(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083559
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】スリーブを用いた配管埋込構造体の施工方法及び配管埋込構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 5/48 20060101AFI20220530BHJP
E04G 15/06 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
E04B5/48 Z
E04G15/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194940
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】596022927
【氏名又は名称】寿産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊幸
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150HF09
2E150HF25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】配管が貫通する床の下の階からの高所作業を必要とすることなく、床上の階での作業により通し穴と配管との間の隙間を簡単且つ容易に塞いで、配管を埋め込み可能とする。
【解決手段】円筒体の底部の開口端の外周に複数の取付片26と内周に複数の係止片28とが設けられたスリーブ10と、スリーブ10の内径に応じた外径と配管18の外径に応じた内径を有するリング部材12を準備する。床下地14の所定位置にスリーブ10を配置し、コンクリートを打設することによりコンクリートスラブ(床版)20を形成する。スリーブ10内の底部に位置する床下地14に通し穴16を加工し、通し穴16に配管18を貫通させ、スリーブ10内を通った配管18にリング部材12を嵌め入れて係止片28に当接させ、通し穴16と配管18との間の隙間を塞ぎ、スリーブ10内に上側からモルタルを入れて配管18をスリーブ10内に埋込固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の床を貫通した配管を埋込配置する配管埋込構造体の施工方法であって、
所定の内径を有する円筒体の底部の開口端の外周に複数の取付片が設けられ、前記底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられたスリーブと、前記スリーブの内径に応じた外径と前記配管の外径に応じた内径を有するリング部材とを準備する第1工程と、
床下地の所定位置に前記スリーブを配置して前記取付片により固定する第2工程と、
前記スリーブの周囲を囲んで所定の建築材料を打設することにより所定の厚さの床版を形成する第3工程と、
前記床版に埋設された前記スリーブ内の底部に位置する前記床下地に通し穴を加工する第4工程と、
前記通し穴に配管を貫通させ、前記スリーブ内を通った前記配管に前記リング部材を前記スリーブの上部側から嵌め入れ、前記スリーブの底部側に位置する前記係止片に当接する位置に前記リング部材を配置して前記通し穴と前記配管との間の隙間を塞ぐ第5工程と、
前記スリーブ内に上部側から所定の建築材料を入れて前記配管を前記スリーブ内に埋込固定する第6工程と、
を備えたことを特徴とする配管埋込構造体の施工方法。
【請求項2】
請求項1記載の配管埋込構造体の施工方法に於いて、
前記スリーブの前記係止片は、隣接しあう係止片と前記スリーブの中心からなる中心角が等角度となるように前記開口端の内周の少なくとも3個所に設けられたことを特徴とする配管埋込構造体の施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配管埋込構造体の施工方法に於いて、
前記第1工程で準備する前記リング部材は、配管の外径の種類に応じた異なる内径を持つ複数種類のリング部材が予め準備されており、
前記第1工程は、その中から埋込設置する配管に応じたリング部材を選択することを特徴とする配管埋込構造体の施工方法。
【請求項4】
建築物の床を貫通した配管を埋込配置する配管埋込構造体の施工方法であって、
所定の内径を有する円筒体の底部の開口端の外周に複数の取付片が設けられ、前記底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられたスリーブと、前記スリーブの内径に応じた外径と前記配管の外径に応じた内径を有する2分割された分割リング部材とを準備する第1工程と、
床下地の所定位置に前記スリーブを配置して前記取付片により固定する第2工程と、
前記スリーブの周囲を囲んで所定の建築材料を打設することにより所定の厚さの床版を形成する第3工程と、
前記床版に埋設された前記スリーブ内の底部に位置する前記床下地に通し穴を加工する第4工程と、
前記通し穴に配管を貫通させて配置し、前記スリーブ内を通った前記配管に前記分割リング部材をスリーブの上部側から円環状に配置して嵌め入れ、前記スリーブの底部側に位置する前記係止片に当接する位置に前記分割リング部材を配置して前記通し穴と前記配管との間の隙間を塞ぐ第5工程と、
前記スリーブ内に上部側から所定の建築材料を入れて前記配管を前記スリーブ内に埋込固定する第6工程と、
を備えたことを特徴とする配管埋込構造体の施工方法。
【請求項5】
請求項4記載の配管埋込構造体の施工方法に於いて、
前記スリーブの前記係止片は、隣接しあう係止片と前記スリーブの中心からなる中心角が等角度となるように前記開口端の内周の少なくとも4個所に設けられ、
前記第5工程で前記配管に前記分割リング部材を円環状に配置して嵌め入れ前記スリーブの底部側に配置した場合に、前記分割リング部材の各々が少なくとも2箇所の前記係止片に当接して位置決めされることを特徴とする配管埋込構造体の施工方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の配管埋込構造体の施工方法に於いて、
前記第1工程で準備する前記分割リング部材は、配管の外径の種類に応じた異なる内径を持つ複数種類の分割リング部材が予め準備されており、
前記第1工程は、その中から埋込設置する配管に応じた分割リング部材を選択することを特徴とする配管埋込構造体の施工方法。
【請求項7】
請求項1乃至6何れかに記載の配管埋込構造体の施工方法に於いて、
前記第2工程は、前記所定の建築材料としてコンクリートを打設し、前記床版としてコンクリートスラブを形成し、
前記第6工程は、前記所定の建築材料としてモルタルを入れて前記配管を前記スリーブ内に埋込固定することを特徴とする配管埋込構造体の施工方法。
【請求項8】
建築物の床を貫通した配管を埋込配置する配管埋込構造体であって、
所定の内径を有する円筒体の底部の開口端の外周に複数の取付片が設けられ、前記底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられたスリーブと、
所定位置に配置された前記スリーブの底部が前記取付片により固定され、前記スリーブ内に開口する通し穴が形成された床下地と、
前記スリーブの周囲を囲んで前記床下地の上に所定の建築材料を打設することにより形成された所定の厚さを有する床版と、
前記スリーブの内径に応じた外径と前記配管の外径に応じた内径を有し、前記床下地の前記通し穴を貫通した前記スリーブ内を通る前記配管に嵌め入れられ、前記スリーブの底部側に位置する前記係止片に当接して前記通し穴と前記配管との隙間を塞ぐリング部材と、
前記リング部材で底部側が塞がれた前記スリーブ内に所定の建築材料を入れて前記配管を埋込固定する埋設固定部と、
を備えたことを特徴とする配管埋込構造体。
【請求項9】
請求項8記載の配管埋込構造体に於いて、
前記スリーブの前記係止片は、隣接しあう係止片と前記スリーブの中心からなる中心角が等角度となるように前記開口端の内周の少なくとも3個所に設けられたことを特徴とする配管埋込構造体。
【請求項10】
請求項8記載の配管埋込構造体に於いて、
前記リング部材は、2分割された分割リング部材であり、
前記スリーブの前記係止片は、隣接しあう係止片と前記スリーブの中心からなる中心角が等角度となるように前記開口端の内周の少なくとも4個所に設けられ、前記配管に前記分割リング部材を円環状に配置して嵌め入れ前記スリーブの底部側に配置した場合に、前記分割リング部材の各々が少なくとも2箇所の前記係止片に当接して位置決めされることを特徴とする配管埋込構造体。
【請求項11】
請求項8乃至10何れかに記載の配管埋込構造体に於いて、
前記床版は、前記所定の建築材料としてコンクリートを打設したコンクリートスラブであり、
前記埋込固定部は、前記所定の建築材料としてモルタルを入れて前記配管を前記スリーブ内に埋込固定したことを特徴とする配管埋込構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床に配管を貫通した状態で埋込配置するスリーブを用いた配管埋込構造体の施工方法及び配管埋込構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルなどの建築物における各階の床を貫通して配管を配置する場合に、筒状のスリーブを使用して配管を埋込配置している。
【0003】
図12(A)は従来の配管埋込構造体を示す。従来の施工方法は、まず、デッキプレートなどの床下地14の配管貫通位置にスリーブ100を固定する。スリーブ100の固定は取付片102にボルト104を通して床下地14に固定する。次に、スリーブ100の周囲を囲むようにコンクリートを打設して所定の厚さのコンクリートスラブ(床版)20を形成する。次に、スリーブ100の上から内部の床下地14に溶断やドリル加工などにより通し穴16を形成する。次に、下の階から通し穴16及びスリーブ100の中を通して配管18を立上げ、床を貫通して配置させる。
【0004】
次に、配管18が貫通しているスリーブ100内にモルタルを入れて埋め込む作業を行うことになるが、スリーブ100の底部は通し穴16と配管18との間にリング状の隙間があるため、そのままではモルタルを入れることができない。そこで、従来の工法にあっては、
図12(B)示すように、スリーブ穴埋めに用いるシート部材106を使用し、床下地14の下面に開口した通し穴16と配管18との間の隙間を閉鎖し、この状態でスリーブ100の上部から内部にモルタルを入れ、配管18を埋込み固定するモルタル埋込固定部108を形成している。
【0005】
シート部材106は、矩形シートの中央に円形の開口があり、
図12(A)に示すように、中央で2枚のシート部材106に分割することができ、シート部材106はアルミ箔の一方の面に多重円に放射方向のラインを入れたスケール面が離脱自在に設けられ、裏側となる他方の面には粘着層が形成されてカバーシートで覆われている。
【0006】
通し穴16と配管18の間の隙間を塞ぐ場合には、分割したシール部材106のスケール面を利用して配管18の管径に応じた切込みを放射方向に入れ、カバーシートを剥がして粘着面を露出させ、隙間を両側から挟むように床下地14の下面に張り付け、続いて、切込みを入れた部分を配管18の周囲に押し付けるように貼り付け、これによって
図12(B)に示すように、隙間を塞ぎ、モルタルをスリーブ100内に入れてモルタル埋込固定部108を形成し、配管18を埋め込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の工法にあっては、スリーブ100内を貫通する配管をモルタルにより埋め込むため、床下地14の通し穴16と配管18との間の隙間をシール部材106で塞ぐ作業を、下の階での高所作業として行う必要があり、手間と時間がかかる問題がある。
【0009】
例えば、作業員が高所作業車を使用する作業となり、配管18の貫通場所は多岐にわたることから、高所作業車を移動させながら、天井面に位置する通し穴14と配管18との隙間をシール部材106の貼り付けで塞ぐ作業を繰り返す必要があり、手間と時間がかかる問題がある。
【0010】
本発明は、配管が貫通する床の下の階からの高所作業を必要とすることなく、床上の階での作業によりスリーブ底部の配管との間の隙間を簡単且つ容易に塞いで、スリーブ内を貫通する配管を埋め込み可能とするスリーブを用いた配管埋込構造体の施工方法及び配管埋込構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(配管埋込構造体の第1施工方法)
本発明は、建築物の床を貫通した配管を埋込配置する配管埋込構造体の施工方法であって、
所定の内径を有する円筒体の底部の開口端の外周に複数の取付片が設けられ、底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられたスリーブと、スリーブの内径に応じた外径と配管の外径に応じた内径を有するリング部材とを準備する第1工程と、
床下地の所定位置にスリーブを配置して取付片により固定する第2工程と、
スリーブの周囲を囲んで所定の建築材料を打設することにより所定の厚さの床版を形成する第3工程と、
床版に埋設されたスリーブ内の底部に位置する床下地に通し穴を加工する第4工程と、
通し穴に配管を貫通させ、スリーブ内を通った配管にリング部材をスリーブの上部側から嵌め入れ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接する位置にリング部材を配置して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐ第5工程と、
スリーブ内に上部側から所定の建築材料を入れて配管をスリーブ内に埋込固定する第6工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(スリーブのリング係止片)
スリーブの係止片は、隣接しあう係止片とスリーブの中心からなる中心角が等角度となるように開口端の内周の少なくとも3個所に設けられる。
【0013】
(配管に応じたリング部材の準備)
第1工程で準備するリング部材は、配管の外径の種類に応じた異なる内径を持つ複数種類のリング部材が予め準備されており、
第1工程は、その中から埋込設置する配管に応じたリング部材を選択する。
【0014】
(分割リングを用いた配管埋込構造体の第2施工方法)
本発明は、建築物の床を貫通した配管を埋込配置する配管埋込構造体の施工方法であって、
所定の内径を有する円筒体の底部の開口端の外周に複数の取付片が設けられ、底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられたスリーブと、スリーブの内径に応じた外径と配管の外径に応じた内径を有する2分割された分割リング部材とを準備する第1工程と、
床下地の所定位置にスリーブを配置して取付片により固定する第2工程と、
スリーブの周囲を囲んで所定の建築材料を打設することにより所定の厚さの床版を形成する第3工程と、
床版に埋設されたスリーブ内の底部に位置する床下地に通し穴を加工する第4工程と、
通し穴に配管を貫通させて配置し、スリーブ内を通った配管に分割リング部材をスリーブの上部側から円環状に配置して嵌め入れ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接する位置に分割リング部材を配置して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐ第5工程と、
スリーブ内に上部側から所定の建築材料を入れて配管をスリーブ内に埋込固定する第6工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
(スリーブのリング係止片による分割リング部材の位置決め)
スリーブの係止片は、隣接しあう係止片とスリーブの中心からなる中心角が等角度となるように開口端の内周の少なくとも4個所に設けられ、
第5工程で配管に分割リング部材を円環状に配置して嵌め入れスリーブの底部側に配置した場合に、分割リング部材の各々が少なくとも2箇所の係止片に当接して位置決めされる。
【0016】
(配管に応じた分割リング部材の準備)
第1工程で準備する分割リング部材は、配管の外径の種類に応じた異なる内径を持つ複数種類の分割リング部材が予め準備されており、
第1工程は、その中から埋込設置する配管に対応した分割リング部材を選択する。
【0017】
(コンクリートスラブとモルタル)
第2工程は、所定の建築材料としてコンクリートを打設し、床版としてコンクリートスラブを形成し、
第6工程は、所定の建築材料としてモルタルを入れて配管をスリーブ内に埋込固定する。
【0018】
(配管埋込構造体)
本発明は、建築物の床を貫通した配管を埋込配置する配管埋込構造体であって、
所定の内径を有する円筒体の底部の開口端の外周に複数の取付片が設けられ、底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられたスリーブと、
所定位置に配置されたスリーブの底部が取付片により固定され、固定されたスリーブ内の位置に開口する通し穴が形成された床下地と、
スリーブの周囲を囲んで床下地の上に所定の建築材料を打設することにより形成された所定の厚さを有する床版と、
スリーブの内径に応じた外径と配管の外径に応じた内径を有し、床下地の通し穴を貫通したスリーブ内を通る配管に嵌め入れられ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐリング部材と、
リング部材で底部側が塞がれたスリーブ内に所定の建築材料を入れて配管を埋込固定する埋設固定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(リング部材とスリーブの係止片)
スリーブの係止片は、隣接しあう係止片とスリーブの中心からなる中心角が等角度となるように開口端の内周の少なくとも3個所に設けられる。
【0020】
(分割リング部材とスリーブの係止片)
リング部材は、2分割された分割リング部材であり、
スリーブの係止片は、隣接しあう係止片とスリーブの中心からなる中心角が等角度となるように開口端の内周の少なくとも4個所に設けられ、配管に分割リング部材を円環状に配置して嵌め入れスリーブの底部側に配置した場合に、分割リング部材の各々が少なくとも2箇所の係止片に当接して位置決めされる。
【0021】
(コンクリートスラブとモルタル)
床版は、所定の建築材料としてコンクリートを打設したコンクリートスラブであり、
埋込固定部は、所定の建築材料としてモルタルを入れて配管をスリーブ内に埋込固定する。
【発明の効果】
【0022】
(第1施工方法の効果)
本発明の第1施工方法によれば、スリーブ内の底部に位置する床下地に加工した通し穴に配管を貫通させる場合に、スリーブ内を通った配管にリング部材を嵌め入れ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接する位置にリング部材を配置して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐようにしたため、スリーブ内に位置する通し穴と配管との隙間を塞ぐ作業が床上の階で行うことが可能となり、従来、床下の階で行っていた隙間を塞ぐ高所作業が不要となり、床版に埋設したスリーブ内を貫通する配管を建築材料により埋め込むための準備作業を簡単、安全、且つ容易に行うことが可能となり、作業効率が高まることで、建設期間の短縮とコストの低減に大きく寄与することを可能とする。
【0023】
(スリーブのリング係止片の効果)
また、スリーブの係止片は、隣接しあう係止片とスリーブの中心なる中心角がから等角度となるように開口端の内周の少なくとも3個所に設けられることで、配管に通したリング部材をスリーブ底部に簡単且つ容易に位置決めして、リング部材を安定させた状態で通し穴と配管との間の隙間を塞ぐことを可能とする。
【0024】
(配管に応じたリング部材の準備による効果)
また、第1工程で準備するリング部材は、配管の外径の種類に応じた異なる内径を持つ複数種類のリング部材が予め準備されており、第1工程は、その中から埋込設置する配管に対応したリング部材を選択することで、建築現場で使用する様々な径の配管に対応してスリーブ底部に位置する通し穴と配管との隙間を塞ぐ作業を適切に進めることを可能とする。
【0025】
(第2施工方法の効果)
本発明の第2施工方法によれば、スリーブ底部の通し穴と配管との隙間を塞ぐ部材として、2分割された分割リング部材を用いたことで、スリーブの底部に位置する床下地に加工した通し穴を貫通して配管を設置した後に、床上の階で、スリーブ内を通った配管に分割リング部材を円環状に配置して嵌め入れ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接する位置に分割リング部材を配置して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐことができ、従来、床下の階で行っていた隙間を塞ぐ高所作業が不要となり、床版に埋設したスリーブ内を貫通する配管を建築材料により埋め込むための準備作業を簡単、安全、且つ容易に行うことが可能となり、作業効率が高まることで、建設期間の短縮とコストの低減に大きく寄与することを可能とする。
【0026】
(スリーブの係止片による分割リング部材の位置決めの効果)
また、スリーブの係止片は、隣接しあう係止片とスリーブの中心からなる中心角が等角度となるように開口端の内周の少なくとも4個所に設けられ、第5工程で配管に分割リング部材を円環状に配置して嵌め入れスリーブの底部側に配置した場合に、分割リング部材の各々が少なくとも2箇所の係止片に当接して位置決めすることとなり、2つに分かれた分割リング部材としても、分割リング部材の合わせ位置を考慮することなく、スリーブ底部の通し穴と配管との隙間を、隙間から脱落することなく、リング部材を安定させた状態で確実に塞ぐことを可能とする。
【0027】
(配管に応じた分割リング部材の準備の効果)
また、第1工程で準備する分割リング部材は、配管の外径の種類に応じた異なる内径を持つ複数種類の分割リング部材が予め準備されており、第1工程は、その中から埋込設置する配管に対応した分割リング部材を選択することで、分割リング部材を用いた場合にも、建築現場で使用する様々な径の配管に対応してスリーブ底部に位置する通し穴と配管との隙間を塞ぐ作業を適切に進めることを可能とする。
【0028】
(コンクリートスラブとモルタルによる効果)
また、第2工程は、所定の建築材料としてのコンクリートを打設し、床版としてコンクリートスラブを形成し、第6工程は、所定の建築材料としてモルタルを入れて配管をスリーブ内に埋込固定することで、床版の構築とスリーブ内を貫通する配管の埋込みを適切に行うことを可能とする。
【0029】
(配管埋込構造体の効果)
本発明の建築物の床を貫通した配管を埋込配置する配管埋込構造体についても、前述した配管埋込構造体の施工方法と同様の効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1施工方法による配管埋込構造体の実施形態を示した説明図である。
【
図2】第1施工方法の第1工程で準備するスリーブの実施形態を示した説明図である。
【
図3】第1施工方法の第1工程で準備するリング部材の実施形態を示した説明図である。
【
図4】第1施工方法の第2工程と第3工程を示した説明図である。
【
図5】第1施工方法の第4工程を示した説明図である。
【
図6】第1施工方法の第5工程を示した説明図である。
【
図7】第1施工方法の第6工程を示した説明図である。
【
図8】本発明の第2施工方法の第1工程で準備するスリーブの実施形態を示した説明図である。
【
図9】第2施工方法の第1工程で準備する分割リング部材の実施形態を示した説明図である。
【
図10】第2施工方法の第5工程を示した説明図である。
【
図11】第2施工方法の第6工程まで完了した配管埋込構造体を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る配管埋込構造体の施工方法及び配管埋込構造体の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0032】
[実施形態の基本的な概念]
実施形態は、概略的に、配管埋込構造体の施工方法に関するものである。配管埋込構造体の施工方法とは、建築物の床を貫通した配管を埋込配置する構造体を施工する方法である。本実施形態の施工方法は、第1施工方法の施形態と第2施工法の実施形態がある。
【0033】
第1施工方法の実施形態は第1乃至第6工程を備えるものである。ここで、第1工程乃至第6工程とは、配管埋込構造体を完成するまでに行う作業の順番であり、本実施形態は6つの工程に分けているが、手順が維持される限り、工程の数は任意である。
【0034】
「第1工程」とは、配管埋込構造体の構築に使用するスリーブとリング部材を準備するものである。ここで、「スリーブ」とは、所定の内径を有する円筒体の一方となる底部の開口端の外周に複数の取付片が設けられ、底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられた、例えば板金製の部材であり、径や高さは使用する配管や床の厚さに応じて適宜に定められたものである。スリーブの係止片は、隣接しあう係止片とスリーブの中心からなる中心角が等角度となるように開口端の内周の少なくとも3個所に設けられ、スリーブ内に配置したリング部材を係止するものを含む概念である。
【0035】
また、「リング部材」とは、スリーブの内径に応じた外径と配管の外径に応じた内径を有する円環形状をもつ、例えば金属製の板部材であり、同じスリーブに使用する場合にも、配管の外径の種類に応じた内径をもつ複数種類のリング部材が準備されており、その中から埋込設置する配管に対応したリング部材を選択しても良いものである。
【0036】
「第2工程」とは、床下地の所定位置にスリーブを配置して取付片により固定する工程であり、従来から行われていると同様な公知の工程である。
【0037】
「第3工程」とは、スリーブの周囲を囲んで所定の建築材料を打設することにより所定の厚さの床版を形成する工程であり、打設する建築材料は任意であるが、一例として、コンクリートを打設し、床版としてコンクリートスラブを形成するものであり、従来から行われていると同様な公知の工程である。
【0038】
「第4工程」とは、床版に埋設されたスリーブ内の底部に位置する床下地に通し穴を加工する工程であり、従来から行われていると同様な公知の工程である。
【0039】
「第5工程」とは、床下地の通し穴に配管を貫通させ、スリーブ内を通った配管にリング部材を嵌め入れ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接する位置にリング部材を配置して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐ工程であり、本実施形態に固有な工程であり、床上の階での作業となり、従来の床下の階での高所作業を不要とするものである。
【0040】
「第6工程」とは、リング部材により隙間が塞がれたスリーブ内に上部側から所定の建築材料を入れて配管をスリーブ内に埋込固定する工程であり、スリーブ内に入れる建築材料は任意であるが、一例として、モルタルを入れた配管埋込部を形成するものであり、従来から行われていると同様な公知の工程である。
【0041】
本実施形態の第2施工方法は、第1工程で分割リング部材を準備し、第5工程で床版に埋設したスリーブに配管を通した後に、配管と通し穴との隙間を分割リング部材を用いて塞ぐ点以外は、第1施工方法と同様となる。
【0042】
ここで、「分割リング部材」とは、スリーブの内径に応じた外径と配管の外径に応じた内径を有するリング部材を、例えば真ん中から2分割した板部材であり、2つの分割リング部材を円環状に合わせることでリング部材が形成されるものである。
【0043】
また、第2施工方法に固有な「第5工程」とは、スリーブ内を通して配管を配置した後に、配管に分割リング部材を円環状に配置して嵌め入れ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接する位置に分割リング部材を配置して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐ工程である。
【0044】
本実施形態の配管埋設構造体は、前述した第1施工方法又は第2施工方法の実施により構築された構造体であり、所定の内径を有する円筒体の一方となる底部の開口端の外周に複数の取付片を設けられ、底部の開口端の内周に複数の係止片が設けられたスリーブと、所定位置に配置されたスリーブが取付片により固定され、固定されたスリーブ内の位置に開口する通し穴が形成された床下地と、スリーブの周囲を囲んで床下地の上に所定の建築材料を打設することにより形成された所定の厚さを有する床版と、スリーブの内径に応じた外径と配管の外径に応じた内径を有し、床下地の通し穴を貫通したスリーブ内を通る配管に嵌め入れられ、スリーブの底部側に位置する係止片に当接して通し穴と配管との間の隙間を塞ぐリング部材と、リング部材で底部側が塞がれたスリーブ内に所定の建築材料を入れて配管を埋込固定する埋設固定部とを備えるものである。
【0045】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す実施形態では、「床版」がコンクリートの打設により形成される「コンクリートスラブ」であり、スリーブ内を通過する配管がモルタルの注入により埋込固定される場合について詳細に説明する。
【0046】
[実施形態の具体的内容]
まず、本実施形態の施工方法により構築される配管埋込構造体の実施形態について、より詳細に説明する。
【0047】
[配管埋込構造体]
図1は本実施形態による配管埋込構造体の実施形態を示した説明図である。本実施形態の配管埋込構造体は、多層階の建築物の床に高さ方向に貫通して配置される配管18の床通過部分を埋込固定するものであり、その構造、構成、種類などは任意であるが、一例として、スリーブ10、リング部材12、床下地14、通し穴16、配管18、コンクリートスラブ20及びモルタル埋込固定部22で構成されるものである。
【0048】
スリーブ10は、床の底部を構成するデッキプレート等を配置した床下地14の配管18が通過する位置に固定され、周囲を囲むコンクリートスラブ20に埋め込まれて配管貫通経路を形成するものであり、その構造、構成、種類は任意であるが、一例として
図2に示す構造を備える。
【0049】
(スリーブ)
図2(A)はスリーブの平面を示し、
図2(B)は
図2(A)のX-X視の縦断面を示し、
図2(C)は図(A)のY-Y視の縦断面を示している。
【0050】
スリーブ10は、円筒本体24の底部側の開口の外周に複数の取付片26が固定されている。取付片26は、L字形の板金部材を円筒本体24の外周の中心から等角度(120°)となる位置にスポット溶接などにより固定され、取付片26には通し穴が形成されている。また、円筒本体24の底部側の開口の内周には、複数の係止片28が固定されている。係止片28は、L字形の板金部材を円筒本体24の内周の中心から等角度(120°)で、且つ、外周の取付片26の間となる位置に、スポット溶接などにより固定されている。係止片28の中心方向への張出長さは任意であるが、円筒本体24内に入れたリング部材12を係止して抜け止めするものであることから、例えば、数ミリメートル以下とする。
【0051】
(リング部材)
リング部材12は、スリーブ10に入れてその係止片28に係止され、
図1に示した床下地14の通し穴16と配管18の間の隙間を塞ぐものであり、その構造、構成、種類は任意であるが、一例として
図3に示す構造を備える。
【0052】
図3(A)~(C)は、外径が同じリング部材12を示しており、通し穴30の穴径は任意であるが、一例として、配置する配管18の外径に応じた異なる寸法としている。例えば、配管18の外径が80φ、100φ、120φであれば、これに対応して通し穴30の穴径を、配管18の外径に対応した80φ、100φ、120φに、所定の余裕寸法、例えば0.5~1.0mmを加えた寸法としている。この余裕寸法により配管に対しリング部材12の弛み嵌めを可能とする。また、リング部材12の外径は、使用するスリーブ10の内径に応じて複数種類準備されるものであり、スリーブ10の内径から所定の余裕寸法、例えば0.5~1.0mmを差し引いた寸法とする。この外径の余裕寸法により、スリーブ10内にリング部材12の弛み嵌めを可能とする。
【0053】
(床下地、床版)
床下地14は、床の底部を構成する部材であり、その構造、構成、種類は任意であるが、例えば、デッキプレート等を敷き詰めて構成されている。床下地14の配管18が上下に貫通する位置には、ボルト32により取付片26を床下地14に固定することでスリーブ10が配置され、この状態で床下地14の上に所定の建築材料として、例えば、コンクリートを打ち込むことにより、床版としてコンクリートスラブ20が形成され、コンクリートスラブ20にスリーブ10が埋め込まれ、スリーブ10の中に配管貫通空間を形成する。
【0054】
(通し穴)
床下地14の通し穴16は、配管18を貫通させる穴であり、コンクリートスラブ20に埋め込まれたスリーブ10の底部に位置する床下地14の部分に、溶断やドリル加工によって形成されたものであり、その穴径は、スリーブ10の中に配管18を通すことのできる寸法とする。
【0055】
(モルタル埋込固定部)
モルタル埋込固定部22は、スリーブ10に配管18を通し、且つ、スリーブ10に配管を通す際に配管18に嵌め入れたリング部材12をスリーブ10の係止片28に係止させる底部に位置させ、これにより配管18と通し穴16との間の円環状の隙間を塞いだ状態で、所定の建築材料として、例えばモルタルを注入して硬化させることで、形成されたものである。
【0056】
[第1施工方法]
次に、
図1に示した配管埋込構造体を実現するための本発明による第1施工方法の第1工程乃至第6工程について詳細に説明する。
【0057】
(第1工程)
第1工程は、
図1の配管埋込構造体を構築するため、
図2に示した構造のスリーブ10と
図3に示したリング部材12を準備する工程である。第1工程で選択するスリーブ10は、
図1に示した床版を構築するコンクリートスラブ20の厚さに対応した高さと配置する配管18に対応した内径を有するものとする。準備したスリーブ10は、円筒本体24の一方の開口端の外周に複数の取付片26が設けられ、同じ開口端の内周に複数の係止片28が設けられている。また、第1工程で選択するリング部材12は、選択したスリーブ10の内径に応じた外径と設置する配管の外径に応じた内径を有する。
【0058】
(第2工程)
第2工程は、
図4に示すように、フラットデッキなどを用いた床下地14の配管を通す所定位置に第1工程で選択したスリーブ10を配置し、ボルト32などの固定部材を用いて取付片26を床下地14に固定する工程であり、その手順や方法は任意であるが、従来と同様な公知の手順又は方法で行われる。
【0059】
(第3工程)
第3工程は、
図4に示すように、スリーブ10が固定された床下地14の上に、スリーブ10の周囲を囲んで所定の建築材料、例えばコンクリートを打設して硬化させることにより所定の厚さの床版となるコンクリートスラブ20を形成する工程であり、その手順や方法は任意であり、例えば、従来と同様な公知の手順又は方法で行われる。この場合、スリーブ10の上部の開口に公知のスリーブ蓋を装着してコンクリートが内部に入らないようにし、コンクリートスラブ20が形成された後に、スリーブ蓋を外すようにしても良い。
【0060】
(第4工程)
第4工程は、
図5に示すように、コンクリートスラブ20に埋設されたスリーブ10内の底部に位置する床下地14に、矢印に示すように穴開け加工34を行って通し穴16を形成する工程であり、その手順や方法は任意であるが、従来と同様な公知の手順又は方法で行われる。例えば、溶接トーチを用いてスリーブ10内の床下地14を円形に溶断するか、或いは、ドリルビットを用いた穴開け加工などを行う。
【0061】
(第5工程)
第5工程は、
図6(A)に示すように、第4工程で加工した床下地14の通し穴16に下の階から配管18を貫通させ、スリーブ10内を通った配管18に、第1工程で準備したリング部材12を嵌め入れ、
図6(B)に示すように、スリーブ10の底部側に位置する係止片28に当接する位置にリング部材12を配置して通し穴16と配管18との間の隙間を塞ぐ工程である。第5工程での手順や方法は任意であり、例えば、
図6(B)のように、スリーブ10を貫通して上の階に飛出した配管18の先端にリング部材18を嵌め入れ、係止片28に当接する隙間を塞ぐ位置に嵌め入れても良いし、また、スリーブ10の係止片28に係止する底部にリング部材12を予め嵌め入れておき、下の階から通し穴16に位置するリング部材12に配管を通すようにしても良い。
【0062】
この場合、リング部材12の外径は、スリーブ10の内径より所定の余裕寸法分だけ小さく、また、リング部材12の通し穴30の穴径は、配管18の外径より所定の余裕寸法分だけ大きいことから、リング部材12をスリーブ10内及び配管18の両方に弛み嵌めすることができ、リング部材12を滑らかに隙間を塞ぐ位置に配置できる。
【0063】
また、リング部材12を用いてスリーブ10内の通し穴16と配管18の間の隙間を塞ぐ第5工程の作業は、床上の階からの作業となり、従来の床下の階から行っていた高所作業が不要となり、安全、簡単、且つ容易に、通し穴16と配管18の間の隙間を塞ぐ作業を効率良く進めることができる。
【0064】
(第6工程)
第6工程は、
図7に示すように、リング部材12により通し穴16と配管18との間の隙間が塞がれたスリーブ10内に、床上側から所定の建築材料、例えばモルタルを入れることで、配管18をスリーブ10内に埋込固定するモルタル埋込固定部22を形成する工程であり、その手順や方法は任意であり、例えば、従来と同様な公知の手順又は方法で行われ、その結果、第1図に示した配管埋込構造体が完成するものである。
【0065】
[配管埋込構造体の第2施工方法]
次に、本実施形態による配管埋込構造体の第2施工方法について詳細に説明する。本実施形態の第2施工方法は、第1施工方法で使用するリング部材12を分割リング部材としたことを特徴とするものであり、第1施工方法と同様に第1工程乃至第6工程を備えるが、分割リング部材を用いたことで、スリーブ10と分割リング部材を準備する第1工程と、分割リング部材を用いて床下地の通し穴と配管との隙間を塞ぐ第5工程が相違するものである。
【0066】
(第1工程)
第2施工方法の第1工程は、
図8に示すスリーブ10と
図9に示す分割リング部材12a,12bを準備する工程である。
【0067】
図8(A)はスリーブの平面を示し、
図8(B)は
図8(A)のX-X視の縦断面を示し、
図8(C)は
図8(A)のY-Y視の縦断面を示している。スリーブ10は、円筒本体24の底部側の開口の外周の3個所となる中心から等角度(120°)となる位置に取付片26を固定している点は
図2と同じになるが、円筒本体24の底部側の開口の内周の4箇所となる中心から等角度(90°)となる位置に係止片28を固定している点で相違する。また、内周の係止片28は外周の取付片26とは異なる位置としている。
【0068】
図9(A)~(C)は、第1工程で準備する複数種類の分割リング部材12a,12bを、突き合せた状態と分割した状態で示しており、突き合せた状態での通し穴30a,30bの穴径は任意であるが、一例として、配置する配管18の外径に応じた異なる寸法としている。また、通し穴30a,30bの穴径は、配管18の外径に定の余裕寸法、例えば0.5~1.0mmを加えた寸法としている。この余裕寸法により配管に対しリング部材12の弛み嵌めを可能とする。
【0069】
また、分割リング部材12a,12bの外径は、使用するスリーブ10の内径に応じて複数種類準備されるものであり、スリーブ10の内径から所定の余裕寸法、例えば0.5~1.0mmを差し引いた寸法とする。この外径の余裕寸法により、スリーブ10内に分割リング部材12a,12bを合わせて円環状とした状態での弛み嵌めを可能としている。
【0070】
また、スリーブ10の底部内周の4箇所に90°間隔で係止片28が設けられたことで、分割リング12a,12bを配管を挟んで円環状に突き合わせてスリーブ12内に嵌め入れた場合、分割リング部材12a,12bの合わせ位置がどのような位置にあっても、分割リング部材12a,12bの各々は、必ず2つの係止片28に当接して係止される。このため2つに分かれた分割リング部材12a,12bをスリーブ10内に嵌め入れても、スリーブ10内の底部の2点で係止される安定した位置決めが行われ、確実に通し穴と配管との間の隙間を塞ぐことができる。
【0071】
(第5工程)
第2施工方法の第5工程は、
図10に示すように、第4工程で加工した床下地14の通し穴16に下の階から配管18を貫通させて配置し、配管18の配置が完了した後に、スリーブ10から上方へ取り出されている配管18に、第1工程で準備した分割リング部材12a,12bを両側から挟み込むように突合せて円環状とし、この状態でスリーブ10内に嵌め入れ、スリーブ10の底部側に位置する係止片28に当接する位置に分割リング部材12a,12bを配置して通し穴16と配管18との間の隙間を塞ぐ工程である。
【0072】
このように第2施工方法の第5工程は、配管18の設置作業と、スリーブ10の底部側の通し穴16と配管18との間の隙間を塞ぐ作業とを分離して行うことができ、第1施工方法のように、スリーブ10を通しながら配管18の先端からリング部材12を嵌め込むといった作業が不要となる。
【0073】
また、第2施工方法の第5工程での分割リング部材12を用いてスリーブ10内の通し穴16と配管18の間の隙間を塞ぐ作業は、床上の階からの作業となり、従来の床下の階から行っていた高所作業が不要となり、安全、簡単、且つ容易に、通し穴16と配管18の間の隙間を塞ぐ作業を効率良く進めることができる。なお、第2施工方法の第2工程~第4工程および第6工程は、第1施工方法と同じになることから、その説明は省略しているが、第6工程まで完了した配管埋込構造体は
図11のような構造となる。
【0074】
[本発明の変形例]
(スリーブの一部で配管を埋込固定する構造)
上記の実施形態は、スリーブの底部となる開口端の内周に複数の係止片を配置してリング部材又は分割リング部材を係止して、配管と通し穴との間の隙間を塞ぎ、その上にモルタルを注入してスリーブ内に埋込固定部を形成するようにしているが、床版に埋込み設置するスリーブが長くなった場合などには、スリーブ内周の中間位置などの途中位置に複数の係止片を配置し、リング部材又は分割リング部材をスリーブ内の途中位置に係止してスリーブ内周と配管との間の隙間を塞ぎ、その上にモルタルなどを注入して埋込固定部をスリーブ内の一部に形成するようにしても良い。
【0075】
(その他)
また,本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0076】
10:スリーブ
12:リング部材
12a,12b:分割リング部材
14:床下地
16,30,30a,30b:通し穴
18:配管
20:コンクリートスラブ
22:モルタル埋込固定部
24:円筒本体
26:取付片
28:係止片
32:ボルト
34:穴開け加工