(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083655
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220530BHJP
F24F 11/32 20180101ALI20220530BHJP
【FI】
H02M7/48 M
F24F11/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195094
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】小泉 健
【テーマコード(参考)】
3L260
5H770
【Fターム(参考)】
3L260BA32
3L260CB79
3L260FC31
5H770BA05
5H770DA22
5H770GA19
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770LA02W
5H770LA02Y
5H770LB07
5H770LB08
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】複数のモーター駆動回路を備えた電子機器において、駆動回路の過電流を検出する電流検出回路を安価に提供する。
【解決手段】複数モーターを駆動する複数の駆動回路を備え、停止信号に従って直流電源の停止を行う電源部38と、電源部38から駆動回路へ供給される電流を検出して検出電流値として出力する電流検出部と、駆動回路ごとに回転又は停止させる制御信号C31~C35を出力し、状態信号が入力されるマイコン39を備えた空気調和機1であって、電流判定部40は、駆動回路と対応する制御信号が入力された時、制御信号の状態によって駆動回路が消費する消費電流を算出し、この算出した消費電流よりも駆動回路で消費されている消費電流が大きい時、過電流を示す状態信号を出力し、マイコン39は電源部38を停止させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターと前記モーターを駆動する駆動回路とを少なくとも2組以上備え、
入力された停止信号に従って前記駆動回路への直流電源の供給を停止する電源部と、
前記電源部から全ての前記駆動回路へ供給される電流を検出して検出電流値として出力する電流検出部と、
入力された前記検出電流値により前記モーターと前記駆動回路の状態を状態信号として出力する電流判定手段と、
前記モーターの回転又は停止の制御信号を前記駆動回路ごとに出力するとともに、前記状態信号が入力される制御手段と、を備えた電子機器であって、
前記電流判定手段は、
前記駆動回路と対応する前記制御信号が入力された時、前記制御信号の状態と予め記憶した前記駆動回路ごとの消費電流値である標準電流値に基づいて、動作している前記駆動回路の消費電流の合計値を算出し、この算出した消費電流値よりも前記検出電流値が大きい時、過電流を示す前記状態信号を出力し、
前記制御手段は、過電流を示す前記状態信号が入力された時、前記停止信号により前記電源部から出力される前記直流電源の供給を停止させることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記電流判定手段は、
前記標準電流値が予め記憶され、前記駆動回路と対応する前記制御信号が入力された時、前記駆動回路と対応する前記消費電流を出力する電流値記憶部と、
出力された前記消費電流の合計値に基づいて、電流を判定するための判定閾値を出力する閾値算出部と、
入力された前記検出電流値と前記判定閾値の大きさの比較結果により前記状態信号を出力する電流比較部と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に係わり、より詳細には、モーター等を駆動する駆動回路での過電流を検出する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器において過電流を検知するものとして例えばモーターを駆動する駆動回路に所定値以上の電流が流れたことを検知する過電流検知回路を設けた技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、例えば多数のモーターを駆動する電子機器では、この専用の過電流検出回路がモーターの個数分必要となりコストが上昇する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-61328号公報(段落番号0061)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上述べた問題点を解決し、複数のモーター駆動回路を備えた電子機器において、駆動回路の過電流を検出する電流検出回路を安価に提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、
モーターと前記モーターを駆動する駆動回路とを少なくとも2組以上備え、
入力された停止信号に従って前記駆動回路への直流電源の供給を停止する電源部と、
前記電源部から全ての前記駆動回路へ供給される電流を検出して検出電流値として出力する電流検出部と、
入力された前記検出電流値により前記モーターと前記駆動回路の状態を状態信号として出力する電流判定手段と、
前記モーターの回転又は停止の制御信号を前記駆動回路ごとに出力するとともに、前記状態信号が入力される制御手段と、を備えた電子機器であって、
前記電流判定手段は、
前記駆動回路と対応する前記制御信号が入力された時、前記制御信号の状態と予め記憶した前記駆動回路ごとの消費電流値である標準電流値に基づいて、動作している前記駆動回路の消費電流の合計値を算出し、この算出した消費電流値よりも前記検出電流値が大きい時、過電流を示す前記状態信号を出力し、
前記制御手段は、過電流を示す前記状態信号が入力された時、前記停止信号により前記電源部から出力される前記直流電源の供給を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の手段を用いることにより、本発明による電子機器によれば、複数のモーター駆動回路を備えた電子機器において、一つの電流検出回路で複数の駆動回路の過電流を検出できるため、電流検出回路を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による空気調和機の室内機の実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明による空気調和機を示すブロック図である。
【
図3】本発明による電流判定部を示すブロック図である。
【
図5】本発明による空気調和機の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、本発明に直接関係しない冷媒回路などは図示と説明を省略する。
【実施例0010】
図1は本発明による電子機器の1つである空気調和機1の室内機3の実施例を示す斜視図である。
室内機3は、図示しないベースに本体が組み込まれ、そのベースをカバー2が上面と下面、左右面と前面を覆っている。室内機3は、その下部の前面側に吹出口9を備えており、吹出口9の下方には上下風向板4が上下方向に回動自在に取り付けられている。また、吹出口9の奥の左側には左側左右風向板5、吹出口9の奥の右側には右側左右風向板6が備えられており、左右の各風向板は独立して左右方向に回動するようになっている。
【0011】
一方、カバー2の内部には、ユニット基板からなる室内機制御部30と、左側左右風向板5を回動させるためのモーター23と、右側左右風向板6を回動させるためのモーター24と、上下風向板4を回動させるためのモーター25が備えられている。
また、カバー2の内部には巻取り式のフィルタである左フィルタ8と右フィルタ7が設けられている。そして、カバー2の内部には、左フィルタ8を巻取り、巻き戻しするためのモーター21と、右フィルタ7を巻取り、巻き戻しするためのモーター22が、それぞれ設けられている。
【0012】
図2は本発明による空気調和機1を示すブロック図である。
この空気調和機1は通信接続された室内機3と室外機50が備えられている。室内機3は室内機制御部30と、モーター21と、モーター22と、モーター23と、モーター24と、モーター25が、それぞれ備えられている。各モーターは室内機制御部30に接続され、室内機制御部30から出力される駆動信号により各モーターの回転角度が変更される。
なお、室内機3はモーター21~モーター22のステッピングモーターの他に、図示しないファンを回転させるブラシレスモーターなどが搭載されている。
【0013】
室内機制御部30は、制御手段であるマイコン39と、+12ボルトの電圧を出力する直流電源である電源部38と、電源部38から出力される電流を検出し、検出した電流を検出電流値として出力する電流検出部36と、電流判定部(電流判定手段)40と、モーター21を駆動する駆動回路31と、モーター22を駆動する駆動回路32と、モーター23を駆動する駆動回路33と、モーター24を駆動する駆動回路34と、モーター25を駆動する駆動回路35を備えている。このようにモーターと駆動回路との組が2組以上備えられている。
【0014】
そして、マイコン39は電流判定部40から、モーター21~モーター22に流れる駆動電流が過電流の状態であるか否かの状態信号が入力され、この状態信号が過電流を示すとき、電源の出力を停止させる停止信号を電源部38へ出力する。電源部38からは+12ボルトの電圧が各駆動回路へ供給されており、停止信号がローレベルからハイレベルになった時に電源部38は+12ボルトの電圧の供給を停止する。
【0015】
また、マイコン39は、制御信号C31を駆動回路31へ、制御信号C32を駆動回路32へ、制御信号C33を駆動回路33へ、制御信号C34を駆動回路34へ、制御信号C35を駆動回路35へそれぞれ出力している。また、制御信号C31~制御信号C35は電流判定部40へも出力されている。なお、制御信号C31~制御信号C35はハイレベルまたはローレベルの電圧信号である。
【0016】
なお、モーター21~モーター25は複数の相で駆動されるステッピングモーターであるため、各駆動回路は入力された制御信号C31~制御信号C35がハイレベルのとき、それぞれがハイレベルである時間の長さに応じた数のパルス状の電圧を対応するモーターへ出力する。
制御信号C31~制御信号C35は、ローレベルの時に回転停止状態、つまり、回転位置を保持する状態を示しており、この時、対応するモーターへ保持トルクを発生させるため+6ボルトの電圧が供給され、ハイレベルの時、対応するモーターに+12ボルトのパルス状の電圧が供給されてモーターが回転する。
【0017】
各モーター(負荷)は駆動される電圧が決定されていれば駆動電流も算出できる。このため、制御信号C31~制御信号C35の信号のハイレベル/ローレベルの状態により各モーターの消費電流を算出できる。電流判定部40は、制御信号C31~制御信号C35の状態に対応して各モーターの回転または停止状態における消費電流値を予め標準電流値として記憶している。電流判定部40は、制御信号C31~制御信号C35の状態に対応して各モーターの消費電流値(標準電流値)を選択してそれらを加算し、実際の消費電流である検出電流値と比較することにより過電流か否かの判定を行って、この判定結果を状態信号として出力する。
【0018】
図3は本発明による電流判定部40を示すブロック図である。
電流判定部40は、電流値記憶部41と、閾値算出部42と、電流比較部43を備えている。
【0019】
電流値記憶部41は、制御信号C31~制御信号C35が入力されている。前述したように、電流値記憶部41は、この制御信号C31~制御信号C35の状態に対応して、記憶している消費電流値を消費電流値T1~消費電流値T5として閾値算出部42へ出力する。
【0020】
図4はこの電流値記憶部41に格納されている消費電流値(標準電流値)を示す電流テーブルを説明する説明図である。
この電流テーブルは、横方向に「制御信号名」、「制御信号がハイレベル時の消費電流値」(回転時)、「制御信号がローレベル時の消費電流値(停止時)」、「出力される信号名」、「駆動部名称」の項目が配置されている。なお、「制御信号名」と「出力される信号名」と「駆動部名称」は説明のための項目であり、実際に記憶されているのは制御信号名とそれに対応するモーターの回転時および停止時の消費電流値のみである。
【0021】
また、この電流テーブルは縦方向に、信号として入力される制御信号C31~制御信号C35を示している。電流値記憶部41は、これらの信号のハイレベル、又はローレベルの状態に基づいて電流テーブルに記憶されている消費電流値を選択し、消費電流値T1~T5として出力する。なお、消費電流値T1~T5は、各モーターの回転時、又は停止時の消費電流値(標準電流値)を示している。
【0022】
一方、
図3に示すように閾値算出部42は、消費電流値T1~T5の合計値を算出して合計電流値を求め、これに所定のマージン(例えば10%)を加えて判定閾値として電流比較部43へ出力する。前述した標準電流値はある標準的な条件(室温や入力電圧)で予め実験的に求めた値であり、実際には個々の室内機が設置されている環境や入力電圧、さらに個々の部品特性の誤差により、実際にモーターに流れる電流にはバラツキがある。このため、前述した所定のマージンを設けている。
【0023】
一方、電流比較部43は入力された検出電流値と判定閾値の大きさの比較結果により状態信号を出力するものである。電流比較部43は判定閾値よりも、電流検出部36から入力された検出電流値が大きくなった時、状態信号をローレベルからハイレベルにしてマイコン39へ出力する。これが入力されたマイコンは停止信号をローレベルからハイレベルにして出力し、これが入力された電源部38は電源出力を停止する。
【0024】
図5は本発明による空気調和機の動作を示す説明図である。
図5において横方向は時間を表し、縦方向において(1)~(5)は制御信号C31~C35を、(6)は+12V電源の電圧を、(7)は標準消費電流の合計値である合計電流値を、(8)は検出電流値を、(9)は状態信号を、(10)は停止信号をそれぞれ示している。なお、t0~t10は時刻である。また、制御信号C31~C35はステッピングモーターの動作を示しておりローレベルは現在の回転位置で停止状態を、ハイレベルは回転状態をそれぞれ示している。
【0025】
図5(8)の実線は+12ボルトの電源において流れる電流を検出した検出電流を示している。また、
図5(8)の破線は閾値算出部42で算出した判定閾値の値を示している。次にこの判定閾値を求める動作を説明する。
【0026】
t0において、制御信号C31~制御信号C35がローレベルのため、全てのモーターは停止状態である。この場合、モーター21~モーター25は回転を停止し、所定の回転角度で停止している。前述のようにモーター21~モーター25はステッピングモーターである。このため、モーター21~モーター25は、停止時であっても現在の回転角度を保持するための電圧が印加されている。従ってモーター21~モーター25は、停止時にも一定の電流を消費する。
【0027】
図3で説明したように制御信号がローベルの時の消費電流が電流テーブルに格納されており、制御信号C31~制御信号C35がローレベルの時、対応するモーターの消費電流値は順に、0.1A,0.1A,0.05A,0.05A,0.05Aであり、
図5(7)に示すようにt0において合計電流(標準電流値)は0.35Aとなる。
【0028】
また、t1~t2では制御信号C31と制御信号C32のみがハイレベルであるため、対応するモーターの消費電流値は、0.2A,0.2A,0.05A,0.05A,0.05Aであり、
図5(7)に示すようにt0において合計電流(標準電流値)は0.55Aとなる。以下同様に算出した合計電流値と、これをグラフ化したものを
図5(7)に示す。
【0029】
図5(8)の検出電流値においてt0~t8の期間は、
図7(7)の合計電流値とほぼ同じ電流が流れているが、駆動回路35の故障のため、t8以降は制御信号の指示とは異なる電流が流れている。t8~t9の期間は合計電流値が0.45アンペア(標準電流値)の電流となるはずであるが、実際は0.45アンペア程度の不安定な電流波形となっている。ただし、マージン10%を加えた判定閾値0.495アンペア未満であるため、電流判定部40は、過電流でなく正常な電流と判断するため、
図5(9)に示すように状態信号はローレベルとなっている。
【0030】
一方、t9以降は制御信号C35がハイレベルからローレベルに変化したにもかかわらず、駆動回路35での消費電流が減少しないため、t9以降も0.45アンペア程度の不安定な電流が流れ続けている。一方、t9以降は制御信号C35がハイレベルからローレベルに変化しているため、判定閾値も0.495アンペから0.44アンペアに低下する。
【0031】
従ってt9の時点で判定閾値よりも実際の検出電流値が大きくなったため、電流判定部40は、t9以降に状態信号をローレベルからハイレベルにして過電流の発生をマイコン39に出力する。これが入力されたマイコン39は、t10において停止信号をローレベルからハイレベルにして電源部38の電源出力を停止させる。このため、t10以降において+12ボルトの電源の電流はゼロになり、過電流による発火などを防止することができる。
【0032】
また、マイコン39は状態信号により過電流を検知し、それに基づいて故障が発生したことを判断する。マイコン39は過電流が発生したと判断した場合、個々の駆動回路に対して一つずつ制御信号をハイレベルにして再度、過電流の判定を行う駆動テストを実施することにより過電流が発生した駆動回路を特定することができるため、例えば過電流が発生している回路以外の回路を継続して動作させ、実際に修理が終了するまで暫定的に空気調和機1を運転することもできる。
【0033】
また、本発明では、過電流が発生してから電源の出力を停止するまでの時間、つまり、状態信号がハイレベルとなってから停止信号を出力するまでの時間を遅延させることができる(本実施例ではt9~t10が遅延時間)。
これにより、モーターや駆動回路における一時的な突入電流による誤検出を抑止することができる。
【0034】
以上説明したように、1つの電流判定部40が各駆動回路の動作状況により最適な判定閾値を用いて過電流を判定するため、複数の駆動回路に同一の電圧(+12V)を供給する電源部38を用いた空気調和機(電子機器)1において、駆動回路、又は駆動されるモーターでの過電流を検出する電流判定部を安価に構成することができる。
従来の方法では1つの駆動回路につき1つの過電流検出回路が必要であったが、本発明により1つの電流判定部(過電流検出回路)で複数の駆動回路の過電流を同時に判定できるため、過電流検出回路を安価に構成することができる。
【0035】
本実施例では閾値算出部42で過電流用の判定閾値のみを算出し、電流比較部43で過電流だけを判定しているが、これに限るものでなく、閾値算出部42で下限電流用の判定閾値も同時に算出し、電流比較部43で検出電流が過電流用の判定閾値と下限電流用の判定閾値の範囲内にあれば正常、範囲外に有れば異常と判定するようにしてもよい。これにより駆動電流が不足する故障にも対応することが可能になる。
【0036】
また、本実施例では状態信号で過電流を検出したマイコンが電源部を停止させる停止信号を出力する構成にしているが、これに限るものでなく、状態信号を停止信号の代わりに用いてもよい。これによりマイコンを介することなく、過電流が発生した時、即座に電源を停止させることができ安全性が向上する。
また、本実施例では電流判定部40をハードウェアとして説明しているが、これに限るものでなく、ソフトウェアで実現してもよい。