(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083915
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】アルミニウムフィン材用親水性塗料と親水性塗膜及び親水性に優れたアルミニウムフィン材と熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20220530BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20220530BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20220530BHJP
F28F 17/00 20060101ALI20220530BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20220530BHJP
F28F 19/02 20060101ALI20220530BHJP
F28F 1/30 20060101ALI20220530BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220530BHJP
C09D 201/08 20060101ALI20220530BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220530BHJP
【FI】
F28F1/32 H
F28F13/18 B
F28F21/08 A
F28F17/00 501A
F28F19/04 Z
F28F19/02 501Z
F28F1/30 E
F28F1/32 Y
C09D5/00 Z
C09D201/08
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195552
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 伸一
(72)【発明者】
【氏名】碓井 直人
(72)【発明者】
【氏名】松本 佑也
(72)【発明者】
【氏名】小山 絵梨奈
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 健太
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG011
4J038CG071
4J038CG141
4J038CH031
4J038HA196
4J038HA286
4J038HA456
4J038KA08
4J038KA12
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA09
4J038NA13
4J038PB06
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、親水性塗料、親水性塗膜、該親水性塗膜を備えたアルミニウムフィン材、熱交換器の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の親水性塗料は、炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)と、水とを含有するアルミニウムフィン材用親水性塗料であって、前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、炭酸カルシウム粒子(A)量と前記珪酸塩(B)のSiO
2換算量の合計量で0.3~20質量%含有し、炭酸カルシウム粒子(A)量:珪酸塩(B)のSiO
2換算量の質量比率が10:90~90:10の範囲であり、前記珪酸塩(B)はM
2O・nSiO
2(Mはアルカリ金属、n=1.5~8.0)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)と、水とを含有するアルミニウムフィン材用親水性塗料であって、前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、前記粒子(A)量と前記珪酸塩(B)のSiO2換算量との合計量で0.3~20質量%含有し、前記粒子(A)量:前記珪酸塩(B)のSiO2換算量との質量比率が10:90~90:10の範囲であり、前記珪酸塩(B)はM2O・nSiO2(Mはアルカリ金属、n=1.5~8.0)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするアルミニウムフィン材用親水性塗料。
【請求項2】
前記粒子(A)のメジアン径が0.03μm~10μmであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムフィン材用親水性塗料。
【請求項3】
炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とを含有し、前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、前記粒子(A)量:前記珪酸塩(B)のSiO2換算量の質量比率が10:90~90:10の範囲であり、前記珪酸塩(B)はM2O・nSiO2(Mはアルカリ金属、n=1.5~8.0)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするアルミニウムフィン材用親水性塗膜。
【請求項4】
アルミニウムフィン材表面の一部または全部に請求項3に記載のアルミニウムフィン材用親水性塗膜を備えたことを特徴とするアルミニウムフィン材。
【請求項5】
前記塗膜表面に潤滑性塗膜が形成された請求項4に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のアルミニウムフィン材を備えたことを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムフィン材用親水性塗料と親水性塗膜及び親水性に優れたアルミニウムフィン材と該アルミニウムフィン材を備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムやその合金は軽量でかつ優れた加工性と熱伝導性を有することから、エアコンディショナーの熱交換器用フィン材として広く利用されている。しかし、アルミニウムやその合金の表面の親水性は十分ではなく、エアコンディショナーの運転時に熱交換器のフィン表面に空気中の水分が結露水として付着することがある。この結露水がフィン表面に滞留し、隣接するフィン間にブリッジを形成すると、送風時の抵抗(通風抵抗)が増大し、冷房および暖房能力の低下や室内への水飛びなどの原因となる。
【0003】
これらの問題を回避するため、フィン表面に珪酸塩を中心とした無機系親水性塗膜を形成すること(特許文献1参照)や、親水性の樹脂を用いた樹脂系親水性塗膜を形成すること(特許文献2参照)など、水濡れ性に優れた親水性の表面処理を施すことが実施されている。また、フィン表面に親水性樹脂層を2層設け、表面側の第2親水性樹脂層にTiO2微粒子を分散させたアルミニウムフィン材(特許文献3参照)が知られ、基板上に設けた親水層の上に無機酸化物微粒子と樹脂系潤滑層を備えたアルミニウムフィン材(特許文献4参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3-77440号公報
【特許文献2】特開平9-14888号公報
【特許文献3】特開2012-215347号公報
【特許文献4】特開2010-223520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこれら従来技術の表面処理方法では、初期の親水性は良好であっても、長期間の運転に耐えつつ良好な親水性を維持できる表面とすることができなかった。また、近年の熱交換器においては、APF「通年エネルギー消費効率」の向上、暖房機の市場ニーズ高などから、従来にも増して水濡れ性の良い親水性に優れたアルミニウムフィン材が求められている。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、長期間の運転に耐える良好な親水性を確保することができる親水性塗膜を形成するための親水性塗料および親水性塗膜の提供と、前記親水性塗膜を備えたアルミニウムフィン材の提供、並びに、熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗料は、炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)と、水とを含有するアルミニウムフィン材用親水性塗料であって、前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、前記粒子(A)量と前記珪酸塩(B)のSiO2換算量との合計量で0.3~20質量%含有し、前記粒子(A)量:前記珪酸塩(B)のSiO2換算量との質量比率が10:90~90:10の範囲であり、前記珪酸塩(B)はM2O・nSiO2(Mはアルカリ金属、n=1.5~8.0)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0008】
(2)本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗料において、前記粒子(A)のメジアン径が0.03μm~10μmであることが好ましい。
【0009】
(3)本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗膜は、炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とを含有し、前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、前記粒子(A)量:前記珪酸塩(B)のSiO2換算量の質量比率が10:90~90:10の範囲であり、前記珪酸塩(B)はM2O・nSiO2(Mはアルカリ金属、n=1.5~8.0)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0010】
(4)本形態のアルミニウムフィン材は、表面の一部または全部に(3)に記載のアルミニウムフィン材用親水性塗膜を備えたことを特徴とする。
(5)本形態のアルミニウムフィン材は、前記塗膜表面に潤滑性塗膜が形成されたことが好ましい。
(6)本形態の熱交換器は、(4)または(5)に記載のアルミニウムフィン材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、珪酸塩に対し、望ましい範囲の炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上と特定の水溶性樹脂又はその塩を配合したので、良好な親水性を長期間維持することができ、加工性と耐食性に優れた親水性塗膜を製造可能な親水性塗料を提供できる。
本発明は、上述の親水性塗料の乾燥物である親水性塗膜を備えたアルミニウムフィン材であるので、アルミニウムフィン材表面の良好な親水性を長期間維持することができ、加工性と耐食性に優れた親水性塗膜を備えたアルミニウムフィン材を提供できる。
本発明は、上述のアルミニウムフィン材を備えた熱交換器であるので、長期間使用してもフィン表面において親水性の低下を起こすことが無く、フィン間に水滴が留まることが無く、熱交換効率の低下が生じ難い熱交換器を提供できる。このため、通年エネルギー消費効率の良好な熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本形態に係る親水性塗膜を有するアルミニウムフィンを備えた熱交換器の一例を示す斜視図。
【
図2】本形態に係る親水性塗膜を備えたアルミニウムフィンの一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
【0014】
≪アルミニウムフィン材用親水性塗料≫
本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗料は、炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)と、水とを含有するアルミニウムフィン材用親水性塗料であって、前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、前記粒子(A)量と珪酸塩(B)のSiO2換算量との合計量で0.3~20質量%含有し、前記粒子(A)量:前記珪酸塩(B)のSiO2換算量との質量比率が10:90~90:10の範囲にあることを特徴とする。
尚、本明細書及び本特許請求の範囲にて数値範囲を示す「~」は、特記しない限り、上限値および下限値も包含する。例えば、範囲「X~Y」は、特記しない限り、X以上Y以下であることを意味する。よって、一例として0.3~20質量%は、0.3質量%以上20質量%以下を意味する。
以下、当該処理剤の各成分について詳述する。
【0015】
炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)はメジアン径が0.03μm~10μmであることが好ましい。
炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)が液中に分散されていれば、メジアン径は特に限定されるものではない。メジアン径の下限は特に限定されないが、一般に販売されている炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子の一次粒子径は0.03μm以上であることが多いため、好ましくはメジアン径が0.03μm以上である。炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)は表面修飾されたものであっても良い。
本形態におけるこれら粒子のメジアン径は、一次粒子、二次粒子は問わず(粒子、凝集体を構成する粒子、凝集粒子は問わず)、動的光散乱法により測定した際の累積平均径(Median径)を指す。動的光散乱法による測定機器としては、例えば株式会社堀場製作所製LA-960等が挙げられる。動的散乱法とは、溶液中の粒子の大きさによって動きの速度(ブラウン運動)が異なることを利用し、溶液にレーザー光を照射しその散乱光を光子検出器で観測し、周波数解析することで、粒度分布を得ることができる方法である。本形態における粒子径の測定は以下の条件で行うことができる。
【0016】
(粒子径測定条件)
測定装置:株式会社堀場製作所製LA-960
光源:半導体レーザー650nm、5mW、LED405nm、3mW
光源プローブ:内部プローブ方式
測定サンプルの調整:炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)の固形分濃度が0.01%程度になるよう脱イオン水で希釈した後、良く攪拌分散させた。
測定時間:60秒
循環:あり
粒子透過性:透過
形状:非球形
屈折率:炭酸カルシウムの屈折率:1.60、水酸化マグネシウムの屈折率:1.5617、炭酸マグネシウムの屈折率:1.501、硫酸カルシウムの屈折率:1.521。
溶媒:水
溶媒屈折率:1.333
【0017】
珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(Mはアルカリ金属、n=1.5~8.0)から選ばれる少なくとも1種の珪酸塩である。珪酸塩としては、例えば、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムが挙げられる。
【0018】
水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である水溶性の単重合体又は共重合体であれば特に制限されるものではない。単重合体としては、例えば、フマル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はそれらの塩などの重合物を挙げることができる。共重合体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる2以上のモノマーからなる共重合物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1以上のモノマーと他のモノマーとからなる共重合物が挙げられる。尚、水溶性樹脂は、全部または一部が塩の形態であってもよい。上記水溶性樹脂の酸価の上限は特に制限されるものではないが、3000mgKOH/g以下が好ましく、2000mgKOH/g以下がより好ましく、1100mgKOH/g以下がさらに好ましい。
尚、「水溶性」とは、20℃の水に対して0.1質量%以上溶解することを意味し、溶解性は0.5質量%以上が好ましく、特に1質量%以上がより好ましい。
【0019】
本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗料(以下、単に「親水性塗料」という。)、塗膜、処理方法及び処理されたアルミニウムフィン材や熱交換器について、実施の形態を挙げて更に詳しく説明する。
【0020】
親水性塗料は、水に、炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とをそれぞれ所定量配合することにより調製することができる。なお、親水性塗料は、上記各成分からなるものであってもよいが、上記各成分以外に、本発明の効果を損なわないように、界面活性剤、溶剤、増粘剤等の添加剤をさらに含ませてもよい。
【0021】
界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、両性、ノニオン性等の界面活性剤を用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、ステアリルアミンアセテート、ステアリルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン、アミンオキサイド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル類等が挙げられる。
【0022】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルジメチルベタイン等が挙げられる。その他、イミダゾリン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤等も挙げられる。
【0023】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル;オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー;ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸;ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
アルミニウムフィン材用親水性塗膜(以下、単に「親水性塗膜」という。)は、後述のように、上記親水性塗料をアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板の表面上に塗布し、乾燥させることにより製造することができる。なお、基板に親水性塗膜を形成する場合には、基板の表面に直接形成させてもよいが、基板と親水性塗膜との間に下地処理皮膜を形成することが好ましい。下地処理皮膜は耐食層として基板の表面に形成された皮膜であり、例えば、リン酸クロメート皮膜からなる。リン酸クロメート皮膜は例えばクロム付着量として10~30mg/m2で形成された耐食層であり、その上に被覆される親水性塗膜の密着向上に寄与する。
【0025】
また、基板の表面上に形成した親水性塗膜の上に必要に応じて潤滑剤を塗布することで潤滑性塗膜を形成させてもよい。潤滑性塗膜は例えば、水溶性ポリエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・アルキル・エーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテルなどによって形成することができる。潤滑性塗膜はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板を金型等で目的の形状のアルミニウムフィン材に加工する場合、金型の摩耗を抑制する目的で形成する。
【0026】
≪アルミニウムフィン材≫
アルミニウムフィン材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板上に設けられた親水性塗膜を有している。
<基板>
基板は、この形態では例えばJIS1050系の工業用純アルミニウムを主体とした合金からなる。また、基板は、JIS1050系の工業用純アルミニウムに必要な合金元素、例えば、強度アップのためのMnやSiなどを添加したアルミニウム合金からなるものであっても良い。さらに、基板は、その表面と裏面に先の形態で説明した下地処理皮膜を施したものであっても良い。
基板は、アルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程、プレス工程などを経て加工される。なお、基板の製造方法は、本発明としては特に限定されるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。
【0027】
<親水性塗膜>
アルミニウムフィン材は、基板の片面または両面に親水性塗膜を有している。親水性塗膜は先に説明したように、親水性塗料を基板の片面または両面に塗布し、乾燥させることにより得られる。
親水性塗膜を形成する方法は、ロールコートなどで塗布し、オーブンで乾燥させるなど、種々の親水性塗膜形成方法を適宜採用することができる。
親水性塗膜は、炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子のうち1種または2種以上の粒子(A)と、珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とを含有する。水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体である。前記粒子(A)量:前記珪酸塩(B)のSiO2換算量の質量比率は10:90~90:10の範囲であり、前記珪酸塩(B)はM2O・nSiO2(Mはアルカリ金属、n=1.5~8.0)から選ばれる少なくとも1種である。
【0028】
アルミニウムフィン材はその片面または両面に親水性塗膜が形成されているので、優れた親水性を得ることができる。アルミニウムフィン材は、必要な形状に加工してフィンを構成し、熱交換器用のアルミニウムフィンとして利用できる。
即ち、アルミニウムフィンに水分が付着しても水滴になることなく水が濡れ広がり、隣接するアルミニウムフィン間に水のブリッジを形成することがなく、アルミニウムフィンの通風抵抗を上昇させないため、熱交換率が低下しない熱交換器を提供できる効果を有する。
この優れた親水効果については、熱交換器の製造直後は勿論のこと、熱交換器を長期間使用した場合であっても低下することがない。また、水の付着と乾燥を長期間繰り返したとしても、アルミニウムフィン表面の親水性低下を引き起こすことがない。
このため、上述の親水性塗膜を有するアルミニウムフィンを備えた熱交換器であるならば、長期間使用しても熱交換率が低下することのない、通年エネルギー消費効率に優れた熱交換器を提供できる。
【0029】
≪アルミニウムフィン材用親水性塗料の用途≫
次に、本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗料の用途を説明する。
本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗料は、アルミニウムフィン材の表面の一部又は全部を親水化させるために有用である。ここでいう表面とは、アルミニウムフィン材の片面または両面のいずれをも含む概念とする。
以下、当該用途(換言すれば、アルミニウムフィン材の親水化処理方法、親水化アルミニウムフィン材の製造方法)を説明する。
【0030】
<プロセス>
本形態のアルミニウムフィン材用親水性塗料の使用方法(換言すれば、アルミニウムフィン材の親水化処理方法、親水化アルミニウムフィン材の製造方法)は、アルミニウムフィン材用親水性塗料をアルミニウムフィン材に塗布させる工程、該塗布後に乾燥させる工程と、を含む。
以下、各工程を詳述する。
【0031】
・塗布工程
無処理、又は清浄化処理、下地処理を適宜施したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板の表面の一部又は全部に、必要な塗膜量が得られるようアルミニウムフィン材用親水性塗料で処理する。アルミニウムフィン材用親水性塗料での処理方法は特に限定されず適当な手段で本発明のアルミニウムフィン材用親水性塗料を基板に塗布できれば良く、例えば、ロールコート、スプレー、及び浸漬法等が挙げられる。
【0032】
・乾燥工程
アルミニウムフィン材用親水性塗料を塗布させた後の乾燥は、アルミニウムフィン材用親水性塗料が含有する水が乾燥揮散すれば特に限定されるものではなく、加熱乾燥等により乾燥させる。加熱乾燥の温度は特に限定されるものではないが、80℃~270℃での範囲で5秒から120分間乾燥することが好ましく、100℃~270℃がより好ましい。
【0033】
・他の工程
尚、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板は、予めアルカリ性又は酸性の洗浄剤によって、表面の汚れを取り除き清浄化することが好ましいが、清浄化を必要としない場合には清浄化を省略してもよい。また、必要に応じて、無処理の状態で、又は清浄化した後、本形態に係る親水性塗料で処理する前に、下地処理を施してもよい。下地処理としては、特に限定されるものではなく、公知のクロメ-卜、りん酸亜鉛、チタン系、ジルコニウム系化成処理、有機皮膜等の耐食皮膜(化成処理皮膜又は耐食プライマー皮膜)が挙げられる。
潤滑処理としては、親水性塗膜の上に、水溶性ポリエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・アルキル・エーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテルなどを塗布することにより潤滑性塗膜を形成する。潤滑性塗膜はアルミニウムフィン材を金型等で目的の形状のフィンに加工する場合、金型の摩耗を抑制する目的で形成する。潤滑性塗膜を形成する方法は、ロールコート、スプレー、及び浸漬法等などで潤滑性塗膜を形成し、オーブンで乾燥させるなど、種々の親水性塗膜形成方法を適宜採用することができる。親水性塗膜上にロールコートなどの塗布方法を用いて必要な厚さに潤滑性塗料を塗布し、50℃~200℃程度で5秒~30分程度加熱することで潤滑性塗料を加熱乾燥させることが好ましく、80℃~160℃がより好ましい。
【0034】
≪親水性塗膜付きアルミニウムフィン材≫
本形態の親水性塗膜付きアルミニウムフィン材は、その表面の一部又は全部に親水性塗膜を有する。ここで、前記アルミニウムフィン材用親水性塗料により得られた塗膜量は、本形態の目的である親水性が得られれば特に限定されるものではないが、0.15~1.0g/m2の範囲が好ましい。更に、塗膜量は0.25~0.7g/m2の範囲がより好ましく、特に、0.3~0.5g/m2の範囲がより好ましい。
塗膜量が0.15g/m2以上であれば、アルミニウムフィン材の被覆が十分となり、本形態の目的である親水性が得られる。工業的観点から塗膜量が、1.0g/m2を超えるとコストが高くなるため、特に限定されるものではないが1.0g/m2以下であることが好適である。
【0035】
≪親水性塗膜付きアルミニウムフィン材が組み込まれた製品≫
本形態の親水性塗膜付きアルミニウムフィン材が組み込まれた製品の好適例は熱交換器である。本形態に係る親水性塗膜は、優れた親水性を有する。したがって、熱交換器を構成するアルミニウムフィン材に適用すれば、結露水の目詰まりによる熱交換器の性能低下、騒音等の問題を解決できる。更に、本形態に係る親水性塗膜は、長期の使用時においても優れた親水性を持続することができる。
【0036】
次に、前述のアルミニウムフィン材を熱交換器に適用した一形態について図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態の熱交換器20を示す斜視図である。
本実施形態の熱交換器20は、ルームエアコンディショナーの室内・室外機用の熱交換器、あるいは、HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)用の室内・室外機、自動車用の熱交換器などの用途に使用されるアルミニウム熱交換器である。
【0037】
図1に示す熱交換器20は、
図2に示すアルミニウムフィン材を加工してなるアルミニウムフィン1と、複数の銅製の伝熱管30とを備えたものである。アルミニウムフィン1は細長い短冊形状を有しており、銅製の伝熱管30を通すラッパ状のフレア11が、長さ方向に単列、或いは複数列で等間隔に配されている。また、アルミニウムフィン1の表面には、伝熱性能の向上を目的にスリット12などを必要箇所に設けることがある。アルミニウムフィン1は、一定の間隔で平行に並べられており、アルミニウムフィン1の相互間に空気が流動するようになっている。銅製の伝熱管30はアルミニウムフィン1のフレア11を貫通しており、その内部を冷媒が流動するようになっている。
【0038】
<アルミニウムフィン材>
アルミニウムフィン材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板状の基板と、基板の片面または両面に設けられた親水性塗膜を有している。また、親水性塗膜の上面にプレス加工時などの加工性を考慮し、潤滑性塗膜が形成されていることが好ましい。アルミニウムフィン材を目的の熱交換器に合わせた形状に加工することでアルミニウムフィン1が得られる。
【0039】
親水性塗膜を有するアルミニウムフィン1であるならば、例えば、表面の水接触角を10°以下とする、優れた親水性が得られる。
また、親水性塗膜は、プレス加工において使用する金型の過度な損耗を抑制することができ、金型によりアルミニウムフィン材を大量に加工する場合であっても、良好な加工性を得ることができる。
【0040】
上述のアルミニウムフィン材は、初期状態では勿論のこと、乾湿サイクル後であっても優れた親水性を発揮する。従ってこの形態のアルミニウムフィン材は、長期間使用しても親水性が低下しない、優れた親水性を維持できる効果を発揮する。
【実施例0041】
<サンプルの作製>
JIS1050系の工業用純アルミニウムからなるフィン用アルミニウム基板(縦300mm、横200mm、厚さ0.1mm)に対し、リン酸クロメート処理を施し、クロム付着量として20mg/m2のリン酸クロメート皮膜を形成した。
このリン酸クロメート皮膜を形成させたフィン用アルミニウム基板に対し、表1に示す原料を用い、表2、表3に示す組成となるように作製したアルミニウムフィン材用親水性塗料をバーコート法にて塗布し、220℃で30秒間乾燥して塗膜付きアルミニウムフィン材を得た。塗布前後の質量差より算出したアルミニウムフィン材用親水性塗膜の塗膜量は0.5 g/m2であった。
更に、潤滑性塗膜ありのサンプルにおいては、親水性塗膜を形成させたアルミニウムフィン材に対し、潤滑性塗料(PEG20000の2%水溶液)をバーコート法にて塗布し、120℃で30秒間乾燥することにより潤滑性塗膜を形成した。
潤滑性塗膜が形成された塗膜付きアルミニウムフィン材を得た。塗布前後の重量差より算出した潤滑性塗膜の塗膜量は0.15g/m2であった。
【0042】
<アルミニウムフィン材用親水性塗料>
表2に示す実施例1~34、表3に示す比較例1~12のアルミニウムフィン材用親水性塗料に用いた原料を表1に示す。表1では実施例、比較例の炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、硫酸カルシウム粒子のいずれかの粒子(A)の一覧およびメジアン径と、実施例及び比較例に用いた珪酸塩(B)の一覧と、実施例及び比較例に用いた水溶性樹脂又はその塩(C)の一覧を示している。
【0043】
実施例、比較例に用いたアルミニウムフィン材用親水性塗料は、炭酸カルシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、硫酸カルシウム粒子のうちのいずれかの粒子(A)と、珪酸塩(B)のSiO2換算量との合計量と、前記粒子(A)量:前記珪酸塩(B)のSiO2換算量の質量比率が表2の組成となるよう電子天秤を用いて量りとり、水溶性樹脂又はその塩(C)と、必要な濡れ性を得るための界面活性剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムと、水とを配合して全液重量を100gとした。なお、表1中のSiO2のnは最大値と最小値の平均で計算し、珪酸カリウムはn=4.8、珪酸ナトリウムはn=3.0、珪酸リチウムはn=5.5とした。
【0044】
これらのアルミニウムフィン材試料を用いて以下に説明する親水持続性評価、加工性評価、並びに耐食性評価を行った。
【0045】
<親水持続性評価>
サンプル上に1μLの脱イオン水を滴下し、滴下してから10秒後に形成された水滴の接触角を接触角計(協和界面科学株式会社製:自動接触角計DM300型)により測定した。サンプルの作製後に室温まで冷却した評価サンプルの接触角を初期親水性とした。各サンプルに対し、水道水の流水に8時間浸漬し、その後、各試料を80℃で16時間乾燥させるというサイクルを1サイクルとして、このサイクルを14サイクル付加後の接触角を乾湿サイクル後親水性とした。
得られた接触角は以下に示す基準でレーティングを行い、レーティングで4点以上を本発明の目的である親水性として合格とした。
【0046】
<親水性のレーティング基準>
5点:水対接触角5°未満
4点:水対接触角5°以上,10°未満
3点:水対接触角10°以上,20°未満
2点:水対接触角20°以上,30°未満
1点:水対接触角30°以上
【0047】
<加工性評価>
サンプルに対し、摺動速度4mm/s、荷重200g、摺動距離10mmで動摩擦係数をバウデン式動摩摩擦係数試験(協和界面科学株式会社製:バウデン式動摩擦試験機TS501型)により測定した。レーティングナンバーで2点以上を本発明の目的である加工性を有すると評価して合格とした。
【0048】
<加工性のレーティング基準>
4点:動摩擦係数0.05未満
3点:動摩擦係数0.05以上,0.1未満
2点:動摩擦係数0.1以上,0.2未満
1点:動摩擦係数0.2以上
【0049】
<耐食性評価>
サンプルに対し、JIS Z2371 に準じて塩水噴霧試験機で240時間試験を実施した。レーティングナンバーで9.8点以上を本発明の目的である耐食性として合格とした。
【0050】
<耐食性のレーティングナンバー>
10点:腐食面積率0%
9.8点:腐食面積率0を超え0.02%以下
9.5点:腐食面積率0.02を超え0.05%以下
9.3点:腐食面積率0.05を超え0,07%以下
9点:腐食面積率0.07を超え0.10%以下
8点:腐食面積率0.10を超え0.25%以下
7点:腐食面積率0.25を超え0.50%以下
6点:腐食面積率0.50を超え1.00%以下
5点:腐食面積率1.00を超え2.50%以下
4点:腐食面積率2.50を超え5.00%以下
3点:腐食面積率5.00を超え10.00%以下
2点:腐食面積率10.00を超え25.00%以下
1点:腐食面積率25.00を超え50.00%以下
0点:腐食面積率50.00%を超えるもの
【0051】
表4、表5に、上述の初期親水性および乾湿サイクル後の親水性の評価結果と、加工性評価の結果と、耐食性評価の結果を示す。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
表4の実施例1~34が示す結果に示すように、本発明のアルミニウムフィン材用親水性塗料により処理を施したアルミニウムフィン材やそれらの材料が組みつけられた熱交換器では優れた親水性、加工性、耐食性を有することが明らかである。
これらに対し、表5に記載の比較例1~12は、初期親水性と乾湿サイクル後の親水性と加工性と耐食性のいずれかが、実施例1~34に対し劣る結果となった。