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  • 特開-加湿装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083721
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】加湿装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/14 20060101AFI20220530BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F24F6/14
F24F6/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195225
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高倉 康二
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055BB01
3L055DA01
3L055DA05
(57)【要約】
【課題】加湿エレメントを用いずに安定的に加湿を行うことが可能な加湿装置を提供する。
【解決手段】加湿装置10は、ファン11と、加湿対象空間まで送られる空気が、ファン11の作動により流入する中空体13と、中空体13内に水を噴き出すノズル14と、中空体13内に流入する空気を加熱する加熱手段12とを備え、ファン11及び加熱手段12を作動状態にし、ノズル14から水を噴き出して加湿運転を行い、効率的かつ安定的な加湿運転を可能とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、
加湿対象空間まで送られる空気が、前記ファンの作動により流入する中空体と、
前記中空体内に水を噴き出すノズルと、
前記中空体内に流入する空気を加熱する加熱手段とを備え、
前記ファン及び前記加熱手段を作動状態にし、前記ノズルから水を噴き出して加湿運転を行うことを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
請求項1記載の加湿装置において、前記ノズルから噴き出されて前記中空体内に溜まった水を排水する排水機構を更に備え、前記ノズルの水の噴き出しを停止し、前記中空体内の水を排水した状態で、前記ファン及び前記加熱手段を作動して前記中空体内を乾燥することを特徴とする加湿装置。
【請求項3】
請求項1記載の加湿装置において、前記ノズルから噴き出されて前記中空体内に溜まった水を前記ノズルに送る循環回路を更に備えることを特徴とする加湿装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の加湿装置において、前記加熱手段は、前記中空体に流入する空気が通る流路内に設けられていることを特徴とする加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内等の空間を加湿する加湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、オフィスビル、工場、学校、病院等、様々な施設において、加湿装置が利用されている。加湿装置には、加湿エレメント(気化フィルタ)に供給した水を蒸発させて加湿するタイプ(特許文献1参照)や、超音波により水を震動させて水粒子を発生させるタイプ(特許文献2参照)が存在する。これらの加湿装置には一般的に水道水が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-261585号公報
【特許文献2】特開2011-047536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加湿エレメントを利用する場合、安定的な加湿は可能であるが、加湿エレメントの定期的な取り替え等が必要という課題があった。これに対し、超音波により水粒子を発生させるタイプは、定期的な取り替えを要する加湿エレメントを必要としないが、加湿性能が低く、特別な設計等を伴わずに安定的な加湿を行うことが容易でないという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、加湿エレメントを用いずに安定的に加湿を行うことが可能な加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る加湿装置は、ファンと、加湿対象空間まで送られる空気が、前記ファンの作動により流入する中空体と、前記中空体内に水を噴き出すノズルと、前記中空体内に流入する空気を加熱する加熱手段とを備え、前記ファン及び前記加熱手段を作動状態にし、前記ノズルから水を噴き出して加湿運転を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る加湿装置は、加湿対象空間まで送られる空気が、ファンの作動により流入する中空体と、中空体内に水を噴き出すノズルと、中空体内に流入する空気を加熱する加熱手段とを備え、ファン及び加熱手段を作動状態にし、ノズルから水を噴き出して加湿運転を行うので、ノズルから噴き出される水を、加熱された空気によって加熱し、蒸発し易い状態にすることができ、効率的かつ安定的に加湿を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施の形態に係る加湿装置の説明図である。
図2】加湿運転の説明図である。
図3】制御手段の接続を示すブロック図である。
図4】逆洗運転の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る加湿装置10は、ファン11と、加湿対象空間まで送られる空気が、ファン11の作動により流入する中空体13と、中空体13内に水を噴き出すノズル14と、中空体13内に流入する空気を加熱する加熱手段12を備えて、加湿運転を行う装置である。以下、詳細に説明する。
【0009】
中空体13は、図1に示すように、有底円筒状であり、床板Pに上端部が固定された円筒状の支持具15の下端部に連結されて床下空間に配されている。中空体13及び支持具15はそれぞれの軸心が同一線上に位置して鉛直方向に配されている。支持具15の上端部には上面が床板Pの上面と同じ高さに配される板材16が装着され、中空体13の上端部には蓋材17が取り付けられている。蓋材17はシール材(例えばOリング)を有して、中空体13内の水滴等が中空体13から漏れ出るのを防止している。
【0010】
板材16及び蓋材17を支持具15及び中空体13からそれぞれ取り外すことによって、床板P上から中空体13内が視認可能となる。
中空体13の内側には、中空体13内に水を噴き出すノズル14が配されている。中空体13の底部には、ノズル14から噴き出された水が溜まる。
【0011】
本実施の形態では、中空体13及びノズル14が床下空間に配されているが、これに限定されず、例えば、中空体及びノズルを屋根裏に配してもよい。中空体及びノズルを屋根裏に配する場合、中空体の底部に、中空体に対して着脱可能なシール性のある蓋材を取り付けた上で、中空体を天井板の点検口の直上に配することで、人が居住空間側から点検口及び蓋材を外した中空体の底部を通して中空体の内側を容易に視認できるようになる。
【0012】
中空体13の側壁部には開口部13a、13bが形成され、中空体13の外側には開口部13a、13bにそれぞれ連通した環状部材18、19が設けられている。
環状部材18にはダクト20に接続されたファン11が取り付けられ、環状部材19には、連結管22を介してダクト23が接続されている。ファン11の空気の噴き出し部にはダンパ24が設けられている。ファン11の空気の噴き出し部内には、ダンパ24の上流側(即ち、中空体に流入する空気が通る流路内)に加熱手段12が設けられている。本実施の形態では、加熱手段12にヒータが採用されている。
【0013】
ファン11は、作動によって、図2に示すように、ダクト20に取り込まれた空気(屋内又は屋外の空気)をダクト20経由で取得し環状部材18に向けて噴き出す。ファン11から噴き出される空気は、加熱手段12により加熱される。この際、ダンパ24は、ファン11から噴き出される空気の風圧によって、ファン11の空気の噴き出し部を開いた状態にし、ファン11から噴き出された加熱された空気(以下、「高温の空気」とも言う)は、環状部材18から略水平に進んで開口部13aを通過し、中空体13内に流入する。開口部13bは、開口部13aより高い位置、即ち、開口部13aから中空体13内に流入した高温の空気の進行方向の延長線上ではない位置に配されている。
【0014】
中空体13内には、水分を捕捉可能な通気性のある水分捕捉部材25が設けられている。水分捕捉部材25は、例えば、樹脂繊維、金属繊維又はガラス繊維の集合体や不織布によって構成でき、開口部13a、13bの間の高さ位置で水平な層を形成して、中空体13内の空間を開口部13a側の領域と開口部13b側の領域とに仕切っている。そのため、開口部13aから中空体13内に流入した高温の空気は、水分捕捉部材25を通過して開口部13bに向かう。
【0015】
ノズル14は、中空体13内の開口部13a側の領域に水の噴き出し部が配置され、中空体13内の開口部13a側の領域に水を噴き出す。そのため、ファン11及び加熱手段12が作動している状態で、ノズル14から水が噴き出されると、開口部13aから中空体13内に流入した高温の空気が、ノズル14から噴き出された水を中空体13内で加熱する。高温の空気はノズル14から噴き出された水を吸収した(含んだ)後、水分捕捉部材25を通過して開口部13b側の領域に進むこととなる。
開口部13bから中空体13外に流出した高温の空気は環状部材19及び連結管22を通りダクト23に流入し、ノズル14から噴き出され空気に吸収されなかった水は中空体13の底部に溜まる。
【0016】
一端部が連結管22に接続されたダクト23は他端部が加湿対象空間に配されていることから、ダクト23に流入した高温の空気は、中空体13内で吸収した水と共にダクト23を通って加湿対象空間の一例である居住空間に送られる。よって、加湿装置10は、ファン11及び加熱手段12を作動状態にし、ノズル14から水を噴き出すことによって加湿運転を行うことができる。ここで、加熱された空気にノズル14から水を噴き出す場合、加熱されていない空気にノズル14から水を噴き出す場合に比べ、ノズル14から噴き出された水の気化が促進されることから、加湿運転(加湿対象空間で求められるレベルの加湿)を安定的に行うことが可能である。
【0017】
ノズル14から噴き出されて空気に取り込まれなかった水(例えば、水飛沫)の大半は、水分捕捉部材25に捕捉され、中空体13から出て環状部材19から連結管22やダクト23内に進入するのを防止されている。これによって、環状部材19、連結管22及びダクト23の内側に水が溜まることによって生じるカビ等の発生が抑制されている。
【0018】
ファン11が停止している際、ダンパ24は自重によって回動し、ファン11の空気の噴き出し部を閉じた状態にする。
また、中空体13には、中空体13の底部に貯留されている水の水位を検出する水位センサ26が設けられ、下流側端部がノズル14に接続された循環回路27の上流側端部が、中空体13の底部に接続されている。循環回路27には、上流から下流に向けて、逆止弁30、フィルタ30a、ポンプ28及び開閉弁29が順に設けられている。なお、本実施の形態では水位センサ26に水位電極を採用している。
【0019】
加湿運転時、ノズル14から噴き出され、中空体13の底部に溜まった水は、図2に示すように、開閉弁29が開かれ、ポンプ28が作動することによって、循環回路27に取り込まれ、逆止弁30、フィルタ30a、ポンプ28及び開閉弁29を順を通過し、ノズル14から中空体13内に噴き出される。従って、循環回路27は、ノズル14から噴き出されて中空体13内に溜まった水をノズル14に送ることとなる。逆止弁30は循環回路27内の水がフィルタ30a側から中空体13の底部に向かうのを防止し、フィルタ30aは循環回路27を水と共に流れる塵等を捕捉する。
【0020】
循環回路27には、ポンプ28の上流側に水道管から循環回路27に水道水を供給する給水管31が接続され、ポンプ28と開閉弁29の間の領域に、循環回路27を循環する水を外部に送り出す排水管32が接続されている。給水管31には、給水管31に水道管からの水道水(外部からの水)が流入可能な開状態とするか水道管からの水道水が流入できない閉状態とするかが切り替えられる開閉弁33が取り付けられ、排水管32には、排水管32に循環回路27からの水が流入可能な開状態とするか循環回路27からの水が流入できない閉状態とするかが切り替えられる開閉弁34が取り付けられている。
【0021】
開閉弁33、34は、図3に示すように、ファン11、加熱手段12、水位センサ26、ポンプ28及び開閉弁29が接続された制御手段35に接続されている。制御手段35は、CPU及びメモリ等の電子デバイスを有して構成可能であり、指令信号の送信によって、ファン11、加熱手段12及びポンプ28の制御、並びに、開閉弁29、33、34の開閉を行うことができる。
【0022】
<給水運転>
加湿運転中、制御手段35は、中空体13の底部に溜まっている水の水位が予め定められた値以下になったのを水位センサ26からの入力信号で検知すると、ファン11を停止させ、開閉弁29、33を開いて、ポンプ28を運転して水道管からの水道水を給水管31経由で循環回路27に流入させ、ノズル14から中空体13内に噴き出されるようにする。これによって、中空体13の底部に溜まっている水の水位を上昇させる給水運転を行う。制御手段35は、中空体13の底部の水位が所定値まで上昇したのを水位センサ26によって検出すると、開閉弁33を閉じて給水運転を停止し、ファン11を作動させて加湿運転を再開する。
【0023】
<排水運転>
また、加湿運転が予め設定された時間(例えば、1~5時間)継続すると、制御手段35は、ファン11を停止し、開閉弁34を開き、開閉弁29を閉じて、ポンプ28を作動させる。これによって、中空体13の底部に溜まっていた水が、循環回路27に流入し、ポンプ28経由で排水管32から外部に排水される。以下、中空体13の底部の水を排水する運転を排水運転と言う。
【0024】
中空体13の底部の水は加湿運転及び給水運転の繰り返しによってミネラル成分が上昇することから、排水運転により、ミネラル成分が上昇した中空体13の底部の水を入れ替える。
本実施の形態では、ノズル14から噴き出されて中空体13内に溜まった水を排水する排水機構が、循環回路27の一部、ポンプ28、排水管32及び開閉弁34によって構成されている。
【0025】
また、加湿運転を停止する操作が図示しない操作機でなされると、排水運転が行われた後、逆洗運転(以下に示す)、給水運転、循環運転(加熱手段12を停止した加湿運転)、排水運転を順に行った後、乾燥運転(以下に示す)を行い、フィルタ30aの清掃及び中空体13内の乾燥を行う。
【0026】
<逆洗運転>
ファン11及びポンプ28を停止し、開閉弁29を閉じた状態で、開閉弁33を開くことによって、図4に示すように、水道管の水圧で水道管からの水を給水管31経由で循環回路27に流入させる。循環回路27の逆止弁30とフィルタ30aの間の領域には、排水運転の際に開閉弁34を通過した水が出水する排出口36に連結された排水路37が連結されており、逆洗運転において給水管31から給水されて循環回路27に流入した水はフィルタ30aを通って、フィルタ30aに捕捉されている塵等をフィルタ30aから取り除き、当該塵等と共に排水路37を経由して排出口36から排出される。なお、排水路37には、水が排出口36側から循環回路27に流れるのを防止する逆止弁38が設けられている。
【0027】
<乾燥運転>
ノズル14の水の噴き出しを停止した状態、かつ、排水運転により中空体13内の水を排水した状態で、ポンプ28を停止し、開閉弁34を閉じ、ファン11及び加熱手段12を作動させて、中空体13内を乾燥させ、加熱手段12及びファン11の順番で停止する(例えば、加熱手段12は15分間作動させてから停止し、ファン11は60分間作動させた後に停止する)。環状部材18、中空体13、環状部材19、連結管22及びダクト23の各内側は、乾燥運転により乾燥されることから、カビ等の発生が抑制される。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、排水機構や循環回路を設けなくてもよい。
但し、硬度成分が上昇した水を中空体内に溜めておくのを避ける観点においては、排水機構を設けるのが好ましい。
また、循環機構を設けない場合は排水機構を設けて、中空体内に所定量以上の水が溜まるのを防ぐ必要がある。
加熱手段は、中空体に流入する空気が通る流路内に設ける必要はなく、例えば、中空体内の空気が流入する位置に設けてもよい。
なお、水分捕捉部材を設けなくてもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
10:加湿装置、11:ファン、12:加熱手段、13:中空体、13a、13b:開口部、14:ノズル、15:支持具、16:板材、17:蓋材、18、19:環状部材、20:ダクト、22:連結管、23:ダクト、24:ダンパ、25:水分捕捉部材、26:水位センサ、27:循環回路、28:ポンプ、29:開閉弁、30:逆止弁、30a:フィルタ、31:給水管、32:排水管、33、34:開閉弁、35:制御手段、36:排出口、37:排水路、38:逆止弁、P:床板
図1
図2
図3
図4