(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083640
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/192 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
B65H23/192
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195072
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】井上 英明
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢人
【テーマコード(参考)】
3F105
【Fターム(参考)】
3F105AA01
3F105AA04
3F105AB04
3F105BA01
3F105BA07
3F105CA06
3F105CA11
3F105CB01
3F105DA09
3F105DA19
3F105DC03
(57)【要約】
【課題】ダンサーローラの底突きの発生を低減できる搬送装置を提供する。
【解決手段】巻取軸43は、ウェブを巻き取る。搬送部21は、巻取軸43へウェブWを搬送する。ダンサーローラ53は、搬送部21と巻取軸43との間のウェブWのたるみ量に応じて昇降する。制御部5は、ウェブWを目標速度で搬送するよう搬送部21を制御するとともに、ダンサーローラ53の位置に基づき巻取軸43を制御する。制御部5は、搬送部21によるウェブWの搬送開始時において、目標速度より遅い一段速度でウェブWを搬送するよう搬送部21を制御し、搬送部21による一段速度でのウェブWの搬送中に巻取軸43の駆動を開始させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブを巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸へウェブを搬送する搬送部と、
前記搬送部と前記巻取軸との間のウェブのたるみ量に応じて昇降するダンサーローラと、
ウェブを目標速度で搬送するよう前記搬送部を制御するとともに、前記ダンサーローラの位置に基づき前記巻取軸を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記搬送部によるウェブの搬送開始時において、前記目標速度より遅い所定速度でウェブを搬送するよう前記搬送部を制御し、前記搬送部による前記所定速度でのウェブの搬送中に前記巻取軸の駆動を開始させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ダンサーローラは、前記搬送部によるウェブの搬送開始時点において、ウェブの搬送中における前記ダンサーローラの目標位置より高い位置に配置され、
前記制御部は、
前記搬送部がウェブの搬送を開始させて前記所定速度でウェブを搬送した場合に前記ダンサーローラがウェブの搬送開始時点における位置から前記目標位置まで下降するのに要する時間を算出し、
前記搬送部によるウェブの搬送開始時点から、算出した前記時間が経過した時点で前記巻取軸の駆動を開始させることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記巻取軸を駆動させるモータをさらに備え、
前記制御部は、前記モータにより前記巻取軸の駆動を開始させた際の前記モータの応答性に応じて前記モータのゲインを調整することを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブを搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状のウェブを搬送しつつ、ウェブに印刷を行い、印刷済みのウェブを巻取軸に巻き取る印刷装置が知られている。
【0003】
このような印刷装置のなかには、印刷されたウェブを巻取軸に巻き取る巻取部にウェブのたるみを吸収する複数のダンサーローラを設けたものがある(特許文献1参照)。複数のダンサーローラを設けることで、ダンサーローラにより吸収できるウェブのたるみ量の合計を大きくすることができる。
【0004】
これにより、巻取軸へウェブを搬送するローラによる搬送速度と巻取軸による巻取速度との速度差が大きくなっても、その速度差によるウェブのたるみを吸収できる。このため、巻取軸に巻き取られるウェブのたるみが抑えられる。ここで、巻取軸に巻き取られるウェブにたるみがあると、ウェブを十分な強さで巻くことができず、ウェブの巻取品質が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように複数のダンサーローラを設けることは、装置の大型化を招く。
【0007】
これに対し、ダンサーローラの位置をセンサで検出し、センサが検出した位置に基づき、ダンサーローラが目標位置を維持するように巻取軸を制御する構成では、ダンサーローラが1つのみの構成でもウェブのたるみが抑えられる。
【0008】
ここで、上記のような構成の印刷装置として、ウェブの搬送開始時において、巻取軸へウェブを搬送するローラによる搬送開始後、ダンサーローラが目標位置より高い位置から目標位置まで下降すると巻取軸の駆動を開始させる制御を行うものがある。
【0009】
このような制御では、ダンサーローラが目標位置に到達する時点でウェブの搬送速度が高速になっており、ダンサーローラが急激に下降することで、巻取軸による巻取速度の加速度が不足することがある。この結果、ダンサーローラが可動許容範囲の下限位置より下降する底突きが発生することがある。ダンサーローラの底突きが発生すると、エラーとしてウェブの搬送が停止される。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、ダンサーローラの底突きの発生を低減できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の搬送装置は、ウェブを巻き取る巻取軸と、前記巻取軸へウェブを搬送する搬送部と、前記搬送部と前記巻取軸との間のウェブのたるみ量に応じて昇降するダンサーローラと、ウェブを目標速度で搬送するよう前記搬送部を制御するとともに、前記ダンサーローラの位置に基づき前記巻取軸を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記搬送部によるウェブの搬送開始時において、前記目標速度より遅い所定速度でウェブを搬送するよう前記搬送部を制御し、前記搬送部による前記所定速度でのウェブの搬送中に前記巻取軸の駆動を開始させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送装置によれば、ダンサーローラの底突きの発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の巻取部の要部の斜視図である。
【
図3】
図1に示す印刷装置のダンサーローラ近傍の正面図である。
【
図4】
図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。
【
図5】
図1に示す印刷装置の巻取制御部および巻取モータドライバの構成を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態おけるウェブの搬送開始時における搬送ローラによる搬送速度、巻取速度、およびダンサーローラの動きを示す図である。
【
図7】第2実施形態おける巻取制御部および巻取モータドライバの構成を示すブロック図である。
【
図9】第3実施形態おける巻取制御部および巻取モータドライバの構成を示すブロック図である。
【
図10】ダンサ応答時間を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る搬送装置を備えた印刷装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す印刷装置の巻取部の要部の斜視図である。
図3は、
図1に示す印刷装置のダンサーローラ近傍の正面図である。
図4は、
図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。
図5は、
図1に示す印刷装置の巻取制御部および巻取モータドライバの構成を示すブロック図である。なお、以下の説明において、
図1の紙面に直交する方向を前後方向とする。また、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0017】
図1、
図4に示すように、第1実施形態に係る印刷装置1は、ウェブロール保持部2と、搬送印刷部3と、巻取部4と、制御部5とを備える。なお、搬送印刷部3の一部(後述する搬送部21)と巻取部4と制御部5により搬送装置が構成される。
【0018】
ウェブロール保持部2は、ウェブロール6を保持する。ウェブロール6は、フィルム、紙等からなる長尺状の印刷媒体であるウェブWがロール状に巻かれたものである。ウェブロール保持部2は、ウェブロール支持軸11と、ブレーキ部12と、エンコーダ13とを備える。
【0019】
ウェブロール支持軸11は、ウェブロール6を回転可能に支持する。ウェブロール支持軸11は、前後方向に延びる長尺状に形成されている。
【0020】
ブレーキ部12は、ウェブロール支持軸11の回転にブレーキをかけることで、ウェブロール6と後述する搬送ローラ26との間のウェブWに張力を付与する。ブレーキ部12は、例えば、パウダーブレーキからなる。
【0021】
エンコーダ13は、ウェブロール支持軸11(ウェブロール6)の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0022】
搬送印刷部3は、ウェブWを搬送しつつウェブWに印刷を行う。搬送印刷部3は、搬送部21と、印刷部22A,22Bとを備える。
【0023】
搬送部21は、ウェブWをウェブロール6から引き出しつつ、後述する巻取部4の巻取軸43へ向けてウェブWを搬送する。搬送部21は、一対の搬送ローラ26と、搬送モータ27と、エンコーダ28とを備える。
【0024】
搬送ローラ26は、ウェブWをニップしつつ搬送する。搬送ローラ26によるウェブWの搬送により、ウェブロール支持軸11とともにウェブロール6が回転し、ウェブロール6からウェブWが引き出される。
【0025】
搬送モータ27は、搬送ローラ26を回転駆動させる。
【0026】
エンコーダ28は、搬送モータ27の出力軸の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0027】
印刷部22A,22Bは、それぞれウェブWのおもて面、うら面に印刷を行う。印刷部22A,22Bは、それぞれ5つのヘッドユニット31を備える。
【0028】
ヘッドユニット31は、インクジェットヘッド(図示せず)を有し、インクジェットヘッドからウェブWにインクを吐出して画像を印刷する。印刷部22A,22Bのそれぞれにおいて、5つのヘッドユニット31は、それぞれ異なる色のインクを吐出する。
【0029】
巻取部4は、印刷部22A,22Bにより印刷されたウェブWを巻き取る。巻取部4は、バッファ部41と、テンションローラ機構部42と、巻取軸43と、巻取モータ(モータに相当)44と、エンコーダ45とを備える。
【0030】
バッファ部41は、搬送部21と巻取軸43との間におけるウェブWのたるみを保持する。バッファ部41は、ウェブWの搬送方向におけるテンションローラ機構部42の上流側に配置されている。バッファ部41は、ガイドローラ51,52と、ダンサーローラ53と、キャリッジ54と、ガイドシャフト55と、ダンサー位置センサ56とを備える。
【0031】
ガイドローラ51,52は、搬送部21とテンションローラ機構部42との間でウェブWをガイドする。
【0032】
ダンサーローラ53は、ガイドローラ51,52間において、自重によりウェブWを押し下げる。これにより、搬送部21と巻取軸43との間におけるウェブWのたるみがバッファ部41に吸収される。ダンサーローラ53は、搬送部21と巻取軸43との間におけるウェブWのたるみ量に応じて昇降する。
【0033】
図3に示すように、ダンサーローラ53には、昇降可能な範囲である可動許容範囲が設定されている。可動許容範囲の中心位置が、ウェブWの搬送中におけるダンサーローラ53の位置の目標である目標位置として設定されている。なお、目標位置は、可動許容範囲の中心位置以外の位置に変更してもよい。
【0034】
目標位置より高い位置に、停止時待機位置が設定されている。停止時待機位置は、可動許容範囲の上限である可動上限位置の下側近傍にある。停止時待機位置は、印刷装置1でウェブWの搬送および印刷を行わない待機中におけるダンサーローラ53の位置として設定されたものである。可動許容範囲の下限である可動下限位置は、後述するストッパ58の上側近傍にある。
【0035】
キャリッジ54は、ダンサーローラ53を回転可能に保持する。キャリッジ54は、ダンサーローラ53とともにガイドシャフト55に沿って昇降する。キャリッジ54には、磁石57が取り付けられている。磁石57は、ダンサー位置センサ56がダンサーローラ53の位置を検出するために用いられるものである。
【0036】
ガイドシャフト55は、昇降するキャリッジ54をガイドする。ガイドシャフト55は、右側ほど低くなるように傾斜している。これにより、巻取部4が、高さが抑えられて小型化されている。ガイドシャフト55の下端には、ダンサーローラ53の落下を防止するためのストッパ58が設けられている。なお、ガイドシャフト55は、傾斜せずに上下方向に平行に設置されていてもよい。
【0037】
ダンサー位置センサ56は、磁石57を検出することにより、ガイドシャフト55上のダンサーローラ53の位置を検出する。すなわち、ダンサー位置センサ56は、上下方向におけるダンサーローラ53の位置を検出する。ダンサー位置センサ56は、ガイドシャフト55に平行に設置されたリニアスケールからなる。
【0038】
テンションローラ機構部42は、巻取軸43に巻き取られるウェブWに張力を付与する。テンションローラ機構部42は、ブレーキローラ61と、ブレーキ部62と、ガイドローラ63,64とを備える。
【0039】
ブレーキローラ61は、ブレーキ部62のブレーキ力をウェブWに伝達するためのローラである。ブレーキローラ61にはウェブWが巻き掛けられている。ブレーキローラ61は、ウェブWの搬送方向における巻取軸43(巻取ロール66)の上流側に配置されている。
【0040】
ブレーキ部62は、ブレーキローラ61の回転にブレーキをかけることで、巻取軸43に巻き取られるウェブWに張力を付与する。ブレーキ部62は、例えば、パウダーブレーキからなる。
【0041】
ガイドローラ63,64は、ブレーキローラ61へのウェブWの巻き掛けを補助する。
【0042】
巻取軸43は、ウェブWを巻き取って保持する。巻取軸43に巻き取られたウェブWにより巻取ロール66が形成される。巻取軸43は、前後方向に延びる長尺状に形成されている。
【0043】
巻取モータ44は、巻取軸43を
図1における時計回り方向または反時計回り方向に回転させる。巻取軸43の回転により、ウェブWが巻取軸43に巻き取られる。
【0044】
エンコーダ45は、巻取軸43(巻取ロール66)の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0045】
制御部5は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、主制御部71と、搬送制御部72と、搬送モータドライバ73と、巻取制御部74と、巻取モータドライバ75とを備える。
【0046】
主制御部71は、印刷装置1全体の制御を司る。主制御部71は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0047】
搬送制御部72は、搬送ローラ26によりウェブWをウェブロール6から引き出して巻取部4へ向けて搬送するよう搬送モータドライバ73を介して搬送モータ27を制御する。搬送制御部72は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成される。
【0048】
搬送制御部72は、印刷時には搬送ローラ26がウェブWを所定の印刷搬送速度Vg(目標速度に相当)で搬送するよう制御する。印刷搬送速度Vgは、印刷部22A,22Bによる印刷を行う際のウェブWの搬送速度として設定された速度である。
【0049】
搬送制御部72は、ウェブWの搬送開始時においては、まず、搬送ローラ26が印刷搬送速度より遅い一段速度V1(所定速度に相当)でウェブWを搬送するよう制御する。搬送制御部72は、搬送ローラ26による一段速度V1でのウェブWの搬送中に、搬送ローラ26による搬送開始時には停止時待機位置にあったダンサーローラ53が目標位置まで下降し、巻取軸43の駆動が開始された後、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度を一段速度V1から印刷搬送速度Vgまで加速するよう制御する。
【0050】
また、搬送制御部72は、ウェブWに張力を付与するようウェブロール保持部2のブレーキ部12を制御する。
【0051】
搬送モータドライバ73は、搬送モータ27を駆動させる。
【0052】
巻取制御部74は、巻取モータ44により巻取軸43を回転させて巻取軸43にウェブWを巻き取るよう制御する。また、巻取制御部74は、巻取軸43に巻き取られるウェブWに張力を付与するようテンションローラ機構部42のブレーキ部62を制御する。巻取制御部74は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成される。
【0053】
図5に示すように、巻取制御部74は、巻取ロール径算出部81と、ブレーキ制御部82と、目標位置設定部83と、Pゲイン算出部84と、ジョグ運転制御部85とを備える。巻取制御部74の各部は、CPUがプログラムを実行することにより構成される。
【0054】
巻取ロール径算出部81は、エンコーダ45の出力パルス数を用いて、巻取ロール66の外径である巻取ロール径Dを算出する。
【0055】
ブレーキ制御部82は、テンションローラ機構部42のブレーキ部62を制御する。ブレーキ制御部82は、巻取ロール径Dに応じてブレーキ部62のブレーキ力を調整する。
【0056】
目標位置設定部83は、ダンサーローラ53の目標位置を後述する巻取モータドライバ75の比較部91に設定する。
【0057】
Pゲイン算出部84は、巻取ロール径Dに基づき、後述する巻取モータドライバ75のPID制御部92によるPID制御のPゲインを算出する。
【0058】
ジョグ運転制御部85は、巻取部4に後述するジョグ運転を行わせる。
【0059】
巻取モータドライバ75は、巻取モータ44を駆動させる。巻取モータドライバ75は、比較部91と、PID制御部92と、出力制御部93と、主回路94とを備える。
【0060】
比較部91は、搬送部21によるウェブWの搬送中において、ダンサー位置センサ56により検出されたダンサーローラ53の位置と目標位置とを比較して、それらの差であるダンサーローラ位置誤差を算出する。
【0061】
PID制御部92は、ダンサーローラ位置誤差に基づき、ダンサーローラ53を目標位置に移動させるための巻取モータ44の駆動周波数を、PID演算により算出する。
【0062】
出力制御部93は、PID制御部92で算出された駆動周波数に応じた駆動信号を主回路94に出力する。出力制御部93は、巻取部4のジョグ運転時には、予め設定された所定の回転速度で巻取モータ44を駆動させるための駆動信号を主回路94に出力する。
【0063】
主回路94は、出力制御部93から入力された駆動信号に基づき、巻取モータ44に電流を出力して巻取モータ44を駆動させる。
【0064】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0065】
印刷ジョブが入力されると、主制御部71は、巻取制御部74に巻取部4のジョグ運転を開始させるよう指示する。ジョグ運転の開始が指示されると、
図6の時刻t1において、巻取制御部74のジョグ運転制御部85は、巻取モータドライバ75により巻取モータ44の駆動を開始させる。これにより、巻取軸43の駆動が開始され、巻取軸43へのウェブWの巻き取りが開始される。ここで、ブレーキ部62は、印刷ジョブが入力される前の待機中からオンのままである。
【0066】
ジョグ運転では、巻取モータドライバ75の出力制御部93は、比較的低速な所定の回転速度で巻取モータ44を駆動させるための駆動信号を主回路94に出力する。これにより、巻取軸43による比較的低速な巻取速度でのウェブWの巻き取りが行われる。ジョグ運転では、巻取モータ44が予め設定された回転速度で駆動されるため、巻取ロール径Dが大きいほど巻取速度は速くなる。
【0067】
ジョグ運転の開始後、ダンサー位置センサ56によりダンサーローラ53が停止時待機位置にあることが検出されると(時刻t2)、出力制御部93は、ジョグ運転を終了させる。これにより、ダンサーローラ53が停止時待機位置に配置された状態となる。
【0068】
ここで、
図6の例では、ジョグ運転を開始する時刻t1において、ダンサーローラ53が目標位置と可動下限位置との間にある。ジョグ運転によりウェブWが巻取軸43に巻き取られることで、ダンサーローラ53が上昇し、停止時待機位置に到達している。
【0069】
なお、通常は、前回の印刷ジョブの終了時においてダンサーローラ53が停止時待機位置に配置されるように制御されている。しかし、待機中に手動で巻取ロール66が回転させられたこと等により、ダンサーローラ53が停止時待機位置から移動することがある。このため、ジョグ運転の開始時にダンサーローラ53が
図6のような位置に配置されていることがある。
【0070】
ジョグ運転の開始時にダンサーローラ53が停止時待機位置にある場合には、ジョグ運転を開始するとすぐにダンサーローラ53が停止時待機位置にあることが検出され、ジョグ運転は短時間で終了する。
【0071】
ジョグ運転の終了後の時刻t3において、搬送制御部72は、搬送モータドライバ73により搬送モータ27の駆動を開始させる。これにより、搬送ローラ26によるウェブWの搬送が開始される。ここで、ブレーキ部12は、待機中からオンのままである。
【0072】
搬送ローラ26によるウェブWの搬送が開始されると、搬送制御部72は、搬送開始時点から、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度を所定の加速度で加速させる。
【0073】
その後、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度が一段速度V1に到達すると、搬送制御部72は、その時点から、一段速度V1でのウェブWの定速搬送へ移行するよう搬送モータ27を制御する。一段速度V1でのウェブWの定速搬送中は、搬送制御部72は、エンコーダ28の出力パルス数を用いてウェブWの搬送速度を算出し、算出した搬送速度と一段速度V1との差がなくなるよう搬送モータ27を制御する。
【0074】
搬送ローラ26によるウェブWの搬送が開始されることで、
図6に示すように、ダンサーローラ53が停止時待機位置から下降し始める。そして、ダンサーローラ53が目標位置に到達したことがダンサー位置センサ56により検出されると、その時刻t4において、巻取モータドライバ75の出力制御部93は、巻取モータ44の駆動を開始させる。これにより、巻取軸43の駆動(回転)が開始される。
【0075】
この後、巻取制御部74および巻取モータドライバ75は、ダンサー位置センサ56により検出されたダンサーローラ53の位置に基づき、ダンサーローラ53が目標位置を維持するように、巻取モータ44を制御して巻取軸43によるウェブWの巻取速度を制御する。
【0076】
具体的には、巻取モータドライバ75の比較部91は、ダンサー位置センサ56により検出されたダンサーローラ53の位置と目標位置とを比較して、ダンサーローラ位置誤差を算出する。ここで、比較部91には、目標位置設定部83により目標位置が事前に設定されている。
【0077】
PID制御部92は、ダンサーローラ位置誤差に基づき、ダンサーローラ53を目標位置に移動させるための巻取モータ44の駆動周波数を、PID演算により算出する。出力制御部93は、PID制御部92で算出された駆動周波数に応じた駆動信号を主回路94に出力する。主回路94は、出力制御部93から入力された駆動信号に基づき、巻取モータ44に電流を出力して巻取モータ44を駆動させる。
【0078】
ここで、PID制御部92は、PID演算におけるPゲインとして、巻取ロール径算出部81が算出した巻取ロール径Dに基づきPゲイン算出部84が算出したPゲインの値を用いる。PID制御部92は、PID演算におけるIゲインおよびDゲインとしては、予め設定された固定値を用いる。
【0079】
ここで、巻取ロール径算出部81は、搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始後における巻取軸43の駆動開始から徐々に大きくなる巻取ロール径Dをリアルタイムで計算している。
【0080】
具体的には、巻取ロール径算出部81は、エンコーダ45の出力パルス数に基づき、巻取ロール66の回転数Nを算出する。そして、巻取ロール径算出部81は、巻取ロール66の回転数Nと搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度Vとを用いて、下記の式(1)により、巻取ロール径Dを算出する。
【0081】
D=V/(N×π) …(1)
式(1)の搬送速度Vは、搬送ローラ26が一段速度V1でウェブWを搬送する期間中は、一段速度V1である。後述する一段速度V1から印刷搬送速度Vgへの加速の終了後は、式(1)の搬送速度Vは、印刷搬送速度Vgである。印刷搬送速度Vgに達するまでの加速中においては、式(1)の搬送速度Vは、予め設定された加速度と、加速開始からの経過時間により算出される。
【0082】
Pゲインは、巻取ロール径Dが大きくなるほど小さくなるように設定される。巻取軸43によるウェブWの巻取制御においては、巻取ロール径Dが小さいときには、巻取軸43を速く回転させる必要があり、そのために必要な巻取モータ44の回転数を確保するために、Pゲインを大きくする必要がある。巻取ロール径Dが大きくなるほど必要な巻取モータ44の回転数が小さくなるため、Pゲインは小さくなる。
【0083】
Pゲイン算出部84は、巻取ロール径DとPゲインとの関係を示す数式を用いて、巻取ロール径DからPゲインを算出する。巻取ロール径DとPゲインとの関係を示す数式は、印刷装置1により予め実験に基づいて求められたものである。
【0084】
上述のような巻取モータ44の駆動制御により、
図6の時刻t4で巻取モータ44の駆動が開始された後、巻取速度が一段速度V1に到達すると、一段速度V1での定速の巻き取りに移行する。
【0085】
ここで、巻取モータ44の駆動開始から巻取速度が一段速度V1に到達するまでの間は、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度(一段速度V1)が巻取速度より速いことから、
図6のように、ダンサーローラ53が一時的に目標位置より低い位置まで下降する。
【0086】
巻取軸43の駆動開始後の時刻t5において、搬送制御部72は、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度を一段速度V1から印刷搬送速度Vgへ加速させ始める。
【0087】
搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度を一段速度V1から印刷搬送速度Vgへ加速させ始めるタイミング(時刻t5)は、巻取軸43の駆動が開始されたタイミング(時刻t4)から巻取一段速度時間Tf後である。
【0088】
ここで、ダンサーローラ53が目標位置に到達しても、異常により巻取軸43が停止したままの状態で搬送ローラ26による一段速度V1でのウェブWの搬送が継続されると、ダンサーローラ53が可動下限位置より下降する底突きが発生する。ダンサーローラ53の底突きが発生すると、エラーとしてウェブWの搬送が停止される。
【0089】
これに対し、巻取一段速度時間Tfは、ダンサーローラ53が目標位置に到達したことが検出されたタイミング(時刻t4)から巻取一段速度時間Tf後までに巻取軸43の駆動が開始されればダンサーローラ53の底付きが発生しないように設定されている。
【0090】
すなわち、巻取一段速度時間Tfは、巻取軸43が停止した状態で搬送ローラ26がウェブWを一段速度V1で搬送した場合にダンサーローラ53が目標位置から可動下限位置まで移動するのに要する時間より短い時間に設定されている。
【0091】
例えば、巻取一段速度時間Tfは、巻取軸43が停止した状態で搬送ローラ26がウェブWを一段速度V1で搬送した場合にダンサーローラ53が目標位置と可動下限位置との間の距離Lkの半分の距離(Lk/2)だけ移動するのに要する時間に設定されている。この場合、巻取一段速度時間Tfは、(Lk/2)の2倍の距離を一段速度V1で割ることで算出される。搬送ローラ26によるウェブWの搬送量はダンサーローラ53の移動量の2倍となるためである。すなわち、巻取一段速度時間Tfは、下記の式(2)で表される。
【0092】
Tf=((Lk/2)×2)/V1=Lk/V1 …(2)
一段速度V1から印刷搬送速度Vgへの加速開始後、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度が印刷搬送速度Vgに到達すると、搬送制御部72は、その時点から、印刷搬送速度VgでのウェブWの定速搬送へ移行するよう搬送モータ27を制御する。印刷搬送速度VgでのウェブWの定速搬送中は、搬送制御部72は、エンコーダ28の出力パルス数を用いてウェブWの搬送速度を算出し、算出した搬送速度と印刷搬送速度Vgとの差がなくなるよう搬送モータ27を制御する。
【0093】
上述したダンサーローラ53が目標位置を維持するための巻取モータ44の制御により、巻取軸43による巻取速度も搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度と同様に推移する。
【0094】
印刷搬送速度VgでのウェブWの定速搬送の開始後、主制御部71は、印刷ジョブに基づく印刷部22A,22Bによる印刷を開始させる。
【0095】
搬送ローラ26によるウェブWの搬送中は、搬送制御部72は、ウェブロール6の外径に応じて、ウェブロール6と搬送ローラ26との間のウェブWの張力が設定張力を維持するようブレーキ部12のブレーキトルク(ブレーキ力)を制御する。
【0096】
ここで、ウェブロール6の外径は、ウェブロール6の回転数および印刷搬送速度Vgを用いて算出される。ウェブロール6の回転数は、エンコーダ13の出力パルス信号に基づき算出される。ウェブロール6の外径の縮小に応じて、ブレーキ部12のブレーキトルクをリアルタイムで変化させることで、ウェブロール6と搬送ローラ26との間のウェブWの張力が設定張力に維持される。
【0097】
また、巻取制御部74のブレーキ制御部82は、搬送ローラ26によるウェブWの搬送中において、巻取ロール径Dに応じてブレーキ部62のブレーキ力を調整する。
【0098】
具体的には、ブレーキ制御部82は、巻取ロール径Dが所定の閾値以下の場合は、巻張力Fが所定の設定巻張力となるようブレーキ部62のブレーキトルク(ブレーキ力)を制御する。また、ブレーキ制御部82は、巻取ロール径Dが閾値より大きい場合は、巻取ロール径Dが大きくなるほど巻張力Fが小さくなるように、ブレーキ部62のブレーキトルク(ブレーキ力)を制御する。
【0099】
これにより、巻取ロール66の中心付近ではウェブWが比較的強く巻かれ、外側ではウェブWが比較的緩く巻かれる。この結果、ウェブWの巻取品質を向上できる。具体的には、巻取ロール66の中心付近でウェブWが比較的強く巻かれることで巻取ロール66の中心付近でウェブWの横ずれが生じることが抑えられる。一方、巻取ロール66の中心付近より外側ではウェブWが比較的緩く巻かれることで、ウェブWが過度に強く巻かれることで変形(カール)して後工程に不具合が生じることが抑えられる。
【0100】
ここで、巻張力Fは、ブレーキ部62と巻取軸43(巻取ロール66)との間のウェブWの張力である。巻張力Fは、ブレーキ部62のブレーキトルクをB、ブレーキローラ61の半径をr、ダンサーローラ53の質量をMd、ガイドシャフト55の上下方向に対する傾斜角度をθとすると、下記の式(3)で表される。
【0101】
F=B/r+Mdcosθ/2 …(3)
ブレーキ制御部82は、巻取ロール径Dに基づき、巻張力Fが巻取ロール径Dに応じて予め設定された値となるように、式(3)を用いてブレーキトルクBを算出する。
【0102】
印刷ジョブに基づく印刷が終了すると、主制御部71は、搬送モータ27および巻取モータ44を停止させて、ウェブWの搬送を停止させる。これにより、一連の印刷動作が終了となる。
【0103】
以上説明したように、印刷装置1では、制御部5は、搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始時において、印刷搬送速度Vgより遅い一段速度V1でウェブWを搬送するよう搬送ローラ26を制御する。そして、制御部5は、搬送ローラ26による一段速度V1でのウェブWの搬送中に巻取軸43の駆動を開始させる。これにより、巻取軸43の駆動開始時における搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度が低く抑えられるので、ダンサーローラ53が急激に下降することが抑えられる。このため、巻取軸43による巻取速度の加速度が不足してダンサーローラ53の底突きが発生することを低減できる。
【0104】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態の巻取制御部を変更した第2実施形態について説明する。
【0105】
図7は、第2実施形態における巻取制御部および巻取モータドライバの構成を示すブロック図である。
【0106】
図7に示すように、第2実施形態における巻取制御部74Aは、上述した第1実施形態の巻取制御部74に巻取開始指示部101を追加した構成である。
【0107】
巻取開始指示部101は、一段速度時間T1を算出し、搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始時点から、算出した一段速度時間T1が経過した時点で巻取軸43の駆動を開始させるよう巻取モータドライバ75に指示する。
【0108】
一段速度時間T1は、搬送ローラ26がウェブWの搬送を開始させて一段速度V1でウェブWを搬送した場合にダンサーローラ53が停止時待機位置から目標位置まで下降するのに要する時間である。
【0109】
ここで、
図8に示すように、搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始(時刻t3)から搬送速度が一段速度V1に到達するタイミング(時刻t11)までの時間をT11とする。ウェブWの搬送速度が一段速度V1に到達してからダンサーローラ53が目標位置に到達するタイミング(時刻t12)までの時間をT12とする。一段速度時間T1は下記の式(4)で表される。
【0110】
T1=T11+T12 …(4)
搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始から搬送速度が一段速度V1に到達するまでの間(時刻t3~t11)の加速度をα(固定値)とすると、T11は下記の式(5)で表される。
【0111】
T11=V1/α …(5)
搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始から搬送速度が一段速度V1に到達するまでの間(時刻t3~t11)におけるウェブWの搬送距離をLaとすると、Laは下記の式(6)で表される。
【0112】
La=V12/(2×α) …(6)
ダンサーローラ53の停止時待機位置と目標位置との間の距離をLtとすると、T12は下記の式(6)で表される。
【0113】
T12=(Lt×2-La)/V1 …(7)
式(4)~(7)から、下記の式(8)が導かれる。
【0114】
T1=V1/(2×α)+(Lt×2)/V1 …(8)
次に、第2実施形態における印刷装置1の動作について説明する。
【0115】
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、印刷ジョブが入力されると、制御部5は、巻取部4のジョグ運転を行った後、搬送ローラ26によりウェブWを一段速度V1で搬送させる。これにより、ダンサーローラ53が停止時待機位置から下降する。
【0116】
巻取開始指示部101は、搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始時点(時刻t3)から一段速度時間T1が経過した時点(時刻t12)で巻取軸43の駆動を開始させるよう巻取モータドライバ75に指示する。搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始時点(時刻t3)から一段速度時間T1が経過した時点(時刻t12)では、ダンサーローラ53が目標位置に到達している。
【0117】
ここで、巻取開始指示部101は、事前に式(8)により一段速度時間T1を算出している。なお、ダンサーローラ53の目標位置が変更された場合には、巻取開始指示部101は、変更された目標位置に応じた一段速度時間T1を算出する。
【0118】
巻取開始指示部101により巻取軸43の駆動を開始させるよう指示されると、巻取モータドライバ75の出力制御部93は、巻取モータ44の駆動を開始させる。これにより、巻取軸43の駆動(回転)が開始される。
【0119】
この後、第1実施形態と同様に、巻取制御部74Aおよび巻取モータドライバ75は、ダンサー位置センサ56により検出されたダンサーローラ53の位置に基づき、ダンサーローラ53が目標位置を維持するように、巻取モータ44を制御して巻取軸43によるウェブWの巻取速度を制御する。
【0120】
また、第1実施形態と同様に、巻取軸43の駆動が開始されたタイミング(時刻t12)から巻取一段速度時間Tf後のタイミング(時刻t13)において、搬送制御部72は、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度を一段速度V1から印刷搬送速度Vgへ加速させ始める。これ以降の動作も第1実施形態と同様である。
【0121】
以上説明したように、第2実施形態では、制御部5は、一段速度時間T1を算出し、搬送ローラ26によるウェブWの搬送開始時点から、算出した一段速度時間T1が経過した時点で巻取軸43の駆動を開始させる。これにより、第1実施形態のようにダンサーローラ53が目標位置に到達したことがダンサー位置センサ56により検出されると巻取軸43の駆動を開始させるのに比べて、巻取軸43の駆動を迅速に開始させることができる。この結果、一段速度V1から印刷搬送速度Vgへの移行する時間を短縮できるので、印刷に使用されずに無駄となるウェブW(損紙)を低減できる。
【0122】
[第3実施形態]
次に、上述した第1実施形態の巻取制御部を変更した第3実施形態について説明する。
【0123】
図9は、第3実施形態における巻取制御部および巻取モータドライバの構成を示すブロック図である。
【0124】
図9に示すように、第3実施形態における巻取制御部74Bは、上述した第1実施形態の巻取制御部74に応答計測部111を追加した構成である。
【0125】
また、第3実施形態では、ブレーキローラ61の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力するエンコーダ112が設けられている。
【0126】
応答計測部111は、巻取モータ44により巻取軸43の駆動を開始させた際の巻取モータ44の応答性を計測する。そして、応答計測部111は、計測した巻取モータ44の応答性に応じて巻取モータ44のゲイン(Pゲイン)を調整するようPゲイン算出部84へ指示する。
【0127】
次に、第3実施形態における印刷装置1の動作について説明する。
【0128】
第3実施形態でも、第1実施形態と同様に、印刷ジョブが入力されると、制御部5は、巻取部4のジョグ運転を行った後、搬送ローラ26によりウェブWを一段速度V1で搬送させる。これにより、ダンサーローラ53が停止時待機位置から下降し始める。そして、ダンサーローラ53が目標位置に到達したことがダンサー位置センサ56により検出されると、巻取モータドライバ75の出力制御部93は、巻取モータ44の駆動を開始させる。これにより、巻取軸43の駆動(回転)が開始される。
【0129】
巻取モータ44の駆動開始後、第1実施形態と同様に、巻取制御部74Bおよび巻取モータドライバ75が、ダンサー位置センサ56により検出されたダンサーローラ53の位置に基づき、ダンサーローラ53が目標位置を維持するように、巻取モータ44を制御して巻取軸43によるウェブWの巻取速度を制御する。
【0130】
また、第1実施形態と同様に、巻取軸43の駆動が開始されたタイミングから巻取一段速度時間Tf後のタイミングにおいて、搬送制御部72が、搬送ローラ26によるウェブWの搬送速度を一段速度V1から印刷搬送速度Vgへ加速させ始め、印刷搬送速度Vgに到達すると印刷搬送速度Vgでの定速搬送へ移行させる。これ以降の動作も第1実施形態と同様である。
【0131】
第3実施形態では、上述のようにダンサーローラ53が目標位置に到達して巻取モータ44の駆動が開始されると、応答計測部111は、エンコーダ112の出力パルス数に基づき、ブレーキローラ61の回転数Nbを算出する。また、応答計測部111は、下記の式(9)により、エンコーダ112を用いた巻取速度の計測値である巻取速度計測値Vmを算出する。
【0132】
Vm=Nb×Db×π …(9)
ここで、式(9)におけるDbは、ブレーキローラ61の直径である。
【0133】
また、応答計測部111は、巻取モータ44の時定数であるダンサ応答時間τを計測する。具体的には、応答計測部111は、巻取モータ44の駆動開始から、巻取速度計測値Vmが
図10に示す到達速度計算値Vτに到達するまでの時間を、ダンサ応答時間τとして計測する。
【0134】
ここで、巻取モータ44の駆動開始の時点は、エンコーダ112のパルス発生が検出された時点である。また、到達速度計算値Vτは、一段速度V1の(1-e-1)倍の速度であり、下記の式(10)で算出されるものである。
【0135】
Vτ=V1×(1-e
-1) …(10)
ここで、
図10において一点鎖線で示すように、巻取モータ44の駆動開始(時刻t4)から巻取一段速度時間Tfが経過した時点(時刻t5)でも巻取速度(巻取速度計測値Vm)が到達速度計算値Vτに到達していない場合、ダンサ応答時間τが巻取一段速度時間Tfより大きくなる。この場合、応答計測部111は、巻取モータ44の応答性が基準レベルより低いと判断し、Pゲインを増大させるようPゲイン算出部84へ指示する。
【0136】
この際、応答計測部111は、ダンサ応答時間τに応じた調整量の分だけPゲインを増大させるようPゲイン算出部84へ指示する。ダンサ応答時間τとPゲインの調整量との関係は、予め実験等に基づき決定されている。なお、巻取モータ44の駆動開始の時点では、Pゲインは所定の初期値に設定されている。
【0137】
また、応答計測部111は、巻取モータ44の駆動開始から巻取一段速度時間Tfが経過した時点までに巻取速度計測値Vmが到達速度計算値Vτに到達したことが検出された場合、巻取モータ44の駆動開始から巻取一段速度時間Tfが経過した時点までの巻取速度計測値Vmのデータに対してフーリエ変換による周波数解析を行う。
【0138】
ここで、巻取モータ44の応答性が高すぎる場合、
図10において二点鎖線で示すように、巻取速度(巻取速度計測値Vm)が振動する挙動となり、巻取モータ44の駆動開始から巻取一段速度時間Tfが経過した時点までに収束しないことがある。また、巻取モータ44の応答性が高すぎる場合、巻取モータ44が停止と起動とを繰り返し、一定速度とならないことがある。
【0139】
応答計測部111は、上述のような巻取モータ44の応答性が高すぎる(基準レベルより高い)ことにより生じる現象が生じたか否かを判断するために、上述した巻取速度計測値Vmのデータに対する周波数解析を行う。この周波数解析の結果、振幅が所定の閾値以上の周波数成分が検出された場合、応答計測部111は、巻取モータ44の応答性が基準レベルより高いと判断し、Pゲインを低減させるようPゲイン算出部84へ指示する。
【0140】
この際、応答計測部111は、振幅が閾値以上の周波数成分における振幅に応じた調整量の分だけPゲインを低減させるようPゲイン算出部84へ指示する。振幅とPゲインの調整量との関係は、予め実験等に基づき決定されている。
【0141】
以上説明したように、第3実施形態では、制御部5は、巻取モータ44により巻取軸43の駆動を開始させた際の巻取モータ44の応答性に応じて巻取モータ44のゲイン(Pゲイン)を調整する。これにより、巻取モータ44の応答性が高すぎたり低すぎたりすることを抑制できる。この結果、ウェブWを安定して巻き取ることができ、巻取品質の低下を抑えることができる。
【0142】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1乃至第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0143】
第2実施形態においても第3実施形態と同様に、巻取モータ44により巻取軸43の駆動を開始させた際の巻取モータ44の応答性に応じて巻取モータ44のゲイン(Pゲイン)を調整するようにしてもよい。
【0144】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0145】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0146】
(付記1)
ウェブを巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸へウェブを搬送する搬送部と、
前記搬送部と前記巻取軸との間のウェブのたるみ量に応じて昇降するダンサーローラと、
ウェブを目標速度で搬送するよう前記搬送部を制御するとともに、前記ダンサーローラの位置に基づき前記巻取軸を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記搬送部によるウェブの搬送開始時において、前記目標速度より遅い所定速度でウェブを搬送するよう前記搬送部を制御し、前記搬送部による前記所定速度でのウェブの搬送中に前記巻取軸の駆動を開始させることを特徴とする搬送装置。
【0147】
(付記2)
前記ダンサーローラは、前記搬送部によるウェブの搬送開始時点において、ウェブの搬送中における前記ダンサーローラの目標位置より高い位置に配置され、
前記制御部は、
前記搬送部がウェブの搬送を開始させて前記所定速度でウェブを搬送した場合に前記ダンサーローラがウェブの搬送開始時点における位置から前記目標位置まで下降するのに要する時間を算出し、
前記搬送部によるウェブの搬送開始時点から、算出した前記時間が経過した時点で前記巻取軸の駆動を開始させることを特徴とする付記1に記載の搬送装置。
【0148】
(付記3)
前記巻取軸を駆動させるモータをさらに備え、
前記制御部は、前記モータにより前記巻取軸の駆動を開始させた際の前記モータの応答性に応じて前記モータのゲインを調整することを特徴とする付記1または2に記載の搬送装置。
【符号の説明】
【0149】
1 印刷装置
2 ウェブロール保持部
3 搬送印刷部
4 巻取部
5 制御部
21 搬送部
26 搬送ローラ
27 搬送モータ
41 バッファ部
42 テンションローラ機構部
43 巻取軸
44 巻取モータ
45,112 エンコーダ
51,52,63,64 ガイドローラ
53 ダンサーローラ
54 キャリッジ
55 ガイドシャフト
56 ダンサー位置センサ
57 磁石
58 ストッパ
61 ブレーキローラ
62 ブレーキ部
71 主制御部
72 搬送制御部
73 搬送モータドライバ
74,74A,74B 巻取制御部
75 巻取モータドライバ
81 巻取ロール径算出部
82 ブレーキ制御部
83 目標位置設定部
84 Pゲイン算出部
85 ジョグ運転制御部
91 比較部
92 PID制御部
93 出力制御部
94 主回路
101 巻取開始指示部
111 応答計測部