(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083935
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】染料付基体製造装置および染色システム
(51)【国際特許分類】
D06P 7/00 20060101AFI20220530BHJP
D06P 5/26 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
D06P7/00
D06P5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195585
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 良二
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 稔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 功児
(72)【発明者】
【氏名】田中 基司
【テーマコード(参考)】
4H157
【Fターム(参考)】
4H157AA03
4H157DA02
4H157FA12
4H157FA30
4H157FA31
4H157FA42
4H157GA05
4H157JA10
4H157JB02
(57)【要約】
【課題】樹脂体を染色する際の効率および品質を向上させることが可能な染料付基体製造装置および染色システムを提供する。
【解決手段】染料付基体製造装置は、染料付基体を製造する。染料付基体は、樹脂体を染色する染色工程において使用される。染料付基体には、樹脂体に転写される染料が付着する。染料付基体製造装置は、印刷装置、搬送装置、および基体移動装置300を備える。印刷装置は、樹脂体を染色するための染料)を、基体に印刷する。搬送装置は、樹脂体が載置された染色用トレイを搬送する。基体移動装置300は、印刷装置によって染料が印刷された基体を、印刷装置による印刷位置から搬送装置側へ移動させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂体を染色する染色工程において使用される、前記樹脂体に転写される染料が付着した基体である染料付基体を製造する染料付基体製造装置であって、
基体に染料を印刷する印刷装置と、
前記樹脂体が載置された染色用トレイを搬送する搬送装置と、
前記印刷装置によって前記染料が印刷された前記基体を、前記印刷装置による印刷位置から前記搬送装置側へ移動させる基体移動装置と、
を備えたことを特徴とする染料付基体製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の染料付基体製造装置であって、
前記搬送装置に設置された前記染色用トレイにおける所定位置に、前記基体を載置する基体載置装置をさらに備え、
前記基体移動装置は、前記印刷装置によって前記染料が印刷された前記基体を、前記印刷装置による印刷位置から、前記基体載置装置に引き渡すことを特徴とする染料付基体製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の染料付基体製造装置であって、
前記印刷装置は、
前記染料を吐出するヘッドを、前記基体に対して主走査方向に移動させるキャリッジを備え、
前記基体移動装置は、前記印刷装置による前記染料の印刷中に、前記主走査方向に交差する副走査方向に前記基体を移動させる副走査装置を兼ねることを特徴とする染料付基体製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の染料付基体製造装置であって、
前記印刷装置は、
作業者によって操作されることで操作指示が入力され、且つ装置の正面側を向く操作部を備え、
前記搬送装置は、前記印刷装置の前記正面側とは反対の側に設置されることを特徴とする染料付基体製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の染料付基体製造装置であって、
前記基体移動装置は、
前記基体が載置される支持面を備えた基体支持部と、
前記基体支持部の前記支持面に形成された吸引孔と、
を備え、
前記吸引孔から気体が吸引されることで、前記基体支持部の前記支持面に前記基体が吸着されることを特徴とする染料付基体製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の染料付基体製造装置であって、
前記吸引孔は、少なくとも前記基体支持部の前記支持面の外周部に沿って複数設けられていることを特徴とする染料付基体製造装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の染料付基体製造装置であって、
前記基体が金属製の層を含むことを特徴とする染料付基体製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の染料付基体製造装置と、
前記染料付基体製造装置によって製造された前記染料付基体の前記染料を、樹脂体に転写する転写装置と、
前記転写装置によって前記染料が転写された前記樹脂体を加熱することで、前記樹脂体の表面に付着した前記染料を前記樹脂体に定着させる染料定着装置と、
を備えたことを特徴とする染色システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
染色工程において使用される染料付基体を製造する染料付基体製造装置、および、染料付基体製造装置を備えた染色システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズ等の樹脂体を染色するための種々の技術が提案されている。例えば、浸染法と言われる染色方法では、樹脂体を染色液の中に浸漬することで樹脂体が染色される。しかし、浸染法では、作業環境を良好にすることが難しく、また、一部の樹脂体(例えば高屈折率のレンズ等)を染色するのが困難である。
【0003】
そこで、染料を樹脂体の表面に転写し、染料が付着した樹脂体を加熱することで樹脂体を染色する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の染色方法では、昇華性の染料を含むインクが、印刷装置(インクジェットプリンタ)によって基体に塗布(印刷)される。次いで、真空中で樹脂体と基体が非接触で配置された状態で、基体に塗布された昇華性の染料が昇華されることで、染料が樹脂体に転写される。次いで、レーザ光が樹脂体に対して走査されることで、樹脂体が加熱されて染料が定着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、作業者は、印刷装置によって染料が印刷された基体を、手作業で転写機に搬送する必要があった。従って、作業者が行う必要がある作業を削減し、より効率良く適切に樹脂体を染色することが可能な技術が望まれる。
【0006】
本開示の典型的な目的は、樹脂体を染色する際の効率および品質を向上させることが可能な染料付基体製造装置および染色システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する染料付基体製造装置は、樹脂体を染色する染色工程において使用される、前記樹脂体に転写される染料が付着した基体である染料付基体を製造する染料付基体製造装置であって、基体に染料を印刷する印刷装置と、前記樹脂体が載置された染色用トレイを搬送する搬送装置と、前記印刷装置によって前記染料が印刷された前記基体を、前記印刷装置による印刷位置から前記搬送装置側へ移動させる基体移動装置と、を備える。
【0008】
本開示における典型的な実施形態が提供する染色システムは、前記染料付基体製造装置と、前記染料付基体製造装置によって製造された前記染料付基体の前記染料を、樹脂体に転写する転写装置と、前記転写装置によって前記染料が転写された前記樹脂体を加熱することで、前記樹脂体の表面に付着した前記染料を前記樹脂体に定着させる染料定着装置と、を備える。
【0009】
本開示に係る染料付基体製造装置および染色システムによると、樹脂体を染色する際の効率および品質が適切に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】染色システム1のシステム構成を示すブロック図である。
【
図2】2つのレンズLが設置され、且つ基体Sが設置されていない状態の染色用トレイ80を右斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2における2つの装着部82のうちの一方に装着される載置枠89、レンズL、およびスペーサ87を分解して示す、染色用トレイ80の斜視図である。
【
図4】染料付基体製造装置30を左斜め後方から見た斜視図である。
【
図5】使用状態におけるカートリッジ装着部140およびインク攪拌部150を左斜め前方から見た斜視図である。
【
図6】使用状態におけるカートリッジ装着部140およびインク攪拌部150の左側面図である。
【
図7】傾斜状態におけるカートリッジ装着部140およびインク攪拌部150の左側面図である。
【
図8】基体受け渡し装置200を左斜め後方から見た斜視図である。
【
図9】印刷装置100および基体移動装置300を左斜め後方から見た斜視図である。
【
図10】基体移動装置300を左斜め後方から見た斜視図である。
【
図11】基体保持部410の上下が反転されていない状態の基体載置装置400を、右斜め前方(
図4における矢印F方向)から見た斜視図である。
【
図12】基体保持部410の上下が反転された状態の基体載置装置400を、右斜め前方(
図4における矢印F方向)から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
(第1態様)
本開示で例示する染料付基体製造装置は、染料付基体を製造する。染料付基体は、樹脂体を染色する染色工程において使用される。染料付基体には、樹脂体に転写される染料が付着する。染料付基体製造装置は、印刷装置と基体載置装置を備える。印刷装置は、基体に染料(例えば、染料を含むインク等)を印刷する。基体載置装置は、印刷装置によって印刷された染料を、染色用トレイに載置された樹脂体に対向させた状態で、染色用トレイにおける樹脂体の所定位置に基体(染料付基体)を載置する。
【0012】
本開示で例示する染料付基体製造装置によると、染料が印刷装置によって基体に印刷されることで、染料付基体が製造される。製造された染料付基体は、基体載置装置によって、染色用トレイにおける所定位置に自動的に載置される。つまり、作業者が染料付基体を手作業で染色用トレイに載置しなくても、染色用トレイ上の適切な位置に、染料付基体が自動的に載置される。よって、樹脂体を染色する際の効率および品質が適切に向上する。
【0013】
なお、基体載置装置を、印刷装置とは別で染色システムに組み込んでもよい。この場合、基体載置装置は以下のように表現することも可能である。印刷装置によって基体に印刷された染料を、染色用トレイに載置された樹脂体に対向させた状態で、前記染色用トレイにおける前記樹脂体の所定位置に前記基体を載置する基体載置装置。
【0014】
基体載置装置は、基体の一対の面のうち、染料が印刷される印刷面の裏面に接触した状態で基体を保持する基体保持部を備えていてもよい。この場合には、基体の一端部が保持される場合等に比べて、基体の撓み、折れ曲がり、および破損等が発生することが抑制された状態で適切に基体が保持される。
【0015】
基体載置装置は通気部を備えていてもよい。通気部は、基体保持部のうち、基体の裏面に接触する位置に形成される。通気部は気体を通過させる。基体載置装置の制御部は、ポンプまたはファン等の気流制御装置によって通気部から気体を吸引することで、基体を基体保持部に吸着させて保持させてもよい。また、制御部は、気流制御装置による通気部からの気体の吸引を解除することで、基体保持部に保持させていた基体を、染色用トレイの所定位置に載置してもよい。この場合、基体載置装置は、気体の吸引を利用することで、より強い保持力で基体保持部に基体を保持させることができる。
【0016】
なお、基体は、金属製の層(例えば、アルミ箔等)を含むと共に可撓性を有する部材であってもよい。この場合、基体の厚みは、1μm~1000μmであってもよい。金属製の層を含む基体には、紙等の基体に比べて撓み等が生じやすい。しかし、基体保持部によって基体が保持されることで、撓み等が生じやすい基体であっても適切に保持される。
【0017】
基体載置装置の制御部は、気流制御装置によって通気部から気体を排出させることで、基体保持部に保持させていた基体を、染色用トレイの所定位置に載置してもよい。この場合、例えば、基体保持部と基体の間に発生する静電気等の影響で、基体が基体保持部から離れにくくなっていても、通気部から排出される気体によって、基体が基体保持部から適切に離れる。よって、基体がより適切に染色用トレイに載置される。
【0018】
なお、基体載置装置は、基体保持部から基体が離脱したか否かを検出するセンサを備えていてもよい。制御部は、基体を染色用トレイに載置する際に、基体保持部から基体が離脱していないことがセンサによって検出された場合に、通気部から基体を排出させることで基体を染色用トレイに載置してもよい。この場合、基体の状態に応じて適切に基体が染色用トレイに載置される。
【0019】
ただし、基体が基体保持部の表面から離れやすい場合等には、基体載置装置は、通気部から気体を排出せずに、通気部からの気体の吸引を解除するだけで基体を染色用トレイに配置してもよい。この場合、気流制御装置は、気体を排出する機能を有さなくてもよい。
【0020】
また、気体の吸引を利用する方法とは異なる方法で、基体の保持および保持の解除が行われてもよい。例えば、基体保持装置は、シート状の基体の一部を厚み方向に挟み込むことで、基体を保持してもよい。
【0021】
基体保持部のうち、基体の裏面に接触する接触面は、平坦面であってもよい。この場合、基体は、基体保持部の平坦な接触面に接触した状態で保持されるので、基体に撓みおよび折れ曲がり等が発生する可能性等がさらに低下する。よって、染色の品質低下および染色工程の不具合等が生じにくくなる。
【0022】
通気部は、基体保持部における接触面に形成された溝部を含んでいてもよい。溝部の形状は、印刷装置によって基体の印刷面に印刷される染料の印刷形状に対応する形状(望ましくは、外周領域が、染料の印刷形状の外周領域に略一致する形状)に形成されていてもよい。この場合、基体における染料の印刷領域の裏面に溝部が位置することで、染料の印刷領域が、より強固に基体保持部に保持される。よって、染料の印刷領域に撓みおよび折れ曲がり等が生じることが抑制されるので、染色品質がさらに低下し難くなる。
【0023】
染色される樹脂体は、略円盤状の眼鏡レンズであってもよい。印刷装置は、基体の印刷面に、染料(例えば、染料を含むインク等)を円形に印刷してもよい。通気部は、基体保持部における接触面に形成された円環状の溝部を含んでいてもよい。この場合、円環状の溝部が、基体に対して円形に印刷された染料の裏面に位置することで、染料が印刷された円形の部分が、より強固に基体保持部に保持される。よって、染料が印刷された部分に撓みおよび折れ曲がり等が生じることが抑制された状態で、基体がより適切に基体保持部に保持される。
【0024】
なお、円環状の溝部は、基体保持部の接触面のうち、基体に印刷された円形の染料の裏面に接触する位置に形成されていることが望ましい。また、円環状の溝部は、同心円状に複数形成されていてもよい。この場合、基体のうち染料が印刷された部分の裏面が、より強固に基体保持部に保持される。
【0025】
基体保持部は、染色用トレイの所定位置に形成されたトレイ勘合部に嵌合する載置位置決め部をさらに備えていてもよい。基体載置装置は、載置位置決め部を染色用トレイのトレイ勘合部に嵌合させた状態で、基体を染色用トレイの所定位置に載置してもよい。この場合、トレイ勘合部と載置位置決め部が嵌合することで、染色用トレイに対する基体保持部の相対位置が、一定の位置に固定される。従って、基体載置装置は、基体をより正確に染色用トレイの所定位置に載置することができる。
【0026】
基体載置装置は、基体保持部を回転させることで、基体保持部の上下を反転させる上下反転部をさらに備えてもよい。基体載置装置の制御部は、基体保持部の上部に基体を保持させた後、上下反転部によって基体保持部の上下を反転させて、基体を前記染色用トレイの所定位置に載置してもよい。一般的に、印刷装置は、基体の上面に染料を印刷する。これに対し、染色用トレイに染料付基体を載置する際には、染料付基体の染料を基体の下方に位置させることで、染色用トレイに載置された樹脂体に、染料付基体の染料を対向させる必要がある。基体載置装置は、上下反転部によって基体保持部の上下を反転させることで、基体の上面に印刷された染料を、容易に樹脂体に対向させることができる。よって、染料付基体が適切に染色用トレイに載置される。
【0027】
なお、上下反転部の構成も適宜選択できる。例えば、上下反転部は、水平に配置された回転軸を中心として基体保持部を回転させることで、基体保持部の上下を反転させてもよい。この場合、上下反転部は、基体保持部の上下を反転させる機能と、基体保持部の位置を回転軸の反対側に移動させる機能を兼ねる。よって、工程が簡略化され易い。
【0028】
基体載置装置は、基体保持部を加熱することで、基体保持部に保持された基体に印刷されている染料(本開示では、染料を含むインク)を乾燥させる加熱部をさらに備えてもよい。この場合、基体載置装置は、染料付基体を染色用トレイに載置する機能に加えて、基体に印刷された染料を乾燥させる機能も備える。よって、より効率良く適切に染色工程が行われる。
【0029】
なお、基体保持部を加熱して基体の染料を乾燥させる場合、通気部は、前述した円環状の溝部を含んでいてもよい。この場合、円環状の溝部が、基体に対して円形に印刷された染料の裏面に位置することで、染料が印刷された円形の部分が、より強固に基体保持部に接触する。その結果、基体保持部から染料に熱が伝導し易くなるので、より適切に染料が乾燥される。
【0030】
また、本開示の染色システムは、以下のように表現することも可能である。樹脂体を染色する染色工程において使用される、前記樹脂体に転写される染料が付着した基体である染料付基体を製造する染料付基体製造装置と、前記染料付基体製造装置によって製造された前記染料付基体の前記染料を、樹脂体に転写する転写装置と、前記転写装置によって前記染料が転写された前記樹脂体を加熱することで、前記樹脂体の表面に付着した前記染料を前記樹脂体に定着させる染料定着装置と、を備え、前記染料付基体製造装置は、基体に染料を印刷する印刷装置と、前記印刷装置によって印刷された前記染料を、染色用トレイに載置された樹脂体に対向させた状態で、前記染色用トレイにおける前記樹脂体の所定位置に前記基体を載置する基体載置装置と、を備えたことを特徴とする染色システム。
なお、本開示では、転写装置が染料を樹脂体に転写する転写方式として、真空中で樹脂体と染料付基体を非接触で対向させた状態で、基体に印刷された昇華性の染料を昇華させることで、染料を樹脂体に転写する気相転写方式を例示する。しかし、転写方式を変更することも可能である。例えば、染料付基体を樹脂体に接触させた状態で、染料が樹脂体に転写されてもよい。これは、下記に示す第2態様および第3態様でも同様である。
【0031】
(第2態様)
本開示で例示する染料付基体製造装置は、染料付基体を製造する。染料付基体は、樹脂体を染色する染色工程において使用される。染料付基体には、樹脂体に転写される染料が付着する。本開示で例示する染料付基体製造装置は、印刷装置、カートリッジ装着部、およびインク攪拌部を備える。印刷装置は、染料を含むインクを基体に印刷する。カートリッジ装着部は、印刷装置に供給されるインクを備えたカートリッジを装着する。インク攪拌部は、カートリッジ装着部にカートリッジが装着された状態で、カートリッジ内のインクを攪拌する。
【0032】
本開示で例示する染料付基体製造装置によると、作業者が手動でインクを攪拌しなくても、インク攪拌部によってカートリッジ内のインクが自動的に攪拌されて、印刷装置に供給される。従って、インク内の染料の濃度が不均一になり易いという性質に関わらず、効率良く適切に樹脂体が染色される。
【0033】
なお、カートリッジの具体的な態様は適宜選択できる。例えば、カートリッジは、インクが充填された袋状の部材(アルミパウチ等)を内蔵していてもよい。この場合、カートリッジ内でインクが乾燥し難くなる。また、可撓性を有するカートリッジの内部に、インクが直接充填されていてもよい。
【0034】
インク攪拌部(染料付基体製造装置の制御部)は、インクを前回攪拌した以後の時間が所定時間以上経過した場合に、カートリッジ内のインクを攪拌してもよい。この場合、カートリッジ内のインクが定期的に攪拌されるので、効率良く適切に樹脂体が染色される。例えば、インク攪拌部は、インクを前回攪拌した以後の経過時間が所定時間となる毎に、インクを定期的に攪拌してもよい。また、インク攪拌部は、インクを前回攪拌した以後の時間が所定時間以上経過し、且つ、印刷装置に対する印刷の開始指示が入力された場合に、インクを攪拌してもよい。
【0035】
インク攪拌部(染料付基体製造装置の制御部)は、印刷装置による印刷が行われていない間に、カートリッジ内のインクを攪拌してもよい。この場合、印刷中には、攪拌が既に行われたインクがインクジェットヘッドに供給されるので、染色品質が向上する。また、インクの目詰まり等の不具合も発生し難くなる。
【0036】
インク攪拌部(制御部)は、印刷装置に電源が投入された以後、印刷装置による印刷が行われるよりも前に、カートリッジ内のインクを攪拌してもよい。つまり、インク攪拌部は、印刷装置に電源が投入されることを契機としてインクを攪拌してもよい。この場合、印刷装置に対する電源の遮断中に物質が沈降していたインクが、インク攪拌部によって自動的に攪拌された後、印刷装置による印刷が実行される。従って、効率良く適切に樹脂体が染色される。
【0037】
なお、インク攪拌部がカートリッジ内のインクを攪拌させるタイミングを変更することも可能である。例えば、インク攪拌部は、印刷装置がインクを印刷した回数が所定回数に達する毎に、インクを攪拌させてもよい。
【0038】
インク攪拌部は、カートリッジ装着部に装着されたカートリッジを、印刷を行う際の使用状態から傾斜させた後、使用状態に戻すことで、カートリッジ内のインクを攪拌させてもよい。この場合、カートリッジの内部に何らかの部材を挿入しなくても、カートリッジ内のインクを適切に攪拌させることができる。
【0039】
ただし、インク攪拌部がカートリッジ内のインクを攪拌させる方法を変更することも可能である。例えば、インク攪拌部は、インクを攪拌させるためのスクリュー等をカートリッジ内に挿入して駆動させることで、カートリッジ内のインクを攪拌させてもよい。
【0040】
カートリッジ装着部は、複数のカートリッジを装着可能であってもよい。インク攪拌部は、カートリッジ装着部に装着された複数のカートリッジのインクを同時に攪拌してもよい。この場合には、複数のカートリッジの各々のインクを個別に攪拌させる場合に比べて、効率良くインクが攪拌される。
【0041】
なお、複数のカートリッジのインクを同時に攪拌させるための方法は、適宜選択できる。例えば、インク攪拌部は、複数のカートリッジが装着されたカートリッジ装着部の全体を、まとめて傾斜させることで、複数のカートリッジのインクを同時に攪拌させてもよい。また、インク攪拌部は、複数のカートリッジの各々に挿入された複数のスクリューを、1つのアクチュエータ(例えばモータ等)によって纏めて駆動することで、複数のカートリッジのインクを同時に攪拌させてもよい。
【0042】
染料付基体製造装置は、カートリッジ装着部に装着されたカートリッジの重量を検出する重量センサをさらに備えてもよい。染料付基体製造装置の制御部は、重量センサによって検出されたカートリッジの重量に基づいて、カートリッジ内のインクの残量に関するインク残量情報を生成してもよい。
【0043】
カートリッジ内のインクの残量を推測する一般的な方法として、インクジェットヘッドからインクを吐出させた回数に基づいて、インクの残量を推測する方法が知られている。しかし、インクの吐出回数に基づいて推測されるインクの残量と、実際のインクの残量の間の誤差は、大きくなり易い。従って、インクの吐出回数に基づいてインクの残量を推測する場合には、インクが完全に使い切られた状態で印刷が行われてインクジェットヘッドに不具合が生じることを抑制するために、推測されるインクの残量に余裕がある状態で、カートリッジの交換を作業者に推奨する必要がある。この場合、カートリッジ内に残存したまま廃棄されるインクの量が増加してしまう。特に、樹脂体染色用の染料が含まれたインクは高価であるため、廃棄されるインクの量を削減することは非常に重要である。
【0044】
これに対し、実際に検出されたカートリッジの重量に基づいて、インク残量情報を生成する場合には、インクの吐出回数を用いて残量を推測する場合に比べて高い精度で情報が生成される。よって、廃棄されるインクの量が適切に削減される。
【0045】
なお、カートリッジの重量に基づいて生成されるインク残量情報の具体的な利用方法等は、適宜選択できる。例えば、制御部は、生成したインク残量情報を、表示部への表示または音声の出力等の方法で出力してもよい。制御部は、カートリッジの重量に基づいて推測されるインクの残量の情報を、表示部への表示等の方法で作業者に通知してもよい。また、制御部は、カートリッジの重量に基づいて推測されるインクの残量の情報に基づいて、カートリッジの交換を作業者に推奨する動作、および、カートリッジが交換されるまで印刷装置による印刷を停止させる動作等の少なくともいずれかを実行してもよい。
【0046】
重量センサは、カートリッジの重量のみを検出してもよい。また、重量センサは、カートリッジと、カートリッジに固定されている部材(例えば、カートリッジが挿入される挿入部等)の合計の重量を検出してもよい。この場合でも、カートリッジに固定されている部材の重量が既知であれば、重量センサによって検出された重量に基づいてインク残量情報が適切に生成される。
【0047】
制御部は、重量センサによって検出されたカートリッジの重量に基づいて、インク攪拌部によるカートリッジ内のインクの攪拌動作を制御してもよい。重量センサによって検出されるカートリッジの重量は、カートリッジ内に残存しているインクの重量に応じて変化する。従って、重量センサによる検出結果に基づいて、インク攪拌部によるインクの攪拌動作が制御されることで、カートリッジ内に残存しているインクの重量に応じた適切な攪拌動作が行われる。
【0048】
なお、重量センサによって検出されたカートリッジの重量に基づいて、インク攪拌部の動作を制御するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、重量センサによって検出されたカートリッジの重量に基づいて、インク攪拌部によってインクを攪拌する時間の間隔を変更してもよい。また、制御部は、重量センサによって検出されたカートリッジの重量に基づいて、インク攪拌部によるインクの攪拌回数等を変更してもよい。
【0049】
制御部は、インク攪拌部によって、カートリッジを使用状態から90度以上傾斜させた状態で、重量センサのゼロ点調整(つまり、重量センサに掛かる重量がゼロである際の検出結果をゼロ(原点)に調整する処理)を行ってもよい。インク攪拌部によって、カートリッジが使用状態から90度以上傾斜すると、カートリッジから重量センサに掛かる重量はゼロとなる。この状態で、重量センサのゼロ点調整が行われることで、重量センサによるカートリッジの重量の検出精度が適切に向上する。つまり、インクを攪拌するためにカートリッジを傾斜させる構成を、重量センサのゼロ点調整にも利用することで、カートリッジの重量の検出精度を効率良く向上させることができる。
【0050】
なお、重量センサのゼロ点調整が行われる場合、インク攪拌部がカートリッジを使用状態から傾斜させる角度は、90度よりも大きくてもよい。この場合、重量センサのゼロ点調整が行われる際に、重量センサにカートリッジの重量が加わってしまう可能性が、より適切に低下する。
【0051】
カートリッジ装着部は、使用状態におけるカートリッジの可動方向を鉛直方向に制限する直動ガイドを備えていてもよい。重量センサは、直動ガイドによって可動方向が制限された状態の、カートリッジの重量を検出してもよい。この場合、重量センサによるカートリッジ重量の検出精度が向上する。よって、重量センサによる検出結果に基づいて生成される、インク残量情報の精度が、さらに向上する。
【0052】
また、重量センサのゼロ点調整を行う方法を変更することも可能である。例えば、染料付基体製造装置は、カートリッジ装着部に装着されたカートリッジを上方に付勢することが可能な付勢手段(例えばバネ等)を備えていてもよい。制御部は、付勢手段によってカートリッジを上方に付勢した状態で、重量センサのゼロ点調整を行ってもよい。
【0053】
また、本開示の染色システムは、以下のように表現することも可能である。樹脂体を染色する染色工程において使用される、前記樹脂体に転写される染料が付着した基体である染料付基体を製造する染料付基体製造装置と、前記染料付基体製造装置によって製造された前記染料付基体の前記染料を、樹脂体に転写する転写装置と、前記転写装置によって前記染料が転写された前記樹脂体を加熱することで、前記樹脂体の表面に付着した前記染料を前記樹脂体に定着させる染料定着装置と、を備え、前記染料付基体製造装置は、染料を含むインクを基体に印刷する印刷装置と、前記印刷装置に供給される前記インクを備えたカートリッジを装着するカートリッジ装着部と、前記カートリッジ装着部に前記カートリッジが装着された状態で、前記カートリッジ内の前記インクを攪拌するインク攪拌部と、を備えたことを特徴とする染色システム。
【0054】
(第3態様)
本開示で例示する染料付基体製造装置は、染料付基体を製造する。染料付基体は、樹脂体を染色する染色工程において使用される。染料付基体には、樹脂体に転写される染料が付着する。本開示で例示する染料付基体製造装置は、印刷装置、搬送装置、および基体移動装置を備える。印刷装置は、樹脂体を染色するための染料(例えば、染料を含むインク等)を、基体に印刷する。搬送装置は、樹脂体が載置された染色用トレイを搬送する。基体移動装置は、印刷装置によって染料が印刷された基体を、印刷装置による印刷位置から搬送装置側へ移動させる。
【0055】
本開示で例示する染料付基体製造装置によると、印刷装置によって染料が印刷された基体が、基体移動装置によって、印刷位置から搬送装置側へ自動的に移動される。従って、作業者が手作業で基体を印刷位置から移動させる必要が無い。よって、より効率良く適切に樹脂体が染色される。
【0056】
染料付基体製造装置は、搬送装置に設置された染色用トレイにおける所定位置に、基体を載置する基体載置装置をさらに備えてもよい。基体移動装置は、印刷装置によって染料が印刷された基体を、印刷装置による印刷位置から基体載置装置に引き渡してもよい。この場合、印刷装置によって染料が印刷された染料付基体は、基体移動装置、基体載置装置、および搬送装置によって、順に自動的に搬送されていく。従って、作業者が行う作業の負担がさらに低下する。
【0057】
なお、基体載置装置と基体移動装置は一体の装置であってもよい。つまり、1つの装置が、印刷位置から搬送装置側へ基体を移動させる機能と、移動させた基体を搬送装置における染色用トレイに載置する機能を共に備えていてもよい。
【0058】
印刷装置は、染料を吐出するヘッドを、基体に対して主走査方向に移動させるキャリッジを備えていてもよい。基体移動装置は、印刷装置による染料の印刷中に、主走査方向に交差する副走査方向に基体を移動させる副走査装置を兼ねてもよい。この場合、装置の構成が複雑になることが抑制された状態で、印刷中の副走査と、印刷位置から搬送装置側への基体の移動が、共に適切に行われる。また、基体移動装置とは別に副走査装置を設ける場合に比べて、装置を設置するスペースを小さくすることも容易となる。
【0059】
印刷装置は、作業者によって操作されることで操作指示が入力され、且つ装置の正面側を向く操作部を備えてもよい。操作部は、作業者が印刷装置の正面側から操作可能な状態で配置されていてもよい。正面側を向く操作部には、印刷装置のメンテナンスを行うための操作指示が入力されてもよい。正面側を向く操作部は、複数種類の操作指示を入力することが可能な操作パネル(例えば、複数のボタンを備えた操作パネル、またはタッチパネル等)であってもよい。搬送装置は、印刷装置の正面側とは反対の側(つまり、背面側)に設置されてもよい。この場合、基体移動装置は、染料が印刷された基体を、印刷装置の背面側に移動させる。作業者は、印刷装置のメンテナンスを、操作部が向く正面側から行う必要がある。従って、搬送装置が印刷装置の背面側に配置されることで、作業者は、印刷装置の正面側から容易に印刷装置のメンテナンスを行うことができる。つまり、作業者による印刷装置のメンテナンス時に、搬送装置等が作業者の邪魔にならない。また、作業者がメンテナンスを行うためのスペースを、搬送装置の近傍に形成する必要が無いので、装置を設置するスペースを小さくし易い。メンテナンスを行うためのスペースを確保するために、搬送装置の搬送経路を迂回させる必要等もなくなるので、搬送経路が長くなることも抑制される。
【0060】
なお、前述した操作部は、作業者によって正面側から操作されるように正面側を向いていればよい。従って、操作部が設けられる位置は、印刷装置の筐体における正面に配置されていてもよいまた、操作部は、正面とは異なる面(例えば、筐体の上面等)において、正面側を向いて配置されていてもよい。
【0061】
基体移動装置は、基体支持部と吸引孔を備えてもよい。基体支持部は、基体が載置される支持面を有する。吸引孔は、基体支持部の支持面に形成される。吸引孔から気体が吸引されることで、基体支持部の支持面に基体が吸着されてもよい。この場合、基体移動装置は、気体の吸引を利用することで、基体の損傷および変形等が発生することを抑制して適切に基体を基体支持部に支持させることができる。
【0062】
なお、基体移動装置は、基体支持部を少なくとも一次元方向に移動させる移動駆動部(例えばスライダ等)をさらに備えてもよい。この場合、基体移動装置は、基体を支持した基体支持部を、移動駆動部によって移動させることで、基体を適切に移動させることができる。つまり、ピンチローラ等によって基体を移動させる場合とは異なり、基体に撓みおよび折れ曲がり等が生じることが抑制された状態で、適切に基体が移動される。
【0063】
ただし、基体移動装置の構成を変更することも可能である。例えば、基体移動装置は、ピンチローラおよびロボットアーム等の少なくともいずれかによって、印刷位置から搬送装置側に基体を移動させてもよい。
【0064】
吸引孔は、少なくとも基体支持部の支持面の外周部に沿って複数設けられていてもよい。この場合、基体が、基体支持部の支持面の全体に吸着され易くなる。従って、基体の損傷および変形等が発生する可能性がさらに低下する。
【0065】
基体が金属製の層(例えば、アルミ箔等)を含んでいてもよい。基体は、可撓性を有していてもよい。基体の厚みは、1μm~1000μmであってもよい。金属製の層を含む基体を、ピンチローラによって移動させる場合、ピンチローラから基体に加わる力の応力によって、基体が撓んでしまう可能性がある。これに対し、基体支持部の支持面に基体を吸着させた状態で、基体支持部を移動させることで、基体が撓むことが適切に抑制される。なお、基体は、金属製の層に、印刷された染料の保持力を高める染料保持層(例えば、親水性高分子膜の層等)が積層されることで形成されていてもよい。この場合、基体に印刷された染料が適切に保持され易い。
【0066】
また、本開示の染色システムは、以下のように表現することも可能である。樹脂体を染色する染色工程において使用される、前記樹脂体に転写される染料が付着した基体である染料付基体を製造する染料付基体製造装置と、前記染料付基体製造装置によって製造された前記染料付基体の前記染料を、樹脂体に転写する転写装置と、前記転写装置によって前記染料が転写された前記樹脂体を加熱することで、前記樹脂体の表面に付着した前記染料を前記樹脂体に定着させる染料定着装置と、を備え、前記染料付基体製造装置は、基体に染料を印刷する印刷装置と、前記樹脂体が載置された染色用トレイを搬送する搬送装置と、前記印刷装置によって前記染料が印刷された前記基体を、前記印刷装置による印刷位置から前記搬送装置側へ移動させる基体移動装置と、を備えたことを特徴とする染色システム。
【0067】
<実施形態>
以下、本開示に係る典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。染色システム1は、樹脂体を自動的に連続して染色する。本実施形態では、染色する対象とする樹脂体は、眼鏡に使用されるプラスチック製のレンズL(
図2等参照)である。しかし、本開示で例示する技術の少なくとも一部は、レンズL以外の樹脂体を染色する場合にも適用できる。例えば、ゴーグル、携帯電話のカバー、ライト用のカバー、アクセサリー、玩具、フィルム(例えば、厚みが400μm以下)、板材(例えば、厚みが400μm以上)等、種々の樹脂体を染色する場合に、本開示で例示する技術の少なくとも一部を適用することも可能である。染色される樹脂体には、樹脂体とは異なる部材(例えば、木材またはガラス等)に付加された樹脂体も含まれる。また、本実施形態の染色システム1は、複数の樹脂体を連続して搬送しながら染色する。しかし、樹脂体を1セットずつ搬送して染色する染色システムにも、本開示で例示する技術の少なくとも一部を採用できる。
【0068】
(システム構成)
図1を参照して、本実施形態の染色システム1のシステム構成について概略的に説明する。本実施形態の染色システム1は、搬送装置10、前準備ユニット20、染料付基体製造装置30、転写装置40、染料定着装置50、コーティング装置60、および制御装置70を備える。
【0069】
搬送装置10は、樹脂体であるレンズLが載置された染色用トレイ80(
図2,3参照)を、染色システム1内の各装置に搬送する。詳細には、本実施形態の搬送装置10は、複数の染色用トレイ80を、染色システム1内で連続して搬送する。本実施形態の搬送装置10は、前準備ユニット20、染料付基体製造装置30、転写装置40、染料定着装置50、およびコーティング装置60の順に(つまり、
図1における左から右に)染色用トレイ80を搬送する。
【0070】
前準備ユニット20は、レンズLに対する染料の転写および定着を実際に実行する前の準備を行う。詳細には、本実施形態の前準備ユニット20は、光学特性測定装置21および回転装置22を備える。
【0071】
光学特性測定装置21は、レンズLの光学特性を測定する測定光学系を備える。光学特性測定装置21は、レンズLに測定光束を投光し、レンズLを経た測定光束を受光することで、レンズLの光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、プリズム度数等)を読み取る。レンズLの乱視軸角度が測定されることで、レンズLの回転方向の角度が判別される。光学特性測定装置21には公知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する(光学特性測定装置21の構成は、例えば特開2012-107910号公報等に記載されている)。
【0072】
回転装置22は、レンズLを支持する支持部と、支持部によって支持されたレンズLを回転させるアクチュエータ(例えばモータ等)を備える。回転装置22は、レンズLを回転させることで、レンズLの回転方向を規定する。本実施形態の回転装置22は、光学特性測定装置21によって測定されたレンズLの回転方向の角度に基づいて、レンズLを回転させることで、レンズLの回転方向を目標とする方向に規定する。本実施形態の染色システム1は、グラデーション染色を実行する場合であり、且つ、レンズLが幾何中心軸を中心として対象な形状でない場合に、レンズLを回転させることで、基体Sに印刷されるインク(染料)の角度に対してレンズLの角度を合わせる。
【0073】
染料付基体製造装置30は、樹脂体(レンズL)を染色する染色工程において使用される染料付基体を製造する。染料付基体は、シート状の基体S(
図4参照)と、基体Sの一方の面に付着する染料とを備える。本実施形態では、基体Sは、金属製の層(本実施形態ではアルミニウムの箔の層)を有し、可撓性を有する。詳細には、基体Sは、金属製の層に、印刷された染料の保持力を高めるための染料保持層(本実施形態では、親水性高分子膜の層)が積層されることで形成されている。従って、基体Sに印刷された染料が、適切に保持され易い。なお、本実施形態における基体Sの厚みは、1μm~1000μmである。ただし、基体Sの材質には、紙、ガラス板、耐熱性樹脂、セラミック等の他の材質を用いることも可能である。
【0074】
本実施形態の染料付基体製造装置30は、印刷装置100(
図4参照)を備える。印刷装置100は、染料を含むインクを基体Sに印刷することで、染料付基体を製造する。なお、本実施形態の染色システム1では、染料の凝集等を防ぎつつ染料を適切にレンズLに転写するために、真空(略真空を含む)の環境下で基体SとレンズLを離間させて対向させた状態で、基体Sの染料が加熱されることで、染料がレンズLの表面に転写(蒸着)される(本実施形態における染色方法を、気相転写染色方法という)。従って、印刷装置100には、昇華性染料を含有したインクを基体Sに印刷するインクジェットプリンタが使用される。また、印刷装置100は、昇華性染料を含有していない通常のインクを基体Sに印刷することも可能である。印刷装置100は、情報処理装置(本実施形態ではパーソナルコンピュータ(以下「PC」という)である制御装置70によって作成された印刷データに基づいて印刷を実行する。その結果、基体Sの適切な位置に適切な量のインク(染料)が付着する。グラデーションの染色を行うための染料付基体Sの作成も容易である。
【0075】
なお、印刷装置100の構成を変更することも可能である。例えば、印刷装置はレーザープリンタであってもよい。この場合、トナーに昇華性染料が含まれていてもよい。また、印刷装置100の代わりに、ディスペンサー(液体定量塗布装置)、ローラ等によって、基体Sに染料が付着されてもよい。染料付基体製造装置30の詳細については後述する。
【0076】
転写装置40は、基体Sに付着した染料を、レンズLに対向させた状態で、染料を基体SからレンズLに転写する。前述したように、本実施形態では、気相転写法によって基体SからレンズLに染料が転写される。ただし、染料をレンズLに転写する方法を変更することも可能である。例えば、基体Sの染料とレンズLを接触させた状態で、染料が基体SからレンズLに転写されてもよい。
【0077】
染料定着装置50は、転写装置40によって染料が転写されたレンズLを加熱することで、レンズLの表面に付着した染料を樹脂体に定着させる。本実施形態の染料定着装置50は、電磁波であるレーザ光をレンズLに照射することで、レンズLを加熱する。ただし、レーザ光以外の電磁波をレンズLに照射する装置(例えばオーブン等)が、染料定着装置として用いられてもよい。
【0078】
コーティング装置60は、染料定着装置50によって染料が定着されたレンズLの表面にコーティングを行う。コーティング装置60がレンズLのコーティングを行うための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、スプレー方式、インクジェット方式、スピン方式、ディップ方式等の少なくともいずれかが、コーティング方法として採用されてもよい。コーティングの種類も、多くの種類(例えば、ハードコート、反射防止コート、撥水コート、プライマーコート等)から適宜選択されればよい。
【0079】
制御装置70は、染色システム1における各種制御を司る。制御装置70には、種々の情報処理装置(例えば、PC、サーバ、および携帯端末等の少なくともいずれか)を使用できる。制御装置70は、制御を司るコントローラ(例えばCPU等)71と、各種データを記憶するデータベース72を備える。なお、制御装置70の構成を変更することも可能である。まず、複数のデバイスが協働して制御装置70として機能してもよい。例えば、染色システム1における各種制御を司る制御装置と、データベース72を備えた制御装置が別のデバイスであってもよい。また、複数のデバイスのコントローラが協働して、染色システム1における各種制御を実行してもよい。例えば、搬送装置10、光学特性測定装置21、回転装置22、染料付基体製造装置30、転写装置40、染料定着装置50、およびコーティング装置60の少なくともいずれかがコントローラを備える場合も多い。この場合、制御装置70のコントローラと他の装置のコントローラが協働して、染色システム1の制御を司ってもよい。
【0080】
(染色用トレイ)
図2および
図3を参照して、本実施形態の染色システム1で使用される染色用トレイ80について説明する。
図2は、2つのレンズLが設置(載置)され、且つ基体Sが設置されていない状態の染色用トレイ80の斜視図である。
図3は、2つの装着部82のうちの一方に装着される載置枠89、レンズL、およびスペーサ87を分解して示す、染色用トレイ80の斜視図である。
【0081】
図2および
図3に示すように、本実施形態の染色用トレイ80は、トレイ本体81、載置枠89、およびスペーサ87を備える。トレイ本体81、載置枠89、およびスペーサ87は、いずれも、高温および低圧(略真空)に耐えることが可能な材質で形成されている。載置枠89には、染色対象となる樹脂体(本実施形態ではレンズL)が載置される。本実施形態の載置枠89は、レンズLよりもやや大きい外径を有するリング状に形成されている。スペーサ87は、載置枠89のうち、レンズLが載置される部位の外周部から上方に筒状(円筒状)に延びる。トレイ本体81には装着部82が形成されている。装着部82には、載置枠89およびスペーサ87が着脱可能に装着される。本実施形態では、1つのトレイ本体81に2つの装着部82が形成されている。従って、1つの眼鏡に使用される一対(左右)のレンズLが、1つの染色用トレイ80に載置された状態で染色される。
【0082】
トレイ本体81のうち、装着部82よりも上方の外側に、昇華性染料が付着するシート状の基体S(
図4参照)が載置される基体載置部85が形成されている。基体載置部85に基体Sが載置されることで、基体Sに付着した昇華性染料が、載置枠89に載置されたレンズLに対向する。
【0083】
筒状であるスペーサ87は、基体載置部85に載置された基体Sと、載置枠89に載置されたレンズLとの間に空間を形成する。従って、スペーサ87によって形成された空間を通じて、基体SからレンズLへ昇華性染料が適切に転写される。載置枠89およびスペーサ87が装着部82に装着されると、スペーサ87の上端部は、基体載置部85の載置面よりも上方に突出する。従って、基体載置部85に載置された基体Sと、スペーサ87の上端部とが密着し易くなるので、昇華された染料が外部に漏洩し難くなる。
【0084】
トレイ本体81のうち、装着部82よりも外側(詳細には、基体載置部85よりも外側)の位置には、基体Sが載置される基体載置部85の載置面よりも上方に突出する突部84が設けられている。
【0085】
本実施形態の基体Sの形状は、2つの装着部82を共に覆う矩形のシート状である。本実施形態では、染色用トレイ80の適切な位置に載置された状態(つまり、基体載置部85に適切に載置された状態)の基体Sの外周に沿う位置に、複数(8個)の突部84が形成されている。従って、複数の突部84によって囲まれる領域(基体載置部85)に基体Sが載置されることで、基体SがレンズLに対して適切に位置決めされる。また、載置された基体Sの位置がレンズLに対してずれてしまう可能性も低下する。つまり、本実施形態における複数の突部84の少なくとも一部(本実施形態では、全ての突部84)は、基体SをレンズLに対して位置決めする位置決め部として機能する。
【0086】
また、染色用トレイ80における複数の突部84の少なくとも一部(本実施形態では、全ての突部84)は、後述する基体載置装置400の基体保持部410に形成された載置位置決め部413(
図11参照)に嵌合する。その結果、染色用トレイ80に対する基体保持部410の相対位置が、予め定められた位置に固定される。つまり、本実施形態における突部84は、基体保持部410の載置位置決め部413に嵌合するトレイ勘合部として機能する。この詳細は後述する。
【0087】
なお、複数の突部84をトレイ本体81に設ける場合、突部84の数が8つに限定されないことは言うまでもない。また、突部84の形状を変更することも可能である。例えば、突部は、基体Sの外周に沿う位置から上方に延びるリブ状の部材であってもよい。
【0088】
(染料付基体製造装置)
図4から
図12を参照して、本実施形態の染料付基体製造装置30について説明する。以後の説明では、
図4における紙面右上側を染料付基体製造装置30の正面側とし、紙面左下側を染料付基体製造装置30の背面側とする。
図4における紙面右下側を染料付基体製造装置30の左側とし、紙面左上側を染料付基体製造装置30の右側とする。なお、
図4、
図8、
図9、
図10は、各装置を左斜め後方から見た斜視図である。一方で、
図5は、装置を左斜め前方から見た斜視図である。また、
図11および
図12は、装置を右斜め前方(
図4における矢印Fの方向)から見た斜視図である。
【0089】
図4に示すように、本実施形態の染料付基体製造装置30は、印刷装置100、基体受け渡し装置200、基体移動装置300(
図9および
図10参照)、および基体載置装置400を備える。基体移動装置300は、
図4では印刷装置100の内部に移動した状態であるため、
図4には表れていない。基体移動装置300は、基体受け渡し装置200よりも印刷装置100側に配置されている。印刷装置100、基体受け渡し装置200、基体移動装置300、および基体載置装置400の各々は、筐体31に組み付けられている。また、筐体31には、搬送装置10も組み付けられている。
【0090】
印刷装置100は、シート状の基体Sに、染料を含むインクを印刷する。基体受け渡し装置200は、インクが印刷されていない基体Sをストックする基体ストック部210から、基体移動装置300(
図9および
図10参照)に基体Sを受け渡す。基体移動装置300は、印刷装置100によってインクが印刷された基体S(染料付基体)を、印刷装置100による印刷位置から、搬送装置10側へ移動させる。また、基体受け渡し装置200は、インクが印刷された基体Sを、基体移動装置300から基体載置装置400に受け渡す。基体載置装置400は、染色用トレイ80に載置されたレンズL(
図2および
図3参照)に、印刷された染料(インク)を対向させた状態で、染色用トレイ80におけるレンズLの所定位置(基体載置部85)に、基体Sを載置する。以下、各部の詳細について説明する。
【0091】
(搬送装置)
図4を参照して、搬送装置10について説明する。搬送装置10は、搬送方向に延びる一対のレール11を備える。レール11の近傍には、レール11に沿って配置された回転ベルト12が設けられている。回転ベルト12は、搬送モータ(例えば、ステップモータ)13に接続されている。搬送モータ13が駆動することで、回転ベルト12が回転する。回転ベルト12が回転することで、染色用トレイ80がレール11に沿って搬送方向に移動する。
【0092】
搬送装置10は、複数のトレイ位置決め部14を備える。トレイ位置決め部14は、一対のレール11の間の搬送経路上の所定位置に設けられている。上下動アクチュエータ(図示せず)によってトレイ位置決め部14が上方に移動すると、搬送経路を搬送されてきた染色用トレイ80にトレイ位置決め部14が接触し、所定箇所で染色用トレイ80の搬送が停止する。従って、本実施形態の搬送装置10は、搬送経路上の所定位置で染色用トレイを正確に停止させることができる。さらに、レール11の複数の位置には、染色用トレイ80の有無を検出するためのセンサ(図示せず)が設けられている。制御装置70は、複数のセンサの各々の検出結果に基づいて、搬送装置10によって搬送されている染色用トレイ80の位置を検出することができる。
【0093】
本実施形態の搬送装置10は、
図4における左上側から右下側に染色用トレイ80を搬送する。搬送装置10の搬送経路のうち、
図4に示す搬送経路よりも下流側(
図4における右下側)には、転写装置40および染料定着装置50等(
図1参照)が配置されている。染料付基体製造装置30は、印刷装置100によってインクを印刷した基体(染料付基体)Sを、基体載置装置400によって染色用トレイ80に載置する。その後、染色用トレイ80は、搬送装置10によって転写装置40に搬送される。なお、印刷装置100と搬送装置10の位置関係については後述する。
【0094】
(印刷装置)
図4~
図7を参照して、印刷装置100について説明する。本実施形態の印刷装置100は、染料(詳細には昇華性染料)を含有したインクを基体Sに印刷することが可能なインクジェットプリンタである。
図4に示すように、印刷装置100は、インクジェットヘッド110、キャリッジ120、操作部130、およびカートリッジ装着部140を備える。また、
図5~
図7に示すように、印刷装置100は、インク攪拌部150を備える。
【0095】
図4に示すように、インクジェットヘッド110は、印刷装置100の内部に設けられている。インクジェットヘッド110は、インクを吐出する。詳細には、インクジェットヘッド110には、複数(本実施形態では8個)のインク吐出部が設けられている。それぞれのインク吐出部は、カートリッジ装着部140に装着される複数(本実施形態では8個)のカートリッジ141(
図5~
図7参照)の各々から供給されるインクを、基体Sに向けて下方に吐出する。
【0096】
キャリッジ120は、インクジェットヘッド110を、基体Sに対して主走査方向MDに移動させる。染料付基体製造装置30の制御部(本実施形態では、コントローラ71)は、キャリッジ120が備える主走査モータ(図示せず)の駆動を制御することで、インクジェットヘッド110を主走査方向MDに移動させる。なお、コントローラ71は、基体Sとインクジェットヘッド110の相対的な主走査および副走査を制御しつつ、インクジェットヘッド110からのインクの吐出を制御することで、基体Sの二次元の領域にインクを印刷する。本実施形態における副走査の方法については後述する。
【0097】
操作部130は、印刷装置の正面側(
図4における右上側)を向いて設置されている。換言すると、操作部130は、印刷装置100の正面側から作業者が操作できる状態で配置されている。操作部130は、印刷装置100のメンテナンス時に作業者によって操作される。つまり、正面側を向く操作部130には、メンテナンスを行うための操作指示が入力される。本実施形態の操作部130は、複数種類の操作指示を入力することが可能な操作パネルであり、例えば、複数のボタンおよびタッチパネル等の少なくともいずれかを備える。操作部130が作業者によって操作されることで、各種操作指示が印刷装置100に入力される。従って、作業者は、印刷装置100のメンテナンスを行う場合等に、印刷装置100の正面側から操作部130を操作する。なお、本実施形態の操作部130は、印刷装置100の筐体における正面に設置されている。しかし、操作部は、筐体の正面とは異なる面(例えば上面等)において、正面を向くように設置されていてもよい。
【0098】
ここで、染色用トレイ80を搬送する搬送装置10は、印刷装置100の正面側とは反対の側(つまり、印刷装置100の背面側)に設置されている。従って、印刷装置100の正面側(つまり、操作部130が向く側)に搬送装置10が設置されている場合とは異なり、作業者が操作部130を操作する際に、搬送装置10が操作の妨げになり難い。よって、作業者は、印刷装置100の正面側から容易に印刷装置100のメンテナンス等を行うことができる。また、作業者がメンテナンスを行うためのスペースを、搬送装置10の近傍に形成する必要が無いので、装置を設置するスペースを小さくし易い。メンテナンスを行うためのスペースを確保するために、搬送装置10の搬送経路を迂回させる必要等もなくなるので、搬送経路が長くなることも抑制される。
【0099】
図5~
図7を参照して、本実施形態のカートリッジ装着部140について詳細に説明する。カートリッジ装着部140は、インクジェットヘッド110に供給されるインクを備えるカートリッジ141を装着する。本実施形態のカートリッジ141は、適度な剛性を有する筐体の内部に、インクが充填された袋(アルミパウチ)が配置されることで構成されている。
図5に示すように、カートリッジ装着部140は、挿入部143および直動ガイド145を複数(本実施形態では8個)備える。各々の挿入部143には、カートリッジ141が挿入される。つまり、本実施形態のカートリッジ装着部140は、複数のカートリッジ141を装着することができる。本実施形態では、筒状である挿入部143の内部にカートリッジ141が挿入されることで、カートリッジ141がカートリッジ装着部140に装着される。また、挿入部143には、直動ガイド145が挿通されるガイド孔が形成されたガイド片144が固定されている。
【0100】
直動ガイド145は、カートリッジ141が挿入される挿入部143の可動方向を、一次元方向に制限(ガイド)する。詳細には、本実施形態の直動ガイド145は、印刷装置100によるインクの印刷が行われる際の使用状態(
図6に示す状態)において、挿入部143の可動方向を鉛直方向(上下方向)に制限する。本実施形態では、使用状態において鉛直方向に延びる直動ガイド145に、挿入部143に固定されたガイド片144のガイド孔が挿通されることで、挿入部143(カートリッジ141)の可動方向が鉛直方向に制限される。
【0101】
図6および
図7に示すように、カートリッジ装着部140は、複数(本実施形態では8個)の重量センサ147を備える。各々の重量センサ147は、カートリッジ装着部140に装着された複数のカートリッジ141の各々の重量を、使用状態中に検出する。
図6に示すように、本実施形態における複数の重量センサ147の各々は、使用状態中に挿入部143の底部に接触する位置に設けられている。従って、使用状態中には、挿入部143の重量と、挿入部143に装着されたカートリッジ141の重量の合計値が、重量センサ147によって検出される。
【0102】
本実施形態では、重量センサ147によって検出された重量から、挿入部143の重量と、カートリッジ141の筐体の重量を引いた重量は、カートリッジ141の筐体の内部に残存しているインクの重量に近似する。従って、コントローラ71は、重量センサ147によって使用状態中に検出された重量に基づいて、カートリッジ141内のインクの残量に関するインク残量情報を生成することができる。例えば、染料付基体製造装置30は、インクが完全に空となった状態のカートリッジ141が挿入部143に装着された状態で、重量センサ147によって検出された重量を、オフセット値としてデータベース72に記憶していてもよい。コントローラ71は、重量センサ147によって検出される重量と、オフセット値に基づいて、インク残量情報を生成してもよい。
【0103】
前述したように、使用状態における挿入部143の可動方向は、直動ガイド145によって鉛直方向に制限されている。その結果、重量センサ147によるカートリッジ141の重量(詳細には、カートリッジ141と挿入部143の合計重量)の検出精度が向上する。
【0104】
また、本実施形態では、各々の挿入部143には、ニードル、チューブ、および電磁弁が設けられている。挿入部143にカートリッジ141が装着されると、カートリッジ141内のアルミパウチのゴム栓をニードルが貫く。その結果、カートリッジ141内のインクが、ニードルおよびチューブを介してインクジェットヘッド110に供給される。また、電磁弁は、チューブの圧迫と解放を切り替えることで、チューブ内のインクの流動を制御することができる。例えば、コントローラ71は、カートリッジ141の交換時に、電磁弁によってチューブ内のインクの流動を停止させることで、チューブ内に空気が混入する可能性を低下させることができる。
【0105】
図5~
図7を参照して、本実施形態のインク攪拌部150について説明する。インク攪拌部150は、カートリッジ装着部140にカートリッジ141が装着された状態で、カートリッジ141内のインクを攪拌する。従って、作業者が手動でインクを攪拌しなくても、インク攪拌部150によってカートリッジ141内のインクが自動で攪拌されて、インクジェットヘッド110に供給される。従って、染料を含むインクの濃度に差が生じやすいという性質に関わらず、インクが適切に基体Sに印刷される。
【0106】
本実施形態のインク攪拌部150は、カートリッジ装着部140に装着されたカートリッジ141を、印刷を行う際(つまり、インクジェットヘッド110にインクを供給する際)の使用状態(
図6に示す状態)から、傾斜状態(
図7に示す状態)まで傾斜させる。その後、インク攪拌部150は、カートリッジ141を傾斜状態から使用状態に戻す。その結果、カートリッジ141の内部に何らかの部材を挿入しなくても、カートリッジ141内のインクが適切に攪拌される。
【0107】
詳細には、インク攪拌部150は、アクチュエータ(本実施形態ではソレノイド)151と回転支持部152を備える。回転支持部152は、複数の挿入部143を備えたカートリッジ装着部140を、回転軸153を中心として回転可能に支持する。アクチュエータ151の作動部(本実施形態ではソレノイドの作動軸)は、回転支持部152のうち、回転軸153からずれた位置(本実施形態では、
図6における回転軸153よりも下方)に接続されている。従って、アクチュエータ151が作動することで、カートリッジ装着部140に装着されたカートリッジ141は、回転軸153を中心として、印刷を行う際の使用位置(
図6参照)と、インクを攪拌する際の傾斜位置(
図7参照)との間で回転する詳細には、アクチュエータ151が作動軸を押し出すことで、カートリッジ141は使用状態(
図6参照)となり、アクチュエータ151が作動軸を引き込むことで、カートリッジ141は傾斜状態(
図7参照)となる。従って、カートリッジ141内のインクが適切に攪拌される。
【0108】
前述したように、カートリッジ装着部140は、複数のカートリッジ141を装着可能である。インク攪拌部150は、1つのアクチュエータ151を作動させて、複数のカートリッジ141が装着されたカートリッジ装着部140の全体を傾斜させることで、複数のカートリッジ141のインクを同時に攪拌することができる。よって、複数のカートリッジ141のインクが、より効率良く攪拌される。
【0109】
コントローラ71(本実施形態における染料付基体製造装置30の制御部)は、印刷装置100に電源が投入された以後であり、且つ、印刷装置100による印刷が行われるよりも前に、インク攪拌部150によってカートリッジ141内のインクを攪拌させる。換言すると、本実施形態のコントローラ71は、印刷装置100に電源が投入されたことを契機としてインクを攪拌する。従って、印刷装置100に対する電源の遮断中に染料の濃度が不均一となったカートリッジ141内のインクが、インク攪拌部150によって自動的に攪拌された後、印刷装置100による印刷が実行される。
【0110】
また、コントローラ71は、インクを前回攪拌した以後の時間が所定時間以上経過した場合に、インク攪拌部150によってカートリッジ141内のインクを攪拌させる。従って、カートリッジ141内のインクが定期的に攪拌されるので、レンズLが適切に染色される。なお、コントローラ71は、インクを前回攪拌した以後の時間が所定時間となる毎に、インクを定期的に攪拌させる。しかし、コントローラ71は、インクを前回攪拌した以後の時間が所定時間以上経過し、且つ、印刷装置100に対する印刷の開始指示が入力された場合に、インクを攪拌してもよい。
【0111】
また、コントローラ71は、印刷装置100による印刷が行われていない間に、カートリッジ141内のインクを攪拌させる。従って、印刷中には、攪拌が既に行われたインクがインクジェットヘッド110に供給されるので、染色品質が向上する。また、インクの目詰まり等の不具合も生じにくくなる。
【0112】
コントローラ71は、重量センサ147によって検出されたカートリッジ141の重量に基づいて、インク攪拌部150によるカートリッジ141内のインクの攪拌動作を制御する。従って、カートリッジ141内に残存しているインクの重量に応じた適切な攪拌動作が行われる。例えば、コントローラ71は、重量センサ147によって検出された重量に基づいて、インク攪拌部150によってインクを攪拌する時間の間隔を変更してもよい。また、コントローラ71は、重量センサ147によって検出された重量に基づいて、インク攪拌部150によるインクの攪拌回数等を変更してもよい。
【0113】
前述したように、コントローラ71は、重量センサ147によって検出された重量に基づいて、カートリッジ141内のインクの残量に関するインク残量情報を生成する。従って、インクの吐出回数を用いて残量を推測する場合に比べて高い精度で、インクの残量に関する情報が生成される。詳細には、本実施形態では、コントローラ71は、重量センサ147によって検出された重量に基づいて推測されるインクの残量の情報を、表示部(図示せず)への表示または音声等によって、作業者に通知する。また、コントローラ71は、重量センサ147によって検出された重量に基づいて推測されるインクの残量が、第1閾値以下となった場合に、カートリッジ141の交換を作業者に推奨するための交換推奨動作を実行する。さらに、コントローラ71は、推測されるインクの残量が、第1閾値よりも小さい第2閾値以下となった場合に、カートリッジ141が交換されるまで印刷を停止させる印刷停止動作を実行する。なお、本実施形態で説明した、インク残量情報の出力方法は、あくまでも例示に過ぎない。つまり、インク残量情報の出力方法を変更することも勿論可能である。
【0114】
図7に示すように、本実施形態のインク攪拌部150では、使用状態のカートリッジ141に対する、傾斜状態のカートリッジ141の回転角度θが、90度以上に設定されている。詳細には、本実施形態では、回転角度θは90度よりも大きい角度(例えば、93度~95度)に設定されている。従って、カートリッジ141が傾斜状態とされている間、カートリッジ141から重量センサ147に係る重量はゼロとなる。コントローラ71は、カートリッジ141が傾斜状態とされている間に(つまり、インク攪拌部150によってカートリッジ141を使用状態から90度以上傾斜させた状態で)、重量センサ147のゼロ点調整を実行する。従って、重量センサ147による重量の検出精度が適切に向上する。
【0115】
(基体受け渡し装置)
図8を参照して、基体受け渡し装置200について説明する。前述したように、基体受け渡し装置200は、基体ストック部210から基体移動装置300(
図9および
図10参照)に、インクが印刷されていない基体Sを受け渡す。また、基体受け渡し装置200は、インクが印刷された基体Sを、基体移動装置300から基体載置装置400(
図11および
図12参照)に受け渡す。
【0116】
基体ストック部210には、インクが印刷されていない基体Sが積層されてストックされる。本実施形態では、積層された複数の基体Sを備えたカセット211が、作業者によって基体ストック部210に装着されることで、基体Sが基体ストック部210にストックされる。
【0117】
基体ストック部210の上方には、測距センサ213が設けられている。測距センサ213は、基体ストック部210にストックされている基体Sのうち、最も上部に位置する基体Sの位置(高さ)を検出する。また、染料付基体製造装置30は、昇降装置214を備える。昇降装置214は、基体ストック部210を昇降(上下動)させる。本実施形態では、コントローラ71は、測距センサ213によって検出される最上部の基体Sの位置(高さ)が、所定の位置となるように、昇降装置214の駆動を制御する。従って、基体受け渡し装置200は、基体ストック部210の最上部の基体Sを安定して受け取ることができる。
【0118】
基体受け渡し装置200は、吸引保持部220、第1スライダ230、第2スライダ240、および昇降装置250を備える。吸引保持部220は、気体の吸引を利用して基体Sを保持する。本実施形態では、吸引保持部220の本体は、複数の円形の孔が形成された板状の部材である。吸引保持部220は、複数の吸引口221を備える。複数の吸引口221は、吸引保持部220の本体から下方を向くと共に、気体を吸引するエジェクタ(図示せず)に接続されている。エジェクタは、ベンチュリ―効果を利用して負圧を生成させる。なお、エジェクタの代わりにポンプ等が使用されてもよい。第1スライダ230は、吸引保持部220を第1方向(本実施形態では、染料付基体製造装置30における左右方向)に移動させる。第2スライダ240は、吸引保持部220を、第1方向に水平に交差する方向(本実施形態では、染料付基体製造装置30における前後方向)に移動させる。また、昇降装置250は、吸引保持部220を昇降(上下動)させる。
【0119】
コントローラ71は、第1スライダ230および第2スライダ240の駆動を制御し、吸引保持部220を基体ストック部210の上方に位置させた状態で、昇降装置250によって吸引保持部220を所定距離降下させる。その結果、吸引保持部220における複数の吸引口221が、基体ストック部210の最上部の基体Sに接触する。次いで、コントローラ71は、エジェクタ(図示せず)によって吸引口221から気体を吸引させることで、吸引保持部220に基体Sを保持させる。次いで、コントローラ71は、第1スライダ230、第2スライダ240、および昇降装置250の駆動を制御することで、基体移動装置300(
図9および
図10参照)の所定位置に基体Sを移動させる。詳細には、吸引保持部220は、基体移動装置300の基体支持部330よりも高い位置に配置されている。コントローラ71は、基体Sを保持した状態の吸引保持部220を、基体移動装置300の基体支持部330の上方(鉛直上方)に移動させる。その後、コントローラ71は、吸引口221からの気体の吸引を解除することで、基体Sを基体移動装置300の基体支持部330に引き渡す。
【0120】
また、コントローラ71は、第1スライダ230および第2スライダ240の駆動を制御し、吸引保持部220を基体支持部330(
図9および
図10参照)の上方に位置させた状態で、昇降装置250によって吸引保持部220を所定距離降下させる。その結果、吸引保持部220における複数の吸引口221が、基体支持部330上の基体Sに接触する。次いで、コントローラ71は、エジェクタ(図示せず)によって吸引口221から気体を吸引させることで、吸引保持部220に基体Sを保持させる。次いで、コントローラ71は、第1スライダ230、第2スライダ240、および昇降装置250の駆動を制御することで、基体Sを保持した状態の吸引保持部220を、基体載置装置400の基体保持部410の上方に移動させる。その後、コントローラ71は、吸引口221からの気体の吸引を解除することで、基体Sを基体載置装置400に引き渡す。
【0121】
(基体移動装置)
図9および
図10を参照して、基体移動装置300について説明する。
図9に示すように、基体移動装置300は、印刷装置100の内部においてインクジェットヘッド110(
図4参照)による印刷が行われる位置(印刷位置)から、印刷装置100の外部に設置された搬送装置10(
図4参照)側へ、基体Sを移動させることができる。前述したように、本実施形態の搬送装置10は、印刷装置100の背面側(
図9における紙面左下側)に配置される。従って、基体移動装置300は、印刷装置100の内部の印刷位置から、印刷装置100の背面側へ、基体Sを移動させる。
【0122】
図10に示すように、本実施形態の基体移動装置300は、ベース部310、振動吸収材320、基体支持部330、およびスライダ340を備える。ベース部310は、基体支持部330を含む基体移動装置300の全体を支持するベースとなる板状の部材である。ベース部310は、振動吸収材(例えば免震ゴム等)320を介して印刷装置100(
図4参照)に固定される。振動吸収材320は、振動を吸収する。本実施形態では、複数の振動吸収材320の重心位置と、印刷装置100の重心位置が平面視で一致するように、振動吸収材320が複数箇所に設置されている。
【0123】
基体支持部330は、基体Sを下方から支持する。本実施形態の基体移動装置300では、2つの基体支持部330が、左右方向(印刷装置100の主走査方向MDに沿う方向)に並べて設けられている。しかし、基体移動装置300が備える基体支持部330の数は、1つでもよいし3つ以上でもよい。
【0124】
本実施形態の基体支持部330は、支持面331、吸引孔332、およびポンプ接続部333を備える。支持面331には、基体Sが載置される。本実施形態の支持面331は、水平に配置された平坦面である。また、本実施形態の支持面331は、矩形である基体Sの形状よりも僅かに大きい形状に形成されている。従って、シート状の基体Sは、支持面331から離脱し難い。吸引孔332は、基体支持部330の支持面331に形成されている。吸引孔332は、ポンプ接続部333を介して、気体を吸引するポンプ(図示せず)に接続される。コントローラ71は、ポンプの駆動を制御して吸引孔332から気体を吸引させることで、基体支持部330の支持面331に基体Sを吸着させることができる。従って、基体Sの損傷および変形等の発生が抑制された状態で、適切に基体Sが支持面331に支持される。
【0125】
詳細には、本実施形態の吸引孔332は、少なくとも基体支持部330の支持面331の外周部に沿って、複数(本実施形態では8個)設けられている。その結果、シート状の基体Sは、外周部の複数の箇所で吸引孔332によって吸引される。よって、より適切に基体Sが基体支持部330に支持される。
【0126】
また、前述したように、本実施形態の基体Sは、金属製の層を含み、且つ可撓性を有する。金属製の層を含み、且つ可撓性を有する基体Sを、ピンチローラによって移動させる場合、ピンチローラから基体Sに加わる力の応力によって、基体Sが撓んでしまう可能性がある。これに対し、本実施形態の基体移動装置300は、基体支持部330の支持面331に基体を吸着させた状態で、基体支持部330を移動させることで、移動中の基体Sの撓みを適切に抑制することができる。
【0127】
スライダ340は、基体支持部330を一次元方向に移動させる。詳細には、本実施形態のスライダ340は、染料付基体製造装置30における前後方向に基体支持部330を移動させることで、基体支持部330によって支持された基体Sを、印刷位置から搬送装置10側に移動させることができる。
【0128】
また、本実施形態では、染料付基体製造装置30における前後方向は、印刷装置100の副走査方向SDに一致する。本実施形態の基体移動装置300は、印刷装置100によるインクの印刷中に、キャリッジ120(
図4参照)による主走査方向MDに交差(本実施形態では直交)する副走査方向SDに、基体Sを移動させる。つまり、本実施形態の基体移動装置300は、印刷装置100による印刷中に基体Sを副走査方向SDに移動させる副走査装置を兼ねる。従って、装置構成が複雑になることが抑制された状態で、印刷中の副走査と、印刷位置からの基体Sの移動が、基体移動装置300によって共に適切に実行される。
【0129】
基体移動装置300が、基体支持部330によって支持された基体Sを搬送装置10に最も近い側に移動させると、基体Sは、基体載置装置400(
図11および
図12参照)に隣接する。基体移動装置300は、インクが印刷された基体Sを、印刷位置から搬送装置10側に移動させることで、基体Sを基体載置装置400に引き渡す。従って、印刷装置100によってインクが印刷された基体Sは、基体移動装置300、基体載置装置400、および搬送装置10によって、順に自動的に搬送されていく。よって、作業者の負担がさらに低下する。
【0130】
(基体載置装置)
図11および
図12を参照して、基体載置装置400について説明する。前述したように、基体載置装置400は、染色用トレイ80に載置されたレンズL(
図2および
図3参照)に、基体Sに印刷された染料(インク)を対向させた状態で、染色用トレイ80におけるレンズLの所定位置(本実施形態では、レンズLの上方の基体載置部85)に、基体Sを載置する。従って、作業者が基体Sを手作業で染色用トレイ80に載置しなくても、染色用トレイ80上の適切な位置に、基体Sが自動的且つ適切に載置される。前述したように、
図11および
図12は、装置の右斜め前方(
図4における矢印Fの方向)から見た図である。本実施形態の基体載置装置400は、基体保持部410、上下反転部430、および加熱部450を備える。
【0131】
基体保持部410は、シート状である基体Sの一対の面のうち、染料(インク)が印刷される印刷面の裏面に接触した状態で、基体Sを保持する。従って、基体Sの一端部が保持される場合等に比べて、基体Sの撓み、折れ曲がり、および破損等が生じにくい。本実施形態の基体載置装置400では、2つの基体保持部410が、左右方向(印刷装置100の主走査方向MDに沿う方向)に並べて設けられている。しかし、基体載置装置400が備える基体保持部410の数は、1つでもよいし3つ以上でもよい。
【0132】
詳細には、
図11に示すように、基体保持部410のうち、基体Sにおける印刷面の裏面に接触する位置には、通気部411が形成されている。通気部411は、気体の吸引および排出を切り替えることが可能な気流制御装置(例えばポンプ等。図示せず。)との間で、気体を通過させる。本実施形態では、基体保持部410の表面(基体Sと接触する接触面)に形成された通気部411は、基体保持部410の内部の流路を通じて気流制御装置に接続される。
【0133】
基体保持部410のうち、基体Sの裏面に接触する接触面は、平坦面である。従って、シート状の基体Sは、基体保持部410の平坦な接触面に接触した状態で保持される。その結果、基体Sに撓みおよび折れ曲がり等が生じる可能性等がさらに低下する。
【0134】
本実施形態では、通気部411は、基体保持部410のうち、基体Sと接触する接触面に形成された溝部を含む。溝部の形状(円環状)は、印刷装置100によって基体Sの印刷面に印刷される染料の印刷形状(本実施形態では円形)に対応する。従って、基体Sにおける染料の印刷領域の裏面に溝部が位置することで、染料の印刷領域が、より強固に基体保持部410に保持される。
【0135】
換言すると、本実施形態では、通気部411は、基体保持部410のうち、基体Sと接触する接触面に形成された円環状の溝部を含む。また、前述したように、本実施形態の染色システム1によって染色される樹脂体は、略円盤状のレンズ(眼鏡レンズ)Lである。染料を含むインクは、基体Sの印刷面に円形に印刷される。円環状の溝部を含む通気部411は、基体Sに対して円形に印刷された染料の裏面に位置する。その結果、染料が印刷された円形の部分が、より強固に基体保持部410に保持される。よって、染料が印刷された部分に折れ曲がり等が生じることが、より適切に抑制される。
【0136】
なお、通気部411が備える円形状の溝部は、同心円状に複数形成されている。従って、円形状の溝部が1つである場合に比べて、より強固に基体Sが基体保持部410に保持される。
【0137】
上下反転部430は、基体Sを保持する基体保持部410の上下を反転させる。詳細には、本実施形態の上下反転部430は、回転軸431と、アクチュエータ(本実施形態ではエアシリンダ)432,433を備える。回転軸431は、水平方向に配置されると共に、基体保持部410に固定されている。アクチュエータ432,433の作動部(本実施形態ではエアシリンダの作動軸)は、基体保持部410の一部に接続されている。
【0138】
図11および
図12に示すように、アクチュエータ432,433が作動すると、回転軸431に固定された基体保持部410は、回転軸431を中心として180度回転する。その結果、基体保持部410の上下が反転する。さらに、上下反転部430によって、
図11に示す状態から
図12に示す状態に基体保持部410が回転されると、基体保持部410は、搬送装置10上の染色用トレイ80の上方に移動する。つまり、上下反転部430は、基体保持部410によって保持された基体Sを上下反転させる機能と、染色用トレイ80の上方へ移動させる機能を兼ねる。
【0139】
図11に示すように、基体保持部410の所定位置には載置位置決め部413が設けられている。本実施形態の載置位置決め部413は、複数の凹部である。上下反転部430によって基体保持部410の上下が反転されると、基体保持部410に設けられた複数の載置位置決め部413は、染色用トレイ80における複数の突部(トレイ勘合部)84に嵌合する。その結果、染色用トレイ80に対する基体保持部410の相対位置が、予め定められた位置に固定される。よって、基体載置装置400は、基体Sをより正確に染色用トレイ80の基体載置部85に載置することができる。
【0140】
加熱部450は、基体保持部410を加熱することで、基体保持部410に保持された基体Sに印刷されているインクを乾燥させる。従って、基体載置装置400は、基体Sを染色用トレイ80に載置する機能に加えて、基体Sに印刷されたインクを乾燥させる機能も備える。詳細には、加熱部450は、熱伝導性が高い物質によって形成されると共に、基体保持部410に対して隣接する位置(本実施形態では、基体保持部410の下方に隣接する位置)に配置される。加熱部450には、ヒータ(図示せず)が装着されるヒータ装着部451が設けられている。ヒータ装着部451に装着されたヒータが駆動されることで、加熱部450が加熱される。その結果、加熱部450に隣接する基体保持部410が加熱される。
【0141】
前述したように、円環状の溝部を含む通気部411は、基体Sに対して円形に印刷された染料(インク)の裏面に位置する。従って、基体Sのうち、インクが印刷された円形の部分が、より強固に基体保持部410に接触する。よって、基体保持部410からインクに熱が伝導し易くなるので、より適切にインクが乾燥される。
【0142】
加熱部450の側面および底面には、輻射熱反射板453が設けられている。輻射熱反射板453と加熱部450の間には、隙間が設けられている。また、輻射熱反射板453のうち、加熱部450に対向する面は、加熱部450からの輻射熱を反射し易いように、鏡面状に形成されている。従って、加熱部450からの輻射熱が、加熱部450の側方および下方に伝達されることが、輻射熱反射板453によって適切に抑制される。
【0143】
コントローラ71は、気流制御装置によって通気部411から気体を吸引することで、基体Sを基体保持部410に保持させる。また、コントローラ71は、上下反転部によって基体保持部410の上下を反転させた状態で、気流制御装置による通気部411からの気体の吸引を解除することで、基体保持部410に保持させていた基体Sを、染色用トレイ80の所定位置に載置する。従って、基体載置装置400は、気体の吸引を利用することで、基体Sの損傷等が発生することを抑制しつつ、適切に基体Sの保持および載置を実行することができる。
【0144】
また、コントローラ71は、上下反転部によって基体保持部410の上下を反転させた状態で、気流制御装置によって通気部411から気体を排出させることで、基体保持部410に保持させていた基体Sを、染色用トレイ80の所定位置に載置する。従って、基体保持部410と基体の間に発生する静電気等の影響で、基体Sが基体保持部410から離れにくくなっていても、通気部411から排出される気体によって、基体Sが基体保持部410から適切に離れ易い。
【0145】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態で例示した複数の技術の一部のみを採用してもよい。
【符号の説明】
【0146】
1 染色システム
10 搬送装置
30 染料付基体製造装置
71 コントローラ
80 染色用トレイ
84 突部
85 基体載置部
100 印刷装置
110 インクジェットヘッド
120 キャリッジ
130 操作部
140 カートリッジ装着部
141 カートリッジ
147 重量センサ
150 インク攪拌部
153 回転軸
200 基体受け渡し装置
210 基体ストック部
300 基体移動装置
330 基体支持部
331 支持面
332 吸引孔
400 基体載置装置
410 基体保持部
411 通気部
413 載置位置決め部
430 上下反転部
431 回転軸