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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083950
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】キャスター装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/06 20060101AFI20220530BHJP
   B60B 33/00 20060101ALI20220530BHJP
   A45C 5/14 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B60B33/06 C
B60B33/00 R
A45C5/14 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012243
(22)【出願日】2021-01-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2020195524
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519441062
【氏名又は名称】山本 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100148725
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 信彦
(72)【発明者】
【氏名】イザベル ヤマモト ソランジュ
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045AA02
3B045FB03
(57)【要約】
【要約】
【課題】 より小型化することができ、より簡単にキャスターの移動の規制又は移動の規制の解除を行うことができるキャスター装置を提供する。
【解決手段】 キャスター装置1は、第1磁性体63と、周側部に第2磁性体68が設けられた回転筒30を有し、第1磁性体63又は第2磁性体68の軸方向の移動によって第1磁性体63と第2磁性体68を互いに近接させ、回転筒30及び回転筒30に連結されて収納部70から突出したキャスター80を磁力によって所定回転位置に回転させ、キャスター80を所定回転位置に保持する保持状態、又は移動筒61又は回転筒30を軸方向に移動させることによって第1磁性体63と第2磁性体68を互いに離隔させ、第1磁性体63に対して第2磁性体68を回転自由とすることによってキャスター80を回転自由とする自由状態のいずれかに切り替える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体が内側に設けられ、周板によって第1磁性体の周方向の回転を規制するケースと、
前記軸体に軸周り方向へ回転可能に外挿され、周側部に第2磁性体が設けられ、下端部に連結されたキャスターに前記第1磁性体と前記第2磁性体の間の磁力によって付与された周方向の回転力を伝達する回転筒と、
前記磁力によって前記回転筒及び前記回転筒に連結された前記キャスターを所定回転位置に保持する保持状態、又は前記第1磁性体に対して前記第2磁性体を回転自由とすることによって前記キャスターを回転自由とする自由状態のいずれかに切り替える切替部と、
を有するキャスター装置。
【請求項2】
短筒と圧縮バネを有し、
前記周板には、第1周孔、前記第1周孔よりも下方に配置された第2周孔、及び軸方向に沿った第1長孔が設けられ、
前記圧縮バネは、前記ケースの天板と前記短筒の間に介装され、前記短筒に下方へ向かう付勢力を付与し、
前記短筒は、
前記回転筒の上部に前記回転筒に対して回転可能に装着され、
周側部に、係止孔と、前記第1長孔内に延出して周方向に回転しないように規制する第1規制突起とを設け、
前記第1周孔を介して前記係止孔に第1係止ピンを挿入することによって前記キャスターを収納部に収納した収納位置に固定可能であり、
前記第2周孔を介して前記係止孔に第2係止ピンを挿入することによって前記キャスターを前記収納部から突出した突出位置に固定可能であり、
請求項1に記載のキャスター装置。
【請求項3】
少なくとも前記第1磁性体又は前記第2磁性体のいずれか一方は、永久磁石であり、
前記周板には、軸方向に沿った第2長孔が設けられ、
前記切替部は、
前記回転筒の外周を取り巻くように軸方向へ移動可能に設けられて前記第1磁性体を支持する移動筒と、前記移動筒から前記第2長孔を介して前記周板の外側に突出し、前記第1磁性体の周方向の回転を規制する第2規制突起とを有し、
前記第1磁性体が前記第2磁性体に近接すると、前記第1磁性体と前記第2磁性体の間の磁力によって前記第2磁性体を所定回転位置に回転させて前記保持状態に切り替え、
前記第1磁性体が前記第2磁性体から離隔すると、前記自由状態に切り替える、
請求項1又は2に記載のキャスター装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1磁性体又は前記第2磁性体のいずれか一方は、永久磁石であり、
前記ケースは、前記第2周孔よりも下方に設けられた第3周孔と、前記第3周孔よりも下方に設けられた第4周孔とを有し、
前記短筒は、前記圧縮バネの付勢力によって前記係止孔が前記第3周孔に対向するように移動され、前記第3周孔を介して前記係止孔に第3係止ピンを挿入することにより、前記キャスターを突出して前記所定回転位置に保持した突出保持位置に固定可能であり、
前記切替部は、
前記短筒が前記突出保持位置に位置すると、前記第1磁性体が前記第2磁性体に近接し、前記第1磁性体と前記第2磁性体の間の磁力によって前記第2磁性体を所定回転位置に回転させることによって前記保持状態に切り替え、
前記短筒が前記突出位置に位置すると、前記第1磁性体が前記第2磁性体から離隔して前記自由状態に切り替える、
請求項2に記載のキャスター装置。
【請求項5】
前記ケースと前記収納部の間に補強部材が介装された、請求項2に記載のキャスター装置。
【請求項6】
前記第1磁性体は、電磁石であり、
前記切替部は、
前記電磁石に電力を供給して前記磁力を発生させ、前記電磁石と前記第2磁性体の間の磁力によって前記第2磁性体を所定回転位置に回転させることによって前記保持状態に切り替え、
前記電磁石の電力の供給を停止することによって前記自由状態に切り替える、
請求項1又は2に記載のキャスター装置。
【請求項7】
第1キャスター機構と第2キャスター機構を有し、
前記第1キャスター機構の前記キャスターと、前記第2キャスター機構の前記キャスターとが互い交差した向きで保持されるように、前記第1キャスター機構の前記キャスターの前記所定回転位置及び前記第2キャスター機構の前記キャスターの前記所定回転位置が定められた、
請求項1から6のいずれか1項に記載のキャスター装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞄や収納具等の底部に設けられ、キャスターを収納可能なキャスター装置がある。例えば、特開2017-144080号公報には、鞄の底面のコーナに開閉蓋付きキャスター収納部が設けられたキャスター装置が開示される。キャスター装置は、キャスター収納部にキャスター保持部を回動自在に軸支し、キャスター保持部にキャスターフレームを回転自在に保持し、キャスターフレームに固定された車軸に、回転自在に車輪を軸支する。使用者が、キャスター収納部の開閉蓋を開け、キャスター保持部を90度回転してキャスター収納部からキャスターを突出させると、キャスター装置は、移動可能状態にされる。一方、使用者が、キャスター保持部を逆方向に回転し、キャスター収納部にキャスターを収納すると、キャスター装置は、収納状態にされる。
【0003】
また、別の従来例として、例えば、特許第4863531号公報には、旅行鞄の底面部に、ベアリングを介して回転自在にされたキャスターを軸支するブラケットを設け、係止部材によって2個の車輪の車軸の向きがハ字状又は逆ハ字状になる位置にブラケットを固定し、停止状態にすることができるキャスター装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-144080号公報
【特許文献2】特許第4863531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のキャスター装置には、特開2017-144080号公報に示すように、キャスターフレームを倒して収納するための大型のキャスター収納部が設けられ、手荷物を収納するための収納部を狭くする。
【0006】
また、キャスター装置は、鞄の底面に設けられて電車やバス等の乗物の床上に置かれると、乗物が走行した際、慣性力によって床上を移動してしまい、鞄の持ち運びを難しくすることがある。また、キャスター装置は、鞄の底面に設けられて坂道上に置かれると、重力によって坂道を下る方向に移動してしまい、鞄の持ち運びを難しくすることもある。キャスターをキャスター収納部に収納すれば、鞄の底面が床上等の載置面に載置され、底面と載置面の間の摩擦力によって鞄の移動が防止されるものの、すべてのキャスターをキャスター収納部に収納する作業に手間がかかる。
【0007】
また、特許第4863531号公報に示すキャスター付き旅行鞄は、ロック部材によって2個の車輪の車軸の向きがハ字状又は逆ハ字状になる位置にブラケットを固定して移動を規制することができるものの、すべてのブラケットを固定するロック作業に手間がかかる。
【0008】
そこで、本発明は、より小型化することができ、より簡単にキャスターの移動の規制又は移動の規制の解除を行うことができるキャスター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のキャスター装置は、ケース、回転筒、及び切替部を有する。前記ケースは、軸体が内側に設けられ、周板によって第1磁性体の周方向の回転を規制する。前記回転筒は、前記軸体に軸周り方向へ回転可能に外挿され、周側部に第2磁性体が設けられ、下端部に連結されたキャスターに前記第1磁性体と前記第2磁性体の間の磁力によって付与された周方向の回転力を伝達する。前記切替部は、前記磁力によって前記回転筒及び前記回転筒に連結された前記キャスターを所定回転位置に保持する保持状態、又は前記第1磁性体に対して前記第2磁性体を回転自由とすることによって前記キャスターを回転自由とする自由状態のいずれかに切り替える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より小型化することができ、より簡単にキャスターの移動の規制又は移動の規制の解除を行うことができるキャスター装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置を備えた鞄の構成の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構の構成の一例を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置を設けた鞄の底面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構における、キャスターが所定回転位置に保持された保持状態を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構の構成の一例を示すためのA―A線で切断した断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置における、キャスターが所定回転位置に保持された保持状態を説明するための底面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構における、キャスターを収納部に収納する動作を説明するための断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構における、キャスターを収納位置に固定した状態を説明するための断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構における、キャスターを収納部から突出させる動作を説明するための断面図である。
図10】本発明の第1実施形態の変形例1に係る、キャスター装置を設けた鞄の底面図である。
図11】本発明の第1実施形態の変形例2に係る、キャスター装置のキャスター機構の構成の一例を示す断面図である。
図12】本発明の第1実施形態の変形例2に係る、キャスター装置のキャスター機構の構成の一例を示すためのB-B線で切断した断面図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構の構成の一例を示す断面図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構の構成の一例を示す断面図である。
図15】本発明の第4実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構の構成の一例を示す断面図である。
図16】本発明の第4実施形態に係る、キャスター装置のキャスター機構の回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、キャスター装置1を備えた鞄Bgの構成の一例を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、キャスター装置1は、キャスター機構2a~2dと操作機構3を有する。
【0014】
キャスター機構2a~2dは、例えば、旅行等に用いられる鞄Bgの底部の四隅にキャスター80が配置されるように設けられる。以下、キャスター機構2a~2dのすべて又は一部を示すとき、キャスター機構2という。
【0015】
図2は、キャスター装置1のキャスター機構2の構成の一例を示す断面図である。
【0016】
図2に示すように、キャスター機構2は、ケース10、短筒20、回転筒30、第1係止部40、第2係止部50、切替部60、収納部70、及びキャスター80を有する。
【0017】
ケース10は、天板11、周板12、底板13、軸体14、圧縮バネ15、第1周孔16、第2周孔17、第1長孔18、及び第2長孔19を有する。
【0018】
天板11は、ケース10の上端部に設けられる。
【0019】
周板12は、天板11の外縁から下方に延出する。
【0020】
底板13は、周板12の下端部に設けられ、中央に回転筒30を回転可能に挿通するための開口を有する。
【0021】
軸体14は、ケース10の内側に設けられ、天板11の中央部から下方へ延出する。軸体14の長さは、外挿した回転筒30が下方へ移動した際に、抜け落ちない長さに、調整して定められる。
【0022】
圧縮バネ15は、軸体14の外周を取り囲むように、天板11と短筒20の間に介装され、短筒20に下方へ向かう付勢力を付与する。
【0023】
第1周孔16は、周板12の上部に設けられる。
【0024】
第2周孔17は、第1周孔16よりも下方において、周板12の中部に設けられる。
【0025】
第1長孔18は、周板12の上部から中部にかけて軸方向に沿って設けられる。
【0026】
第2長孔19は、周板12の下部に軸方向に沿って設けられる。
【0027】
短筒20は、軸体14の外周を取り巻くように軸方向に移動可能に設けられ、回転筒30の上部に回転筒30に対して回転可能に装着される。短筒20は、内向フランジ21、22、バネ受け23、第1規制突起24、係止孔25、圧縮バネ26、バネ受け27、及び回転受具28を有する。
【0028】
内向フランジ21は、短筒20の上端部に設けられる。内向フランジ21は、径方向内方に、軸体14が挿通される。
【0029】
内向フランジ22は、短筒20の下部に設けられる。内向フランジ22は、径方向内方に、軸体14に外挿された回転筒30が回転可能に挿通される。
【0030】
バネ受け23は、リング形状を有し、短筒20の上側において、軸体14の外周を取り囲むように設けられ、圧縮バネ15を受ける。
【0031】
第1規制突起24は、短筒20の周側部から第1長孔18内に延出する。第1規制突起24は、係止孔25が第1周孔16又は第2周孔17のいずれかに対向できるように、短筒20の軸方向の移動可能範囲を規制し、かつ短筒20が周方向に回転しないように規制する。すなわち、マグネット63の周方向の回転は、周板12によって規制される。
【0032】
係止孔25は、短筒20の周側部に設けられる。係止孔25は、キャスター80が収納部70に収納された収納位置にあるとき、第1周孔16と対向し、第1周孔16を介した第1係止ピン44の挿入によって係止され、キャスター80を収納位置に固定可能である。また、係止孔25は、キャスター80が収納部70から突出した突出位置にあるとき、第2周孔17と対向し、第2周孔17を介した第2係止ピン54の挿入によって係止され、キャスター80を突出位置に固定可能である。係止孔25の上方には、上方への移動によって第1係止ピン44を外方へ押し戻すテーパ面25aが設けられる。係止孔25の下方には、下方への移動によって第2係止ピン54を外方へ押し戻すテーパ面25bが設けられる。
【0033】
圧縮バネ26は、短筒20内の軸体14の外周において、内向フランジ21とバネ受け27の間に介装され、回転受具28を介して、回転筒30を下方に押圧し、キャスター80が走行する際に床上面又は地面等の走行面から受ける衝撃を緩衝する。
【0034】
バネ受け27は、リング形状を有し、圧縮バネ26の下側において、軸体14の外周を取り囲むように設けられ、圧縮バネ26を受ける。
【0035】
回転受具28は、スラスト軸受け構造を有し、バネ受け27の下側において軸体14の外周を取り囲むように連設される。回転受具28は、バネ受け27と回転筒30が互いに回転可能になるように、回転筒30を受ける。
【0036】
回転筒30は、外向フランジ31と筒本体32を有する。
【0037】
外向フランジ31は、短筒20内に設けられ、上面が回転受具28に押圧され、下面が内向フランジ22に係止される。
【0038】
筒本体32は、外向フランジ31の内縁から下方へ延出し、軸体14に軸周り方向へ回転可能に外挿される。筒本体32は、下部が、底板13と、収納部70の上板71とに設けられた開口に挿通され、下端部がキャスター80に連結される。筒本体32は、下端部に連結されたキャスター80にマグネット63とマグネット68の間の磁力によって付与された周方向の回転力を伝達する。
【0039】
第1係止部40は、第1周孔16の周縁部に突設される。第1係止部40は、カバー41、他端板42、ワイヤ孔43、第1係止ピン44、ストッパー45、及び圧縮バネ46を有する。
【0040】
カバー41は、筒形状を有し、一端部には、第1周孔16と連通する開口が設けられる。カバー41の他端部には、他端板42が設けられる。他端板42の中央には、操作ワイヤ110が挿通されるワイヤ孔43が設けられる。
【0041】
第1係止ピン44は、カバー41の一端部から第1周孔16に挿抜可能に設けられる。第1係止ピン44の他端部には、ワイヤ孔43に挿通された操作ワイヤ110が連結される。
【0042】
ストッパー45は、第1係止ピン44の基端部に設けられ、第1周孔16の周縁部に当て止めされる。
【0043】
圧縮バネ46は、他端板42とストッパー45の間に介装され、第1係止ピン44に挿入方向の付勢力を付与する。操作ワイヤ110によって牽引すると、第1係止ピン44は、圧縮バネ46の付勢力に抗して第1周孔16から引き抜かれる。操作ワイヤ110による牽引を解除すると、第1係止ピン44は、圧縮バネ46の付勢力によって第1周孔16に挿入される。
【0044】
第2係止部50は、第2周孔17に挿入可能な第2係止ピン54を有する。第2係止部50の構成は、第1係止部40と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
切替部60は、短筒20の下方に設けられる。切替部60は、移動筒61、第2規制突起62、第1磁性体であるマグネット63、係合凹部64、圧縮バネ65、鍔状部66、係合凸部67、及び第2磁性体であるマグネット68を有する。切替部60は、マグネット63とマグネット68との間の磁力によって回転筒30及び回転筒30に連結されたキャスター80を所定回転位置に保持する保持状態、又はマグネット63に対してマグネット68を回転自由とすることによってキャスター80を回転自由とする自由状態のいずれかに切り替える。
【0046】
移動筒61は、有底筒形状を有し、回転筒30の外周を取り巻くように、軸方向へ移動可能に設けられる。移動筒61の筒壁61aは、周板12の径方向内方に設けられる。
【0047】
第2規制突起62は、移動筒61の筒底板61bの外縁から第2長孔19を介して周板12の外方へ突出し、突出端に操作ワイヤ110が連結される。第2規制突起62は、マグネット63の軸方向の移動可能範囲を規制し、マグネット63が周方向に回転しないように規制する。
【0048】
マグネット63は、筒壁61aの内周面と筒底板61bによって支持される。マグネット63は、回転筒30を挟んで互いに対向するように2つ設けられる。マグネット63は、移動筒61の内周面に沿った湾曲板形状を有し、内周側が第1極性を有し、外周側が第1極性とは逆の第2極性を有する。例えば、第1極性がN極であり、第2極性がS極である。逆に、第1極性がS極であり、第2極性がN極であってもよい。
【0049】
係合凹部64は、筒壁61aの上縁部において、回転筒30が所定回転位置にあるときに、係合凸部67が嵌入可能となる位置に設けられる。係合凸部67が係合凹部64に嵌入すると、回転筒30は、所定回転位置に固定される。
【0050】
圧縮バネ65は、底板13と筒底板61bの間に介装され、移動筒61に上方へ向かう付勢力を付与する。
【0051】
鍔状部66は、回転筒30の外周側に突設される。
【0052】
係合凸部67は、鍔状部66の外縁に凸設される。
【0053】
マグネット68は、回転筒30の外周面と鍔状部66に支持される。マグネット68は、マグネット63に近接した際に、回転筒30が所定回転位置になるように、回転筒30を挟んで互いに対向するように2つ設けられる。マグネット68は、回転筒30の外周面に沿った湾曲板形状を有し、内周側に第1極性を有し、外周側に第2極性を有する。
【0054】
すなわち、切替部60は、マグネット63がマグネット68に近接すると、マグネット63とマグネット68の間の磁力によってマグネット68を所定回転位置に回転させて保持状態に切り替え、マグネット63がマグネット68から離隔すると、自由状態に切り替える。
【0055】
収納部70は、ケース10の底板13の下側に連設される。収納部70は、底板13の開口に連通して回転筒30を周方向に回転可能に挿通するための開口を有する上板71と、上板71の後縁から下方に延設された側板72と、側板72と隣り合うように、上板71の左側縁から下方に延設された側板73を有する。収納部70は、下部が開放され、所定回転位置に位置したキャスター80の収納と突出が可能にされる。実施形態では、収納部70の前部と右部が開放されるが、前部と右部にも側板を設けてもよい。
【0056】
キャスター80は、回転筒30の回転力の伝達を受けて回転可能である。キャスター80は、所定回転位置に保持された保持状態、又は回転自由とされた自由状態にすることが可能である。キャスター80は、回転筒30の下端部に連結して斜め下方に延在するフォーク81と、フォーク81の下端部に回転可能に軸支される車軸82と、車軸82に支持された車輪83を有する。
【0057】
操作機構3は、使用者による指示操作が可能であり、使用者の指示操作に基づく操作力をキャスター機構2に出力する。操作機構3は、ボタン90、スライド操作具100、及び操作ワイヤ110を有する。
【0058】
ボタン90とスライド操作具100は、鞄Bgの上部や側部等、使用者の手指の届きやすい部位に設けられる。
【0059】
ボタン90は、シリンダ91、シャフト92、受板93、圧縮バネ94、及び押板95を有する。
【0060】
シリンダ91は、押込み方向に沿って延在する。
【0061】
シャフト92は、シリンダ91の両端部に設けられた開口に挿通され、先端部に操作ワイヤ110が連結される。
【0062】
受板93は、シリンダ91の内側において、シャフト92の外周側に鍔状に凸設される。
【0063】
圧縮バネ94は、シリンダ91の先端側の内面と受板93の間に介装され、受板93に押戻し方向の付勢力を付与する。
【0064】
押板95は、シャフト92の基端部に設けられ、使用者の手指によって押込み可能である。使用者が、手指によって圧縮バネ94の付勢力に抗して押板95を押し込むと、シャフト92は、操作ワイヤ110を牽引する。
【0065】
スライド操作具100は、操作ワイヤ110に連結され、摘み101を有し、使用者の手指によって先端方向又は基端方向にスライド操作可能である。
【0066】
操作ワイヤ110は、鞄Bgの鞄本体と内張体の間に配設される(図1の破線)。操作ワイヤ110は、キャスター機構2に連結され、使用者の操作によって入力された操作力をキャスター機構2に伝達する。操作ワイヤ110は、操作ワイヤ111、操作ワイヤ112、及び操作ワイヤ113を有し、チューブTによって覆われる。
【0067】
操作ワイヤ111の一端側は、第1係止ピン44に連結される。操作ワイヤ111の他端側には、引張バネ111sが設けられ、続いて、プーリー111pを介してシャフト92に連結される。操作ワイヤ111の長さは、押板95を半押し操作することによって係止孔25から第1係止ピン44が引き抜かれる長さになるように、経験的又は実験的に調整される。
【0068】
操作ワイヤ112の一端側は、第2係止ピン54に連結される。操作ワイヤ112の他端側には、所定長さの遊びを持たせてプーリー112pを介してシャフト92に連結される。操作ワイヤ112の長さは、押板95を全押し操作することによって係止孔25から第2係止ピン54が引き抜かれる長さになるように、所定長さの遊びによって経験的又は実験的に調整される。
【0069】
操作ワイヤ113の一端側は、第2規制突起62に連結される。操作ワイヤ113の他端側は、摘み101に連結される。操作ワイヤ113の長さは、摘み101のスライド操作によってケース10の軸方向に沿って第2規制突起62が移動可能な長さになるように、経験的又は実験的に調整される。
【0070】
図3は、キャスター装置1を設けた鞄Bgの底面図である。
【0071】
キャスター装置1における4つのキャスター機構2の各々は、キャスター80の所定回転位置が互いに交差するように、90度向きを変えて配置される。例えば、キャスター機構2aの所定回転位置がキャスター機構2dの所定回転位置から右回りに90度回転させた位置であり、キャスター機構2bの所定回転位置がキャスター機構2aの所定回転位置から右回りに90度回転させた位置であり、キャスター機構2cの所定回転位置がキャスター機構2bの所定回転位置から右回りに90度回転させた位置であり、キャスター機構2dの所定回転位置がキャスター機構2cの所定回転位置から右回りに90度回転させた位置である。
【0072】
(動作)
キャスター装置1の動作について、説明をする。
【0073】
図2で示すように、第2周孔17と係止孔25が対向する状態において、第2周孔17を介して第2係止ピン54が係止孔25に挿入されると、キャスター80は、突出位置に固定される。使用者が、摘み101を基端方向へスライドし、マグネット68からマグネット63を離隔させると、キャスター80は、回転自由な自由状態になる。
【0074】
図3に示すように、自由状態においては、鞄Bgは、キャスター装置1によって移動の規制が解除される。例えば、使用者が、鞄Bgを進行方向Fに進行させると、キャスター機構2のキャスター80の各々は、進行方向Fの反対方向Bを向く。
【0075】
図4は、キャスター80が所定回転位置に保持された保持状態を示す断面図である。図5は、図4のA―A線で切断した断面図である。図6は、キャスター80が所定回転位置に保持された保持状態を説明するための底面図である。
【0076】
図4に示すように、使用者が、手指によって摘み101を先端方向へスライドすると、操作ワイヤ113が押し出され、圧縮バネ65は、移動筒61を上方へ押し上げる。マグネット63とマグネット68が近接すると、マグネット63とマグネット68の間の吸引力によってマグネット68と回転筒30が周方向に回転し、回転筒30に連結されたキャスター80を所定回転位置に回転させる。
【0077】
図5に示すように、使用者がさらに摘み101を先端方向へスライド操作すると、係合凸部67が係合凹部64に嵌入され、キャスター80は、所定回転位置に保持された保持状態になる。図6に示すように、キャスター機構2の各々に設けられたキャスター80が、互いに交差する方向を向いて保持状態になると、キャスター機構2の各々の車輪83の回転が規制される。鞄Bgは、キャスター装置1によって移動が規制される。
【0078】
図7は、キャスター80を収納部70に収納する動作を説明するための断面図である。図8は、キャスター80を収納位置に固定した状態を説明するための断面図である。
【0079】
使用者が手指によって押板95を全押しすると、シャフト92が操作ワイヤ112を押込み方向へ牽引する。操作ワイヤ112は、プーリー112pを介して操作力を伝達し、圧縮バネ26の付勢力に抗して係止孔25から第2係止ピン54を引き抜く。また、押板95の全押しによって操作ワイヤ111も押込み方向へ牽引され、引張バネ111sは、伸長する。
【0080】
使用者が手指によって鞄Bgを上から押圧すると、収納部70が下方へ移動し、キャスター80は、収納部70に収納され、収納位置に配置される。短筒20と回転筒30が、圧縮バネ15の付勢力に抗してケース10内を上方へ移動し、係止孔25は、第1周孔16に対向する。
【0081】
キャスター装置1は、キャスター80を収納部70に収納することによって鞄Bgの底面が床上等の載置面に直置きされ、鞄Bgの底面と載置面の間の摩擦力によって鞄Bgの移動は、規制される。すなわち、鞄Bgは、キャスター装置1のキャスター80の収納によって移動が規制される。
【0082】
図8に示すように、使用者が手指を離して押板95の押込みを解除すると、圧縮バネ94が付勢力によってシャフト92を押し戻し、操作ワイヤ111の牽引を解除する。第1係止ピン44は、圧縮バネ46の付勢力によって第1周孔16を介して係止孔25に挿入され、収納位置にキャスター80を固定する。
【0083】
使用者は、さらに、次回の使用に備え、手指によって摘み101を基端方向へスライドし、操作ワイヤ113によって第2規制突起62を牽引し、圧縮バネ65の付勢力に抗して移動筒61を軸方方向へ引き下げ、マグネット68からマグネット63を引き離すことによってキャスター80を自由状態にする。
【0084】
図9は、キャスター80を収納部70から突出させる動作を説明するための断面図である。
【0085】
使用者が、押板95を半押しすると、シャフト92が操作ワイヤ111を押込み方向へ牽引する。操作ワイヤ111は、プーリー111pを介して操作力を伝達し、係止孔25から第1係止ピン44を引き抜く。シャフト92によって操作ワイヤ112も押込み方向へ牽引され、第2係止ピン54が第2周孔17に挿入された状態のまま、操作ワイヤ112の遊びは、解消される。
【0086】
短筒20と回転筒30が圧縮バネ15の付勢力によって下方へ移動すると、テーパ面25bが圧縮バネ56に抗して第2係止ピン54を押し戻し、さらに下方へ移動して係止孔25が第2周孔17に対向すると、圧縮バネ56の付勢力によって第2係止ピン54が係止孔25に挿入され、キャスター80は、突出位置に固定される(図4)。鞄Bgは、キャスター装置1によって移動の規制が解除される。
【0087】
すなわち、キャスター装置1では、ケース10、回転筒30、及び切替部60を有する。ケース10は、軸体14が内側に設けられ、周板12によって第1磁性体の周方向の回転を規制する。回転筒30は、軸体14に軸周り方向へ回転可能に外挿され、周側部に第2磁性体が設けられ、下端部に連結されたキャスター80に第1磁性体と第2磁性体の間の磁力によって付与された周方向の回転力を伝達する。切替部60は、磁力によって回転筒30を所定回転位置に位置させることによってキャスター80を所定回転位置に保持する保持状態、又は第1磁性体に対して第2磁性体を回転自由とすることによってキャスター80を回転自由とする自由状態のいずれかに切り替える。
【0088】
また、キャスター装置1は、圧縮バネ15と短筒20を有する。周板12には、第1周孔16、第1周孔16よりも下方に配置された第2周孔17、及び軸方向に沿った第1長孔18が設けられる。圧縮バネ15は、ケース10の天板11と短筒20の間に介装され、短筒20に下方へ向かう付勢力を付与する。短筒20は、回転筒30の上部に回転筒30に対して回転可能に装着され、周側部に、係止孔25と、第1長孔18内に延出して周方向に回転しないように規制する第1規制突起24とを設け、第1周孔16を介して係止孔25に第1係止ピン44を挿入することによってキャスター80を収納部70に収納した収納位置に固定可能であり、第2周孔17を介して係止孔25に第2係止ピン54を挿入することによってキャスター80を収納部70から突出した突出位置に固定可能である。
【0089】
また、キャスター装置1では、少なくとも第1磁性体又は第2磁性体のいずれか一方は、永久磁石である。周板12には、軸方向に沿った第2長孔19が設けられる。切替部60は、回転筒30の外周を取り巻くように軸方向へ移動可能に設けられて第1磁性体を支持する移動筒61と、移動筒61から第2長孔19を介して周板12の外側に突出し、第1磁性体の周方向の回転を規制する第2規制突起62とを有し、第1磁性体が第2磁性体に近接すると、第1磁性体と第2磁性体の間の磁力によって第2磁性体を所定回転位置に回転させて保持状態に切り替え、第1磁性体が第2磁性体から離隔すると、自由状態に切り替える。
【0090】
また、キャスター装置1は、第1キャスター機構と第2キャスター機構を有し、第1キャスター機構のキャスター80と、第2キャスター機構のキャスター80とが互い交差した向きで保持されるように、第1キャスター機構のキャスター80の所定回転位置及び第2キャスター機構のキャスター80の所定回転位置が定められる。
【0091】
実施形態1によれば、以下の作用効果を奏する。
【0092】
(A)キャスター装置1は、第1磁性体と第2磁性体の間の磁力によって回転筒30及び回転筒30に連結されたキャスター80を所定回転位置に保持することができる。したがって、使用者は、簡単な操作によって複数のキャスター80を互いに交差する向きになるように保持させ、キャスター80の移動を規制することができる。また、使用者は、簡単な操作によって第1磁性体と第2磁性体の間の磁力を解除又は弱め、移動の規制を解除することができる。
【0093】
(B)使用者は、より簡単に、キャスター80を収納部70に収納し、鞄Bgの底面を床上等の載置面に直置きし、底面と載置面の間の摩擦力によって鞄Bgの移動を規制できる。また、使用者は、より簡単に、キャスター80を収納部70から突出させ、鞄Bgの移動の規制を解除できる。
【0094】
(C)キャスター装置1は、キャスター80を軸方向に収納可能であり、小型化することができる。
【0095】
(D)使用者は、第1係止ピン44と第2係止ピン54を挿抜する操作により、より簡単に、収納位置又は突出位置にキャスター80を固定可能である。
【0096】
(E)キャスター装置1は、第1磁性体の軸方向の移動によって保持状態又は自由状態のいずれかに切替えることができ、装置をより小型化することができる。
【0097】
(F)キャスター装置1は、第1キャスター機構と第2キャスター機構の各々のキャスター80の向きを互いに交差する方向にして保持することができ、より簡単に、キャスター80の移動を規制できる。
【0098】
したがって、キャスター装置1は、航空機や鉄道、自動車に積載する際の積載スペースを節約し、積載を容易にすることができる。また、キャスター装置1は、キャスター80を含む鞄Bgの大きさが航空会社の大きさ制限にかからなくなり、結果として鞄Bgを大型化することができ、収納容積を大きくすることができる。また、キャスター80は、収納部70への収納によって航空機や鉄道、自動車に積載される際の破損が防止される。また、キャスター80は、使用者が持ち歩くとき、収納部70への収納によってキャスター80が邪魔にならない。また、キャスター80は、室内に持ち込んだ際、収納部70への収納によって床やカーペットのキャスター80による汚損を防止する。また、キャスター装置1は、キャスター80の収納にスペースを取らないから、相対的にキャスター80を大型化することができ、鞄Bgを引いて移動するときに、路面の凹凸を乗り越えやすくし、使用者による引き回しを軽快にすることができる。また、キャスター装置1は、キャスター80を引き込めば、車両内で勝手に鞄Bgが動くのを制止できる。
【0099】
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態では、キャスター装置1における4つのキャスター機構2の各々が、90度向きを変えて配置されるが、これに限定されない。
【0100】
図10は、第1実施形態の変形例1のキャスター装置1aを設けた鞄Bgの底面図である。本実施形態の説明では、他の実施形態及び変形例と同様の構成については、説明を省略する。他の実施形態及び変形例の説明においても、同様に、それ以外の実施形態及び変形例と同様の構成については説明を省略する。
【0101】
キャスター装置1aでは、少なくとも2つのキャスター機構2のキャスター80の各々が互いに交差する向きになるように、それぞれの所定回転位置を定めてもよい。
【0102】
図10の例では、キャスター装置1aは、少なくとも2つのキャスター機構2のキャスター80の各々が互いに交差する向きになるように、それぞれの所定回転位置を定めた、キャスター機構2a、2bと、キャスター機構2b、2cと、キャスター機構2c、2dと、キャスター機構2d、2aと、を有する。
【0103】
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態とその変形例1では、移動筒61が、周板12の内周側に設けられるが、これに限定されない。
【0104】
図11は、第1実施形態の変形例2のキャスター装置1bのキャスター機構2の断面図である。図12は、図11のB-B線で切断した断面図である。
【0105】
図11及び図12に示すように、キャスター装置1bは、移動筒161を有する。
【0106】
移動筒161は、回転筒30の外周を取り囲むように、軸方向へ移動可能に設けられた筒底板161bと、周孔11aを介して筒底板161bから周板12の径方向外方に延出した支持板161cと、支持板161cの延出端の上側に周板12の外周面に沿うように延設された筒壁161aとを有する。
【0107】
第1磁性体であるマグネット163は、筒壁161aの内周面と筒底板161bに支持される。
【0108】
第2磁性体であるマグネット168は、回転筒30の外周面と回転筒30の外周側に突設した鍔状部166に支持される。
【0109】
これにより、キャスター装置1bは、ケース10をより細くして小型化することができる。また、キャスター装置1bは、マグネット163とマグネット168の厚みをより厚くすることによって磁力を強くすることができ、回転力をより強くすることができる。
【0110】
(第2実施形態)
第1実施形態、第1実施形態の変形例1及び第1実施形態の変形例2では、移動筒61、161を軸方向に移動することによって自由状態と保持状態の切替えが行われるが、移動筒61、161の移動によらなくても、自由状態と保持状態の切替えを行うことができる。
【0111】
図13は、第2実施形態のキャスター装置1cの断面図である。
【0112】
図13に示すように、キャスター装置1cは、第3周孔216、第4周孔217、第3係止部240、第4係止部250、支持リング261、ピン受凹部262、第1磁性体であるマグネット263、及び第2磁性体であるマグネット268を有する。
【0113】
第3周孔216は、周板12の中部において、第2周孔17よりも下方に設けられる。
【0114】
第4周孔217は、周板12の下部において、第3周孔216よりも下方に設けられる。
【0115】
第3係止部240は、第3周孔216に挿入可能な第3係止ピン244を有する。第3係止部240の構成は、第1係止部40と同様であるため、説明を省略する。
【0116】
第4係止部250は、第4周孔217に挿入可能な第4係止ピン254と、第4係止ピン254を挿入方向に付勢する圧縮バネ256とを有する。第4係止部250の構成は、第1係止部40と同様であるため、説明を省略する。
【0117】
支持リング261は、回転筒30の外周に装着され、第4周孔217を介して挿入された第4係止ピン254をガイドする周溝261aを有する。
【0118】
ピン受凹部262は、周溝261a内に設けられて回転筒30が所定回転位置にあるときに第4係止ピン254が挿入される。
【0119】
マグネット263は、湾曲板形状を有し、回転筒30を挟んで互いに対向するように2つ設けられ、周板12の内周面と底板13に支持される。
【0120】
マグネット268は、回転筒30を挟んで互いに対向するように2つ設けられ、回転筒30の外周面と支持リング261に支持される。マグネット268は、湾曲板形状を有し、下側に、下方への移動によって第4係止ピン254を押し戻すテーパ面268aが設けられる。
【0121】
キャスター装置1cの操作機構3には、ボタン90の他、ボタン290も設けられる。ボタン290の構成は、ボタン90と同じであるため、説明を省略する。
【0122】
キャスター装置1cの操作ワイヤ110は、操作ワイヤ111と操作ワイヤ112の他、チューブTに覆われた操作ワイヤ211と操作ワイヤ212も有する。
【0123】
操作ワイヤ211の一端側は、第3係止ピン244に連結される。操作ワイヤ211の他端側は、プーリー211pを介してボタン290に連結される。
【0124】
操作ワイヤ212の一端側は、第4係止ピン254に連結される。操作ワイヤ212の他端側は、プーリー212pを介してボタン290に連結される。
【0125】
使用者がボタン90を半押し操作すると、操作ワイヤ111に牽引されて第1係止ピン44が引き抜かれ、短筒20は、圧縮バネ15の付勢力によって第2周孔17と係止孔25が対向する位置に移動し、第2周孔17を介して第2係止ピン54が係止孔25に挿入され、突出位置で固定される(図13)。キャスター80が自由状態にされ、鞄Bgは、キャスター装置1cによって移動の規制が解除される。
【0126】
使用者がボタン90を全押し操作すると、第2周孔17から第2係止ピン54が引き抜かれ、短筒20は、圧縮バネ15の付勢力によって下方へ移動する。第4係止ピン254は、圧縮バネ256の付勢力に抗してテーパ面268aによって押し戻され、続いて、圧縮バネ256の付勢力によって周溝261aに遊嵌される。マグネット263に吸引されてマグネット268が周方向へ回転すると、周溝261aも周方向へ回転し、圧縮バネ256の付勢力によって第4係止ピン254がピン受凹部262に嵌入して回転筒30を所定回転位置に係止し、キャスター80は、突出保持位置に固定される。キャスター機構2のキャスター80の各々が互いに交差する向きに保持され、鞄Bgは、キャスター装置1cによって移動が規制される。
【0127】
すなわち、キャスター装置1cでは、少なくとも第1磁性体又は第2磁性体のいずれか一方は、永久磁石である。ケース10は、第2周孔17よりも下方に設けられた第3周孔216と、第3周孔216よりも下方に設けられた第4周孔217とを有する。短筒20は、圧縮バネ15の付勢力によって係止孔25が第3周孔216に対向するように移動され、第3周孔216を介して係止孔25に第3係止ピン244を挿入することにより、キャスター80を突出して所定回転位置に保持した突出保持位置に固定可能である。切替部60は、短筒20が突出保持位置に位置すると、第1磁性体が第2磁性体に近接し、第1磁性体と第2磁性体の間の磁力によって第2磁性体を所定回転位置に回転させることによって保持状態に切り替え、短筒20が突出位置に位置すると、第1磁性体が第2磁性体から離隔して自由状態に切り替える。
【0128】
第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0129】
(G)短筒20が、圧縮バネ15の付勢力によって係止孔25が第3周孔216に対向するように移動され、第3周孔216を介して係止孔25に第3係止ピン244を挿入することにより、キャスター80を突出して所定回転位置に保持した突出保持位置に固定可能である。したがって、キャスター装置1cは、移動筒61、161を設けなくてもよく、より少ない部品によって構成することできる。
【0130】
(第3実施形態)
他の実施形態では、収納部70がケース10の下側に連設されるが、収納部70とケース10の間に補強部材301を介装してもよい。
【0131】
図14は、第3実施形態のキャスター装置1dの断面図である。
【0132】
キャスター装置1dは、収納部70とケース10の間に補強部材301が介装される。
【0133】
補強部材301は、底壁302、回転球303、周壁304、フランジ305、及び、スリット306を有する。
【0134】
底壁302は、キャスター80の上側に連設され、中央の開口に回転筒30が挿通される。
【0135】
回転球303は、底壁302の開口の内縁に沿って回転可能に複数設けられ、底壁302に対して回転筒30を回転可能に支持する。
【0136】
周壁304は、底壁302の外縁から起立し、上板71の開口を介して収納部70の上方に突設される。周壁304は、周板12の外周に軸方向に移動可能に外挿される。
【0137】
フランジ305は、周壁304の上縁部に設けられ、上板71の開口の周縁部の上側に係止される。
【0138】
周壁304とフランジ305には、上方への移動によって第2規制突起62に当たらないように、スリット306が設けられる。
【0139】
第3実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0140】
(H)キャスター装置1dでは、補強部材301によってより強度を高めることができる。
【0141】
(第4実施形態)
他の実施形態では、マグネット63、163、263とマグネット68、マグネット168、268によって自由状態と保持状態の切替えが行われるが、電磁石450によって自由状態と保持状態の切替えが行われてもよい。
【0142】
図15は、第4実施形態に係る、キャスター装置1eの断面図である。図16は、キャスター装置1eの回路構成を示す回路図である。
【0143】
キャスター装置1eは、筒孔410、第5係止部420、第6係止部430、第7係止部440、第1磁性体である電磁石450、第2磁性体であるマグネット460、電池470、及びスイッチ480を有する。
【0144】
筒孔410は、回転筒30の筒本体32に軸方向に沿って設けられる。
【0145】
第5係止部420は、第1係止ピン44と第1係止ピン44を突没可能なプランジャー421を有する。プランジャー421は、ソレノイドを有し、電源から供給される電力を磁力に変換し、磁力によって第1係止ピン44を突没させる。
【0146】
第6係止部430は、第2係止ピン54をプランジャー431によって突没させる。
【0147】
第7係止部440は、プランジャー441によってロックピン442を突没させる。ロックピン442は、筒孔410への挿入によって回転筒30をロックする。
【0148】
電磁石450は、電源から供給される電力によって磁力を生じ、磁力によってマグネット460を吸引する。
【0149】
マグネット460は、回転筒30の外周側に支持される。
【0150】
電池470は、操作機構3に、交換可能に設けられる。
【0151】
スイッチ480は、鞄Bgの上部や側部等、使用者の手指の届きやすい部位に設けられる。スイッチ480は、プランジャー421を駆動制御するスイッチ481、プランジャー431を駆動制御するスイッチ482、プランジャー441を駆動制御するスイッチ483、電磁石450駆動制御するスイッチ484を有する。
【0152】
図16に示すように、プランジャー421、プランジャー431、プランジャー441、及び電磁石450は、電池470に並列接続される。電源とプランジャー421、プランジャー431、プランジャー441、及び電磁石450の各々の間には、スイッチ481~484が設けられる。
【0153】
すなわち、キャスター装置1eでは、第1磁性体は、電磁石450であり、切替部60は、電磁石450に電力を供給して磁力を発生させ、電磁石450との間の磁力によってマグネット460を所定回転位置に回転させることによって保持状態に切り替え、電磁石450の電力の供給を停止することによって自由状態に切り替える。
【0154】
第4実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0155】
(I)第1磁性体は、電磁石450である。したがって、保持状態又は自由状態を電気的に制御することができ、より簡単な構造とすることができ、小型化することができる。
【0156】
なお、第1実施形態~第3実施形態及び変形例では、自由状態と保持状態の切り替えにマグネット63、163、263とマグネット68、168、268が用いられ、第4実施形態では電磁石450とマグネット460とが用いられるが、これに限定されない。磁力によって回転筒30を所定回転位置に移動させることができればよい。
【0157】
なお、第4実施形態では、第2磁性体として、マグネット460が用いられるが、マグネット460に代えて鉄等の磁性体が用いられてもよい。
【0158】
また、実施形態及び変形例では、第1磁性体と第2磁性体の間の吸引力によって回転筒30を所定回転位置に回転させる構成を説明したが、第1磁性体と第2磁性体の間の反発力によって回転筒30を所定回転位置に回転させるように構成してもよい。
【0159】
なお、実施形態及び変形例では、キャスター装置1~1eが鞄Bgの底部に設けられた例を説明したが、キャスター装置1~1eは、例えば、収納具等の移動可能な器具又は機材の底部に設けられてもよい。
【0160】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0161】
1、1a、1b、1c、1d、1e・・・キャスター装置
2、2a、2b、2c、2d・・・キャスター機構
3・・・操作機構
10・・・ケース
11・・・天板
12・・・周板
12a・・・周孔
13・・・底板
14・・・軸体
15、26、46、56、65、94、256・・・圧縮バネ
16・・・第1周孔
17・・・第2周孔
18・・・第1長孔
19・・・第2長孔
20・・・短筒
21、22・・・内向フランジ
23、27・・・バネ受け
24・・・第1規制突起
25・・・係止孔
25a、25b、268a・・・テーパ面
28・・・回転受具
30・・・回転筒
31・・・外向フランジ
32・・・筒本体
40・・・第1係止部
41・・・カバー
42・・・他端板
43・・・ワイヤ孔
44・・・第1係止ピン
45・・・ストッパー
50・・・第2係止部
54・・・第2係止ピン
60・・・切替部
61、161・・・移動筒
61a、161a・・・筒壁
61b、161b・・・筒底板
62・・・第2規制突起
63、68、163、168、263、268、460・・・マグネット
64・・・係合凹部
66、166・・・鍔状部
67・・・係合凸部
70・・・収納部
71・・・上板
72、73・・・側板
80・・・キャスター
81・・・フォーク
82・・・車軸
83・・・車輪
90、290・・・ボタン
91・・・シリンダ
92・・・シャフト
93・・・受板
95・・・押板
100・・・スライド操作具
101・・・摘み
110、111、112、113、211、212・・・操作ワイヤ
111s・・・引張バネ
111p、112p、211p、212p・・・プーリー
161c・・・支持板
216・・・第3周孔
217・・・第4周孔
240・・・第3係止部
244・・・第3係止ピン
250・・・第4係止部
254・・・第4係止ピン
261・・・支持リング
261a・・・周溝
262・・・ピン受凹部
301・・・補強部材
302・・・底壁
303・・・回転球
304・・・周壁
305・・・フランジ
306・・・スリット
410・・・筒孔
420・・・第5係止部
421、431、441・・・プランジャー
430・・・第6係止部
440・・・第7係止部
442・・・ロックピン
450・・・電磁石
470・・・電池
480、481、482、483、484・・・スイッチ
Bg・・・鞄
T・・・チューブ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2021-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体が内側に設けられ、周板によって第1磁性体の周方向の回転を規制するケースと、
前記軸体に軸周り方向へ回転可能かつ軸方向に移動可能に外挿され、前記第1磁性体よりも径方向内方において周側部に第2磁性体が設けられ、下端部に連結されたキャスターに前記第1磁性体と前記第2磁性体の間の磁力によって付与された周方向の回転力を伝達する回転筒と、
前記ケースの下側に連設され、下部が開放され、所定回転位置に位置した前記キャスターを収納可能である収納部と、
前記第1磁性体又は前記第2磁性体の軸方向の移動によって前記第1磁性体と前記第2磁性体を互いに近接させ、前記回転筒及び前記回転筒に連結されて前記収納部から突出した前記キャスターを前記磁力によって前記所定回転位置に回転させ、前記キャスターを前記所定回転位置に保持する保持状態、又は前記第1磁性体又は前記第2磁性体を軸方向に移動させることによって前記第1磁性体と前記第2磁性体を互いに離隔させ、前記第1磁性体に対して前記第2磁性体を回転自由とすることによって前記キャスターを回転自由とする自由状態のいずれかに切り替える切替部と、
を有するキャスター装置。
【請求項2】
短筒と圧縮バネを有し、
前記周板には、第1周孔、前記第1周孔よりも下方に配置された第2周孔、及び軸方向に沿った第1長孔が設けられ、
前記圧縮バネは、前記ケースの天板と前記短筒の間に介装され、前記短筒に下方へ向かう付勢力を付与し、
前記短筒は、
前記回転筒の上部に前記回転筒に対して回転可能に装着され、
周側部に、係止孔と、前記第1長孔内に延出して周方向に回転しないように規制する第1規制突起とを設け、
前記第1周孔を介して前記係止孔に第1係止ピンを挿入することによって前記キャスターを前記収納部に収納した収納位置に固定可能であり、
前記第2周孔を介して前記係止孔に第2係止ピンを挿入することによって前記キャスターを前記収納部から突出した突出位置に固定可能であり、
請求項1に記載のキャスター装置。
【請求項3】
少なくとも前記第1磁性体又は前記第2磁性体のいずれか一方は、永久磁石であり、
前記周板には、軸方向に沿った第2長孔が設けられ、
前記切替部は、
前記回転筒の外周を取り巻くように軸方向へ移動可能に設けられて前記第1磁性体を支持する移動筒と、前記移動筒から前記第2長孔を介して前記周板の外側に突出し、前記第1磁性体の周方向の回転を規制する第2規制突起とを有する
請求項1又は2に記載のキャスター装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1磁性体又は前記第2磁性体のいずれか一方は、永久磁石であり、
前記ケースは、前記第2周孔よりも下方に設けられた第3周孔と、前記第3周孔よりも下方に設けられた第4周孔とを有し、
前記短筒は、前記圧縮バネの付勢力によって前記係止孔が前記第3周孔に対向するように移動され、前記第3周孔を介して前記係止孔に第3係止ピンを挿入することにより、前記キャスターを突出して前記所定回転位置に保持した突出保持位置に固定可能であり、
前記切替部は、
前記短筒が前記突出保持位置に位置すると、前記第1磁性体が前記第2磁性体に近接し、前記第1磁性体と前記第2磁性体の間の磁力によって前記第2磁性体を前記所定回転位置に回転させることによって前記保持状態に切り替え、
前記短筒が前記突出位置に位置すると、前記第1磁性体が前記第2磁性体から離隔して前記自由状態に切り替える、
請求項2に記載のキャスター装置。
【請求項5】
前記ケースと前記収納部の間に補強部材が介装された、請求項2に記載のキャスター装置。
【請求項6】
前記第1磁性体は、電磁石であり、
前記切替部は、
前記電磁石に電力を供給して前記磁力を発生させ、前記電磁石と前記第2磁性体の間の磁力によって前記第2磁性体を前記所定回転位置に回転させることによって前記保持状態に切り替え、
前記電磁石の電力の供給を停止することによって前記自由状態に切り替える、
請求項1又は2に記載のキャスター装置。
【請求項7】
第1キャスター機構と第2キャスター機構を有し、
前記第1キャスター機構の前記キャスターと、前記第2キャスター機構の前記キャスターとが互い交差した向きで保持されるように、前記第1キャスター機構の前記キャスターの前記所定回転位置及び前記第2キャスター機構の前記キャスターの前記所定回転位置が定められた、
請求項1から6のいずれか1項に記載のキャスター装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一態様のキャスター装置は、ケース、回転筒、収納部及び切替部を有する。前記ケースは、軸体が内側に設けられ、周板によって第1磁性体の周方向の回転を規制する。前記回転筒は、前記軸体に軸周り方向へ回転可能かつ軸方向に移動可能に外挿され、前記第1磁性体よりも径方向内方において周側部に第2磁性体が設けられ、下端部に連結されたキャスターに前記第1磁性体と前記第2磁性体の間の磁力によって付与された周方向の回転力を伝達する。前記収納部は、前記ケースの下側に連設され、下部が開放され、所定回転位置に位置した前記キャスターを収納可能である。前記切替部は、前記第1磁性体又は前記第2磁性体の軸方向の移動によって前記第1磁性体と前記第2磁性体を互いに近接させ、前記回転筒及び前記回転筒に連結されて前記収納部から突出した前記キャスターを前記磁力によって前記所定回転位置に回転させ、前記キャスターを前記所定回転位置に保持する保持状態、又は前記移動筒又は前記回転筒を軸方向に移動させることによって前記第1磁性体と前記第2磁性体を互いに離隔させ、前記第1磁性体に対して前記第2磁性体を回転自由とすることによって前記キャスターを回転自由とする自由状態のいずれかに切り替える。