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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083592
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】地震速報システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20220530BHJP
   G01V 1/28 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
G01V1/00 D
G01V1/28
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195003
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520462481
【氏名又は名称】一般社団法人防災減災技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 信宏
(72)【発明者】
【氏名】白木 克昌
(72)【発明者】
【氏名】江島 伸亮
(72)【発明者】
【氏名】竹村 剛一良
(72)【発明者】
【氏名】浅井 紘司
(72)【発明者】
【氏名】井上 駿平
(72)【発明者】
【氏名】長友 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】藤縄 幸雄
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE02
2G105GG05
2G105MM02
(57)【要約】
【課題】地震速報情報を迅速かつ高精度に出力することを可能とする地震速報システムを提供する。
【解決手段】地震速報システム1は、複数の地震計2と、複数の地震計2に接続されて、当該複数の地震計2による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する1又は複数の地震監視装置3とを備える。地震監視装置3は、地震波観測データに基づいて、複数の地震計2のうちP波を検出した地震計2をP波検出地震計として順次特定し、その特定したP波検出地震計の数に応じて地震速報情報の生成処理を実行することで地震速報情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地震計と、
前記複数の地震計に接続されて、当該複数の地震計による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する1又は複数の地震監視装置とを備える、
地震速報システム。
【請求項2】
前記複数の地震計は、
複数の観測地域内に分散配置されており、
前記複数の地震監視装置は、
前記観測地域の各々に対応して設けられるとともに、その対応する前記観測地域内の前記複数の地震計にそれぞれ接続されて、当該複数の地震計による前記地震波観測データに基づいて前記地震速報情報をそれぞれ出力する、
請求項1に記載の地震速報システム。
【請求項3】
前記複数の地震計は、
通信網を構成する基地局若しくは施設、
前記通信網を提供する事業者に関連する建物、
前記通信網を利用する利用者に関連する建物、又は、
前記通信網と通信可能な移動体にそれぞれ設置された、
請求項1又は請求項2に記載の地震速報システム。
【請求項4】
前記複数の地震計の配置密度は、
外部の地震観測機関における地震観測点の配置密度よりも高い、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項5】
前記地震監視装置は、
前記地震波観測データに基づいて、前記複数の地震計のうちP波を検出した前記地震計をP波検出地震計として順次特定し、
その特定した前記P波検出地震計の数に応じて前記地震速報情報の生成処理を実行することで前記地震速報情報を出力する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項6】
前記地震監視装置は、
前記P波検出地震計の数が増加する度に前記生成処理を実行するともに、前記P波検出地震計の数が所定の数を超えた場合には、前記P波検出地震計の一部による前記地震波観測データに基づいて前記生成処理を実行することで前記地震速報情報を順次出力する、
請求項5に記載の地震速報システム。
【請求項7】
前記地震監視装置は、
前記地震波観測データに基づいて前記P波検出地震計を特定したとき、当該P波検出地震計の設置位置と、当該P波検出地震計が検出した前記P波の検出強度及び検出時刻とを含むP波観測情報を取得し、当該P波観測情報に基づいて前記生成処理を実行することで、S波の強度及び到達時刻を含む前記地震速報情報を生成する、
請求項5又は請求項6に記載の地震速報システム。
【請求項8】
前記地震監視装置は、
前記P波検出地震計の数が3つである場合には、前記生成処理として、
3つの前記P波観測情報と、前記P波検出地震計が設置された地域における代表的地震深度とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項7に記載の地震速報システム。
【請求項9】
前記地震監視装置は、
前記P波検出地震計の数が4つ又は5つである場合には、前記生成処理として、
4つ又は5つの前記P波観測情報に基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項7又は請求項8に記載の地震速報システム。
【請求項10】
前記地震監視装置は、
前記P波を検出した前記地震計の数が6つ以上である場合には、前記生成処理として、
前記P波を最後に検出した前記P波検出地震計における前記P波観測情報と、当該P波検出地震計を除く他の前記P波検出地震計のうち震源位置に近い順に抽出した4つの前記P波検出地震計における4つの前記P波観測情報とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項11】
前記地震監視装置は、
外部の地震観測機関から外部速報情報を受信可能に構成されており、
前記地震波観測データに基づいて前記P波検出地震計を特定した後に、前記地震観測機関から前記外部速報情報を受信した場合には、前記生成処理として、その受信した時点における前記P波検出地震計による前記地震波観測データと、当該外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項5乃至請求項10のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項12】
前記地震監視装置は、
前記地震観測機関から前記外部速報情報を受信した後に、前記P波検出地震計を新たに特定した場合には、前記生成処理として、その特定した時点における前記P波検出地震計による前記地震波観測データと、当該外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項11に記載の地震速報システム。
【請求項13】
前記地震計又は前記地震監視装置は、
前記地震波観測データとして、前記地震計により所定のサンプリング周期で観測された地震波の時系列データを取得し、当該時系列データに基づいてP波を検出するP波検出部を備え、
前記P波検出部は、
前記サンプリング周期よりも長い監視期間に観測された前記地震波に基づくP波指標値が所定の第1閾値を超える場合、当該監視期間を地震仮候補期間と判定し、
前記地震仮候補期間が所定の数だけ連続する場合、その連続する一連の前記地震仮候補期間を地震候補期間に設定し、
前記地震候補期間に観測された前記地震波に基づくP波指標値が所定の第2閾値を超える場合、当該地震候補期間において前記P波を検出したと判定する、
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震速報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震が発生したときに生じるP波(初期微動)を検出し、S波(主要動)の挙動を予測する研究が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-180723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された地震の主要動判定方法では、地震計は、判定対象地点に設置されたものである。そのため、複数の地震計にてP波をそれぞれ検出することを想定してシステムを構成したものではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、地震速報情報を迅速かつ高精度に出力することを可能とする地震速報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る地震速報システムは、
複数の地震計と、
前記複数の地震計に接続されて、当該複数の地震計による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する1又は複数の地震監視装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係る地震速報システムによれば、地震監視装置が、複数の地震計による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する。そのため、地震速報情報を迅速かつ高精度に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示す全体構成図である。
図2】第1の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示すブロック図である。
図3】地震監視装置3がP波検出地震計の数に応じて地震速報情報の生成処理を実行する動作の一例を示すフローチャートである。
図4】地震監視装置3がP波検出地震計の数に応じて地震速報情報の生成処理を実行する動作の一例を示すフローチャート(図3の続き)である。
図5】地震監視装置3がP波検出地震計を特定した後に外部機関4から外部速報情報を受信した場合の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】地震監視装置3が外部機関4から外部速報情報を受信した後にP波検出地震計を特定した場合の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示す全体構成図である。
図8】第2の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示す概略配置図である。
【0009】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示す全体構成図である。
【0011】
地震速報システム1は、複数の地震計2と、複数の地震計2に接続されて、当該複数の地震計2による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する地震監視装置3とを備える。
【0012】
また、地震速報システム1には、ネットワーク6を介して外部の地震観測機関4(以下、「外部機関4」という)と、地震速報配信装置5とが接続される。ネットワーク6は、有線通信又は無線通信により各種のデータや信号を通信するものであり、任意の通信規格が用いられる。
【0013】
外部機関4は、例えば、気象庁の地震活動等総合監視システムや国立研究開発法人防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)等である。外部機関4は、全国各地に配置された地震観測点での地震観測記録に基づいて外部速報情報を出力する。気象庁における地震観測点の配置間隔は40km程度であり、国立研究開発法人防災科学技術研究所における地震観測点の配置間隔は25km程度である。
【0014】
地震速報配信装置5は、地震監視装置3から地震速報情報を受信するとともに、外部機関4から外部速報情報を受信し、それらの地震速報情報及び外部速報情報を所定の配信先に配信する。
【0015】
地震速報情報は、例えば、地震の発生時刻、震源の位置を示す震源位置(緯度、経度、深さ)、地震の規模を示す地震規模(例えば、マグニチュード等)、震源位置周辺の各地点又は各地域にて予測されるS波(主要動)の強度及び到達時刻とを含む。S波の強度は、例えば、最大加速度や最大震度に換算されたものでもよい。また、外部速報情報は、地震速報情報と類似の情報を含み、少なくとも震源位置を含む。
【0016】
複数の地震計2は、所定の配置間隔を空けるようにして分散して配置される。複数の地震計2の配置密度は、外部機関4における地震観測点の配置密度よりも高くするのが好ましい。複数の地震計2の配置間隔は、一律であることを必須としないが、例えば、5~15km程度が好ましく、さらに10km程度がより好ましい。
【0017】
複数の地震計2は、例えば、通信網7を構成する複数の基地局70にそれぞれ設置される。基地局70は、地上に設置された鉄塔タイプ、ビルやマンションの屋上に設置された屋上設置タイプ、電柱等に取り付けられた電柱設置タイプ、車両等に設置可能な移動式タイプ又は可搬式タイプ等のいずれでもよい。通信網7は、無線の通信網及び有線の通信網のいずれでもよいし、これらを組み合わせたものでもよい。
【0018】
なお、複数の地震計2は、基地局70以外の任意の構造体又は任意の移動体に設置することが可能である。地震計2は、例えば、通信網7を構成する基地局若しくは施設、通信網7を提供する事業者に関連する建物、又は、通信網7を利用する利用者に関連する建物に設置されてもよい。通信網7を構成する施設としては、例えば、交換機、ルータ、サーバ等の通信機器が設置されたネットワークセンタの建屋、中継器が設置された中継所の建屋等が挙げられる。通信網7を提供する事業者に関連する建物としては、例えば、データセンタの建屋、事業者が所有又は入居する建物等が挙げられる。通信網7を利用する利用者に関連する建物としては、例えば、利用者の住宅等が挙げられる。また、任意の構造体は、事業者や利用者との関連性は必須ではなく、例えば、住宅用、商業用、公共用、工業用等の各種用途で用いられる建物や施設でもよいし、地震計2を設置するための専用の構造体でもよい。任意の移動体は、通信網7と通信可能な移動体であればよく、例えば、後述の無線通信機器8でもよい。
【0019】
地震計2は、地震による地震波を検出可能な検出手段として、例えば、加速度センサで構成される。地震計2は、所定のサンプリング周期(例えば、10msec)で加速度センサによる加速度検出値を計測し、その加速度検出値を地震波観測データとして地震監視装置3に逐次出力する。なお、地震計2は、少なくとも鉛直方向の加速度を計測することが好ましいが、水平方向の加速度をさらに計測するものでもよい。また、地震計2は、複数種類のセンサ(例えば、加速度センサと角速度センサ等)を組み合わせたものでもよい。
【0020】
地震監視装置3は、地震波観測データとして、地震計2により所定のサンプリング周期で観測された地震波の時系列データを取得し、当該時系列データを解析することにより地震速報情報の生成処理を実行する。また、地震監視装置3は、外部機関4から外部速報情報を受信可能に構成される。なお、地震監視装置3の具体的な構成及び動作は後述する。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示すブロック図である。
【0022】
通信網7は、地震計2が設置された基地局70の他に、例えば、中継器71及び交換設備72等から構成される。なお、図2では、図面の簡略化のため、基地局70及び中継器71を1つずつ示すが、1つの中継器71には複数の基地局70が接続され、1つの交換設備72には複数の中継器71が接続される。
【0023】
基地局70は、無線通信機器8との間で各種のデータを送受信するアンテナ無線機700と、中継器71との間で各種のデータを送受信する通信制御部701とを備える。通信制御部701は、基地局70に設置された地震計2から地震波観測データを受信し、中継器71に送信する。
【0024】
中継器71は、基地局70との間で各種のデータを送受信する通信制御部710を備える。通信制御部710は、基地局70から受信したデータのうち、無線通信機器8を送信元とするデータを交換設備72に送り、地震計2を送信元とするデータ(地震波観測データ)を地震監視装置3に送る。なお、図2では、地震波観測データは、中継器71を介して地震監視装置3に送られるものとして示されているが、基地局70から地震監視装置3に送られてもよいし、交換設備72を介して地震監視装置3に送られてもよい。
【0025】
無線通信機器8は、任意の電子機器で構成される。無線通信機器8は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートPC等でもよいし、車両やロボット等の制御装置でもよい。
【0026】
地震監視装置3は、例えば、汎用又は専用のコンピュータで構成される。地震監視装置3は、具体的なハードウェア構成として、図2に示すように、HDD、SDD、メモリ等により構成される記憶部30と、CPU、MPU、GPU等のプロセッサにより構成される制御部31と、外部機器(外部機関4、地震速報配信装置5及び通信網7等)との間の通信インターフェースとして機能する通信部32とを備える。
【0027】
記憶部30は、地震計管理情報300と、地震監視プログラム301とを記憶する。
【0028】
地震計管理情報300には、複数の地震計2を識別する地震計IDに対して、地震計2の設置位置と、その設置位置における代表的な地震深度を示す代表的地震深度とが対応付けられて記録される。地震計管理情報300は、地震計2が新設された場合には、新設の地震計2に対して新たな地震計IDが割り当てられて、新設の地震計2の設置位置と代表的地震深度が地震計管理情報300に登録される。
【0029】
制御部31は、記憶部30に記憶された地震監視プログラム301を実行することにより、地震波観測データ受信処理部310、フィルタ処理部311、P波検出部312、外部速報情報受信処理部313、生成処理部314、及び、出力処理部315として機能する。
【0030】
地震波観測データ受信処理部310は、各地震計2からそれぞれ出力された地震波観測データを所定のサンプリング周期で逐次受信する。そして、地震波観測データ受信処理部310は、新たに受信した地震波観測データを、過去の所定の期間に受信した地震波観測データに付加することで、地震波の時系列データを作成する。
【0031】
その際、各地震計2から受信した地震波観測データには、いずれの地震計2で観測されたデータであるかを特定するための情報として、例えば、地震計IDがそれぞれ含まれる。そのため、地震波観測データ受信処理部310は、その地震計IDを参照して、地震計2毎に上記の時系列データをそれぞれ作成し、後段のフィルタ処理部311及びP波検出部312に送ることで、フィルタ処理部311及びP波検出部312は、複数の時系列データを並列的に処理する。
【0032】
フィルタ処理部311は、地震波観測データとして地震波の時系列データを取得し、当該時系列データに対して所定の環境ノイズを低減するためのフィルタ処理を実行する。フィルタ処理は、所定の帯域のノイズを低減するために、例えば、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ又はローパスフィルタでもよいし、これらを適宜組み合わせたものでもよい。
【0033】
フィルタ処理部311は、例えば、地震計2の設置位置における設置環境情報及び気象情報に基づいて、フィルタ処理の有無又はフィルタパラメータ(周波数帯域等)を変更してもよい。設置環境情報は、地震計2が設置された環境がノイズ(振動)の発生に影響を与える任意の情報であり、例えば、地震計2が設置された建物の構造や高さを示す情報、又は、その建物周辺の状況として、例えば、車両通行量、道路工事や建築工事の有無を示す情報である。気象情報は、地震計2が設置された環境の気象状態がノイズ(振動)の発生に影響を与える任意の情報であり、例えば、風速を示す情報である。
【0034】
P波検出部312は、地震波観測データとして地震波の時系列データを取得し、当該時系列データに基づいてP波を検出し、その検出した結果を生成処理部314に送る。
【0035】
具体的には、P波検出部312は、サンプリング周期(例えば、10msec)よりも長い監視期間(例えば、100msec)に観測された地震波に基づくP波指標値が所定の第1閾値を超える場合、当該監視期間を地震仮候補期間と判定する。次に、P波検出部312は、地震仮候補期間が所定の数だけ連続する場合、その連続する一連の地震仮候補期間を地震候補期間に設定する。そして、P波検出部312は、その地震候補期間に観測された地震波に基づくP波指標値が所定の第2閾値を超える場合、当該地震候補期間においてP波を検出したと判定する。P波指標値は、例えば、平均強度や最大強度として算出される。
【0036】
外部速報情報受信処理部313は、外部機関4から外部速報情報を受信したか否かを監視し、外部機関4から外部速報情報を受信した場合には、その受信した外部速報情報を生成処理部314に送る。
【0037】
生成処理部314は、P波検出部312が地震波観測データに基づいてP波を検出した場合、複数の地震計2のうち当該地震波観測データを出力した地震計2をP波検出地震計として順次特定する。
【0038】
そして、生成処理部314は、P波検出地震計を特定したとき、地震計IDに基づいて地震計管理情報300を参照することで当該P波検出地震計の設置位置を取得する。また、生成処理部314は、P波を検出したときの地震波の時系列データから当該P波検出地震計が検出したP波の検出強度及び検出時刻を取得する。その結果、生成処理部314は、P波検出地震計の設置位置と、当該P波検出地震計が検出したP波の検出強度及び検出時刻とを含むP波観測情報を取得し、当該P波観測情報に基づいて地震速報情報の生成処理を実行することで、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。
【0039】
その際、生成処理部314は、その特定したP波検出地震計の数に応じて地震速報情報の生成処理を実行する。また、生成処理部314は、P波検出地震計の数が増加する度に生成処理を実行するとともに、P波検出地震計の数が所定の数(本実施形態では「6」)を超えた場合には、P波検出地震計の一部による地震波観測データに基づいて生成処理を実行する。これらの場合の生成処理の詳細は後述する(図3図4参照)。
【0040】
また、生成処理部314は、外部速報情報受信処理部313が外部機関4から外部速報情報を受信した場合、外部速報情報を受信したタイミングと、P波検出地震計を特定したタイミングとの前後関係に応じて生成処理を実行することで、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。
【0041】
具体的には、生成処理部314は、P波検出地震計を特定した後に、外部機関4から外部速報情報を受信した場合には、その受信した時点におけるP波検出地震計による地震波観測データと、当該外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて生成処理を実行する。一方、生成処理部314は、外部機関4から外部速報情報を受信した後に、P波検出地震計を新たに特定した場合には、その特定した時点におけるP波検出地震計による地震波観測データと、当該外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて生成処理を実行する。これらの場合の生成処理の詳細は後述する(図5図6参照)。
【0042】
出力処理部315は、生成処理部314が生成処理を実行することで地震速報情報を生成した場合、当該地震速報情報を地震速報配信装置5に出力(送信)する出力処理を実行する。その結果、地震速報情報は、地震速報配信装置5により所定の配信先に配信され、各配信先にてそれぞれ利用される。
【0043】
地震速報情報の利用形態は、各種の形態を採用することができる。例えば、地震速報情報が、通信網7を介して無線通信機器8に配信されて、通知画面や通知音によりユーザに通知されてもよい。また。地震速報情報が、道路、鉄道等の交通管制システムや発電所、プラント、工場、ビル等の管理システム等に配信されて、各種装置の緊急停止制御に利用されてもよい。さらに、地震速報情報が、住宅や店舗等に配信されて、ガス利用装置の緊急停止制御に利用されてもよい。
【0044】
次に、上記構成を有する地震速報システム1(特に地震監視装置3)の動作について図3乃至図6を参照しながら説明する。
【0045】
図3及び図4は、地震監視装置3がP波検出地震計の数に応じて地震速報情報の生成処理を実行する動作の一例を示すフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS100において、複数の地震計2は、地震による地震波(主にP波)を観測すべく、所定のサンプリング周期で観測した地震波観測データを地震監視装置3にそれぞれ出力する。
【0047】
次に、ステップS200において、地震監視装置3の地震波観測データ受信処理部310は、各地震計2から所定のサンプリング周期で地震波観測データを逐次受信することで地震波の時系列データを作成する。そして、P波検出部312が、フィルタ処理部311によるフィルタ処理後の地震波の時系列データを解析することでP波の検出の有無を監視する。
【0048】
ここでは、図3に示すように、震源E1にて地震が発生したものとして説明すると、ステップS210において、P波検出部312が、地震計2Aから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出する。そして、生成処理部314が、当該地震計2Aを第1のP波検出地震計2Aとして特定する。次に、ステップS212において、生成処理部314は、P波検出地震計2Aの数が1つである場合には、地震速報情報を出力するための準備処理を実行する。生成処理部314は、準備処理として、例えば、第1のP波検出地震計2Aの周辺に位置する地震計2に対する解析処理を優先的に実行する。
【0049】
次に、第1のP波検出地震計2Aを特定してから所定の時間が経過すると、ステップS220において、P波検出部312が、地震計2Bから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出する。そして、生成処理部314が、当該地震計2Bを第2のP波検出地震計2Bとして特定する。次に、ステップS222において、生成処理部314は、P波検出地震計2A、2Bの数が2つである場合には、地震速報情報を出力するための準備処理を実行する。生成処理部314は、準備処理として、例えば、第1及び第2のP波検出地震計2A、2Bの周辺に位置する地震計2に対する解析処理を優先的に実行する。
【0050】
次に、第2のP波検出地震計2Bを特定してから所定の時間が経過すると、ステップS230において、P波検出部312が、地震計2Cから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出し、生成処理部314が、当該地震計2Cを第3のP波検出地震計2Cとして特定する
【0051】
そして、ステップS232において、生成処理部314は、P波検出地震計2A~2Cの数が3つである場合には、生成処理として、3つのP波観測情報と、P波検出地震計2A~2Cが設置された地域における代表的地震深度とに基づいて、地震速報情報を生成し、出力処理部315が、その地震速報情報を出力する。
【0052】
ここで、ステップS232の処理内容について説明する。3つのP波観測情報は、第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cの各々にてP波が観測されたときのP波観測情報であり、具体的には、P波検出地震計の設置位置と、当該P波検出地震計が検出したP波の検出強度及び検出時刻とを含む。例えば、第1のP波検出地震計2Aに対するP波観測情報は、第1のP波検出地震計2Aの設置位置と、当該第1のP波検出地震計2Aが検出したP波の検出強度及び検出時刻とを含む。
【0053】
また、代表的地震深度は、例えば、生成処理部314が地震計管理情報300を参照することで第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cに対する代表的地震深度が取得され、それらの平均値として算出される。そのため、生成処理部314は、P波検出地震計2A~2Cの数が3つの場合でも、代表的地震深度を仮の震源深さとして扱うことで震源位置(緯度、経度)を算出する。
【0054】
そして、生成処理部314は、第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cがそれぞれ検出したP波の検出強度と、所定の最大加速度計算式とを用いて、第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cの各設置位置における最大加速度を推定する。次に、生成処理部314は、第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cの各設置位置における最大加速度と、震央距離(震源位置と設置位置との距離)と、所定の距離減衰式とを用いて、震源E1で発生した地震の規模としてマグニチュードを推定し、そのマグニチュードから各地点又は各地域におけるS波(主要動)の強度を予測する。さらに、生成処理部314は、震源位置と、公知の走時表又は地震波の伝播速度(P波伝搬速度Vp=6.1km/s、S波伝搬速度Vs=3.6km/s)とを用いて、各地点又は各地域におけるS波(主要動)の到達時刻を予測する。なお、最大加速度計算式や距離減衰式は、過去の地震による地震動を解析、評価することで得られた既往の評価式を用いればよい。
【0055】
上記のようにして、ステップS232において、生成処理部314が、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。これにより、地震監視装置3は、より早期の時点で地震速報情報を出力することができる。
【0056】
次に、第3のP波検出地震計2Cを特定してから所定の時間が経過すると、ステップS240において、P波検出部312が、地震計2Dから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出し、生成処理部314が、当該地震計2Dを第4のP波検出地震計2Dとして特定する。
【0057】
そして、ステップS242において、生成処理部314は、P波検出地震計2A~2Dの数が4つである場合には、生成処理として、4つのP波観測情報に基づいて、地震速報情報を生成し、出力処理部315が、その地震速報情報を出力する。
【0058】
ここで、ステップS242の処理内容について説明する。4つのP波観測情報は、ステップS232における3つのP波観測情報に、第4のP波検出地震計2DにてP波が観測されたときのP波観測情報を加えたものである。したがって、生成処理部314は、代表的地震深度を用いることなく震源深さも未知なパラメータとして、4つのP波観測情報に基づいて震源位置(緯度、経度、深さ)を算出する。
【0059】
そして、生成処理部314は、第1乃至第4のP波検出地震計2A~2Dがそれぞれ検出したP波の検出強度と、所定の最大加速度計算式とを用いて、第1乃至第4のP波検出地震計2A~2Dの各設置位置における最大加速度を推定する。次に、生成処理部314は、第1乃至第4のP波検出地震計2A~2Dの各設置位置における最大加速度と、震央距離と、所定の距離減衰式とを用いて、震源E1で発生した地震の規模としてマグニチュードを推定し、そのマグニチュードから各地点又は各地域におけるS波の強度を予測する。さらに、生成処理部314は、震源位置と、公知の走時表又は地震波の伝播速度とを用いて、各地点又は各地域におけるS波の到達時刻を予測する。
【0060】
上記のようにして、ステップS242において、生成処理部314が、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。これにより、地震監視装置3は、ステップS232で出力したものより高精度な地震速報情報を出力することができる。なお、ステップS242では、マグニチュードの推定を省略してもよく、その場合には、ステップS232で推定したマグニチュードを用いればよい。
【0061】
次に、第4のP波検出地震計2Dを特定してから所定の時間が経過すると、ステップS250において、P波検出部312が、地震計2Eから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出し、生成処理部314が、当該地震計2Eを第5のP波検出地震計2Eとして特定する。
【0062】
そして、ステップS252において、生成処理部314は、P波検出地震計2A~2Eの数が5つである場合には、生成処理として、5つのP波観測情報に基づいて、地震速報情報を生成し、出力処理部315が、その地震速報情報を出力する。
【0063】
ここで、ステップS252の処理内容について説明する。5つのP波観測情報は、ステップS242における4つのP波観測情報に、第5のP波検出地震計2EにてP波が観測されたときのP波観測情報を加えたものである。したがって、生成処理部314は、5つのP波観測情報に基づいて震源位置(緯度、経度、深さ)を算出する。
【0064】
そして、生成処理部314は、第1乃至第5のP波検出地震計2A~2Eがそれぞれ検出したP波の検出強度と、所定の最大加速度計算式とを用いて、第1乃至第5のP波検出地震計2A~2Eの各設置位置における最大加速度を推定する。次に、生成処理部314は、第1乃至第5のP波検出地震計2A~2Eの各設置位置における最大加速度と、震央距離と、所定の距離減衰式とを用いて、震源E1で発生した地震の規模としてマグニチュードを推定し、そのマグニチュードから各地点又は各地域におけるS波の強度を予測する。さらに、生成処理部314は、震源位置と、公知の走時表又は地震波の伝播速度とを用いて、各地点又は各地域におけるS波の到達時刻を予測する。
【0065】
上記のようにして、ステップS252において、生成処理部314が、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。これにより、地震監視装置3は、ステップS242で出力したものより高精度な地震速報情報を出力することができる。なお、ステップS252では、マグニチュードの推定を省略してもよく、その場合には、ステップS232又はS242で推定したマグニチュードを用いればよい。
【0066】
次に、第5のP波検出地震計2Eを特定してから所定の時間が経過すると、ステップS260において、P波検出部312が、地震計2Fから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出し、生成処理部314が、当該地震計2Fを第6のP波検出地震計2Fとして特定する。
【0067】
そして、ステップS262において、生成処理部314は、P波検出地震計2A~2Fの数が6つである場合には、生成処理として、P波を最後に検出したP波検出地震計2FにおけるP波観測情報と、当該P波検出地震計2Fを除く他のP波検出地震計2A~2Eのうち震源位置に近い順に抽出した4つのP波検出地震計2A~2Dにおける4つのP波観測情報とに基づいて、地震速報情報を生成し、出力処理部315が、その地震速報情報を出力する。
【0068】
ここで、ステップS262の処理内容について説明する。震源位置(緯度、経度、深さ)は、5つのP波観測情報が既知であれば算出可能である。そのため、ステップS262では、第6のP波検出地震計2FにてP波が新たに観測されたときの最新のP波観測情報を優先的に用いるとともに、震源位置に近くP波の検出強度が大きいと考えられる第1乃至第4のP波検出地震計2A~2DにてP波が観測されたときの4つのP波観測情報とを用いるものとした。したがって、生成処理部314は、このような5つのP波観測情報に基づいて震源位置(緯度、経度、深さ)を算出する。
【0069】
そして、生成処理部314は、第1乃至第4及び第6のP波検出地震計2A~2D、2Fがそれぞれ検出したP波の検出強度と、所定の最大加速度計算式とを用いて、第1乃至第4及び第6のP波検出地震計2A~2D、2Fの各設置位置における最大加速度を推定する。次に、生成処理部314は、第1乃至第4及び第6のP波検出地震計2A~2D、2Fの各設置位置における最大加速度と、震央距離と、所定の距離減衰式とを用いて、震源E1で発生した地震の規模としてマグニチュードを推定し、そのマグニチュードから各地点又は各地域におけるS波の強度を予測する。さらに、生成処理部314は、震源位置と、公知の走時表又は地震波の伝播速度とを用いて、各地点又は各地域におけるS波の到達時刻を予測する。
【0070】
上記のようにして、ステップS262において、生成処理部314が、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。これにより、地震監視装置3は、計算効率を考慮しつつも最新のP波観測情報を取り込むことで、より高精度な地震速報情報を出力することができる。なお、ステップS262では、マグニチュードの推定を省略してもよく、その場合には、ステップS232、S242又はS252で推定したマグニチュードを用いればよい。また、ステップS262では、P波検出地震計の一部による地震波観測データとして、P波を最後に検出したP波検出地震計2FにおけるP波観測情報と、当該P波検出地震計2Fを除く他のP波検出地震計2A~2Eのうち震源位置に近い順に抽出した4つのP波検出地震計2A~2Dにおける4つのP波観測情報と用いたが、上記とは異なる条件に従って選択されたP波観測情報を用いるようにしてもよい。
【0071】
なお、ステップS262以降においても時間が経過することでP波検出地震計の数は増加するが、地震監視装置3は、P波検出地震計の数が7つ以上である場合には、ステップS262と同様に生成処理を実行することで地震速報情報を出力してもよいし、生成処理を実行しなくてもよい。
【0072】
以上のように、地震監視装置3は、P波検出地震計の数に応じて地震速報情報の生成処理を実行する。各ステップS232、S242、S252、S262の処理内容についての説明で述べたように、各時点におけるP波検出地震計の数により、地震速報情報の生成処理の各種計算に利用できるP波観測情報の数が異なる。このような状況に対して、地震監視装置3は、P波検出地震計の数に応じて各時点における生成処理の各種計算方法を適宜選択することで、各時点で取得済みのP波観測情報を有効利用して地震速報情報を出力することができる。
【0073】
また、地震監視装置3は、P波検出地震計の数が増加する度に生成処理を実行することで地震速報情報を順次出力する。図3図4で示すように、時間の経過に伴ってP波検出地震計の数が増加すると、地震速報情報の生成処理の各種計算に利用できるP波観測情報の数が増加し、地震速報情報の精度もより向上する。したがって、地震監視装置3は、早期の地震速報情報の出力を実現しつつ、より高精度な地震速報情報を順次出力することにより、地震速報情報を迅速かつ高精度に出力することができる。
【0074】
図5は、地震監視装置3がP波検出地震計を特定した後に外部機関4から外部速報情報を受信した場合の動作の一例を示すフローチャートである。図5では、地震監視装置3が、図3に示すステップS230にて第3のP波検出地震計2Cを特定し、それに続けてステップS232にて地震速報情報を出力した後に、外部機関4から外部速報情報を受信した場合について説明する。
【0075】
まず、ステップS300において、外部機関4が外部速報情報を送信すると、外部速報情報受信処理部313がその外部速報情報を受信する。そして、ステップS234において、生成処理部314は、その外部速報情報を受信した時点における3つのP波観測情報と、当該外部速報情報に含まれる震源位置(緯度、経度、深さ)とに基づいて、地震速報情報を生成し、出力処理部315が、その地震速報情報を出力する。
【0076】
ここで、ステップS234の処理内容について説明する。3つのP波観測情報は、ステップS232と同様に、第1乃第3のP波検出地震計2A~2CにてP波が観測されたときのP波観測情報である。また、ステップS232では、代表的地震深度を用いて震源位置(緯度、経度)を算出したが、ステップS234では、代表的地震深度を用いずに、外部速報情報に含まれる震源位置(緯度、経度、深さ)にて代用する。
【0077】
そして、生成処理部314は、第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cがそれぞれ検出したP波の検出強度と、所定の最大加速度計算式とを用いて、第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cの各設置位置における最大加速度を推定する。次に、生成処理部314は、第1乃至第3のP波検出地震計2A~2Cの各設置位置における最大加速度と、震央距離(代用した震源位置と設置位置との距離)と、所定の距離減衰式とを用いて、震源E1で発生した地震の規模としてマグニチュードを推定し、そのマグニチュードから各地点又は各地域におけるS波の強度を予測する。さらに、生成処理部314は、代用した震源位置と、公知の走時表又は地震波の伝播速度とを用いて、各地点又は各地域におけるS波の到達時刻を予測する。
【0078】
上記のようにして、ステップS234において、生成処理部314が、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。これにより、地震監視装置3は、外部機関4による外部速報情報の震源位置を取り込むことで、より高精度な地震速報情報を出力することができる。
【0079】
次に、外部速報情報を受信してから所定の時間が経過すると、ステップS240において、P波検出部312が、地震計2Dから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出し、生成処理部314が、当該地震計2Dを第4のP波検出地震計2Dとして特定する。
【0080】
そして、ステップS244において、生成処理部314は、外部速報情報を受信した後にP波検出地震計の数が増加した場合の生成処理として、4つのP波観測情報と、外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて、地震速報情報を生成し、出力処理部315が、その地震速報情報を出力する。
【0081】
ここで、ステップS244の処理内容について説明する。4つのP波観測情報は、ステップS242と同様に、第1乃至第4のP波検出地震計2A~2DにてP波が観測されたときのP波観測情報である。
【0082】
そして、生成処理部314は、第1乃至第4のP波検出地震計2A~2Dがそれぞれ検出したP波の検出強度と、所定の最大加速度計算式とを用いて、P波検出地震計2A~2Dの各設置位置における最大加速度を推定する。次に、生成処理部314は、P波検出地震計2A~2Dの各設置位置における最大加速度と、震央距離(代用した震源位置と設置位置との距離)と、所定の距離減衰式とを用いて、震源E1で発生した地震の規模としてマグニチュードを推定し、そのマグニチュードから各地点又は各地域におけるS波の強度を予測する。さらに、生成処理部314は、代用した震源位置と、公知の走時表又は地震波の伝播速度とを用いて、各地点又は各地域におけるS波の到達時刻を予測する。
【0083】
上記のようにして、ステップS244において、生成処理部314が、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。これにより、地震監視装置3は、外部機関4による外部速報情報とともに最新のP波観測情報を取り込むことで、ステップS234で出力したものより高精度な地震速報情報を出力することができる。ステップS244では、マグニチュードの推定を省略してもよく、その場合には、ステップS234で推定したマグニチュードを用いればよい。
【0084】
なお、ステップS244以降においても時間が経過することでP波検出地震計の数は増加するが、その場合には、地震監視装置3は、ステップS244と同様に、P波検出地震計による地震波観測データと外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて生成処理を実行することで地震速報情報を出力する。
【0085】
図6は、地震監視装置3が外部機関4から外部速報情報を受信した後にP波検出地震計を特定した場合の動作の一例を示すフローチャートである。図6では、地震監視装置3が、外部機関4から外部速報情報を受信した後に、図3に示すステップS210にて第1のP波検出地震計2Aを特定する場合について説明する。また、ここでは、図6に示すように、複数の地震計2から離れた位置を震源E2とする地震が発生したものとして説明する。
【0086】
まず、ステップS300において、外部機関4が外部速報情報を送信すると、外部速報情報受信処理部313がその外部速報情報を受信する。その後、ステップS210において、P波検出部312が、地震計2Aから出力された地震波の時系列データを解析することでP波を検出し、生成処理部314が、当該地震計2Aを第1のP波検出地震計2Aとして特定する。
【0087】
そして、ステップS214において、生成処理部314は、外部速報情報を受信した後にP波検出地震計の数が増加したときの生成処理として、1つのP波観測情報と、外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて、地震速報情報を生成し、出力処理部315が、その地震速報情報を出力する。
【0088】
ここで、ステップS214の処理内容について説明する。1つのP波観測情報は、第1のP波検出地震計2AにてP波が観測されたときのP波観測情報である。また、図3に示すステップS212では、準備処理を実行したが、ステップS214では、外部速報情報に含まれる震源位置(緯度、経度、深さ)を代用することで生成処理を実行する。
【0089】
そして、生成処理部314は、第1のP波検出地震計2Aが検出したP波の検出強度と、所定の最大加速度計算式とを用いて、第1のP波検出地震計2Aの設置位置における最大加速度を推定する。次に、生成処理部314は、第1のP波検出地震計2Aの設置位置における最大加速度と、震央距離(代用した震源位置と設置位置との距離)と、所定の距離減衰式とを用いて、震源E2で発生した地震の規模としてマグニチュードを推定し、そのマグニチュードから各地点又は各地域におけるS波の強度を予測する。さらに、生成処理部314は、代用した震源位置と、公知の走時表又は地震波の伝播速度とを用いて、各地点又は各地域におけるS波の到達時刻を予測する。
【0090】
上記のようにして、ステップS214において、生成処理部314が、S波の強度及び到達時刻を含む地震速報情報を生成する。これにより、地震監視装置3は、外部機関4による外部速報情報の震源位置を取り込むことで、より高精度な地震速報情報を出力することができる。
【0091】
なお、ステップS214以降においても時間が経過することでP波検出地震計の数は増加するが、その場合には、地震監視装置3は、ステップS214と同様に、P波検出地震計による地震波観測データと外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて生成処理を実行することで地震速報情報を出力する。
【0092】
以上のように、本実施形態に係る地震速報システム1によれば、地震監視装置3が、複数の地震計2による地震波観測データに基づいて地震速報情報を迅速かつ高精度に出力することができる。
【0093】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示す全体構成図である。図8は、第2の実施形態に係る地震速報システム1の一例を示す概略配置図である。
【0094】
第1の実施形態に係る地震速報システム1は、複数の地震計2に接続された1つの地震監視装置3を備えるものとして説明した。これに対し、第2の実施形態に係る地震速報システム1は、複数の地震計2に接続された複数の地震監視装置3を備えるものである。
【0095】
本実施形態に係る地震速報システム1は、図7図8に示すように、複数の観測地域10内に分散配置された複数の地震計2と、観測地域10の各々に対応して設けられるとともに、その対応する観測地域10内の複数の地震計2にそれぞれ接続されて、当該複数の地震計2による地震波観測データに基づいて地震速報情報をそれぞれ出力する複数の地震監視装置3と、複数の地震監視装置3に接続されて、複数の地震監視装置3から出力された地震速報情報を管理する管理装置9とを備える。なお、第2の実施形態に係る地震速報システム1の基本的な構成や動作は、第1の実施形態と同様であるため、以下では第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0096】
管理装置9は、複数の地震監視装置3から出力(送信)された地震速報情報を、ネットワーク6を介して地震速報配信装置5に送信する。また、管理装置9は、外部機関4からネットワーク6を介して外部速報情報を受信すると、複数の地震監視装置3に送信する。
【0097】
観測地域10は、図8の例ではメッシュ状に区分されているが、観測地域10を区分する手法は、上記の例に限られず、任意の手法を採用してもよい。例えば、観測地域10は、全国を八地方区分に区分したものでもよいし、都道府県、市町村等の行政区域に従って区分したものでもよいし、行政区域とは関係なく任意の形状に区分したものでもよい。また、観測地域10は、動的に変更可能であってもよい。さらに、観測地域10内の地震計2の数や配置は、図8の例に限られず、適宜変更可能である。
【0098】
複数の地震監視装置3の各々は、第1の実施形態に係る地震監視装置3と同様に構成され、図3乃至図6に示すフローチャートに従って動作する。なお、複数の地震監視装置3は、観測地域10の各々に対応して設けられるものであるが、観測地域10内に物理的に設置されている必要はなく、観測地域10内の複数の地震計2による地震波観測データを取得可能であればよい。
【0099】
以上のように、本実施形態に係る地震速報システム1によれば、複数の地震監視装置3を備えるため、地震速報情報の生成処理を分散して実行することができる。
【0100】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0101】
上記実施形態では、地震監視装置3が、フィルタ処理部311及びP波検出部312を備えるものとして説明した。これに対し、例えば、地震計2に接続された観測データ処理装置(例えば、基地局70に設置)が、フィルタ処理部311及びP波検出部312の少なくとも一方を備えるようにしてもよい。この場合には、地震監視装置3は、複数の地震計2による地震波観測データとして、フィルタ処理後の地震波の時系列データを受信してもよいし、P波を検出したことを示すP波検出情報を受信してもよい。なお、地震監視装置3又は観測データ処理装置は、フィルタ処理部311を備えなくてもよい。
【0102】
上記実施形態では、地震監視プログラム301は、記憶部30に記憶されたものとして説明したが、USBメモリ、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで記録されて提供されてもよいし、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されてもよい。また、地震監視装置3は、制御部31が地震監視プログラム301を実行することにより実現される各部の機能を、例えば、FPGA、ASIC等のハードウェアで実現するものでもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…地震速報システム、2…地震計、2A~2F…P波検出地震計、
3…地震監視装置、4…外部の地震観測機関(外部機関)、5…地震速報配信装置、
6…ネットワーク、7…通信網、8…無線通信機器、9…管理装置、10…観測地域、
30…記憶部、31…制御部、32…通信部、
70…基地局、71…中継器、72…交換設備、
300…地震計管理情報、301…地震監視プログラム、
310…地震波観測データ受信処理部、311…フィルタ処理部、312…P波検出部
313…外部速報情報受信処理部、314…生成処理部、315…出力処理部、
700…アンテナ無線機、701…通信制御部、710…通信制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地震計と、
前記複数の地震計に接続されて、当該複数の地震計による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する1又は複数の地震監視装置とを備え、
前記地震監視装置は、
前記地震波観測データに基づいて、前記複数の地震計のうちP波を検出した前記地震計をP波検出地震計として順次特定し、
その特定した前記P波検出地震計の数に応じて前記地震速報情報の生成処理を実行することで前記地震速報情報を出力する、
震速報システム。
【請求項2】
前記地震監視装置は、
前記P波検出地震計の数が増加する度に前記生成処理を実行することで前記地震速報情報を順次出力する、
請求項1に記載の地震速報システム。
【請求項3】
前記地震監視装置は、
前記P波検出地震計の数が増加する度に前記生成処理を実行するともに、前記P波検出地震計の数が所定の数を超えた場合には、前記P波検出地震計の一部による前記地震波観測データに基づいて前記生成処理を実行することで前記地震速報情報を順次出力する、
請求項1又は請求項2に記載の地震速報システム。
【請求項4】
前記地震監視装置は、
前記地震波観測データに基づいて前記P波検出地震計を特定したとき、当該P波検出地震計の設置位置と、当該P波検出地震計が検出した前記P波の検出強度及び検出時刻とを含むP波観測情報を取得し、当該P波観測情報に基づいて前記生成処理を実行することで、S波の強度及び到達時刻を含む前記地震速報情報を生成する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項5】
前記複数の地震計として、少なくとも3つ以上の前記地震計を備え、
前記地震監視装置は、
前記P波検出地震計の数が3つである場合には、前記生成処理として、
3つの前記P波観測情報と、前記P波検出地震計が設置された地域における代表的地震深度とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項に記載の地震速報システム。
【請求項6】
前記複数の地震計として、少なくとも5つ以上の前記地震計を備え、
前記地震監視装置は、
前記P波検出地震計の数が4つ又は5つである場合には、前記生成処理として、
4つ又は5つの前記P波観測情報に基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項又は請求項に記載の地震速報システム。
【請求項7】
前記複数の地震計として、少なくとも6つ以上の前記地震計を備え、
前記地震監視装置は、
前記P波を検出した前記地震計の数が6つ以上である場合には、前記生成処理として、
前記P波を最後に検出した前記P波検出地震計における前記P波観測情報と、当該P波検出地震計を除く他の前記P波検出地震計のうち震源位置に近い順に抽出した4つの前記P波検出地震計における4つの前記P波観測情報とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項8】
複数の地震計と、
前記複数の地震計に接続されて、当該複数の地震計による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する1又は複数の地震監視装置とを備え、
前記地震監視装置は、
外部の地震観測機関から外部速報情報を受信可能に構成されるとともに、
前記地震波観測データに基づいて、前記複数の地震計のうちP波を検出した前記地震計をP波検出地震計として順次特定し、
その特定した前記P波検出地震計の数に応じて前記地震速報情報の生成処理を実行することで前記地震速報情報を出力し、
前記地震波観測データに基づいて前記P波検出地震計を特定した後に、前記地震観測機関から前記外部速報情報を受信した場合には、前記生成処理として、その受信した時点における前記P波検出地震計による前記地震波観測データと、当該外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
震速報システム。
【請求項9】
前記地震監視装置は、
前記地震観測機関から前記外部速報情報を受信した後に、前記P波検出地震計を新たに特定した場合には、前記生成処理として、その特定した時点における前記P波検出地震計による前記地震波観測データと、当該外部速報情報に含まれる震源位置とに基づいて、前記地震速報情報を生成する、
請求項に記載の地震速報システム。
【請求項10】
複数の地震計と、
前記複数の地震計に接続されて、当該複数の地震計による地震波観測データに基づいて地震速報情報を出力する1又は複数の地震監視装置とを備え、
前記地震計又は前記地震監視装置は、
前記地震波観測データとして、前記地震計により所定のサンプリング周期で観測された地震波の時系列データを取得し、当該時系列データに基づいてP波を検出するP波検出部を備え、
前記P波検出部は、
前記サンプリング周期よりも長い監視期間に観測された前記地震波に基づくP波指標値が所定の第1閾値を超える場合、当該監視期間を地震仮候補期間と判定し、
前記地震仮候補期間が所定の数だけ連続する場合、その連続する一連の前記地震仮候補期間を地震候補期間に設定し、
前記地震候補期間に観測された前記地震波に基づくP波指標値が所定の第2閾値を超える場合、当該地震候補期間において前記P波を検出したと判定する、
震速報システム。
【請求項11】
前記複数の地震計は、
複数の観測地域内に分散配置されており、
前記複数の地震監視装置は、
前記観測地域の各々に対応して設けられるとともに、その対応する前記観測地域内の前記複数の地震計にそれぞれ接続されて、当該複数の地震計による前記地震波観測データに基づいて前記地震速報情報をそれぞれ出力する、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項12】
前記複数の地震計は、
通信網を構成する基地局若しくは施設、
前記通信網を提供する事業者に関連する建物、
前記通信網を利用する利用者に関連する建物、又は、
前記通信網と通信可能な移動体にそれぞれ設置された、
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の地震速報システム。
【請求項13】
前記複数の地震計の配置密度は、
外部の地震観測機関における地震観測点の配置密度よりも高い、
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の地震速報システム。