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  • 特開-肥料散布機の肥料混合構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083805
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】肥料散布機の肥料混合構造
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
A01C15/00 E
A01C15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195346
(22)【出願日】2020-11-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年4月9日に土岐敏男の圃場で行った性能試験
(71)【出願人】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶翼
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052EA02
2B052EA17
2B052EA19
2B052EB08
2B052EC13
(57)【要約】
【課題】肥料散布機のホッパーに投入された肥料を混合させる際に、回転軸のトルクを小さくできるとともに、迅速に肥料を混合させることができるようにした肥料散布機を提供する。
【解決手段】肥料を収容するホッパー2と、撹拌翼42を取り付けた回転軸41を有する撹拌翼42を備えた混合部4と、当該混合部4で混合された肥料を散布させる散布部5とを備えてなる肥料散布機1において、前記撹拌翼42の回転方向の先端縁部に、中央部分を突出させた凸状縁部42eを設けるようにした。また、この撹拌翼42は、回転軸41に対して、外側を回転方向に沿って遅らせた湾曲形状のアーム43に取り付けるようにしておき、これによって、回転時に先端側の縁部に当たる力を分散化させるようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料を収容するホッパーと、
板状の撹拌翼を取り付けた回転軸を回転させて、前記ホッパーに収容された肥料を混合させる混合部と、
当該混合部で混合された肥料を散布させる散布部と、
を備えてなる肥料散布機において、
前記撹拌翼の回転方向の先端中央部分に、回転方向に向けて中央部分を突出させた凸状部を設けるようにしたことを特徴とする肥料散布機。
【請求項2】
前記凸状部が、回転方向に向けて中央部分を突出させた湾曲形状にしたものである請求項1に記載の肥料散布機。
【請求項3】
前記撹拌翼が、前記ホッパーの湾曲もしくは屈曲する内壁に沿って湾曲もしくは屈曲させて構成されるものである請求項1に記載の肥料散布機。
【請求項4】
前記撹拌翼が、回転方向に沿って湾曲するアームに取り付けられるものである請求項1に記載の肥料散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に肥料を散布させる肥料散布機に関するものであり、より詳しくは、ホッパーに投入された肥料を均一に混合させるようにした肥料散布機の肥料混合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、大きな肥料散布機は、トラクターなどの牽引車に牽引されながら圃場に肥料を散布させるように構成されている。このような肥料散布機の一般的な構造について、図7を用いて説明する。
【0003】
図7において、符号2は、図示しないトラクターなどの牽引車に牽引される横長状のホッパーであって、内部に肥料を投入できるようにしたものである。また、符号4aは、このホッパー2内に投入された複数種類の肥料を混合させる混合部であって、撹拌翼42aで肥料を均一に混合させるようにしたものである。また、符号5は、そのホッパー2の下部に設けられた散布部であって、底板に設けられた間欠的な穴部26から肥料を落下させるようにしたものである。そして、このような肥料散布機を用いて肥料を散布させる場合、ホッパー2に肥料を投入して混合部4aで均一に混合させ、ホッパー2の下部に設けられた穴部26から肥料を落下させるようにしている(下記の特許文献など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-201563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような肥料散布機のホッパーに肥料を収容する際、次のような問題がある。
【0006】
すなわち、このホッパー2には、一般に、複数の肥料が投入され、これらの投入された肥料を混合部4で均一に混合させるようにしているが、従来の撹拌翼42aは、図8に示すように、長方形状に構成されているため、撹拌翼42aの直線状の先端縁部に掛かる荷重が大きくなってしまう。このため、多くの撹拌翼42aを回転させるには、大きなトルクが必要になるといった問題があった。
【0007】
また、従来の撹拌翼42aは長方形状に構成されているため、撹拌翼42aの左右両縁部は後端部分でしか肥料を混合させることができず、多くの肥料を均一に混合させるためには、時間が必要になるといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、肥料散布機のホッパーに投入された肥料を混合させる際に、回転軸のトルクを小さくできるとともに、迅速に肥料を混合させることができるようにした肥料散布機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、肥料を収容するホッパーと、板状の撹拌翼を取り付けた回転軸を回転させて、前記ホッパーに収容された肥料を混合させる混合部と、当該混合部で混合された肥料を散布させる散布部とを備えてなる肥料散布機において、前記撹拌翼の回転方向の先端中央部分に、回転方向に向けて中央部分を突出させた凸状部を設けるようにしたものである。
【0010】
このように構成すれば、撹拌翼が肥料に当たって回転する際に、その先端に掛かる荷重を縁に沿って分散させることができ、撹拌翼を多く取り付けた場合であっても、回転軸のトルクを小さくすることができるようになる。また、先端中央部分を回転方向に向けて突出させているため、そこから傾斜あるいは湾曲している部分に粒状の化成肥料が横切るように当たることによって、渦を生じさせることができ、粒状の化成肥料などを均一に混合させることができるようになる。
【0011】
また、このような発明において、前記凸状部を、回転方向に向けて中央部分を突出させた湾曲形状にしておく。
【0012】
このように構成すれば、先端が滑らかな曲線状となっているため、先端部分で粒状の肥料を痛めることなく、撹拌翼に掛かる荷重を分散させることができるようになる。
【0013】
さらに、前記撹拌翼を、前記ホッパーの湾曲もしくは屈曲する内壁に沿って湾曲もしくは屈曲させて構成しておく。
【0014】
このように構成すれば、ホッパーの内壁近くの肥料を掬い取って混合させることができるとともに、肥料を撹拌翼の回転領域の内側に寄せて混合させることもできるようになる。
【0015】
また、前記撹拌翼を、回転方向に沿って湾曲したアームに取り付けるようにしておく。
【0016】
このように構成すれば、回転軸を回転させる際に、湾曲するアームによって、アームのエッジ部分に掛かる荷重を分散させることができ、回転軸のトルクを小さくすることができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、肥料を収容するホッパーと、板状の撹拌翼を取り付けた回転軸を回転させて、前記ホッパーに収容された肥料を混合させる混合部と、当該混合部で混合された肥料を散布させる散布部とを備えてなる肥料散布機において、前記撹拌翼の回転方向の先端中央部分に、回転方向に向けて中央部分を突出させた凸状部を設けるようにしたので、撹拌翼が肥料に当たって回転する際に、その先端に掛かる荷重を縁に沿って分散させることができ、撹拌翼を多く取り付けた場合であっても、回転軸のトルクを小さくすることができるようになる。また、先端中央部分を回転方向に向けて突出させているため、そこから傾斜あるいは湾曲している部分に粒状の化成肥料が横切るように当たることによって、渦を生じさせることができ、粒状の化成肥料などを均一に混合させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態を示す肥料散布機の側面図
図2】同形態における肥料散布機の混合部や散布部を示す概略図
図3】同形態における混合部の撹拌翼を示す図
図4】同形態における撹拌翼によって生ずる渦を示す図
図5】他の実施の形態における撹拌翼を示す図
図6】同形態における散布部を示す図
図7】従来例の混合部を示す図
図8】従来例の撹拌翼を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態における肥料散布装置に使用されるカバー開閉構造について図面を参照しながら説明する。
【0020】
この実施の形態における肥料散布装置は、トラクターなどの牽引車に牽引されて使用されるものであって、図1に示すように、肥料を収容するホッパー2と、そのホッパー2内に収容された肥料を均一に混合させる混合部4と、ホッパー2の下方に設けられた散布部5などを備えて構成されるものであって、特徴的に、図3に示すように、混合部4に設けられた撹拌翼42の先端側に、中央部分が凸状となるような凸状縁部42eを設けて、先端部分に掛かる荷重を縁に沿って分散させるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
この肥料散布装置のホッパー2は、横長状に構成されるものであって、カバー3を開放して設けられた内部に肥料を収容できるように構成されている。具体的には、このホッパー2は、図1に示すように、前後に対向するように設けられた上部前面板21fおよび上部後面板21bと、その下方に、漸次下方に向けて前後方向の隙間幅を小さくした中間傾斜板22と、その中間傾斜板22の下方に設けられ、さらに内側の隙間幅を小さくした下部傾斜板23と、これらの下部傾斜板23の下方に設けられ、散布部5のアジテーター53を囲む底部壁24や底板25などを設けて構成されている。
【0022】
このホッパー2の内部に設けられる混合部4は、ホッパー2に収容された肥料を撹拌させて、底板25の穴部26(図6参照)から肥料を落下させられるようにしたものであって、トラクターのPTOからの駆動力をミッション6(図2参照)に伝達させ、ホッパー2の回転軸41とともに撹拌翼42を回転させるようになっている。
【0023】
ホッパー2の下部に設けられる散布部5は、撹拌翼42によって中央に寄せられた肥料を圃場に向けて落下させるようにしたものであって、底板25に間欠的に設けられる穴部26(図6参照)と、その穴部26を塞ぐシャッター51と、そのシャッター51をスライドさせるスライド機構などを有して構成されている。このスライド機構は、底板25の下方に設けられたシャッター51を左右方向にスライドさせるような構成となっており、矩形状の開口部分51aを底板25の穴部26にオーバーラップさせることで、散布量を調整できるようしている。また、この散布部5には、アジテーター53が設けられており、回転軸52に設けられた羽根54を回転させることによって、肥料を穴部26から落下させられるようにしている。
【0024】
このような構成において、肥料を均一に混合させるための混合部4は、次のように構成される。
【0025】
まず、回転軸41は、ホッパー2の前後方向に一対設けられるものであって、互いに中央部分が上向きとなるように回転するようにミッション6(図2参照)で駆動するように構成されている。
【0026】
一方、この回転軸41の外周部分に設けられ撹拌翼42が、前後に設けられた回転軸41の撹拌翼42とそれぞれ干渉しないように取り付けられるものであって、その回転によって肥料を撹拌させて均一に混合させるように構成される。この撹拌翼42は、その回転方向に沿った平面を有する薄板状の二本のアーム43の先端部分に取り付けられが、このアーム43の前縁部分が半径方向に沿って直線状であると、回転軸41を回転させる際に、肥料が直線状のアームの前縁部分に同時に当たることになり、回転軸41に大きな荷重が掛かってしまう。そこで、この実施の形態では、回転方向に対して先端側が遅れるように湾曲させた前縁部分を有する形状にしておき、これによって、アーム43の前縁部分に掛かる荷重を前縁に沿って分散させるようにしている。
【0027】
このアーム43の先端に取り付けられる撹拌翼42は、ホッパー2内に収容された肥料を均一に混合させるようにしたもので、一枚の薄板状の部材で構成された前方板部42aと後方板部42bなどを備えて構成される。
【0028】
このうち、前方板部42aは、撹拌翼42の回転方向の先端側に設けられるものであって、図3に示すように、先端中央部分を凸状に湾曲させた凸状縁部42eを有するように構成されている。これにより、凸状縁部42eに肥料が当たった場合であっても、その肥料の荷重を湾曲した縁に沿って分散させ、大きな荷重が掛からないようにしている。また、このように湾曲させた凸状縁部42eを設けていると、図4に示すように、撹拌翼42を回転させる際に、その凸状縁部42eの縁に当たる肥料が渦を描くように対流するため、迅速に肥料を混合させることができるようになる。なお、ここでは、凸状縁部42eを湾曲形状にしているが、図5に示すように、先端中央部分を中心として直線的に傾斜させた略三角形状としてもよい。
【0029】
一方、この前方板部42aの後方に設けられる後方板部42bは、前方板部42aから回転中心の内側に向けて屈曲あるいは湾曲させるように形成されるものであって、左右両辺を互いに平行にした略長方形状に構成される。そして、このような形状にすることによって、撹拌翼42の内側面で掬える肥料の量を多くして、混合しやすくするとともに、その内側表面にアーム43を取り付けるスペースを確保している。なお、このように後方板部42bを前方板部42aから屈曲あるいは湾曲させる場合、撹拌翼42の前方板部42aをホッパー2の内壁に近い位置となるようにしておき、後方板部42bについては、ホッパー2の内壁から少し離れた位置となるように屈曲させておく。そして、このように構成することによって、ホッパー2の内壁近くの肥料を中心側に寄せて撹拌させるようにしておく。
【0030】
次に、このように構成された肥料散布機1を用いて肥料を混合させる場合の作用について説明する。
【0031】
まず、ホッパー2に肥料を投入する際、カバー3を開けて、袋詰めされた化成肥料を上側の開口部20から投入する。この際、肥料はホッパー2の横長方向に沿って均一となるように投入し、同様に、他の種類の化成肥料についても、その上から順次投入していく。このとき、投入された肥料は、層状にホッパー2に収容されることになる。
【0032】
このように肥料を投入した後、混合部4の回転軸41を回転させて、ホッパー2内の肥料を均一に混合させる。
【0033】
このように肥料を混合させる場合、前後一対設けられた回転軸41を、それぞれ中央部分が上向きとなるように回転させる。すると、撹拌翼42の回転により、その撹拌翼42によって肥料が掬い取られながら混合されるが、このとき、撹拌翼42の凸状縁部42eが湾曲形状に突出しているため、その凸状縁部42eに当たった肥料が縁部に沿って逃げ、力を分散させることができるようになる。これにより、回転軸41に掛かるトルクを小さくすることができるようになる。また、同様に、アーム43の前方の縁部に当たった肥料についても、湾曲した縁部に沿って力を分散させることができるようになる。
【0034】
そして、このように撹拌翼42やアーム43に当たる力を分散させながら、撹拌翼42を回転させていくと、撹拌翼42の凸状縁部42eを横切る肥料が、図4に示すように、渦を描くように対流し、その部分の肥料を混合させることができるようになる。
【0035】
そして、一定時間肥料を混合させた後、散布部5のアジテーター53の回転軸52を回転させ、その回転軸52に取り付けられた羽根54によって、肥料を穴部26側に寄せるようにする。そして、その穴部26を覆うシャッター51をスライドさせ、シャッター51の開口部分51aとのオーバーラップ量を調整しながら、散布量を調整して肥料を落下させるようにする。
【0036】
このように上記実施の形態によれば、肥料を収容するホッパー2と、撹拌翼42を有する混合部4と、当該混合部4で混合された肥料を散布させる散布部5とを備えてなる肥料散布機1において、前記撹拌翼42の回転方向の先端縁部に、中央部分を突出させた凸状縁部42eを設けるようにしたので、撹拌翼が肥料に当たって回転する際に、その先端に掛かる荷重を縁に沿って分散させることができ、撹拌翼42を多く取り付けた場合であっても、回転軸41のトルクを小さくすることができるようになる。また、先端中央部分を回転方向に向けて突出させているため、そこから傾斜あるいは湾曲している部分に粒状の化成肥料が横切るように当たることによって、渦を生じさせることができ、粒状の化成肥料などを均一に混合させることができるようになる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0038】
例えば、上記実施の形態では、水平方向の回転軸41を回転させて撹拌翼42を回転させる混合部4を例に挙げて説明したが、逆円錐状のホッパーの中心軸上に回転軸を設けて肥料を混合させるした肥料散布機にも適用することができる。この場合、回転軸を縦軸方向に沿って取り付けるとともに、その外周部分に上記実施の形態と同様の撹拌翼42を取り付けるようにする。
【0039】
また、上記実施の形態では、前方板部42aを平面板状に構成したが、これを湾曲した板で構成するようにしてもよい。このとき、湾曲する面が、回転方向に沿うような形状にしておくとよい。
【0040】
さらに、上記実施の形態では、アーム43を、外側が遅れるような湾曲形状としたが、これとは逆に、外側が回転方向に沿って進むような湾曲形状としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1・・・肥料散布機
2・・・ホッパー
25・・・底板
26・・・穴部
4・・・混合部
41・・・回転軸
42・・・撹拌翼
5・・・散布部
6・・・ミッション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8