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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083868
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/32 20060101AFI20220530BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20220530BHJP
   F16H 63/38 20060101ALI20220530BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20220530BHJP
   F16H 63/48 20060101ALI20220530BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F16H61/32
F16H63/34
F16H63/38
F16H61/00
F16H63/48
B60T1/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195449
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 貢
(72)【発明者】
【氏名】中井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 規臣
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 将宏
【テーマコード(参考)】
3J067
3J552
【Fターム(参考)】
3J067AA21
3J067AB23
3J067DA31
3J067DA43
3J067DB08
3J067DB09
3J067DB32
3J067EA75
3J067FA04
3J067FA24
3J067FA57
3J067FB45
3J067FB78
3J067FB83
3J067GA01
3J552NA01
3J552PA67
3J552QA30A
3J552QB07
3J552QC07
(57)【要約】
【課題】オイルポンプとパーキングロック機構との間で駆動源の共用化を図りつつ、パーキングロック機構を作動させるための回転トルクを効率的に確保する。
【解決手段】モータと、第1回転軸部材と、第1回転軸部材に接続される第1ワンウェイクラッチと、モータの第1回転方向の回転に応じて作動するように第1回転軸部材に第1ワンウェイクラッチを介して接続されるオイルポンプと、第1回転軸部材に対して径方向にオフセットした第2回転軸部材と、第1回転軸部材と第2回転軸部材の間に設けられる減速機構と、モータの第2回転方向の回転に応じて第2回転軸部材が回転するように、第2回転軸部材に接続される第2ワンウェイクラッチと、第2回転軸部材に設けられパーキングロック機構を駆動する機構駆動部材とを含み、機構駆動部材は、軸方向で減速機構を挟んでオイルポンプの反対側に配置される、車両用駆動装置が開示される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの軸方向に沿って延在し、前記モータの回転を出力する第1回転軸部材と、
前記第1回転軸部材に接続される第1ワンウェイクラッチと、
前記モータの第1回転方向の回転に応じて作動するように前記第1回転軸部材に前記第1ワンウェイクラッチを介して接続されるオイルポンプと、
前記第1回転軸部材に対して径方向にオフセットした第2回転軸部材と、
前記第1回転軸部材と前記第2回転軸部材の間に設けられ、前記モータの回転を減速して前記第2回転軸部材に伝達する減速機構と、
前記モータの前記第1回転方向とは逆の第2回転方向の回転に応じて前記第2回転軸部材が回転するように、前記第2回転軸部材に接続される第2ワンウェイクラッチと、
前記第2回転軸部材と一体的に回転するように前記第2回転軸部材に設けられ、パーキングロック機構を駆動する機構駆動部材とを含み、
前記機構駆動部材は、前記モータの軸方向で、前記減速機構を挟んで前記オイルポンプの反対側に配置される、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記機構駆動部材の回転角度を検出する回転センサと、
前記回転センサのセンサ素子からのセンサ信号に基づいて、前記モータを制御する制御装置とを更に含み、
前記制御装置は、前記モータの軸方向で、前記モータを挟んで前記オイルポンプの反対側に配置され、
前記センサ素子は、前記制御装置の筐体内に収容され又は前記筐体に支持される、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第2回転軸部材は、前記第2ワンウェイクラッチの両側で、両端部が軸受により支持される、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記減速機構は、前記第2回転軸部材の軸方向に直交する方向に視て、前記第2ワンウェイクラッチに重なるように配置される、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第2回転軸部材に設けられ、前記パーキングロック機構の作動位置と非作動位置に関連した凹凸部を有し、前記機構駆動部材の回転に対して機能するディテント機構を更に含む、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一のモータにオイルポンプとパーキングロック機構とを接続することで、オイルポンプとパーキングロック機構の駆動源の共用化を図る技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-169907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、モータの回転が減速されずにパーキングロック機構に伝達されるので、パーキングロック機構を作動させるための回転トルクを効率的に確保することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、オイルポンプとパーキングロック機構との間で駆動源の共用化を図りつつ、パーキングロック機構を作動させるための回転トルクを効率的に確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、モータと、
前記モータの軸方向に沿って延在し、前記モータの回転を出力する第1回転軸部材と、
前記第1回転軸部材に接続される第1ワンウェイクラッチと、
前記モータの第1回転方向の回転に応じて作動するように前記第1回転軸部材に前記第1ワンウェイクラッチを介して接続されるオイルポンプと、
前記第1回転軸部材に対して径方向にオフセットした第2回転軸部材と、
前記第1回転軸部材と前記第2回転軸部材の間に設けられ、前記モータの回転を減速して前記第2回転軸部材に伝達する減速機構と、
前記モータの前記第1回転方向とは逆の第2回転方向の回転に応じて前記第2回転軸部材が回転するように、前記第2回転軸部材に接続される第2ワンウェイクラッチと、
前記第2回転軸部材と一体的に回転するように前記第2回転軸部材に設けられ、パーキングロック機構を駆動する機構駆動部材とを含み、
前記機構駆動部材は、前記モータの軸方向で、前記減速機構を挟んで前記オイルポンプの反対側に配置される、車両用駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、オイルポンプとパーキングロック機構との間で駆動源の共用化を図りつつ、パーキングロック機構を作動させるための回転トルクを効率的に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両駆動システムのスケルトン図である。
図2】パーキングロック機構の構成の概略を作動状態において示す構成図である。
図3】パーキングロック機構の構成の概略を非作動状態において示す構成図である。
図4】本実施例による車両用駆動装置のスケルトン図である。
図5】本実施例による車両用駆動装置の断面図である。
図6図5のラインA-Aに沿った平面による車両用駆動装置の断面図である。
図7A】係合部材の係合状態における図5のラインB-Bに沿った平面による車両用駆動装置の断面図である。
図7B】係合部材の非係合状態における図5のラインB-Bに沿った平面による車両用駆動装置の断面図である。
図8】車両駆動システムの各要素の位置関係(配置)を概略的に示す図である。
図9】車両用駆動装置の動作例を示す概略フローチャートである。
図10】他の実施例による車両用駆動装置のスケルトン図である。
図11】更なる他の実施例による車両用駆動装置のスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
まず、本実施例による車両用駆動装置が適用されるのが好適な車両駆動システムの一例を概説し、ついで、本実施例による車両用駆動装置が適用されるのが好適なパーキングロック機構の一例を概説してから、本実施例による車両用駆動装置について詳説する。
【0011】
図1は、車両駆動システム100のスケルトン図である。
【0012】
図1に示す例では、車両駆動システム100は、車輪Wの駆動源となる回転電機MGと、回転電機MGと車輪Wとを動力伝達可能に接続する駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、入力部材2と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構6と、左右の出力部材66、68と、を備える。
【0013】
入力部材2は、入力軸2aと、入力ギヤ2bとを有する。入力軸2aは、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ2bは、回転電機MGからの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ2bは、入力部材2の入力軸2aと一体的に回転するように、入力部材2の入力軸2aに連結される。
【0014】
カウンタギヤ機構4は、入力部材2と差動歯車機構6との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸4aと、第1カウンタギヤ4bと、第2カウンタギヤ4cとを有する。
【0015】
カウンタ軸4aは、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ4bは、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ4bは、入力部材2の入力ギヤ2bと噛み合う。第1カウンタギヤ4bは、カウンタ軸4aと一体的に回転するように、カウンタ軸4aに連結される。
【0016】
第2カウンタギヤ4cは、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ4cは、第1カウンタギヤ4bよりも小径に形成される。第2カウンタギヤ4cは、カウンタ軸4aと一体的に回転するように、カウンタ軸4aに連結される。
【0017】
差動歯車機構6は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構6は、回転電機MGの側から伝達される駆動力を、左右の出力部材66、68に分配する。差動歯車機構6は、差動入力ギヤ61を備え、差動入力ギヤ61は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ4cと噛み合う。また、差動歯車機構6は、差動ケース62を備え、差動ケース62内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材66、68と一体的に回転するように連結される。
【0018】
左右の出力部材66、68のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材66、68のそれぞれは、差動歯車機構6によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、左右の出力部材66、68は、2部材以上で構成されてもよい。
【0019】
図1に示す車両駆動システム100において、カウンタギヤ機構4の第1カウンタギヤ4bの近傍には、後述するパーキングギヤ31が配置されている。パーキングギヤ31は、カウンタ軸4aと一体的に回転するように、カウンタ軸4aに連結される。そして、パーキングギヤ31には、後述するパーキングロック機構30(図2及び図3参照)が接続される。なお、変形例では、パーキングギヤ31(及びそれに伴いパーキングロック機構30)は、駆動伝達機構7における他の位置に設けられてもよい。
【0020】
なお、ここでは、図1を参照して、本実施例による車両用駆動装置8が適用されるのが好適な特定の構造の車両駆動システム100について説明したが、本実施例による車両用駆動装置8が適用可能な車両駆動システムは、かかる特定の構造に限られず、パーキングギヤ31が配置可能な多様な車両駆動システムに適用可能である。例えば、車両駆動システム100は、カウンタギヤ機構4に代えて又は加えて、他の構造の減速機構(例えば遊星歯車機構)を備えてもよいし、減速機構が省略されてもよい。
【0021】
図2及び図3は、パーキングロック機構30の構成の概略を示す構成図である。図2は、パーキングロック状態の様子を示し、図3は、パーキングロック解除状態の様子を示す。図2及び図3には、Y方向と、Y方向に沿ったY1側及びY2側が定義され、また、Z方向と、Z方向に沿ったZ1側及びZ2側が定義されている。Y方向は、後述するパーキングロッド33の軸方向に対応する。Z方向は、後述するカム機構50の従動部材53の軸方向に対応する。
【0022】
パーキングロック機構30は、図2及び図3に示すように、パーキングギヤ31に加えて、パーキングポール32、パーキングロッド33、カム部材34、支持ローラ35、カムスプリング36、及びディテントレバー38を備える。
【0023】
パーキングギヤ31は、上述したように第1カウンタギヤ4bの近傍で、カウンタ軸4aと一体的に回転するように、カウンタ軸4aに連結される。パーキングギヤ31は、外周に複数の歯31aを有する。パーキングポール32は、パーキングギヤ31と係合可能な突部32aを有する。また、パーキングポール32は、スプリング32bによりパーキングギヤ31から離間するように付勢されている。パーキングロッド33は、その軸方向(Y方向)に沿って往復移動可能に設けられ、基端部(図2図3におけるY2側の端部)がディテントレバー38に回転可能に連結されている。カム部材34は、筒状に形成されており、パーキングロッド33の軸方向に移動可能にパーキングロッド33が挿通されている。支持ローラ35は、例えば車両駆動システム100のケース101(図8参照)に回転可能に支持され、パーキングポール32と共にカム部材34を挟持する。カムスプリング36は、パーキングロッド33により一端部が支持されると共にパーキングポール32をパーキングギヤ31に押し付けるようにカム部材34を付勢する。
【0024】
ディテントレバー38は、略L字状に形成されており、基部381と第1遊端部382と第2遊端部383とを有する。基部381は、第1遊端部382及び第2遊端部383の基部(コーナー部)であり、例えば車両駆動システム100のケース101(図8参照)に取り付けられたシャフト386により回動可能に支持されている。第1遊端部382は、パーキングロッド33の基端部(図2図3におけるY2側の端部)に回転可能に連結されている。第2遊端部383の外周には、後述するカム機構50の従動部材53の一端面(図2図3におけるZ1側の端面)と当接する当接面383aが形成されている。
【0025】
このようなパーキングロック機構30では、図2に示すように、パーキングポール32の突部32aがパーキングギヤ31の隣り合う2つの歯31aの間の凹部に係合するときは、カウンタ軸4aがロックされる。すなわち、カウンタ軸4aの回転がロックされたパーキングロック状態(作動状態)が実現される。また、図3に示すように、パーキングポール32の突部32aがパーキングギヤ31の隣り合う2つの歯31aの間の凹部に係合しないときは、カウンタ軸4aが回転可能である。このとき、カウンタ軸4aの回転のロックが解除されたパーキングロック解除状態(非作動状態)が実現される。
【0026】
このようなパーキングロック機構30は、モータ9を介してカム機構50により駆動される。
【0027】
カム機構50は、カム51と、カム51の回転に伴って往復動する従動部材53とを有する。
【0028】
カム51は、カム回転軸50aと一体的に回転するように、カム回転軸50aに連結される。なお、本実施例では、後述するように、カム回転軸50aは、第2回転軸部材83により実現される。
【0029】
カム51は、カム回転軸50aを基準とした外周面までの径方向の長さが、カム回転軸50aまわりの周方向に沿って周期的に変化する。カム51は、例えば円形の形態であり、カム回転軸50aに対して偏心して設けられてもよい。本実施例では、一例として、カム51は、非円形の形態であり、カム回転軸50aを基準とした外周面までの径方向の長さが最も小さいカム小径部511と、カム回転軸50aを基準とした外周面までの径方向の長さが最も長いカム大径部512とを有する。カム小径部511とカム大径部512とは、対角関係に位置し、180度ずれた位相に設定される。なお、変形例では、カム小径部511とカム大径部512は、90度ごとのような、他の角度ごとに交互に形成されてもよい。本実施例では、カム51は、後述する車両用駆動装置8の構成要素として機能する。
【0030】
従動部材53は、円柱状に形成され、一端面がディテントレバー38の第2遊端部383の当接面383aに当接するとともに他端面がカム51の外周面に当接する。この従動部材53は、その軸方向(図2及び図3におけるZ方向)に沿って移動可能に図示しない支持部材により支持されており、かつ、図示しないスプリングによりカム回転軸50a側(図2図3におけるZ2側)に付勢されている。
【0031】
従動部材53は、カム51がカム回転軸50aと共に回転することに伴って、その軸方向(図2及び図3におけるZ方向)に沿って移動する。具体的には、従動部材53は、図2に示すように、カム51のカム小径部511にZ方向で当接するときは、最もZ2側に位置する。また、従動部材53は、図3に示すように、カム51のカム大径部512にZ方向で当接するときは、最もZ1側に位置する。
【0032】
図3に示すパーキングロック解除状態(非作動状態)からカム回転軸50aの回転(及びそれに伴うカム51の回転)により従動部材53が最もZ2側に移動されると、図2に示すパーキングロック状態(作動状態)が実現される。具体的には、従動部材53のZ2側への移動に伴って、ディテントレバー38が図3に示す状態から反時計回りに回動し、パーキングロッド33が図3におけるY1側に移動し、カムスプリング36により付勢されたカム部材34によりパーキングポール32がパーキングギヤ31と係合するように押圧され、パーキングポール32の突部32aが図2に示すようにパーキングギヤ31の隣り合う2つの歯31aの間の凹部に係合する。
【0033】
また、図2に示すパーキングロック状態(作動状態)からカム回転軸50aの回転(及びそれに伴うカム51の回転)により従動部材53が最もZ1側に移動されると、図3に示すパーキングロック解除状態(非作動状態)が実現される。具体的には、従動部材53のZ1側への移動に伴って、ディテントレバー38が図2に示す状態から時計回りに回動し、パーキングロッド33が図2におけるY2側に移動し、カム部材34によるパーキングポール32の押圧が解除され、パーキングポール32の突部32aが図3に示すようにパーキングギヤ31の隣り合う2つの歯31aの間の凹部から離間する。
【0034】
このようにして、本実施例では、カム回転軸50aの回転に伴ってカム機構50によりパーキングロック機構30が駆動される。
【0035】
なお、ここでは、図2及び図3を参照して、本実施例による車両用駆動装置8が適用されるのが好適な特定の構造のパーキングロック機構30について説明したが、本実施例による車両用駆動装置8が適用可能なパーキングロック機構は、かかる特定の構造に限られず、カム回転軸50aの一方向の回転に伴って作動状態と非作動状態の切り替えを実現できる構成であれば、多様なパーキングロック機構に適用可能である。例えば、図2及び図3に示す例では、パーキングロッド33は、Y方向に往復動するが、パーキングロッド33は、パーキングギヤ31の回転軸である第2軸A2に沿って往復動するように配置されてもよい。
【0036】
次に、図4以降を参照して、上述した車両駆動システム100及びパーキングロック機構30と共に機能することが好適な、本実施例による車両用駆動装置8を説明する。
【0037】
図4は、本実施例による車両用駆動装置8のスケルトン図である。図5は、本実施例による車両用駆動装置8の断面図であって、モータ9の中心軸A4を通る平面による断面図である。図4及び図5には、X方向と、X方向に沿ったX1側及びX2側が定義されている。X方向は、モータ9の中心軸A4に沿った方向(すなわちモータ9の軸方向)に対応する。図6は、図5のラインA-Aに沿った平面による車両用駆動装置8の断面図であり、車両用駆動装置8におけるカム51の説明図である。図7A及び図7Bは、図5のラインB-Bに沿った平面による車両用駆動装置8の断面図であり、ディテント機構86の説明図である。
【0038】
以下の説明では、各回転要素について、車両用駆動装置8を図4のX2側から見たときの時計回り、反時計回りの回転をそれぞれ正回転(第1回転方向の回転)、逆回転(第2回転方向の回転)という。また、以下では、径方向、軸方向、及び周方向の各方向は、特に言及しない限り、中心軸A4や中心軸A5を基準とした方向である。
【0039】
車両用駆動装置8は、図4及び図5に示すように、ケース80内に、モータ9と、オイルポンプ10と、第1ワンウェイクラッチ81と、第2ワンウェイクラッチ82と、第2回転軸部材83と、減速機構85と、ディテント機構86と、上述したカム機構50のカム51とを含む。
【0040】
ケース80は、複数のケース部材により形成されてよい。図5に示す例では、ケース80は、軸方向等に複数に分割されており、主に、オイルポンプ10を支持する第1ケース801と、ベアリング926やポンプ駆動軸11を支持する第2ケース802と、ベアリング921や減速機構85を支持する第3ケース803と、モータ9を支持する第4ケース804と、電子制御ユニット48を支持(収容)する第5ケース805と、ベアリング924やディテント機構86を支持する第6ケース806とを含む。
【0041】
モータ9は、ロータ91と、ステータ92とを備える。ロータ91は、ロータコア911と、ロータシャフトを形成する第1回転軸部材912とを備える。モータ9は、電子制御ユニット48により駆動制御され、第1回転軸部材912を回転させる。第1回転軸部材912は、中心軸A4に沿って延在する。第1回転軸部材912は、ベアリング920、921によりケース80に回転可能に支持される。
【0042】
なお、図5に示す例では、第1回転軸部材912は、X1側の端部が第1ワンウェイクラッチ81まで延在するが、第1回転軸部材912は、より短い軸部材であってもよく、この場合、X1側の端部が、第1ワンウェイクラッチ81まで延在する他の軸部材に同軸に連結されてよい。
【0043】
オイルポンプ10は、電動式であり、モータ9により駆動される。オイルポンプ10は、作動時、例えば車両駆動システム100のケース101(図8参照)の下部の油溜まりから油を吸入し、油を吐出する。オイルポンプ10から吐出される油は、各種の冷却や潤滑に供されてよい。例えば、オイルポンプ10から吐出される油は、回転電機MG等の冷却や潤滑に供されてよい。
【0044】
オイルポンプ10は、中心軸A4に対して同心状に配置されるポンプ駆動軸11を有する。ポンプ駆動軸11は、ブッシュ72を介してケース80(図5では、第2ケース802)に回転可能に支持される。オイルポンプ10は、例えば、ギヤポンプやベーンポンプ等であってよい。本実施例では、オイルポンプ10は、ギヤポンプであり、インナギヤ10aがポンプ駆動軸11と一体的に回転するように、ポンプ駆動軸11に連結される。
【0045】
第1ワンウェイクラッチ81は、モータ9からオイルポンプ10までの動力伝達経路(以下、区別のために「第1動力伝達経路」と称する)に設けられる。第1ワンウェイクラッチ81は、第1動力伝達経路上における第1回転軸部材912とポンプ駆動軸11との間に設けられる。第1ワンウェイクラッチ81は、内輪側が第1回転軸部材912のX1側端部に接続され、外輪側がポンプ駆動軸11に接続される。なお、変形例では、第1ワンウェイクラッチ81は、上述したように、第1回転軸部材912に他の軸部材(第1回転軸部材912と一体回転する、第1回転軸部材912と同心の軸部材)を介して接続されてもよい。
【0046】
第1ワンウェイクラッチ81は、モータ9が正回転して第1回転軸部材912が正回転するときには、その回転をポンプ駆動軸11及びそれに伴いオイルポンプ10に伝達するが、モータ9が逆回転して第1回転軸部材912が逆回転するときには、その回転をオイルポンプ10側に伝達しない。
【0047】
第2ワンウェイクラッチ82は、モータ9からパーキングロック機構30までの動力伝達経路(以下、区別のために「第2動力伝達経路」と称する)に設けられる。第2ワンウェイクラッチ82は、第2動力伝達経路上における第1回転軸部材912と第2回転軸部材83との間に設けられる。本実施例では、第2ワンウェイクラッチ82は、第2動力伝達経路上における減速機構85と第2回転軸部材83との間に設けられる。第2ワンウェイクラッチ82は、内輪側が第2回転軸部材83に接続され、外輪側が減速機構85に接続される。
【0048】
第2ワンウェイクラッチ82は、モータ9が逆回転して第1回転軸部材912が逆回転するときには、その回転を減速機構85を介して、第2回転軸部材83及びそれに伴いパーキングロック機構30に伝達するが、モータ9が正回転して第1回転軸部材912が正回転するときには、その回転を第2回転軸部材83側に伝達しない。
【0049】
本実施例では、第2ワンウェイクラッチ82は、径方向に視て、減速機構85に重なる態様で、第2回転軸部材83に対して同軸に設けられる。これにより、後述するように第2ワンウェイクラッチ82の径方向外側で減速機構85に接続できるので、中心軸A5を中心として回転する部材を、第2ワンウェイクラッチ82の径方向内側を通る第2回転軸部材83の一部材により構成することが可能となり、部品点数の低減を図ることができる。
【0050】
第2回転軸部材83は、第1回転軸部材912の中心軸A4に対して平行な中心軸A5に沿って延在する。また、第2回転軸部材83は、第1回転軸部材912に対して径方向にオフセットする。
【0051】
第2回転軸部材83は、第2ワンウェイクラッチ82の両側(X1側及びX2側)で、ケース80に支持される。具体的には、第2回転軸部材83は、第2ワンウェイクラッチ82の内輪側を軸方向に貫通する態様で延在し、両端部がベアリング926、924を介して回転可能にケース80に支持される。これにより、第2回転軸部材83が両端部以外でベアリングを介して支持される場合に比べて、第2回転軸部材83の回転安定性を高めることができる。
【0052】
第2回転軸部材83には、後述するディテント機構86の凹凸部861が設けられる。凹凸部861は、後述するようにディテント機構86の係合部材862が係合可能な係合溝8611を備える。凹凸部861の更なる詳細は、ディテント機構86に関連して後述する。
【0053】
また、第2回転軸部材83には、回転センサ40の被検出部41が設けられる。回転センサ40は、例えば、ホール素子や磁気抵抗型素子のようなセンサ素子42を用いるロータリーエンコーダであってよい。本実施例では、被検出部41は、軸方向で、第2回転軸部材83の拡径部831にX1側から隣接して設けられる。これにより、被検出部41に係る軸方向の位置決めが容易となる。なお、回転センサ40のセンサ素子42がホール素子である場合、被検出部41は、第2回転軸部材83の外周部に設けられる永久磁石により実現されてよい。この場合、永久磁石は、第2回転軸部材83の外周部の磁極が周方向に沿って周期的に変化するように配置され、センサ素子42は、径方向に被検出部41に対向する態様で、中心軸A5まわりに、等間隔(120度ごと)に3つ配置されてよい。被検出部41は、第2回転軸部材83に取り付けられるリング状の形態であってもよい。
【0054】
第2回転軸部材83は、好ましくは、軸方向でモータ9よりもX2側に、被検出部41を有する。この場合、図5に示すように、センサ素子42を第5ケース805(電子制御ユニット48を収容するケース)に収容できる。例えば、センサ素子42は、電子制御ユニット48を形成する各種電子部品(例えばマイコン等)が実装される基板481上に実装されてもよい。この場合、センサ素子42は、第5ケース805の開口部8051(又は窓部)を介して、被検出部41に径方向(中心軸A5に係る径方向)で対向するように配置されてよい。これにより、センサ素子42を第5ケース805により保護できるとともに、センサ素子42から電子制御ユニット48までの配線長を最小化できる。なお、変形例では、センサ素子42は、第5ケース805自体に支持されてもよい。この場合も、センサ素子42から電子制御ユニット48までの配線長を最小化できる。
【0055】
また、第2回転軸部材83には、カム51が取り付けられる。すなわち、第2回転軸部材83は、上述したカム回転軸50aを形成する。本実施例では、カム51は、軸方向で、第2回転軸部材83の拡径部831にX2側から隣接して設けられる。すなわち、カム51は、軸方向で拡径部831を挟んで被検出部41と反対側に設けられる。これにより、カム51に係る軸方向の位置決めが容易となる。このようにして、第2回転軸部材83にカム51を取り付けることで、カム51をケース80内に配置できる。この場合、ケース80(例えば第6ケース806)には、カム機構50の従動部材53が挿通する孔8061が形成されてよい。この場合、従動部材53は、孔8061を介してケース80内で、その軸方向(図6の軸I1参照)に沿って移動できる。
【0056】
なお、カム51は、好ましくは、第5ケース805における凹部8052に径方向に対向する。凹部8052は、中心軸A5から離れる方向に凹む形態である。これにより、カム51のカム大径部512の大径化が可能となり、カム51のカム小径部511の外径と、カム51のカム大径部512の外径との差を効率的に大きくすることができる。例えば凹部8052が形成されない場合に比べて、カム51のカム小径部511の外径と、カム51のカム大径部512の外径との差を効率的に大きくすることができる。これにより、パーキングロック機構30の動作量(例えばディテントレバー38の回転量、パーキングロッド33のストローク量等)を効率的に増加でき、パーキングロック機構30の動作の安定性や信頼性を高めることができる。
【0057】
なお、図5に示す例では、同様の観点から、第2回転軸部材83は、カム51が取り付けられる部分の外径が、後述するリング状部材834が取り付けられる部分の外径よりも小さい。この場合、カム51のカム小径部511は、後述するディテント機構86の係合溝8611と中心軸A5からの径方向の距離が略同じである。これにより、カム51のカム小径部511の外径と、カム51のカム大径部512の外径との差を大きくすることができる。
【0058】
本実施例では、第2回転軸部材83には、軸方向で減速機構85よりもX2側にカム51が取り付けられる。すなわち、カム51は、軸方向で、減速機構85を挟んでオイルポンプ10の反対側に配置される。これにより、パーキングロック機構30の搭載性が良好となる。この効果については、図8を参照して後述する。
【0059】
減速機構85は、第2動力伝達経路上における第1回転軸部材912と第2回転軸部材83との間に設けられる。本実施例では、減速機構85は、第2動力伝達経路上における第1回転軸部材912と第2ワンウェイクラッチ82との間に設けられる。
【0060】
減速機構85は、第2ワンウェイクラッチ82とともに、軸方向で、モータ9と第1ワンウェイクラッチ81との間に配置される。本実施例では、減速機構85及び第2ワンウェイクラッチ82は、軸方向で、第1ワンウェイクラッチ81とベアリング921の間に配置される。
【0061】
減速機構85は、カウンタギヤ機構や遊星歯車機構等の任意の構成であってよい。本実施例では、減速機構85は、第1回転軸部材912まわりの第1ギヤ851と、アイドラギヤ852と、第2回転軸部材83まわりの第2ギヤ853とを含む。
【0062】
第1ギヤ851は、中心軸A4を回転中心として回転する。第1ギヤ851は、第1回転軸部材912と一体的に回転するように、第1回転軸部材912に連結される。
【0063】
アイドラギヤ852は、第1ギヤ851と第2ギヤ853との間に設けられる。アイドラギヤ852は、ケース80(図5では、第2ケース802及び第3ケース803)に、回転軸A6を中心として回転可能に支持される。アイドラギヤ852の外周部の歯852aは、径方向両側で第1ギヤ851の歯と第2ギヤ853の歯853aにそれぞれ噛み合う。
【0064】
第2ギヤ853は、中心軸A5を回転中心として回転可能となる態様で、第2ワンウェイクラッチ82を介して第2回転軸部材83に接続される。第2ギヤ853は、第2ワンウェイクラッチ82の外輪と一体的に回転するように、第2ワンウェイクラッチ82に接続される。
【0065】
このような減速機構85によれば、モータ9の回転を減速して第2回転軸部材83へと伝達でき、第2回転軸部材83(カム回転軸50a)に取り付けられたカム51の回転トルクを効率的に高めることができる。
【0066】
ところで、例えば比較的急な勾配の路上等において車両が停止した状態で、パーキングロック状態からパーキングロック解除状態へと切り替える場合(すなわちパーキングロック機構30の作動状態から非作動状態へと切り替える場合)等、当該切り替えに要するカム51の回転トルクが比較的大きくなりやすい。パーキングギヤ31とパーキングポール32との間に比較的大きい負荷が発生しているためである。
【0067】
この点、例えばモータ9の回転を減速せずにダイレクトにパーキングロック機構30に伝達する比較例(図示せず、例えば特許文献1に記載の構成)では、パーキングロック状態からパーキングロック解除状態への切り替えに要する比較的高い回転トルクを発生させるために、モータ9に過大な能力(例えば、オイルポンプ10を適切に駆動できる最小限の能力を有意に超えた能力)を付与する必要性が生じる。
【0068】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、モータ9の回転を減速してパーキングロック機構30に伝達できるので、かかる比較例で生じる不都合を防止できる。すなわち、本実施例によれば、モータ9に過大な能力を付与することなく、パーキングロック状態からパーキングロック解除状態への切り替えに要する比較的高い回転トルクを発生できる。
【0069】
ディテント機構86は、カム51の回転に対して機能する。具体的には、ディテント機構86は、パーキングロック機構30の作動位置に対応したカム51の回転位置を作動回転位置とし、パーキングロック機構30の非作動位置に対応したカム51の回転位置を非作動回転位置としたとき、カム51の作動回転位置及び非作動回転位置が実現されやすくかつ保持されやすくする機能を有する。
【0070】
本実施例では、ディテント機構86は、凹凸部861と、係合部材862と、スプリング863とを含む。
【0071】
凹凸部861は、図7A及び図7Bに示すように、第2回転軸部材83に設けられる。これにより、ケース80内にディテント機構86を設けることができ、効率的な構成を実現できる。
【0072】
具体的には、凹凸部861は、第2回転軸部材83に一体に取り付けられるリング状部材834の外周面に形成される。凹凸部861は、係合溝(ディテント溝)8611を含む。係合溝8611は、中心軸A5まわりで、カム51のカム小径部511とカム大径部512との関係に対応して、180度ずれた位相に設定される。すなわち、係合溝8611は、中心軸A5まわりで、180度ごとに合計2か所に設けられる。
【0073】
係合部材862は、リング状部材834の外周面に径方向に対向して設けられる。係合部材862は、径方向に対向するリング状部材834の外周面における凹凸部861に応じて中心軸A5に係る径方向に移動可能である。係合部材862の先端部8621(径方向内側の端部)は、係合溝8611に嵌まるように形状付けられる。
【0074】
スプリング863は、係合部材862をリング状部材834の外周面に向けて径方向内側に付勢する。スプリング863は、例えばコイルスプリングの形態であり、その中心軸I2が、中心軸A5に係る径方向に一致するように配置される。スプリング863は、径方向外側の端部がケース80(図5では、第6ケース806)に支持され、かつ、径方向内側の端部が係合部材862に対して中心軸A5に係る径方向に当接する。
【0075】
スプリング863の付勢力は、図7Aに示す係合部材862が係合溝8611に嵌まった係合状態(以下、単に「係合部材862の係合状態」と称する)では、当該係合部材862の係合状態を保持するように機能する。また、スプリング863の付勢力は、係合部材862を係合溝8611に引き込むように機能する。すなわち、スプリング863は、係合部材862の非係合状態から係合状態への容易な遷移(及びそれに対応する第2回転軸部材83の容易な回転)を促進する一方で、係合状態から非係合状態への容易な遷移(及びそれに対応する第2回転軸部材83の容易な回転)を阻害する機能を有する。なお、図7Bには、図7Aに示す係合部材862の係合状態から第2回転軸部材83が90度だけ回転したときの、係合部材862の非係合状態が示されている。また、図5には、係合部材862の係合状態と非係合状態とがそれぞれラインB-Bの両側に分けて示されている。
【0076】
このようなディテント機構86は、カム機構50のカム51とともに、第2回転軸部材83の回転に応じて動作する。すなわち、第2回転軸部材83が回転すると、カム51の作動回転位置と非作動回転位置とが180度ごとに交互に発生するとともに、係合部材862の係合状態が180度ごとに発生する。このとき、ディテント機構86及びカム51は、カム51の作動回転位置と非作動回転位置のそれぞれに合わせて係合部材862の係合状態が実現されるように、互いに対して関連付けられる。すなわち、係合溝8611は、中心軸A5まわりで、カム51の作動回転位置に対応した回転位置と、カム51の非作動回転位置に対応した回転位置とに、それぞれ設けられる。これにより、作動回転位置と非作動回転位置のそれぞれでのカム51の位置安定性を高めることができる。また、上述したスプリング863の付勢力とも関連して、作動回転位置と非作動回転位置のそれぞれに向かう容易な回転(及びそれに対応する第2回転軸部材83の容易な回転)が促進されるとともに、作動回転位置と非作動回転位置のそれぞれから離れる容易な回転(及びそれに対応する第2回転軸部材83の容易な回転)が阻害される。
【0077】
なお、図5に示す例では、ディテント機構86は、中心軸A5に係る径方向に視て、モータ9に重なる態様で配置される。しかしながら、ディテント機構86は、中心軸A5に係る軸方向に沿った任意の位置に配置されてもよい。
【0078】
次に、図8を参照して、本実施例の効果の一部(パーキングロック機構30の搭載性の向上)について説明する。
【0079】
図8は、車両駆動システム100の各要素の位置関係(配置)を概略的に示す図である。
【0080】
本実施例では、上述したように、カム51は、軸方向で減速機構85よりもX2側、すなわち、減速機構85を挟んでオイルポンプ10の反対側に配置される。この場合、図8に示すような車両駆動システム100のレイアウトにおいて、パーキングロック機構30の搭載性を効果的に高めることができる。
【0081】
具体的には、図8に示す例では、パーキングギヤ31と回転電機MGとは、X方向で互いに離れた両側に配置されている。すなわち、パーキングギヤ31は、カウンタギヤ機構4の第1カウンタギヤ4bのX2側に隣接して設けられる。この場合、カム51が、減速機構85よりもX1側(すなわちオイルポンプ10と同じ側)に配置されると、カム51とパーキングギヤ31との間に、X方向の有意なオフセットが生じ、パーキングロック機構30を成立させることが難しくなる。
【0082】
これに対して、本実施例によれば、カム51が、減速機構85よりもX2側(すなわちオイルポンプ10とは逆側)に配置されるので、カム51とパーキングギヤ31との間の、X方向の有意なオフセットを無くすことができる。この結果、パーキングロック機構30を容易に成立させることができる。すなわち、パーキングロック機構30の搭載性が良好となる。
【0083】
次に、上述した車両用駆動装置8の動作について概説する。
【0084】
図9は、車両用駆動装置8の動作例を示す概略フローチャートである。なお、車両用駆動装置8は、上述したように電子制御ユニット48により制御される。
【0085】
ステップS900では、電子制御ユニット48は、パーキングロック機構30の作動状態と非作動状態との間の切り替え条件が成立したか否かを判定する。切り替え条件は、任意であるが、例えばユーザ(例えば運転者)による切り替え操作に応じて成立してもよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS902に進み、それ以外の場合は、ステップS904に進む。
【0086】
ステップS902では、電子制御ユニット48は、モータ9を逆回転させることで、パーキングロック機構30の作動状態と非作動状態との間の切り替えを実現する。この場合、電子制御ユニット48は、回転センサ40のセンサ素子42からのセンサ信号に基づいて、パーキングロック機構30の作動状態と非作動状態との間の切り替えを検出すると、モータ9の駆動を停止させてよい。
【0087】
ステップS904では、電子制御ユニット48は、オイルポンプ10の作動条件が成立したか否かを判定する。オイルポンプ10の作動条件は、任意であるが、例えば回転電機MGの動作状態に基づいて設定されてもよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS906に進み、それ以外の場合は、そのまま終了する。
【0088】
ステップS906では、電子制御ユニット48は、モータ9を正回転させることで、オイルポンプ10を駆動する。
【0089】
このようにして図9に示す動作例によれば、パーキングロック機構30とオイルポンプ10とを、モータ9を共通の駆動源として利用して選択的に作動させることができる。これにより、それぞれ別々の駆動源を利用する場合に比べて、効率的な構成を実現できる。
【0090】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0091】
例えば、上述した実施例では、第2ワンウェイクラッチ82は、中心軸A5に係る径方向に視て、減速機構85に重なるように配置されるが、これに限られない。例えば図10に示す他の実施例による車両用駆動装置8Aに示すように、第2ワンウェイクラッチ82は、減速機構85AよりもX2側に配置されてもよい。なお、図10に示す例では、減速機構85Aは、カウンタギヤ機構により形成されている。
【0092】
また、上述した実施例では、第2ワンウェイクラッチ82は、第2回転軸部材83に設けられるが、これに限られない。例えば図11に示す他の実施例による車両用駆動装置8Bに示すように、第2ワンウェイクラッチ82は、第1回転軸部材912に設けられてもよい。すなわち、第2ワンウェイクラッチ82は、第1ワンウェイクラッチ81と並列で第1回転軸部材912に設けられてもよい。この場合、第2ワンウェイクラッチ82は、モータ9の逆回転に応じて第2回転軸部材83が回転するように、減速機構85Bを介して第2回転軸部材83に接続されてよい。なお、図11に示す例では、減速機構85Bは、カウンタギヤ機構により形成されている。
図11に示す例では、第2ワンウェイクラッチ82は、径方向に視て、減速機構85Bに重なる態様で、第2回転軸部材83に対してオフセットした第1回転軸部材912に設けられる。これにより、第2ワンウェイクラッチ82の径方向外側で減速機構85Bに接続できるので、中心軸A5を中心として回転する部材を第2回転軸部材83の一部材により構成することが可能となり、部品点数の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0093】
8・・・車両用駆動装置、9・・・モータ、10・・・オイルポンプ、30・・・パーキングロック機構、40・・・回転センサ、41・・・被検出部、42・・・センサ素子、48・・・電子制御ユニット(制御装置)、51・・・カム(機構駆動部材)、80・・・ケース(筐体)、81・・・第1ワンウェイクラッチ、82・・・第2ワンウェイクラッチ、83・・・第2回転軸部材、85・・・減速機構、86・・・ディテント機構、861・・・凹凸部、912・・・第1回転軸部材、924、926・・・ベアリング(軸受)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11