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特開2022-83661仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083661
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
E04G21/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195100
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
(57)【要約】
【課題】施工性向上を図った転落防止用の仮設構造体を提供する。
【解決手段】仮設構造体は、建物の施工中に用いられ、建物本体上に取り付けられる仮設手摺り20である。仮設手摺り20は、上下方向に長尺に延びている支柱部材21と、支柱部材21の下端部に設けられ、建物本体の施工部材(梁)の上面に当接するベース部材22と、ベース部材22の長さ方向において間隔を空けて設けられ、ベース部材22から下方に向かってそれぞれ突出し、梁の上面に間隔を空けて設けられた貫通穴にそれぞれ挿通される第1突出部材23及び第2突出部材24と、を備えている。第1突出部材23が、第2突出部材24よりも長尺となるように突出している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の施工中に用いられ、建物本体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体であって、
上下方向に長尺に延びている支柱部材と、
前記支柱部材の下端部に設けられ、前記建物本体の施工部材の上面に当接するベース部材と、
前記ベース部材の長さ方向又は幅方向において間隔を空けて設けられ、前記ベース部材から下方に向かってそれぞれ突出し、前記施工部材の上面に間隔を空けて設けられた貫通穴にそれぞれ挿通される第1突出部材及び第2突出部材と、を備えており、
前記第1突出部材が、前記第2突出部材よりも長尺となるように突出していることを特徴とする仮設構造体。
【請求項2】
前記第1突出部材、前記第2突出部材それぞれの突出先端部は、テーパー形状を有し、それぞれ先端に向かうほど細くなるように形成されており、
前記第1突出部材においてテーパー形状の開始位置となる部位が、前記第2突出部材の先端よりも前記ベース部材から遠ざかる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の仮設構造体。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記建物本体の梁の上面に当接し、
前記第1突出部材及び前記第2突出部材は、
前記梁の上部に間隔を空けて形成された前記貫通穴にそれぞれ挿通され、かつ、
前記梁の下部に間隔を空けて形成され、前記貫通穴に対応する位置に配置された第2貫通穴にそれぞれ挿通されることを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の仮設構造体の組み付け構造であって、
前記仮設構造体は、
梁の上部に取り付けられる支柱体と、
前記梁の上部において建築用パネルを取り付ける際に用いられるパネル取り付け金具を介して取り付けられる第2支柱体と、
前記支柱体及び前記第2支柱体それぞれの上方部を連結する連結体と、を備えており、
前記支柱体は、前記支柱部材と、前記ベース部材としての梁ベース部材と、前記第1突出部材及び前記第2突出部材と、を有しており、
前記第2支柱体は、前記支柱部材と、前記支柱部材の下端部に設けられ、前記パネル取り付け金具の上面に取り付けられる金具ベース部材と、を有していることを特徴とする仮設構造体の組み付け構造。
【請求項5】
前記支柱体及び前記第2支柱体は、前記建物本体の間口方向において間隔を空けて配置され、
前記支柱体は、前記間口方向に沿って長尺に延びている前記梁のうち、前記建物本体の柱に近接した梁端部に取り付けられ、
前記第1突出部材は、前記第2突出部材よりも前記柱に近い位置において前記貫通穴に挿通されることを特徴とする請求項4に記載の仮設構造体の組み付け構造。
【請求項6】
前記第2支柱体の前記金具ベース部材は、
前記パネル取り付け金具において前記建築用パネルが取り付けられるパネル取り付け部よりも前記建物本体の内側に設けられた取り付け部に対して取り付けられ、
前記仮設構造体は、前記建物本体に取り付けられたときに、前記建築用パネルの取り付け位置よりも前記建物本体の内側に位置することを特徴とする請求項4又は5に記載の仮設構造体の組み付け構造。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の仮設構造体を利用した建物施工方法であって、
前記施工部材に対し前記仮設構造体を取り付ける工程と、
前記施工部材において前記仮設構造体よりも前記建物本体の外側に位置する部分に対し建築用パネルを取り付ける工程と、
前記施工部材から前記仮設構造体を取り外す工程と、を含み、
前記仮設構造体を取り付ける工程では、前記施工部材に設けられたそれぞれの前記貫通穴に対し、前記第1突出部材を挿通した後に前記第2突出部材を挿通することを特徴とする建物施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法に係り、特に、建物の施工中に用いられ、建物本体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の施工時や施工後のメンテナンス時において、室外側から施工作業を行うために足場や手摺り等の構造体が仮設されている。
また、隣接する隣接構造物と接近して建てられる建物の施工時やメンテナンス時においては、狭小地用の専用足場(専用手摺り)が仮設されている。
【0003】
上記専用足場を用いれば、狭小スペースにおいて室外側から施工作業を行うことが可能であるものの、作業対象の建物と隣接構造物との間の隙間部分において専用足場を地面から立ち上げる必要があったため、建物の大きさが制約される虞があった。そのため、専用足場を地面から立ち上げる必要のない工法が検討されていた。
上記専用足場に代わる転落防止用の仮設構造体として、例えば特許文献1、2のように、建物本体の施工部材(H形鋼からなる梁)に仮設することが可能な仮設手摺りが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-71042号公報
【特許文献2】特開2010-185185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そうしたなかで、既存の仮設手摺りよりも安定性に優れ、容易に取り付け及び取り外しすることが可能な仮設構造体が求められており、当該仮設構造体を用いて施工性の向上を図ることが求められていた。
特に、建物本体に対し建築用パネル(例えば外壁パネル)を取り付ける前、及び取り付ける際の転落防止対策として上記仮設構造体を有効に活用した施工技術が求められていた。
【0006】
詳しく述べると、特許文献1に記載の仮設手摺りでは、上下方向に長尺な支柱部材と、支柱部材の下端部に設けられ、建物本体の梁の上面に当接するベース部材と、ベース部材から下方に向かって突出し、梁の上部及び下部に設けられた貫通穴に挿通される一対の突出部材と、を備えている。
上記構成により、建物本体の梁を利用して簡易的に仮設手摺りを仮設することができる。
一方で、梁の上部及び下部の両方に対して仮設手摺り(一対の突出部材)を挿通させて仮設する必要があるため、建物本体の内側にいる作業者にとって仮設作業を効率良くできない虞があった。例えば、作業者が手探りで一対の突出部材を同時に挿通させる必要があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の仮設手摺りでは、支柱部材と、支柱部材の下端部に設けられ、梁の上面に当接するベース部材と、ベース部材から下方に突出し、梁の上部及び下部に設けられた貫通穴に挿通される1本の突出部材と、を備えている。また、梁の上部にベース部材を固定するためのクランプ部材を備えている。
上記構成の場合には、特許文献1のように作業者が手探りで一対の突出部材を挿通させることはないものの、別途クランプ部材を取り付け及び取り外しする作業が発生してしまう。また、梁の上部及び下部の両方に一対の突出部材を挿通させてはおらず、仮設手摺りの安定感に劣る虞があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、施工性向上を図った仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、狭小スペースにおいて安定性に優れ、容易に取り付け及び取り外しすることが可能な仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の仮設構造体によれば、建物の施工中に用いられ、建物本体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体であって、上下方向に長尺に延びている支柱部材と、前記支柱部材の下端部に設けられ、前記建物本体の施工部材の上面に当接するベース部材と、前記ベース部材の長さ方向又は幅方向において間隔を空けて設けられ、前記ベース部材から下方に向かってそれぞれ突出し、前記施工部材の上面に間隔を空けて設けられた貫通穴にそれぞれ挿通される第1突出部材及び第2突出部材と、を備えており、前記第1突出部材が、前記第2突出部材よりも長尺となるように突出していること、により解決される。
上記構成により、施工性向上を図った仮設構造体を実現することができる。
詳しく述べると、仮設構造体が、支柱部材と、ベース部材と、ベース部材から下方に突出し、梁の上面に設けられた貫通穴にそれぞれ挿通される第1突出部材及び第2突出部材と、を備えており、第1突出部材が第2突出部材よりも長尺に突出しているため、梁の貫通穴に対して仮設構造体(第1、第2突出部材)を挿通する作業が容易になる。すなわち、現場の作業者は、梁の貫通穴に対してより長尺な第1突出部材を先に挿通させた後に、第2突出部材を挿通させることができるため、従来のように2本の突出部材を同時に挿通させる場合と比較して仮設構造体の取り付け作業が容易になる。
特に、狭小スペースにおいては、作業者が手探りで仮設手摺りを仮設することになるため、格段に仮設構造体の取り付け作業が効率化する。
【0010】
このとき、前記第1突出部材、前記第2突出部材それぞれの突出先端部は、テーパー形状を有し、それぞれ先端に向かうほど細くなるように形成されており、前記第1突出部材においてテーパー形状の開始位置となる部位が、前記第2突出部材の先端よりも前記ベース部材から遠ざかる位置に配置されていると良い。
上記のように、第1、第2突出部材それぞれの突出先端部がテーパー形状を有しているため、梁の貫通穴に対して第1、第2突出部材をより容易に挿通させることができる。
また上記のように、第1突出部材においてテーパー形状の開始位置となる部位が、第2突出部材の先端よりもベース部材から遠ざかる位置に配置されている。そのため、作業者は、梁の貫通穴に第1突出部材を挿通させた後、当該第1突出部材のうちテーパー部分ではない太い部分(最大幅の部分)をガイド部として利用しながら第2突出部材を挿通させることができる。すなわち、第1突出部材の太い部分を貫通穴の縁部分に当接させて安定した状態で、第2突出部材を別の貫通穴に挿通させることができる。
【0011】
このとき、前記ベース部材は、前記建物本体の梁の上面に当接し、前記第1突出部材及び前記第2突出部材は、前記梁の上部に間隔を空けて形成された前記貫通穴にそれぞれ挿通され、かつ、前記梁の下部に間隔を空けて形成され、前記貫通穴に対応する位置に配置された第2貫通穴にそれぞれ挿通されると良い。
上記のように、第1、第2突出部材は、梁の上部に形成された貫通穴にそれぞれ挿通され、かつ、梁の下部に形成され、貫通穴に対応する位置に配置された第2貫通穴にそれぞれ挿通されるため、従来(特許文献1、2の発明)と比較して、安定性に優れながら容易に取り付け及び取り外しすることが可能な仮設構造体となる。
【0012】
また前記課題は、上記仮設構造体の組み付け構造であって、前記仮設構造体は、梁の上部に取り付けられる支柱体と、前記梁の上部において建築用パネルを取り付ける際に用いられるパネル取り付け金具を介して取り付けられる第2支柱体と、前記支柱体及び前記第2支柱体それぞれの上方部を連結する連結体と、を備えており、前記支柱体は、前記支柱部材と、前記ベース部材としての梁ベース部材と、前記第1突出部材及び前記第2突出部材と、を有しており、前記第2支柱体は、前記支柱部材と、前記支柱部材の下端部に設けられ、前記パネル取り付け金具の上面に取り付けられる金具ベース部材と、を有していること、によっても解決される。
上記構成により、仮設構造体の一方側の支柱体は、梁の上面に取り付けられ、他方側の第2支柱体は、建築用パネルを取り付けるためのパネル取り付け金具を介して取り付けられることになる。
そのため、建築用パネルを取り付けるための比較的剛性の高いパネル取り付け金具を利用することで、仮設構造体をより安定させて仮設することができる。
また、梁に予め設けられた既存部品(パネル取り付け金具)を利用しているため、他の構成部品を別途取り付ける必要がなく、施工性を向上させることができる。
また、建物本体に建築用パネルを取り付ける際の位置決め部材として仮設構造体(第2支柱体)を利用することもできる。
【0013】
このとき、前記支柱体及び前記第2支柱体は、前記建物本体の間口方向において所定の間隔を空けて配置され、前記支柱体は、前記間口方向に沿って長尺に延びている前記梁のうち、前記建物本体の柱に近接した梁端部に取り付けられ、前記第1突出部材は、前記第2突出部材よりも前記柱に近い位置において前記貫通穴に挿通されると良い。
一般に、建物本体の間口方向に沿って延びている梁には、当該間口方向に間隔を空けてパネル取り付け金具が複数設けられているところ、当該梁のうち、建物本体の柱に近接した梁端部においては、パネル取り付け金具が設けられていない。理由として、建物本体に建築用パネル(外壁パネル)を取り付けるときには、建物本体の柱を含めて外側から覆う必要があって、梁端部ではなく当該柱の外側面にパネル取り付け金具を設けたほうが建築用パネルを安定して取り付けられるためである。
そこで、上記の構成であれば、間口方向に沿って延びている梁の延出方向において間隔を空けることなく転落防止用の仮設構造体を連続して仮設することができ、作業者の安全性をより高めることができる。例えば、仮設構造体を設置するにあたって、パネル取り付け金具を利用可能な箇所については第2支柱体を取り付けることで安定性を確保し、パネル取り付け金具が設けられていない梁端部の箇所については支柱体を取り付けることができる。
また、梁端部において支柱体を取り付けるにあたっては、より長尺な第1突出部材が、第2突出部材よりも柱に近い位置において貫通穴に先に挿通されることで、より効率良く仮設構造体(支柱体)を取り付けることができる。
【0014】
このとき、前記第2支柱体の前記金具ベース部材は、前記パネル取り付け金具において前記建築用パネルが取り付けられるパネル取り付け部よりも前記建物本体の内側に設けられた取り付け部に対して取り付けられ、前記仮設構造体は、前記建物本体に取り付けられたときに、前記建築用パネルの取り付け位置よりも前記建物本体の内側に位置すると良い。
上記構成により、建物本体に取り付けられた仮設構造体と、建築用パネル(例えば外壁パネル)との干渉を避けることができる。そのため、建築用パネルを取り付ける前、及び取り付ける際の転落防止対策として仮設構造体を有効利用することができ、より施工性の向上を図ることができる。
また上記構成により、仮設構造体が建物本体から外側に張り出すことがなく、仮設構造体を容易に取り付け及び取り外しすることができる。
【0015】
また前記課題は、上記仮設構造体を利用した建物施工方法であって、前記施工部材に対し前記仮設構造体を取り付ける工程と、前記施工部材において前記仮設構造体よりも前記建物本体の外側に位置する部分に対し前記建築用パネルを取り付ける工程と、前記施工部材から前記仮設構造体を取り外す工程と、を含み、前記仮設構造体を取り付ける工程では、前記施工部材に設けられたそれぞれの前記貫通穴に対し、前記第1突出部材を挿通した後に前記第2突出部材を挿通することとする建物施工方法によっても解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法によれば、建物の施工時や施工後のメンテナンス時において施工性の向上を図ることができる。
また、狭小スペースにおいて安定性に優れ、容易に取り付け及び取り外しすることが可能な仮設構造体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】建物本体に仮設手摺りが取り付けられた状態を示す斜視図である。
図2A】パネル取り付け金具を示す斜視図である。
図2B】別の角度から見たパネル取り付け金具を示す斜視図である。
図3】第2パネル取り付け金具を示す斜視図である。
図4】仮設手摺りを示す斜視図である。
図5】梁に仮設手摺り(支柱体)を取り付けた状態を示す斜視図である。
図6】別の角度から見た斜視図である。
図7】パネル取り付け金具及び仮設手摺り(第2支柱体)の分解斜視図である。
図8】パネル取り付け金具に第2支柱体を取り付けた状態を示す斜視図である。
図9】仮設構造体を用いた建物施工方法を示す工程図である。
図10A】建物本体にパネル取り付け金具を取り付けた状態を示す模式図である。
図10B】梁、パネル取り付け金具に仮設手摺りを取り付けた状態を示す模式図である。
図10C】パネル取り付け金具に建築用パネルを取り付ける様子を示す模式図である。
図10D】建築用パネルを取り付けた状態を示す模式図である。
図10E】仮設手摺りを取り外した状態を示す模式図である。
図11】建物本体に仮設手摺り及び仮設板が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図12】仮設板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図1図12を参照して説明する。
本実施形態は、建物の施工中に用いられ、建物本体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体であって、上下方向に長尺に延びている支柱部材と、支柱部材の下端部に設けられ、建物本体の施工部材(梁)の上面に当接するベース部材と、ベース部材の長さ方向において間隔を空けて設けられ、ベース部材から下方に向かってそれぞれ突出し、施工部材の上面に間隔を空けて設けられた貫通穴にそれぞれ挿通される第1突出部材及び第2突出部材と、を備えており、第1突出部材が、第2突出部材よりも長尺となるように突出していることを主な特徴とする発明に関するものである。
なお、本実施形態では「仮設手摺り」が仮設構造体に相当する。
【0019】
本実施形態の仮設手摺りの組み付け構造では、図1に示すように、建物の施工中において、建物本体Bの梁B1又は梁B1に設けられたパネル取り付け金具1に対して仮設手摺り20が組み付けられる。
詳しく述べると、仮設手摺り20は、建物本体Bの間口方向に沿って長尺に延びている梁B1のうち、建物本体Bの柱B4に近接した位置(梁端部)に取り付けられている。
そして、仮設手摺り20が組み付けられた状態で、建物本体B(パネル取り付け金具1、10)に対して建築用パネル30を取り付けることができる。
以下、上記組み付け構造について詳しく説明する。
【0020】
パネル取り付け金具1、第2パネル取り付け金具10は、図1に示すように、建物本体Bの梁B1にそれぞれ固定され、建物本体Bに建築用パネル30を取り付ける際に用いられる接合金具である。
パネル取り付け金具1は、仮設手摺り20を仮設するための接合金具としても機能し、特に狭小スペースにおいて仮設手摺り20を仮設するために利用される。
詳しく述べると、パネル取り付け金具1は、建物本体Bの上階においてH形鋼の梁B1の上面に固定されており、建物本体Bの間口方向に間隔を空けて複数配置されている。
第2パネル取り付け金具10は、パネル取り付け金具1と上下方向で重なる位置に配置され、梁B1の底面に固定されており、当該間口方向に間隔を空けて複数配置されている。
【0021】
パネル取り付け金具1は、図2A、Bに示すように、断面略L字形状の部材であって、梁B1の上フランジ部B2に当接し、梁B1よりも建物本体Bの外側に突出している底壁部1aと、底壁部1aの外側端部から連続して上方に延びている外側壁部1bと、底壁部1aの幅方向の両端部から連続してそれぞれ上方に延びており、底壁部1a及び外側壁部1bを連結している一対の補強壁部1cと、から主に構成されている。
パネル取り付け金具1の底壁部1aには、梁B1に固定するための取り付け穴2が形成されている。また、取り付け穴2を利用することで、仮設手摺り20を着脱可能に取り付けることができる。
また、外側壁部1bには、建築用パネル30を着脱可能に取り付けるためのパネル取り付け穴3が形成されている。
【0022】
取り付け穴2は、底壁部1aに対し上下方向に貫通した貫通穴であって、パネル取り付け金具1の幅方向に間隔を空けて複数形成されている。
取り付け穴2と、梁B1の上面に形成された貫通穴B2aとが上下方向に連通した状態で固定ボルト4がナット締めされることで、パネル取り付け金具1が梁B1に固定されている。
また、取り付け穴2と、図6に示す仮設手摺り20(金具ベース部材25)に形成された取り付け穴26とが上下方向に連通した状態で固定ボルト4がナット締めされることで、仮設手摺り20がパネル取り付け金具1に取り付けられている。
詳しく述べると、図6に示すように、パネル取り付け金具1の取り付け穴2と、固定ナット5と、仮設手摺り20の取り付け穴26と、固定ナット6とが上下方向に連通した状態で固定ボルト4によって締結されている。
【0023】
パネル取り付け穴3は、図2A、Bに示すように、外側壁部1bの上端部に形成された切り欠き穴であって、パネル取り付け金具1の幅方向に間隔を空けて一対形成されている。
パネル取り付け穴3は、図10Cに示す建築用パネル30の下端部の取り付け軸33を上方から嵌合させるための穴である。
【0024】
パネル取り付け穴3は、取り付け軸33を導き入れるためのガイド穴となる第1穴部3aと、第1穴部3aから連続して形成され、パネル取り付け穴3の中で取り付け軸33を嵌合させるための嵌合穴となる第2穴部3b、とから構成されている。
第1穴部3aは、略逆台形状のガイド穴であって、外側壁部1bの上端から下方に向かうに従って幅狭となるように傾斜しながら切り欠き形成されている。
第2穴部3bは、略半円形状の嵌合穴であって、取り付け軸33を着脱可能に嵌合させる縁を有しており、第1穴部3aから連続して所定の幅を有しながら下方に向かって切り欠き形成されている。
上記構成により、パネル取り付け金具1に対し建築用パネル30を上下方向から容易に取り付け及び取り外しすることができる。
【0025】
第2パネル取り付け金具10は、図3に示すように、段差形状を有する部材であって、梁B1の下フランジ部B3に当接し、梁B1よりも建物本体Bの外側に突出している上壁部10aと、上壁部10aの外側端部から下方に延びている第1外側壁部10bと、第1外側壁部10bの下端部から建物本体Bの外側に突出している底壁部10cと、底壁部10cの外側端部から下方に延びている第2外側壁部10dと、上壁部10aの幅方向の両端部からそれぞれ下方に延びており、上壁部10aから第2外側壁部10dまでを連結している一対の補強壁部10eと、を備えている。
また、第2パネル取り付け金具10は、底壁部10cの上面から上方に突出している第3外側壁部10fと、第3外側壁部10fの幅方向の両端部からそれぞれ建物本体B側に向かって延びており、第3外側壁部10f、第1外側壁部10b及び底壁部10cを連結している一対の第2補強壁部10gと、を備えている。
第2パネル取り付け金具10の上壁部10aには、梁B1に固定するための取り付け穴11が形成されている。
また、第2外側壁部10dには、建築用パネル30を固定するためのパネル固定穴12が形成されており、第3外側壁部10fには、建築用パネル30を着脱可能に取り付けるためのパネル取り付け穴13が形成されている。
【0026】
取り付け穴11は、取り付け穴2と同様の貫通穴であって、第2パネル取り付け金具10の幅方向に間隔を空けて複数形成されている。
取り付け穴11と、梁B1の底面に形成された第2貫通穴B3aとが上下方向に連通した状態で固定ボルト14がナット締めされることで、第2パネル取り付け金具10が梁B1に固定されている。
【0027】
パネル固定穴12は、図3に示すように、第2外側壁部10dに対し建物本体Bの出幅方向に貫通した貫通穴であって、第2パネル取り付け金具10の幅方向に間隔を空けて複数形成されている。
パネル固定穴12に対し、図10Dに示す建築用パネル30の上端部の固定ナット35を連通させた状態でボルト固定することで、建物本体Bに建築用パネル30が固定されている。
【0028】
パネル取り付け穴13は、上述のパネル取り付け穴3と同様の切り欠き穴であって、第2パネル取り付け金具10の幅方向に間隔を空けて一対形成されている。
パネル取り付け穴13は、図10Cに示す建築用パネル30の下端の第2取り付け軸34を上方から嵌合させるための穴である。
パネル取り付け穴13は、ガイド穴となる第1穴部13aと、パネル取り付け穴13の中で第2取り付け軸34を嵌合させるための嵌合穴となる第2穴部13b、とから主に構成されている。
上記構成により、複数のパネル取り付け金具1、10に対し、建築用パネル30を上下方向で複数支持させるように取り付けることができる。
【0029】
仮設手摺り20は、図4図8に示すように、建物の施工中に用いられる転落防止用の仮設構造体であって、建物本体Bに建築用パネル30を取り付ける前に取り付けられ、建築用パネル30を取り付けた後に取り外されるものである。
仮設手摺り20は、梁B1の上部に取り付けられる支柱体20Aと、梁B1の上部においてパネル取り付け金具1を介して取り付けられる第2支柱体20Bと、支柱体20A及び第2支柱体20Bそれぞれの上方部、中央部を連結する連結体20Cと、から主に構成されている。
連結体20Cは、板状の長尺体として形成されており、梁B1の長尺方向に沿って延びている。また、連結体20Cは、図1に示すように、梁B1の長尺方向に沿って複数並ぶように配置されている。詳しく述べると、一方の連結体20Cの端部と、他方の連結体20Cの端部とが重なるように配置され、重なり合った端部が支柱体(第2支柱体20B)によって支持されている。
【0030】
支柱体20Aは、図5図6に示すように、上下方向に長尺に延びている支柱部材21と、支柱部材21の下端部に設けられ、梁B1の上面に当接する梁ベース部材22と、梁ベース部材22の長さ方向において間隔を空けて設けられ、梁ベース部材22から下方に向かってそれぞれ突出し、梁B1上に間隔を空けて設けられた貫通穴B2a(B3a)にそれぞれ挿通される第1突出部材23及び第2突出部材24と、から主に構成されている。
【0031】
支柱部材21は、断面矩形状の長尺な中空体である。支柱部材21の上方部、中央部には、連結体20Cの端部に設けられた係合穴20Caを着脱可能に係合させるための係合軸21aが設けられている。係合軸21aは、支柱部材21の外側面から建物本体Bの内側に向かって突出している。
【0032】
梁ベース部材22は、仮設手摺り20の取り付け強度(曲げ強度)を確保するための部材であって、梁B1の上面に当接している。
詳しく述べると、梁ベース部材22は、支柱部材21の下端部から幅方向の両側に突出している一対の第1ベース部22aと、支柱部材21の下端部から建物本体Bの内側に突出している第2ベース部22bと、第2ベース部22bから幅方向の両側に突出し、第1ベース部22a及び第2ベース部22bを連結する一対の補強ベース部22cと、から主に構成されている。
【0033】
一対の第1ベース部22a、第2ベース部22b、一対の補強ベース部22cは、それぞれ板状部材からなり、梁B1の上面に当接している。
一対の第1ベース部22aのうち、梁B1の貫通穴B2a(B3a)に対向する位置には、第1、第2突出部材23、24が溶接されている。
第2ベース部22bは、一対の第1ベース部22aの外側端部の間に配置されており、かつ、第1、第2突出部材23、24の間に配置されている。
一対の補強ベース部22cは、上下方向において支柱部材21側から梁B1側へ向かうに従って傾斜しながら広がっている。
【0034】
第1突出部材23、第2突出部材24は、上下方向に長尺な棒状部材であって、第1突出部材23が、第2突出部材24よりも長尺となるように突出している。
第1突出部材23、第2突出部材24それぞれの先端部23a、24aは、テーパー形状を有し、それぞれ先端に向かうほど細くなるように形成されている。
また、第1突出部材23(先端部23a)においてテーパー形状の開始位置となる部位が、第2突出部材24の先端よりも梁ベース部材22から遠ざかる位置に配置されている。
【0035】
上記構成において、第1突出部材23、第2突出部材24は、梁B1の上フランジ部B2に間隔を空けて形成された貫通穴B2aにそれぞれ挿通され、かつ、下フランジ部B3に間隔を空けて形成された第2貫通穴B3aにそれぞれ挿通されている。
そのため、安定性に優れながら、容易に取り付け及び取り外すことが可能な仮設手摺り20を実現できる。
【0036】
第2支柱体20Bは、図7図8に示すように、上下方向に長尺に延びている支柱部材21と、支柱部材21の下端部に設けられ、パネル取り付け金具1の上面に当接して取り付けられる金具ベース部材25と、から主に構成されている。
【0037】
金具ベース部材25は、パネル取り付け金具1に対し上下方向で取り付けられ、また、パネル取り付け金具1に対し建物本体Bの出幅方向で当接するように保持されている。
詳しく述べると、金具ベース部材25は、支柱部材21の下端部から幅方向の両側に突出している一対の第1ベース部25aと、支柱部材21の下端部から建物本体Bの外側に突出している第2ベース部25bと、第2ベース部25bから幅方向の両側に突出し、第1ベース部25a及び第2ベース部25bを連結する一対の補強ベース部25cと、から主に構成されている。
【0038】
一対の第1ベース部25aは、パネル取り付け金具1の底壁部1aに対し固定ナット5を介して上下方向で当接している。
一対の第1ベース部25aのうち、パネル取り付け金具1の取り付け穴2に対向する位置には、パネル取り付け金具1に取り付けるための取り付け穴26がそれぞれ形成されている。
【0039】
第2ベース部25bは、パネル取り付け金具1の外側壁部1bに向かって突出しており、当該外側壁部1bに建物本体Bの出幅方向で当接している。また、底壁部1aに上下方向で当接している。
詳しく述べると、第2ベース部25bは、外側壁部1bのうち、一対のパネル取り付け穴3の間の中央部分に当接している。
一対の補強ベース部25cは、略三角形状の板状部材からなり、上下方向において支柱部材21側からパネル取り付け金具1側へ向かうに従って傾斜しながら広がっている。
【0040】
建築用パネル30は、図1図10C、Dに示すように、建物を構成する矩形板状の部材であって、具体的には、外壁パネルであって、矩形板状のパネルフレーム31と、パネルフレーム31の表面に固定されている仕上げ面材32と、から主に構成されている。
なお、建築用パネル30は、「外壁パネル」に特に限定されることなく、「腰壁パネル」や「屋根パネル」、「庇パネル」であっても良く、各種の建築用パネルを採用することができる。
【0041】
パネルフレーム31の裏面における下端部には、パネル取り付け金具1、10(柱B4に設けられた金具B4a、B4b)にそれぞれ着脱可能に取り付けるための取り付け軸33、第2取り付け軸34が突出するように設けられている。
また、パネルフレーム31の裏面における上端部には、第2パネル取り付け金具10(第2金具B4b)に固定するための固定ナット35が突出するように設けられている。
これら取り付け軸33、34及び固定ナット35は、それぞれ建築用パネル30の幅方向の両端部に一対となって配置されている。
【0042】
取り付け軸33は、図10C、Dに示すように、フック式の軸部材であって、パネル取り付け穴3の縁に嵌合される。
なお、第2取り付け軸34も同様にしてパネル取り付け穴13の縁に嵌合される。
【0043】
パネル取り付け金具1のパネル取り付け穴3に取り付け軸33を上方から取り付けるにあたって、図10Cに示すように、第1延出部33aがパネル取り付け穴3に挿通可能な大きさで形成されている一方で、第2延出部33bはパネル取り付け穴3には挿通できない大きさで形成されている。
すなわち、パネルフレーム31及び第2延出部33bがパネル取り付け穴3を挟み込むことで、取り付け軸33がパネル取り付け穴3の縁に嵌合される。
なお、第2取り付け軸34も同様にして、パネル取り付け穴13の縁に嵌合される。
固定ナット35は、図10Dに示すように、第2パネル取り付け金具10のパネル固定穴12に連通した状態でボルト締めされる。
【0044】
上記構成において、各パネル取り付け金具1、10に建築用パネル30を固定する際には、図10C、Dに示すように、まず、建築用パネル30の下端部の取り付け軸33、34をパネル取り付け穴3、13に嵌合させる。その後、建築用パネル30を建物本体B側に引き寄せて、建築用パネル30の上端部の固定ナット35を、別途設けられた第2パネル取り付け金具10のパネル固定穴12に連通させた状態で固定ボルト36によって固定する。
上記構成により、パネル取り付け金具1、10に対し建築用パネル30を上下方向から容易に取り付けることができる。
【0045】
上記構成において、図2A、Bに示すように、パネル取り付け金具1のパネル取り付け穴3が、取り付け穴2よりも建物本体Bの外側に配置されており、かつ、取り付け穴2よりも上方位置に形成されている。
そのため、パネル取り付け金具1及び仮設手摺り20が連結された部分と、パネル取り付け金具1及び建築用パネル30が連結された部分とが互いに干渉することを抑制できる。
【0046】
<仮設構造体を利用した建物施工方法>
次に、仮設手摺り20を利用した建物施工方法について図9に基づいて説明する。
具体的には、図10A図10Eに示すように、建物本体Bに設けられた梁B1、パネル取り付け金具1、10に対し仮設手摺り20を仮設し、建築用パネル30を取り付ける建物施工方法について説明する。
【0047】
上記建物施工方法では、図9に示すように、まず、建物本体Bの梁B1に、建物本体Bの間口方向に間隔を空けてパネル取り付け金具1、10を複数取り付ける工程(ステップS1)から始まる。
具体的には、図10Aに示すように、梁B1の上面にパネル取り付け金具1を固定ボルト4(固定ナット5)で固定するとともに、梁B1の底面に対して第2パネル取り付け金具10を固定ボルト14で固定する。
このとき、パネル取り付け金具1と第2パネル取り付け金具10とが上下方向で重なる位置に配置されることになる。
【0048】
その後、建物本体Bの梁B1、パネル取り付け金具1それぞれに対し、仮設手摺り20を取り付ける(ステップS2)。
具体的には、図1図10Bに示すように、梁B1に形成された所定の貫通穴B2aと、梁B1上に設けられた所定のパネル取り付け金具1とに対し、仮設手摺り20を支持させるように取り付ける。
詳しく述べると、貫通穴B2aそれぞれに対し、支柱体20Aの第1、第2突出部材23、24を挿通する。このとき、第1、第2突出部材23、24の先端部23a、24aを梁B1の下部にある第2貫通穴B3aそれぞれに対しても挿通する。
さらに詳しく述べると、より長尺な第1突出部材23を、第2突出部材24よりも柱B4に近い位置にある貫通穴B2aに先に挿通する。その後、第2突出部材24を挿通する。
そして、パネル取り付け金具1に対し、第2支柱体20Bの金具ベース部材25を取り付ける。このとき、パネル取り付け金具1に形成された一対の取り付け穴2と、金具ベース部材25に形成された一対の取り付け穴26とが連通した状態で、上記取り付け穴2、26から上方に一部突出した固定ボルト4がナット締めされることで、仮設手摺り20がパネル取り付け金具1に取り付けられる。
【0049】
その後、図10Cに示すように、パネル取り付け金具1、10のパネル取り付け穴3、13に対し建築用パネル30を取り付ける(ステップS3)。
建築用パネル30を取り付けるときには、図10Cに示すように、まず、建築用パネル30の下端部の取り付け軸33、34をパネル取り付け穴3、13に嵌合する。その後、建築用パネル30を建物本体B側に引き寄せて、図10Dに示すように、建築用パネル30の上端部の固定ナット35を、別途設けられた第2パネル取り付け金具10のパネル固定穴12に連通させた状態で固定ボルト36によって固定する。
なお、建築用パネル30を取り付けるにあたって、建物本体Bに対し間口方向に延びた仮設手摺り20を位置決め部材として有効利用することができる。
【0050】
その後、図10Eに示すように、パネル取り付け金具1にボルト締結された仮設手摺り20を取り外して(ステップS4)、本作業工程を終了する。
【0051】
上記建物施工方法であれば、施工性向上を図った建物施工方法を実現できる。
詳しく述べると、長尺な梁B1のうち、柱B4に近接した梁端部において、容易に取り付け及び取り外すことができ、安定性に優れた仮設手摺りを組み付けることができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、図11図12に基づいて説明する。
第2施形態では「仮設手摺り」及び「仮設板」が仮設構造体に相当する。
なお、第2実施形態の仮設手摺りは、上記仮設手摺り20と同様の構成であるため説明を省略する。
【0053】
第2実施形態の仮設板120は、建物の施工中に用いられる転落防止用の仮設構造体であって、建物本体Bに建築用パネル30を取り付ける前に取り付けられ、建築用パネル30を取り付けた後に取り外されるものである。
仮設板120は、仮設手摺り20(支柱部材21)の下方部分に取り付けられており、仮設手摺り20よりも建物本体Bの内側に配置され、建物本体Bの床パネルB5上に支持されている。なお、梁B1上に支持されていても良い。
【0054】
具体的には、仮設板120は、仮設手摺り20(支柱部材21)に取り付けられ、建物本体Bの内側に延びている一対の支柱部材121と、一対の支柱部材121の延出端部を連結する連結部材122と、から主に構成されている。
なお、支柱部材121は、断面矩形状の長尺体として形成されており、連結部材122は、板状の長尺体(幅木)として形成されている。
【0055】
支柱部材121の基端部には、支柱部材21に着脱可能に取り付けるための取り付け部材123が設けられている。
また、支柱部材121の延出端部には、連結部材122の長尺方向の端部を着脱可能に把持するため把持部材124が設けられている。
【0056】
取り付け部材123は、図12に示すように、支柱部材21を内部に挿通させた状態で保持することが可能な部材であって、支柱部材121の基端部から支柱部材21に向かって突出している一対の側壁部123aと、一対の側壁部123aの突出端部を連結する連結壁部123bと、から主に構成されている。
連結壁部123bには、取り付け部材123の内部に挿通させた支柱部材21を側方から押圧するための押圧ボルト123cが取り付けられている。
押圧ボルト123cを支柱部材21の側面に押し当てることで、取り付け部材123が支柱部材21を保持することができる。
そのため、仮設手摺り20(支柱部材21)に対して仮設板120(支柱部材121)を任意の高さ位置で取り付けることができる。
【0057】
把持部材124は、支柱部材121に対して伸縮可能であって、連結部材122を把持することが可能な部材である。
把持部材124は、支柱部材121の内部に挿入され、支柱部材121の延出端部から伸縮可能に延びている伸縮部124aと、伸縮部124aの延出端部から下方に突出している第1把持部124bと、支柱部材121の延出願部から下方に突出している第2把持部124cと、から主に構成されている。
支柱部材121の延出端部には、支柱部材121の内部に挿入された伸縮部124aを側方から押圧するための押圧ボルト124dが取り付けられている。
押圧ボルト124dを伸縮部124aの側面に押し当てることで、支柱部材121に対して伸縮部124aを任意の延出長さで保持することができる。
そのため、把持部材124が、連結部材122の厚さによらず、連結部材122を把持することができる。
【0058】
上記構成により、建築用パネル30を取り付ける前、及び取り付ける際に、施工部品等の落下防止対策として仮設板120を用いることができる。
また、仮設板120が、仮設手摺り20の下方部分に取り付けられ、仮設手摺り20よりも建物本体Bの内側に配置された状態で床パネルB5に支持されている。そのため、建物本体Bの出幅方向において仮設手摺り20がより安定して支持されることになる(仮設手摺り20の曲げ強度を高められる)。
【0059】
なお、図9に示す建物施工方法において、仮設手摺り20に対し仮設板120を取り付ける工程は、ステップS2における仮設手摺り20を取り付ける工程の後に実行されると好ましい。あるいは、仮設手摺り20に仮設板120を予め取り付けておき、ステップS2で仮設板120付きの仮設手摺り20を取り付けることとしても良い。
【0060】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、図1に示すように、仮設手摺り20が「仮設構造体」に相当するものとして説明されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、仮設手摺りではなく、仮設足場であっても良い。あるいは、仮設梯子、仮設壁等であっても良い。
【0061】
上記実施形態では、図1に示すように、仮設手摺り20(支柱体20A)が、建物本体Bのうち梁B1に取り付けられているが、特に限定されることなく、建物本体Bの所定の施工部材に取り付けられていても良い。
また、パネル取り付け金具1、10についても同様に、建物本体Bの所定の施工部材に取り付けられていても良い。
【0062】
上記実施形態では、図1図4に示すように、仮設手摺り20が、支柱体20Aと、第2支柱体20Bとを備えているが、特に限定されることなく、代わりに一対の支柱体20Aを備えていても良い。
なお、図1に示すように、長尺な梁B1において柱B4に近接した位置には、支柱体20Aを備える「手摺り20」を設置することとし、その他の位置には、一対の第2支柱体20Bを備えた「不図示の手摺り」を設置すると好ましい。
上記構成であれば、梁B1において柱B4に近接した位置では、「仮設手摺り20」を利用することで容易に取り付け及び取り外しすることができる。また、その他の位置では、上記「不図示の手摺り」を利用することで、より安定性を確保することができる。
【0063】
上記実施形態では、図4図6に示すように、第1突出部材23及び第2突出部材24が、梁ベース部材22の長さ方向において間隔を空けて設けられているが、特に限定されることなく、梁ベース部材22の幅方向に間隔を空けて設けられていても良い。
すなわち、第1、第2突出部材23、24が、建物本体Bの出幅方向に並ぶように設けられていても良い。
【0064】
上記実施形態では、図1図10Dに示すように、パネル取り付け金具1、10が、建物本体Bに建築用パネル30(外壁パネル)を取り付ける際に用いられる接合金具であったが、外壁パネルに特に限定されることなく変更可能である。
例えば、パネル取り付け金具1が、建物本体Bに「腰壁パネル」や「屋根パネル」、「庇パネル」のような各種建築用パネルを取り付ける際に用いられる接合金具であっても良い。
【0065】
上記実施形態では、図7図8に示すように、パネル取り付け金具1の取り付け穴2と、仮設手摺り20の取り付け穴26とが連通した状態で固定ボルト4がナット締めされることで、仮設手摺り20がパネル取り付け金具1に取り付けられているが、特に限定されることなく変更可能である。
すなわち、「取り付け穴」と、「固定ボルト」及び「固定ナット」との係合関係に特に限定されなくても良い。すなわち、パネル取り付け金具1に設けられた取り付け部2に対し、仮設手摺り20の被取り付け部26が着脱可能に取り付けられている構成であれば良い。
【0066】
上記実施形態では、主として本発明に係る仮設構造体、仮設構造体の組み付け構造及び建物施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
B 建物本体
B1 梁(施工部材)
B2 上フランジ部
B2a 貫通穴
B3 下フランジ部
B3a 第2貫通穴
B4 柱
B4a 金具
B4b 第2金具
B5 床パネル
1 パネル取り付け金具
1a 底壁部
1b 外側壁部
1c 補強壁部
2 取り付け穴(取り付け部)
3 パネル取り付け穴(パネル取り付け部)
3a 第1穴部
3b 第2穴部
4 固定ボルト(固定部材)
5、6 固定ナット(固定部材)
10 第2パネル取り付け金具
10a 上壁部
10b 第1外側壁部
10c 底壁部
10d 第2外側壁部
10e 補強壁部
10f 第3外側壁部
10g 第2補強壁部
11 取り付け穴
12 パネル固定穴
13 パネル取り付け穴
13a 第1穴部
13b 第2穴部
14 固定ボルト
20 仮設手摺り(仮設構造体)
20A 支柱体
20B 第2支柱体
20C 連結体
20Ca 係合穴
21 支柱部材
21a 係合軸
22 梁ベース部材(ベース部材)
22a 第1ベース部
22b 第2ベース部
22c 補強ベース部
23 第1突出部材
23a、24a 先端部
24 第2突出部材
25金具ベース部材
25a 第1ベース部
25b 第2ベース部
25c 補強ベース部
26 取り付け穴(被取り付け部)
30 建築用パネル
31 パネルフレーム
32 仕上げ面材
33 取り付け軸
33a 第1延出部
33b 第2延出部
34 第2取り付け軸
35 固定ナット
36 固定ボルト
120 仮設板(第2仮設構造体)
121 支柱部材
122 連結部材
123 取り付け部材
123a 側壁部
123b 連結壁部
123c 押圧ボルト
124 把持部材
124a 伸縮部
124b 第1把持部
124c 第2把持部
124d 押圧ボルト
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12