(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083516
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】上肢持上げ補助装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194863
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】592030078
【氏名又は名称】株式会社ミツワエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】難波 健一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS22
3C707AS38
3C707HT11
3C707XK02
3C707XK16
3C707XK24
3C707XK42
(57)【要約】
【課題】本発明は、腕を上げた状態での作業において装着しても安全で、かつ、作業者の作業負担の軽労化と効率化に寄与する上肢持上げ補助装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る上肢持上げ装置Xは、腕受け3と上肢支持体2とラチェット機構1と支持板5と胴ベルト6とを備え、ラチェット機構1は、ラチェットボス10と、該ラチェットボス10の周縁に設けられた複数のラチェット山100が噛み合い可能に設けられたラチェット谷130を備えるラチェット台13と、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14と、からなり、ラチェットボス10は、リングプレート14の動きに合わせてラチェット軸12の長さ方向を移動することが可能で、該移動によりラチェット機構1の噛み合い及び解除を可能にすることを特徴とすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の上肢を上げての作業を補助する上肢持上げ補助装置であって、
前記装着者の上腕に装着される腕受けと、
前記装着者が前記上肢を上げた状態を抗重力的に維持して前記上腕を支持する上肢支持体と、
前記上肢支持体を上下方向に回転可能にするラチェット機構と、
前記ラチェット機構を前記装着者の肩付近に配置するために、前記ラチェット機構を収容するラチェットケースに一端を固定する支持板と、
前記支持板の他端を、前記装着者の腰横の位置に固定して胴体に装着する胴ベルトと、を備え、
前記ラチェット機構は、前記ラチェットケースに設けられた収容空間に摺動自在に嵌挿されラチェット軸で軸支された状態で摺動方向に摺動するラチェットボスと、該ラチェットボスの周縁に設けられた複数のラチェット山が噛み合い可能に設けられたラチェット谷を備えるラチェット台と、前記ラチェット機構の噛み合い又は解除を担うリングプレートと、からなり、
前記リングプレートは、略リングの形状で前記ラチェットボスをすっぽり嵌め込める径の円孔を備え、該略リングの一部で前記上肢支持体と連結する側に突出部を備え、
前記ラチェット台を嵌合した前記ラチェットケースには凹部が形成されており、前記ラチェット台と前記ラチェットケースとの間には、復帰用板ばねを備え、前記ラチェット台の該凹部に前記ラチェット台の中心孔を嵌合し、前記ラチェット台の中心と回転を規制し、該復帰用板ばねは、前記ラチェット台とラチェットボスとの嵌合方向に付勢し、
前記ラチェットボスは、円柱形状でその周の一部に袖部を備え、該袖部においてスリーブパイプと皿ばねを介して前記リングプレートに揺動可能に固定され、前記リングプレートの動きに合わせて前記ラチェット軸の長さ方向を移動することが可能で、該移動により前記ラチェット機構の噛み合い及び解除を可能にすることを特徴とする上肢持上げ補助装置。
【請求項2】
前記上肢支持体は前記リングプレートに連結する端にリングプレート側連結部を備え、該リングプレート側連結部が前記リングプレートの前記突出部にガイドを挟持しかつ上肢支持体回転軸に軸止され連結され、
該リングプレート側連結部はその一端が円柱に刳り貫かれた空洞を備え、該空洞内部にガイドローラとガイドローラ受け部と圧縮ばねを備え、該ガイドローラは前記ガイドに当接する面を移動することで該ガイドローラ受け部を押し引きして該圧縮ばねの付勢を受けることを特徴とする請求項1に記載の上肢持上げ補助装置。
【請求項3】
前記ラチェット機構は、前記ラチェットボスの中央の所定の窪みに嵌め合わされるラチェットインサートを備え、ラチェットインサートは前記ラチェット軸に回転可能に軸支され、さらに該ラチェットインサートの周面に設けられた突起に引っ掛けられるように鉤ばねが取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の上肢持上げ補助装置。
【請求項4】
前記ガイドは略角柱形状であり、前記ガイドローラを当接する位置に凹部を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の上肢持上げ補助装置。
【請求項5】
前記複数のラチェット谷の谷と谷の間にスペースを配置することを特徴とする請求項1ないし4に記載のいずれかに記載の上肢持上げ補助装置。
【請求項6】
前記ラチェット山の内角と、前記ラチェット山を受ける前記ラチェット谷の外角を、前記ラチェット山が摺動する方向に対して、噛み合う面が数度の角度減じていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の上肢持上げ補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢持上げ補助装置、特に、腕を上げた状態での作業において作業者が作業しやすく、装着しても安全で、かつ、作業者の作業負担を軽減することが可能な上肢持上げ補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ等の棚栽培果樹に対する作業の機械化は進んでおらず、剪定、誘引、摘果、摘房、摘粒、袋掛け、収穫などの多くの作業は手作業で行われている。特に、袋掛け作業において、一人が一日に数百個の袋掛けを手作業で行っている。これらの作業において、作業者は、肩の高さより腕を上げた状態で長時間作業しなければならず、作業負担が大きい。農業分野での後継者が少なくなり、高齢者が農作業の主体となっており、腕を高く上げて長時間作業することは高齢者にとって非常に苛酷な負担となっている。
【0003】
このため、最近では、上げた状態の腕を支持して、農作業における作業負担を軽減する器具の開発が進められている。
非特許文献1に係る製品「ラクベスト(登録商標)」(株式会社クボタ)は、腕を載せるスライドアームを一定の角度に固定し、その上に腕を載せて作業をする作業用補助具である。腕の支え感は軟らかく上下の動きに対応でき、固縛がないというメリットがある一方、アーム角度の固定と解除が容易にできるものの、コストが高く、自重負担が大きい。また、設定した角度1点でのロック。腕を曲げると解除スイッチが働くが、少し腕を浮かす必要あり。腕受けに負荷をかけたままの場合、ロック解除できない。さらに、モータを使用することなく、板バネを使用してアームの角度を固定するため、軽量化されているとはいえ、重量は4kgで装着者にとっては重い。
また、非特許文献2に係る「腕楽っく(登録商標)」(株式会社ニッカリ)は、ラックギア噛み合いによりアームサポートが任意の角度で止まる機構で、バネやモータを使用しておらず、軽量である。しかし、手動位置決めにより腕の自重は支えるが、その都度角度調整が必要なため、利便性に欠ける。また、ロックが外れやすい、マジックテープによる固縛がきついため、血流が悪くなり、腕の支え感は遊びがないという欠点がある。
さらに、両者の装置の場合、作業者の腕が腕支持部で固定されるため、装着したまま誤って倒れた場合、腕が骨折する可能性が高く、安全面で問題がある。
【0004】
また、上記市販製品以外にも、種々の発明が提案されている。
特許文献1に係る発明は、上腕の下側に当てる腕当て板と胴体に当てる胴当て板、その両者を結合し腕当て板に上方向の付勢力を与え、かつ腕当て板が上下左右に動かせるようにした圧縮コイルスプリングからなり、肩にかかる負担を軽くする装置が開発されている。
特許文献2に係る発明は、上腕の下側に当てる腕当て板と胴体に当てる胴当て板との間に、それ等の腕当て板と胴当て板とを結合して、その腕当て板へ上方向の付勢力を与え、腕当て板を上下左右の各方向へ移動可能に支持する腕当て板支持・自在可動機構を設置する。
特許文献3に係る発明は、上腕を支えるアームホルダーと、それを支えるガイド、そのガイドに内蔵したシャトルに連結されたウエストプレート及びそのウエストプレートを差し込めるポケットを有するホルスター、シャトルのロック・アンロックを行うリターンプレートから成る腕支え装置である。
特許文献4に係る発明は、作業者の腕を載置する載置部と該載置部から下方に延びる下部柱部とからなるまくら手段と、該まくら手段を支持する支持手段と、該支持手段を作業者に装着するための装着手段とを有し、該柱部の下端部には雌孔が形成され、該雌孔には該支持手段が係止支持されるように挿通され、該支持手段の上端部が該装着手段の前部に回動自在に取付けられてなる装置であり、作業者が該載置部の上面に腕を載置して作業を行なうことができるようにしている。
特許文献5に係る発明は、作業者の胴体に固定される胴体固定部と、作業者の腕に装着される腕受けと、胴体固定部の一部と腕受けの作業者の肩側の一端部近傍とを接続し、作業者の腕の動きにあわせて、腕受けの胴体固定部に対する姿勢変化を許容する連結機構と、胴体固定部と腕受けとの間に設けられ、作業者が肘を所定以上胴体側に寄せた状態又は前記作業者が肘を所定以上胴体から遠ざけた状態で腕受けの胴体固定部に対する姿勢を抗重力的に維持し、作業者の腕を支持する姿勢維持機構と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-71161号公報
【特許文献2】特開2001-187076号公報
【特許文献3】特許2721438号公報
【特許文献4】特開2004-298971号公報
【特許文献5】特開2014-239674号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ラクベスト」株式会社クボタ
【非特許文献2】「腕楽っく」株式会社ニッカリ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、装置の装着がやや面倒で、腕を支える力がコイルスプリングのみに依存しているため充分に腕を支えられない場合もある。
特許文献2では、弾性力を用いて腕を支持するため、器具を装着したまま腕を下ろす場合には、弾性力に抗する力を掛けて腕を下ろさなければならず、負担が大きい。特許文献3では、腕の長さの異なる不特定の人に対応させることができず、また腕を載置するためのまくら手段を必要に応じて取り外すことができないため時として他の仕事の邪魔となる場合があるという難点があり、さらに腕を載置するためのまくら手段の高さをより簡便に上下に調整可能とできない。また、特許文献4においては、腕を下ろす場合には載置部の上面から腕を外すことになるが、そのまま作業するには載置部の存在が邪魔となる。また、特許文献5は、非特許文献2に係る「腕楽っく」(株式会社ニッカリ)の開発に係る発明であり、上記の説明のとおり、手動位置決めにより腕の自重は支えるが、その都度角度調整が必要なため、利便性に欠ける。また、ロックが外れやすい、マジックテープによる固縛がきついため、血流が悪くなり、腕の支え感は遊びがないという欠点がある。
さらに、特許文献1~5において提案された装置の場合、いずれも作業者の腕が腕支持部で固定されるため、装着したまま誤って倒れた場合、腕が骨折する可能性が高く、安全面で問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、腕を上げた状態での作業において装着しても安全で、かつ、作業者の作業負担の軽労化と効率化に寄与する上肢持上げ補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上肢持上げ装置は、装着者の上肢を上げての作業を補助する上肢持上げ補助装置であって、装着者の上腕に装着される腕受けと、装着者が上肢を上げた状態を抗重力的に維持して上腕を支持する上肢支持体と、上肢支持体を上下方向に回転可能にするラチェット機構と、上肢支持体とラチェット機構とを連結する連結体と、ラチェット機構を装着者の肩付近に配置するために、ラチェット機構を収容するラチェットケースに一端を固定する支持板と、支持板の他端を、装着者の腰横の位置に固定して胴体に装着する胴ベルトと、を備え、
ラチェット機構は、ラチェットケースに設けられた収容空間に摺動自在に嵌挿されラチェット軸で軸支された状態で摺動方向に摺動するラチェットボスと、該ラチェットボスの周縁に設けられた複数のラチェット山が噛み合い可能に設けられたラチェット谷を備えるラチェット台と、ラチェット機構の噛み合い又は解除を担うリングプレートと、からなり、
リングプレートは、略リングの形状でラチェットボスをすっぽり嵌め込める径の円孔を備え、該略リングの一部で上肢支持体と連結する側に突出部を備え、ラチェット台を嵌合したラチェットケースには凹部が形成されており、ラチェット台とラチェットケースとの間には、復帰用板ばねを備え、ラチェット台の該凹部にラチェット台の中心孔を嵌合し、ラチェット台の中心と回転を規制し、該復帰用板ばねは、ラチェット台とラチェットボスとの嵌合方向に付勢し、さらに、ラチェットボスは、円柱形状でその周の一部に袖部を備え、該袖部においてスリーブパイプと皿ばねを介してリングプレートに揺動可能に固定され、リングプレートの動きに合わせてラチェット軸の長さ方向を移動することが可能で、該移動によりラチェット機構の噛み合い及び解除を可能にすることを特徴とすることを特徴とする。
【0010】
なお、上肢支持体はリングプレートに連結する端にリングプレート側連結部を備え、該リングプレート側連結部がリングプレートの突出部にガイドを挟持しかつ上肢支持体回転軸に軸止され連結され、リングプレート側連結部はその一端が円柱に刳り貫かれた空洞を備え、該空洞内部にガイドローラとガイドローラ受け部と圧縮ばねを備え、該ガイドローラはガイドに当接する面を移動することで該ガイドローラ受け部を押し引きして該圧縮ばねの付勢を受けるようにするとよい。
【0011】
また、ラチェットボスがラチェット軸に軸支された後、ラチェットインサートはラチェットボスの中央の所定の窪みに嵌め合わされラチェット軸に回転可能に軸支される。鉤ばねは、ラチェットボスの中央の所定の窪みに嵌め合わされたラチェットインサートの周面に設けられた突起に引っ掛けられるように取り付けられる。
【0012】
連結体のガイドの形状は角柱状であり、上肢支持体のガイドローラを当接する位置に凹部を備えるようにすると、上肢支持体がぐらつかず好適である。
【0013】
さらに、ラチェット台に設けられた複数のラチェット谷の谷と谷の間にスペースを配置するようにするとよい。またさらに、ラチェット山の内角と、ラチェット山を受けるラチェット谷の外角を、ラチェット山が摺動する方向に対して、噛み合う面が数度の角度減じると、ラチェット機構の解除をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る上肢持上げ補助装置によれば、上肢支持体により、上肢を持ち上げた時の腕の自重をサポートして労力を大きく軽減することができる。
本発明に係る上肢持上げ補助装置によれば、腕を上げた状態での作業において装着しても安全で、かつ、作業者の作業負担の軽労化と効率化に寄与する。また、不安定な姿勢で長時間作業による、腕の疲労も軽減し、作業終了後においての肩凝り等も軽減できる。
また、ラチェット機構の解除をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xの外観を示す全体図である。
【
図2】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、上肢支持体とラチェット機構1の一部と腕受けの構成を示す図である。
【
図3】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、上肢支持体がラチェット機構1によって回動する様子を示す図である。
【
図4】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xを装着者が装着し、上肢が持ち上げられる様子を示す図である。
【
図5】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、上肢支持体とラチェット機構の主要部の内部構造を示す図である。
【
図6】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、ラチェット機構の主要な部品を示す図である。
【
図7】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、ラチェット機構の固定及び解除の状態を示す図である。
【
図8】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、ラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いに関する図である。
【
図9】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、リングプレートの揺動構造を示す図である。
【
図10】本発明に係るラチェット機構の噛み合い状態から解除状態に至る動作を示す図である。
【
図11】本発明に係るラチェット機構の解除状態から噛み合い状態に至る動作を示す図である。
【
図12】本発明に係る上肢持上げ補助装置Xを装着者が装着し、ラチェット機構の固定状態(a)と解除状態(b)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施例に限られるものではない。
なお、本明細書に記載する「軽労化」技術とは、労働の負担や疲労を軽減することで、労働による傷病リスクを下げるとともに、主体的な動きをサポートすることで、働き続けられる身体能力を維持するためのアシスト技術をいう。
また、本明細書において、図面の一部は両腕サポート用上肢持上げ補助装置として描かれているが、必ずしも両腕サポート用に限定されず、片腕サポート用として同じ構造で製作することができることも留意されたい。
【実施例0017】
実施例1を詳細に説明する。
【0018】
図1を参照する。
図1は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xの外観を示す全体図である。
図1に示すとおり、上肢持上げ装置Xは、装着者の上肢を上げての作業を補助する装置であって、概して、装着者の上腕に装着される腕受け3と、装着者が上肢を上げた状態を抗重力的に維持して上腕を支持する上肢支持体2と、上肢支持体を上下方向に回転可能にするためのラチェット機構1を備えるラチェットケースCと、ラチェットケースCを装着者の肩付近に配置するために一端をラチェットケースCに固定する支持板5と、支持板5の他端を装着者の腰横の位置に固定して胴体に装着する胴ベルト6とを備える。
支持板5は、留め具50とヒンジ51により胴ベルト6に固定し、留め具50を外すことにより支持板5を胴ベルト6に対してヒンジ51を支軸にして回動させるようにしてもよい。この構造により、梱包の際の利便性が高まる。支持板は、アルミフレーム等を用いることができるが頑丈で軽い素材を用いるとよいが、特に限定されない。
ラチェット機構1は、ラチェットケースCに設けられた収容空間に摺動自在に嵌挿された状態で摺動方向に摺動するラチェットボス(図示していない)と、ラチェットボスに設けられた複数のラチェット山が噛合い可能に設けられたラチェット谷を備えるラチェット台(図示していない)とからなる。
また、上肢支持体2は、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14にリングプレート側連結部20を介して軸支連結され、上肢支持体回転軸204により上肢支持体2が左右に回動する。また、上肢支持体2はリングプレート側連結部20が円柱に刳り貫かれた空洞を備え、該空洞内部にガイド200とガイドローラ受け部202と圧縮ばね203とを備える。後述するとおり、上肢支持体2の左右への動作に対して、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を移動するが、該移動に伴いガイドローラ受け部202を押し引きし圧縮ばね203の付勢を受ける。
さらに、上肢持上げ装置Xは、首にかけて胴ベルト6に装着される吊りバンド(図示していない)を備えるようにしてもよい。吊りバンドには、長さ調節機構を設け、当該長さ調節機構によって吊りバンドの長さが調節できるようにしてもよい。また、胴ベルト6にも該周長を調節するための調節機構を設けてもよい。
【0019】
図2を参照する。
図2は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、上肢支持体2とラチェット機構1と腕受け3の構成を示す図である。
ラチェット機構1は、ラチェットケースCに設けられた収容空間に摺動自在に嵌挿されラチェット軸12に軸支されて摺動方向に摺動するラチェットボス10と、ラチェットボス10に設けられた複数のラチェット山100が噛合い可能に設けられたラチェット谷を備えるラチェット台(図示していない)とからなる。
上肢支持体2は、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14にリングプレート側連結部20を介して連結している。
リングプレート14は、ラチェットボス10の袖部110に揺動可能に固定されている。ラチェットボス10は、ラチェットケースに軸止され、リングプレート14の動きに合わせてラチェット軸12の長さ方向を移動することが可能で、この動きにより前述のラチェット山100とラチェット谷130の噛み合い及び解除を可能にする。
上肢支持体2は、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14にリングプレート側連結部20を介して軸支連結され、上肢支持体回転軸204により上肢支持体2が左右に回動する。
また、ラチェットボス10がラチェット軸12に軸支された後、ラチェットインサート11はラチェットボス10の中央の所定の窪みに嵌め合わされラチェット軸12に回転可能に軸支される。鉤ばね16は、ラチェットボス10の中央の所定の窪みに嵌め合わされたラチェットインサート11の周面に設けられた突起に引っ掛けられるように取り付けられている。
図2には示していないが、また、上肢支持体2はリングプレート側連結部20が円柱に刳り貫かれた空洞を備え、該空洞内部にガイド200とガイドローラ受け部202と圧縮ばね203とを備える。後述するとおり、上肢支持体2の左右への動作に対して、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を移動するが、該移動に伴いガイドローラ受け部202を押し引きし圧縮ばね203の付勢を受ける。
腕受け3は腕受けプレート30と腕押え31とからなり、上肢支持体2の腕受け側連結部21を該ヒンジベース4を介して腕受けプレート30の底面に固定するようにすれば、装着者の上腕の動きに自由度を加えることができる。
【0020】
図3及び4を参照する。
図3は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、上肢支持体2がラチェット機構1によって回動する様子を示す図である。
図4は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xを装着者が装着し、上肢が持ち上げられる様子を示す図である。
図3においては、装着者の右手の動きを示しており、下方に示す上肢支持体2と腕受け3は一点鎖線で示し、上方に動いた上肢支持体2と腕受け3は点線で示している。
図3により、上肢支持体2が上下方向に回動することを理解することができるであろう。
図4においては、装着者の左手の動きを示しており、(a)は上肢支持体2は下方にあり、(b)は上肢支持体2が上方に向けて上げられ、(c)は上肢はほぼ万歳の姿勢に近い状態を示している。前述したとおり、果樹等の袋掛け作業においては、作業者は、肩の高さより腕を上げた状態で長時間作業しなければならないが、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xが作業者の上肢を支持できることが理解できるであろう。
【0021】
図5を参照する。本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、上肢支持体とラチェット機構の主要部の内部構造を示し、
図5(a)はラチェットケースを上から見た平面の内部構造、
図5(b)は側面の内部構造を示している。
図5(a)を参照する。ラチェット機構1は、ラチェットケースCに設けられた収容空間に摺動自在に嵌挿されラチェット軸12に軸支されて摺動方向に摺動するラチェットボス10と、ラチェットボス10に設けられた複数のラチェット山100が噛合い可能に設けられたラチェット谷を備えるラチェット台(図示していない)とからなる。
図5(a)においては、ラチェット山100とラチェット谷130とは噛み合っている状態を示しており、便宜的にこの噛み合いは10+130の符号を付して示している。また、ラチェットケースCは、内装部品を収容するブラケットであって、開口縁C11、C12と、リンクプレート14の自由端側に内溝C01、C02を備える。
また、上肢支持体2は、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14にリングプレート側連結部20を介して連結している。後述するが、リングプレート14は、ラチェットボス10の袖部110に揺動可能に固定されている。
上肢支持体2は、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14にリングプレート側連結部20を介して軸支連結され、上肢支持体回転軸204により上肢支持体2が左右に回動する。また、上肢支持体2はリングプレート側連結部20が円柱に刳り貫かれた空洞を備え、該空洞内部にガイド200とガイドローラ受け部202と圧縮ばね203とを備える。後述するとおり、上肢支持体2の左右への動作に対して、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を移動するが、該移動に伴いガイドローラ受け部202を押し引きし圧縮ばね203の付勢を受ける。
図5(b)を参照する。
図5(b)はラチェット機構1の側面の内部構造を示しているが、ラチェットボス10がラチェットケースCに設けられた収容空間に摺動自在に嵌挿され、ラチェット軸12に軸支されて摺動方向に摺動する。そして、ラチェット山100がラチェット谷130(図示していない)と噛み合うときの摺動方向である噛合い方向にラチェットボス10を付勢するラチェット付勢力を発生する鉤ばね16があり、鉤ばね16は、ラチェット収容穴17に嵌め込まれて着座させるラチェットインサート11に取り付けられる。
上肢支持体2は、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14にリングプレート側連結部20を介して連結している。リングプレート側連結部20は、上肢支持体2の一端にガイド200を挟持し連結される。後述するが、リングプレート14は、ラチェットボス10の袖部110に揺動可能に固定されている。
図5(a)の説明と重複するが、上肢支持体2は、ラチェット機構1の噛み合い又は解除を担うリングプレート14にリングプレート側連結部20を介して軸支連結され、上肢支持体回転軸204により上肢支持体2が左右に回動する。また、上肢支持体2はリングプレート側連結部20が円柱に刳り貫かれた空洞を備え、該空洞内部にガイド200とガイドローラ受け部202と圧縮ばね203とを備える。後述するとおり、上肢支持体2の左右への動作に対して、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を移動するが、該移動に伴いガイドローラ受け部202を押し引きし圧縮ばね203の付勢を受ける。なお、ガイド200は略角柱形状であり、ガイドローラ201を当接する位置に凹部を備える。ガイドローラ201の形状は、ガイド200の窪みに嵌めることができかつ転動することができる形状であればよく、球状、円柱状、楕円柱状のいずれでもよい。
【0022】
図6を参照する。本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、ラチェット機構1のうち、回転する側の主要な部品を示す図である。
図6には、図面に向かって上から、ラチェットボス10、ラチェットインサート11と鉤ばね16、リングプレート14、ラチェット台13をそれぞれ示している。
まず、ラチェットボス10は、ラチェットケースCに設けられた収容空間内に摺動自在に嵌挿され、ラチェット軸12により軸支される。ラチェットボス10には複数のラチェット山100が図面に向かって周縁に設けられている。
ラチェットボス10がラチェット軸12に軸支された後、ラチェットインサート11はラチェットボス10の中央の所定の窪みに嵌め合わされラチェット軸12に回転可能に軸支される。鉤ばね16は、ラチェットボス10の中央の所定の窪みに嵌め合わされたラチェットインサート11の周面に設けられた突起に引っ掛けられるように取り付けられている。したがって、鉤ばね16による付勢力により、ラチェットボス10のラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いに対して、摺動方向とは逆方向への後退を規制することができる。
リングプレート14は、名前のとおり略リング状でラチェットボス10をすっぽり嵌め込める径の円孔を備え、略リングの一部に突出部140を備え、ここでラチェットボス10の袖部110に揺動可能に固定されている。さらに、突出部140の先端でリングプレート側連結部20に連結されている。
ラチェット台13は、ラチェットケースCの内部においてラチェットボス10に対向する位置に設けられる。ラチェット台13にはラチェットボス10のラチェット山100と噛み合う周方向に沿ったラチェット谷130を設けている。詳細には、ラチェット台13を嵌合したラチェットケースCの所定の位置に凹部が形成され、ラチェット台13と当該ラチェットケースCとの間には、復帰用板ばねS(
図7を参照)を備え、ラチェット台13の凹部にラチェット台13の中心孔を嵌合し、ラチェット台13の中心と回転を規制し、復帰用板ばねS(
図7を参照)は、ラチェット台13とラチェットボス10との嵌合方向に付勢する。なお、凹部は円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。
【0023】
図7を参照する。
図7は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、ラチェット機構1の固定及び解除の状態を示し、ラチェットボス10とラチェット台13を示す図である。
ラチェット機構1において、腕上げ時には、ラチェットボス10のラチェット山100がラチェット谷130と噛み合っても上方には摺動可能で所望の位置まで自在に摺動し、その所望の位置でラチェット機構1が噛み合い状態になって上肢を抗重力保持することができ、一方、腕下げ時には、ラチェット山100がラチェット谷130との噛み合いを解除する構造を有することが重要である。
本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、ラチェットボス10は、ラチェットケースCに設けられた収容空間内に摺動自在に嵌挿され、ラチェット軸12により軸支される。ラチェットボス10の周縁には複数のラチェット山100が形成されている。他方、ラチェットケースCにおけるラチェットボス10の収容空間内には、ラチェット山10に対向する位置にラチェット台13が設けられ、ラチェット台13には、ラチェット山100と噛み合う面にラチェット谷130を設けている。
また、
図7に示すとおり、ラチェット台13を嵌合したラチェットケースCの所定の位置に円筒部が形成され、ラチェット台13と当該ラチェットケースCとの間には、復帰用板ばねSを備え、ラチェット台13の円筒部にラチェット台13の中心孔を嵌合し、ラチェット台13の中心位置を規制し、復帰用板ばねSは、ラチェット台13とラチェットボス10との嵌合方向に付勢する。すなわち、ラチェットボス10の摺動方向において、ラチェット山100がラチェット谷130に噛み合う際に復帰用ばねを押し下げてラチェット谷が下がり、復帰用ばねの付勢により元の位置に戻るを繰り返し、所望の位置まではラチェットボス10は摺動することができるのである。
上肢持上げ補助装置Xを装着した装着者が腕を上げるときは、ラチェット台13がこの復帰用板ばねSを押し下げることにより、ラチェット機構が噛み合ってもラチェット谷130が復帰用板ばねSにより下がって空転し、上肢支持体2がスムーズに回動して所定の位置まで上がる。腕が所望の位置まで上げられ、装着者が腕を下げようとしても、ラチェット機構が噛み合い、上肢を抗重力保持することが可能になる。一方、腕下げ時には、ラチェット山100がラチェット谷130との噛み合いを解除する機構として、後述するとおり、装着者が腕を内側に移動することによって、上肢支持体2の回動がリングプレート14を揺動させ、この揺動によりラチェット機構1を解除する。
【0024】
図8を参照する。
図8は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、ラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いに関する図である。
前述したとおり、ラチェット機構1において、ラチェットボス10がラチェット軸12に軸支された後、ラチェットインサート11はラチェットボス10の中央の所定の窪みに嵌め合わされラチェット軸12に回転可能に軸支される。鉤ばね16は、ラチェットボス10の中央の所定の窪みに嵌め合わされたラチェットインサート11の周面に設けられた突起に引っ掛けられるように取り付けられている。
装着者が所望の位置まで腕を上げるまでは、ラチェット山100がラチェット谷130と噛み合わずに、鉤ばね16の付勢力を受けながらも、ラチェットボス10は楽に摺動することができ、ラチェット機構1に連動して上肢支持体2も回動することができる。そして、一端、上肢支持体2が所望の位置に来てと、ラチェット山100とラチェット谷130が噛み合うと腕降ろす方向への規制が鉤ばね16によってもたらされることになる。
しかしながら、ラチェット山100とラチェット谷130の噛み合いに隙間がない場合、ラチェット機構が解除しにくいことがある。そのため、
図8(a)及び(b)に示すように、ラチェット谷130の谷と谷の間にスペースを配置することで、ラチェット機構1の解除に、ラチェット山100がラチェット130から離隔する際にこのスペースの距離分ずれてラチェット機構1の解除が容易になる。スペースは任意に設計できる。
さらに、
図8(c)に示すとおり、ラチェット山100の内角と、ラチェット山を受けるラチェット谷130の外角を、ラチェット山が摺動する方向に対して、噛み合う面が数度の角度減じるように設計するとよい。なお、実施例1において、両者の角度0.5~10度が好ましいが、限定されない。
【0025】
図9を参照する。
図9は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xにおいて、リングプレート14の揺動構造を示す図である。
図6に示したとおり、リングプレート14は、略リング状でラチェットボス10をすっぽり嵌め込める径の円孔を備え、さらに略リングの一部に突出部140を備え、ここでラチェットボス10の袖部110に揺動可能に固定される。さらに、リングプレート14は、突出部140の先端で上肢支持体2のリングプレート側連結部20に連結されている。
リングプレート14は、上肢支持体2のリングプレート側連結部20に連結する近傍において、ラチェットボス10の袖部110に固定される。固定にあたっては、リングプレート14の突出部140にピン孔142を、ラチェットボス10にピン孔112を設け、該ピン孔112、142に、スリーブパイプSPを嵌め込んだピンAXを挿通し両側からボルトBを締めて固定する。なお、リングプレート14とボルトBとの間、及び、リングプレート14とラチェットボス10の袖部110との間の両方に皿ばねDSを嵌め込む。
なお、
図9において、リングプレート14の長さ方向の中央線とリングプレート側連結部20の上肢支持体回転軸204の中心を結んだ点線と、ピンAXの長さ方向の中央線とを結んだ交点が揺動中心Mであり、リングプレート14は矢印方向に揺動する。
ラチェットボス10は、リングプレート14のピン孔142に嵌められ固定されているので、リングプレート14の動きに合わせてラチェット軸12の長さ方向を移動することが可能である。そうすると、リングプレート14が揺動すれば、ラチェットボス10をラチェット軸12の長さ方向に移動を促す。結果として、リングプレート14の揺動により前述のラチェット山100とラチェット谷130の噛み合い及び解除を可能にする。ラチェット機構1の噛み合い及び解除の詳細は、
図10及び
図11において説明する。
【0026】
図10は、本発明に係るラチェット機構の噛み合い状態から解除状態に至る動作を示す図である。なお、
図8は装着者の右腕に装着する上肢持上げ補助装置Xを示している。左側の動作は、右側の逆であるので、説明は省略する。
図10(a)は、
図5(a)と同様にラチェットボス10のラチェット山100とラチェット台13のラチェット谷130は噛み合って固定されている状態100+130を示している。
図10(b)~(d)は、ラチェットボス10のラチェット山100とラチェット台13のラチェット谷130が外れてラチェット機構1が解除される動作を示している。
図10(a)を参照する。
図10(a)は、装着者が上肢持上げ補助装置Xを装着し、腕を上げた状態と考えてよい。
図10(a)に示すとおり、ラチェットボス10のラチェット山100とラチェット台13のラチェット谷130は噛み合って固定された状態100+130で、リングプレート14の他端は、ラチェットケースCの内部に設けられた内溝壁C02に当接していることが理解できるであろう。
図10(a)の状態において、上肢支持体2は、上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して下方向に回動することができ、ラチェット機構が解除されることはない。したがって、装着者は、腕を上げたまま、上肢持上げ補助装置Xの上肢持上げ補助を得て外方向には略自由に動かすことができる。
図10(b)を参照する。装着者が腕を上げた状態から腕を下げたい場合は、右腕を内側方向に動かすとラチェット機構が解除される。すなわち、
図10(b)は、上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して上方向略15度回動している状態を示す図である。上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して上方向略15度回動すると、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を移動するが、該移動に伴いガイドローラ受け部202を押し引きし圧縮ばね203の付勢を受ける。この状態で、リングプレート14の他端は、ラチェットケースCの内部に設けられた内溝壁C02に当接したままで、上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に回動している。上肢支持体2が画面上側に移動するのに合わせて、リングプレート14が揺動する。そうすると、この揺動は、ラチェットボス10をラチェット軸12の図面上方向に移動を促す。結果として、リングプレート14の揺動により、ラチェットボス10がラチェット台13から離隔し、ラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いが離れ、ラチェット機構が解除される。
上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対してさらに上方向、すなわち略30度回動している状態を示す図が、
図10(c)である。上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して上方向略30度回動すると、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を移動するが、該移動に伴いガイドローラ受け部202を矢印方向に押して圧縮ばね203が圧縮する。この状態で、リングプレート14の他端は、ラチェットケースCの内部に設けられた内溝壁C02を支点にするものの、リングプレート14の一端(連結体側)が開口縁C11に当接し、上肢支持体2はこれ以上回動することはできない。上肢支持体2が画面上側に移動するのに合わせて、リングプレート14が揺動する。そうすると、この揺動によりラチェットボス10をラチェット軸12の図面上方向に移動を促す。結果として、リングプレート14の揺動により、ラチェットボス10がラチェット台13から離隔し、ラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いが離れ、ラチェット機構が解除される。
図10(d)を参照する。実施例1においては、上肢支持体2は30度を超えると、それ以上回動することができないように設計しており、上肢支持体2が画面上側に移動するのに合わせて、リングプレート14が揺動し、揺動機構を構成する皿ばねDSの付勢により、リングプレート14の他端は、ラチェットケースCの内部に設けられた内溝壁C01の方に移動する。
【0027】
図11を参照する。
図11は、本発明に係るラチェット機構の解除状態から噛み合い状態に至る動作を示す図である。
図11(a)は、ラチェット機構の解除状態である。
図11(b)~(d)は、ラチェットボス10のラチェット山100とラチェット台13のラチェット谷130が噛み合うラチェット機構噛み合い状態に至る動作を示している。
図11(a)を参照する。
図11(a)は、ラチェット機構の解除状態であり、
図10(d)と同一の状態を示す。装着者が上肢持上げ補助装置Xを装着し、腕を上げた状態を解除し、腕を下に降ろした状態と考えてよい。
図11(b)を参照する。
図11(b)は、上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して下方向略15度回動している状態を示す図である。上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して下方向略15度回動すると、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を図面に向かって下方向に移動し、ガイドローラ受け部202を矢印方向に押し圧縮ばね203が圧縮する。この状態で、リングプレート14の他端は、ラチェットケースCの内部に設けられた内溝壁C01を支点にして、上肢支持体2が回動している。上肢支持体2が画面下側に移動するのに合わせて、リングプレート14が揺動する。そうすると、この揺動により、ラチェットボス10をラチェット軸12の図面下方向に移動を促す。結果として、リングプレート14の揺動により、ラチェットボス10がラチェット台13に近づき、ラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いが行われ、ラチェット機構が固定される。
図11(c)を参照する。
図11(c)は、上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して下方向略60度回動している状態を示す図である。上肢支持体2が上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して下方向略60度回動すると、ガイドローラ201は、ガイド200への当接する面を図面に向かってさらに下方向に移動し、ガイドローラ受け部202を矢印方向に押し圧縮ばね203が圧縮する。この状態で、リングプレート14の他端は、ラチェットケースCの内部に設けられた内溝壁C01を支点にするものの、リングプレート14の一端(連結体側)が開口縁C12に当接し、上肢支持体2はこれ以上回動することはできない。
図11(b)と同様に、上肢支持体2が画面下方向に移動するのに合わせて、リングプレート14が揺動する。そうすると、この揺動により、ラチェットボス10をラチェット軸12の図面下方向に移動を促す。結果として、リングプレート14の揺動により、ラチェットボス10がラチェット台13に近づき、ラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いが行われ、ラチェット機構が固定される。
図11(d)を参照する。
図11(d)は、
図10(a)と同一であり、装着者が上肢持上げ補助装置Xを装着し、腕を上げた状態と考えてよい。
図11(d)に示すとおり、上肢支持体2が画面上方向に移動するのに合わせて、リングプレート14が揺動し、揺動機構を構成する皿ばねDSの付勢により、リングプレート14の他端は、ラチェットケースCの内部に設けられた内溝壁C02の方に移動する。
図11(d)の状態において、上肢支持体2は、上肢支持体回転軸204を支軸に図面に対して下方向に回動することができ、ラチェット機構が解除されることはない。したがって、装着者は、腕を上げたまま、上肢持上げ補助装置Xの上肢持上げ補助を得て外方向には略自由に動かすことができる。
【0028】
リングプレート側連結部20のガイド200の形状は角柱状であり、上肢支持体2のガイドローラ201を当接する位置に凹部を備えるようにすると、上肢支持体2がぐらつかず好適である。
また、
図11、12に示す、上肢支持体2の回動限界角度は特に限定したものではなく、所望の角度に設計することができる。
【0029】
図12は、本発明に係る上肢持上げ補助装置Xを装着者が装着し、ラチェット機構の固定状態(a)と解除状態(b)を示す図である。
図12(a)は、ラチェット機構1により、ラチェットボス10の摺動が固定されている状態を示している。すなわち、ラチェットボス10のラチェット山100とラチェット台13のラチェット谷130は噛み合って固定されている。装着者が上肢持上げ補助装置Xを装着し、腕を上げた状態と考えてよい。
装着者が所望の位置まで腕を上げるまでは、ラチェット山100がラチェット谷130と噛み合わずに、ラチェットボス100が摺動することができ、ラチェット機構1に連動して上肢支持体2も回動することができる。そして、装着者が作業に好適な位置まで腕を上げた判断し脇をやや広げると、上肢支持体2がラチェットケースCに収容されたラチェットボス10をラチェット台13方向に押しやることになる。そうすると、ラチェットボス10がラチェット台13に押しやられ、ラチェット山100がラチェット谷130と噛み合う(
図12(a))。ラチェット谷130はラチェット台13側にあるが、ラチェット台13は、ラチェットケースCの外装一部に固定しているため、ラチェットボス10の回動はここで停止することになる。
他方、
図12(b)に示すとおり、装着者が腕を上げて作業をしている状態から、上肢持上げ補助装置Xによる上肢支持が不要であると判断した場合において、装着者が両腕の脇を内方向に狭めると、上肢支持体2がラチェットケースCに収容されたラチェットボス10を装着者の腰の方向に動かすことになる。そうすると、ラチェットボス10がラチェット台13から離隔し、ラチェット山100とラチェット谷130との噛み合いが離れ、ラチェットボス10の摺動の制限が解除される。このように、装着者の脇を広げ又は閉じる行為により、上記ラチェット機構1の固定又は解除が行われるが、ラチェットボス10が収容されるラチェットケースCにおいて、リングプレート14の他端が当接する内溝壁C01、C02が支点となるとともに、リングプレート14の揺動機構が合いまって、ラチェット機構1の開閉を実現していることが理解されるであろう。
このように、上肢持上げ補助装置Xを装着した装着者が腕を上げるときは、ラチェット台13が前述した復帰用板ばねSの押し下げにより、ラチェット機構が噛み合っても復帰用板ばねSによりラチェット谷130が下がって空転し、上肢支持体2がスムーズに回動して所定の位置まで上がる。腕が所望の位置まで上げられ、装着者が腕を下げようとしても、ラチェット機構が噛み合い、上肢を抗重力保持することが可能になる。一方、腕下げ時には、ラチェット山100がラチェット谷130との噛み合いを解除する。
また、装着者の動作として、腕を内側に移動することによって、上肢支持体2の回動がリングプレート14を揺動させ、この揺動によりラチェット機構1を解除がされ、他方、腕を外側方向に移動してもラチェット機構1は解除されない仕組みであることを
図12は示している。