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特開2022-83962ダンパ・アセンブリのためのガスカップおよびダンパ・アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083962
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ダンパ・アセンブリのためのガスカップおよびダンパ・アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20220530BHJP
   F16F 9/08 20060101ALI20220530BHJP
   F16F 9/508 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F16F9/32 P
F16F9/08
F16F9/508
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100536
(22)【出願日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】17/105,474
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202110210406.2
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】510288840
【氏名又は名称】ベイジンウェスト・インダストリーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJINGWEST INDUSTRIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.85 Puan Road,Doudian Town,Fangshan District,Beijing,The People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 滋名
(72)【発明者】
【氏名】エリック シューマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー シュランゲン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジマーマン
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA53
3J069CC16
3J069EE64
(57)【要約】
【課題】経時的な気体圧力の損失を大きく低減できるガスカップを提供する。
【解決手段】ダンパ・アセンブリのためのガスカップは、上面と下面と外面と内面とを有する本体を備える。本体は、上面と下面とを貫通するよう延びる貫通空間を形成する。デカップラが、貫通空間内に配置され、本体に固定される。連結部材が、デカップラと本体との間に配置され、デカップラと本体とに連結される。デカップラと連結部材とが異なる弾性を有する材料から形成されることで、ダンパ・アセンブリにおける容積変化に応じてデカップラは貫通空間内において移動可能である。また、ガスカップを有するダンパ・アセンブリも提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面と外面と内面とを有し、前記上面から前記下面へと貫通するよう延びる貫通空間を形成する本体と、
前記貫通空間内に配置され前記本体に固定されるデカップラと、
前記デカップラと前記本体との間に配置され、前記デカップラと前記本体とに連結される連結部材と、
を備えるダンパ・アセンブリのためのガスカップであって、
前記デカップラと前記連結部材とが異なる弾性を有する材料で形成されることで、前記ダンパ・アセンブリにおける容積変化に応じて前記デカップラは前記貫通空間内において移動可能であり、前記ダンパ・アセンブリに可変チューニングを提供する、
ガスカップ。
【請求項2】
前記デカップラは剛性材料で形成され、前記連結部材はエラストマー材料で形成されている、
請求項1に記載のガスカップ。
【請求項3】
前記デカップラはアルミプレートを有し、前記アルミプレートの外縁にはエラストマー材料が接合されている、
請求項1または2に記載のガスカップ。
【請求項4】
前記連結部材は、前記内面から中心軸に向かって径方向内側に先端部へと延び、
前記連結部材の前記先端部は、前記デカップラに連結されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のガスカップ。
【請求項5】
前記連結部材の前記先端部は、前記中心軸回りに環状に延設される溝を有しており、
前記デカップラは前記溝に収容される、
請求項4に記載のガスカップ。
【請求項6】
前記貫通空間内に配置され、前記デカップラの移動を制限するよう前記内面に連結される少なくとも1つのストッパを、更に備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載のガスカップ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのストッパは、上側ストッパと、下側ストッパと、を含み、
前記上側ストッパは、前記上面に隣接して配置され、前記上面に向かう前記デカップラの軸方向移動を制限するよう前記本体に連結されており、
前記下側ストッパは、前記下面に隣接して配置され、前記下面に向かう前記デカップラの軸方向移動を制限するよう前記本体に連結されている、
請求項6に記載のガスカップ。
【請求項8】
前記上側ストッパの断面が第一曲率の円弧状であり、前記第一曲率が前記上面に向かう前記連結部材の変形と一致する、
請求項7に記載のガスカップ。
【請求項9】
前記下側ストッパの断面が第二曲率の円弧状であり、前記第二曲率が前記下面に向かう前記連結部材の変形と一致する、
請求項8に記載のガスカップ。
【請求項10】
前記上側ストッパは、第一周辺部を境界とする第一開口部を有しており、前記第一開口部の前記第一周辺部は、中心軸回りに正弦波状に延設されている
請求項7~9のいずれか1項に記載のガスカップ。
【請求項11】
前記上側ストッパは、第一周辺部を境界とする第一開口部を有しており、
前記第一周辺部は、中心軸回りに延設されるとともに、少なくとも1つの第一頂部と、少なくとも1つの第一谷部と、を有する、
請求項7~9のいずれか1項に記載のガスカップ。
【請求項12】
前記下側ストッパは、第二周辺部を境界とする第二開口部を有しており、前記第二開口部の前記第二周辺部は、中心軸回りに正弦波状に延設されている、
請求項10に記載のガスカップ。
【請求項13】
前記下側ストッパは、第二周辺部を境界とする第二開口部を有しており、
前記第二周辺部は、前記中心軸回りに延設されるとともに、少なくとも1つの第二頂部と、少なくとも1つの第二谷部とを有する、
請求項11に記載のガスカップ。
【請求項14】
中心軸に沿って開端部と閉端部との間で延設され、前記開端部と前記閉端部と間で延びる空間を形成する筐体と、
前記空間を圧縮チャンバと反発チャンバとに分割するよう前記空間内に摺動可能に配置されるピストンと、
前記開端部と封止係合するよう前記反発チャンバ内に配置されるピストンロッド・ガイドと、
前記反発チャンバ内へと延設され、前記ピストンを前記空間内で圧縮ストロークと反発ストロークとの間で移動させるよう前記ピストンに連結されるピストンロッドと、
請求項1~13のいずれか1項に記載のガスカップであって、該ガスカップの前記本体は、前記圧縮チャンバを気体隔室と液体隔室とに分割するよう前記圧縮チャンバ内に摺動可能に配置されており、前記気体隔室と前記液体隔室との間が流体連通可能であるように前記本体に前記貫通空間が形成されているガスカップと、
を備えるダンパ・アセンブリ。
【請求項15】
前記上側ストッパは、前記上面に向かう前記デカップラの軸方向移動を制限するよう前記本体の前記内面に連結されており、
前記下側ストッパは、前記下面に向かう前記デカップラの軸方向移動を制限するよう前記本体の前記内面に連結されている、
請求項14に記載のダンパ・アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ダンパ・アセンブリのためのガスカップおよびダンパ・アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のピストン・ダンパは、チューブと、ピストンアセンブリ(例えば、ピストンアセンブリは、ピストン・コアと、ピストン・コアの外部に配置されるピストンリングと、を有し、ピストン・コアとピストンリングとの間に貫通通路を形成している)と、ピストンロッドと、を有するダンパを備える。チューブには、減衰流体が封入されている。ピストンアセンブリは、チューブと、チューブの閉端部と開端部との間で、摺動可能に係合する。ピストンロッドは、ピストンアセンブリに取り付けられる第一端部と、チューブの開端部の外部に延設される第二端部と、を有する。ピストンロッドを案内しかつ減衰流体をチューブ内に封止するために、ロッド・ガイド・アセンブリがチューブの開端部に取り付けられる。当業者に知られているように、浮動式(フローティング)気密封止ガスカップ(例えば非透過性アルミニウムで形成される)が、減衰流体を気体から分離するよう摺動可能にチューブと係合し、ピストンロッドの移動、減衰流体の熱膨張および減衰流体の一般的な漏出による容積変化を調節するよう摺動する(フロートする)。ガスカップは、外側に面するガスカップの周面の全周面にわたる溝に配置される一つシールを有する。
【0003】
このようなガスカップ・アセンブリがドイツ特許出願公開第2018845号明細書(DE2018845)に開示されている。ガスカップ・アセンブリは、上面と下面と外面と内面とを有する本体を有する。本体は、本体の上面から下面へと貫通するよう延びる貫通空間を有する。全体がエラストマー材料から形成されるデカップラが貫通空間内に配置され、本体の内面に固定される。しかしながら、こうした設計では、デカップラのエラストマー面積が大きく、そしてエラストマー材料が気体透過特性を有するので、長期的なガス漏出によって耐久性に問題が生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第2018845号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その最も広い面では、経時的な気体圧力の損失を大きく低減できるガスカップを提供する。また、本発明は、ダンパ・アセンブリの減衰特性を向上しその結果ユーザの乗車時の快適性を向上するようチューニング(調整)を変更するパラメータを有するガスカップを提供する。また、本発明は、耐久性を向上しその結果ダンパ・アセンブリの動作寿命を長くできるデカップラを有するガスカップを提供する。本発明は、特に高周波入力と小振幅において、ユーザの乗車時の快適性を向上できるガスカップを有するダンパ・アセンブリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の面では、ダンパ・アセンブリのためのガスカップを提供する。ガスカップは、上面と下面と外面と内面とを有する本体を備える。本体は、上面から下面へと貫通するよう延びる貫通空間を形成する。デカップラは、貫通空間内に配置され、本体に固定される。連結部材は、デカップラと本体との間に配置され、デカップラと本体とに連結される。デカップラと連結部材とは、異なる弾性を有する材料から形成されることで、ダンパ・アセンブリにおける容積変化に応じてデカップラは貫通空間内において移動可能であり、ダンパ・アセンブリに可変チューニングを提供する
本発明の他の面では、ダンパ・アセンブリを提供する。ダンパ・アセンブリは、中心軸に沿って開端部と閉端部との間で延設され、開端部と閉端部と間で延びる空間を形成する筐体を備える。ピストンは、空間を圧縮チャンバと反発チャンバとに分割するよう空間内に摺動可能に配置される。ピストンロッド・ガイドは、開端部と封止係合するよう反発チャンバ内に配置される。ピストンロッドは、反発チャンバ内へと延設され、ピストンを空間内で圧縮ストロークと反発ストロークとの間で移動させるようピストンに連結される。ガスカップは、圧縮チャンバを気体隔室と液体隔室とに分割するよう圧縮チャンバ内に摺動可能に配置される本体を有する。本体は、上面と下面と外面と内面とを有する。本体は、気体隔室と液体隔室との間を流体連通可能とする、上面から下面へと貫通するよう延びる貫通空間を形成する。デカップラは、貫通空間内に配置され、本体に固定される。連結部材は、デカップラと本体との間に配置され、デカップラと本体とに連結される。デカップラと連結部材とが異なる弾性を有する材料から形成されることで、ダンパ・アセンブリにおける容積変化に応じてデカップラは貫通空間内において移動可能であり、ダンパ・アセンブリに可変チューニングを提供する。
【0007】
本発明の他の利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明からより理解され、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態かかる構成のダンパ・アセンブリを有する車両サスペンションの部分破断図である。
図2】本発明の実施形態にかかる構成のガスカップを有するダンパ・アセンブリの断面図である。
図3】本発明の実施形態にかかる構成のガスカップを有するダンパ・アセンブリの一部分の図である。
図4】ガスカップを有するダンパ・アセンブリの断面斜視図である。
図5】ガスカップの斜視図である。
図6】ガスカップの上面図である。
図7】ガスカップの底面図である。
図8】ガスカップの左側側面図である(右側側面図は左側側面図の鏡像である)。
図9】ガスカップの正面図である。
図10】ガスカップの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の一の実施形態の構成の車両で用いられるダンパ・アセンブリ(振動減衰装置)20を、概略的に図1に示す。図面では、対応する部品には同じ符号を付している。
【0010】
図1は、上部装着器(上部マウント)24と上部装着器24の上面の周辺に配置された複数のネジ26とを介して車体22に取り付けられたダンパ・アセンブリ20を有する例示的な車両サスペンションの一部を示している。上部装着器24はコイル・バネ28に接続される。ダンパ・アセンブリ20は、車両車輪32を支持するステアリングナックル30に接続される。
【0011】
図2に分かりやすく示す通り、ダンパ・アセンブリ20は、略円筒形状を有し、中心軸Aを中心として配置されるとともに開端部42と閉端部44との間で延設される筐体(ハウジング)34を有する。筐体34は、作動流体(ワーキング・フルード)を封入するよう開端部42と閉端部44との間で中心軸Aに沿って延びる空間36,38,40を形成する。略円形形状を有する装着リング46は、筐体34を車両に固定するよう閉端部44に連結される。
【0012】
略円筒形状のピストン48は、空間36,38,40を圧縮チャンバ36,38と反発チャンバ40とに分割するよう、空間36,38,40に摺動可能に配置される。圧縮チャンバ36,38は、閉端部44とピストン48との間を延びる。反発チャンバ40は、開端部42とピストン48との間を延びる。
【0013】
ガスカップ(気体封止器)50は、摺動可能に圧縮チャンバ36,38内に配置されるとともにピストン48から離間して配置される略円筒形状の本体52を有する。ガスカップ50は、圧縮チャンバ36,38を気体隔室(ガス・コンパートメント)36と液体隔室(フルード・コンパートメント)38とに分割する。気体隔室36は、気体を封入するために、閉端部44とガスカップ50との間に延びる。なお、気体を気体隔室において加圧できることを記載しておく。液体隔室38は、作動流体を封入するために、ガスカップ50とピストン48との間に延びる。言い換えれば、ガスカップ50は、圧力パルスを吸収し、液圧衝撃を抑制し、そしてエネルギーを蓄積してこれにより減衰力を提供するため、液体隔室38と反発チャンバ40とにおける容積変化を補償するように、作動流体と加圧ガスを分離する。なお、本願の用途には、油(オイル)や水などの液体を用いて動作する受動緩衝装置(パッシブ・ショック・アブソーバ)、半能動(セミ・アクティブ)サスペンション・システム、能動(アクティブ)サスペンション・システム、油圧ポンプ、アクチュエータ、およびアキュムレータを含めることができることを記載しておく。
【0014】
図3図10からよく分かる通り、本体52は、気体隔室36と液体隔室38との間の流体連通(フルイド・コミュニケーション)を可能とするよう、本体52を貫通し、中心軸Aに沿って延びる貫通空間(アパーチャ)54を有する。本体52は、上面56、下面58、外面60および内面62を有する。上面56はピストン48に面する。下面58は閉端部44に面する。外面60は、上面56と下面58との間で、中心軸A回りに、筐体34に面するよう環状に延設される。内面62は、外面60から径方向に間隔を空けて配置されて、上面56と下面58との間で、中心軸A回りに、貫通空間54を形成するよう環状に延設される。外面60は、上側溝64と下側溝66とを含む一ペアの溝64,66を有する。上側溝64と下側溝66とは、互いから軸方向に間隔を空けて配置されるとともに、本体52回りに環状に延設される。上側溝64は、上面56に隣接して配置される。下側溝66は下面58に隣接して配置される。案内リング67は、筐体34と係合するよう中心軸A回りに延設されるように、上側溝64内に配置される。封止リング68は、中心軸A回りに延設される下側溝66内に配置され、気体隔室内の気体が本体52の外面60と筐体34との間を通って漏れるのを防止するよう筐体34と当接している。
【0015】
略円形形状のデカップラ(分離器)70は、貫通空間54内に配置されるとともに、本体52の内面62に固定されて、液体隔室38と反発チャンバ40とにおける流体の容積的変化を補償するよう液体隔室38から気体隔室36を分離する。少なくとも一のストッパ(押さえ器)72,74は、貫通空間54内に配置されるとともに、デカップラ70の移動を制限するよう内面62に連結される。少なくとも一のストッパ72,74は、上側ストッパ72と、下側ストッパ74とを含む。上側ストッパ72は、上面56に隣接して配置されるとともに、本体52の内面62に連結されて、上面56に向かうデカップラ70の軸方向移動を制限している。下側ストッパ74は、下面58に隣接して配置されるとともに、本体52の内面62に連結されて、下面58に向かうデカップラの軸方向移動を制限している。
【0016】
図2を再び参照して、ダンパ・アセンブリ20は、反発チャンバ40内であって、筐体34の開端部42に隣接して配置されるとピストンロッド・ガイド76を有する。ピストンロッド・ガイド76は、空間36,38,40を閉じるよう、筐体34の開端部42と封止係合する。ピストンロッド・ガイド76は、中心軸Aに沿って延設されるとともに反発チャンバ40と連通する略円筒形状の円筒空間部78を形成する。
【0017】
略円筒形状のピストンロッド80は、中心軸Aに沿って、円筒空間部78を通って、反発チャンバ40内へと遠位側端部82まで延設されている。ピストンロッド80は、ピストン48に連結され、これにより、ピストン48が空間36,38,40において圧縮ストロークと反発ストロークとの間で移動する。圧縮ストロークは、ピストンロッド80とピストン48とが閉端部44に向かう移動として定義される。反発ストロークは、ピストンロッド80とピストン48とが開端部42に向かう移動として定義される。凸部84は、ピストン48をピストンロッド80に連結するよう、ピストンロッド80の遠位側端部82からピストン48を通って、ピストン48から離間して位置する終端部86へと外側に延設される。ピストン48は、中心軸Aに沿って延設されるとともに、凸部84がピストン48を通って延設されるよう凸部84を収容する略円筒形状の孔88を有する。ピストン48をピストンロッド80に固定するため、保持部材90が、終端部86に配置され、凸部84に連結される。
【0018】
ピストン48は、圧縮面92と反発面94とを有する。圧縮面92は、閉端部44に面するよう圧縮チャンバ36,38内に配置される。反発面94は、開端部42に面するよう反発チャンバ40内に配置される。ピストン48には、圧縮ストロークおよび反発ストロークの際に作動流体がピストン48を通って流れるのを可能にする複数の流路96,98が形成される。複数の流路96,98として、ピストン48を貫通して延設される1組の圧縮流路96と、1組の反発流路98とが形成され、これにより、圧縮ストロークおよび反発ストロークの際に作動流体がピストン48を通って流れることが可能である。1組の圧縮流路96は、ピストン48の外面100に隣接し、中心軸A回りに配置されるとともに、互いから周方向に間隔を空けて配置される。圧縮流路96は、圧縮面92から反発面94へと中心軸Aと平行に延設される。1組の反発流路98は、1組の圧縮流路96から径方向に離間して配置されるとともに、圧縮面92から反発面94へと中心軸Aと平行に延設される。
【0019】
圧縮バルブ102は、略円形形状の複数のディスクを有する。それぞれのディスクは、1組の圧縮流路96を覆うようピストン48の反発面94上に配置されて、圧縮ストロークの際にピストン48を通る作動流体の流れを制限し、これにより、圧縮ストロークの際に減衰力を与える。反発バルブ104は、略円形形状の複数のディスクを有する。それぞれのディスクは、反発流路98を覆うよう圧縮面92上に配置されて、反発ストロークの際にピストン48を通る作動流体の流れを制限し、これにより、反発ストロークの際に減衰力を与える。
【0020】
図3図10を再び参照して、連結部材106が、デカップラ70と本体52の内面62との間に配置されるとともに、デカップラ70を本体52に固定するようデカップラ70と本体52とに連結される。デカップラ70と連結部材106とが異なる弾性を有する材料から形成されることで、ダンパ・アセンブリ20における容積変化に応じてデカップラ70が貫通空間54内において移動可能であり、ダンパ・アセンブリ20に異なるチューニング(調整)を提供する。例えば、デカップラ70を剛性材料から形成することができ、液体隔室38および反発チャンバ40における容積変化に応じてデカップラ70が貫通空間54において移動できるよう、連結部材106を弾性材料から形成することができる。
【0021】
本発明の実施態様では、デカップラ70を軽量な剛性材料から形成することができ、連結部材106をエラストマー材料から形成することができる。言い換えれば、ガスカップ50において用いられる可撓性材料は、連結部材106である。本発明の一実施態様では、デカップラ70を全体的にはエラストマー材料で構成しない。例えば、デカップラ70の中央部を薄いアルミ板(プレート)とでき、移動および部分運動に対応するために加工処理を受けたゴム/エラストマー材料(engineered rubber/elastomeric material)をアルミプレートの外縁に接合することができる。なお、ゴム/エラストマー材料の形状および材料合成は、デカップラの70の機能性および耐久性に対して重要となることを記載しておく。この構成により、本発明では、全体がエラストマー材料から形成される従来のガスカップのデカップラ70のガス透過特性による気体隔室36における気体の損失/漏れの可能性を低減できる。本発明の実施態様では、連結部材106は、内面62から中心軸に向かって連結部材端部108へと径方向内側に延設される。連結部材端部108はデカップラ70に連結される。本発明の実施態様では、連結部材端部108は、中心軸A回りに環状に延設される溝110を有しており、溝110にはデカップラ70が収容される。
【0022】
上側ストッパ72は、中心軸Aに向かって径方向内側に延設されるとともに、断面が第一曲率の円弧状である。上側ストッパ72の第一曲率は、本体52の上面56に向かう連結部材106の変形と一致する。下側ストッパ74は、中心軸Aに向かって径方向内側に延設されるとともに、断面が第二曲率の円弧状である。下側ストッパ74の第二曲率は、本体52の下面58に向かう連結部材106の変形と一致する。言い換えれば、独特な形状のストッパ72,74が、デカップラ70の上下両方の面に隣接して配置されている。本発明の実施形態では、ストッパ72,74を剛性材料で形成して、ガスカップ50内に確実に配置することができる。ストッパ72,74の主たる目的は、連結部材106およびデカップラ70の軸方向移動を制限することであり、圧縮ストロークおよび反発ストロークの際に連結部材106とデカップラ70とを過度な伸張から保護することである。なお、上側ストッパ72の第一曲率と下側ストッパ74の第二曲率は、デカップラ70がストッパ72,74と接触した後も連結部材106の変形形状と一致するよう設計されており、その理由は、連結部材106への作動流体圧力の印加が継続するからであることを記載しておく。したがって、液体隔室38と反発チャンバ40と気体隔室36とが平衡圧力に達するよう液体(fluid)が液体隔室38と反発チャンバ40とに充填されるまで、ガスカップ50が印加される気体圧力を一時的に支持する必要があるときには、この構成が利用できる。この曲率がなければ、連結部材106は、ストッパ72,74に底打ちしきるまで伸びきってしまい、そのためダンパ・アセンブリ20の動作寿命を縮めてしまうことになる。
【0023】
本体52の内面62は、上側凹部111と下側凹部112とを有する。上側凹部111は、液体隔室38内に本体52の上面56に隣接して配置され、中心軸A回りに環状に延設されており、上側ストッパ72を収容して上側ストッパ72を本体52の内面62に固定する。下側凹部112は、気体隔室36に配置され、中心軸A回りに環状に延設されており、下側ストッパ74を収容して下側ストッパを本体52の内面62に固定する。言い換えれば、上側ストッパ72と下側ストッパ74とはデカップラ70の上側と下側とに設置される。ストッパ72,74を剛性材料で形成して、ガスカップ50内に確実に配置することができる。ストッパ72,74の主たる目的は、動作の際にゴムの連結部(ブリッジ)を過度な伸張から保護することである。本発明の実施態様では、ストッパ72,74の内径はデカップラ70の直径より小さく設計されており、これにより、デカップラ70がストッパ72,74と当接すると軸方向における両方向のデカップラ70移動が制限される。ディスクがストッパ72,74と完全に当接する前にガスカップ50が圧縮チャンバ36,38において移動する特定の用途の要求を満たすようなある一定の剛性を有するように、連結部材106は設計される。急激な入力等の極端な条件の場合には、連結部材106の過度な伸張を防止するよう、デカップラ70の軸方向移動がストッパ72,74によって制限される。
【0024】
また、ユーザの乗車時の快適性を向上するために、連結部材106とデカップラ70とストッパ72,74とによって、ガスカップ50とダンパ・アセンブリ20とに可変調整オプション(バリアブル・チューニング)オプションが提供される。例えば、ダンパ・アセンブリ20の動作において、圧縮ストロークまたは反発ストローク時に8Nより大きな力が入力された場合には、ガスカップ50が筐体34の内部で移動できる。ガスカップ50が筐体34内で摺動するとき、圧縮ストロークおよび反発ストロークによって生じる筐体34における容積変化を補償するよう、ガスカップ50によって追加的な減衰力を提供することができる。力が8N未満である場合、つまり、車両が平坦な道路を走行している場合、連結部材106とデカップラ70とストッパ72,74とによって、圧縮ストロークおよび反発ストロークによって生じる筐体34における小さい容積変化を補償するよう、減衰力を提供することができる。
【0025】
本発明の実施態様では、連結部材106および/またはデカップラ70の弾性を変更することにより調整を行うことができる。例えば、連結部材106および/またはデカップラ70の軸方向移動を大きくするには、より弾性の大きな材料を用いて連結部材106および/またはデカップラ70を形成することができる。この構成により、連結部材106とデカップラ70とが、圧縮ストロークおよび反発ストロークによって生じる筐体34におけるより大きな容積変化を、つまり車両が荒れた道路で走行するときの容積変化を、補償することができる。逆に、連結部材106および/またはデカップラ70の軸方向移動を小さくするには、より弾性の小さな材料から連結部材106および/またはデカップラ70を形成することができる。この構成により、連結部材106とデカップラ70とが、筐体34におけるより小さい容積変化を、つまり車両が平坦な道路で走行するときの容積変化を、補償することができる。
【0026】
さらに、ガスカップ50の調整は、連結部材106およびデカップラ70に対するストッパ72,74の距離を変更することによっても行うことができる。言い換えれば、連結部材106およびデカップラ70の軸方向移動の振幅を調節するよう、上側ストッパ72および下側ストッパ74は、連結部材106およびデカップラ70に対して独立にその位置を設定可能である。例えば、連結部材106およびデカップラ70の軸方向移動を制限するために、ストッパ72,74を連結部材106およびデカップラ70に近付けることができる。逆に、連結部材106およびデカップラ70の軸方向移動を大きくするために、上側ストッパ72および下側ストッパ74を連結部材106およびデカップラ70から軸方向に離れるよう配置することができる。つまり、ガスカップ50の調整を、三つの異なるパラメータ(例えばデカップラ70の材料組成物、連結部材106の材料組成物および/または連結部材106およびデカップラ70に対するストッパ72,74の距離)を変更することにより行うことができる。これらの構成により、異なる調整オプションをガスカップ50およびダンパ・アセンブリ20に提供できる。
【0027】
上側ストッパ72は、第一周辺部116を境界とする第一オリフィス(開口部)114を有する。第一開口部114は、液体隔室38と流体連通状態にある。本発明の実施態様では、第一開口部114の第一周辺部116は、中心軸A回りに正弦波状にかつ環状に延設されている。本発明の実施態様では、第一周辺部116は、中心軸A回りに配置される複数の第一頂部118および複数の第一谷部120を有する。下側ストッパ74は、第二周辺部124を境界とする第二開口部122を有する。第二開口部122は、気体隔室36と流体連通状態にある。本発明の実施態様では、第二開口部122の第二周辺部124は、中心軸A回りに正弦波状にかつ環状に延設されている。本発明の実施態様では、第二周辺部124は、中心軸A回りに配置される複数の第二頂部126および複数の第二谷部128を有する。言い換えれば、第一開口部114および第二開口部122は、ともに、花の形を有することができる。花形状は、ガスカップ50内への流体の流れ(フルード・フロー)を最大限とするために用いられ、これにより、連結部材106の移動を制限する際の圧力変動に対する応答性の向上に役立つ。
【0028】
もちろん、本発明に多くの変形および変更を上記の教示に基づいて行うことができ、詳細な説明以外にも添付の特許請求の範囲内で実現できる。装置の請求項における語「前記(said)」の使用は、それが前出されていて、その請求項またはその請求項が従属する請求項の範囲に含まれていることを意味する明確な引用である。「前記」を使用していないものでも、その請求項またはその請求項が従属する請求項の範囲に含まれている場合もある。
【符号の説明】
【0029】
20 ダンパ・アセンブリ
22 車体
24 上部装着器
26 ネジ
28 コイル・バネ
30 ステアリングナックル
32 車両車輪
34 筐体
36 気体隔室,圧縮チャンバ
38 液体隔室,圧縮チャンバ
40 反発チャンバ
42 開端部
44 閉端部
46 装着リング
48 ピストン
50 ガスカップ
52 本体
54 貫通空間
56 上面
58 下面
60 外面
62 内面
64 上側溝
66 下側溝
67 案内リング
68 封止リング
70 デカップラ
72 上側ストッパ
74 下側ストッパ
76 ピストンロッド・ガイド
78 円筒空間部
80 ピストンロッド
82 遠位側端部
84 凸部
86 終端部
88 孔
90 保持部材
92 圧縮面
94 反発面
96 圧縮流路
98 反発流路
100 外面
102 圧縮バルブ
104 反発バルブ
106 連結部材
108 連結部材端部
110 溝
111 上側凹部
112 下側凹部
114 第一開口部
116 第一周辺部
118 第一頂部
120 第一谷部
122 第二開口部
124 第二周辺部
126 第二頂部
128 第二谷部
A 中心軸
図1
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