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特開2022-83567高速炉の制御棒、高速炉及び高速炉の制御棒操作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083567
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】高速炉の制御棒、高速炉及び高速炉の制御棒操作方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 7/10 20060101AFI20220530BHJP
   G21C 1/02 20060101ALI20220530BHJP
   G21C 19/20 20060101ALI20220530BHJP
   G21D 3/12 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
G21C7/10
G21C1/02 100
G21C19/20
G21D3/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194961
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】三輪 順一
(72)【発明者】
【氏名】渕田 翔
(57)【要約】
【課題】負荷追従運転における高速炉の熱的余裕を増大できる高速炉の制御棒を提供する。
【解決手段】主炉停止系制御棒1は、内側制御棒クラスター2、及び内側制御棒クラスター2を取り囲む環状の外側制御棒クラスター5を有する。主炉停止系制御棒1を有する高速炉の、或る運転サイクルにおける負荷追従運転では、内側制御棒クラスター2を炉心燃料領域に全挿入したまま、外側制御棒クラスター5を炉心燃料領域から全引抜きし、高速炉の原子炉出力を目標出力まで上昇させる。原子炉出力が目標原子炉出力から低下したとき、内側制御棒クラスター2を炉心燃料領域から引き抜き、原子炉出力を目標原子炉出力まで上昇させる。その後、制御棒価値が小さい内側制御棒クラスター2を炉心燃料領域から引き抜いたとき、内側制御棒クラスター2の下端付近に形成される出力ピークが小さくなり、負荷追従運転での高速炉の熱的余裕が増大する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側制御棒クラスター、及び前記内側制御棒クラスターを取り囲む環状の外側制御棒クラスターを有することを特徴とする高速炉の制御棒。
【請求項2】
原子炉容器と、前記原子炉容器の上端部に回転可能に設置され、前記原子炉容器を覆う回転プラグとを備え、
請求項1に記載の制御棒である主炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのそれぞれを、前記原子炉容器内に配置された炉心内に配置し、
前記主炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスターを前記炉心の軸方向に移動させる制御棒移動装置を前記回転プラグに設置し、
前記主炉停止系制御棒の前記外側制御棒クラスターを前記炉心の軸方向に移動させる他の制御棒移動装置を前記回転プラグに設置したことを特徴とする高速炉。
【請求項3】
前記原子炉容器内で前記炉心の下方に配置された炉心支持板が前記原子炉容器に設置され、前記炉心内に配置された第1内側制御棒案内管の下端部が、前記炉心支持板に取り付けられ、前記炉心内に配置されて前記第1内側制御棒案内管を取り囲む第2外側制御棒案内管の下端部が、前記炉心支持板に取り付けられ、前記主炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスターが前記第1内側制御棒案内管内に配置され、前記主炉停止系制御棒の前記外側制御棒クラスターが前記第1内側制御棒案内管と前記第2外側制御棒案内管の間に形成される環状領域内に配置された請求項2に記載の高速炉。
【請求項4】
前記主炉停止系制御棒以外に、後備炉停止系制御棒が用いられており、
前記後備炉停止系制御棒は、前記主炉停止系制御棒と同じく、内側制御棒クラスター、及び前記内側制御棒クラスターを取り囲む環状の第2外側制御棒クラスターを有し、
前記後備炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのそれぞれを、前記原子炉容器内に配置された炉心内に配置し、
前記後備炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスターを前記炉心の軸方向に移動させる制御棒移動装置を前記回転プラグに設置し、
前記後備炉停止系制御棒の前記外側制御棒クラスターを前記炉心の軸方向に移動させる他の制御棒移動装置を前記回転プラグに設置した請求項3に記載の高速炉。
【請求項5】
前記炉心内に配置された第2内側制御棒案内管の下端部が、前記炉心支持板に取り付けられ、前記炉心内に配置されて前記第2内側制御棒案内管を取り囲む第2外側制御棒案内管の下端部が、前記炉心支持板に取り付けられ、前記後備炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスターが前記第2内側制御棒案内管内に配置され、前記後備炉停止系制御棒の前記外側制御棒クラスターが前記第2内側制御棒案内管と前記第2外側制御棒案内管の間に形成される環状領域内に配置された請求項4に記載の高速炉。
【請求項6】
前記外側制御棒クラスターを移動させる前記他の制御棒移動装置は、前記内側制御棒クラスターを移動させる前記制御棒移動装置と移動機構が異なっている請求項2ないし5のいずれか1項に記載の高速炉。
【請求項7】
前記外側制御棒クラスターを移動させる前記他の制御棒移動装置は巻き取り装置であり、前記内側制御棒クラスターは前記巻き取り装置に巻き取られるロープに吊るされており、
前記内側制御棒クラスターを移動させる前記制御棒移動装置は制御棒駆動機構である請求項6に記載の高速炉。
【請求項8】
前記内側制御棒クラスターは、前記ロープに取り付けられた制御棒保持ユニットに切り離し可能に連結され、前記制御棒保持ユニットを介して前記ロープに吊されている請求項7に記載の高速炉。
【請求項9】
前記内側制御棒クラスターを移動させる前記制御棒移動装置、及び前記外側制御棒クラスターを移動させる前記他の制御棒移動装置のそれぞれは制御棒駆動機構である請求項2ないし5のいずれか1項に記載の高速炉。
【請求項10】
原子炉容器内の炉心の炉心燃料領域に配置された、請求項1に記載の制御棒である主炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターを有する高速炉の制御棒操作方法であって、
前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのいずれかを前記炉心燃料領域から引き抜きし、前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのうち、前記炉心燃料領域から引き抜かれた以外の制御棒クラスターは前記炉心燃料領域に全挿入されたままになっていることを特徴とする高速炉の制御棒操作方法。
【請求項11】
前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのいずれかを前記炉心燃料領域から引き抜くことによって、前記高速炉の原子炉出力を目標原子炉出力まで増加させる請求項10に記載の高速炉の制御棒操作方法。
【請求項12】
前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのいずれかが前記炉心燃料領域から全引き抜きされた後、前記高速炉の原子炉出力が前記目標原子炉出力から低下するときには、前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのうち、前記炉心燃料領域から全引き抜きされた以外の制御棒クラスターを前記炉心燃料領域から引き抜いて、前記高速炉の原子炉出力を前記目標原子炉出力に維持する請求項11に記載の高速炉の制御棒操作方法。
【請求項13】
前記高速炉は、前記主炉停止系制御棒と同じく、内側制御棒クラスター、及び前記内側制御棒クラスターを取り囲む環状の第2外側制御棒クラスターを含む後備炉停止系制御棒を有しており、
前記後備炉停止系制御棒の前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのいずれかも前記炉心燃料領域から引き抜かれ、前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのうち、前記炉心燃料領域から引き抜かれた以外の制御棒クラスターも前記炉心燃料領域に全挿入されたままになっている請求項10に記載の高速炉の制御棒操作方法。
【請求項14】
前記高速炉は、前記原子炉容器の上端部に回転可能に設置され、前記原子炉容器を覆う回転プラグと、前記回転プラグに設置された巻き取り装置とを備え、
前記炉心燃料領域から引き抜かれる前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのいずれかは、巻き取り装置によって、前記炉心燃料領域の軸方向に移動され、
前記巻き取り装置に巻き取られるロープに取り付けられた制御棒保持ユニットに切り離し可能に連結される、前記炉心燃料領域から引き抜かれる前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのいずれかは、スクラム信号によって制御棒保持ユニットから切り離されたときに、前記炉心燃料領域において落下する請求項10ないし12のいずれか1項に記載の高速炉の制御棒操作方法。
【請求項15】
前記高速炉は、前記原子炉容器の上端部に回転可能に設置され、前記原子炉容器を覆う回転プラグと、前記回転プラグに設置された制御棒駆動機構とを備え、
前記炉心燃料領域から引き抜かれる前記内側制御棒クラスター及び前記外側制御棒クラスターのいずれかは、前記制御棒駆動機構によって、前記炉心燃料領域の軸方向に移動される請求項10ないし12のいずれか1項に記載の高速炉の制御棒操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速炉の制御棒、高速炉及び高速炉の制御棒操作方法に係り、高速炉における負荷追従運転を実現するのに好適な高速炉の制御棒、高速炉及び高速炉の制御棒操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速炉である高速増殖炉が特公平6-56426号公報に記載されている。その高速増殖炉は、冷却材である液体ナトリウムを充填した原子炉容器、及び原子炉容器内に配置され、複数の燃料集合体が装荷された炉心を有している。燃料集合体は、プルトニウム及び劣化ウランを含む核燃料物質を封入した複数の燃料棒を横断面が正六角形のラッパ管内に配置している。液体ナトリウムが流入する開口が形成されたエントランスノズルが、ラッパ管の下端部に設けられる。このラッパ管が原子炉容器内に設置された炉心支持板に挿入されることにより、燃料集合体が炉心支持板によって支持される。液体ナトリウムを燃料集合体から流出させる冷却材流出部が、ラッパ管の上端部に形成される。
【0003】
高速増殖炉の炉心は、内側炉心領域及びこの内側炉心領域を取り囲む外側炉心領域を有する炉心燃料領域、炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域及びブランケット領域を取り囲む遮へい体領域を有する。標準的な均質炉心の場合、外側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度は、内側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度よりも高くなっている。この結果、炉心の半径方向における出力分布が平坦化される。
【0004】
回転プラグが、炉心を覆って回転可能に、原子炉容器の上端部に取り付けられる。横断面が正六角形の、複数の下部制御棒案内管が炉心内の燃料集合体の相互間に配置され、各下部制御棒案内管の下端が炉心支持板に支持される。横断面が正六角形の、複数の上部制御棒案内管が各下部制御棒案内管の真上で炉心よりも上方に配置され、各上部制御棒案内管の上端部は回転プラグに取り付けられる。複数の制御棒駆動機構が、各上部制御棒案内管の上端に配置され、回転プラグに設置される。
【0005】
その高速増殖炉では、制御棒として、主炉停止系制御棒(調整棒)及び後備炉停止系制御棒(安全棒)の独立した2系統の制御棒が用いられる。主炉停止系制御棒は、核燃料物質の燃焼に伴う反応度の変化、及び出力分布の調整に用いられる。後備炉停止系制御棒は、主炉停止系制御棒が万一故障した場合のバックアップのために設置されている。高速増殖炉は、主炉停止系制御棒及び後備炉停止系制御棒のいずれか一方により緊急停止が可能である。主炉停止系制御棒及び後備炉停止系制御棒の各制御棒は、炭化ホウ素(BC)のペレットをステンレス製の被覆管に封入した複数の中性子吸収棒を有し、これらの中性子吸収棒を、クラスター状に束ねて、円筒形状の保護管に収納して構成される。
【0006】
主炉停止系制御棒は、一部の下部制御棒案内管内に配置され、制御棒駆動機構に連結されて上部制御棒案内管及び下部制御棒案内管内を下方に向かって伸びている駆動延長軸の下端部に連結される。後備炉停止系制御棒は、残りの下部制御棒案内管内に配置され、制御棒駆動機構に連結されて上部制御棒案内管及び下部制御棒案内管内を下方に向かって伸びている他の駆動延長軸の下端部に連結される。主炉停止系制御棒及び後備炉停止系制御棒は、制御棒駆動機構によって、上部制御棒案内管及び下部制御棒案内管内において炉心の軸方向に移動される。
【0007】
Pu及び劣化ウランのそれぞれの酸化物を混合した混合酸化物燃料(MOX燃料)のペレットが、燃料棒内で軸方向の中央部に充填される。さらに、燃料棒内には、劣化ウランで作られた複数の二酸化ウランペレットを充填した軸方向ブランケット領域が、MOX燃料の充填領域の上方及び下方にそれぞれ配置されている。内側炉心領域に装荷される内側炉心燃料集合体及び外側炉心領域に装荷される外側炉心燃料集合体は、そのように、MOX燃料の複数のペレットを充填した複数の燃料棒を有する。
【0008】
炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域には、劣化ウランで作られた複数のペレットを充填した複数の燃料棒を有するブランケット燃料集合体が装荷される。ブランケット燃料集合体の燃料棒には、プルトニウムが含まれていない。炉心燃料領域に装荷された燃料集合体内で生じる核分裂反応で発生した中性子のうち、炉心燃料領域から漏れた中性子が、ブランケット燃料領域に装荷されたブランケット燃料集合体の各燃料棒内のU-238に吸収される。この結果、ブランケット燃料集合体の各燃料棒内で核分裂性核種であるPu-239が新たに生成される。
【0009】
沸騰水型原子炉では、制御棒として、炭化ホウ素よりも中性子吸収断面積が小さい部材(例えば、ステンレス鋼)で形成した領域を先端部に配置した制御棒(グレーノーズ制御棒)を用いている。先端部よりも下方の領域には、中性子吸収断面積が大きな炭化ホウ素が充填される。このような制御棒を用いることによって、制御棒引き抜き時における、制御棒先端部付近での炉心の出力上昇を抑制することができ、炉心の軸方向における出力分布を平坦することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平6-56426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、先端部を中性子吸収断面積の小さな部材(例えば、ステンレス鋼)で形成した制御棒を用いることによって、その制御棒の引き抜き時に、制御棒先端部付近での出力ピーキングが低減され、炉心の軸方向における出力分布がより平坦化される。
【0012】
しかしながら、制御棒操作及び炉心流量の調節によって原子炉出力を調節できるBWRとは異なり、高速炉は、主炉停止系制御棒のみを用いて原子炉出力を調整する必要がある。このような高速炉の負荷追従運転では、主炉停止系制御棒の軸方向の一部を炉心の燃料有効長に挿入する運用となる。この場合には、上記の日立評論の図9に破線で示された原子炉出力と同様に、炉心の軸方向の出力分布が歪むため、出力ピーキングが増加し、炉心における熱的余裕が減少する可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、負荷追従運転における高速炉の熱的余裕を増大できる高速炉の制御棒、高速炉及び高速炉の制御棒操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、高速炉の制御棒が、内側制御棒クラスター、及びその内側制御棒クラスターを取り囲む環状の外側制御棒クラスターを有することにある。
【0015】
外側制御棒クラスターが炉心の炉心燃料領域から全引抜きされたまま、制御棒価値が小さい内側制御棒クラスターがその炉心燃料領域に全挿入された状態では、炉心燃料領域の軸方向における出力分布がコサイン分布になり、その出力分布の出力ピークは小さくなる。このため、その制御棒を用いた場合には、負荷追従運転における高速炉の熱的余裕が増大する。
【0016】
さらに、外側制御棒クラスターが炉心燃料領域から全引き抜きされて内側制御棒クラスターの一部が炉心燃料領域に挿入されている状態では、内側制御棒クラスターの下端付近に出力ピークが形成される。しかしながら、内側制御棒クラスターの制御棒価値が小さいため、その出力ピークは、内側制御棒クラスター及び環状の外側制御棒クラスターを有しない従来の主炉停止系制御棒の一部が炉心燃料領域から引き抜かれているときに、従来の主炉停止系制御棒の下端付近に形成される出力ピークよりも小さくなる。このため、内側制御棒クラスターの一部が炉心燃料領域に挿入されている場合でも、負荷追従運転における高速炉の熱的余裕が増大する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、負荷追従運転における高速炉の熱的余裕を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の高速炉の制御棒、すなわち、主炉停止系制御棒の縦断面図である。
図2図1に示された外側制御棒クラスターを制御棒保持ユニットに係合した状態を示す説明図である。
図3図1に示された制御棒の内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターのそれぞれを高速炉の炉心燃料領域に全挿入した状態の縦断面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】実施例1の制御棒が用いられる高速炉における後備炉停止系制御棒の縦断面図である。
図6】後備炉停止系制御棒の横断面図である。
図7図1に示された制御棒及び図5に示された後備炉停止系制御棒を用いた高速炉の縦断面図である。
図8図1に示された制御棒を操作する制御棒制御系の構成図である。
図9図5に示された後備炉停止系制御棒を操作する制御棒制御系の構成図である。
図10図7に示された高速炉の1/2炉心の横断面図である。
図11図1に示された制御棒、及び図5に示された後備炉停止系制御棒のそれぞれの、高速炉の負荷追従運転時における炉心への挿入状態を示す説明図である。
図12】従来の主炉停止系制御棒の炉心燃料領域(燃料有効長)への挿入状態を示す説明図である。
図13図12のX-X断面図である。
図14図1に示された主炉停止系制御棒、及び図12に示された従来の主炉停止系制御棒のそれぞれを炉心燃料領域に挿入した状態での、軸方向における各位置での出力と燃料有効長の軸方向位置との関係を示す特性図である。
図15】本発明の好適な他の実施例である実施例2における、図1に示された制御棒及び図5に示された後備炉停止系制御棒を用いた高速炉の縦断面図である。
図16図15に示された主炉停止系制御棒の内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターそれぞれの、高速炉の負荷追従運転時における炉心燃料領域への挿入状態を示す説明図である。
図17図16に示された内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターそれぞれの、炉心燃料領域への全挿入状態を示す説明図である。
図18図15に示された後備炉停止系制御棒の内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターそれぞれの操作状態を示す説明図である。
図19図17に示された後備炉停止系制御棒の内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターのそれぞれの、高速炉の負荷追従運転時における炉心燃料領域への全挿入状態を示す説明図である。
図20】本発明の好適な他の実施例である実施例3における高速炉の制御棒操作方法において、主炉停止系制御棒の、高速炉の負荷追従運転時における炉心燃料領域への挿入状態を示す説明図である。
図21図20に示された主炉停止系制御棒における内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターのそれぞれの、炉心燃料領域への全挿入状態を示す説明図である。
図22】実施例3の高速増殖炉の制御棒操作方法において、後備炉停止系制御棒の、高速炉の負荷追従運転時における炉心燃料領域への挿入状態を示す説明図である。
図23図22に示された後備炉停止系制御棒の内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターのそれぞれの、炉心燃料領域への全挿入状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例0020】
本発明の好適な一実施例である実施例1の高速炉の制御棒を、図1図2及び図4を用いて説明する。
【0021】
後述の高速増殖炉8(図7参照)では、制御棒は、主炉停止系制御棒である制御棒1(図1)及び後備炉停止系制御棒23(図5)の独立した2系統の構成となっている。主炉停止系制御棒である制御棒1は、高速増殖炉8の運転時において、核燃料物質に含まれる核分裂性物質の燃焼に伴う反応度の変化、及び出力分布の調整に用いられる。後備炉停止系制御棒23は、主炉停止系制御棒である制御棒1が万一故障した場合のバックアップのために設置されている。高速増殖炉8は、制御棒1及び後備炉停止系制御棒23のいずれか一方のみで緊急停止が可能になっている。
【0022】
本実施例の制御棒1を、図1図2及び図4を用いて詳細に説明する。制御棒1は、内側制御棒クラスター(第1内側制御棒クラスター)2及び外側制御棒クラスター(第1外側制御棒クラスター)5を有する。外側制御棒クラスター5は、横断面が環状をしており、内側制御棒クラスター2の周囲を取り囲んでいる(図4参照)。内側制御棒クラスター2は、棒状の複数の制御棒要素3を、両端が密封された円筒状の制御棒保護管4内に配置している(図1及び図4参照)。制御棒要素3は、中性子吸収材である炭化ホウ素(BC)の複数のペレットを密封された被覆管(図示せず)内に充填している。外側制御棒クラスター5は、棒状の複数の制御棒要素6を、両端が密封された環状の制御棒保護管7内に配置している(図1及び図4参照)。制御棒要素6も、炭化ホウ素の複数のペレットを密封された被覆管(図示せず)内に充填している。制御棒要素3及び6のそれぞれの軸方向の長さは、後述の炉心燃料領域12の軸方向の長さである燃料有効長と同じである。
【0023】
後備炉停止系制御棒23を、図5及び図6を用いて詳細に説明する。後備炉停止系制御棒23は、内側制御棒クラスター(第2内側制御棒クラスター)36及び外側制御棒クラスター(第2外側制御棒クラスター)55を有する。外側制御棒クラスター55は、横断面が環状をしており、内側制御棒クラスター36の周囲を取り囲んでいる(図6参照)。内側制御棒クラスター36は、棒状の複数の制御棒要素37を、両端が密封された円筒状の制御棒保護管38内に配置している(図6参照)。制御棒要素37は、炭化ホウ素の複数のペレットを密封された被覆管(図示せず)内に充填している。外側制御棒クラスター55は、棒状の複数の制御棒要素56を、両端が密封された環状の制御棒保護管57内に配置している(図6参照)。制御棒要素56も、炭化ホウ素の複数のペレットを密封された被覆管(図示せず)内に充填している。制御棒要素37及び56のそれぞれの軸方向の長さは、後述の炉心燃料領域12の軸方向の長さである燃料有効長と同じである。
【0024】
制御棒1が適用される高速炉の一種である高速増殖炉の構造を、図7を用いて説明する。高速増殖炉8の電気出力は75万kWである。高速増殖炉8は、原子炉容器9、回転プラグ10、炉心11、制御棒1、後備炉停止系制御棒23、下部内側制御棒案内管26及び58、及び下部外側制御棒案内管27及び59を備える。高速増殖炉8は、これらの構成以外に、上部炉心支持板50、巻き取り装置30、制御棒駆動機構32、上部内側制御棒案内管28及び60、上部外側制御棒案内管29及び61、巻き取り装置62及び制御棒駆動機構64を備える。巻き取り装置30及び62は第1制御棒移動装置であり、制御棒駆動機構32及び64は第2制御棒移動装置である。液体金属である液体ナトリウム24が、冷却材として用いられ、原子炉容器9内に充填される。上部炉心支持板50は、原子炉容器9内に配置されて原子炉容器9の内面に取り付けられる。炉心支持構造物52が上部炉心支持板50の下面に取り付けられ、炉心支持構造物52内に配置された下部炉心支持板51が炉心支持構造物52の内面に取り付けられる。下部炉心支持板51は上部炉心支持板50の下方に位置している。
【0025】
回転プラグ10は原子炉容器9の上端部に回転可能に取り付けられる。炉心11は、回転プラグ10の下方で原子炉容器9内に配置され、軸方向において、炉心燃料領域12及びガスプレナム領域13を有する。ガスプレナム領域13は炉心燃料領域12上に位置する(図11参照)。炉心11の炉心燃料領域12における横断面を図10に示す。炉心燃料領域12は内側炉心燃料領域14及び外側炉心燃料領域15を含み、外側炉心燃料領域15が内側炉心燃料領域14を取り囲んでいる。さらに、炉心11では、半径方向ブランケット領域16が外側炉心燃料領域15を取り囲み、反射体領域17が半径方向ブランケット領域16を取り囲んでいる。
【0026】
複数の内側炉心燃料集合体18が内側炉心燃料領域14に装荷され、複数の外側炉心燃料集合体19が外側炉心燃料領域15に装荷される。内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19のそれぞれは、核燃料物質としてU-Pu-10Zrの3元合金(金属燃料)を用いており、U-Pu-10Zrによって製作された複数の燃料ペレットを被覆管内に充填した複数の燃料棒(図示せず)を有している。各燃料棒は、被覆管内に、それらの燃料ペレットを充填した核燃料充填領域、及びその核燃料充填領域の上方に形成したガスプレナム領域を有する。内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19のそれぞれの燃焼度が0GWd/tであるとき、外側炉心燃料集合体19におけるPu富化度は内側炉心燃料集合体18のPu富化度よりも高くなっており、外側炉心燃料領域15の平均Pu富化度の内側炉心燃料領域14のそれよりも高い。このため、炉心燃料領域12の半径方向における出力分布が平坦化される。内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19では、複数の燃料棒が横断面が正六角形の筒状のラッパ管(図示せず)内に配置される。
【0027】
複数のブランケット燃料集合体20が半径方向ブランケット領域16に装荷される。0GWd/tのブランケット燃料集合体20は、劣化ウラン製の複数の燃料ペレットを被覆管内に密封した複数の燃料棒を有している。ブランケット燃料集合体20は、それらの燃料棒を横断面が正六角形の筒状のラッパ管(図示せず)内に配置している。複数の反射体が反射体領域17に装荷される。その反射体は、横断面が正六角形のステンレス鋼で作られている。
【0028】
内側炉心燃料集合体18、外側炉心燃料集合体19及びブランケット燃料集合体20のそれぞれのラッパ管の下端部にエントランスノズル(図示せず)が設けられている。各燃料集合体のエントランスノズルが、上部炉心支持板50を貫通し、下部炉心支持板51に達する。内側炉心燃料集合体18、外側炉心燃料集合体19及びブランケット燃料集合体20のそれぞれは、上部炉心支持板50に支持される。高圧プレナム41が、炉心支持構造物52内で上部炉心支持板50と下部炉心支持板51の間に形成される。低圧プレナム42が、炉心支持構造物52内で下部炉心支持板51の下方に形成される。下部プレナム40が、上部炉心支持板50の下方で、原子炉容器9の底部と炉心支持構造物52との間に形成される。炉心支持構造物52の側壁に形成された開口25が、下部プレナム40と高圧プレナム41を連絡する。
【0029】
入口配管9Aが原子炉容器9に取り付けられる。冷却材である液体ナトリウム24が原子炉容器9内に充填されており、その入口配管9Aは、液体ナトリウム24の液面よりも上方で原子炉容器9の側壁を貫通して原子炉容器9内に達する。原子炉容器9内において入口配管9Aは、原子炉容器9の内面と炉心11の間を下降して上部炉心支持板50を貫通し、下部プレナム40に達する。入口配管9Aの下端部が炉心支持構造物52の側面に取り付けられ、入口配管9Aは上記の開口25を通して高圧プレナム41と連通する。原子炉容器9の側壁に取り付けられた出口配管9Bが、炉心11の上方で原子炉容器9内に形成される上部プレナム53に連絡される。一次主冷却材ポンプ(図示せず)及び中間熱交換器(図示せず)が設置された一次冷却系配管(図示せず)の一端部が入口配管9Aに接続され、その一次冷却系配管の他端部が出口配管9Bに接続される。
【0030】
制御棒1のそれぞれは、内側炉心燃料領域14内の内側炉心燃料集合体18の相互間、及び外側炉心燃料領域15内の外側炉心燃料集合体19の相互間に配置される(図10参照)。制御棒1用の、横断面が正六角形の制御棒案内管46(図4参照)が、内側炉心燃料領域14内の内側炉心燃料集合体18の相互間、及び外側炉心燃料領域15内の外側炉心燃料集合体19の相互間にそれぞれ配置される。制御棒案内管46の下端が上部炉心支持板50に取り付けられ、制御棒案内管46の上端が炉心11の上端よりも上方に位置している。円筒状の下部外側制御棒案内管27が制御棒案内管46内に配置され、円筒状の下部内側制御棒案内管26が下部外側制御棒案内管27内に配置される。下部内側制御棒案内管26及び下部外側制御棒案内管27のそれぞれの下端が上部炉心支持板50に取り付けられる。下部内側制御棒案内管26及び下部外側制御棒案内管27のそれぞれの上端も、炉心11の上端よりも上方に位置している。
【0031】
円筒状の上部外側制御棒案内管29が下部外側制御棒案内管27の真上に配置され、上部外側制御棒案内管29の上端部が、回転プラグ10を貫通して回転プラグ10に取り付けられる。支持板54が上部外側制御棒案内管29の上端を覆って回転プラグ10の上面に取り付けられる。円筒状の上部内側制御棒案内管28が下部内側制御棒案内管26の真上に配置されて上部外側制御棒案内管29内に配置され、上部内側制御棒案内管28の上端部が支持板54に取り付けられる。第2制御棒移動装置である制御棒駆動機構32が支持板54上に設置される。制御棒駆動機構32に連結された駆動延長軸33が、回転プラグ10から下方に向かって伸びており、上部内側制御棒案内管28及び下部内側制御棒案内管26内に配置される。制御棒1の内側制御棒クラスター2が、下部内側制御棒案内管26内に配置され、駆動延長軸33の下端部に連結されている。
【0032】
第1制御棒移動装置である巻き取り装置30が回転プラグ10の上面に設置され、巻き取り装置30から下方に向かって伸びるステンレス鋼製のロープ31の下端部が、上部外側制御棒案内管29と上部内側制御棒案内管28の間に形成される環状領域を通って、下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間に配置される制御棒保持ユニット44に取り付けられる。下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間に配置される、制御棒1の、環状の外側制御棒クラスター5は、制御棒保持ユニット44によって保持される。具体的には、制御棒保持ユニット44に設けられた回転フック45を、外側制御棒クラスター5の上端に設けられた吊り金具22の輪の中に挿入することによって、外側制御棒クラスター5が、制御棒保持ユニット44に連結されて制御棒保持ユニット44に保持される。回転フック45は、外側制御棒クラスター5と制御棒保持ユニット44を切り離し可能に連結する連結手段である。制御棒保持ユニット44は、後述するように、スクラム信号を入力することによって、回転フック(連結手段)45を作動させ、外側制御棒クラスター5と制御棒保持ユニット44が切り離される。
【0033】
なお、外側制御棒クラスター5の上下動を円滑に行うため、少なくとも3個の吊り金具22が、外側制御棒クラスター5の上端に等間隔で取り付けられている。3個の吊り金具22のそれぞれの真上で回転プラグ10の上面に、吊り金具22の個数と同じ三台の巻き取り装置30が設置されている。それらの巻き取り装置30から下方に向かって伸びるステンレス鋼製のロープ31の下端部が、下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間に配置される三つの制御棒保持ユニット44のそれぞれに取り付けられる。三つの制御棒保持ユニット44のそれぞれに設けられた回転フック45が、上記の三つの吊り金具22の輪の中に挿入される。外側制御棒クラスター5は、三つの制御棒保持ユニット44によって保持される。
【0034】
なお、巻き取り装置30によって内側制御棒クラスター2を炉心11の軸方向に移動させ、制御棒駆動機構32によって外側制御棒クラスター5を炉心11の軸方向に移動させてもよい。この場合には、一台の巻き取り装置30及び三台の制御棒駆動機構32のそれぞれが、回転プラグ10の上面に取り付けられた支持板54に設置される。三台の制御棒駆動機構32は巻き取り装置30の周囲に配置される。巻き取り装置30から下方に向かって伸びるステンレス鋼製のロープ31の下端部が、上部内側制御棒案内管28及び下部内側制御棒案内管26内を通って、下部内側制御棒案内管26内に配置される制御棒保持ユニット44に取り付けられる。制御棒保持ユニット44に設けられた回転フック45を、下部内側制御棒案内管26内に配置された内側制御棒クラスター2の上端に設けられた吊り金具22の輪の中に挿入することによって、内側制御棒クラスター2が、制御棒保持ユニット44に連結されて制御棒保持ユニット44に保持される。
【0035】
三台の制御棒駆動機構32のそれぞれに連結されて下方に向かって伸びる駆動延長軸33の下端部が、上部外側制御棒案内管29と上部内側制御棒案内管28の間に形成される環状領域を通って、下部外側制御棒案内管27と下部内側制御棒案内管26の間に形成される環状領域に配置される環状の外側制御棒クラスター5の上端に連結される。三台の制御棒駆動機構32の各駆動延長軸33が外側制御棒クラスター5の上端に連結される位置は、環状の外側制御棒クラスター5の上端に等間隔に配置される。三台の制御棒駆動機構32は、同期して外側制御棒クラスター5を炉心11の軸方向に移動させる。
【0036】
炉心燃料領域12から引き抜かれている外側制御棒クラスター5の炉心燃料領域12への緊急挿入は、制御棒駆動機構32によって行われ、炉心燃料領域12から引き抜かれている内側制御棒クラスター2の炉心燃料領域12への緊急挿入は、制御棒保持ユニット44の回転フック45を、内側制御棒クラスター2の上端に取り付けられた吊り金具22から切り離すことによって行われる。
【0037】
後備炉停止系制御棒23のそれぞれも、内側炉心燃料領域14内の内側炉心燃料集合体18の相互間、及び外側炉心燃料領域15内の外側炉心燃料集合体19の相互間に配置される(図10参照)。後備炉停止系制御棒23用の、横断面が正六角形の制御棒案内管73(図6参照)が、内側炉心燃料領域14内の内側炉心燃料集合体18の相互間、及び外側炉心燃料領域15内の外側炉心燃料集合体19の相互間にそれぞれ配置される。制御棒案内管73の下端が上部炉心支持板50に取り付けられ、制御棒案内管73の上端が炉心11の上端よりも上方に位置している。円筒状の下部外側制御棒案内管59が制御棒案内管73内に配置され、円筒状の下部内側制御棒案内管58が下部外側制御棒案内管59内に配置される。下部内側制御棒案内管58及び下部外側制御棒案内管59のそれぞれの下端が上部炉心支持板50に取り付けられる。下部内側制御棒案内管58及び下部外側制御棒案内管59のそれぞれの上端も、炉心11の上端よりも上方に位置している。
【0038】
円筒状の上部外側制御棒案内管61が下部外側制御棒案内管59の真上に配置され、上部外側制御棒案内管61の上端部が、回転プラグ10を貫通して回転プラグ10に取り付けられる。支持板54Aが上部外側制御棒案内管61の上端を覆って回転プラグ10の上面に取り付けられる。円筒状の上部内側制御棒案内管60が下部内側制御棒案内管58の真上に配置されて上部外側制御棒案内管61内に配置され、上部内側制御棒案内管60の上端部が支持板54Aに取り付けられる。第4制御棒移動装置である制御棒駆動機構64が支持板54A上に設置される。制御棒駆動機構64に連結された駆動延長軸65が、回転プラグ10から下方に向かって伸びており、上部内側制御棒案内管60及び下部内側制御棒案内管58内に配置される。後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36が、下部内側制御棒案内管58内に配置され、駆動延長軸65の下端部に連結されている。
【0039】
下部内側制御棒案内管26が上部内側制御棒案内管28から切り離されて下部外側制御棒案内管27が上部外側制御棒案内管29から切り離され、さらに、下部内側制御棒案内管58が上部内側制御棒案内管60から切り離されており、下部外側制御棒案内管59が上部外側制御棒案内管61から切り離されているため、回転プラグ10の回転はそれらの制御棒案内管によって阻害されない。
【0040】
第3制御棒移動装置である巻き取り装置62が回転プラグ10の上面に設置され、巻き取り装置62から下方に向かって伸びるステンレス鋼製のロープ63の下端部が、上部内側制御棒案内管60と上部外側制御棒案内管61の間に形成される環状領域を通って、下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間に配置される制御棒保持ユニット66に取り付けられる。下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間に配置される、後備炉停止系制御棒23の、環状の外側制御棒クラスター55は、制御棒保持ユニット66によって保持される。具体的には、制御棒保持ユニット66に設けられた回転フック67を、外側制御棒クラスター55の上端に設けられた吊り金具75の輪の中に挿入することによって、外側制御棒クラスター55が制御棒保持ユニット66に保持される。
【0041】
なお、外側制御棒クラスター55の上下動を円滑に行うため、少なくとも3個の吊り金具75が、外側制御棒クラスター55の上端に等間隔で取り付けられている。3個の吊り金具75のそれぞれの真上で回転プラグ10の上面に、吊り金具75の個数と同じ三台の巻き取り装置62が設置されている。それらの巻き取り装置62から下方に向かって伸びるロープ63の下端部が、下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間に配置される三つの制御棒保持ユニット66のそれぞれに取り付けられる。三つの制御棒保持ユニット66のそれぞれに設けられた回転フック67が、上記の三つの吊り金具75の輪の中に挿入される。外側制御棒クラスター55は、三つの制御棒保持ユニット66によって保持される。
【0042】
高速増殖炉8は、外側制御棒クラスター、外側制御棒クラスターを炉心11の軸方向に移動させる第1制御棒移動装置、内側制御棒クラスター、内側制御棒クラスターを炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置を含む制御棒システムを有する。第1制御棒移動装置及び第2制御棒移動装置は、制御棒クラスターを炉心11の軸方向に移動させる機構が異なっている。高速増殖炉8におけるその制御棒システムは、具体的には、制御棒1(主炉停止系制御棒)の外側制御棒クラスター5、外側制御棒クラスター5を炉心11の軸方向に移動させる第1制御棒移動装置、制御棒1の内側制御棒クラスター2、内側制御棒クラスター2を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55、外側制御棒クラスター55を炉心11の軸方向に移動させる第1制御棒移動装置、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36、内側制御棒クラスター36を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置を含んでいる。制御棒1の外側制御棒クラスター5及び後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55のそれぞれをその軸方向に移動させる第1制御棒移動装置は、巻き取り装置である。制御棒1の内側制御棒クラスター2及び後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36のそれぞれをその軸方向に移動させる第2制御棒移動装置は、制御棒駆動機構である。
【0043】
さらに、後備炉停止系制御棒23において、巻き取り装置62によって内側制御棒クラスター36を炉心11の軸方向に移動させ、制御棒駆動機構64によって外側制御棒クラスター55を炉心11の軸方向に移動させてもよい。この場合には、一台の巻き取り装置62及び三台の制御棒駆動機構64のそれぞれが、回転プラグ10の上面に取り付けられた支持板54に設置される。三台の制御棒駆動機構64は巻き取り装置62の周囲に配置される。巻き取り装置62から下方に向かって伸びるロープ63の下端部が、上部内側制御棒案内管60及び下部内側制御棒案内管58内を通って、下部内側制御棒案内管58内に配置される制御棒保持ユニット66に取り付けられる。制御棒保持ユニット66に設けられた回転フック67を、下部内側制御棒案内管58内に配置された内側制御棒クラスター36の上端に設けられた吊り金具22の輪の中に挿入することによって、内側制御棒クラスター36が、制御棒保持ユニット66に連結されて制御棒保持ユニット66に保持される。
【0044】
三台の制御棒駆動機構64のそれぞれに連結されて下方に向かって伸びる駆動延長軸65の下端部が、上部外側制御棒案内管61と上部内側制御棒案内管60の間に形成される環状領域を通って、下部外側制御棒案内管59と下部内側制御棒案内管58の間に形成される環状領域に配置される環状の外側制御棒クラスター5の上端に連結される。三台の制御棒駆動機構64の各駆動延長軸65が外側制御棒クラスター55の上端に連結される位置は、環状の外側制御棒クラスター55の上端に等間隔に配置される。三台の制御棒駆動機構64は、同期して外側制御棒クラスター55を炉心11の軸方向に移動させる。
【0045】
炉心燃料領域12から引き抜かれている外側制御棒クラスター55の炉心燃料領域12への緊急挿入は、制御棒駆動機構64によって行われ、炉心燃料領域12から引き抜かれている内側制御棒クラスター36の炉心燃料領域12への緊急挿入は、制御棒保持ユニット66の回転フック67を、内側制御棒クラスター36の上端に取り付けられた吊り金具22から切り離すことによって行われる。
【0046】
図7において、下部内側制御棒案内管26及び58、下部外側制御棒案内管27および59、上部内側制御棒案内管28及び60、上部外側制御棒案内管29及び61、制御棒1の内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5は、それらの構成の相互の関連性を理解し易くするために、拡大して記載されている。さらに、下部内側制御棒案内管58、下部外側制御棒案内管59、上部内側制御棒案内管60、上部外側制御棒案内管61、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55も、それらの構成の相互の関連性を理解し易くするために、同様に、拡大して記載されている。
【0047】
制御棒1を対象にした制御ユニット43は、図8に示すように、各巻き取り装置30、制御棒駆動機構32、及び制御棒保持ユニット44に接続される。後備炉停止系制御棒23を対象にした制御ユニット43Aは、図9に示すように、各巻き取り装置62、制御棒駆動機構64、及び制御棒保持ユニット66に接続される。制御ユニット43Aを設けず、制御ユニット43を、巻き取り装置62、制御棒駆動機構64、及び制御棒保持ユニット66にも接続してもよい。
【0048】
高速増殖炉8の運転中においては、前述した一次冷却系配管に設けられた主冷却材ポンプが駆動され、原子炉容器9内の上部プレナム53に存在する液体ナトリウム24が出口配管9Bから一次冷却系配管に排出される。この液体ナトリウム24が、主冷却材ポンプによって昇圧され、中間熱交換器に供給される。液体ナトリウム24は、中間熱交換器のシェル側を流れて中間熱交換器の伝熱管内を流れる二次系の液体ナトリウムと熱交換される。その中間熱交換器から一次冷却系配管に排出された液体ナトリウム24は、入口配管9Aから原子炉容器9内の下部プレナム40に供給される。下部プレナム40内の液体ナトリウム24は、開口25を通って高圧プレナム41に導かれる。
【0049】
高圧プレナム41内の液体ナトリウム24は、内側炉心燃料集合体18、外側炉心燃料集合体19及びブランケット燃料集合体20のそれぞれのエントランスノズルの側壁部に形成された冷却材流入口を通して内側炉心燃料集合体18、外側炉心燃料集合体19及びブランケット燃料集合体20のそれぞれの内部に達する。内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19内を上昇する液体ナトリウム24は、それぞれの燃料集合体内の燃料棒内に充填された核燃料物質に含まれる核分裂性物質(例えば、Pu-239)の核分裂によって発生する熱により加熱され、温度が上昇する。温度が上昇した液体ナトリウム24は、内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19の上端から上部プレナム53に流出する。この高温の液体ナトリウム24は、前述したように中間熱交換器に供給される。ブランケット燃料集合体20内に供給された液体ナトリウム24も、ブランケット燃料集合体20内を上昇し、ブランケット燃料集合体20の上端から上部プレナム53に流出する。
【0050】
高圧プレナム41内の液体ナトリウム24は、制御棒1用に設けられた下部内側制御棒案内管26内、及び下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間に形成される環状領域内にそれぞれ導かれ、下部内側制御棒案内管26及びその環状領域内を上昇する。下部内側制御棒案内管26内を上昇する液体ナトリウム24は、下部内側制御棒案内管26内に存在する内側制御棒クラスター2を冷却し、下部内側制御棒案内管26の上端から上部プレナム53に排出される。下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間の環状領域内を上昇する液体ナトリウム24は、その環状領域内に存在する外側制御棒クラスター5を冷却し、その環状領域から上部プレナム53に排出される。
【0051】
さらに、高圧プレナム41内の液体ナトリウム24は、後備炉停止系制御棒23用に設けられた下部内側制御棒案内管58内、及び下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間に形成される環状領域内にそれぞれ導かれ、下部内側制御棒案内管58及びその環状領域内を上昇する。下部内側制御棒案内管58内を上昇する液体ナトリウム24は、下部内側制御棒案内管58内に存在する内側制御棒クラスター36を冷却し、下部内側制御棒案内管58の上端から上部プレナム53に排出される。下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間の環状領域内を上昇する液体ナトリウム24は、その環状領域内に存在する外側制御棒クラスター55を冷却し、その環状領域から上部プレナム53に排出される。
【0052】
本実施例の制御棒1を備えた高速増殖炉8の或る運転サイクルで、負荷追従運転が実施される。この高速増殖炉8の負荷追従運転における制御棒の操作方法を以下に説明する。
【0053】
高速増殖炉8の運転停止時には、全ての制御棒1の内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5が、図3に示すように、炉心燃料領域12(燃料有効長の部分)内に全挿入されている。外側制御棒クラスター5の炉心燃料領域12内への全挿入は、巻き取り装置30のロープ31を巻き付けている回転ドラムを逆回転させてロープ31を回転ドラムから繰り出し、外側制御棒クラスター5を保持している制御棒保持ユニット44を下降させることによって行われる。図3では、外側制御棒クラスター5は、制御棒保持ユニット44から切り離されて炉心燃料領域12に全挿入されているが、高速増殖炉8の通常の運転停止時には、前述したように、炉心燃料領域12に全挿入された外側制御棒クラスター5は制御棒保持ユニット44に保持されている。内側制御棒クラスター2の炉心燃料領域12への全挿入は、制御棒駆動機構32によって行われる。
【0054】
或る運転サイクルで高速増殖炉8の運転が開始された後、高速増殖炉8が内部に設置されている原子炉格納容器(図示せず)の外部に存在する制御室(図示せず)内での運転員の操作により、制御室内の制御盤(図示せず)から出力された制御指令である外側制御棒クラスター引き抜き指令に基づいて、制御ユニット43から各巻き取り装置30に外側制御棒クラスター引き抜き信号が出力される。この引き抜き信号により、三台の巻き取り装置30の各回転ドラムが正回転される。各回転ドラムは、それぞれの回転ドラムに対して設けられたモータが同期して回転することによって正回転される。モータの回転速度は減速歯車によって所定速度まで減速されるので、各回転ドラムはその所定速度で正回転される。三台の巻き取り装置30のそれぞれの回転ドラムが正回転されることにより、3本のロープ31のそれぞれが別々に各回転ドラムに巻き付けられ、制御棒1の外側制御棒クラスター5が下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間の環状領域内で徐々に上昇される。
【0055】
その或る運転サイクルでは、全ての制御棒1が正常に動作するため、全ての後備炉停止系制御棒23は操作されず、炉心燃料領域12から全引き抜きされている(図11参照)。
【0056】
外側制御棒クラスター5の上昇に伴い、高速増殖炉8の炉心11に装荷された内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19内の核燃料物質に含まれた核分裂性プルトニウムが核分裂し、やがて、高速増殖炉8が臨界に達する。さらに、外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から引き抜かれ、炉心11に装荷された内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19内の核分裂性物質の核分裂が促進され、それらの燃料集合体内を上昇する液体ナトリウム24の温度が上昇する。これに併せて、高速増殖炉8の原子炉出力も上昇する。
【0057】
外側制御棒クラスター5の炉心燃料領域12からの引き抜きは、前述したように、各巻き取り装置30の回転ドラムを正回転させてロープ31を回転ドラムに巻き付けることによって行われる。また、外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされたとき、制御棒保持ユニット44の少なくとも一部が、下部内側制御棒案内管26の上端と下部外側制御棒案内管27の上端との間に位置している(図1参照)。
【0058】
全ての制御棒1の内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に全挿入されたまま、所定体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされたとき、それらの巻き取り装置30の回転ドラムの正回転が停止される。所定体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜された状態(図1参照)で、高速増殖炉8の原子炉出力が、その負荷追従運転における、第1目標原子炉出力(高速増殖炉8の定格運転時の定格出力(100%原子炉出力)未満の或る原子炉出力)まで上昇される。それらの外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされて原子炉出力が第1目標原子炉出力まで上昇したときにおける、各巻き取り装置30の回転ドラムの回転停止は、以下のようにして行われる。すなわち、制御盤から制御ユニット43に出力された外側制御棒クラスター引き抜き停止指令に基づいて制御ユニット43から各巻き取り装置30に駆動停止信号が出力される。駆動停止信号を入力した各巻き取り装置30では、回転ドラムの回転が停止される。原子炉出力がその第1目標原子炉出力に到達した後、その第1目標原子炉出力での高速増殖炉8の負荷追従運転が、前述の或る運転サイクルの末期まで継続して実施される。
【0059】
その或る運転サイクルの途中で原子炉出力が第1目標原子炉出力よりも低下した場合には、制御盤から出力された内側制御棒クラスター引き抜き指令に基づいて制御ユニット43から制御棒駆動機構32に内側制御棒クラスター引き抜き信号が出力される。この内側制御棒クラスター引き抜き信号により、制御棒駆動機構32が作動する。制御棒1の内側制御棒クラスター2が、制御棒駆動機構32の作動により、炉心燃料領域12から徐々に引き抜かれ、高速増殖炉8の原子炉出力を増加させる。その原子炉出力が第1目標原子炉出力になったとき、制御盤から出力された内側制御棒クラスター引き抜き停止指令に基づいて制御ユニット43から制御棒駆動機構32に内側制御棒クラスター引き抜き停止信号が出力され、制御棒駆動機構32による内側制御棒クラスター2の上昇が停止される。このような内側制御棒クラスター2の上昇、及び上昇停止を繰り返すことにより、その運転サイクルを通して、原子炉出力を第1目標原子炉出力に保持した状態で、高速増殖炉8の運転が継続される。
【0060】
なお、内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19のそれぞれの核燃料物質に含まれている核分裂性物質、例えば、核分裂性プルトニウムの燃焼に伴って燃焼反応度が変動したり、高速増殖炉8の冷却材である液体ナトリウム24の温度が変化してドップラー反応度及びその核燃料物質の膨張反応度が投入されたりした場合には、高速増殖炉8の余剰反応度が変化する。このような高速増殖炉8の余剰反応度に変化が生じたときには、制御棒1の内側制御棒クラスター2の炉心燃料領域12への挿入本数を調整することによって、その余剰反応度の変化に対応して高速増殖炉8の運転を継続することができる。
【0061】
高速増殖炉8のその運転サイクルでの運転が終了したとき、高速増殖炉8の運転が停止される。高速増殖炉8の運転停止指令は、制御盤から制御ユニット43に出力される。運転停止指令を入力した制御ユニット43は、全ての巻き取り装置30及び全ての制御棒駆動機構32に対して運転停止信号を出力する。この運転停止信号を入力した三台の巻き取り装置30は、それぞれの回転ドラムを逆回転させて各回転ドラムに巻き付けられたロープ31を繰り出し、外側制御棒クラスター5を下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間の環状領域内で下降させる。その運転停止信号を入力した制御棒駆動機構32は、内側制御棒クラスター2を下部内側制御棒案内管26内で下降させる。全ての制御棒1の外側制御棒クラスター5及び内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12内に全挿入されたとき、すなわち、外側制御棒クラスター5及び内側制御棒クラスター2のそれぞれが、図3に示す位置に達したとき、高速増殖炉8の運転が停止され、冷温停止状態になる。
【0062】
負荷追従運転における目標原子炉出力は、一つの運転サイクル内で変わる場合もあり、異なる運転サイクルの間でも変わる場合がある。第1目標原子炉出力で負荷追従運転する以外に、運転サイクルにおいて、前述の第1目標原子炉出力よりも高く定格出力よりも低い第2目標原子炉出力で負荷追従運転を実施する場合がある。この場合には、第1目標原子炉出力で負荷追従運転する場合における制御棒1の体数よりも多い体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされる。また、前述の第1目標原子炉出力よりも低い第3目標原子炉出力で負荷追従運転を実施する場合も考えられる。第3目標原子炉出力での負荷追従運転では、前述の第1目標原子炉出力で負荷追従運転する場合における制御棒1の体数よりも少ない体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされる。
【0063】
高速増殖炉8に異常事態が生じ、高速増殖炉8を緊急停止しなければならない。このとき、制御室内の制御盤からスクラム信号が制御ユニット43に出力される。スクラム信号を入力した制御ユニット43は、スクラム信号を、全ての制御棒保持ユニット44及び全ての制御棒駆動機構32に対して出力する。スクラム信号を入力した制御棒保持ユニット44は、回転フック45を逆回転させて回転フック45を外側制御棒クラスター5に設けられた吊り金具22から外す。この結果、外側制御棒クラスター5が制御棒保持ユニット44から切り離され、外側制御棒クラスター5が上部炉心支持板50に向かって落下する。すなわち、外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12内に急速挿入される。また、スクラム信号を入力した制御棒駆動機構32は、内側制御棒クラスター2と制御棒駆動機構32の駆動延長軸33との連結状態を解除する。このため、内側制御棒クラスター2も、上部炉心支持板50に向かって落下し、炉心燃料領域12内に急速挿入される。このようにして、高速増殖炉8が緊急停止される。急速挿入された内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5は炉心燃料領域12内に存在する(図3参照)。
【0064】
なお、全ての内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12内に全挿入されている状態で高速増殖炉8に異常事態が生じときには、制御盤から出力されたスクラム信号を入力した制御ユニット43は、スクラム信号を、全ての制御棒保持ユニット44のみに対して出力する。このとき、全ての外側制御棒クラスター5が、各制御棒保持ユニット44から切り離されて炉心燃料領域12に急速挿入される。
【0065】
本実施例で用いられる後備炉停止系制御棒23が内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55を有しているため、高速増殖炉8の負荷追従運転の幅を広げることができる。すなわち、全ての制御棒1の外側制御棒クラスター5を炉心燃料領域12から全引き抜きし、さらに、高速増殖炉8に設けた全ての後備炉停止系制御棒23のうちの一部である所定体数(複数体)の後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55を炉心燃料領域12から全引き抜きすることにより、外側制御棒クラスター5を炉心燃料領域12から全引き抜きしたときに到達する原子炉出力よりも低い第4目標原子炉出力で高速増殖炉8の負荷追従運転を行うことができる。このような全ての制御棒1、及び所定体数の後備炉停止系制御棒23の両者を用いる、高速増殖炉8における第4目標原子炉出力での負荷追従運転を以下に説明する。
【0066】
この負荷追従運転では、前述したように、全ての制御棒1の外側制御棒クラスター5が巻き取り装置30によって操作され、全ての制御棒1の内側制御棒クラスター3が制御棒駆動機構32によって操作される。このため、ここでは、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55及び内側制御棒クラスター36のそれぞれの操作を説明する。
【0067】
或る運転サイクルでの高速増殖炉8の運転が開始された後、外側制御棒クラスター5毎に設けられた三台の巻き取り装置30を操作して全ての制御棒1の外側制御棒クラスター5を炉心燃料領域12から全引き抜きする。全ての外側制御棒クラスター5の炉心燃料領域12からの全引き抜きに併せて、三台の巻き取り装置62のそれぞれの回転ドラムを正回転させてロープ63を各回転ドラムに巻き付け、所定体数の後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55を下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間の環状領域内で徐々に上昇させる。運転員の操作により制御室内の制御盤から出力された制御指令である外側制御棒クラスター引き抜き指令に基づいて制御ユニット43Aから各巻き取り装置62に外側制御棒クラスター引き抜き信号が出力される。この引き抜き信号により、各巻き取り装置62の回転ドラムが正回転され、所定体数の後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が上昇する。
【0068】
外側制御棒クラスター55の上昇に伴い、高速増殖炉8の炉心11に装荷された、操作される後備炉停止系制御棒23近傍の内側炉心燃料集合体18(または外側炉心燃料集合体19)内の核燃料物質に含まれた核分裂性プルトニウムが核分裂し、各制御棒1の外側制御棒クラスター5の上昇と相俟って、やがて、高速増殖炉8が臨界に達する。さらに、所定体数の外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12から引き抜かれ、その内側炉心燃料集合体18(または外側炉心燃料集合体19)内の核分裂性物質の核分裂が促進され、それらの燃料集合体内を上昇する液体ナトリウム24の温度が上昇する。その外側制御棒クラスター55及び各外側制御棒クラスター5の引き抜きに併せて、高速増殖炉8の原子炉出力も上昇する。
【0069】
外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12から全引き抜きされたとき、制御棒保持ユニット66の少なくとも一部が、下部内側制御棒案内管58の上端と下部外側制御棒案内管59の上端との間に位置している(図5参照)。
【0070】
所定体数の後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12から全引き抜きされたとき、それの巻き取り装置62の回転ドラムの正回転が停止される。全ての制御棒1の外側制御棒クラスター5及び所定体数の後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55のそれぞれが炉心燃料領域12から全引き抜された状態で、高速増殖炉8の原子炉出力が、その負荷追従運転における、前述の第4目標原子炉出力まで上昇される。原子炉出力が第4目標原子炉出力まで上昇したときにおける、巻き取り装置62の回転ドラムの回転停止は、以下のようにして行われる。すなわち、制御盤から制御ユニット43Aに出力された外側制御棒クラスター引き抜き停止指令に基づいて制御ユニット43Aから巻き取り装置62に駆動停止信号が出力される。駆動停止信号を入力した巻き取り装置62では、回転ドラムの回転が停止される。原子炉出力がその第4目標原子炉出力に到達した後、その第4目標原子炉出力での高速増殖炉8の負荷追従運転が、前述の或る運転サイクルの末期まで継続して実施される。
【0071】
その或る運転サイクルの途中で原子炉出力が第4目標原子炉出力よりも低下した場合には、制御盤から出力された内側制御棒クラスター引き抜き指令に基づいて、制御ユニット43から制御棒駆動機構32、及び制御ユニット43Aから制御棒駆動機構64のそれぞれに内側制御棒クラスター引き抜き信号が出力される。この内側制御棒クラスター引き抜き信号により、制御棒駆動機構32及び64が作動する。制御棒駆動機構32の作動により全ての内側制御棒クラスター2が、また、制御棒駆動機構64の作動により所定体数の内側制御棒クラスター36が、炉心燃料領域12から徐々に引き抜かれ、高速増殖炉8の原子炉出力を増加させる。その原子炉出力が第4目標原子炉出力になったとき、制御盤から出力された内側制御棒クラスター引き抜き停止指令に基づいて、制御ユニット43から制御棒駆動機構32に内側制御棒クラスター引き抜き停止信号が出力され、制御ユニット43Aから制御棒駆動機構64に内側制御棒クラスター引き抜き停止信号が出力される。このため、制御棒駆動機構32による内側制御棒クラスター2の引抜き、及び制御棒駆動機構64による内側制御棒クラスター36の引抜きが停止される。このような内側制御棒クラスター2及び36の引抜き、及び引抜き停止を繰り返すことにより、その或る運転サイクルを通して、原子炉出力を第4目標原子炉出力に保持した状態で、高速増殖炉8の孵化追従運転が継続される。
【0072】
高速増殖炉8のその或る運転サイクルでの運転が終了したとき、高速増殖炉8の運転が停止される。高速増殖炉8の運転停止指令は、制御盤から制御ユニット43及び43Aに出力される。運転停止指令を入力した制御ユニット43は、全ての制御棒1に対応する巻き取り装置30及び全ての制御棒駆動機構32に対して運転停止信号を出力する。運転停止指令を入力した制御ユニット43Aは、所定体数の後備炉停止系制御棒23に対応する巻き取り装置62及び制御棒駆動機構64に対して運転停止信号を出力する。
【0073】
運転停止信号を入力した三台の巻き取り装置30及び制御棒駆動機構32による外側制御棒クラスター5及び内側制御棒クラスター2の操作は、前述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0074】
全ての制御棒1の内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12内に全挿入されたとき、高速増殖炉8の運転が停止される。
【0075】
複数の正常な制御棒1と1体の後備炉停止系制御棒23を用いて高速増殖炉8の原子炉出力を制御しているときに、高速増殖炉8に異常事態が生じると、制御室内の制御盤からスクラム信号が制御ユニット43に出力されると共に、そのスクラム信号が制御ユニット43Aにも出力される。制御ユニット43は、そのスクラム信号を正常な制御棒1の制御棒保持ユニット44に出力する。前述したように、外側制御棒クラスター5が、制御棒保持ユニット44から切り離されて、炉心燃料領域12に急速挿入される。制御ユニット43Aは、そのスクラム信号を後備炉停止系制御棒23の制御棒保持ユニット66に出力する。この結果、外側制御棒クラスター55が、制御棒保持ユニット66から切り離されて、炉心燃料領域12に急速挿入され、高速増殖炉8が緊急停止される。
【0076】
従来の主炉停止系制御棒68の構成を図12及び図13を用いて説明する。主炉停止系制御棒68は、複数の制御棒要素69を上下端が封鎖された円筒状の制御棒保護管70内に配置している。制御棒要素69は、炭化ホウ素の複数のペレットを密封された被覆管(図示せず)内に充填している。主炉停止系制御棒68は、炉心燃料領域12内で燃料集合体相互間に配置された制御棒案内管72内に配置される。その主炉停止系制御棒68は、制御棒駆動機構(図示せず)に連結された駆動延長軸71に取り付けられる。
【0077】
主炉停止系制御棒68に含まれる制御棒要素69の本数は、本実施例で用いられる制御棒1の、内側制御棒クラスター2に含まれる制御棒要素3の本数及び外側制御棒クラスター5に含まれる制御棒要素6の本数を合計した本数と同じ21本(図4参照)である。このため、内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5のうち、制御棒1の内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に全挿入されたときにおける制御棒1の反応度価値は、主炉停止系制御棒68が炉心燃料領域12に全挿入されたときにおける主炉停止系制御棒68の反応度価値よりも小さくなる。
【0078】
このように、本実施例では、制御棒価値が小さい内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に挿入されるため、内側制御棒クラスター2が挿入された炉心燃料領域12の軸方向における出力分布のピークは、従来の主炉停止系制御棒68が挿入された炉心燃料領域12の軸方向における出力分布のピークよりも低くなる。図14は、本実施例の制御棒1において、外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされて内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に全挿入された状態での、炉心燃料領域12の軸方向における出力分布は実線で示される。内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に全挿入された状態でのその軸方向の出力分布は、実線で示すように、コサイン分布になっている。これに対して、従来の主炉停止系制御棒68の一部を炉心燃料領域12から引き抜いた場合における炉心燃料領域12の軸方向の出力分布は、図14に破線で示すように、従来の主炉停止系制御棒の下端付近に大きな出力ピークが形成される。外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされて内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に全挿入された状態での、炉心燃料領域12の軸方向の出力分布における出力のピークは、従来の主炉停止系制御棒68の一部を炉心燃料領域12から引き抜いた場合における炉心燃料領域12の軸方向の出力分布の出力のピークよりも小さくなる。このため、本実施例の制御棒1を用いた場合には、負荷追従運転における高速増殖炉8の熱的余裕が増大する。
【0079】
次に、外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされて内側制御棒クラスター2の一部が炉心燃料領域12に挿入されている状態での、炉心燃料領域12の軸方向の出力分布について説明する。内側制御棒クラスター2の一部が炉心燃料領域12に挿入されている状態における炉心燃料領域12の軸方向の出力分布は、図14の実線のようなコサイン分布ではなく、内側制御棒クラスター2の下端付近に出力ピークが形成される。このため、外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされて内側制御棒クラスター2の一部が炉心燃料領域12に挿入されている場合において内側制御棒クラスター2の下端付近に形成される出力ピークは、外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされて内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に全挿入された状態での、炉心燃料領域12の軸方向におけるコサイン分布の出力分布の出力ピークよりも大きくなる。しかしながら、内側制御棒クラスター2の制御棒価値が従来の主炉停止系制御棒68のそれよりも小さいため、内側制御棒クラスター2の下端付近に形成される出力ピークは、従来の主炉停止系制御棒68の下端付近に形成される出力ピークよりも小さくなる。このように、内側制御棒クラスター2の一部が炉心燃料領域12に挿入されている場合でも、負荷追従運転中における高速増殖炉8の熱的余裕が増大する。
【0080】
本実施例において、後備炉停止系制御棒23も、制御棒1と同様に、内側制御棒クラスター及び外側制御棒クラスターを有する。このため、故障した制御棒1の替りに後備炉停止系制御棒23を用いることにより、制御棒1のみを用いた場合と同様に、高速増殖炉8の負荷追従運転を行うことができる。
【0081】
後備炉停止系制御棒23を用いた高速増殖炉8の負荷追従運転において、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12から全引き抜きされて内側制御棒クラスター36が炉心燃料領域12に全挿入された状態での、炉心燃料領域12の軸方向における出力分布は、制御棒1のみを用いた場合と同様に、コサイン分布になり、その出力分布の出力ピークは、従来の主炉停止系制御棒68の一部を炉心燃料領域12から引き抜いた場合における炉心燃料領域12の軸方向の出力分布の出力ピークよりも小さくなる。このため、後備炉停止系制御棒23を用いた場合には、負荷追従運転中における高速増殖炉8の熱的余裕が増大する。
【0082】
さらに、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12から全引き抜きされて内側制御棒クラスター36の一部が炉心燃料領域12に全挿入されている状態での、炉心燃料領域12の軸方向の出力分布は、内側制御棒クラスター36の下端付近に大きな出力ピークが形成される。しかしながら、内側制御棒クラスター36の制御棒価値が従来の主炉停止系制御棒68のそれよりも小さいため、内側制御棒クラスター36の下端付近に形成される出力ピークは、従来の主炉停止系制御棒68の下端付近に形成される出力ピークよりも小さくなる。このように、内側制御棒クラスター36の一部が炉心燃料領域12に挿入されている場合でも、負荷追従運転中における高速増殖炉8の熱的余裕が増大する。
【0083】
高速増殖炉8では、制御棒1の外側制御棒クラスター5が巻き取り装置30によって炉心11の軸方向に移動され、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が巻き取り装置62によって炉心11の軸方向に移動される。このため、外側制御棒クラスター5及び55は、制御棒駆動機構よりも構造が単純な巻き取り装置によって炉心11の軸方向において移動させることができる。
【0084】
高速増殖炉8は、炉心11内に、下部内側制御棒案内管26、及び下部内側制御棒案内管26を取り囲む下部外側制御棒案内管27を配置しており、制御棒1の内側制御棒クラスター2を下部内側制御棒案内管26内において炉心11の軸方向に移動させ、外側制御棒クラスター5を下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間において炉心11の軸方向に移動させている。このため、炉心11の軸方向に移動する内側制御棒クラスター2と外側制御棒クラスター5が互いに干渉することを避けることができ、内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5のそれぞれの、炉心11の軸方向における移動を円滑に行うことができる。
【0085】
さらに、高速増殖炉8は、炉心11内に、下部内側制御棒案内管58、及び下部内側制御棒案内管58を取り囲む下部外側制御棒案内管59を配置している。このため、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36を下部内側制御棒案内管58内において炉心11の軸方向に移動させ、外側制御棒クラスター55を下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間において炉心11の軸方向に移動させている。このため、炉心11の軸方向に移動する内側制御棒クラスター36と外側制御棒クラスター55が互いに干渉することを避けることができ、内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55のそれぞれの、炉心11の軸方向における移動を円滑に行うことができる。
【0086】
負荷追従運転時において操作する制御棒1としては、炉心11の中心近くに配置されている制御棒1、例えば、外側炉心燃料領域15に配置される制御棒1よりも内側炉心燃料領域14に配置される制御棒1、さらに、内側炉心燃料領域14ではできるだけ内側炉心燃料領域14の中心近くに配置されている制御棒1を使用することが望ましい。制御棒1の制御棒価値は、炉心11の中心近くに配置される制御棒1ほど、高くなる。このため、負荷追従運転時において炉心11の中心近くに配置される制御棒1を用いることにより、負荷追従運転時における原子炉出力の変動幅を大きくすることができる。
【0087】
負荷追従運転時に後備炉停止系制御棒23を使用する必要が生じた場合にも、炉心11の中心近くに配置される後備炉停止系制御棒23を用いることにより、負荷追従運転時における原子炉出力の変動幅を大きくすることができる。
【0088】
制御棒1の外側制御棒クラスター5が、回転フック45を介して、巻き取り装置30の回転ドラムに巻き付けられたロープ31に取り付けられた制御棒保持ユニット44に切り離し可能に連結されているため、高速増殖炉8に異常事態が生じたとき、スクラム信号を入力した制御棒保持ユニット44によって、回転フック45が作動され、外側制御棒クラスター5を制御棒保持ユニット44から切り離すことができる。このため、巻き取り装置30によって炉心11の軸方向に移動される外側制御棒クラスター5であっても、高速増殖炉8の異常事態において、炉心燃料領域12に容易に急速挿入することができる。
【0089】
また、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が、回転フック45を介して、巻き取り装置62の回転ドラムに巻き付けられたロープ63に取り付けられた制御棒保持ユニット66に切り離し可能に連結されているため、高速増殖炉8に異常事態が生じたとき、スクラム信号を入力した制御棒保持ユニット66によって、回転フック45が作動され、故障した制御棒1の替りに原子炉出力の制御に用いられている後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55を制御棒保持ユニット66から切り離すことができる。このため、巻き取り装置62によって炉心11の軸方向に移動される外側制御棒クラスター55であっても、高速増殖炉8の異常事態において、炉心燃料領域12に容易に急速挿入することができる。
【0090】
高速増殖炉8が内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55を含む後備炉停止系制御棒23を有し、全ての制御棒1の外側制御棒クラスター5及び所定体数の後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12から全引抜きされた状態で、全ての制御棒1の内側制御棒クラスター2及び所定体数の後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36を炉心燃料領域12に全挿入された状態から引き抜き、その或る運転サイクルにおいて第4目標原子炉出力を保持した負荷追従運転を行うことができる。本実施例の高速増殖炉8では、全ての制御棒1及び所定体数の後備炉停止系制御棒23を併用することにより、負荷追従運転の幅を広げることができる。
【0091】
全ての制御棒1の内側制御棒クラスター2(もしくは、全ての制御棒1の外側制御棒クラスター5)を使用するので、一部の制御棒1を挿入する場合よりも、炉心燃料領域12の半径方向の出力分布が平坦化され、熱的余裕が向上する。
【実施例0092】
本発明の好適な他の実施例である実施例2における高速増殖炉の構成を、図15図19を用いて説明する。本実施例の高速増殖炉8Aは、実施例1で述べた高速増殖炉8において、制御棒1の外側制御棒クラスター5を炉心11の軸方向において移動させる、第1制御棒移動装置である巻き取り装置30を制御棒駆動機構32Aに替え、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55を炉心11の軸方向において移動させる、第1制御棒移動装置である巻き取り装置62を制御棒駆動機構64Aに替えた構成を有する。制御棒駆動機構32A及び64Aは第2制御棒移動装置である。三台の制御棒駆動機構32Aが、回転プラグ10の上面に設けられた支持板54の上面に設置され、制御棒駆動機構32の周囲に配置される。下部内側制御棒案内管26と下部外側制御棒案内管27の間の環状領域に存在する外側制御棒クラスター5の上端が、三台の制御棒駆動機構32Aのそれぞれの駆動延長軸33Aの下端部に連結される。三台の制御棒駆動機構64Aが、回転プラグ10の上面に設けられた支持板54Aの上面に設置され、制御棒駆動機構64の周囲に配置される。下部内側制御棒案内管58と下部外側制御棒案内管59の間の環状領域に存在する外側制御棒クラスター55の上端が、三台の制御棒駆動機構64Aのそれぞれの駆動延長軸65Aの下端部に連結される。
【0093】
高速増殖炉8Aは、外側制御棒クラスター、外側制御棒クラスターを炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、内側制御棒クラスター、内側制御棒クラスターを炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置を含む制御棒システムを有する。高速増殖炉8Aにおけるその制御棒システムは、具体的には、制御棒1(主炉停止系制御棒)の内側制御棒クラスター2、内側制御棒クラスター2を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、制御棒1の外側制御棒クラスター5、外側制御棒クラスター5を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36、内側制御棒クラスター36を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55、外側制御棒クラスター55を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置を含んでいる。制御棒1の内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5、及び後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55のそれぞれをその軸方向に移動させる第2制御棒移動装置は、制御棒駆動機構である。
【0094】
高速増殖炉8Aは、外側制御棒クラスター、外側制御棒クラスターを炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、内側制御棒クラスター、内側制御棒クラスターを炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置を含む制御棒システムを有する。その高速増殖炉8Aにおけるその制御棒システムは、具体的には、制御棒1(主炉停止系制御棒)の外側制御棒クラスター5、外側制御棒クラスター5を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、制御棒1の内側制御棒クラスター2、内側制御棒クラスター2を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55、外側制御棒クラスター55を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36、内側制御棒クラスター36を炉心11の軸方向に移動させる第2制御棒移動装置を含んでいる。制御棒システムに含まれる第2制御棒移動装置は、制御棒駆動機構である。
【0095】
本実施例では、内側制御棒クラスター2及び内側制御棒クラスター36以外においても、外側制御棒クラスター5が制御棒駆動機構32Aによって炉心11の軸方向に移動され、外側制御棒クラスター55が制御棒駆動機構64Aによって炉心11の軸方向に移動される。
【0096】
高速増殖炉8Aの或る運転サイクルでは、前述の第1目標原子炉出力で負荷追従運転が実施される。その或る運転サイクルにおいて高速増殖炉8Aが起動されたとき、制御室内の制御盤から出力された外側制御棒クラスター引き抜き指令が制御ユニット43に入力され、制御ユニット43から、所定体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5毎に設けられた三台の制御棒駆動機構32Aに外側制御棒クラスター引き抜き信号が出力される。このため、所定体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5のそれぞれが三台の制御棒駆動機構32Aによって炉心燃料領域12から引き抜かれ、高速増殖炉8の原子炉出力が第1目標原子炉出力まで上昇される。原子炉出力がその第1目標原子炉出力に到達したとき、制御ユニット43に出力された外側制御棒クラスター引き抜き停止指令に基づいて制御ユニット43から、各三台の制御棒駆動機構32Aに駆動停止信号が出力される。この結果、所定体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5の軸方向における移動が停止される。その第1目標原子炉出力での高速増殖炉8Aの負荷追従運転が、実施例1と同様に、必要に応じて内側制御棒クラスター2を引き抜きながら、前述の或る運転サイクルの末期まで継続して実施される。
【0097】
或る運転サイクルにおける負荷追従運転が終了したとき、内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12に全挿入され(図17参照)、高速増殖炉8Aの運転が停止される。
【0098】
なお、本実施例でも、実施例1と同様に、全ての制御棒1及び所定体数の後備炉停止系制御棒23を併用することにより、高速増殖炉8Aの負荷追従運転を実施することができる。この負荷追従運転では、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12から全引き抜きされている状態で、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36が炉心燃料領域12に全挿入されている状態(図18参照)が存在する。
【0099】
高速増殖炉8Aに異常事象が生じて高速増殖炉8Aをスクラムさせるときに、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55のそれぞれが炉心燃料領域12に全挿入される(図19)。
【0100】
本実施例は、実施例1で生じる効果のうち、巻き取り装置30及び制御棒保持ユニット44の設置により得られる効果、及び巻き取り装置62及び制御棒保持ユニット66の設置により得られる効果を除いた他の効果を得ることができる。さらに、本実施例では、外側制御棒クラスター5が制御棒駆動機構32Aによって炉心11の軸方向に移動されるため、実施例1のように、炉心11内の燃料集合体における核燃料物質の燃焼状態の違い、及び冷却材(液体ナトリウム24)の温度の違いによって、負荷追従運転時における制御棒1の挿入本数を変える必要がなく、制御棒1の外側制御棒クラスター5の操作が簡略化される。また、炉心燃料領域12の半径方向における出力ピーキングも、抑制することができる。
【実施例0101】
本発明の好適な他の実施例である実施例3における高速増殖炉の制御棒操作方法を、図15及び図20図23を用いて説明する。本実施例の制御棒操作方法が適用される高速増殖炉は、実施例2で述べた高速増殖炉8Aであり、内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5を含む制御棒1、及び内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55を含む後備炉停止系制御棒23を有する。
【0102】
本実施例の高速増殖炉の制御棒操作方法では、高速増殖炉8Aの負荷追従運転を行うときに、制御棒1の内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12から全引き抜きされ、制御棒1の外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12に全挿入されている状態が存在する。このような状態が存在する、本実施例の高速増殖炉の制御棒操作方法は、負荷追従運転において、制御棒1の外側制御棒クラスター5が炉心燃料領域12から全引き抜きされ、制御棒1の内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12に全挿入される状態が存在する実施例1及び2のそれぞれの高速増殖炉の制御棒操作方法と異なっている。
【0103】
或る運転サイクルにおける負荷追従運転を開始するとき、全ての制御棒1の外側制御棒クラスターを炉心燃料領域12に全挿入にしたまま、所定体数の制御棒1の内側制御棒クラスター2を、対応する制御棒駆動機構32によって操作し、炉心燃料領域12から全引き抜き状態にする(図20参照)。この結果、高速増殖炉8Aの原子炉出力が、負荷追従運転時の目標原子炉出力まで上昇する。その後、必要に応じて、所定体数の制御棒1の外側制御棒クラスター5を制御棒駆動機構32Aによって炉心燃料領域12から引き抜きながら、その原子炉出力をその目標原子炉出力に保持した負荷追従運転が、前述の或る運転サイクルの末期まで継続して実施される。
【0104】
なお、本実施例でも、実施例1と同様に、全ての制御棒1及び所定体数の後備炉停止系制御棒23を併用することにより、或る運転サイクルにおいて、高速増殖炉8Aの負荷追従運転を実施することができる。併用される所定体数の後備炉停止系制御棒23においても、制御棒1と同様に、内側制御棒クラスター36が制御棒駆動機構64によって炉心燃料領域12から全引き抜きされ(図22参照)、その後、高速増殖炉8Aの原子炉出力が負荷追従運転時における目標原子炉出力よりも低下したとき、所定体数の後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55を制御棒駆動機構64Aによって炉心燃料領域12から引き抜き、原子炉出力を目標原子炉出力まで上昇させる。上記の或る運転サイクルにおいては、必要に応じて、外側制御棒クラスター55を炉心燃料領域12から引き抜きながら、目標原子炉出力での高速増殖炉8Aの負荷追従運転をその或る運転サイクルの末期まで継続して実施することができる。
【0105】
なお、本実施例でも、実施例1と同様に、全ての制御棒1及び所定体数の後備炉停止系制御棒23を併用することにより、高速増殖炉8Aの負荷追従運転を実施することができる。この負荷追従運転では、後備炉停止系制御棒23の後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36が炉心燃料領域12から全引き抜きされている状態で、後備炉停止系制御棒23の外側制御棒クラスター55が炉心燃料領域12に全挿入されている状態(図22参照)が存在する。
【0106】
高速増殖炉8Aに異常事象が生じて高速増殖炉8Aをスクラムさせるときに、後備炉停止系制御棒23の内側制御棒クラスター36及び外側制御棒クラスター55のそれぞれが炉心燃料領域12に全挿入される(図23)。
【0107】
内側制御棒クラスター2が炉心燃料領域12から全引き抜きされている状態で、炉心燃料領域12から引き抜かれる外側制御棒クラスター5の制御棒価値は、図16において、炉心燃料領域12から引き抜かれる内側制御棒クラスター2の制御棒価値よりも大きい。
【0108】
本実施例は、実施例1で生じる効果のうち、巻き取り装置30及び制御棒保持ユニット44の設置により得られる効果、及び巻き取り装置62及び制御棒保持ユニット66の設置により得られる効果を除いた他の効果を得ることができる。さらに、内側制御棒クラスター2と外側制御棒クラスター5は前述したように反応度価値が異なるので、原子炉出力変動の幅(種類)を2倍にすることができる。このため、制御棒価値が異なる内側制御棒クラスター2及び外側制御棒クラスター5をそれぞれ単独で炉心11の軸方向に移動させることによって、こまめに負荷追従運転を行うことができる。
【0109】
本実施例では、負荷追従運転を行うとき、実施例1及び2のように、炉心11から内側制御棒クラスター2を引き抜くのではなく、外側制御棒クラスター5を引き抜いている。外側制御棒クラスター5を引き抜くことにより、負荷追従運転時の原子炉出力をより低くすることができる。
【0110】
実施例1ないし3のそれぞれは、負荷追従運転時において、制御棒1の外側制御棒クラスター5が全引き抜きされている状態で、内側制御棒クラスター2を引き抜く、制御棒1の内側制御棒クラスター2が全引き抜きされている状態で、外側制御棒クラスター5を引き抜くそれぞれのケースについて述べている。しかしながら、高速増殖炉8(または高速増殖炉8A)の負荷追従運転時ではなく、通常の運転時(例えば、定格運転時)の反応度の燃焼補償を行うときにおいても、制御棒1の外側制御棒クラスター5が全引き抜きされている状態で、内側制御棒クラスター2を引き抜く、または、制御棒1の内側制御棒クラスター2が全引き抜きされている状態で、外側制御棒クラスター5を引き抜くことも可能である。特に、その反応度の燃焼補償を行うときに、炉心燃料領域12内の制御棒1をより多く使用すれば、炉心燃料領域12の半径方向における出力分布を平坦化することができ、熱的余裕を増大させることができる。
【0111】
実施例1ないし3では、炉心11に装荷される内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19のそれぞれは、核燃料物質として3元系の合金のU-Pu-10Zrが用いられている。U-Pu-10Zrの替りにMOX燃料を、核燃料物質として、内側炉心燃料集合体18及び外側炉心燃料集合体19のそれぞれに用いてもよい。
【0112】
また、実施例1ないし3では、高速増殖炉の冷却材として、液体ナトリウムを使用しているが、液体ナトリウムの替りに、鉛及び鉛ビスマスなどの、ナトリウム以外の液体金属を用いてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…制御棒(主炉停止系制御棒)、2,36…内側制御棒クラスター、5,55…外側制御棒クラスター、8,8A…高速増殖炉、9…原子炉容器、10…回転プラグ、11…炉心、12…炉心燃料領域、14…内側炉心燃料領域、15…外側炉心燃料領域、18…内側炉心燃料集合体、19…外側炉心燃料集合体、23…後備炉停止系制御棒、24…液体ナトリウム、26,58…下部内側制御棒案内管、27,59…下部外側制御棒案内管、30,62…巻き取り装置、31,63…ロープ、32,32A,64,64A…制御棒駆動機構、33,33A,65,65A…駆動延長軸、44,66…制御棒保持ユニット、45…回転フック、50…上部炉心支持板。
図1
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