(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083971
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】車両用シート及びロック装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151279
(22)【出願日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2020195371
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 慎二
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜誠
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA15
3B087BB22
3B087BC25
3B087DB03
3B087DB04
(57)【要約】
【課題】モータに過大なトルクが入力されることを抑制する。
【解決手段】車両用シートは、シート本体と、サスペンションと、ギヤ65と、パウル67と、を備えている。また、車両用シート10は、モータアクチュエータの回転に伴い回転変位するロータ69と、ロータ69の回転変位に伴い変位するカムプレート71と、を備えている。カムプレート71は、ロータ69が一方側へ回転変位される際においては第1位置から第2位置へ変位されてパウル67が許容位置からロック位置へ変位される。また、カムプレート71は、ロータ69が他方側へ回転変位される際においては第2位置から第1位置へ変位されてパウル67がロック位置から許容位置へ変位される。さらに、カムプレート71は、ロータ69が一方側へ回転変位される際でかつ第1位置側への力が入力された際にロータ69と離間する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、着座乗員の背部を支持するシートバックと、を有するシート本体と、
前記シート本体の少なくとも一部を変位させる変位機構と、
前記シート本体の少なくとも一部の変位に伴い変位する第1変位部材と、
ロック位置に配置されている状態では前記第1変位部材と係合して前記変位機構による前記シート本体の少なくとも一部の変位がロックされ、許容位置に配置されている状態では前記第1変位部材と離間して前記変位機構による前記シート本体の少なくとも一部の変位が許容される第2変位部材と、
モータの回転に伴い回転変位する第3変位部材と、
前記第2変位部材と前記第3変位部材との間に配置され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際においては第1位置から第2位置へ変位されて前記第2変位部材が前記許容位置から前記ロック位置へ変位され、前記第3変位部材が他方側へ回転変位される際においては前記第2位置から前記第1位置へ変位されて前記第2変位部材が前記ロック位置から前記許容位置へ変位され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際でかつ前記第1位置側への力が入力された際に前記第3変位部材と離間する第4変位部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記第4変位部材を前記第2位置側へ付勢する付勢部材をさらに備え、
前記第3変位部材が一方側へ回転される際においては、前記第4変位部材が前記付勢部材の付勢力によって前記第1位置から前記第2位置へ変位され、
前記第3変位部材が他方側へ回転される際においては、前記第3変位部材が前記第4変位部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2位置から前記第1位置へ変位させる請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第4変位部材と共に変位する第5変位部材をさらに備え、
前記第4変位部材が前記第2位置に配置されている状態では、前記第5変位部材が前記ロック位置に配置された前記第2変位部材の前記許容位置側への変位を制限する請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記変位機構は、シート幅方向を回転軸方向とする回転軸部を介して互いに連結された第1リンク部材及び第2リンク部材を有すると共に前記シート本体のシート下方側に配置されたリンクを含んで構成され、
前記第1リンク部材が前記第2リンク部材に対して相対的に変位することにより、前記シート本体がシート上方側へ上昇する又は前記シート本体がシート下方側へ下降し、
前記第1変位部材が、前記第1リンク部材又は前記第2リンク部材のいずれか一方に支持され、
前記第2変位部材、前記第3変位部材及び前記第4変位部材が、前記第1リンク部材又は前記第2リンク部材のいずれか他方に支持されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シート本体のシート下方側には、シート幅方向に間隔をあけて配置された一対の前記リンクが設けられ、
前記第1変位部材、前記第2変位部材、前記第3変位部材及び前記第4変位部材が、一方の前記リンクに沿って配置されている請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記第1リンク部材又は前記第2リンク部材のいずれか他方には、前記第2変位部材、前記第3変位部材及び前記第4変位部材を覆うカバー部材が支持され、
前記付勢部材が、前記カバー部材と前記第4変位部材との間に掛け渡されている請求項2を引用する請求項4又は請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記変位機構は、前記シート本体をシート下方側から支持すると共に作動されることで前記シート本体をシート上方側へ上昇させる又は前記シート本体をシート下方側へ下降させ、前記シート本体側への衝撃を緩衝する昇降及び緩衝部材を含んで構成されている請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項8】
着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、着座乗員の背部を支持するシートバックと、を有するシート本体を変位させるリンクの変位に伴い変位する第1変位部材と、
ロック位置に配置されている状態では前記第1変位部材と係合して前記リンクの変位による前記シート本体の変位がロックされ、許容位置に配置されている状態では前記第1変位部材と離間して前記リンクによる前記シート本体の変位が許容される第2変位部材と、
モータの回転に伴い回転変位する第3変位部材と、
前記第2変位部材と前記第3変位部材との間に配置され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際においては第1位置から第2位置へ変位されて前記第2変位部材が前記許容位置から前記ロック位置へ変位され、前記第3変位部材が他方側へ回転変位される際においては前記第2位置から前記第1位置へ変位されて前記第2変位部材が前記ロック位置から前記許容位置へ変位され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際でかつ前記第1位置側への力が入力された際に前記第3変位部材と離間する第4変位部材と、
を備えたロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロアフレームに対してアッパフレームを上下動可能に支持するリンク機構の動作をロックすることによりサスペンション高さ位置を固定するサスペンションロック手段を備えた車両用エアサスペンション式シート支持装置が開示されている。リンク機構は、2本のリンクバーがリンク軸を介してX状に組まれた一対のXリンクを備えると共に一対のXリンクの車両前方側かつ車両下方側を連結する前下側連結軸を備えている。アッパフレームの上下動に伴い車両水平方向に移動可能とされた前下側連結軸には、その移動に伴って回動するギヤ付きアームが係合されている。前下側連結軸は、ギヤ付きアームにエアスプリングによって回転駆動されたロックギアが噛合されることにより車両水平方向への移動がロックされる。これにより、任意のシート高さでサスペンションを固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された車両用エアサスペンション式シート支持装置のように、車両用シートを構成する部材の変位をロックできる構成では、当該部材のロック時に衝撃が生じることが考えられる。特に、車両用シートを構成する部材の変位をロックする機構がモータを含んで構成されている場合、上記衝撃によってモータに過大なトルクが入力されることが考えられる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、モータに過大なトルクが入力されることを抑制することができる車両用シート及びロック装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、着座乗員の背部を支持するシートバックと、を有するシート本体と、前記シート本体の少なくとも一部を変位させる変位機構と、前記シート本体の少なくとも一部の変位に伴い変位する第1変位部材と、ロック位置に配置されている状態では前記第1変位部材と係合して前記変位機構による前記シート本体の少なくとも一部の変位がロックされ、許容位置に配置されている状態では前記第1変位部材と離間して前記変位機構による前記シート本体の少なくとも一部の変位が許容される第2変位部材と、モータの回転に伴い回転変位する第3変位部材と、前記第2変位部材と前記第3変位部材との間に配置され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際においては第1位置から第2位置へ変位されて前記第2変位部材が前記許容位置から前記ロック位置へ変位され、前記第3変位部材が他方側へ回転変位される際においては前記第2位置から前記第1位置へ変位されて前記第2変位部材が前記ロック位置から前記許容位置へ変位され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際でかつ前記第1位置側への力が入力された際に前記第3変位部材と離間する第4変位部材と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、変位機構がシート本体の少なくとも一部を変位させる。シート本体の少なくとも一部が変位機構によって変位されると、第1変位部材も変位する。モータの回転に伴い、第3変位部材が一方側へ回転変位されると、第4変位部材が第1位置から第2位置へ変位されて、第2変位部材が許容位置からロック位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と係合して、変位機構によるシート本体の少なくとも一部の変位がロックされる。モータの回転に伴い、第3変位部材が他方側へ回転変位されると、第4変位部材が第2位置から第1位置へ変位されて、第2変位部材がロック位置から許容位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と離間して、変位機構によるシート本体の少なくとも一部の変位が許容される。ここで、モータの回転に伴い、第3変位部材が一方側へ回転変位される際において、第4変位部材に第1位置側への力が入力されると、第4変位部材が第3変位部材と離間する。これにより、例えば、第2変位部材が第1変位部材に係合する際の衝撃が第2変位部材から第4変位部材に入力されることにより、第4変位部材に第1位置側への力が入力されたとしても、この力は第3部材を介してモータに入力されない。これにより、モータに過大なトルクが入力されることを抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記第4変位部材を前記第2位置側へ付勢する付勢部材をさらに備え、前記第3変位部材が一方側へ回転される際においては、前記第4変位部材が前記付勢部材の付勢力によって前記第1位置から前記第2位置へ変位され、前記第3変位部材が他方側へ回転される際においては、前記第3変位部材が前記第4変位部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2位置から前記第1位置へ変位させる。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、モータの回転に伴い、第3変位部材が一方側へ回転される際においては、第4変位部材が付勢部材の付勢力によって第1位置から第2位置へ変位される。また、第3変位部材が他方側へ回転される際においては、第3変位部材が第4変位部材を付勢部材の付勢力に抗して第2位置から第1位置へ変位させる。このように、付勢部材を設けることにより、第4変位部材の重心位置や姿勢の影響を受けにくくしつつ、第3変位部材が一方側へ回転される際に、第4変位部材を第1位置から第2位置へ安定して変位させることができる。
【0010】
請求項3記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記第4変位部材と共に変位する第5変位部材をさらに備え、前記第4変位部材が前記第2位置に配置されている状態では、前記第5変位部材が前記ロック位置に配置された前記第2変位部材の前記許容位置側への変位を制限する。
【0011】
請求項3記載の車両用シートによれば、第4変位部材が第5変位部材と共に変位する。そして、第4変位部材が第2位置に配置されている状態では、第5変位部材がロック位置に配置された第2変位部材の許容位置側への変位を制限する。これにより、第2変位部材と第1変位部材との係合状態を容易に保つことができる。
【0012】
請求項4記載の車両用シートは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、前記変位機構は、シート幅方向を回転軸方向とする回転軸部を介して互いに連結された第1リンク部材及び第2リンク部材を有すると共に前記シート本体のシート下方側に配置されたリンクを含んで構成され、前記第1リンク部材が前記第2リンク部材に対して相対的に変位することにより、前記シート本体がシート上方側へ上昇する又は前記シート本体がシート下方側へ下降し、前記第1変位部材が、前記第1リンク部材又は前記第2リンク部材のいずれか一方に支持され、前記第2変位部材、前記第3変位部材及び前記第4変位部材が、前記第1リンク部材又は前記第2リンク部材のいずれか他方に支持されている。
【0013】
請求項4記載の車両用シートによれば、リンクを構成する第1リンク部材が第2リンク部材に対して相対的に変位することにより、シート本体がシート上方側へ上昇する又はシート本体がシート下方側へ下降する。シート本体が上昇又は下降すると、第1変位部材も変位する。モータの回転に伴い、第3変位部材が一方側へ回転変位されると、第4変位部材が第1位置から第2位置へ変位されて、第2変位部材が許容位置からロック位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と係合して、第1リンク部材の第2リンク部材に対する相対的な変位がロックされることにより、シート本体の上昇及び下降がロックされる。モータの回転に伴い、第3変位部材が他方側へ回転変位されると、第4変位部材が第2位置から第1位置へ変位されて、第2変位部材がロック位置から許容位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と離間して、第1リンク部材の第2リンク部材に対する相対的な変位が許容されることにより、シート本体の上昇及び下降が許容される。
【0014】
請求項5記載の車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記シート本体のシート下方側には、シート幅方向に間隔をあけて配置された一対の前記リンクが設けられ、前記第1変位部材、前記第2変位部材、前記第3変位部材及び前記第4変位部材が、一方の前記リンクに沿って配置されている。
【0015】
請求項5記載の車両用シートによれば、第1変位部材、第2変位部材、第3変位部材及び第4変位部材が、一方のリンクに沿って配置されている。これにより、第1変位部材、第2変位部材、第3変位部材及び第4変位部材が、両方のリンクに沿って配置されている構成と比べて、一対のリンクの間のスペースを確保することができる。
【0016】
請求項6記載の車両用シートは、請求項2を引用する請求項4又は請求項5に記載の車両用シートにおいて、前記第1リンク部材又は前記第2リンク部材のいずれか他方には、前記第2変位部材、前記第3変位部材及び前記第4変位部材を覆うカバー部材が支持され、前記付勢部材が、前記カバー部材と前記第4変位部材との間に掛け渡されている。
【0017】
請求項6記載の車両用シートによれば、付勢部材が係止される部分がカバー部材に設けられている。これにより、リンク側に付勢部材が係止される部分を設けた場合と比べて、リンクの構成が複雑になることを抑制することができる。
【0018】
請求項7記載の車両用シートは、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、前記変位機構は、前記シート本体をシート下方側から支持すると共に作動されることで前記シート本体をシート上方側へ上昇させる又は前記シート本体をシート下方側へ下降させ、前記シート本体側への衝撃を緩衝する昇降及び緩衝部材を含んで構成されている。
【0019】
請求項7記載の車両用シートによれば、昇降及び緩衝部材が作動されることにより、シート本体がシート上方側へ上昇する又はシート本体がシート下方側へ下降する。シート本体が上昇又は下降すると、第1変位部材も変位する。モータの回転に伴い、第3変位部材が一方側へ回転変位されると、第4変位部材が第1位置から第2位置へ変位されて、第2変位部材が許容位置からロック位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と係合して、シート本体の上昇及び下降がロックされる。モータの回転に伴い、第3変位部材が他方側へ回転変位されると、第4変位部材が第2位置から第1位置へ変位されて、第2変位部材がロック位置から許容位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と離間して、シート本体の上昇及び下降が許容される。また、シート本体の上昇及び下降が許容されている状態では、シート本体側への衝撃が緩衝される。
【0020】
請求項8記載のロック装置によれば、着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、着座乗員の背部を支持するシートバックと、を有するシート本体を変位させるリンクの変位に伴い変位する第1変位部材と、ロック位置に配置されている状態では前記第1変位部材と係合して前記リンクの変位による前記シート本体の変位がロックされ、許容位置に配置されている状態では前記第1変位部材と離間して前記リンクによる前記シート本体の変位が許容される第2変位部材と、モータの回転に伴い回転変位する第3変位部材と、前記第2変位部材と前記第3変位部材との間に配置され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際においては第1位置から第2位置へ変位されて前記第2変位部材が前記許容位置から前記ロック位置へ変位され、前記第3変位部材が他方側へ回転変位される際においては前記第2位置から前記第1位置へ変位されて前記第2変位部材が前記ロック位置から前記許容位置へ変位され、前記第3変位部材が一方側へ回転変位される際でかつ前記第1位置側への力が入力された際に前記第3変位部材と離間する第4変位部材と、を備えている。
【0021】
請求項8記載のロック装置によれば、リンクの変位に伴いシート本体が変位される。シート本体がリンクの変位に伴い変位されると、第1変位部材も変位する。モータの回転に伴い、第3変位部材が一方側へ回転変位されると、第4変位部材が第1位置から第2位置へ変位されて、第2変位部材が許容位置からロック位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と係合して、リンクの変位によるシート本体の変位がロックされる。モータの回転に伴い、第3変位部材が他方側へ回転変位されると、第4変位部材が第2位置から第1位置へ変位されて、第2変位部材がロック位置から許容位置へ変位される。これにより、第2変位部材が第1変位部材と離間して、リンクの変位に伴うシート本体の変位が許容される。ここで、モータの回転に伴い、第3変位部材が一方側へ回転変位される際において、第4変位部材に第1位置側への力が入力されると、第4変位部材が第3変位部材と離間する。これにより、例えば、第2変位部材が第1変位部材に係合する際の衝撃が第2変位部材から第4変位部材に入力されることにより、第4変位部材に第1位置側への力が入力されたとしても、この力は第3部材を介してモータに入力されない。これにより、モータに過大なトルクが入力されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車両用シートは、モータに過大なトルクが入力されることを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートをシート前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るサスペンションの斜視図である。
【
図3】ロック装置を備えたリンク機構を示す斜視図である。
【
図4】ロック装置を備えたリンク機構を分解して示す分解斜視図である。
【
図5】ロック装置本体が取付けられた備えたリンク機構を示す斜視図である。
【
図6】ロック装置本体が取付けられた備えたリンク機構を示す側面図である。
【
図8】ロック装置本体を分解して示す分解斜視図である。
【
図9】ロータ及びシャフトを分解して示す分解斜視図である。
【
図10】カムプレート及びカムを分解して示す分解斜視図である。
【
図11】ロック装置の作動を示す側面図であり、パウルが許容位置に配置されている状態を示している。
【
図12】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図11に示された状態よりも一方側へ回転変位された状態を示している。
【
図13】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図12に示された状態よりも一方側へ回転変位された状態を示している。
【
図14】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図13に示された状態よりも一方側へ回転変位された状態を示している。
【
図15】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図14に示された状態よりも一方側へ回転変位された状態を示している。
【
図16】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図15に示された状態よりも一方側へ回転変位された状態を示している。
【
図17】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図16に示された状態から他方側へ回転変位された状態を示している。
【
図18】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図17に示された状態よりも他方側へ回転変位された状態を示している。
【
図19】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図18に示された状態よりも他方側へ回転変位された状態を示している。
【
図20】ロック装置の作動を示す側面図であり、ロータが
図19に示された状態よりも他方側へ回転変位された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~
図10を用いて、本発明の実施形態の一例である車両用シート10について説明する。以下の図において、矢印FRはシート前方側を示し、矢印UPはシート上方側を示し、矢印Wはシート幅方向を示している。また、シート幅方向は、シート左方向及びシート右方向と一致している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員の臀部及び背部をそれぞれ支持するシートクッション10A及びシートバック10Bを有するシート本体12と、シート本体12の下方側に設けられた変位機構としてのサスペンション14と、を備えている。
【0026】
サスペンション14は、ロアフレーム16と、ロアフレーム16の上方側に配置されたアッパフレーム18と、ロアフレーム16とアッパフレーム18とを上下方向に連結するサスペンションリンク機構20と、を備えている。また、サスペンション14は、シート本体12をシート下方側から支持すると共に作動されることでシート本体12をシート上方側へ上昇させる又はシート本体12をシート下方側へ下降させ、シート本体12側への衝撃を緩衝する昇降及び緩衝部材としてのエアスプリング22と、ダンパ24と、を備えている。
【0027】
図2に示されるように、ロアフレーム16は、そのシート下方側の部分がシートレールを介して車室の床部(どちらも図示省略)に固定されている。これにより、車両用シート10が車両(図示省略)へ固定されている。ロアフレーム16は、シート幅方向(車幅方向)の両端部においてシート前後方向に沿って延在された左右一対のレールメンバー16Aと、その前後端においてシート幅方向に沿って延在されると共にレールメンバー16Aの前端同士及び後端同士を連結する前後一対の横メンバー16Bを備えている。このため、ロアフレーム16は、平面視で略枠状に形成されている。
【0028】
ロアフレーム16のシート上方側には、アッパフレーム18が配置されている。アッパフレーム18は、そのシート幅方向両端部においてシート前後方向に沿って延在された左右一対のレールメンバー18Aと、その前後端においてシート幅方向に沿って延在されると共にレールメンバー18Aの前端同士及び後端同士を連結する前後一対の横メンバー18Bを備えている。このため、アッパフレーム18は、平面視で略枠状に形成されている。アッパフレーム18は、シート本体12(
図1参照)のシート下方側に配置されている。これにより、シート本体12は、サスペンション14によってシート下方側から支持されている。
【0029】
(サスペンションリンク機構の構成)
図2、
図3、
図4及び
図5に示されるように、サスペンションリンク機構20は、ロアフレーム16及びアッパフレーム18のシート幅方向両端部側に各々配置されるリンクとしての左右一対のXリンク28を備えている。左右一対のXリンク28は、シート幅方向内側に配置された第1リンク部材としての内側リンクアーム30と、内側リンクアーム30に対してシート幅方向外側に配置された第2リンク部材としての外側リンクアーム32と、を含んで構成されている。内側リンクアーム30は、シート前方側へ向かうにつれてシート上方側へ傾斜している。外側リンクアーム32は、シート前方側へ向かうにつれてシート下方側へ傾斜している。内側リンクアーム30の長手方向の中央部と外側リンクアーム32の長手方向の中央部とは、シート幅方向を回転軸方向とする回転軸部としてのリンク軸34を介して連結されている。これにより、リンク軸34を回転中心として内側リンクアーム30と外側リンクアーム32とが相対回転可能となっている。
【0030】
サスペンションリンク機構20は、左右の内側リンクアーム30の前方側の端部をシート幅方向に連結する前上側連結軸36を備えている。また、サスペンションリンク機構20は、左右の外側リンクアーム32の前方側の端部をシート幅方向に連結する前下側連結軸38を備えている。さらに、サスペンションリンク機構20は、左右の内側リンクアーム30の後方側の端部をシート幅方向に連結する後下側連結軸40を備えている。また、サスペンションリンク機構20は、左右の内側リンクアーム30の後方側の部分の上縁をシート幅方向に連結する板状の連結板41を備えている。さらに、サスペンションリンク機構20は、左右の外側リンクアーム32の後方側の端部をシート幅方向に連結する後上側連結軸42を備えている。そして、前上側連結軸36及び後上側連結軸42は、アッパフレーム18の各レールメンバー18Aに支持されている。また、前下側連結軸38及び後下側連結軸40は、ロアフレーム16の各レールメンバー16Aに支持されている。
【0031】
アッパフレーム18は、左右のXリンク28が同期して伸縮することによりシート上下方向に沿って昇降する。具体的には、アッパフレーム18をシート上方側へ向けて変位(上昇)させる際には、内側リンクアーム30と外側リンクアーム32の傾斜方向がシート上下方向に近づくように変位される(立ち上げられる)。これにより、Xリンク28がシート上方側へ向けて伸張するため、アッパフレーム18がシート上方側へ向けて変位(上昇)する。
【0032】
アッパフレーム18をシート下方側へ向けて変位(下降)させる際には、内側リンクアーム30と外側リンクアーム32の傾斜方向がシート前後に近づくように変位される(折り畳まれる)。これにより、Xリンク28がシート下方側へ向けて縮小され、アッパフレーム18は、シート下方側へ向けて変位(下降)する。
【0033】
(エアスプリング、ダンパ)
図4に示されるように、エアスプリング22は、アッパフレーム18とロアフレーム16の間でかつ左右のXリンク28の間に設けられている。エアスプリング22には、例えば、車両のエアブレーキ装置を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から圧縮空気が供給されるように構成されている。エアスプリング22は、アッパフレーム18をシート上方側へ向けて付勢すると共にシート本体12側(シート上方側)から作用する荷重に対する反力を生じさせる。また、エアスプリング22の振動は、油圧シリンダ式のダンパ24によって吸収される。そして、サスペンションリンク機構20は、エアスプリング22の膨張及び縮小に伴ってシート上下方向に対して伸縮可能する。これにより、アッパフレーム18及びシート本体12をシート上下方向に沿って変位させることができる。この構成により、アッパフレーム18上に設置されたシート本体12に着座する乗員の荷重(自重)は、エアスプリング22に伝達(負荷)される。Xリンク28が後述するロック装置50によって拘束されていない場合は、エアスプリング22に負荷された荷重は、ダンパ24の振動吸収作用と共に緩衝される。エアスプリング22は、空気が供給されるとシート上方側へ向けて膨出されるため、アッパフレーム18が上昇されると共にシート本体12の高さ位置がシート上方側に調整される。また、エアスプリング22から空気が排気されるとシート下方側へ向けて縮小されるため、アッパフレーム18が下降されると共にシート本体12の高さ位置がシート下方側に調整される。
【0034】
(ロック装置)
図3、
図4、
図5及び
図6に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、サスペンション14によるシート本体12の上下方向への変位をロックするロック装置50を備えている。このロック装置50は、一対のXリンク28のうち一方のXリンク28に沿って配置された状態で一方のXリンク28に支持されたロック装置本体53と、ロック装置本体53を作動させるモータとしてのモータアクチュエータ64と、を備えている。なお、本実施形態では、ロック装置本体53が右側のXリンク28に支持されている。
【0035】
図6、
図7及び
図8に示されるように、ロック装置本体53は、Xリンク28の回転軸に対して前方側に配置されている。ロック装置本体53は、外側リンクアーム32に支持される第1変位部材としてのギヤ65を備えている。また、ロック装置本体53は、内側リンクアーム30に支持される第2変位部材としてのパウル67、第3変位部材としてのロータ69、第4変位部材としてのカムプレート71、第5変位部材としてのカム73を備えている。さらに、ロック装置本体53は、パウル67、ロータ69、カムプレート71及びカム73を支持するリターンブラケット75及びカバー77を備えている。また、ロック装置本体53は、カムプレート71を一方側へ回転付勢する付勢部材としてのリターンスプリング79を備えている。
【0036】
図6に示されるように、ギヤ65は、左側から見て略C字状に湾曲した形状となっている。このギヤ65は、後方側の面及び前方側の面がXリンク28の回転軸を中心とする円筒面状に形成されたギヤ本体部65Aを備えている。ギヤ本体部65Aの下方側の端部は、締結部材81を介して外側リンクアーム32に固定されている。また、ギヤ本体部65Aの上方側の端部は、内側リンクアーム30を貫通する締結部材81を介して外側リンクアーム32に固定されている。なお、この締結部材81は、内側リンクアーム30に形成された長孔30Aに挿通されることで、内側リンクアーム30を貫通している。また、長孔30Aの寸法は、Xリンク28の伸縮を妨げない寸法に設定されている。すなわち、Xリンク28の伸縮範囲においては、長孔30Aに挿通された締結部材81が、長孔30Aの縁に当接しないようになっている。ギヤ本体部65Aの前方側の面からは複数の係合歯65Bが突出している。複数の係合歯65Bは、ギヤ本体部65Aの前方側の面に沿って等間隔に配置されている。なお、ギヤ本体部65Aの後方側の面は、内側リンクアーム30に固定されたガイド部材91に摺動可能に支持されている。
【0037】
図7及び
図8に示されるように、パウル67は、
図6に示されたギヤ65に対して前方側に配置されている。このパウル67は、左右方向を厚み方向とすると共に左側又は右側から見て上下方向を長手方向とする矩形の板状に形成されている。パウル67の上端部には、カラー83が挿入されるカラー挿入孔67Aが形成されている。このパウル67の上端部は、後述するリターンブラケット75及びカバー77にカラー83を介して回転可能に支持されている。なお、パウル67とカバー77との間には、スペーサ93が介在している。
図7においては、リターンブラケット75の図示を省略している。パウル67の下端部におけるカバー77側の面からは、円柱状に形成された係合突起67Bがカバー77側へ向けて突出している。さらに、パウル67の下端部における後方側の面からは、複数の係合歯67Cが突出している。複数の係合歯67Cは、パウル67の下端部における後方側の面に沿って等間隔に配置されている。また、パウル67の下端部における前方側の面は、後述するカム73が当接するカム当接面67Dとなっている。
【0038】
図8及び
図9に示されるように、ロータ69は、左右方向を厚み方向とすると共に左側又は右側から見て楕円形の板状に形成されている。このロータ69の一端部には、左側又は右側から見て縁部がD字状に形成されたシャフト挿入孔69Aが形成されている。シャフト85は、左右方向を軸方向とする棒状に形成されている。シャフト85におけるリターンブラケット75側の端部は、ロータ69のシャフト挿入孔69Aに挿入されるロータ係合部85Aとなっている。このロータ係合部85Aの形状がシャフト挿入孔69Aの内部と対応する形状となっていることにより、ロータ69とシャフト85とが、相対回転不能に結合される。また、シャフト85においてロータ69が係合される側とは反対側の端部は、モータアクチュエータ64が係合するアクチュエータ係合部85Bとなっている。そして、シャフト85がリターンブラケット75及びカバー77に挿通されることで、ロータ69がリターンブラケット75及びカバー77に回転可能に支持されている。なお、プッシュナット87がシャフト85の右側の端部に係合されることで、シャフト85がリターンブラケット75から抜け出さないようになっている。
【0039】
図8及び
図10に示されるように、カムプレート71は、ロータ69とパウル67との間に設けられている。このカムプレート71は、左右方向を厚み方向とすると共に左側又は右側から見て前後方向を長手方向とする矩形の板状に形成された第1基板部71Aと、第1基板部71Aの前端部から上方側へ向けて突出する第2基板部71Bと、を備えている。第1基板部71Aと第2基板部71Bとの境目には、カラー83が挿入されるカラー挿入孔71Cが形成されている。カムプレート71は、リターンブラケット75及びカバー77にカラー挿入孔71Cに挿通されたカラー83を介して回転可能に支持されている。第1基板部71Aの後端部には、上下方向を長手方向とする長孔状の作動孔71Dが形成されている。この作動孔71Dの内部には、パウル67の係合突起67Bが配置されるようになっている。これにより、カムプレート71の回転変位に伴い、パウル67がギヤ65側又はギヤ65とは反対側へ変位するようになっている。第1基板部71Aの前後方向の中央部には、後述するカム73が係合するカム係合孔71Eが形成されている。第2基板部71Bの後方側の面は、ロータ69が係合するロータ係合面71Fとなっている。また、カムプレート71は、第2基板部71Bの上端の前端側からカバー77側へ向けて突出するスプリング係止部71Gを備えている。なお、第1基板部71A及び第2基板部71Bにおいてカラー挿入孔71C及びスプリング係止部71Gと隣接する部位には、複数の補剛ビード71Hが形成されている。複数の補剛ビード71Hは、カバー77側に向けて凸状に形成されている。
図8等においては、補剛ビード71Hの図示を省略している。
【0040】
カム73は、カムプレート71に対してリターンブラケット75側に配置されている。このカム73は、左右方向を厚み方向とすると共に左側又は右側から見て前後方向を長手方向とする矩形の板状に形成されている。このカム73の前方側の端部には、カラー83が挿入されるカラー挿入孔73Aが形成されている。そして、カム73は、カムプレート71と共にリターンブラケット75及びカバー77にカラー挿入孔73Aに挿通されたカラー83を介して回転可能に支持されている。また、カム73の後方側の端部におけるカムプレート71側の面からは、円柱状に形成された係合突起73Bがカムプレート71側へ向けて突出している。この係合突起73Bがカムプレート71のカム係合孔71E内に配置されることで、カム73とカムプレート71とが相対回転不能に結合される。
【0041】
リターンブラケット75は、左右方向を厚み方向とすると共に左側又は右側から見て上下方向を長手方向とする矩形の板状に形成されたリターンブラケット本体部75Aと、リターンブラケット本体部75Aの上端部からカバー77側へ向けて屈曲して延びるカバー係合部75Bと、を備えている。リターンブラケット本体部75Aには、カラー83が挿入される2つのカラー挿入孔75C、シャフト85が挿入されるシャフト挿入孔75D、リベット89が挿入されるリベット挿入孔75Eが形成されている。
【0042】
カバー部材としてのカバー77は、左右方向を厚み方向とすると共に左側又は右側から見て上下方向を長手方向とする矩形の板状に形成されていると共にパウル67、ロータ69、カムプレート71等の大部分を左側から覆うカバー本体部77Aと、カバー本体部77Aの上端部からリターンブラケット75とは反対側へ向けて屈曲して延びるスプリング係止部77Bと、を備えている。また、カバー77は、カバー本体部77Aの後端部から後方側へ向けて突出する支持片部77Cを備えている。カバー本体部77Aには、カラー83が挿入される2つのカラー挿入孔77D、シャフト85が挿入されるシャフト挿入孔77E、リベット89が挿入されるリベット挿入孔77Fが形成されている。
【0043】
引張コイルスプリングは、引張コイルスプリングである。このリターンスプリング79の一方側の端部は、カムプレート71のスプリング係止部71Gに係止されている。また、リターンスプリング79の他方側の端部は、カバー77のスプリング係止部77Bに係止されている。これにより、引張コイルスプリングが、カバー77とカムプレート71との間に掛け渡されている。このリターンスプリング79の付勢力により、カムプレート71が後述する第2位置側へ回転付勢されている。
【0044】
モータアクチュエータ64は、通電されることにより作動されて図示しない出力部が回転するように構成されている。このモータアクチュエータ64の出力部には、シャフト85のアクチュエータ係合部85Bが係合される。そして、モータアクチュエータ64が作動されることで、シャフト85がロータ69と共に一方側又は他方側へ回転するようになっている。
【0045】
(ロック装置50の作動)
次に、ロック装置50の作動について説明する。
【0046】
図11には、ロータ69におけるシャフト85とは反対側の端部が、カムプレート71のロータ係合面71Fに当接している状態が示されている。この状態では、カムプレート71が第1位置A1に配置されると共に、パウル67が許容位置B1に配置される。パウル67が許容位置B1に配置されている状態では、パウル67の係合歯67Cがギヤ65の係合歯65Bと最も離間している。
【0047】
図12に示されるように、モータアクチュエータ64が作動されることにより、ロータ69がシャフト85と共に一方側(矢印C1方向側)へ回転変位されると、ロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置が変化する。
【0048】
ここで、
図12~
図16に示されるように、ロータ69がシャフト85と共に一方側(矢印C1方向側)へ回転変位される際においては、ロータ69の一方側への回転角度が増すにつれて、ロータ69の回転中心からロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置までの距離が次第に短くなる。これにより、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力によって一方側(矢印D1方向側)へ回転変位される。カムプレート71が一方側へ回転変位されると、パウル67の係合突起67Bがカムプレート71の作動孔71Dの縁に押圧されながら作動孔71Dに沿って一方側へ移動する。これにより、パウル67がギヤ65側(矢印E1側)へ回転変位されて、パウル67の係合歯65Bがギヤ65の係合歯65Bに係合する(噛合う)。なお、パウル67の係合歯65Bのギヤ65の係合歯65Bへの係合が完了している状態の当該パウル67の位置をロック位置B2と呼び、カムプレート71の位置を第2位置A2と呼ぶ。
【0049】
また、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力によって一方側(矢印D1方向側)へ回転変位される際においては、カム73がカムプレート71と共に一方側へ回転変位される。この過程では、カム73がパウル67のカム当接面67Dに当接した後に、当該カム73がパウル67のカム当接面67Dに当接し続ける。
【0050】
パウル67がロック位置B2に配置されていると共に、カムプレート71が第2位置A2に配置されている状態で、
図17~
図20に示されるように、モータアクチュエータ64が作動されて、ロータ69がシャフト85と共に他方側(矢印C2方向側)へ回転変位されると、ロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置が変化する。
【0051】
ここで、ロータ69がシャフト85と共に他方側(矢印C2方向側)へ回転変位される際においては、ロータ69の他方側への回転角度が増すにつれて、ロータ69の回転中心からロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置までの距離が次第に長くなる。これにより、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力に抗して他方側(矢印D2方向側)へ回転変位される。カムプレート71が他方側へ回転変位されると、パウル67の係合突起67Bがカムプレート71の作動孔71Dの縁に押圧されながら作動孔71Dに沿って他方側へ移動する。これにより、パウル67がギヤ65とは反対側(矢印E2側)へ回転変位されて、パウル67の係合歯65Bがギヤ65の係合歯65Bと離間する。このようにして、カムプレート71が第1位置A1へ戻ると共に、パウル67が許容位置B1に戻る。
【0052】
また、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力に抗して他方側(矢印D2方向側)へ回転変位される際においては、カム73がカムプレート71と共に他方側へ回転変位される。この過程では、カム73がパウル67のカム当接面67Dから離間する。
【0053】
以上説明したようにロック装置50が作動される。また、以上説明したロック装置50は、一例として、以下の構成により作動される。以下にロック装置を作動させる各構成について説明する。
【0054】
図1に示されるように、シート本体12のシート上方側に配置されたシートクッション10Aの内部には、着座センサ80が配置されている。着座センサ80は、シートクッションに配置される側の一方の端部にセンサ部80Aを備えている。センサ部80Aは、例えば、圧電素子のような電極を備え、シートクッション10Aの着座乗員により押圧される(荷重が加えられる)部位に電極が配置されるようにシートクッション10Aの内部に配置されている。
【0055】
着座センサ80の他方の端部は、図示しないコネクタを介してECU(Electronic Control Unit)82と電気的に接続されている。また、ロック装置50のモータアクチュエータ64も同様にECU82と電気的に接続されている。このため、着座センサ80とロック装置50はECU82を介して電気的に接続されている。ここでは、着座センサ80が、乗員の着座による荷重を検出する荷重センサとして機能し、ECU82が、乗員の着座や立ち上がりを判定する機構として機能する。具体的には、ECU82は、着座センサ80に複数設けられた電極間の抵抗値を検出する。例えば、乗員が着座することにより押圧された電極の抵抗値が、押圧されていない場合、すなわち、乗員が着座していない状態の電極の抵抗値と差を生じているかどうかを判定することにより、乗員がシート本体12に着座しているか否かを検出する。また、乗員が着座している状態の電極の抵抗値と差を生じているかどうかを判定することにより、乗員がシート本体12から立ち上がっているか否かを検出する。乗員がシート本体から立ち上がっている場合に、ロック装置50のモータアクチュエータ64が作動し、パウル67がギヤ65と噛合する方向に変位される。
【0056】
ECU82は、車室に装備されたシートベルト装置のシートベルトバックルにおいてシートベルト(いずれも図示省略)の着脱を検出するために設けられたバックルスイッチ86と電気的に接続されている。バックルスイッチ86は、ロック装置50とECU82を介して電気的に接続され、ロック装置50は乗員によるシートベルトの着脱と連動して作動するように構成されている。具体的には、乗員がシートベルトを取り外した場合に、ロック装置50のモータアクチュエータ64が作動し、パウル67がギヤ65と噛合する方向に変位される。
【0057】
ECU82は、車室に配設されると共に車両の変速機(図示省略)を操作する操作部としてのシフトレバー88と電気的に接続されている。シフトレバー88は、略棒状に形成されたレバーを備えて構成されている。以下の説明では、変速機はオートマチックトランスミッションとして説明するが、これに限らず、変速機はマニュアルトランスミッションとされてもよい。シフトレバー88はロック装置50とECU82を介して電気的に接続され、ロック装置50はシフトレバー88の操作と連動して作動するように構成されている。具体的には、乗員がシフトレバー88をリバースレンジに入れた場合又はシフトレバー88をパーキングレンジに入れた場合に、ロック装置50のモータアクチュエータ64が作動し、パウル67がギヤ65と噛合する方向に変位される。
【0058】
車室前部かつ車両用シート10の車両前方側に設けられたインストルメントパネル(図示省略)には、操作部としてのロックスイッチ90が設けられている。ロックスイッチ90は、乗員が手動でオン又はオフの操作が可能なスイッチを備えて構成されている。ロックスイッチ90はロック装置50とECU82を介して電気的に接続され、ロック装置50はロックスイッチ90の操作と連動して作動するように構成されている。具体的には、乗員がロックスイッチ90をオンにした場合に、ロック装置50のモータアクチュエータ64が作動し、パウル67がギヤ65と噛合する方向に変位される。また、乗員がロックスイッチ90をオフにした場合に、ロック装置50のモータアクチュエータ64が作動し、パウル67がギヤ65と離間する方向に変位される。
【0059】
ロック装置50は、例えば、車両用シート10のシート右側又はシート左側に配置された操作部としてのサイドブレーキ92とケーブル94を介して機械的に接続されている。パウル67は、乗員がサイドブレーキ92のレバー(図示省略)を引くことによりギヤ65と噛合する方向に変位されるように構成されている。また、パウル67は、乗員がサイドブレーキ92のレバーを下げることによりギヤ65と離間する方向に変位されるように構成されている。
【0060】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0061】
本実施形態に係る車両用シート10によれば、以上説明したように簡易に構成されたロック装置50をXリンク28に設けることにより、サスペンション14によるシート本体12の昇降をロックすることができる。
【0062】
ここで、本実施形態のロック装置50では、
図11~
図16に示されるように、モータアクチュエータ64の作動に伴い、ロータ69が一方側へ回転変位される際において、カムプレート71に第1位置A1側への力が入力されることが考えられる。例えば、Xリンク28が変位している状態で、すなわち、ギヤ65が変位している状態で、パウル67の係合歯67Cがギヤ65の係合歯65Bに係合しようとする場合、パウル67の係合歯67Cがギヤ65の係合歯65Bに弾かれて、パウル67が許容位置B1側へ向けて弾かれる。これにより、パウル67と係合しているカムプレート71に第1位置A1側への力が入力されて、
図14において二点鎖線で示されるように、カムプレート71が第1位置A1側へ回転変位する。その結果、カムプレート71がロータ69と離間して、パウル67の係合歯67Cがギヤ65の係合歯65Bに弾かれる際の衝撃がロータ69を介してモータアクチュエータ64に入力されない。これにより、モータアクチュエータ64に過大なトルクが入力されることを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態のロック装置50では、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力によって第1位置A1から第2位置A2へ変位される。また、ロータ69が他方側へ回転される際においては、ロータ69がカムプレート71をリターンスプリング79の付勢力に抗して第2位置A2から第1位置A1へ変位させる。このように、リターンスプリング79を設けることにより、カムプレート71の重心位置や姿勢の影響を受けにくくしつつ、ロータ69が一方側へ回転される際に、カムプレート71を第1位置A1から第2位置A2へ安定して変位させることができる。なお、リターンスプリング79を設けない場合においては、カムプレート71の重心位置等を適宜設定して、ロータ69が一方側へ回転される際に、カムプレート71が第1位置A1から第2位置A2へ変位されるようにすればよい。
【0064】
さらに、本実施形態のロック装置50では、カムプレート71がカム73と共に変位する。そして、カムプレート71が第2位置A2に配置されている状態では、カム73がパウル67のカム当接面67Dに当接している。これにより、ロック位置B2に配置されたパウル67の許容位置B1側への変位を制限することができ、パウル67の係合歯67Cとギヤ65の係合歯65Bとの係合状態を容易に保つことができる。なお、カム73を設けるか否かは、パウル67の係合歯67Cとギヤ65の係合歯65Bとの係合状態を考慮して適宜設定すればよい。
【0065】
また、本実施形態のロック装置50のロック装置本体53は一方のXリンク28に沿って設けられている。これにより、ロック装置本体53を両方のXリンク28に沿って設けた構成と比べて、一対のXリンク28の間のスペースを確保することができる。
【0066】
さらに、本実施形態のロック装置50では、リターンスプリング79が係止されるスプリング係止部77Bがカバー77に設けられている。これにより、Xリンク28側にリターンスプリング79が係止される部分を設けた場合と比べて、Xリンク28の構成が複雑になることを抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、サスペンション14によるシート本体12の昇降をロックするために上記のロック装置50の構成を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本実施形態のロック装置50の構成は、シート本体12の一部の変位をロックするためにも適用することができる。また、本実施形態のロック装置50の構成は、サスペンション14を備えていない車両用シートにも適用することができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
10 車両用シート
10A シートクッション
10B シートバック
12 シート本体
14 サスペンション(変位機構)
22 エアスプリング(昇降及び緩衝部材)
28 Xリンク(リンク)
30 内側リンクアーム(第1リンク部材)
32 外側リンクアーム(第2リンク部材)
34 リンク軸(回転軸部)
64 モータアクチュエータ(モータ)
65 ギヤ(第1変位部材)
67 パウル(第2変位部材)
69 ロータ(第3変位部材)
71 カムプレート(第4変位部材)
73 カム(第5変位部材)
77 カバー(カバー部材)
79 リターンスプリング(付勢部材)
A1 第1位置
A2 第2位置
B2 ロック位置
B1 許容位置