(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083942
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】衛生用紙シートセット積層体収納容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
B65D83/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020205386
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】507404237
【氏名又は名称】ユニバーサル・ペーパー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 成美
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 光章
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014LB02
3E014LC02
(57)【要約】
【課題】ポップアップ式に取り出し可能に折り畳まれた衛生用紙シートセット積層体が収納容器に圧縮して納められている場合でも収納容器を変形させることで収納容器から衛生用紙シートセットを容易に取り出すことが可能となる収納容器を提供する。
【解決手段】衛生用紙シートセット積層体を収める収納容器を折り線で変形させて上面部分を凸形状にすることで収納容器内面と衛生用紙シートセット積層体の上面との隙間を作り特に最初の衛生用紙シートセットをポップアップ式に安定して取り出すことができる衛生用紙シートセット積層体の収納容器の提供が可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の衛生用紙シートセットが略中央の折り線で二つ折りされてポップアップ式に取り出し可能に折り畳まれた衛生用紙シートセット積層体から前記衛生用紙シートを1セットずつ取り出すことができる取り出し口を上面に有する略直方体形状の紙製の衛生用紙シートセット積層体収納容器において、当該収納容器の上面および前記上面に接する側面とで形成される辺の部分を当該収納容器の内面側に押して変形させることによって当該収納容器の底面部分から当該収納容器の取り出し口部分までの高さを高くすることが可能な折り線を当該収納容器の上面あるいは当該収納容器の上面および側面に設けたことを特徴とする衛生用紙シートセット積層体収納容器。
【請求項2】
請求項1記載の衛生用紙シートセット積層体収納容器の取り出し口の加工において当該収納容器が略直方体形状に加工される前の紙製のシート状の基材にループ状の取り出し口を形成させるための抜き型の刃を入れる方向が、当該収納容器が略直方体形状に形成された状態で内面側から外面側の方向であることを特徴とする衛生用紙シートセット積層体収納容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の衛生用紙シートセット積層体収納容器の取り出し口がフィルムレスの取り出し口であり、かつ前記取り出し口の開口部が閉じたループ状をしており、前記収納容器に収納された衛生用紙シートセットの幅をW、前記衛生用紙シートセットの折り線に平行方向の取り出し口の開口部の有効最大長さをm、前記衛生用紙シートセットの折り線に直角方向の取り出し口開口部の有効最大長さをnとしたときに、W、m、nが0.15W≦m≦0.40W、0.15W≦n≦0.35Wの条件の範囲にあることを特徴とする取り出し口を有する衛生用紙シートセット積層体収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用紙シートセット積層体収納容器(以下「収納容器」と略す。)からカット紙タイプの衛生用紙シートセットをポップアップ式に安定して連続的に取り出すことができるようにするために収納容器を容易に変形させることができるようにし、さらに従来の取り出し口の抜き加工方法および取り出し口形状を変えた収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚紙等の素材から作られた収納容器に、家庭用薄葉紙(ティッシュペーパーやトイレットペーパー)やペーパータオル、キッチンペーパー、各種ワイパー等が交互に折り畳まれた状態の衛生用紙シートセット積層体を収納し、内容物である衛生用紙シートセット積層体の使用に際しては、取り出し口からポップアップ式にカットされた衛生用紙シートが引き出されて使用されている。さらに、これまでに収納容器の取り出し口の形状や収納容器の構造等が各種提案されている。内容物である衛生用紙シートセット積層体を保護する収納容器としてはコートボール等の厚紙から作られた包装体が一般的に使用されることが多く、厚紙を使用した収納容器の場合は取り出し口である開口部にはミシン目が付与され容易に開封できる構造となっている。内容物である衛生用紙シートセットは、1枚から4枚重ねのものが一般的であり、必要によりエンボス加工や保湿剤等の薬剤の塗布、印刷加工等が施されている。
【0003】
従来の収納容器では衛生用紙シートセット積層体がポップアップ式に1セットずつ取り出されて使われる場合、安定して取り出されるように厚紙製の箱の上面の裏面側に可撓性フィルムにスリットを入れたものを貼った取り出し口が一般的である。フィルムを貼らず厚紙に開口部を設けたままの場合では衛生用紙シートセットが取り出される場合に適度な抵抗が必要となり、落ち込みを防止するために引っ掛かりを設けた略長方形等の取り出し口形状等が各種提案されているが、取り出し性や開口部のエッジとの擦れによる繊維粉(シートから分離した繊維)が発生しやすく、さらには内容量が少なくなった場合の衛生用紙シートセットの落ち込み等の問題についても満足できるものがないのが実情であった。衛生用紙シートセットの落ち込みを防止するために取り出し口の開口部の長さを衛生用紙シートセットの幅Wに対して小さくすると取り出し始めに衛生用紙シートセットと収納容器内面との抵抗が大きくなり衛生用紙シートセットが破断するトラブルが発生しやすい問題が生じていた。
【0004】
また、厚紙製のボックスティシュ商品等では箱の高さを低くするコンパクト化が進んできたが、コンパクトであっても衛生用紙シートセットの内容量や衛生用紙シートセットの品質(厚み、ソフトネス、吸水性等)、衛生用紙シートセットの取り出し性等は維持したい、との相反する要望が強くある。加えて可撓性のフィルムを使用したものでは、石油由来のフィルム自体の環境負荷が大きいだけでなく廃棄後のリサイクルを考慮するとフィルムを紙箱本体から剥がさなければならない不便さがある。
【0005】
さらに、従来のフィルムレスの取り出し口の加工においては一般的に紙製の収納容器の形状にする前にシート状の厚紙を抜型で加工しミシン目を含む切れ目や折筋等を形成させている。この抜型加工は厚紙の表面(外面)側から入れられるため取出し口の内面側の切り口は鋭角となっており、フィルムレスの取り出し口では、この鋭角部分と衛生用紙シートセットが接触するために衛生用紙シートセットの破れや繊維粉が発生し易い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-24837号 公報
【特許文献2】特開2013-67423号 公報
【特許文献3】特開2008-137686号 公報
【特許文献4】特開2008-162623号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、コンパクトな紙製の衛生用紙シートセット収納容器においても開封後に取り出される最初の衛生用紙シートセットの取り出しが容易で繊維粉や裂けの発生が少なく最後まで安定して取り出し可能な収納容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では以下の内容によって達成することができる。
(1)課題解決の第一の手段は、略長方形の衛生用紙シートセットが略中央の折り線で二つ折りされてポップアップ式に取り出し可能に折り畳まれた衛生用紙シートセット積層体から前記衛生用紙シートを1セットずつ取り出すことができる取り出し口を上面に有する略直方体形状の紙製の衛生用紙シートセット積層体収納容器において、当該収納容器の上面および前記上面に接する側面とで形成される辺の部分を当該収納容器の内面側に押して変形させることによって当該収納容器の底面部分から当該収納容器の取り出し口部分までの高さを高くすることが可能な折り線を当該収納容器の上面あるいは当該収納容器の上面および側面に設けることである。
(2)課題解決の第二手段は、前記(1)に記載の衛生用紙シートセット積層体収納容器の取り出し口の加工において当該収納容器が略直方体形状に加工される前の紙製のシート状の基材にループ状の取り出し口を形成させるための抜き型の刃を入れる方向が、当該収納容器が略直方体形状に形成された状態で内面側から外面側の方向であることである。
(3)課題解決の第三の手段は、前記(1)または(2)に記載の衛生用紙シートセット積層体収納容器の取り出し口がフィルムレスの取り出し口であり、かつ前記取り出し口の開口部が閉じたループ状をしており、前記収納容器に収納された衛生用紙シートセットの幅をW、前記衛生用紙シートセットの折り線に平行方向の取り出し口の開口部の有効最大長さをm、前記衛生用紙シートセットの折り線に直角方向の取り出し口開口部の有効最大長さをnとしたときに、W、m、nが0.15W≦m≦0.40W、0.15W≦n≦0.35Wの条件の範囲にあることを特徴とする取り出し口を有することである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の収納容器は、衛生用紙シートセット取り出し時に収納容器上面の取出し口部分の位置を収納容器底面から高くすることにより上面の内面側と衛生用紙シートセット積層体の最上面の間に隙間を作ることで衛生用紙シートセットを取り出す際に上面の内面側と取り出される衛生用紙シートセットとの摩擦抵抗を減少させて取り出しやすくするものである。特に収納容器のコンパクト化が進んできた結果、衛生用紙シートセット積層体が圧縮されて収納容器に収められているので収納容器の取り出し口が衛生用紙シートセットの幅に近くなければ衛生用紙シートセット取り出し時の摩擦抵抗が大きくなり衛生用紙シートセットの破れが発生しやすい問題が生じていた。このような問題に対し収納容器の特定の部分に力を加えて変形させることで取り出し口の位置を高くして衛生用紙シートセット積層体の上面と取り出し口の内面との隙間を作ることで取り出し性を向上させることができることを見出した。この取り出し口の位置を高くする方法により、従来のフィルムレスの取り出し口だけでなく、可撓性フィルムにスリット入れた従来の一般的な取り出し口においても衛生用紙シートセットの取り出し性向上に有効であることを見出した。加えて、収納容器を変形させたものを側面から見た時に断面形状が蒲鉾型や山型となりデザイン性を向上させる効果もある。
【0010】
また、従来のフィルムレスの取り出し口は、箱にする厚紙を刃型で抜いて成型する際、箱にした時の外面側から刃を入れていたため型抜きした内面側の切断部分が鋭角となり衛生用紙シートセットが通過する際に引っ掛かりやすい問題が生じていた。本発明の収納容器のように内側から刃型で抜き加工を行うことで切断部分が鈍角でさらに角が丸みをおびるため取り出し時の引っ掛かりが低減し衛生用紙シートセットの取り出しが容易になるとともに衛生用紙シートセット表面が傷み難い効果も生じる。取り出し口の形状については、一般的なフィルムにスリットを入れたものでも良いが、フィルムレスの取り出し口では従来から提案されてきた長めの略長方形や略楕円形等の取り出し口形状が一般的に使用可能であるが、好ましくは角丸長方形や楕円形、角丸の菱形等の広口の取り出し口形状が好ましい。取り出し口形状は特に幾何学的な形状でなくても広口の形状であればハート型や四葉等の模様にしても良い。広口の取り出し口形状では、衛生用紙シートセットが取り出し口で丸められるため立った状態になり衛生用紙シートセットが掴み易い効果や落ち込み難い効果も生じる。さらに、広口の取り出し口の場合は衛生用紙シートセットが取り出し口で包み込まれるような形状で取り出されるため、衛生用紙シートセットの残数が少なくなった場合でも衛生用紙シートセットが取り出し口に引き寄せられるために次に取り出される衛生用紙シートセットと分離せず安定して連続的に衛生用紙シートセットを取り出すことができる顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図9】 本発明の収納容器を変形させる過程の図(三面図)
【
図10】 本発明の収納容器変形後の一例(斜視図)
【
図14】 本願発明の収納容器取り出し口形状の一例
【
図15】 本願発明の収納容器取り出し口形状の一例
【
図16】 本願発明の収納容器取り出し口形状の一例
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について具体的に説明する。
【0013】
図1~
図3は360g/m
2のコートボールを使用した収納容器の具体的な実施形態の斜視図の一例である。
図2の矢印は側面2の上辺部およびその対向する側面の上辺部に力を加える方向を示しており、力を加えた結果、収納容器が変形した状態を
図2で表した。変形させたことで上面1が盛り上がった形状となっている。
図1~
図3に示したように取り出し口を形成する蓋Hの部分が収納容器の上面1のほぼ中央部にあり、
図3は、
図2の蓋の部分Hを開いた状態で蓋の一部が上面と連接している。
図3の開口部hから折り畳まれて内包された衛生用紙シートセットが取り出される。
図2および
図3のように取り出し口h部分が持ち上がって
図8の中段に示したように内部に空間ができると積層された衛生用紙シートセット最上面と収納容器上面1の内面との隙間が広がるため衛生用紙シートセットと上面1の内面側との摩擦抵抗が少なくなり特に最初の衛生用紙シートセットの取り出しが容易になる。
図1~
図3の場合では上面に加え側面2およびその反対面に折り線を入れることで収納容器の変形をさせやすくしており、側面3およびその反対面に同様の折り線を入れて収納容器を変形させることができるが、短い側面側を変形させるようにした方が比較的簡単に変形させやすい効果がある。本実施例ではコートボール製の収納容器としているが、紙器用白板紙等が使用でき、塗工しているものやラミネート加工しているもの等、各種板紙や厚物の印刷用紙、さらにはこれらを貼合した用紙等が使用可能である。坪量としては、250g/m
2~500g/m
2程度のものが一般的に使用される。また、ラミネート加工等の樹脂加工では生分解性樹脂を使用するのが環境面では好ましい。加えて、
図2のような山形形状のティシュケースに関しては、特許文献1および2でも例示されているが、収納容器自体を変形させるというものとは異なるものである。加えて、本発明の収納容器はコンパクトであっても衛生用紙シートセットの取り出し性を向上させるという効果を付与した収納容器でこれまでにない新しいものである。
【0014】
本発明の一例として
図4は、
図1の収納容器の展開図を示した。符号6は主となる折り線で型押しやミシン目等により折りやすくしており、符号7は補助的な折り線で
図2および
図3の形状を維持するために効果的である。
図4では一例として主となる折り線や補助線を示しているが、曲線状の折り線や補助線の本数を増やす等、上面部が蒲鉾形状や山型形状のように上面の内面側に空間が作れるものであれば特に制約はない。加えて
図4の底面部分の図中には、収納容器を分解しやすくするミシン目や衛生用紙シートセットを底面側から押し上げる機構を設けている。
図4のtは、上面と側面が接する辺と上面に施した折り線における主となる折り線との最大距離を示している。tの幅としては、短側面の距離Sに比較して、0.05S≦t≦0.4S程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.1S≦t≦0.3S程度の範囲である。tが小さいと空間を広げる効果が少なく、大きすぎる場合は変形量が大きくなり過ぎて収納容器の見栄えが悪くなることがある。また、長側面側に力を加えて収納容器を変形させる場合は、SをLに置き換えるとLの好ましい範囲となる。
【0015】
図5の中の上段の図は、従来の一般的な収納容器の斜視図で、コンパクト化された収納容器では衛生用紙シートセットが詰め込まれた状態であり、最初の衛生用紙シートセットを取り出す際に
図1のような長側面方向に長くない取り出し口では、取り出し時の抵抗が大きくなり取り出し難く衛生用紙シートセットの破れが生じやすい問題がある。しかしながら、従来の可撓性のフィルムを貼っていない取り出し口では長側面方向に長い開口部から異物が入りやすい問題が生じる。このように、
図3のような長側面方向に長くない開口部でも収納容器を変形させることで最初に取り出す衛生用紙シートセットが無理なく取り出すことができ、従来の収納容器にはない特徴を有している。また、
図1のような衛生用紙シートセットの幅Wに比較して小さい取り出し口の場合、取り出し口開口部の周囲を囲むように衛生用紙シートセットが存在するので周囲からゴミが開口部の中に入り難いという効果もある。
図5の中の下側の図は、可撓性フィルムにスリットを入れた取り出し口で、スリットの長さが衛生用紙シートセットの幅Wに近い長さでなければ取り出し難くなる。このため、取り出し口に広い面積のフィルムを貼らなければならない。
【0016】
図6では、コートボール等の厚紙を抜型で加工する際の模式図を示した。ボードに取り付けられた刃がカッティングプレート上の厚紙に押し当てられると刃の形状や角度により厚紙の断面形状が
図6中の拡大図のような形状で切断される。
図6で示したように刃が入る側の厚紙の表面側が鈍角となる。刃の角度(刃面間の角度)としては、衛生用紙シートセットが通過する側に当たる部分の角度が20°以上であることが好ましく、35°程度までが一般的な角度である。対称的な両刃を使用する場合は、前記の角度の2倍が刃の角度となる。刃の角度が大きくなると衛生用紙シートセットが通過する部分の当りは緩やかになるが、厚紙に抜きを入れ難い問題が発生する。一般的には印刷された厚紙の表面側から刃を入れるため、厚紙の内面側は断面形状が鋭角になる。取り出し口用の刃としては部分的にアンカット部分を設けた形状のものが一般的であるが、部分的にハーフカットするものや部分的に型押しする形状のものも使用可能である。
【0017】
図7および
図8は、
図6で示した抜型を使って入れる方向を表裏逆にした場合に衛生用紙シートセットの取り出し時のエッジ部分(切断部分)との接触の状態の違いを示した図で、
図7は板紙(厚紙)の裏面側から刃を入れて加工した場合の取り出し口のエッジ部分を衛生用紙シートセットが通過する状態を示している。
図7で分かるように、鈍角な部分で衛生用紙シートセットが先に接触するため破れや繊維粉の発生が抑えられることが分かる。逆に
図8では、衛生用紙シートに鋭角な部分のみが接触するため破れや繊維粉が発生し易くなる。
図8の従来の方法で抜いた取り出し口と
図7の本発明で型抜きした取り出し口の効果を比較するために、150セットの漂白したティシュペーパーを取り出して収納容器の上面に黒い紙を置き飛散した紙粉を目視で確認した結果、約半分~1/3程度に減少しており効果が認められた。なお、刃は20度の角度のものを使用した。さらに30度の角度のものを用いるとさらに繊維粉の低減効果が認められた。
【0018】
図9は、
図1~
図3の斜視図を三面図にしたもので、収納容器の内部を示すため短側面側から見た断面図を各々の右端に示している。上から、収納容器を変形させる前の状態の図、中間の図は、収納容器を変形させた状態のもの、下の図が収納容器から衛生用紙シートを取り出した状態のものを示している。断面図から分かるように収納容器を変形させて取り出し口を上方に移動させることで、収納容器の上部に空間ができ衛生用紙シートセットを取り出すときに上面の内面側との接触が弱くなり収納容器内面との摩擦抵抗を低減させることで衛生用紙シートセットを取り出し易くすることができる。
【0019】
図10は、本発明の一例を斜視図で示したもので、
図11はその展開図である。展開図には、底面部分に衛生用紙シートセット残数が少なくなった場合の押上げ機構や廃棄時に分解しやすくするための切り取り線が設けられている。また、底面側のフラップと上面側のフラップおよびサイド部の両フラップを接着させるホットメルト等の糊の塗布位置は下フラップの切り欠き部分のある位置が適切である。実施例である
図10での収納容器を変形させる方法としては、側面上部の角に近い部分を指でつまむことにより変形させることが可能で、4隅総てを変形させなくても1箇所や2箇所を変形させた場合でも収納容器内部に空間ができれば本発明の目的を達成することができる。
図12および
図13は、収納容器を変形させた状態の例であるが、本発明はこれらの事例に限定されるものではない。加えて、取り出し口としては
図5のような従来の形態のものも使用可能であり、従来の形状においても収納容器を変形させることにより衛生用紙シートセットの取り出し始めの取り出し性を改善することができる。
【0020】
図14~
図16は、フィルムレスの取り出し口の一例を示しており、過去に示された特許文献3および4のようなフラップで衛生用紙シートセットを保持する形状のものではなく、衛生用紙シートセット自体の湾曲により次に取り出される衛生用紙シートセットを包み込むようにして安定して取り出させることを特徴としている。
図14には取り出し口が角丸長方形、
図15には取り出し口が楕円形のもの、
図16には取り出し口がハート型の形状のものの上面図を示しており、mおよびnの関係を図に示している。mおよびnは開口部の有効最大長さであり、衛生用紙シートセットが通過することが可能な部分の最大距離を示している。細い切れ目や鋭角の部分等では衛生用紙シートセットが通過できず途中でシートが隙間に入り止められてしまうことがある。このように有効最大長さは衛生用紙シートセットが開口部を問題なく通過できる開口部分の最大値である。衛生用紙シートセット積層体収納容器において、衛生用紙シートの幅をW、衛生用紙シートの折り線に平行方向の取り出し口の開口部の有効最大長さをm、衛生用紙シートの折り線に直角方向の取り出し口の開口部の有効最大長さをnとしたときに、W、m、nが0.15W≦m≦0.40W、0.15W≦n≦0.35Wの条件の範囲にあることが好ましい。取り出し口として代表的な角丸長方形や楕円形、ハート型を主に例示しているが、クローバー型、はなまる形状、角丸三角形のむすび型等、衛生用紙シートセットが取り出し可能なものであれば問題なく使用できる。
【0021】
図1~3で示した変形させた収納容器において、一例として
図17に示すようにLの長さが210mm、Sの長さが110mm、Dの高さが50mmの略直方体であり、衛生用紙シートセットの幅Wが200mm、長さPが200mmであり、取り出し口の開口部の有効最大長さmおよびnがそれぞれ55mm、50mmの取り出し口の開口部を上面中央部に形成し、13g/m
2のティシュペーパーを2枚組にした衛生用紙シートセットを160セット収納させたものから衛生用紙シートセットを1回に5セットずつ取り出して評価した。この評価時の開口部の面積中心と収納容器を変形させる前の上面の面積中心とのズレが5mm以内の収納容器を用いて評価を行った。前述の面積中心のズレについては特に制限はなく、衛生用紙シートセットが取り出し可能な位置に取り出し口がある収納容器であれば特に問題はない。その結果、収納容器を変形させたものでは10回の評価総てでスムーズに取り出すことができ破断や裂けが発生する問題がなく取り出すことができたが、変形させていないものでは10回中6回で破断あるいは裂けが発生した。上記の評価は、
図8の取り出し口の場合の評価であり、他の条件を同じにして取り出し口を
図7のようにすると、10回の評価で4回の破断あるいは裂けの発生となり改善した。この時の抜き型の刃の角度は20°のものを使用した。加えて、坪量が35g/m
2のエンボス加工された一辺が200mm四方のペーパータオルを衛生用紙シートセットとして前記に記載のLの長さが210mm、Sの長さが110mm、Dの高さが45mmの略直方体の収納容器に200セット収納して上記のティシュペーパーと同様に取り出しの評価を行い、変形させた収納容器では10回とも問題なく取り出すことが確認できたが、変形させていないものでは、10回中3回で破れが発生した。
図14~16に示した開口部の形状においても上記と同様の評価を行い、
図1~3の開口部の形状の場合と同様に問題なく衛生用紙シートセットを取り出すことができた。
【0022】
図17は、本発明の説明に使用した略長方形の収納容器のS、L、Dの関係を図で示している。加えて、衛生用紙シートセットが略二つ折りに折られる軸方向をLの方向としているが、LがSよりも必ずしも長い必要はない。一般的に収納容器内にはLに近い寸法幅の衛生用紙シートセットが収納可能である。また、衛生用紙シートセットは略二つ折りにされるため、シートの取り出し方向の長さはSの2倍程度の長さとなることが一般的である。
【0023】
図18の黒い部分が
図1の収納容器を縦置きするスタンドの一例で、変形させる前の収納容器をスタンドの下部凸部および背の部分に接するように置き、凸形状の上部を矢印のように収納容器短側面に押し込むと簡単に収納容器を変形させることができるとともにスタンドに収納容器に固定することができる。このようなスタンドを用いると机等の上に収納容器を置く場合に狭いスペースに置くことが可能で占有面積を小さくすることができる。また、変形させた収納容器の形状が元に戻ることがなく収納容器を変形させた状態の形状をより安定させることができる。
【0024】
本発明の説明では代表的な例としてティシュペーパーやペーパータオルの例を示したが、キッチンペーパーや不織布タイプのキッチン用シート、除菌シート等、収納容器からポップアップ式に取り出すことが容易なシート状のものであれば本発明の衛生用紙シートセット積層体収納容器が使用可能である。
【0025】
以上の説明では略直方体形状の衛生用紙シートセット積層体収納容器で具体的な仕様、材料等の実施形態を示して本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施例や実施形態の範囲に限定されるものではなく、略直方体形状の衛生用紙シートセット積層体が収納でき上面に相当する面に本発明の取り出し口形状が設けられ、取り出し口周辺を変形させ収納空間を広げることができる収納容器の形状であれば問題なく使用でき、略直方体形状を変形させた六角柱状や八角柱状の形状等、略直方体形状が内包可能な形状のものであれば使用可能であり、シート状の収納物でポップアップ式に取り出すものであれば多くの物に適用可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の衛生用紙シートセット積層体収納容器は変形させることや取り出し口の加工方法、形状を従来のものとは異なるものにすることで取り出し口がフィルムレスであるにもかかわらず取り出し性が良く安定してポップアップ式に衛生用紙シートセットが取り出すことができるもので、繊維粉の発生も少なく取り残しが発生しにくい衛生用紙シートセット積層体収納容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 収納容器上面
2 収納容器短側面(外フラップ)
3 収納容器長側面
H 取り出し口の蓋部分
h 取り出し口の開口部
L 長側面の長さ(内面間の長さ)
S 短側面の長さ(内面間の長さ)
t 辺と主となる折り線との最大距離
D 収納容器の高さ(内面間の長さ)
m 長側面方向の取り出し口の有効最大開口長さ
n 短側面方向の取り出し口の有効最大開口長さ
W 衛生用紙シートセットの幅
P 衛生用紙シートセットの長さ(取り出し方向)
4 収納容器下側内フラップ
5 収納容器サイドフラップ
6 収納容器を変形させるための主となる折り線
7 収納容器を変形させるための補助的な折り線
8 衛生用紙シートセット
9 板紙(厚紙)