりも低位となった。
【0053】
3基の炉頂バンカーを用い、混合層xと鉱石原料単独層yを各2層形成した発明例4は、混合層xで発生したCOガスが還元に有効に使用されるため、還元材比が発明例1~3よりも低位となった。ただし、1層目の混合層xを形成するための原料装入で空になった炉頂バンカーに原料を再投入(貯留)してから、2層目の混合層xを形成するための原料装入を行うため、1チャージ分の鉱石原料の装入時間が長くなり、出銑量が発明例2、3および比較例2よりも低位となった。
これに対して、4基の炉頂バンカーを用い、混合層xと鉱石原料単独層yを各2層形成した発明例5は、発明例4と同様、混合層xで発生したCOガスが還元に有効に使用されるため、還元材比が発明例1~3よりも低位となったが、さらに、1層目の混合層xを形成するための原料装入中に別の炉頂バンカーに原料を投入して貯留し、2層目の混合層xを形成するために使用できるため、炉頂バンカーに原料を補充する際の待ち時間を無くすことができ、出銑量が発明例2、3および比較例2と同等となった。このように、1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数n(混合層xの層数)に対し、炉頂バンカー数をn+2以上とすることにより、炉頂バンカーに原料を補充するための待ち時間(炉内装入の待ち時間)を無くすことができ、原料を連続的に炉内装入することが可能となり、生産量の低下を防ぐことが可能となる。
【0054】
【表1】
【符号の説明】
【0055】
A 鉱石原料層
B コークス層
x,x,x 混合層
y,y,y 鉱石原料単独層
e 炉中心部領域
1,2,3,4 炉頂バンカー
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7
図8-1】
図8-2】