(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083783
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ドウコンディショナー
(51)【国際特許分類】
A21C 13/00 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
A21C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195316
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】504192678
【氏名又は名称】古賀産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古賀 靖
(72)【発明者】
【氏名】久保田 真隆
【テーマコード(参考)】
4B031
【Fターム(参考)】
4B031CA09
4B031CA18
4B031CK08
(57)【要約】
【課題】衛生状態を良好に維持することを容易にする。製品間での品質のバラツキを少なくする。
【解決手段】ドウコンディショナー1は、トレイ20を収納可能な収納室10を備える。収容室10内に、冷却器30、ヒーター35、ファン37、噴霧ノズル39を備える。冷却器30及びヒーター35は、トレイ20に対して水平方向に対向するように配置されている。ファン37は、冷却器30で冷却された冷気及びヒーター35で暖められた暖気をトレイ20に向かって水平方向に送り出すことができるように、トレイ20と冷却器30及びヒーター35との間に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイを収納することができる収納室を備えたドウコンディショナーであって、
前記ドウコンディショナーは、前記収容室内に、冷却器と、ヒーターと、ファンと、噴霧ノズルとを備え、
前記冷却器及び前記ヒーターは、前記トレイに対して水平方向に対向するように配置され、
前記ファンは、前記冷却器で冷却された冷気及び前記ヒーターで暖められた暖気を前記トレイに向かって水平方向に送り出すことができるように、前記トレイと前記冷却器及び前記ヒーターとの間に配置されていることを特徴とするドウコンディショナー。
【請求項2】
前記冷却器は、互いに平行に離間して配置された複数のフィンを備え、
前記フィンの主面が上下方向に平行且つ前記トレイと前記冷却器とを結ぶ方向に平行になるように、前記冷却器が配置されている請求項1に記載のドウコンディショナー。
【請求項3】
前記ヒーターは、隣り合うフィン間に配置されている請求項2に記載のドウコンディショナー。
【請求項4】
前記ヒーターはデフロストヒーターである請求項1~3のいずれか一項に記載のドウコンディショナー。
【請求項5】
前記噴霧ノズルは、前記冷却器の上方に配置されている請求項1~4のいずれか一項に記載のドウコンディショナー。
【請求項6】
前記トレイに対して前記冷却器及び前記ヒーターとは反対側の側壁に、開閉可能な扉が設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載のドウコンディショナー。
【請求項7】
前記トレイと前記ファンとの間に、空気の流れを遮断する隔壁が設けられていない請求項1~6のいずれか一項に記載のドウコンディショナー。
【請求項8】
前記ファンによって送り出された空気の流路を規定するダクトが、前記収納室内に設けられていない請求項1~7のいずれか一項に記載のドウコンディショナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成する前のパンやドーナツなどの生地を、保管し、発酵させるためのドウコンディショナーに関する。
【背景技術】
【0002】
こね上げられたパンやドーナツなどの生地(以下、単に「生地」という)を、冷凍保管し、解凍し、発酵させるという一連の工程を自動的に行う装置としてドウコンディショナーが知られている。一般的なドウコンディショナー(例えば、特許文献1,2参照)は、各壁が断熱板で構成された断熱箱体を備える。断熱箱体内に、生地が載せられたトレイを収納する収納室と、冷却器(蒸発器)、ヒーター、噴霧ノズル、ファンなどが収容された温調室とが設けられている。温調室内で、冷却器、ヒーター、噴霧ノズルが、空気を所望する温度・湿度に調整する。ファンが、収納室と温調室との間で空気を循環させる。空気を循環させるために、断熱箱体内に、空気の流路であるダクトが形成されている。ダクトは、ダクト内を流れる空気の流路を収納室から区画するための隔壁(仕切り板)で構成されている。ダクトは、空気を収納室から吸引する吸込み口と、空気を収納室に向かって吹き出す吹き出し口とを備える。収納室内の空気は、吸込み口からダクトに流入し、ダクト内の温調室を通過し、吹き出し口から流出して収納室に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-266772号公報
【特許文献2】特開2019-165637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のドウコンディショナーには、断熱箱体内で空気を循環させるためのダクトが設けられている。ドウコンディショナーの運転中、ダクト内を空気が流れるため、ダクト内で汚れが蓄積しやすい。しかも、ダクト内の汚れの付着状況を確認したり、ダクトを清掃したりするためには、ダクトを分解する必要がある。ダクトを分解する作業は煩雑である。このため、衛生状態を良好に維持することが困難である。
【0005】
また、吸込み口と吹き出し口の配置によっては収納室内の雰囲気(例えば温度、湿度、風速)が不均一になりやすい。このため、収納室に多数の生地を収納した場合に、例えば生地間で発酵や乾燥の程度に違いが生じるなどにより、焼成後の製品間で品質にバラツキが生じることがある。
【0006】
本発明の第1の目的は、衛生状態を良好に維持することか容易であるドウコンディショナーを提供することにある。本発明の第2の目的は、製品間で品質にバラツキが生じにくいドウコンディショナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドウコンディショナーは、トレイを収納することができる収納室を備える。前記ドウコンディショナーは、前記収容室内に、冷却器と、ヒーターと、ファンと、噴霧ノズルとを備える。前記冷却器及び前記ヒーターは、前記トレイに対して水平方向に対向するように配置されている。前記ファンは、前記冷却器で冷却された冷気及び前記ヒーターで暖められた暖気を前記トレイに向かって水平方向に送り出すことができるように、前記トレイと前記冷却器及び前記ヒーターとの間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、汚れが付着しやすく且つ汚れの有無の確認が困難なダクトを省略することができる。このため、衛生状態を良好に維持することか容易である。また、焼成後の製品間で品質にバラツキが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかるドウコンディショナーの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかるドウコンディショナーの一方向から見た断面斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態にかかるドウコンディショナーの別の方向から見た断面斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態にかかるドウコンディショナーの収納室の構成を簡単化して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様では、前記冷却器は、互いに平行に離間して配置された複数のフィンを備えていてもよい。前記フィンの主面が上下方向に平行且つ前記トレイと前記冷却器とを結ぶ方向に平行になるように、前記冷却器が配置されていてもよい。フィンの主面が上下方向に平行であることは、フィン上に結露した水や、冷却器の洗浄時の洗浄液を、冷却器から排出するのに有利である。また、フィンの主面がトレイと冷却器とを結ぶ方向に平行であることは、冷却器に対する汚れの付着の有無を確認するのに有利である。
【0011】
本発明の一態様では、前記ヒーターは、隣り合うフィン間に配置されていてもよい。これにより、収納室を加熱するヒーターを、冷却器を除霜するデフロストヒーターとしても利用することが可能になる。
【0012】
前記ヒーターはデフロストヒーターであってもよい。これにより、ヒーターとは別に、デフロストヒーターを設ける必要がない。
【0013】
本発明の一態様では、前記噴霧ノズルは、前記冷却器の上方に配置されていてもよい。これにより、収納室内を効果的に加湿することができる。また、噴霧ノズルを、冷却器の除霜や洗浄のために利用することもできる。
【0014】
本発明の一態様では、前記トレイに対して前記冷却器及び前記ヒーターとは反対側の側壁に、開閉可能な扉が設けられていてもよい。これにより、扉を開ければ、正面(収納室の奥)に、冷却器、ヒーター、及びファンを視認することができる。これらへの汚れの付着状況の確認は容易であり、また、洗浄も容易である。
【0015】
本発明の一態様では、前記トレイと前記ファンとの間に、空気の流れを遮断する隔壁が設けられていない。これは、隔壁の裏側(ファン側)などの、視認が困難である箇所への汚れの付着を防止することが可能になるので、収納室の衛生状態を良好に維持するのに有利である。
【0016】
本発明の一態様では、前記ファンによって送り出された空気の流路を規定するダクトが、前記収納室内に設けられていない。これは、収納室の衛生状態を良好に維持すること、及び、焼成後の製品間での品質のバラツキを低減することに有利である。
【0017】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。同一または対応する部材には、異なる図面において同じ符号が付してある。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかるドウコンディショナー1の斜視図である。ドウコンディショナー1は、中空の略直方体形状の2つの箱が上下に積み重ねられた二段構造を有する。上段の箱は、パンやドーナツなどの生地(以下、単に「生地」という)を収納するための収納室10であり、下段の箱は機械室80である。ドウコンディショナー1の下面には、ドウコンディショナー1を移動するための4つのキャスタ91(
図1では3つのキャスタ91のみが見える)が設けられている。以下の説明の便宜のため、図示したように、上下方向に平行な軸をZ軸、ドウコンディショナー1の奥行き方向に平行な軸をY軸とするXYZ直交座標系を設定する。Y軸方向を、ドウコンディショナー1の「前後方向」という。前後方向において、扉12側を「前」側、これと反対側を「後ろ」側又は「奥」側という。
【0019】
収納室10は、各壁が発泡樹脂等の断熱材が内蔵された断熱板で構成された断熱箱体である。収納室10の前面には、収納室10に通じる開口11(後述する
図2参照)が設けられている。開口11は、水平面(XY面)内で回動する片開き式の扉12で開閉可能である。扉12の中央には、収納室10の内部をのぞき見ることが可能なように窓13が設けられている。窓13は、ガラスなどの透明部材で塞がれている。扉12を閉じると、収納室10内に実質的に密閉された空間が形成される。収納室10の外界及びその内部空間に露出する部材(内壁板や外壁板など。但し、窓13を塞ぐ透明部材を除く。)は、水洗いが可能なように、ステンレス鋼などの防錆性に優れた金属材料や、その表面に防錆処理が施された材料からなることが好ましい。
【0020】
図2は、YZ面に平行な面に沿って切断したドウコンディショナー1の、やや上方から見た断面斜視図である。収納室10内の構造の理解を容易にするために、扉12は取り除いてある。収納室10には、複数(本実施形態では8つ)のトレイ20が、上下方向に一定ピッチで離間して収納されている。トレイ20は、平面視形状が略直方体形状を有し、その周囲の4辺は上方に向かって折り曲げられている。各トレイ20上に、生地(図示せず。後述する
図4参照。)が載置される。
【0021】
図3は、YZ面に平行な面に沿って切断したドウコンディショナー1の、やや下方から見た断面斜視図である。
図2と同様に扉12は取り除いてあり、
図3では、更にトレイ20も取り除いてある。YZ面に平行な収納室10の内壁面に、Y軸に平行な複数のトレイ受けバー15が上下方向に一定ピッチで設けられている。
図3では示されていないが、この内壁面にX軸方向に対向する内壁面にも、同様に複数のトレイ受けバー15が設けられている。X軸方向に対向する同一高さの2本のトレイ受けバー15が対をなし、このトレイ受けバー15の各対にトレイ20がY軸方向に摺動自在に掛け渡される(
図2参照)。トレイ20は、扉12(
図1参照)を開けた状態で、開口11を介して収納室10に対してY軸方向に出し入れ可能である。
【0022】
収納室10内には、複数のトレイ20よりも奥側に、冷却器(凝縮器)30、ヒーター35、ファン(送風ファン)37、噴霧ノズル39が設けられている。
【0023】
冷却器30は、収納室10内を冷却又は除湿するためのものであり、冷媒が通過するコイル31と、コイル31の外周面に取り付けられた多数のフィン32とを備える。多数のフィン32は互いに平行に且つ一定のピッチで離間して配置されている。フィン32の主面(面積が最大である面)は、YZ面と平行である。冷却器30の構成は、特に制限はなく、冷却装置や冷凍装置において使用される周知の冷却器を用いることができる。冷却器30は、全体として略直方体形状であり、収納室10の奥側の内壁面に対向し、これからわずかに離間して配置されている。冷却器30は、冷媒を圧縮する圧縮機や、圧縮した冷媒ガスを冷却するする凝縮器等とともに冷却装置を構成する。圧縮機や凝縮器等(図示せず)は、機械室80内に配置されている。
【0024】
ヒーター35は、収納室10内を加熱するためのものである。ヒーター35は、発熱体であるヒーター線を、絶縁材とともステンレス鋼等の中空パイプに収納した細長い線状体(または棒状体)である。本実施形態では、ヒーター35として、冷却器30の霜取りも可能なデフロストヒーターを用いている。ヒーター35は、冷却器30の前面(トレイ20側の面)近傍において、冷却器30を構成するフィン32間に取り付けられている。
【0025】
複数(本実施形態では3つ)のファン37が、冷却器30及びヒーター35と複数のトレイ20との間に配置されている。複数のファン37は、共通するXZ面に沿って、Y軸に沿って見たとき冷却器30の前面(トレイ20側の面)に略均等に分散配置されている。なお、
図3では、ファン37を所定位置に保持するための保持部材(ロッドやブラケットなど)の図示は省略されている。本発明では、ファン37の数は、3つに限定されず、1つ以上であればよく、冷却器30の大きさ等に応じて任意に設定できる。ファン37は、冷却器30で冷却された冷気及びヒーター35で暖められた暖気をトレイ20に向かって送り出して、収納室10内の雰囲気を均一に保つ。
【0026】
噴霧ノズル39は、水を霧状に収納室10内に噴射して、収納室10内の空気を加湿する。本実施形態では、噴霧ノズル39は、冷却器30の上方に、冷却器30の上面に向かって噴霧するように配置されている。
【0027】
図示されていないが、収納室10内には、収納室10内の温度を測定するための温度センサ、収納室10内の湿度を測定するための湿度センサ、収納室10内を照明するための照明装置等が設けられている。
【0028】
機械室80には、上述した冷却装置を構成する圧縮機や凝縮器等に加えて、制御装置82が収納されている。制御装置82に、冷却装置、ヒーター35、ファン37、噴霧ノズル39、温度センサ、湿度センサ、照明装置が接続されている。
【0029】
図4に、収納室10の構成を簡単化して示す。トレイ20上に、焼成前の生地25が載置されている。冷却器30及びヒーター35が、複数のトレイ20に対して水平方向に対向して配置されている。ヒーター35は冷却器30に一体化されている。ファン37が、複数のトレイ20と冷却器30及びヒーター35との間に、これらから水平方向に離間して配置されている。噴霧ノズル39は、冷却器30及びヒーター35の上方に配置されている。トレイ20、冷却器30、ヒーター35、ファン37、噴霧ノズル39は、収納室10内に収納されている。
【0030】
こね上げられた生地25は、トレイ20に載せられて、収納室10に収納される。生地25は、冷凍されていない常温の生地であってもよいし、冷凍されていてもよい。ドウコンディショナー1は、収納室10に収納された生地25に対して、フリーズ(冷凍)、リタード(冷蔵)、予熱、ホイロの各工程を自動的に順番に行う。一例を挙げると、収納室10内は、フリーズ工程では-7℃~-5℃に3時間維持され、リタード工程では0℃~3℃、75%RH~80%RHに4時間維持され、予熱工程では15℃~18℃、75%RH~80%RHに1時間維持され、ホイロ工程では25℃~35℃、75%RH~85%RHに1時間維持される。各工程の温度、湿度、及び時間は、生地25の種類等に応じて変更しうる。また、ホイロ工程終了予定時刻を設定すると、それに応じて各工程の温度、湿度、及び時間が適宜変更されてもよい。制御装置82は、これらの各工程を順次行うプログラムを備えており、各工程において、温度センサ及び湿度センサからの出力に基づいて、冷却装置、ヒーター35、ファン37、噴霧ノズル39を制御して、収納室10内を所定の温度及び湿度に管理する。
【0031】
上述したように、本実施形態のドウコンディショナー1では、収納室10内に、複数のトレイ20に対して、冷却器30及びヒーター35が水平方向に対向して配置されている。複数のトレイ20と、冷却器30及びヒーター35との間に、ファン37が配置されている。複数のトレイ20とファン37との間に、空気の流れを遮断する隔壁は設けられていない。このため、ファン37は、冷却器30で冷却された冷気及びヒーター35で暖められた暖気を矢印Aに示すようにトレイ20上の生地25に向かって水平方向に送り出すことができる。
【0032】
上述した従来のドウコンディショナー(特許文献1,2参照)では、断熱箱体内に、空気の流路であるダクトが形成されている。ダクト内を空気が流れるため、ダクト内は汚れが付着して不衛生になりやすい。例えば、ダクト内には、空気流路が屈曲したり、流路断面積が変化したりする箇所が存在し、これらの箇所では汚れが蓄積しやすい。また、ダクト内に配置された冷却器、ヒーター、噴霧ノズル、ファンなどにも汚れが蓄積しやすい。しかも、ダクト内で汚れが付着しているか否かは、ダクトを分解しないと分からない。このため、汚れの付着状況の確認や、ダクトの内壁面の清掃のために、ダクトを分解する必要がある。ダクトを分解する作業は煩雑である。
【0033】
これに対して、本実施形態のドウコンディショナー1では、トレイ20が収納される空間と、冷却器30、ヒーター35、ファン37、及び噴霧ノズル39が配置された空間とは、収納室10内において、空気の流れを遮断(または規制)する隔壁を隔てることなく連続している。即ち、断熱箱体(収納室10)内に、汚れが付着しやすく且つ汚れの有無の確認が困難なダクトが存在しない。収納室10の扉12を開ければ、開口11を介して、冷却器30、ヒーター35、ファン37、及び噴霧ノズル39を視認することができる。これらへの汚れの付着状況の確認は容易である。汚れが発見された場合には、ダクトを分解するという従来のドウコンディショナーでは必要な煩雑な作業は必要なく、収納室10内を水洗いすればよい。このため、ドウコンディショナー1は、衛生状態を良好に維持することが容易であり、食品製造における衛生管理に優れている。
【0034】
冷却器30、ヒーター35、ファン37、または噴霧ノズル39の点検や修理を行う際にも、これらの機器へのアクセスが容易である。従来のドウコンディショナーでは、これらの機器はダクト内の温調室に配置されているので、点検や修理のためにダクトを分解する必要がある。本実施形態のドウコンディショナー1は、メインテナンス性にも優れている。
【0035】
従来のドウコンディショナーでは、空気を収納室からダクトへ吸引する吸込み口、及び、空気をダクトから収納室に向かって吹き出す吹き出し口のそれぞれの位置によっては、収納室内の雰囲気(例えば温度、湿度、風速)が不均一になりやすい。例えば、ホイロ工程では、吹き出し口の近傍に配置された生地は、吹き出し口から離れた位置に配置された生地に比べて、吹き出し口からの暖かい空気流によって発酵が進みやすく且つ乾燥しやすい。これは、焼成後の製品間で品質にバラツキを生じさせうる。吸込み口や吹き出し口の数を多くすれば、このバラツキをある程度小さくしうるが、ダクトが長くなり、また、ダクトの構成が複雑になる。これは、ダクト内の衛生管理をより困難にする。
【0036】
これに対して、本実施形態のドウコンディショナー1では、ファンによって送り出された空気の流路を規定するダクトや、空気をダクトへ吸引する吸込み口、及び、空気をダクトから吹き出す吹き出し口が、収納室10内に設けられていない。ファン37が、冷却器30で冷却された冷気及びヒーター35で暖められた暖気を、矢印Aに示すように生地25(トレイ20)に向かって送り出すに過ぎない。限られた開口面積を有する吹き出し口のから空気が吹き出される従来のドウコンディショナーに比べると、本実施形態では、ファン37が生地25に向かって送り出す空気は、極めて広範囲にわたり、且つ、その流速は「超微風」と言える程度に極めて小さい。このため、収納室10内での温度、湿度、及び風速の不均一性は生じにくい。例えば、ホイロ工程において、収納室10内の多数の生地25間で、発酵や乾燥の程度に違いが生じにくい。よって、本実施形態のドウコンディショナー1は、焼成後の製品間で品質にバラツキを生じさせにくい。
【0037】
従来のドウコンディショナーでは、ファンはダクトという限られた空間内に配置され、流動抵抗が相対的に大きなダクト内に空気を流す必要があるために、小径のファンを高速回転させる必要がある。これに対して、本実施形態では、ファン37の径に対する制約は小さく、比較的大径のファン37を低速回転させることが可能である。これは、上述した収納室10内での温度、湿度、及び風速の均一性に有利であることに加えて、運転時の静粛性にも有利である。
【0038】
ファン37は、冷却器30によって冷却された冷気、または、ヒーター35によって暖められた暖気を、矢印Aに示すように生地25(トレイ20)に向かって空気を送り出す。これにより、矢印Bに示すように、生地25(トレイ20)からの環流空気がファン37と冷却器30及びヒーター35との間の隙間に入り込む。フリーズ工程では、生地25からの矢印Bに沿った環流空気は、生地25によって暖められ且つ水蒸気を含んでいる。この環流空気が冷却器30とファン37との間の隙間を通過する際に、冷却器30の近傍の冷却された空気との間で熱交換され冷却される。冷却された冷却空気は矢印Aに沿って生地25に向かって送り出される。生地25側からの環流空気の大半は、冷却器30を通過することなく、ファン37によって生地25に向かって送り出される。
【0039】
一方、従来のドウコンディショナーでは、ダクトの温調室内に冷却器、ヒーター、噴霧ノズル、ファンなどが配置される。この構成では、フリーズ工程において、生地によって暖められ且つ水蒸気を含んだ還流空気は、必ず温調室内の冷却器を通過する。このとき、環流空気が冷却され、環流空気中の水蒸気が冷却器に着霜する。冷却器の着霜は、冷却効率を低下させるという問題がある。
【0040】
これに対して、本実施形態では、生地25からの環流空気の大半は、冷却器30を通過しない。このため、従来のドウコンディショナーに比べて、冷却器30の着霜は格段に少なく、着霜による冷却効率の低下が少ない。例えば、冷凍されていない常温の生地25を収納室10に収納して運転を開始した場合には、フリーズ工程において生地25を急速冷凍することができる。生地25の発酵の進行を確実に停止させることが可能である。
【0041】
矢印Aに沿った空気流Aと矢印Bに沿った空気流Bとは、互いに衝突し、収納室10内に複雑且つ緩慢な空気の流れを生じさせる。これは、収納室10内での温度、湿度、及び風速の均一性を向上させるのに有利である。複雑且つ緩慢な空気の流れは、個々の生地25の乾燥を防ぐことに加えて、生地25の局所的な乾燥をも防ぐ。
【0042】
本実施形態では、冷却器30を構成するフィン32の主面は、上下方向(Z軸方向)に平行且つ複数のトレイ20と冷却器30とを結ぶ方向(Y軸方向)に平行である。フィン32の主面がZ軸に平行であるので、フィン32上に結露した水や、冷却器30の洗浄時の洗浄液は、冷却器30から容易に排出される。また、フィン32の主面がY軸に平行であるので、フィン32間を見通すことが容易である。このため、冷却器30に対する汚れの付着の有無を容易に確認することができる。
【0043】
ヒーター35は、冷却器30の隣り合うフィン32間に配置されている。このため、ヒーター35を、冷却器30を除霜するデフロストヒーターとしても利用することができる。ヒーター35とは別に、デフロストヒーターを設ける必要がない。
【0044】
噴霧ノズル39は、冷却器30の上方に配置されている。噴霧ノズル39を、収納室10内の比較的高い位置に配置することにより、収納室10内を効果的に加湿することができる。また、噴霧ノズル39を、冷却器30の除霜や洗浄のために利用することもできる。
【0045】
開口11及び扉12は、トレイ20に対して冷却器30及びヒーター35とは反対側の側壁に設けられている。このため、収納室10にトレイ20が収納されていない状態で扉12を開けると、正面(収納室10の奥)に、ファン37、冷却器30、ヒーター35、噴霧ノズル39が見える。これらの機器についての汚れの有無の確認、清掃、点検、修理等が容易である。
【0046】
上記の実施形態は、例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0047】
上記のドウコンディショナー1は、上段に収納室10を備え、下段に機械室80を備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドウコンディショナーが、上下に積み重ねられた2つの収納室10を備えていてもよい。この場合、機械室80は、上段の収納室10の上に配置されてもよい。
【0048】
冷却器30及びヒーター35は、ファン37を挟んでトレイ20に対して水平方向に対向していればよい。例えば、冷却器30、ヒーター35、及びファン37が、トレイ20に対してX軸方向に対向して配置されていてもよい。更には、トレイ20に対してX軸方向の両側に、冷却器30、ヒーター35、及びファン37がそれぞれ配置されていてもよい。冷却器30、ヒーター35、及びファン37をトレイ20に対してX軸方向に対向して配置した場合、トレイ20に対してY軸方向に対向する2つの側壁にそれぞれ開口11及び扉12を設けてもよい。これにより、トレイ20を、前面及び後面のいずれからでも出し入れすることが可能になる。
【0049】
ヒーター35の配置位置は、上記の実施形態に限定されない。例えば、ヒーター35を、冷却器30とファン37との間に、冷却器30から離間して配置してもよい。
【0050】
トレイ20がファン37に衝突しないように、トレイ20とファン37との間に、金網やロッド等が配置されていてもよい。これらの金網やロッドは、ファン37が生地25(トレイ20)に向かって送り出す空気の流れを実質的に遮断するものではなく、従来のドウコンディショナーにおいてダクトを構成する隔壁とは異なるものである。ファン37を所定位置に保持するための保持部材を上記ロッドとしても利用してもよい。
【0051】
収納室10内に収納可能なトレイ20の数は任意である。また、収納室10は、上下方向に並ぶ複数のトレイ20の列を水平方向に2列以上並べて収納することができるように構成されていてもよい。
【0052】
収納室10に配置される冷却器30、ヒーター35、ファン37、噴霧ノズル39の数や配置は本発明の範囲内で任意に変更しうる。
【0053】
本発明のドウコンディショナー内で発酵された生地を焼成して得られる製品は、パンやドーナツなど任意である。ドウコンディショナーは、フリーズ、リタード、予熱、ホイロのいずれかの工程を単独で行うことができるように構成されていてもよい。これにより、例えばドウコンディショナーを生地を冷凍保存する保管庫として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、こね上げられた生地を保管して所望する時刻に発酵を自動的に完了させるドウコンディショナーとして好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ドウコンディショナー
10 収納室
12 扉
20 トレイ
25 生地
30 冷却器
31 コイル
32 フィン
35 ヒーター
37 ファン
39 噴霧ノズル