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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083638
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220530BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 L
A62B18/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195070
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】520206346
【氏名又は名称】平岡工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 良介
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA07
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】快適な使用感を得ながら、シールド部材を容易に着脱可能なフェイスシールドを提供する。
【解決手段】フェイスシールド1のフレーム10は、左側アーム部11と右側アーム部とを備えている。左側アーム部11の前側と、シールド部材の左側との一方には、左側永久磁石が設けられ、他方には、永久磁石に吸着される左側被吸着部21が設けられている。右側アーム部の前側と、シールド部材の右側との一方には、右側永久磁石が設けられ、他方には、永久磁石に吸着される右側被吸着部が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の頭部に装着されるフレームと、
前記フレームに着脱可能に取り付けられる透光性を有するシールド部材とを備えたフェイスシールドにおいて、
前記フレームは、頭部の左側方を前後方向に延びる左側アーム部と、頭部の右側方を前後方向に延びる右側アーム部とを備え、
前記左側アーム部の前側と、前記シールド部材の左側との一方には、左側永久磁石が設けられ、他方には、前記左側永久磁石に吸着される左側被吸着部が設けられ、
前記右側アーム部の前側と、前記シールド部材の右側との一方には、右側永久磁石が設けられ、他方には、前記右側永久磁石に吸着される右側被吸着部が設けられていることを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
請求項1に記載のフェイスシールドにおいて、
前記シールド部材の左側に前記左側被吸着部が設けられ、
前記シールド部材の右側に前記右側被吸着部が設けられていることを特徴とするフェイスシールド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフェイスシールドにおいて、
前記フレームは、前記左側アーム部の後側と前記右側アーム部の後側とを繋ぐように装着者の後頭部の後方を左右方向に延びる弾性材からなる後側部を備えており、
前記左側アーム部の前側と前記右側アーム部の前側とは非連結であることを特徴とするフェイスシールド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のフェイスシールドにおいて、
前記左側アーム部及び前記右側アーム部は、伸縮可能に構成されていることを特徴とするフェイスシールド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のフェイスシールドにおいて、
前記シールド部材を跳ね上げた姿勢で保持可能に構成されていることを特徴とするフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の顔面を保護するフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等の感染症は、ウイルスを保有している患者からの飛沫によって他者に感染することが知られており、患者や未発症者との対面時には、人の顔面を保護するフェイスシールドが使用されることがある。また、医療や介護の現場では、唾液、血液、嘔吐物等の飛散物から人の顔面を保護するために、フェイスシールドが使用されることがある。医療や介護の現場以外であっても、複数の人が集まって会話等する際にも感染症拡大を予防するために、フェイスシールドが使用されることがある。
【0003】
この種のフェイスシールドとしては、例えば特許文献1~4に開示されているものが知られている。特許文献1には、装着者の額に当てるクッションが取り付けられる取付板を、後頭部に掛けるバンドによって装着者に固定し、この取付板に透明なシールド部材を取り付けるようにしたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、マスクの耳掛け用の紐に透明なシールド部材を取り付けるようにしたものが開示されている。特許文献2のシールド部材には、折り曲げることによって耳掛け用の紐を挟むように湾曲する湾曲部が左右両側にそれぞれ設けられており、この湾曲部の先端をシールド部材に形成された差込部に差し込むことによって耳掛け用の紐を挟んだ状態で保持できるようになっている。
【0005】
また、特許文献3には、メガネに透明なシールド部材を取り付けるようにしたものが開示されている。特許文献3のシールド部材には、メガネのテンプルが差し込まれるテンプル用切れ目が左右両側にそれぞれ設けられており、メガネのテンプルをテンプル用切れ目に差し込んだ後に、メガネを掛けることでシールド部材をメガネによって保持できるようになっている。
【0006】
また、特許文献4には、頭部に装着されるフレームに透明なシールド部材を保持するようにしたものが開示されている。特許文献4のシールド部材には、フレームが入る切欠部が左右両側にそれぞれ設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3015694号公報
【特許文献2】登録実用新案第3227242号公報
【特許文献3】登録実用新案第3227534号公報
【特許文献4】特開2015-205105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1のように後頭部にバンドを掛ける構造の場合、バンド接触部においてムレや痛みが発生して不快感がある。また、バンドを掛けるとヘアスタイルが崩れやすく、また、ヘアスタイルの自由度が低いという問題もあった。
【0009】
そこで、特許文献2のようにマスクの耳掛け用の紐にシールド部材を取り付けたり、特許文献3のようにメガネのテンプルにシールド部材を取り付けることで、後頭部に掛けるバンドが不要になるため、ムレや痛み、ヘアスタイルの問題が解決できる。また、特許文献4のようにフレームを用いることによっても同様に上述した問題を解決できると考えられる。
【0010】
ここで、フェイスシールドの実際の使用現場を想定すると、シールド部材を装着者が常時装着している場合のほか、一時的に外して再び装着する場合がある。このシールド部材の着脱操作を特許文献2のもので行おうとすると、シールド部材がマスクに保持されているのでマスクを着脱するか、シールド部材をマスクの耳掛け用の紐に着脱するかの一方である。マスクを着脱しようとすると、シールド部材が耳掛け用の紐に保持されていて容易ではないので、シールド部材をマスクの耳掛け用の紐に着脱することになる。ところが、シールド部材の装着の際には湾曲部を折り曲げてその先端をシールド部材の差込部に差し込むという操作が必要であり、しかも湾曲部や差込部を直接目視することはできないので、操作自体が困難である。取り外す際も同様にどこに湾曲部が位置しているのか、手探りで探して操作しなければならず、困難である。
【0011】
また、シールド部材の着脱操作を特許文献3のもので行おうとすると、シールド部材のテンプル用切れ目にメガネのテンプルが差し込まれているのでメガネを着脱する必要がある。しかしながら、シールド部材が付いたメガネを着脱するのは容易ではないのに加え、シールド部材を外そうとすると、一旦メガネを顔から外してシールド部材をテンプルから外した後、メガネを再び掛けるという操作が必要になり、煩雑である。
【0012】
これらに対して、特許文献4のように専用のフレームにシールド部材を保持するようにすれば、シールド部材のみ着脱する必要はなく、着脱操作が簡単になると考えられる。ところが、フレームを頭部に掛ける操作自体が煩雑な場合がある。すなわち、フレームは頭髪に触れるものなので、フレームを着脱する都度、ヘアスタイルが崩れてしまい、使用感が快適とは言えない面がある。特に装着者が長髪の場合には、フレームを髪の外に持ってくる場合と内に持ってくる場合とが考えられるが、いずれの場合であってもフレームが髪に触れるため、ヘアスタイルの崩れが顕著な問題となる。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、快適な使用感を得ながら、シールド部材を容易に着脱可能なフェイスシールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、第1の開示では、装着者の頭部に装着されるフレームと、前記フレームに着脱可能に取り付けられる透光性を有するシールド部材とを備えたフェイスシールドを前提とする。前記フレームは、頭部の左側方を前後方向に延びる左側アーム部と、頭部の右側方を前後方向に延びる右側アーム部とを備えている。前記左側アーム部の前側と、前記シールド部材の左側との一方には、左側永久磁石が設けられ、他方には、前記左側永久磁石に吸着される左側被吸着部が設けられており、また、前記右側アーム部の前側と、前記シールド部材の右側との一方には、右側永久磁石が設けられ、他方には、前記右側永久磁石に吸着される右側被吸着部が設けられている。
【0015】
この構成によれば、フレームを装着者の頭部に装着すると、左側アーム部が頭部の左側方を前後方向に延びるように配置され、また右側アーム部が頭部の右側方を前後方向に延びるように配置されるので、メガネの装着感覚に類似した装着感覚で簡単に装着することが可能になる。さらに、従来例のバンドを後頭部に掛ける構造に比べてムレや痛みが発生しにくく、またヘアスタイルが崩れにくいので、使用感が快適になる。しかも、ヘアスタイルの自由度も高い。
【0016】
フレームを頭部に装着した状態で、シールド部材の左側を左側アーム部の前側に接近させると、一方に設けられている左側永久磁石が他方に設けられている左側被吸着部を吸着する。このとき、左側被吸着部を左側永久磁石に接触させなくても、接近させるだけで左側永久磁石の吸引力によって自然に吸着されるので、装着者が自ら厳密に位置合わせする必要はない。また、シールド部材の左側を左側アーム部から外す場合には、左側被吸着部を左側永久磁石から離す方向に力を掛けるだけで済む。シールド部材の右側についても同様である。
【0017】
つまり、従来例のマスクの耳掛け用の紐を挟むことによってシールド部材を取り付ける構造や、メガネのテンプルに差し込むことによってシールド部材を取り付ける構造とは異なり、フレームを頭部に装着したままでシールド部材の着脱が容易に可能になる。従って、シールド部材の着脱の際にフレームの着脱が不要になるので、ヘアスタイルの崩れは起こらず、使用感が快適になる。
【0018】
第2の開示では、前記シールド部材の左側に前記左側被吸着部が設けられ、前記シールド部材の右側に前記右側被吸着部が設けられているものである。これにより、フレーム側に永久磁石を設けて、シールド部材に永久磁石を設けないようにすることができる。すなわち、シールド部材は、一般的に薄く湾曲しやすいものであるが、仮にシールド部材の左側と右側に永久磁石があると、左右の永久磁石同士が吸着してシールド部材が折れ曲がってしまうおそれがあり、取り扱いが煩雑になることが考えられる。本開示のようにシールド部材に永久磁石を設けないことで、シールド部材の取り扱いが容易になる。
【0019】
第3の開示では、前記左側アーム部の後側と前記右側アーム部の後側とを繋ぐように装着者の後頭部の後方を左右方向に延びる弾性材からなる後側部をフレームが備えており、前記左側アーム部の前側と前記右側アーム部の前側とは非連結である。この構成によれば、フレームの前側が開放された形状になるので、装着者の視界が広く確保されるとともに、他の人から装着者の顔を見た時に邪魔になるものが無くなる。
【0020】
第4の開示では、前記左側アーム部及び前記右側アーム部が伸縮可能に構成されているので、顔の大きさが異なっていても、フレームを共通化することができる。
【0021】
第5の開示では、前記シールド部材を跳ね上げた姿勢で保持可能に構成されているので、例えば飲食時に一時的にシールド部材を跳ね上げて保持しておくことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、装着者の頭部に装着されるフレームに対してシールド部材を着脱する際に永久磁石の吸着力を利用することで、使用感を快適にしながら、シールド部材を容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係るフェイスシールドの使用状態を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るフェイスシールドの使用状態を示す平面図である。
図3】フレームのみを装着した状態を示す側面図である。
図4】フレームの平面図である。
図5A】フレームの側面図である。
図5B】伸長した状態を示す図5A相当図である。
図6】フレームの正面図である。
図7】シールド部材の展開図である。
図8】本発明の実施形態2に係る図5A相当図である。
図9】本発明の実施形態2に係る図7相当図である。
図10】シールド部材を跳ね上げた場合の図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るフェイスシールド1の使用状態を示す側面図であり、また、図2は、フェイスシールド1の使用状態を示す平面図である。フェイスシールド1は、装着者100の顔面に向けて飛散した飛散物が装着者100の顔面に付着しないように、顔面を保護する器具である。飛散物は、人間や動物の唾液、血液、嘔吐物等であってもよいし、金属片、ガラス片のような物であってもよい。
【0026】
フェイスシールド1の使用者(装着者)100は、医療現場で医療に従事する医療従事者(医師、獣医師、歯科医師、看護師等)や介護現場で介護に従事する介護従事者等を挙げることができるが、医療従事者及び介護従事者に限定されるものではなく、例えば患者、被介護者等であってもよい。患者としては、例えば新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等による感染症を発症した患者、感染症を発症する前の潜在的な患者であってもよい。フェイスシールド1の使用者は、患者や被介護者以外の健常者であってもよい。また、フェイスシールド1を使用する場面としては、医療現場や介護現場だけなく、例えば飲食時、会話時、演劇、歌唱、演奏、講演等を行っている時、車両や航空機、船舶への乗車時等を挙げることができる。
【0027】
尚、この実施形態の説明では、前側とは装着者100を基準としたときに前となる側であり、後側とは装着者100を基準としたときに後となる側である。また、左側とは、装着者100に装着した状態で左となる側であり、右側とは、装着者100に装着した状態で右となる側である。左右方向はフェイスシールド1の幅方向である。
【0028】
図1に示すように、フェイスシールド1は、装着者100の頭部に装着されるフレーム10と、フレーム10に着脱可能に取り付けられる透光性を有するシールド部材20とを備えている。図2に示すように、フレーム10は、装着者100の頭部の左側方を前後方向に延びる左側アーム部11と、装着者100の頭部の右側方を前後方向に延びる右側アーム部12と、左側アーム部11の後側と右側アーム部12の後側とを繋ぐように装着者100の後頭部の後方を左右方向に延びる後側部13とを備えており、左側アーム部11、右側アーム部12及び後側部13は一体化されて1つのフレーム10を構成している。
【0029】
左側アーム部11は、装着者100の左耳101の上に配置される部分である。左側アーム部11の前側の端部は、装着者100の左のこめかみ付近に達している。左側アーム部11の後側の端部は、左耳101の後方に達している。左側アーム部11の後側部分は、左側屈曲部11aで構成されている。左側屈曲部11aは後側の端部に近づくほど下に位置するように緩やかに湾曲しており、この左側屈曲部11aが装着者100の左耳101の上に掛けられて所定の装着位置に保持される。左側屈曲部11aは、両手で掴んで自由に湾曲させて任意の形状にすることが可能な形状保持性を有している。
【0030】
右側アーム部12は左側アーム部11と左右対称構造であり、装着者100の右耳102の上に配置される部分である。右側アーム部12の前側の端部は、装着者100の右のこめかみ付近に達している。右側アーム部12の後側の端部は、右耳102の後方に達している。右側アーム部12の後側部分は、左側屈曲部11aと同様に構成された右側屈曲部12aで構成されており、この右側屈曲部12aが装着者100の右耳102の上に掛けられて所定の装着位置に保持される。
【0031】
後側部13は、左側屈曲部11aの後側の端部と右側アーム部12の後側の端部とを連結する棒状に形成されており、例えば樹脂材等の弾性材で構成されている。図2に示すように、後側部13は、装着者100の後頭部の形状に対応するように、左右方向中央部が最も後に位置し、そこから左側へ行くほど前に、右側へ行くほど前に位置するように緩やかに湾曲している。フレーム10を装着者100に装着した状態で、後側部13が装着者100の後頭部に接触して下方への移動が阻止されるので、フレーム10を安定させることができる。尚、後側部13は後頭部に接触しなくてもよい。
【0032】
図5A及び図5Bに示すように、左側アーム部11及び右側アーム部12は伸縮可能に構成されている。すなわち、左側アーム部11の前側は、左側本体部分11bと、当該左側本体部分11bとは別体とされた左側可動部材14を有している。左側本体部分11bは、前後方向に延びる棒状をなしており、後側の端部が左側屈曲部11aの前側の端部に接続されて一体化されている。左側本体部分11bには、左側可動部材14が差し込まれる左側差込孔11cが形成されている。左側差込孔11cは、左側本体部分11bの前端面に開口し、その開口部から後側へ向けて直線状に延びている。
【0033】
左側可動部材14は左側本体部分11bの長手方向に沿って前後方向に延びている。左側可動部材14は、その前側を除いた後側部分が左側本体部分11bの左側差込孔11cに差し込まれている。左側可動部材14は、左側差込孔11cに差し込んだ状態で、当該左側差込孔11cの延びる方向に沿って前後方向にスライドさせることが可能になっている。このとき、左側可動部材14と左側差込孔11cの内面との間に摩擦力が作用し、その摩擦力によって左側可動部材14が左側本体部分11bに対して不意に動かないように保持しておくことができる。左側可動部材14を上記摩擦力に抗して前へ引っ張ることで、左側可動部材14が前方へスライドして左側アーム部11が伸長する(図5Bに示す)。一方、左側可動部材14を上記摩擦力に抗して後へ押し込むことで、左側可動部材14が後方へスライドして左側アーム部11が短くなる(図5Aに示す)。左側可動部材14の前後方向の位置、即ち左側アーム部11の長さは無段階に変えることができる。
【0034】
図4に示すように、右側アーム部12の前側も同様に、右側本体部分12bと、当該右側本体部分12bとは別体とされた右側可動部材15を有しており、右側本体部分12bには、右側可動部材15が差し込まれる右側差込孔12cが形成されている。これにより、右側アーム部12もその長さを変更することができる。
【0035】
図6に示すように、左側可動部材14には、フレーム10がずれるのを抑制するための左側支持部材18が設けられている。図4に示すように、左側支持部材18は、左側可動部材14の前側に固定されており、左側可動部材14から右側へ突出する上側突出部18aと、下側へ突出する下側突出部18bとを備えている。上側突出部18aと下側突出部18bとは、例えばシリコンゴム等の弾性材を用いて一体成形されている。上側突出部18aの突出方向先端部は装着者100の左側のこめかみ付近に接触する部分である。また、下側突出部18bは下側へ行くほど右に位置するように湾曲しており、下側突出部18bの下側が装着者100の左側のこめかみ付近に接触する部分である。
【0036】
右側可動部材15にも左側と同様に、フレーム10がずれるのを抑制するための右側支持部材19が設けられている。右側支持部材19は、右側可動部材15の前側に固定されており、右側可動部材14から左側へ突出する上側突出部19aと、下側へ突出する下側突出部19bとを備えている。上側突出部19aの突出方向先端部は装着者100の右側のこめかみ付近に接触する部分である。また、下側突出部19bは下側へ行くほど左に位置するように湾曲しており、下側突出部19bの下側が装着者100の右側のこめかみ付近に接触する部分である。
【0037】
左側アーム部11の前側と右側アーム部12の前側とは非連結である。すなわち、フレーム10は、左側アーム部11の前側と右側アーム部12の前側とを連結する部材を備えておらず、フレーム10の前側は開放されている。フレーム10の前側が開放された形状になるので、装着者100の視界が広く確保されるとともに、他の人から装着者100の顔を見た時に邪魔になるものが無くなる。
【0038】
左側アーム部11の左側可動部材14の前側には、左側ヨーク(継鉄)16bが固定されている。左側ヨーク16bは、左側に開放した円筒キャップ状の部材であり、例えば軟鉄等で構成されている。左側ヨーク16bの左側は開放されている。左側ヨーク16bの内部には、円柱状の左側永久磁石16aが収容されている。左側永久磁石16aは、左側ヨーク16bの内面に固着されている。これにより、左側アーム部11の左側可動部材14の前側に左側永久磁石16aが設けられることになる。左側永久磁石16aは、例えばネオジウム磁石等の吸着力が高い磁石を用いることができるが、ネオジウム磁石以外の永久磁石を用いることもできる。吸着面は左側に向くことになる。左側永久磁石16aと左側ヨーク16bとを合わせて左側磁力発生部と呼ぶことができる。
【0039】
右側アーム部12の右側可動部材15の前側には、右側ヨーク(継鉄)17bが固定されている。右側ヨーク17bは、右側に開放したキャップ状の部材であり、左側ヨーク16bと同様な材料で構成することができる。右側ヨーク17bの内部には、左側永久磁石16aと同様な右側永久磁石17aが収容されている。右側永久磁石17aは、右側ヨーク17bの内面に固着されている。これにより、右側アーム部12の右側可動部材15の前側に右側永久磁石17aが設けられることになる。右側永久磁石17aと右側ヨーク17bとを合わせて右側磁力発生部と呼ぶことができる。
【0040】
図1図2に示すシールド部材20は、透光性を有する樹脂材からなるシートやフィルム等で構成されている。シールド部材20は、無色透明であってもよいし、例えばスモーク色等に着色された有色透明であってもよい。シールド部材20を構成する材料は柔軟性を有するとともに弾性も有しており、図7の展開図に示すように展開した状態から弾性変形させることによって図1図2等に示すように湾曲した形状にすることができる。展開した状態のシールド部材20は平坦な形状である。シールド部材20は、装着者100が手で簡単に湾曲させることができる。シールド部材20の厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.1mm以上0.8mm以下の範囲で設定することができる。
【0041】
シールド部材20の大きさは、顔面の全体を覆う大きさにするのが好ましいが、例えば両目から鼻、口までを覆うことが可能な形状であってもよい。シールド部材20の上縁部は、左右方向中央部が最も上に位置するように湾曲している。また、シールド部材20の下縁部は、左右方向中央部が最も下に位置するように湾曲している。また、シールド部材20の左縁部は、上側が最も左に位置するように湾曲し、さらに、シールド部材20の右縁部は、上側が最も右に位置するように湾曲している。従って、シールド部材20の幅(左右方向の寸法)は上側が下側に比べて広くなっている。
【0042】
シールド部材20の表面または裏面には、反射防止コーティング、撥水コーティング、親水コーティング等のコーティングを行ってもよい。これらコーティングは従来から周知の手法を用いて行うことができる。また、シールド部材20には抗菌処理を施してもよい。さらに、シールド部材20には紫外線をカットする機能を持たせてもよい。
【0043】
シールド部材20の左側の端部またはその近傍には、左側永久磁石16aに吸着される左側被吸着部21が設けられている。左側被吸着部21は、例えば鉄等の磁石に吸着される部材で構成されており、シールド部材20から離脱しないように当該シールド部材20に固着されている。
【0044】
シールド部材20の右側の端部またはその近傍には、右側永久磁石17aに吸着される右側被吸着部22が設けられている。右側被吸着部22も磁石に吸着される部材で構成されており、シールド部材20から離脱しないように当該シールド部材20に固着されている。左側被吸着部21及び右側被吸着部22は永久磁石で構成してもよいが、永久磁石で構成しなくてもよい。左側被吸着部21及び右側被吸着部22を永久磁石としないことで、左側被吸着部21及び右側被吸着部22同士が吸着してしまうのを抑制できる。
【0045】
シールド部材20の左側被吸着部21を左側永久磁石16aに吸着させるとともに、シールド部材20の右側被吸着部22を右側永久磁石17aに吸着させることで、シールド部材20をフレーム10に取り付けることができる。左側永久磁石16a及び右側永久磁石17aの吸着力は磁石の種類、大きさ、ヨークの形状等によって任意に設定することができる。この実施形態では、シールド部材20の脱落を抑制することができるとともに、装着者100が首を振ったり、立ったりする動作時にシールド部材20がずれないように、左側永久磁石16a及び右側永久磁石17aの吸着力を強めに設定している。また、左側被吸着部21と左側永久磁石16aとの間の摩擦力、右側被吸着部22と右側永久磁石17aとの間の摩擦力を高めておくことで、シールド部材20の脱落やずれを抑制できる。
【0046】
また、この実施形態のフェイスシールドは、シールド部材20を跳ね上げた姿勢で保持可能に構成された跳ね上げ機構を備えている。すなわち、シールド部材20をフレーム10に取り付けた状態では、左側被吸着部21及び右側被吸着部22がそれぞれ左側永久磁石16a及び右側永久磁石17aに吸着されているだけなので、例えば装着者100が手でシールド部材20の下を掴んで上に向けて力を加えると、図1に仮想線で示すように、左側被吸着部21及び右側被吸着部22が左側永久磁石16a及び右側永久磁石17aに吸着されたまま、シールド部材20だけを上へ回動させることができる。このときのシールド部材20の回動中心は、側面視において左側永久磁石16aの中心部から右側永久磁石17aの中心部まで延びる仮想中心線上に位置することになる。
【0047】
シールド部材20が上へ回動した姿勢を、シールド部材20を跳ね上げた姿勢と呼ぶ。跳ね上げた姿勢にあるシールド部材20を下へ回動させることで、図1に実線で示すように通常の使用時の姿勢(使用姿勢)に戻すことができる。シールド部材20を回動させることにより、使用姿勢から跳ね上げた姿勢に切り替えること、反対に跳ね上げた姿勢から使用姿勢に切り替えることが可能になる。このようなシールド部材20の回動を許容する機構が跳ね上げ機構である。
【0048】
シールド部材20は、使用姿勢と跳ね上げた姿勢との間の任意の位置で停止させることができ、その位置は無段階に決めることができる。跳ね上げた姿勢であっても、シールド部材20の脱落やずれを抑制できるように、左側永久磁石16a及び右側永久磁石17aの吸着力や、左側被吸着部21と左側永久磁石16aとの間の摩擦力、右側被吸着部22と右側永久磁石17aとの間の摩擦力を設定している。左側被吸着部21と左側永久磁石16aとの間の摩擦力、右側被吸着部22と右側永久磁石17aとの間の摩擦力を高める方法としては、例えばゴムや布のような高摩擦係数を持った部材を左側被吸着部21と左側永久磁石16aとの一方または両方に設ける方法、同部材を右側被吸着部22と右側永久磁石17aとの一方または両方に設ける方法がある。また、左側被吸着部21と左側永久磁石16aとの一方または両方を粗い面としてもよいし、右側被吸着部22と右側永久磁石17aとの一方または両方を粗い面としてもよい。
【0049】
(実施形態の作用効果)
上記フェイスシールド1を装着者100が装着する際には、まず、シールド部材20をフレーム10から分離しておき、図3に示すようにフレーム10のみを装着者100の頭部に装着する。フレーム10を装着する際には、後側部13を弾性変形させて左側アーム部11と右側アーム部12と間隔を広げ、その間に頭を入れていき、左側アーム部11を左耳101の上に、右側アーム部12を右耳102の上に置く。すると、フレーム10の左側支持部材18が装着者100の左側のこめかみ付近に接触し、右側支持部材19が装着者100の右側のこめかみ付近に接触するので、フレーム10が安定する。また、後側部13を後頭部に接触させることによってもフレーム10を安定させることができる。このように、フレーム10は、メガネの装着感覚に類似した装着感覚で簡単に装着することが可能になる。さらに、フレーム10は、バンドとは異なり、装着時にムレや痛みが発生しにくく、またヘアスタイルが崩れにくいので、使用感が快適になる。しかも、ヘアスタイルの自由度も高い。
【0050】
その後、シールド部材20をフレーム10に取り付ける。このとき、シールド部材20の左側被吸着部21を左側永久磁石16aに接近させていくと、左側永久磁石16aの吸着力によって左側被吸着部21が自然に吸着される。シールド部材20の右側被吸着部22も同様に右側永久磁石17aに吸着される。したがって、装着者100が左側被吸着部21及び右側被吸着部22を厳密に位置合わせする必要はなく、吸着部分を見なくてもおよその位置さえ把握していればシールド部材20をフレーム10に取り付けることができる。
【0051】
また、シールド部材20の左側を左側アーム部11から外す場合には、左側被吸着部21を左側永久磁石16aから離す方向に力を掛けるだけで済む。シールド部材20の右側についても同様である。従って、フレーム10を頭部に装着したままでシールド部材20の着脱が容易に行える。さらに、シールド部材20の着脱の際にフレーム10の着脱が不要になるので、ヘアスタイルの崩れは起こらず、使用感が快適になる。
【0052】
尚、図示しないが、シールド部材20の左側に左側永久磁石を設けておき、左側アーム部11の左側可動部材14に左側被吸着部を設けてもよい。同様に、シールド部材20の右側に右側永久磁石を設けておき、右側アーム部12の右側可動部材15に右側被吸着部を設けてもよい。このことは以下の実施形態2でも同様である。
【0053】
(実施形態2)
図8図10は、本発明の実施形態2に係るものである。この実施形態2では、跳ね上げ機構が、シールド部材20を使用姿勢と跳ね上げ姿勢の2段階に切り替える点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0054】
図8に示すように、左側アーム部11の左側可動部材14には、左側永久磁石16aから後側に離れた部分に後側永久磁石30が固定されている。尚、図示しないが、後側永久磁石30はヨークに収容されている。また、右側アーム部12の右側可動部材15には、右側永久磁石17aから後側に離れた部分に後側永久磁石(図示せず)が固定されている。
【0055】
一方、図9に示すように、シールド部材20の左側には、左側被吸着部21よりも左端寄りの部位に、第1左側被吸着部22aと、第2左側被吸着部22bとが設けられている。図8に示すように、左側被吸着部21を左側永久磁石16aに吸着させた状態で、第1左側被吸着部22aを後側永久磁石30に吸着させることができるように、第1左側被吸着部22aの位置が設定されている。また、図10に示すように、左側被吸着部21を左側永久磁石16aに吸着させた状態で、第2左側被吸着部22bを後側永久磁石30に吸着させることができるように、第2左側被吸着部22bの位置が設定されている。
【0056】
同様に、シールド部材20の右側には、左側被吸着部21よりも左端寄りの部位に、第1左側被吸着部22aと、第2左側被吸着部22bとが設けられている。第1左側被吸着部22a及び第2左側被吸着部22bは、右側に設けられている後側永久磁石に吸着されるようになっている。
【0057】
この実施形態2では、図8に示す使用姿勢にあるときには、左側被吸着部21及び第1左側被吸着部22aをそれぞれ左側永久磁石16a及び後側永久磁石30に吸着させることでシールド部材20を保持できる。このとき、シールド部材20の右側も同様に右側被吸着部22及び第1右側被吸着部23aを吸着させることができる。
【0058】
一方、シールド部材20を上へ回動させて図10に示す跳ね上げ姿勢にすると、左側被吸着部21及び第2左側被吸着部22bをそれぞれ左側永久磁石16a及び後側永久磁石30に吸着させることでシールド部材20を保持できる。このとき、シールド部材20の右側も同様に右側被吸着部22及び第2右側被吸着部23bを吸着させることができる。
【0059】
したがって、実施形態2によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができるとともに、シールド部材20を使用姿勢と跳ね上げ姿勢とで確実に保持しておくことができる。
【0060】
実施形態2において、左側被吸着部及び右側被吸着部を3つ以上設けてもよい。これにより、シールド部材20の角度を3段階以上に設定することができる。
【0061】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明に係るフェイスシールドは、人の顔面を保護することが必要な各種場面で利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 フェイスシールド
10 フレーム
11 左側アーム部
12 右側アーム部
13 後側部
16a 左側永久磁石
17a 右側永久磁石
20 シールド部材
21 左側被吸着部
22 右側被吸着部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10