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特開2022-83926監視システム、情報処理装置、監視装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083926
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】監視システム、情報処理装置、監視装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20220530BHJP
【FI】
G01R31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195568
(22)【出願日】2020-11-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】503032382
【氏名又は名称】古屋 一彦
(71)【出願人】
【識別番号】392022721
【氏名又は名称】株式会社和田電業社
(71)【出願人】
【識別番号】520463466
【氏名又は名称】浅賀 光明
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】古屋 一彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 功
(72)【発明者】
【氏名】浅賀 光明
【テーマコード(参考)】
2G033
【Fターム(参考)】
2G033AA02
2G033AB01
2G033AB03
2G033AB05
2G033AC02
2G033AC08
2G033AD11
2G033AD22
2G033AD23
2G033AF03
2G033AF05
2G033AG12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誤動作なく、配線系統の状態を監視することのできる監視システム、情報処理装置、監視装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】監視システムは、情報処理装置1と、監視装置3とを備える。情報処理装置は、受付部101と、更新部102と、提供部103とを備える。監視装置は、取得部と、監視部301と、特定部304とを備える。特定部は、零相電圧と零相電流とに基づいて絶縁劣化又は地絡が生じている配線相を特定するとともに、取得部が取得した対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とに基づいて該特定した配線相の地絡電流検出点電流値と地絡事故点電流値とを特定可能に構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線系統の状態を監視する監視システムであって、
情報処理装置と、監視装置とを備え、
前記情報処理装置は、受付部と、更新部と、提供部とを備え、
前記受付部は、監視対象の配線系統の構成情報を受け付け可能に構成され、
前記更新部は、前記配線系統を構成する各配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを管理する配線系統データベースを、前記構成情報に基づいて更新可能に構成され、
前記提供部は、前記配線系統データベースが管理する対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを監視装置に提供可能に構成され、
前記監視装置は、取得部と、監視部と、特定部とを備え、
前記取得部は、配線系統の情報を管理する情報処理装置から、監視対象の配線系統を構成する配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを取得可能に構成され、
前記監視部は、前記配線系統の零相電圧と零相電流とを取得可能に構成され、
前記特定部は、前記零相電圧と前記零相電流とに基づいて絶縁劣化又は地絡が生じている配線相を特定するとともに、前記取得部が取得した対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とに基づいて該特定した配線相の地絡電流検出点電流値と地絡事故点電流値とを特定可能に構成される
監視システム。
【請求項2】
配線系統の情報を管理する情報処理装置であって、
受付部と、更新部と、提供部とを備え、
前記受付部は、監視対象の配線系統の構成情報を受け付け可能に構成され、
前記更新部は、前記配線系統を構成する各配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを管理する配線系統データベースを、前記構成情報に基づいて更新可能に構成され、
前記提供部は、前記配線系統データベースが管理する対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを監視装置に提供可能に構成される
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
前記提供部は、前記配線系統データベースが更新されたことを前記監視装置に通知する
情報処理装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の情報処理装置において、
前記配線系統は、シールド電力ケーブルによる配線とバスダクト配線との少なくとも一方により構成される
情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置において、
前記更新部は、前記配線系統を構成する各配線の長さに基づいて、前記対地静電容量値と前記対地絶縁抵抗値とを算出する
情報処理装置。
【請求項6】
配線系統の状態を監視する監視装置であって、
取得部と、監視部と、特定部とを備え、
前記取得部は、配線系統の情報を管理する情報処理装置から、監視対象の配線系統を構成する配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを取得可能に構成され、
前記監視部は、前記配線系統の零相電圧と零相電流とを取得可能に構成され、
前記特定部は、前記零相電圧と前記零相電流とに基づいて絶縁劣化又は地絡が生じている配線相を特定するとともに、前記取得部が取得した対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とに基づいて該特定した配線相の地絡電流検出点電流値と地絡事故点電流値とを特定可能に構成される
監視装置。
【請求項7】
請求項6に記載の監視装置において、
前記特定部は、前記絶縁劣化電流値又は前記地絡事故電流値と、絶縁劣化点又は地絡点の電圧とに
基づいて、絶縁劣化又は地絡が生じている配線相のインピーダンスを特定し、該特定したインピーダンスから前記絶縁劣化点又は前記地絡点の対地絶縁抵抗値と対地静電容量値とを特定し、
ここで、前記絶縁劣化点又は前記地絡点の対地静電容量値は、分布定数である
監視装置。
【請求項8】
請求項7に記載の監視装置において、
前記特定部は、前記対地絶縁抵抗値と前記対地静電容量値とに基づいて、前記絶縁劣化点又は前記地絡点の電流値を特定する
監視装置。
【請求項9】
請求項8に記載の監視装置において、
前記特定部は、第1の判定結果と、第2の判定結果との論理積に基づいて地絡事故の方向が電源側か負荷側であるかを特定し、
ここで、前記第1の判定結果は、地絡事故相の地絡事故点電流の大きさに基づく判定結果であり、
前記第2の判定結果は、地絡事故相と他の正常な相の電流の大きさに基づく判定結果である
監視装置。
【請求項10】
コンピュータを情報処理装置として動作させるプログラムであって、
コンピュータを請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の情報処理装置として機能させる
プログラム。
【請求項11】
コンピュータを監視装置として動作させるプログラムであって、
コンピュータを請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の監視装置として機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システム、情報処理装置、監視装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
配線系統の絶縁劣化点を早期に検知し、地絡事故前の配線ケーブル等の絶縁劣化点の早期保全と、地絡事故が発生した場合の地絡事故点の早期検知、早期復旧工事の必要性が求められている。
【0003】
このため、配線系統が正常な状態、絶縁が劣化した状態、地絡が発生した状態、対地静電容量が変化した状態のいずれであっても、その状態を監視することのできる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-173242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、配電線の地中化の進展や大規模施設の建設などにより、シールド電力ケーブル(以下、電力ケーブルと称する)を用いた配線や、バスダクト配線が増加しており、配線路の対地静電容量が増大する傾向にある。配線路の対地静電容量が増大した結果、配線系統の現状の地絡検出機器(地絡方向継電器:DGR(Directional Ground Relays))の地絡方向検出に誤動作が発生することが増加している。
【0006】
また、同じ要因から、地絡電流検出点(零相電流検出器:ZCT(Zero-phase-sequence Current Transformars)の設置点)の電流値に対して、実際地絡を起こしている事故点の電流値が一致せず、後者の方が数10%から数倍に大きくなるため、地絡事故点の電流を検知することが今後、新たに必要性になってくる。
【0007】
本発明では上記事情を鑑み、誤動作なく、配線系統の状態を監視することのできる監視システム、情報処理装置、監視装置及びプログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、配線系統の状態を監視する監視システムが提供される。この監視システムは、情報処理装置と、監視装置とを備える。情報処理装置は、受付部と、更新部と、提供部とを備える。受付部は、監視対象の配線系統の構成情報を受け付け可能に構成される。更新部は、配線系統を構成する各配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを管理する配線系統データベースを、構成情報に基づいて更新可能に構成される。提供部は、配線系統データベースが管理する対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを監視装置に提供可能に構成される。監視装置は、取得部と、監視部と、特定部とを備える。取得部は、配線系統の情報を管理する情報処理装置から、監視対象の配線系統を構成する配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを取得可能に構成される。監視部は、配線系統の零相電圧と零相電流とを取得可能に構成される。特定部は、零相電圧と零相電流とに基づいて絶縁劣化又は地絡が生じている配線相を特定するとともに、取得部が取得した対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とに基づいて該特定した配線相の地絡電流検出点電流値と地絡事故点電流値とを特定可能に構成される。
【0009】
本発明の一態様によれば、誤動作なく、地絡方向の検出や地絡事故点の電流の検知等を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る監視システム100の構成例を示した図である。
図2】情報処理装置1の構成の概略を示した図である。
図3】監視装置3の構成の概略を示した図である。
図4】情報処理装置1と監視装置3の機能的な構成を示すブロック図である。
図5】配線系統4の構成情報を図式化した場合の例を示した図である。
図6】情報処理装置1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
図7】監視装置3の動作の流れを示すアクティビティ図である。
図8】IRBを複素数表示した場合の例を示した図である。
図9図5に示した配線系統において、R相に抵抗RR1の絶縁劣化、または地絡が発生した系統(1)と、正常な系統(2)で構成される回路の等価回路の例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0012】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0013】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0014】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0015】
1.監視システム100の構成
図1は、本発明の実施形態に係る監視システム100の構成例を示した図である。同図に示すように、監視システム100は、情報処理装置1と、配線系統データベース2と、監視装置3とを備え、情報処理装置1と監視装置3がネットワーク5を介して通信可能に接続されている。この監視システム100は、配線系統4の状態を監視するものである。
【0016】
情報処理装置1は、配線系統4の情報を管理するもので、配線系統データベース2を用いて配線系統4の情報を管理する。配線系統データベース2は、配線系統4の情報を記憶保持するデータベースである。監視装置3は、配線系統4の状態を監視するものである。配線系統4は、監視対象となるものである。
【0017】
2.情報処理装置1の構成
次に、情報処理装置1の構成について説明する。図2は、情報処理装置1の構成の概略を示した図である。同図に示すように、情報処理装置1は、処理部11と、記憶部12と、一時記憶部13と、外部装置接続部14と、通信部15とを有しており、これらの構成要素が情報処理装置1の内部において通信バス16を介して電気的に接続されている。
【0018】
処理部11は、例えば、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)により実現されるもので、記憶部12に記憶された所定のプログラムに従って動作し、種々の機能を実現する。
【0019】
記憶部12は、様々な情報を記憶する不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばROM(Read Only Memory)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスにより実現される。もちろん、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)であってもよい。
【0020】
一時記憶部13は、揮発性の記憶媒体である。これは、例えばランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリにより実現され、処理部11が動作する際に一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶する。
【0021】
外部装置接続部14は、例えばユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)や高精細度マルチメディアインターフェース(High-Definition Multimedia Interface:HDMI)といった規格に準じた接続部である。
【0022】
通信部15は、例えばローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)規格に準じた通信手段であり、情報処理装置1とローカルエリアネットワークやこれを介したインターネット等のネットワーク5との間の通信を実現する。なお、通信部15は、必ずしも必要な構成ではなく、通信が必要な場合には、所望の通信装置を外部装置接続部14に接続して、通信部15に代えることが可能である。また、通信部15は、配線系統データベース2とも通信可能に接続される。
【0023】
なお、情報処理装置1は、専用の装置として構成してもよく、汎用のコンピュータ等を利用することも可能である。
【0024】
3.監視装置3の構成
次に、監視装置3の構成について説明する。図3は、監視装置3の構成の概略を示した図である。同図に示すように、監視装置3は、処理部31と、記憶部32と、一時記憶部33と、外部装置接続部34と、通信部35とを有しており、これらの構成要素が監視装置3の内部において通信バス36を介して電気的に接続されている。
【0025】
処理部31は、例えば、CPUにより実現されるもので、記憶部32に記憶された所定のプログラムに従って動作し、種々の機能を実現する。
【0026】
記憶部32は、様々な情報を記憶する不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばROMやSSD等のストレージデバイスにより実現される。もちろん、HDDであってもよい。
【0027】
一時記憶部33は、揮発性の記憶媒体である。これは、例えばRAM等のメモリにより実現され、処理部31が動作する際に一時的に必要な情報を記憶する。
【0028】
外部装置接続部34は、例えば、USBやHDMIといった規格に準じた接続部であり、配線系統4の電圧や電流を計測する計測器やモニタ等を接続可能としている。
【0029】
通信部35は、例えば、LAN規格に準じた通信手段であり、監視装置3とネットワーク5との間の通信を実現する。なお、通信部35は、必ずしも必要な構成ではなく、通信が必要な場合には、所望の通信装置を外部装置接続部34に接続して、通信部35に代えることが可能である。
【0030】
なお、監視装置3は、専用の装置として構成してもよく、汎用のコンピュータ等を利用することも可能である。また、コンピュータをDGR等の継電器や計測器、バスダクト配線やシールドケーブル配線に設置する漏電遮断器等に組み込み、これらの機器を監視装置3として動作させるようにしてもよい。
【0031】
4.情報処理装置1及び監視装置3の機能
次に、情報処理装置1と監視装置3の機能について説明する。情報処理装置1は、プログラムにしたがって動作することで、後述する各機能部を実現する。このプログラムは、コンピュータを情報処理装置として動作又は機能させるプログラムである。また、監視装置3は、プログラムにしたがって動作することで、後述する各機能部を実現する。このプログラムは、コンピュータを監視装置として動作又は機能させるプログラムである。コンピュータは、サーバ用のものやパーソナルコンピュータであってもよく、DGR等の継電器や計測器、バスダクト配線やシールドケーブル配線に設置する漏電遮断器等に組み込み可能なコンピュータであってもよい。
【0032】
図4は、情報処理装置1と監視装置3の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、情報処理装置1は、受付部101と、更新部102と、提供部103とを備える。受付部101は、監視対象の配線系統4の構成情報を受け付け可能に構成される。受付部101が受け付ける配線系統4の構成情報は、例えば、配線系統の構成、配線ケーブル種別、サイズ及び長さの設定、EVT(Earthed Voltage Transformers:接地形計器用変圧器)、ZPD(Zero-phase-sequence Potential Device:零相電圧検出装置)、ZCT及びDGRの設定等である。
【0033】
図5は、配線系統4の構成情報を図式化した場合の例を示した図である。同図に示すように、配線系統4の構成情報は、電源E、トランスT、負荷設備L1、負荷設備L2、負荷設備L3、ケーブルSC1、ケーブルSC2、ケーブルSC3、ケーブルSC4、ケーブルSC5、DGR41、EVT/ZPD42、DGR43、DGR44、EVT/ZPD45、DGR46、DGR47を含む。EVT/ZPD42とEVT/ZPD45は、EVTとZPDのいずれかである旨を示している。配線系統4の構成情報は、これらの各部について、詳細な情報を含む。詳細な情報は、例えば、電源Eは、3相50Hz、66kVの電源であり、トランスTは、3相3線で一次側が66kV、二次側が6.6kVであるといった情報である。
【0034】
また、ケーブルSC1、ケーブルSC2、ケーブルSC3、ケーブルSC4、ケーブルSC5の種別、サイズ及び長さについては、それぞれ、DGR41、DGR43、DGR44、DGR46、DGR47の監視範囲となる。なお、受付部101は、ケーブルの種別、サイズ及び長さに代えて、対地静電容量値と対地絶縁抵抗値を受け付けるようにしてもよい。
【0035】
更新部102は、配線系統4を構成する各配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを管理する配線系統データベース2を、受付部101が受け付けた構成情報に基づいて更新する。このとき、更新部102は、配線系統4を構成する各配線の種別、サイズ及び長さに基づいて、対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを算出する。配線系統4がシールド電力ケーブルによる配線とバスダクト配線との少なくとも一方により構成されるものであれば、更新部102は、最小絶縁抵抗値、静電容量値等の電気特性として、メーカ公表の使用前の計算値、または工場実測値を用いる。配線系統4の各ケーブルのR相、S相、T相の対地絶縁抵抗値と対地静電容量値は、各相のケーブルが同じ構造の単芯ケーブル、または3芯ケーブルなので、R相、S相、T相のそれぞれが同じ値となる。したがって、配線系統4の各ZCTの零相電流検知範囲の、1相あたりの対地絶縁抵抗値は、零相電流検知範囲の配線ケーブルの長さに応じた対地絶縁抵抗値を並列計算して求め、また1相あたりの対地静電容量値は、配線ケーブルの長さに応じた対地静電容量値の和として求めることができる。
【0036】
提供部103は、配線系統データベース2が管理する対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを監視装置3に提供可能に構成される。例えば、提供部103は、配線系統データベース2が更新されたことを監視装置3に通知し、この通知に応じて監視装置3が、配線系統データベース2が管理する対地静電容量値等の提供を要求した際に、要求された情報を提供する。なお、提供部103は、通知を行わずに、配線系統データベース2が管理する対地静電容量値等が更新された際に、直接、監視装置3に対地静電容量値と対地絶縁抵抗値等を送信するようにしてもよい。
【0037】
配線系統データベース2は、配線系統4の増設、撤去等があった際に、常にデータを更新するものである。そして、配線系統データベース2の内容は配線系統4に設置されている、すべてのDGR、またはDGRを監視管理している監視装置、監視システムに自動的に提供され、これを得た全てのDGR、又は、監視装置3、監視システムは本情報をその都度、更新する。
【0038】
また、監視装置3は、取得部301と、保持部302と、監視部303と、特定部304と、出力部305とを備える。
【0039】
取得部301は、配線系統4の情報を管理する情報処理装置1から、監視対象の配線系統4を構成する配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを取得可能に構成される。静電容量値等の取得は、情報処理装置1からプッシュ送信されたものを受信するような形態でもよく、情報処理装置1から通知を受けた後にダウンロードを行う形態で取得するようにしてもよい。
【0040】
保持部302は、取得部301が取得した対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを記憶保持する。
【0041】
監視部303は、配線系統4の零相電圧と零相電流とを取得可能に構成される。具体的には、監視部303は、配線系統4に設置されているEVT又はZPDから零相電圧を取得し、配線系統4に設置されているZCTから零相電流を取得する。零相電圧値は、零相電圧検出器(EVT又はZPD)の等価内部抵抗値と零相電流(ZCTから取得)の積を用いるようにしてもよい。
【0042】
特定部304は、零相電圧と零相電流とに基づいて絶縁劣化又は地絡が生じている配線相を特定するとともに、取得部が取得した対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とに基づいて該特定した配線相の地絡電流検出点電流値と地絡事故点電流値とを特定可能に構成される。また、特定部304は、絶縁劣化電流値又は地絡事故電流値と、絶縁劣化点又は地絡点の電圧とに基づいて、絶縁劣化又は地絡が生じている配線相のインピーダンスを特定し、該特定したインピーダンスから絶縁劣化点又は地絡点の対地絶縁抵抗値と対地静電容量値とを特定する。絶縁劣化点又は地絡点の対地静電容量値は、分布定数である。そして、対地絶縁抵抗値と対地静電容量値とに基づいて、絶縁劣化点又は地絡点の電流値を特定する。
【0043】
また、特定部304は、第1の判定結果と、第2の判定結果との論理積に基づいて地絡事故の方向が電源側か負荷側であるかを特定する。第1の判定結果は、地絡事故相の地絡事故点電流の大きさに基づく判定結果であり、第2の判定結果は、地絡事故相と他の正常な相の電流の大きさに基づく判定結果である。
【0044】
出力部305は、特定部304が特定した値や判定結果等を指定された出力先に出力する。出力先が、地絡事故点位置を特定することのできる標定システムであれば、絶縁劣化点や地絡事故点を早期に特定して、地絡事故による停電発生の未然防止、また、地絡事故時の早期復旧工事の実施に役立たせることが可能である。
【0045】
5.情報処理装置1の動作
次に、情報処理装置1の動作について説明する。図6は、情報処理装置1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
【0046】
情報処理装置1は、配線系統4の構成情報の入力が要求されると、受付部101が、その入力を受け付ける(A101)。続いて、更新部102が、入力された構成情報に基づいて、配線系統データベース2を更新するが、このとき、計算処理が必要であれば、計算処理を行い(A102)、その計算結果に基づいて、配線系統データベース2を更新する(A103)。計算が必要な場合とは、受付部101がケーブルの種別、サイズ及び長さを受け付けた場合である。また、更新部102は、計算処理が不要であれば、そのまま、配線系統データベース2を更新する(A103)。計算が不要な場合とは、受付部101が配線の静電容量値等を受け付けた場合である。
【0047】
更新部102により配線系統データベース2が更新されると、提供部103が、監視装置3に、更新があった旨を通知し(A104)、処理を終了する。
【0048】
また、情報処理装置1は、監視装置3から、更新された配線系統データベース2のデータを要求されると、提供部103が、更新されたデータを監視装置3に提供し(A105)、処理を終了する。
【0049】
6.監視装置3の動作
次に、監視装置3の動作について説明する。図7は、監視装置3の動作の流れを示すアクティビティ図である。
【0050】
監視装置3は、情報処理装置1から配線系統データベース2の更新の通知がなされると、取得部301が、情報処理装置1から更新データを取得し(A301)、取得した更新データを保持部302に保持させる(A302)。
【0051】
また、監視装置3は、情報処理装置1から配線系統データベース2の更新の通知が無い場合には、監視部303が、零相電圧や零相電流等の測定値を取得する(A303)。監視部303が取得した測定値に異常が無ければ、例えば、零相電流値が所定の値未満であれば、監視装置3は、同様の処理を繰り返す。なお、零相電圧は、測定値に代えて、零相電圧検出器の零相電圧検出抵抗の高圧側換算値と、接地抵抗値との和に、零相電流の値を乗じた値を用いるようにしてもよい。
【0052】
監視部303が取得した測定値に異常があった場合、例えば、零相電流値が所定の値以上であれば、特定部304が、まず、絶縁が劣化している配線相又は地絡が生じている配線相を特定する(A304)。例えば、図5に示したような非接地系の配線系統の例においては、トランスTの二次側端子は接地されていないので、電力回路は非接地系統であるが、二次側系統の零相電圧を検出する変成器(EVT、又はZPD)によって、中性点が等価的に高インピーダンス接地されているので、インピーダンス接地のスター結線回路として計算することができる。
【0053】
ここで、変成器のN-R端子電圧の位相角を基準0°、N-S端子電圧の位相角を-120°、N-T端子電圧の位相角を120°として、ZCTが検出する零相電流を複素数表示のIRBとし、偏角をθとする。このIRBを、R相に合わせ座標回転0°、次にS相に合わせ120°、T相に合わせ240°座標回転する。そして、座標を回転した結果の偏角をθ’とすると、-30°<θ´<90°になる相が、IRBを発生している地絡相であることが容易に特定できる。図8は、IRBを複素数表示した場合の例を示した図である。同図に示す状態が、座標回転0°の結果であった場合には、絶縁が劣化している配線相又は地絡が生じている配線相は、R相となる。なお、座標の回転については、特許文献1に、その詳細が記載されている。
【0054】
次に、特定部304は、絶縁が劣化している配線相又は地絡が生じている配線相の電流値を特定する(A305)。図5に示した非接地系統の6.6kVの高圧配線系統を例として説明すると、前述のとおり、当該系統は非接地系統であるが、零相電圧を検出する計器用変成器による中性点抵抗接地と等価となる。
【0055】
図9は、図5に示した配線系統において、R相に抵抗RR1の絶縁劣化、または地絡が発生した系統(1)と、正常な系統(2)で構成される回路の等価回路の例を示したものである。なお、同図中、ERは、R相電圧、ESは、S相電圧、ETはT相電圧を表している。また、同図中IR1は、系統(1)のR相電流、IS1は、系統(1)のS相電流、IT1は、系統(1)のT相電流、RR1は、系統(1)のR相地絡点抵抗、IRR1は、系統(1)のR相地絡点電流、IR2は、系統(2)のR相電流、IS2は、系統(2)のS相電流、IT2は、系統(2)のT相電流を表している。さらに、同図中のZCT1は、系統(1)のZCT、ZCT2は、系統(2)のZCT、IRB1は、ZCT1の検出電流、IRB2は、ZCT2の検出電流、CR1は、系統(1)のR相対地静電容量、CS1は、系統(1)のS相対地静電容量、CT1は、系統(1)のT相対地静電容量、CR2は、系統(2)のR相対地静電容量、CS2は、系統(2)のS相対地静電容量、CT2は、系統(2)のT相対地静電容量、RAは、A種接地抵抗、RLは、中性点接地等価制限抵抗、VNは、零相電圧((RA+RL)間電圧)を表している。
【0056】
A304での地絡相の特定により、この例では地絡相がR相で、S相とT相は正常なので、配線系統データベースDB2から取得した対地静電容量値等を用いて、S相のインピーダンスは、ZS1=1/jωCS1、T相のインピーダンスは、ZT1=1/jωCT1として、特定できる。そして、トランスTの端子電圧とEVT、またはZPDが検出する零相電圧値VNから、正常なS相の電流値IS1を、IS1=(ES-VN)/ZS1、T相の電流値IT1を、IT1=(ET-VN)/ZT1として特定することができる。これらより、地絡相R相の電流値は、IR1=IRB1-(IS1+IT1)として特定できる。零相電圧値VNは、零相電圧検出器の等価内部抵抗値とZCT電流の積を用いるようにしてもよい。
【0057】
続いて、特定部304は、絶縁劣化点又は地絡事故点の対地絶縁抵抗値を特定し(A306)、対地静電容量値を特定する(A307)。A305で特定した地絡相の電流値IR1と地絡事故点の電圧(ER-VN)から、地絡相のインピーダンスZR1を、ZR1=(ER-VN)/IR1と特定して、ZR1の逆数(アドミッタンス)を、1/ZR1=1/RR1+jωCR1として、絶縁劣化点、地絡事故点の抵抗RR1の値を、RR1=1/アドミッタンスの実数部として特定し、対地静電容量値CR1をCR1=アドミッタンスの虚数部/ωとして、特定することができる。もちろんであるが、分布定数であるCR1と、配線系統データベース2の対地静電容量の値は、小さい誤差の範囲で一致する。
【0058】
次に、特定部304は、地絡事故点電流値を特定する(A308)。地絡事故点電流値は、地絡事故点の対地絶縁抵抗値と分布定数の対地静電容量値から地絡相の電流を分流計算することにより、地絡事故点の電流IRR1をIRR1= IR1/(jωCR1*RR1+1)として、特定することができる。
【0059】
次に、特定部304は、地絡事故点の方向を特定する(A309)。地絡事故点の方向は、第1の方法による判定結果と、第2の方法による判定結果との論理積により特定する。第1の方法は、配線系統における地絡事故相の特定と、その地絡事故点電流の大きさが、数mA以上の地絡事故値か数10μA以下の正常値かに基づいて地絡事故の方向を電源側か、負荷側か判定する。第2の方法は、配線系統におけるR相、S相、T相の地絡事故点電流が3つの相すべて数10μA以下の正常値か否かに基づいて、地絡事故の方向を判定する。なお、第1の方法と第2の方法の数10μA以下の正常値を数100μAに変更することで、絶縁劣化点の方向の特定を行うことができる。
【0060】
そして、特定部304が特定した各値を、出力部305が指定された出力先に出力して、監視装置3は、処理を終了する。
【0061】
7.その他
本発明によれば、低圧、高圧、特高等の電力配電設備や大型空港、超高速鉄道の配電設備、大規模工場などの配電設備における地絡保護システムの精度の向上に資する。また、前述したように地絡事故点位置標定システムと組み合わせることで、絶縁劣化点、地絡事故点を短時間で、容易に把握することが可能になり、配線設備の絶縁性能の維持・管理作業の軽減化と、万が一の大きな自然災害発生時の配電設備の復旧作業、復電作業に役立つものである。
【0062】
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
配線系統の情報を管理する情報処理装置であって、受付部と、更新部と、提供部とを備え、前記受付部は、監視対象の配線系統の構成情報を受け付け可能に構成され、前記更新部は、前記配線系統を構成する各配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを管理する配線系統データベースを、前記構成情報に基づいて更新可能に構成され、前記提供部は、前記配線系統データベースが管理する対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを監視装置に提供可能に構成される情報処理装置。
前記情報処理装置において、前記提供部は、前記配線系統データベースが更新されたことを前記監視装置に通知する情報処理装置。
前記情報処理装置において、前記配線系統は、シールド電力ケーブルによる配線とバスダクト配線との少なくとも一方により構成される情報処理装置。
前記情報処理装置において、前記更新部は、前記配線系統を構成する各配線の長さに基づいて、前記対地静電容量値と前記対地絶縁抵抗値とを算出する情報処理装置。
配線系統の状態を監視する監視装置であって、取得部と、監視部と、特定部とを備え、前記取得部は、配線系統の情報を管理する情報処理装置から、監視対象の配線系統を構成する配線の対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とを取得可能に構成され、前記監視部は、前記配線系統の零相電圧と零相電流とを取得可能に構成され、前記特定部は、前記零相電圧と前記零相電流とに基づいて絶縁劣化又は地絡が生じている配線相を特定するとともに、前記取得部が取得した対地静電容量値と対地絶縁抵抗値とに基づいて該特定した配線相の地絡電流検出点電流値と地絡事故点電流値とを特定可能に構成される監視装置。
前記監視装置において、前記特定部は、前記絶縁劣化電流値又は前記地絡事故電流値と、絶縁劣化点又は地絡点の電圧とに基づいて、絶縁劣化又は地絡が生じている配線相のインピーダンスを特定し、該特定したインピーダンスから前記絶縁劣化点又は前記地絡点の対地絶縁抵抗値と対地静電容量値とを特定し、ここで、前記絶縁劣化点又は前記地絡点の対地静電容量値は、分布定数である監視装置。
前記監視装置において、前記特定部は、前記対地絶縁抵抗値と前記対地静電容量値とに基づいて、前記絶縁劣化点又は前記地絡点の電流値を特定する監視装置。
前記監視装置において、前記特定部は、第1の判定結果と、第2の判定結果との論理積に基づいて地絡事故の方向が電源側か負荷側であるかを特定し、ここで、前記第1の判定結果は、地絡事故相の地絡事故点電流の大きさに基づく判定結果であり、前記第2の判定結果は、地絡事故相と他の正常な相の電流の大きさに基づく判定結果である監視装置。
コンピュータを情報処理装置として動作させるプログラムであって、コンピュータを前記情報処理装置として機能させるプログラム。
コンピュータを監視装置として動作させるプログラムであって、コンピュータを前記監視装置として機能させるプログラム。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0063】
1 :情報処理装置
2 :配線系統データベース
3 :監視装置
4 :配線系統
5 :ネットワーク
11 :処理部
12 :記憶部
13 :一時記憶部
14 :外部装置接続部
15 :通信部
16 :通信バス
31 :処理部
32 :記憶部
33 :一時記憶部
34 :外部装置接続部
35 :通信部
36 :通信バス
100 :監視システム
101 :受付部
102 :更新部
103 :提供部
301 :取得部
302 :保持部
303 :監視部
304 :特定部
305 :出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9