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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083850
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】サーボモータ用クラッチ機構
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/118 20060101AFI20220530BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20220530BHJP
   F16D 27/112 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F16D27/118
F16H1/28
F16D27/112 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195421
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 広貴
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FB34
3J027GA01
3J027GC13
3J027GC24
3J027GC26
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD12
3J027GD13
3J027GE01
3J027GE11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】サーボモータを大型化することなく、たとえば高速回転低トルク、低速回転高トルクという二種類の出力など、一台のサーボモータにおいてそれぞれ別の出力を行う動作対象への切り替えを行える、すなわち出力切り替えを行うことのできるクラッチ機構を提供すること。
【解決手段】サーボモータ用クラッチ機構100は、電磁クラッチを構成するクラッチアーマチュア20と、通電時にクラッチアーマチュア20が連結されるON時出力機構40における連結部位(ON時連結部位)30と、および、通電遮断時にクラッチアーマチュア20が連結されOFF時出力機構60における連結部位(OFF時連結部位)50とからなる構成とする。電磁クラッチによりサーボモータの出力切り替えが行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁クラッチによりサーボモータの出力切り替えを行うクラッチ機構であって、
電磁クラッチを構成するクラッチアーマチュアと、
通電時(以下「ON時」という)に該クラッチアーマチュアが連結される出力機構(以下「ON時出力機構」という)における連結部位(以下「ON時連結部位」という)と、および、
通電遮断時(以下「OFF時」という)に該クラッチアーマチュアが連結される出力機構(以下「OFF時出力機構」という)における連結部位(以下「OFF時連結部位」という)とからなる
ことを特徴とする、サーボモータ用クラッチ機構。
【請求項2】
前記クラッチアーマチュアと前記各連結部位とを連結せしめる連結構造は、双方が備える噛合構造であることを特徴とする、請求項1に記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【請求項3】
前記クラッチアーマチュアと前記各連結部位と連結せしめる連結構造は、双方が備える摩擦用構造であることを特徴とする、請求項1に記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【請求項4】
前記クラッチアーマチュアが備える前記連結構造は、前記ON時連結部位用とOFF時連結部位用とで相違することを特徴とする、請求項2、3のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【請求項5】
前記ON時出力機構およびOFF時出力機構は同一出力軸からそれぞれの出力を出力することを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【請求項6】
減速機として下記<G>に記載の構成を有する不思議遊星歯車機構を備えたサーボモータにおける、モータ本体と該減速機との間に設けられているクラッチ機構であって、前記クラッチアーマチュアが、後記第二内歯車を固定した場合は低速回転高トルクが出力され、後記キャリアを固定した場合は高速回転低トルクが出力されることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
<G> 不思議遊星歯車機構はモータ軸と一体に回転する太陽歯車と、
該太陽歯車の周りを自転しながら公転する遊星歯車と、
該遊星歯車と噛み合いかつ該クラッチアーマチュアによる作用を受ける第二内歯車と、
該遊星歯車と噛み合い該第二内歯車とは歯数が異なっていて出力軸と一体に回転する第一内歯車と、
および該遊星歯車を収容しかつ該クラッチアーマチュアによる作用を受けるキャリアとからなる。
【請求項7】
前記第二内歯車はOFF時連結部位、前記キャリアはON時連結部位であることを特徴とする、請求項6に記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【請求項8】
前記遊星歯車は、前記第一内歯車に噛み合う第一遊星歯車と、前記第二内歯車に噛み合う第二遊星歯車とが一体構造となっている二段遊星歯車であることを特徴とする、請求項6、7のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【請求項9】
無励磁作動型であり、これにより停電時の出力軸緊急停止が可能であることを特徴とする、請求項6、7、8のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーボモータ用クラッチ機構に係り、たとえば大きく異なる二種類のトルクを一台のモータの同一出力軸から取り出す場合などにおいて、クラッチ機構をコンパクト化することのできる、サーボモータ用クラッチ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーボモータにおいて高トルクが必要な場合、減速機と組み合わせ、回転速度を犠牲にする(高速回転できない)ことで減速比倍のトルクを得るという手法が、一般的には取られている。しかし、たとえばサーボプレスなどボールねじを用いた機構の場合は、モータを高速で回転させて位置決めを行った後に即、高トルクで加圧したいという動作パターンがある。だが、減速機を用いた機構では高トルクは出力可能だが、高速回転を出力することは不可能である。またこれとは逆に、高速回転を出力する場合には減速機との組み合わせによる高トルク出力は不可能となる。
【0003】
すなわち、減速機を用いる場合には回転速度を犠牲にせざるを得ないため、高速回転出力と高トルク出力を両立させることができない。つまり、減速機を用いつつ高低二段階のトルクを一台のモータから、しかも同じ出力軸から取り出すことは、従来不可能であった。したがって、高速回転出力と高トルク出力の両立のためには、複雑な機構による二種類(二台)のモータを用いた対応がなされていた。
【0004】
なお、かかる問題の根本的解決策になり得るものとして、減速機を用いつつ低速回転高トルク仕様、高速回転低トルク仕様の両仕様で利用できる方法が既に特許出願されている(後掲特許文献1)。この文献には、低速回転高トルク仕様、高速回転低トルク仕様の両仕様で利用できる減速機として、モータ軸の回転力を減速して第1の駆動力を出力対象に出力する複数の出力部材を有する減速機構、複数の出力部材に接続するキャリアを有し、第1の駆動力を増速して第2の駆動力をデフケースに出力する増速機構、増速機構―デフケース、また減速機構―デフケースをそれぞれ断続可能に連結するクラッチを備える構成が開示されている。
また特許文献2には、溝カムを用いて二つの咬合爪を移動し、接続する歯車を切り替えるクラッチ機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-052063号公報「減速機及びこれを備えたモータ回転力伝達装置」
【特許文献2】実開昭61-175628号公報「クラッチの切替装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献1開示技術は、減速機が増速機構と減速機構とを備えてなる構成であり、デフケースに増速機構または減速機構を選択して接続するクラッチにより、高速回転低トルク、低速回転高トルク、二種類の出力が取り出されるという方式である。つまり、減速機構だけではなく増速機構をも設け減速機にするという複雑な構成、方式であり、これを搭載する装置全体の大型化の抑制や、モータと減速機との組み合わせにおける組み合わせ機構の簡素化には向かない。したがって、搭載される装置全体の大型化抑制、組み合わせ機構の簡素化に資することもできる、より簡素な構成、方式が求められる。
【0007】
また、サーボモータでは従来、停電時などの緊急停止に対応するため、無励磁作動型ブレーキを搭載することが一般的である。しかし、かかる無励磁作動型ブレーキの搭載は、その分のスペースを要し、これも搭載される装置全体の大型化を抑えるには不利である。高速回転低トルク、低速回転高トルクという二種類の出力を一台のモータおよび単一の出力軸によって取り出せるとともに、無励磁作動型ブレーキの搭載を不要とすることができれば、搭載される装置全体の大型化抑制、組み合わせ機構の簡素化には有利である。
【0008】
さて、以上サーボモータにおける二種類の出力を得るに際しての問題点・課題を述べたが、一般的には、従来FAに用いられるクラッチは所定の一つの動作対象に対して連結か開放(ニュートラル)かを制御し、それにより当該動作対象による出力の有無を決定するものである。つまり、一つの出力を行う動作対象ごとに一つのクラッチ機構が必要である。そうすると、一台のサーボモータにおいて複数の動作対象に対するクラッチ断続作用を必要とする場合には、サーボモータの大型化が避けられず、コンパクト化の要請には合致しない。サーボモータのコンパクト化の障害とならないクラッチ機構、コンパクト化に資するクラッチ機構が求められている。
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、サーボモータを大型化することなく、たとえば高速回転低トルク、低速回転高トルクという二種類の出力など、一台のサーボモータにおいてそれぞれ別の出力を行う動作対象への切り替えを行える、すなわち出力切り替えを行うことのできるクラッチ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、クラッチアーマチュアのON側/OFF側それぞれに、別の連結部を設ける構成によって課題解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕 電磁クラッチによりサーボモータの出力切り替えを行うクラッチ機構であって、電磁クラッチを構成するクラッチアーマチュアと、通電時(以下「ON時」という)に該クラッチアーマチュアが連結される出力機構(以下「ON時出力機構」という)における連結部位(以下「ON時連結部位」という)と、および、通電遮断時(以下「OFF時」という)に該クラッチアーマチュアが連結される出力機構(以下「OFF時出力機構」という)における連結部位(以下「OFF時連結部位」という)とからなることを特徴とする、サーボモータ用クラッチ機構。
〔2〕 前記クラッチアーマチュアと前記各連結部位とを連結せしめる連結構造は、双方が備える噛合構造であることを特徴とする、〔1〕に記載のサーボモータ用クラッチ機構。
〔3〕 前記クラッチアーマチュアと前記各連結部位と連結せしめる連結構造は、双方が備える摩擦用構造であることを特徴とする、〔1〕に記載のサーボモータ用クラッチ機構。
〔4〕 前記クラッチアーマチュアが備える前記連結構造は、前記ON時連結部位用とOFF時連結部位用とで相違することを特徴とする、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【0012】
〔5〕 前記ON時出力機構およびOFF時出力機構は同一出力軸からそれぞれの出力を出力することを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
〔6〕 減速機として下記<G>に記載の構成を有する不思議遊星歯車機構を備えたサーボモータにおける、モータ本体と該減速機との間に設けられているクラッチ機構であって、前記クラッチアーマチュアが、後記第二内歯車を固定した場合は低速回転高トルクが出力され、後記キャリアを固定した場合は高速回転低トルクが出力されることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
<G> 不思議遊星歯車機構はモータ軸と一体に回転する太陽歯車と、該太陽歯車の周りを自転しながら公転する遊星歯車と、該遊星歯車と噛み合いかつ該クラッチアーマチュアによる作用を受ける第二内歯車と、該遊星歯車と噛み合い該第二内歯車とは歯数が異なっていて出力軸と一体に回転する第一内歯車と、および該遊星歯車を収容しかつ該クラッチアーマチュアによる作用を受けるキャリアとからなる。
〔7〕 前記第二内歯車はOFF時連結部位、前記キャリアはON時連結部位であることを特徴とする、〔6〕に記載のサーボモータ用クラッチ機構。
〔8〕 前記遊星歯車は、前記第一内歯車に噛み合う第一遊星歯車と、前記第二内歯車に噛み合う第二遊星歯車とが一体構造となっている二段遊星歯車であることを特徴とする、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
〔9〕 無励磁作動型であり、これにより停電時の出力軸緊急停止が可能であることを特徴とする、〔6〕、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載のサーボモータ用クラッチ機構。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサーボモータ用クラッチ機構は上述のように構成されるため、これによれば、サーボモータを大型化することなく、たとえば高速回転低トルク、低速回転高トルクという二種類の出力など、一台のサーボモータにおいてそれぞれ別の出力を行う動作対象への切り替えを、すなわち出力切り替えを行うことができる。換言すれば、一つのクラッチ機構のみにより、二種類の異なるモータ出力を、同一出力軸において得ることができる。クラッチ機構を二つ有する場合よりも、当然ながらコンパクト化することができる。
【0014】
本発明のサーボモータ用クラッチ機構によれば、たとえば、サーボモータ全体の大型化を押さえつつ、高速回転低トルク、低速回転高トルクという二種類の出力を一台のモータおよび単一の出力軸によって取り出すことができる。また、これに加えて本発明では、無励磁作動型ブレーキを用いない緊急停止機構も実現されるため、無励磁作動型ブレーキの搭載を不要とすることもできる。
【0015】
上述の通り従来は、減速機有無による二種類のトルクを一台のモータから、かつ同じ出力軸から取り出すことが不可能であったため、複雑な機構を伴う二種類のモータを用意していた。本発明により、一台で減速機有無による二種類のトルクを可変利用可能なモータを実現でき、さらに無励磁作動型ブレーキも廃止できることで、大幅な簡素化が可能となる。
【0016】
なお、上述の文献1開示技術は、増速機構と減速機構とを備えた減速機を用い、デフケースに増速機構または減速機構を選択して接続するクラッチによって二種類の出力が取り出される方式であり、本発明とは異なる。また、上記文献2開示技術は、溝カムを用いて二つの咬合爪を移動し、接続する歯車を切り替えるクラッチ機構の技術であり、コイルの通電によりアーマチュアを吸引するクラッチ機構が前提の本発明とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明サーボモータ用クラッチ機構の基本構成および作用を示す断面視の概念図である(通電時)。
図1-2】本発明サーボモータ用クラッチ機構の基本構成および作用を示す断面視の概念図である(通電遮断時)。
図2】噛合構造を備える本発明サーボモータ用クラッチ機構の例につき要部を示す断面視の説明図である。
図3】本発明サーボモータ用クラッチ機構を用いた可変トルクモータの構成および作用を示す側断面視の説明図である(高トルクモード)。
図4】本発明サーボモータ用クラッチ機構を用いた可変トルクモータの構成および作用を示す側断面視の説明図である(高速回転モード)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1、1-2は、本発明サーボモータ用クラッチ機構の基本構成および作用を示す断面視の概念図である(それぞれ、通電時、通電遮断時)。これらに図示するように、本サーボモータ用クラッチ機構100は電磁クラッチによりサーボモータの出力切り替えを行うクラッチ機構であって、電磁クラッチを構成するクラッチアーマチュア20と、通電時(ON時)にクラッチアーマチュア20が連結される出力機構(ON時出力機構)40における連結部位(ON時連結部位)30と、および、通電遮断時(OFF時)にクラッチアーマチュア20が連結される出力機構(OFF時出力機構)60における連結部位(OFF時連結部位)50とからなることを、主たる構成とする。
【0019】
かかる構成の本サーボモータ用クラッチ機構100では、図1に示すようにON時には、クラッチアーマチュア20がON時連結部位30に連結することによってON時出力機構40に連結され、ON時出力機構40が作動する。一方、図1-2に示すようにOFF時には、クラッチアーマチュア20がOFF時連結部位50に連結することによってOFF時出力機構60に連結され、OFF時出力機構60が作動する。このように本発明クラッチ機構100によれば、電磁クラッチがON時/OFF時で切り替えられることによって、従来のように所定の出力のON/OFFが切り替えられるのではなく、出力される機構が切り替えられる。つまり、サーボモータにおけるON時出力機構40/OFF時出力機構60の出力切り替えがなされる。
【0020】
図2は、噛合構造を備える本発明サーボモータ用クラッチ機構の例につき要部を示す断面視の説明図である。図示するように本サーボモータ用クラッチ機構は、クラッチアーマチュア25と各連結部位、すなわちON時連結部位35、OFF時連結部位55とを連結せしめる連結構造を、双方が備える噛合構造とすることができる。つまり、クラッチアーマチュア25におけるON時連結部位35との連結用部位はON時連結部位35と噛み合う構造に、一方、OFF時連結部位55との連結用部位はOFF時連結部位55と噛み合う構造に、それぞれ構成することができる。
【0021】
したがって図示するように、クラッチアーマチュア25が備える連結構造は、ON時連結部位35用とOFF時連結部位55用とでは相違する構成となってもよい。たとえば、高トルクの出力機構、連結の円滑さが重視される出力機構など、連結対象の出力機構に適した噛合構造をそれぞれの側において備えた構成のクラッチアーマチュア25とすることができる。
【0022】
図示する例では、(a)にON時、(b)にOFF時のクラッチアーマチュア25の作用を示している。ON時には、クラッチアーマチュア25がON時連結部位35に噛み合い連結し、それによってON時出力機構(図示せず)に連結され、ON時出力機構が作動する。一方、OFF時には、クラッチアーマチュア25がOFF時連結部位55に噛み合い連結し、それによってOFF時出力機構(図示せず)連結され、OFF時出力機構が作動する。
【0023】
なお、本発明サーボモータ用クラッチ機構における、クラッチアーマチュアと各連結部位と連結せしめる連結構造は、双方が備える摩擦用構造としてもよい。また、ON時出力機構およびOFF時出力機構が同一の出力軸からそれぞれの出力を出力する構成としてもよい。かかる例として、本サーボモータ用クラッチ機構を用いた可変トルクモータについて説明する。
【0024】
図3、4は、本発明サーボモータ用クラッチ機構を用いた可変トルクモータの構成および作用を示す側断面視の説明図であり、図1は高トルクモード、図2は高速回転モードをそれぞれ示す。これらに示すように本可変トルクモータ10におけるサーボモータ用クラッチ機構10は、減速機として下記<G>に記載の構成を有する不思議遊星歯車機構2を備えたサーボモータにおいて、モータ本体9と減速機2との間に設けられているクラッチ機構1である。
<G> モータ軸8と一体に回転する太陽歯車3と、太陽歯車3の周りを自転しながら公転する遊星歯車4と、遊星歯車4と噛み合いかつクラッチアーマチュア1wによる作用を受ける第二内歯車6と、遊星歯車4と噛み合い第二内歯車とは歯数が異なっていて出力軸と一体に回転する第一内歯車5と、および遊星歯車4を収容しかつクラッチアーマチュア1wによる作用を受けるキャリア7とからなる不思議遊星歯車機構2。
【0025】
そしてクラッチアーマチュア1w(クラッチ作用対象への伝達・遮断作用がなされるクラッチ作用部)が、第二内歯車6を固定した場合は低速回転高トルクが出力され、キャリア7を固定した場合は高速回転低トルクが出力される。すなわち本可変トルクモータ10は、サーボモータ用クラッチ機構1、およびこれが行うクラッチ作用の対象であるところの減速機2によって、同一出力軸から二種類のトルクを取り出すことができる。
【0026】
かかる構成の本可変トルクモータ10においては、図3のようにサーボモータ用クラッチ機構1のクラッチアーマチュア1wが第二内歯車6方向に移動してこれに接続し、それにより第二内歯車6が固定されて停止した状態となっている場合には、遊星歯車4を収容するキャリア7は開放されており、したがって第二内歯車6と噛み合っている遊星歯車4は、自転しつつ、モータ軸8と同期して回転する太陽歯車3の周りを公転する。かかる遊星歯車4の回転は、第二内歯車6とは歯数が異なる第一内歯車5へと伝動され、一体に回転する出力軸11へと出力される。すなわち、モータ軸8の回転は不思議遊星歯車機構2による有効な減速作用を受けて減速され、これによって低速回転高トルクの出力が出力軸11に出力される。
【0027】
一方、図4に示すようにサーボモータ用クラッチ機構1のクラッチアーマチュア1wがキャリア7方向に移動してこれに接続し、それによってキャリア7が固定された場合には、遊星歯車4と噛み合う第二内歯車6は開放されており、したがって第二内歯車6と噛み合っている遊星歯車4は、キャリア7が固定されているため、その場で、モータ軸8と同期して回転している太陽歯車3に合わせて自転する。かかる遊星歯車4の回転が第一内歯車5へと伝動され、一体に回転する出力軸11へと出力される。すなわちモータ軸8の回転は、不思議遊星歯車機構2によって減速されることなく、単純な遊星歯車機構として、一体に回転する出力軸11へと出力される。すなわち、モータ軸8の回転は不思議遊星歯車機構2による有効な減速作用を受けずに伝動され、これによって、高速回転低トルクの出力が出力軸11に出力される。出力軸11はモータ軸8とともに高速回転する。
【0028】
このようにして本可変トルクモータ10では、サーボモータ用クラッチ機構1の動作選択、つまり第二内歯車6を固定するように動作させるか、それともキャリア7を固定するように動作させるか、によって、前者の場合は低速回転高トルクモードで、後者の場合は高速回転低トルクモードで、それぞれ回転出力を得ることができる。すなわち減速機2により、同一出力軸から2種類のトルクを取り出すことができる。よって、高速回転出力が必要な時は不思議遊星歯車機構2と接続せずに単純な遊星歯車機構としてモータ本体9の低減速比出力を利用し、一方、高トルク出力が必要時は、不思議遊星歯車機構2と接続して、高減速比のトルクを得ることができる。
【0029】
各図に示すように本可変トルクモータ10のサーボモータ用クラッチ機構1は、そのクラッチアーマチュア1wが、釈放により第二内歯車6を、吸引によりキャリア7をそれぞれ固定するように構成するものとすることができる。すなわち、第二内歯車6はOFF時連結部位、キャリア7はON時連結部位である。これにより、サーボモータ用クラッチ機構1が釈放の場合は第二内歯車6の固定(キャリア7の解放)がなされて減速機2が有効に作用し、上述の低速回転高トルクモードでの運転がなされ、一方、サーボモータ用クラッチ機構1が吸引の場合はキャリア7の固定(第二内歯車6の解放)がなされて減速機2の減速作用が無効となり、上述の高速回転低トルクモードでの運転がなされる。なお、サーボモータ用クラッチ機構1の釈放―吸引と固定対象のパターンを逆にした場合も、本発明の範囲内である。
【0030】
なお、本可変トルクモータ10の減速機である不思議遊星歯車機構2の遊星歯車4は、第一内歯車5に噛み合う第一遊星歯車と、第二内歯車6に噛み合う第二遊星歯車とが一体構造となっている二段遊星歯車である。すなわち、太陽歯車3が第二遊星歯車4bを回し、その回転を受けて、一体部品となっている第一遊星歯車4aが回転することで、第一内歯車5が回転する。
【0031】
また、本発明可変トルクモータ10のサーボモータ用クラッチ機構1は無励磁作動型とすることができる。従来、停電などによる高速回転時の緊急停止対応としては、無励磁作動型ブレーキを用いることが一般的である。しかし、本可変トルクモータ10の電磁クラッチ1を無励磁作動型とすることにより、停電時にはサーボモータ用クラッチ機構1が釈放される等してクラッチアーマチュア1wが第二内歯車6に接触してこれを固定し、モータ本体9のモータ軸8は減速機2と接続することになる。すなわちモータ軸8の回転は減速機2による減速作用を受け、モータコギングトルクを利用して停止させることが可能となる。なお、出力軸11の停止トルクは、モータコギングトルクの減速比倍となる。
【0032】
したがって本可変トルクモータ10は、無励磁作動型ブレーキを用いなくても緊急停止することが可能なのであり、上述のいずれかの構成に加えて無励磁作動型ブレーキが備えられていないことをも特徴として付加することができる。なお、クラッチを無励磁作動型とする場合、停電時にはクラッチが吸引される等して第二内歯車6を解放し、減速機構を無効とする作動方式も可能である。この場合、出力軸11の停止トルクはモータコギングトルクのみとなる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のサーボモータ用クラッチ機構によれば、サーボモータを大型化することなく、高速回転低トルク/低速回転高トルクという二種類の出力など、一台のサーボモータにおいてそれぞれ別の出力を行う動作対象への切り替えを行うことができる。したがって、産業用モータを初めとするモータ製造・使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0034】
1…サーボモータ用クラッチ機構
1w…クラッチアーマチュア(クラッチ作用部)
2…減速機(不思議遊星歯車機構)
3…太陽歯車
4…遊星歯車(二段遊星歯車)
5…第一内歯車
6…第二内歯車
7…キャリア
8…モータ軸
9…モータ本体
10…可変トルクモータ
11…出力軸
12…トルク可変構造
20、25…クラッチアーマチュア
30、35…ON時連結部位
40…ON時出力機構
50、55…OFF時連結部位
60…OFF時出力機構
70…コイル
80…モータ軸
100…サーボモータ用クラッチ機構
Rs…レゾルバ(回転検出器)
図1
図1-2】
図2
図3
図4