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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083951
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】半導体光素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/227 20060101AFI20220530BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
H01S5/227
H01S5/343
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017749
(22)【出願日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2020194960
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】滝田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】浜田 重剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 良介
(72)【発明者】
【氏名】荒沢 正敏
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 隆
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA22
5F173AB13
5F173AD12
5F173AG08
5F173AJ23
5F173AK08
5F173AP05
(57)【要約】
【課題】長期信頼性優れた半導体光素子を提供することにある。
【解決手段】基板と、前記基板の上に設けられたメサ構造と、前記メサ構造の両脇に接して設けられる半導体埋め込み層と、前記半導体埋め込み層の上部に設けられたAuを含む電極と、を備え、前記メサ構造は前記基板側から第1導電型半導体層、多重量子井戸層、第2導電型半導体層で積層され、前記半導体埋め込み層は、前記メサ構造の側部に接して設けられる第1半絶縁性InP半導体層と、前記第1半絶縁性InP層に接して設けられる第1拡散防止層と、前記第1拡散防止層上に設けられる第2半絶縁性InP層とを含み、前記第1拡散防止層のAuの拡散定数は、前記第1半絶縁性InP層より小さい半導体光素子。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と
前記基板の上に設けられたメサ構造と、
前記メサ構造の両脇に接して設けられる半導体埋め込み層と、
前記半導体埋め込み層の上部に設けられたAuを含む電極と、を備え、
前記メサ構造は、前記基板側から第1導電型半導体層、多重量子井戸層、第2導電型半導体層で積層され、
前記半導体埋め込み層は、前記メサ構造の側部に接して設けられる第1半絶縁性InP半導体層と、前記第1半絶縁性InP層に接して設けられる第1拡散防止層と、前記第1拡散防止層上に設けられる第2半絶縁性InP層とを含み、
前記第1拡散防止層のAuの拡散定数は、前記第1半絶縁性InP層より小さい、半導体光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記メサ構造は、さらに前記第2半導体層の上部にコンタクト層を含み、
前記第2半絶縁性InP層は、前記メサ構造から離れるに従って、前記基板の表面からの高さが高くなる斜面部を含み、
前記電極は、前記コンタクト層および前記斜面部の少なくとも一部を覆うように配置され、
前記電極は、前記コンタクト層に接している、半導体光素子。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体光素子であって、
前記第2半絶縁性InP層の上に第2拡散防止層をさらに含み、
前記第2拡散防止層は、前記電極の一部と前記第2半絶縁性InP層との間に配置され、
前記第2拡散防止層のAuの拡散定数は、前記第2半絶縁性InP層より小さい、半導体光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記メサ構造および前記第2半絶縁性InP層の上に跨るように第2導電型半導体層と同一導電型の第3半導体層と、前記第3半導体層と前記電極との間にコンタクト層をさらに含む、半導体光素子。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の半導体光素子であって、
前記第1拡散防止層の前記メサ構造の側面に平行な方向で見た時の先端は、前記基板側から見て前記多重量子井戸層より高い、半導体光素子。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の半導体光素子であって、
前記第1拡散防止層の前記メサ構造の側面に平行な方向で見た時の先端は、前記メサ構造の高さの80%以上まで及ぶ、半導体光素子。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の半導体光素子であって、
前記メサ構造の側面に垂直な方向で見た時に、前記メサ構造の側面と前記第1拡散防止層との距離は10nm以上離れている、半導体光素子。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の半導体光素子であって、
前記第1拡散防止層は、InGaAs、InGaAsP、InGaAlAs、InAlAsのいずれかである、半導体光素子。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の半導体光素子であって、
前記第1拡散防止層は、アンドープ、n型、p型のいずれかである、半導体光素子。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載の半導体光素子であって、
第1拡散防止層は、前記基板に近いほど前記メサ構造の側面からの距離が大きくなる部分を有する、半導体光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル端末やインターネットなどの通信機器の普及に伴い、光送受信モジュールに高速化及び大容量化が求められている。光送受信モジュールの光源として、半導体光素子が広く使われている。半導体光素子の代表的なものの一つとして埋め込めヘテロ構造(Buried Hetero-structure:BH構造)が知られている。BH構造とは、多重量子井戸層を含むメサ構造の両側面を半導体層で埋め込まれた構造であり、高信頼性及び低寄生容量による高速応答性に優れた半導体素子である。メサ構造の両側面を埋め込む半導体層は半絶縁性半導体層やPN接合を含む複数の半導体層で構成されることが知られている。また光源としては直接変調型の半導体レーザや半導体レーザから出射される連続光の変調する電界吸収型変調器(EA(Electro-Absorption)変調器)が知られている。
【0003】
特許文献1には、BH構造を有するEA変調器が開示されている。当該EA変調器はメサストライプの両側をRuがドーピングされたInP層(埋め込み層)で埋め込まれている。メサストライプはn型InGaAsP下側ガイド層、MQW層(Multiple-Quantum Well)、p型InGaAsP上側ガイド層、p型InPクラッド層、そしてp型コンタクト層で構成されている。そして、p型コンタクト層にはTi/Pt/Auで構成されるp型電極が接続される。基板(ウエハ)の裏側にはAuGe/Ni/Ti/Pt/Auで構成されるn型電極が形成されている。p型電極とn型電極間に電圧を印可することで、EA変調器は光を吸収し、変調器として動作する。p型電極は、パッシベーション膜を挟んで埋め込み層の上にも形成されている。また発振器(DFBレーザ)もほぼ同様の構成となっている。また特許文献2には埋め込み層の異常成長を抑制するための製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、BH構造の上にさらにクラッド層およびコンタクト層を形成する構造が開示されている。本構造は、プレナーBH(Planer BH:PBH構造)と呼ばれている。PBH構造は、メサ状の両側に埋め込み層が配置され、メサ状の頂上を含み埋め込み層全体にわたってp-InPクラッド層が配置されている。さらにその上にP-InPクラッド層を覆うようにp型InGaAsコンタクト層が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-2929号公報
【特許文献2】特開2010-267674号公報
【特許文献3】国際公開第2019/220514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体光素子では、電極材料としてAuが用いられる。Auは、InPに対する拡散速度が非常に速いことが知られている。Au拡散が進行し、活性層(多重量子井戸層)に到達すると、半導体光素子の特性および信頼性は劣化する。InP基板上に作成されるBH構造の半導体光素子では、例えばInPにFeをドーピングした半絶縁性InP(SI-InP)を埋込材料として用いる。特許文献2に開示されているように、埋め込み成長直後においては、半導体光素子の表面には、メサ構造の直上を除いて埋め込み層が露出するため、最表面はFe-InP層となる。特許文献1に開示されているように、p型電極は半導体層側からTi/Pt/Auが積層された構造となっている。Ptは、Auの半導体層への拡散を抑制するが、半導体層表面の形状等の影響により、Auの拡散を完全に防止することは困難である。そのため、p型電極に含まれるAuがInPで構成される埋め込み層を通って多重量子井戸層まで拡散する恐れがある。さらに特許文献3では上面電極とp型InPクラッド層との間にp型InGaAsのコンタクト層が配置されている。InGaAs層は、InPと比較してAuの拡散係数は小さく、p型InPクラッド層に拡散する恐れが小さい。しかし、製造ばらつきなどによりInGaAsコンタクト層が薄く形成されることなどで、Auが拡散する可能性は0ではない。そしてAuが拡散した場合は、p型InPクラッド層、InP埋め込み層を介して活性層の側面側からAuが活性層に拡散する恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、長期信頼性優れた半導体光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体光素子は、基板と、前記基板の上に設けられたメサ構造と、前記メサ構造の両脇に接して設けられる半導体埋め込み層と、前記半導体埋め込み層の上部に設けられたAuを含む電極と、を備え、前記メサ構造は前記基板側から第1導電型半導体層、多重量子井戸層、第2導電型半導体層で積層され、前記半導体埋め込み層は、前記メサ構造の側部に接して設けられる第1半絶縁性InP半導体層と、前記第1半絶縁性InP層に接して設けられる第1拡散防止層と、前記第1拡散防止層上に設けられる第2半絶縁性InP層とを含み、前記第1拡散防止層のAuの拡散定数は、前記第1半絶縁性InP層より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、長期信頼性に優れた半導体光素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体光素子の上面図である。
図2図1に示す半導体光素子のA-A線断面図である。
図3a図1に示す半導体光素子のB-B線断面図である。
図3b図3aの一部拡大図である。
図4a図1に示す半導体光素子のC-C線断面図である。
図4b図4aの一部拡大図である。
図5】本発明の第1の実施形態の変形例1に係る図1に示す半導体光素子のB-B線断面の拡大図である。
図6】本発明の第1の実施形態の変形例2に係る図1に示す半導体光素子のB-B線断面の拡大図である。
図7】本発明の第1の実施形態の変形例3に係る図1に示す半導体光素子のB-B線断面の拡大図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体光素子の上面図である。
図9図9に示す半導体光素子のD-D線断面図である。
図10a図9に示す半導体光素子のE-E線断面図である。
図10b図10aの一部拡大図である。
図11】本発明の第2の実施形態の変形例1に係る図8に示す半導体光素子のE-E線断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体光素子1の上面図である。半導体光素子1は、半導体レーザ10と電界吸収型変調器(EA変調器)11とが一体的に集積されている変調器集積半導体レーザである。なお、本実施形態では集積型の例を示すが、本発明は半導体レーザ単体またはEA変調器単体であっても発明の効果は得られる。半導体光素子1は、半導体レーザ10と、導波路12と、EA変調器11とがこの順で互いに光学的に接続された集積素子である。半導体レーザ10は連続光を出射し、導波路12は半導体レーザ10の出射光をEA変調器11に伝達する。EA変調器11は、半導体レーザ10の発振波長に対応した光を吸収する多重量子井戸層を備えている。導波路12を通過してEA変調器11に入光した連続光は、EA変調器11にて強度変調され、2値や4値等の変調光信号に変換される。EA変調器11から出射された変調光信号は、前方端面13から出射される。なお、前方端面付近に他の構造、例えば絶縁性のInPなどを配置した窓構造を備えていても良い。前方端面13には図示しない誘電体無反射膜が形成されている。また半導体レーザ10の逆側の端面である後方端面14には、図示しない誘電体高反射膜が形成されている。また詳細は後述するが、半導体レーザ10からEA変調器11まではメサ構造を備えており、その両側は半導体埋め込み層で埋め込まれた埋め込み型半導体素子となっている。
【0013】
図2は、半導体光素子1の光軸に平行なA-A断面の模式図となっている。ベースとなるn-InP基板30(基板)に半導体レーザ10、導波路12、そしてEA変調器11が集積されている。ここでn-InP基板30は第1導電型半導体層でもある。半導体レーザ10は、例えば、1.3μm帯で発振するDFB(Distributed Feedback)レーザである。なお、半導体レーザ10は、1.55μm帯で発振するDBFであっても構わない。さらには、半導体レーザ10は、DFBレーザに限らず、FP(Fabry-Perot)レーザ、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザ、DR(Distributed Reflector)レーザであっても構わない。半導体レーザ10は、レーザ部多重量子井戸層31と、レーザ部多重量子井戸層31の上部に設けられた回折格子層32を備えている。回折格子層32の格子間およびその上にはp-InPクラッド層33(第2導電型半導体層)が設けられている。なお、図示はしていないがレーザ部多重量子井戸層31の上下にはそれぞれ光閉じ込め層が設けられている。またp-InPクラッド層33の最上部にはコンタクト層42(図4b参照)が設けられている。コンタクト層42は、レーザ部電極34(第2導電側電極)と電気的かつ物理的に接続している。n-InP基板30の裏面側にはほぼ全面を覆うように裏面電極35(第1導電側電極)が設けられている。半導体レーザ10は、レーザ部電極34と裏面電極35との間に電界が印可(電流を注入)されることで、連続光を発振する。ここでは1.3μm帯で発振するようにレーザ部多重量子井戸層31の組成波長等および回折格子層32の格子間隔は設定される。
【0014】
EA変調器11は、変調器部多重量子井戸層39を備えている。なお、図示はしていないが変調器部多重量子井戸層39の上下にはそれぞれ光閉じ込め層が設けられている。変調器部多重量子井戸層39は、電界が印可された際に半導体レーザ10の出射光を吸収する構造を備えている。変調器部多重量子井戸層39の上部にはp-InPクラッド層33が配置されている。なお、ここでは半導体レーザ10に設けられているp-InPクラッド層33と同じものが形成されているが、異なるものであっても構わない。p-InPクラッド層33の上部には変調器電極40(第2導電側電極)が配置されている。変調器電極40は、p-InPクラッド層33の上部に配置されたコンタクト層42と電気的かつ物理的に接続されている。コンタクト層42は、半導体レーザ10に設けられた層と同じものであるが、異なるものであっても構わない。変調器電極40と裏面電極35との間に逆バイアスを印可することで光吸収が行われる。変調器電極40は、メサ構造の上部に設けられた略長方形状の変調器メサ電極40aと楕円形状の変調器パッド電極40bで構成される。変調器メサ電極40aと変調器パッド電極40bとの間は細い引き出し電極で繋がっている。また説明の便宜上変調器電極40を複数の部分に分けているが、その構造自体は同じ一体的なものである。また変調器パッド電極40bは、楕円形状に限定されず、四角形状でも角が丸められている四角形状、円形状であっても構わない。変調器パッド電極40bにはEA変調器11へ電気信号を伝達するためのシグナルワイヤ(図示なし)が接続される。
【0015】
導波路12は、導波路部半導体層38を備えている。導波路部半導体層38は、半導体レーザ10の出射光を吸収しない半導体層である。例えばバルク層である。また、導波路部半導体層38の上下には光閉じ込め層が配置されても良い。導波路部半導体層38の上部にはp-InPクラッド層33が配置されている。なお、ここでは半導体レーザ10に設けられているp-InPクラッド層33と同じものが形成されているが、異なるものであっても構わない。導波路12のp-InPクラッド層33の構成は、半導体レーザ10に設けられているものと同一であるが、厚みが異なる。導波路12のp-InPクラッド層33は、半導体レーザ10のp-InPクラッド層33と比較すると薄くなっている。これはEA変調器11と半導体レーザ10との間の電気アイソレーションを高めるためである。
【0016】
図3aは、EA変調器11の光軸に垂直なB-B断面の模式図である。メサ構造は、n-InP基板30の一部と、変調器部多重量子井戸層39とp-InPクラッド層33、そしてコンタクト層42(図3b参照)で構成されている。メサ構造の両側は、埋め込み層(BH層)36で埋め込まれている。メサ構造の上部から片側のBH層の上部に渡って変調器電極40が配置されている。変調器電極40は、BH層36側からTi/Pt/Auの3層構造となっている。Tiは、他の金属と半導体との接着強度をあげるために設けられており、同様の効果が得られれば他の金属であっても構わない。Ptは、Auが半導体層側に拡散することを防止するバリア層としての機能を持つ。同様の効果が得られれば他の金属であっても構わない。例えば、Ptに代えてPdが配置されてもよい。なおPt層があったとしてもAuはその隙間などから半導体層側に拡散する場合がある。また、BH層36の上部においては、変調器電極40とBH層36との間に絶縁膜(パッシベーション膜)37が配置されている。ここでは、絶縁膜37はSiO2膜であるがこれに限定されない。なお、絶縁膜37と変調器パッド電極40bとの間に他の酸化膜があっても構わない。n-InP基板30の裏面には裏面電極35が形成されている。BH層36は、メサ構造の両脇の一部および変調器電極40の下部にのみ形成されており、BH層36が形成されていない領域は、n-InP基板30の上に絶縁膜37が形成された構造である。
【0017】
図3bは、図3aの点線四角で囲った領域の拡大図である。図3aでは図示していないが、半導体素子1のBH層36は、第1半絶縁性InP層36a、第1拡散防止層36b、第2半絶縁性InP層36cの3層構成となっている。第2半絶縁性InP層36cは、第1半絶縁性InP層36aより厚い層である。BH層36は、メサ構造の頂点から図面上左右方向に、斜面部を含んでいる。すなわち、BH層36は、メサ構造から離れるに従って、n-InP基板30の表面からの高さが高くなる斜面部を有する。メサ構造の片側(図3bの左側)には斜面部の途中までBH層36が形成されている。逆側(図3bの右側)には斜面部の右側に水平領域がある。第1半絶縁性InP層36aと第2半絶縁性InP層36cは、Feがドーピングされた半絶縁性のInP層である。なお、それに限らずRuをドーピングしても構わない。また第1半絶縁性InP層36aと第2半絶縁性InP層36cが異なるドーパントであっても構わない。第1半絶縁性InP層36aと第2半絶縁性InP層36cは接した領域で一体となっているが、製造段階では異なる層として形成されている。第2半絶縁性InP層36cの上面には第2拡散防止層43が配置されている。第2拡散防止層43は、主として第2半絶縁性InP層36cの水平領域に配置されているが、斜面部を覆うように水平領域と比較して薄く形成されている。なお、第2拡散防止層43は、斜面部に形成されない場合もある。第1拡散防止層36b及び第2拡散防止層43は、アンドープのInGaAsである。InGaAsは、InPと比較してAuの拡散定数が十分に小さい。なお、これに限定されず、第1拡散防止層36b及び第2拡散防止層43は、p型、n型、そして半絶縁性の半導体のいずれであっても構わない。またInPよりAuの拡散定数が小さければ、他の材料でも構わなく、例えばInGaAsP、InGaAlAs、InAlAsであっても構わない。
【0018】
第1拡散防止層36bは、n-InP基板30に略平行な領域と、メサ構造の積層方向に略平行な領域と、で構成されている。ここでは説明の簡略化のために曲る領域は直角で示しているが、実際は曲線を含みなだらかに曲がる場合もある。また、メサ構造の積層方向に略平行な領域において、図面上、第1拡散防止層36bはメサ構造の側面に平行であるが、第1拡散防止層36bはメサ構造の側面に対して一定の角度で形成されてもよい。すなわち、メサ構造の積層方向に略平行な領域の第1拡散防止層36bは、基板に近いほどメサ構造の側面からの距離が大きくなるように形成されてもよい。また、メサ構造の積層方向に略平行な領域の厚みは、n-InP基板30に略平行な領域の厚みより薄くなっている。メサ構造の積層方向に略平行な領域の先端は、メサ構造の頂点まで及ばずp-InPクラッド層33の途中までとなっている。
【0019】
ここで本発明の効果を説明する。課題で示したように電極に含まれるAuは、InPに対して拡散する性質がある。特許文献1に開示されている構造の場合、電極とInPで構成された埋め込み層との間に絶縁膜37が挟まれていない領域がある。具体的には、当該領域は、埋め込み層の斜面部と水平な領域の一部である。この電極とInPが接触する領域を通って、AuがInP埋め込み層を通過し、変調器多重量子井戸層39まで拡散した場合、結晶クラックなどが発生し特性や信頼性が低下する。しかし、本実施形態においては、BH層36が第1拡散防止層36bを含んでいる。第1拡散防止層36bは、InGaAsで構成され、InPと比較してAuが拡散しにくい性質がある。第2半絶縁性InP層36cに拡散したAuは、第1拡散防止層36bによりトラップされ、変調器部多重量子井戸層39まで及ぶことがないため特性劣化や長期信頼性を確保することが可能となる。第1拡散防止層36bは、第1半絶縁性InP層36aと第2半絶縁性InP層36cとを完全には分断していないため、隙間を通ってAuが変調器部多重量子井戸層39まで拡散する可能性は残る。しかしながら、第1拡散防止層36bにより、Auの拡散量を大幅に低減させることが可能となり、実用に耐えうる十分な信頼性は得られる。第1拡散防止膜36bの先端は、少なくとも変調器多重量子井戸層39を超える高さまで形成されていることが望ましい。
【0020】
図3bの横方向で見て、第1拡散防止層36bは変調器部多重量子井戸層39から10nm以上離れていることが好ましい。第1拡散防止層36bとメサ部分が電気的に接続した場合、容量増となり、高周波特性が低下する。一方、Au拡散防止の点からはメサと第1拡散防止層36bとの距離は200nm以下が望ましい。
【0021】
第1拡散防止層36bの厚みは1nm以上あればAu拡散防止効果は十分得られる。そして電気的・光学的な影響を抑えるためには5nm以下が好ましい。
【0022】
さらに、本実施形態では第2拡散防止層43を有する。第2拡散防止層43は、変調器電極40と第2半絶縁性InP層36cとの間に配置され、Auが第2半絶縁性InP層36cに拡散することを防止している。ここでは、第2拡散防止層43はアンドープのInGaAsであるが、これに限定されない。また、第2拡散防止層43は、第1拡散防止層36bと異なる組成であっても構わない。上述したようにBH層36の斜面部における第2拡散防止層43は薄い、もしくは完全に形成されない場合がある。しかし、本実施形態は第1拡散防止層36bを備えているため、第2拡散防止層43でトラップしきれなかったAuが変調器多重量子井戸層39に拡散することを防止することが可能となる。なお、ここでは最もAuの拡散防止効果が大きい二つの拡散防止層を備えて例を説明したが、第1拡散防止層36bだけでも十分な効果が得られるため、第2拡散防止層43はなくても構わない。
【0023】
図4aは、図1に示す半導体レーザ10の光軸に垂直なC-C断面の模式図である。メサ構造は、n-InP基板30の一部と、レーザ部多重量子井戸層31とp-InPクラッド層33、そしてコンタクト層42で構成されている。p-InPクラッド層33には回折格子層32が含まれている(図4b参照)。メサ構造の両側は、BH層36で埋め込まれている。レーザ部電極34は、メサ構造の両側のBH層36上およびメサ構造の上面に渡って広く配置されている。レーザ部電極34は、BH層36側からTi/Pt/Auの3層構造となっている。またBH層36の上部においては、レーザ部電極34とBH層36との間に絶縁膜37が配置されている。
【0024】
図4bは、図4aの点線四角で囲った領域の拡大図である。BH層36は、EA変調器11と同様の構成となっている。つまりBH層36は、第1半絶縁性InP層36a、第1拡散防止層36b、第2半絶縁性InP層36cの3層構成となっている。その配置の位置や組成等については図3bで説明したものと同様である。そのため、半導体レーザ10においてもEA変調器11と同様に、Auがレーザ部多重量子井戸層31に拡散することを防止することが可能となり、信頼性に優れた半導体素子を提供することができる。
【0025】
ここで半導体素子1の製造方法を説明する。公知の多層成長技術、BJ技術、およびフォトリソグラフィ技術を用いてBH層36を形成する直前までプロセス行う。この状態では半導体レーザ10、導波路12、EA変調器11それぞれがメサ構造(ハイメサ)となって繋がっている状態であり、メサ構造の側面には何も形成されていない。メサ構造の頂点には酸化膜マスクが形成されている。次にFeを添加した第1半絶縁性InP層36aをMOCVD法によって結晶成長させる。この時、第1半絶縁性InP層36aは、メサ構造の側面とメサ構造脇の水平領域(n-InP基板30の表面)の全体を覆うように結晶成長する。ここではメサ構造の頂点のコンタクト層42を覆うまで成長する。メサ構造の側面に図面上横方向に10nmの厚さを積んだ後に、第1拡散防止層36bを成長させる。この時、第1半絶縁性InP層36aから第1拡散防止層36bへの切り替え時に、結晶装置の炉体からウエハを取り出さず、第1半絶縁性InP層36aと第1拡散防止層36bは連続して多層成長される。これは後述する第2半絶縁性InP層36cおよび第2拡散防止層43の結晶成長についても同様である。第1拡散防止層36bは、第1半絶縁性InP層36aの表面を覆うように成長されるが、メサ構造の側面に略平行に形成された第1拡散防止層36bは、高さ方向については、メサ構造の頂点まで届かずp-InPクラッド層33の途中まで成長される。第1拡散防止層36bをメサ構造の側面から離れる方向に向かって2nm積んだ後、第2半絶縁性InP層36cを成長させる。第2半絶縁性InP層36cはメサ構造の高さを超えた後は、図3b等に示すように、メサ構造から離れるに従って高くなる斜面部を含む形状で成長される。第2半絶縁性InP層36cを6μm積んだ後、第2拡散防止層43を水平領域の厚さで100nm成長させる。この時、第2拡散防止層43は、斜面部において100nmより薄い領域や成長されない領域が生じる。最後にメサ構造の上のマスクを除去して、BH層36及び第2拡散防止層43の形成が完了する。
【0026】
次に、EA変調器11の寄生容量を低減するためにBH層36を除去する。最終的に残したい領域にマスクをして、ドライエッチイングやウェットエッチイングを用いて第2拡散防止層43およびBH層36を除去する。この時、第2拡散防止層43はサイドエッチが大きくなることを防止する効果もある。また所望のエッチング量を得るために時間制御で行うことが一般的だが、BH層36は約6μmと厚い層であるため、エッチング量が半導体光素子内やウエハ面内でばらつく恐れがある。しかし、第1拡散防止層36bと第2半絶縁性InP層36cは異なる材料であるため、選択エッチング技術により確実に第1拡散防止層36bに到達するまで第2半絶縁性InP層36cを除去することが可能となり、ばらつきを抑えることができる。第1拡散防止層36bからn-InP基板30までの厚みはそれほどないため、通常のエッチングで十分にエッチング量を制御することが可能である。
【0027】
次に、全面に絶縁膜37を形成する。さらに、半導体レーザ10およびEA変調器11のメサ頂点及びBH層36の斜面部の絶縁膜37を除去しスルーホールを形成する。そしてTi/Pt/Auのレーザ部電極34、変調器電極40を形成する。続いてn-InP基板30を所望の厚さに研磨した後、裏面に裏面電極35を形成し、ウエハは完成する。ウエハをバーに切り出し、前方端面13に誘電体無反射膜を、後方端面14に誘電体高反射膜を形成する。最後にバーから各素子を切り出して、図1に示す半導体素子1が完成する。
【0028】
[変形例1]
図5は、図1に示すEA変調器11の変形例1にかかるB-B線断面図である。図3bとの違いは、第1拡散防止層36bの先端がより高く伸びている点である。本願発明は多重量子井戸層へのAuの拡散を防止することが最大の目的であるため、図5で見た時の横方向において、多重量子井戸層の側面側に第1拡散防止層36bが重なっている必要がある。そして、より多重量子井戸層へのAu拡散を防止するためには、第1拡散防止層36bの先端は、メサ構造の高さの80%以上超える領域まで及んでいることが好ましい。ここでメサ構造の高さは、n-InP基板30の表面(BH層36の底部)からコンタクト層42の頂部までの距離である。さらに好ましくは、第1拡散防止層36bの先端は、メサ構造の高さ以上まで及ぶことが望ましい。
【0029】
[変形例2]
図6は、図1に示すEA変調器11の変形例1にかかるB-B線断面図である。図3bとの違いは、第1拡散防止層36bが2層構造となっている点である。ここでは第1拡散防止層36bはアンドープのInGaAsとアンドープのInGaAsPで構成されている。異なる半導体層を組み合わせることで、さらなるAu拡散の低減を図ることが可能となる。これに限らず、第1拡散防止層36bはInPよりAuの拡散定数が小さい半導体層の複数の組み合わせで構成してもよい。また本思想は第2拡散防止層43についても同様である。また半導体レーザ10においても同様の構造を採用してよい。
【0030】
[変形例3]
図7は、図1に示すEA変調器11の変形例2にかかるB-B線断面図である。図3bとの違いは、BH層36の構成である。本変形例ではBH層36はn-InP基板30側から、第1半絶縁性InP層36a1、第1拡散防止層36b1、第2半絶縁性InP層36a2、第3拡散防止層36b2、そして第3半絶縁性InP層36a3の5層構成となっている。言い換えると、BH層36の中にAuに対する二つの拡散防止層が含まれている。半絶縁性InP層は、第1の実施形態で説明した層のいずれかを選択すればよく、二つの拡散防止層も同様である。また、第3拡散防止層36b2は、メサ構造の80%以上の高さまで覆っている必要はない。本発明の効果を得るためには、メサ構造に最も近い拡散防止層(ここでは第1拡散防止層36b1)が変調器多重量子井戸層39の側面側を覆っていれば十分である。なお、BH層中に2層以上の拡散防止層を挟んでも構わないが、BH層の全体の結晶品質等の観点からは少ないほうが好ましい。また半導体レーザ10においても同様の構造を採用してよい。
【0031】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態にかかる半導体光素子101の上面図である。半導体光素子101は、半導体レーザ110と電界吸収型変調器(EA変調器)111とが一体的に集積されている変調器集積半導体レーザである。なお、本実施形態では集積型の例を示すが、本発明は半導体レーザ単体またはEA変調器単体であっても発明の効果は得られる。半導体光素子101は、半導体レーザ110と、導波路12と、EA変調器111とがこの順で互いに光学的に接続された集積素子である。半導体レーザ110は連続光を出射し、導波路112は半導体レーザ110の出射光をEA変調器111に伝達する。EA変調器111は、半導体レーザ110の発振波長に対応した光を吸収する多重量子井戸層を備えている。導波路112を通過してEA変調器111に入光した連続光は、EA変調器111にて強度変調され、2値や4値等の変調光信号に変換される。EA変調器111から出射された変調光信号は、前方端面113から出射される。なお、前方端面付近に他の構造、例えば絶縁性のInPなどを配置した窓構造を備えていても良い。前方端面113は図示しない誘電体無反射膜が形成されている。また、半導体光素子101の逆側の端面である後方端面114には、図示しない誘電体高反射膜が形成されている。また詳細は後述するが、半導体レーザ110からEA変調器111まではメサ構造を備えており、その両側は、半導体埋め込み層で埋め込まれた埋め込み型半導体素子となっている。さらに埋め込み層の上面にクラッド層が形成されたPBH構造を備えている。
【0032】
図9は、半導体光素子101の光軸に平行なD-D断面の模式図となっている。ベースとなるn-InP基板130(基板)に半導体レーザ110、導波路112、そしてEA変調器111が集積されている。ここでn-InP基板130は、第1導電型半導体層でもある。半導体レーザ110は、例えば、1.3μm帯で発振するDFBレーザである。なお、半導体レーザ110は、1.55μm帯で発振するDFBレーザであっても構わない。さらには半導体レーザ110は、DFBレーザに限らず、FPレーザ、DBRレーザ、DRレーザであっても構わない。半導体レーザ110は、レーザ部多重量子井戸層131と、レーザ部多重量子井戸層131の上部に設けられた回折格子層132を備えている。回折格子層132の格子間およびその上には第1p-InPクラッド層133(第2導電型半導体層)が設けられている。なお、図示はしていないがレーザ部多重量子井戸層131の上下にはそれぞれ光閉じ込め層が設けられている。また第1p-InPクラッド層133の上には第2p-InPクラッド層151(第3半導体層)が設けられている。図9では説明の便宜上第1p-InPクラッド層133と第2p-InPクラッド層151との界面に点線を示しているが、製造後は一体的なp-InPクラッド層となりその界面は明らかではない場合がある。第2p-InPクラッド層151の上面にはコンタクト層152(図10b参照)が設けられている。コンタクト層152は、レーザ部電極134(第2導電側電極)と電気的かつ物理的に接続している。n-InP基板130の裏面側にはほぼ全面を覆うように裏面電極135(第1導電側電極)が設けられている。半導体レーザ110は、レーザ部電極134と裏面電極135との間に電界が印可(電流を注入)されることで、連続光を発振する。ここでは1.3μm帯で発振するようにレーザ部多重量子井戸層131の組成波長等および回折格子層132の格子間隔が設定される。
【0033】
EA変調器111は、変調器部多重量子井戸層139を備えている。なお、図示はしていないが変調器部多重量子井戸層139の上下にはそれぞれ光閉じ込め層が設けられている。変調器部多重量子井戸層139は、電界が印可された際に半導体レーザ110の出射光を吸収する構造を備えている。変調器部多重量子井戸層139の上部には第1p-InPクラッド層133が配置されている。なお、ここでは半導体レーザ110に設けられている第1p-InPクラッド層133と同じものが形成されているが、異なるものであっても構わない。第1p-InPクラッド層133の上部には第2p-InPクラッド層151、その上面にはコンタクト層152(図示無し)が設けられている。第2p-InPクラッド層151およびコンタクト層152は半塔体レーザ110に設けられた層と同じものであるが異なるものであっても構わない。コンタクト層152の上には変調器電極140(第2導電側電極)が配置されている。変調器電極140は、コンタクト層152と電気的かつ物理的に接続されている領域を含む。変調器電極140と裏面電極135との間に逆バイアスを印可することで光吸収が行われる。変調器電極140は、メサ構造の上部に設けられた略長方形状の変調器メサ電極140aと楕円形状の変調器パッド電極140bで構成される。変調器メサ電極140aと変調器パッド電極140bとの間は細い引き出し電極で繋がっている。また説明の便宜上変調器電極140を複数の部分に分けているが、その構造自体は同じ一体的なものである。また変調器パッド電極140bは楕円形状に限定されず、四角形状でも角が丸められている四角形状、円形状であっても構わない。変調器パッド電極140bにはEA変調器11へ電気信号を伝達するためのシグナルワイヤ(図示なし)が接続される。
【0034】
導波路112は導波路部半導体層138を備えている。導波路部半導体層138は、半導体レーザ110の出射光を吸収しない半導体層である。例えば導波路部半導体層138は、バルク層である。また導波路部半導体層138の上下には光閉じ込め層を配置しても良い。導波路部半導体層138の上部には第1p-InPクラッド層133が配置されている。その上には第2p-InPクラッド層151が設けられている。なお、ここでは半導体レーザ110に設けられている第1p-InPクラッド層133、第2p-InPクラッド層151と同じものが形成されているが、異なるものであっても構わない。導波路112の第2p-InPクラッド層151の構成は、半導体レーザ110に設けられているものと同一であるが、厚みが異なる。導波路112の第2p-InPクラッド層151は、半導体レーザ110の第2p-InPクラッド層151と比較すると薄くなっている。これはEA変調器111と半導体レーザ110との間の電気アイソレーションを高めるためである。
【0035】
図10aは、EA変調器111の光軸に垂直なE-E断面の模式図である。EA変調器111は、メサ構造とその上の第2p-InPクラッド層151以降の層とで大きく二つのパーツで構成されている。メサ構造は、n-InP基板130の一部と、変調器部多重量子井戸層139と第1p-InPクラッド層133で構成されている。メサ構造の両側は埋め込み層(BH層)136で埋め込まれている。BH層136の上には第2p-InPクラッド層151がメサ構造およびメサ構造の両側のBH層の上面全面に渡って広く形成されている。第2p-InPクラッド層151の上面にはp型InGaAsで構成されたコンタクト層152が設けられている。コンタクト層152の上には、メサ構造の上部を除いてSiO2の絶縁膜137が設けられている。絶縁膜137の上面およびコンタクト層152の上面に変調器電極140が設けられている。
【0036】
図10bは、図10aの点線四角で囲った領域の拡大図である。図10aでは図示していないが、半導体素子1のBH層136は、第1半絶縁性InP層136a、第1拡散防止層136b、第2半絶縁性InP層136cの3層構成となっている。第2半絶縁性InP層136cは、第1半絶縁性InP層136aより厚い層である。BH層136の詳細は第1の実施形態で示したBH層36と同じである。ただし、第1の実施形態のBH層36では斜面部があったが、第2の実施形態のBH層136では斜面部はあってもなくても構わない。
【0037】
本実施形態によれば、第1の実施形態で示した効果と同様の効果が得られる。つまり、変調器多重量子井戸層131の側部に第1拡散防止層136bが配置されていることでAu拡散の影響を低減することが可能となる。また本実施形態では、コンタクト層152が第2拡散防止層として機能する。さらに、本構造は半導体レーザ110でも同様であり、半導体レーザ110においてもAu拡散の影響を低減することが可能となる。
【0038】
[変形例1]
図11は、図8に示すEA変調器111の変形例1にかかるE-E線断面図である。図10bとの違いは、第1拡散防止層36bの先端が第2p-InPクラッド層151に接する領域まで伸びている点である。本構成によれば第2半絶縁性InP層136cに拡散したAuが変調器多重量子井戸層139に及ぶことを大幅に低減することが可能となる。なお、第1の実施形態の変形例1で示した構造と同様に第1拡散防止層136bの先端はメサ高さの80%以上超える領域まで及んでいることが好ましい。
【0039】
第1の実施形態で示した種々の変形例は第1の実施形態にも適用可能であることは言うまでもない。
【0040】
なお、上記実施形態では基板はn-InP基板で説明したが、これに限定されずp-InP基板として、上記説明とは極性が逆の構造であっても構わない。さらに半絶縁性基板であっても構わない。半絶縁性基板の場合は、半絶縁性基板の上にn型の半導体層(第1導電型半導体層)を配置すればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体光素子、10 半導体レーザ、11 電界吸収型変調器、12 導波路、13 前方端面、14 後方端面、30 n-InP基板、31 レーザ部多重量子井戸層、32 回折格子層、33 p-InPクラッド層、34 レーザ部電極、35 裏面電極、36 埋め込み層、36a,36a1 第1半絶縁性InP層、36b,36b1 第1拡散防止層、36c,36a2 第2半絶縁性InP層、36b2 第3拡散防止層、36a3 第3半絶縁性InP層、37 絶縁膜、38 導波路部半導体層、39 変調器部多重量子井戸層、40 変調器電極、40a 変調器メサ電極,40b 変調器パッド電極、42 コンタクト層、43 第2拡散防止層、101 半導体光素子、110 半導体レーザ、111 電界吸収型変調器、112 導波路、113 前方端面、114 後方端面、130 n-InP基板、131 レーザ部多重量子井戸層、132 回折格子層、133 第1p-InPクラッド層、134 レーザ部電極、135 裏面電極、136 埋め込み層、136a 第1半絶縁性InP層、136b 第1拡散防止層、136c 第2半絶縁性InP層、137 絶縁膜、138 導波路部半導体層、139 変調器部多重量子井戸層、140 変調器電極、140a 変調器メサ電極,140b 変調器パッド電極、151 第2p-InPクラッド層、152 コンタクト層。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11