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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084022
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20220530BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20220530BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220530BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C08L101/10
C08L33/14
C08K5/17
C08L71/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191141
(22)【出願日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2020195204
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】村山 之彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB00W
4J002BG00Y
4J002BG02W
4J002BG07X
4J002CH05W
4J002CK02W
4J002CP03W
4J002EN026
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD02Y
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD200
4J002FD206
4J002GJ02
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】雰囲気(空気)中の湿気により硬化して、耐汚染性に優れると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を生成する硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を5質量%以上且つ50質量%未満含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)、融点が20℃以上であるアミン化合物(C)を含有することを特徴とする。本発明の硬化性組成物の硬化物は、耐汚染性に優れていることから雨筋汚れの発生を低減できると共に、耐久性にも優れていることから優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することもできる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を5質量%以上且つ50質量%未満含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)、融点が20℃以上であるアミン化合物(C)を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)が、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、数平均分子量が20,000以上であり、且つ分子量分布が1.3以下であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
加水分解性シリル基を含有していないアクリル系重合体(D)を含有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気(空気)中の湿気により硬化して、耐汚染性及び耐久性の双方に優れた硬化物を与える硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架橋可能な加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を含有する硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1)。硬化性組成物は、雰囲気中に含まれる湿気により架橋可能な加水分解性シリル基が加水分解した後に脱水縮合することによって、接着性に優れた硬化物を生じる。
【0003】
硬化性組成物として、特許文献2に、アルコキシシリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体に、有機カルボン酸塩や有機アミンを含有することを特徴とする湿気硬化性組成物が開示されている。
【0004】
このような硬化性組成物は、例えば、建築構造物の外壁などにおいて、モルタル板、コンクリート板、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)板、金属板などの外壁部材間の接合部(いわゆる「目地」)に充填することによって、外壁部材同士を接合するために用いられている。このように硬化性組成物を使用することによって、外壁部材間の接合部から建築構造物内部へ雨水が浸入することを抑制している。
【0005】
建築構造物の外壁では、温度変化に伴って外壁部材が膨張又は収縮したり、地震や強風による振動や外力によって外壁部材が移動したりするために、目地幅は僅かであるが変化を生じる。そのため、硬化性組成物には、硬化後に優れたゴム弾性を有し、伸縮可能とすることによって、外壁としっかり密着し目地幅の変化に追随できることが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5698422号公報
【特許文献2】特許5289755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、硬化性組成物の硬化物は、耐汚染性が低いという問題があった。耐汚染性が低い場合、硬化性組成物の硬化物表面に経時的に雨筋汚れが発生する。雨筋汚れは、雨が降った後に、硬化性組成物の硬化物表面に雨水が流れ落ちた箇所が筋状の跡となって残ることで発生する。雨筋汚れは、黒色又は白色などの筋状の跡となって残ることが多い。雨筋汚れが発生すると、硬化性組成物の硬化物表面において雨筋汚れが発生した部分と雨筋汚れが発生していない部分との差が生じて、外観が損なわれる。したがって、硬化性組成物には、硬化後に雨筋汚れの発生を低減して美麗な外観を維持できるように、優れた耐汚染性を有することが求められている。
【0008】
さらに、硬化性組成物の硬化物は、耐久性が低いという問題もあった。硬化性組成物の硬化物の耐久性が低い場合、硬化性組成物の硬化物が空気中の湿気や雨水などの水と接触することによって、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が経時的に低下し、外壁部材間の目地幅の変化に追随して上記硬化物が伸縮することが困難となる。このように硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が低下すると、硬化性組成物の硬化物が外壁部材との接着界面から剥離したり、外壁部材が損傷したりして、結果として雨水が建築構造物内へ浸入し、漏水を引き起こすといった問題が生じる。
【0009】
したがって、本発明は、雰囲気(空気)中の湿気により硬化して、耐汚染性に優れると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を生成する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を5質量%以上且つ50質量%未満含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)、融点が20℃以上であるアミン化合物(C)を含有することを特徴とする。
【0011】
(加水分解性シリル基を有する有機重合体(I))
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)を含む。加水分解性シリル基を含有する有機重合体(I)は、水の存在下にて、加水分解性シリル基の加水分解性基が加水分解してシラノール基(-SiOH)を生成する。そして、シラノール基同士が脱水縮合して架橋構造が形成される。
【0012】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)としては、特に限定されず、例えば、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体、加水分解性シリル基を有するシリコーン樹脂、加水分解性シリル基を有するウレタン樹脂、加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含有していることが好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)によれば、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上し、これにより上記硬化物がより長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。なお、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)を含有していることが好ましい。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)によれば、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上し、これにより上記硬化物がより長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができると共に、硬化性組成物の硬化物の耐汚染性が向上する。
【0013】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含有していないことがより好ましい。すなわち、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、モノマー成分として、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含んでいないことが好ましい。
【0014】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含有していないことがより好ましい。すなわち、ポリアルキレンオキサイド(A)は、モノマー成分として、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含んでいないことが好ましい。
【0015】
本発明において、加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0016】
なかでも、ポリアルキレンオキサイド(A)の加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0017】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、1~2個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の平均個数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の平均個数が2個以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又はゴム弾性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0018】
なお、ポリアルキレンオキサイド(A)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0019】
ポリアルキレンオキサイド(A)としては、主鎖が、一般式:-(R1-O)n-(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0020】
ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドを用いることにより、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上し、これにより上記硬化物がより長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。
【0021】
ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量(Mn)は、15,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましい。一方、ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量(Mn)は、50,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が15,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性及び耐汚染性が向上する。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0022】
ポリアルキレンオキサイド(A)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.5以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.3以下がより好ましく、1.25以下が特に好ましい。一方、ポリアルキレンオキサイド(A)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.05以上が好ましく、1.1以上がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の分子量分布が1.5以下であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性及び耐汚染性が向上する。ポリアルキレンオキサイド(A)の分子量分布が1.05以上であると、硬化性組成物の施工性が向上する。
【0023】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量及び重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。
【0024】
具体的には、ポリアルキレンオキサイド(A)6~7mgを採取し、採取したポリアルキレンオキサイド(A)を試験管に供給する。0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むオルトジクロロベンゼン(o-DCB)溶液を用意し、この溶液を試験管に加えて、ポリアルキレンオキサイド(A)の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリアルキレンオキサイド(A)を溶液中に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いて、GPC法によってポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0025】
ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0026】
加水分解性シリル基を含有しているポリアルキレンオキサイド(A)は、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり、主鎖骨格の末端にメチルジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、AGC株式会社製 製品名「エクセスター S4530」などが挙げられる。
【0027】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)中における加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)のみからなることが特に好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)の含有量が50質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上し、これにより上記硬化物がより長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。
【0028】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含有していないことがより好ましい。すなわち、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)は、モノマー成分として、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含んでいないことが好ましい。
【0029】
アクリル系重合体(E)の加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基がより好ましい。
【0030】
アクリル系重合体(E)は、1分子中に平均して、1~2個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。アクリル系重合体(E)における加水分解性シリル基の平均個数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、アクリル系重合体(E)における加水分解性シリル基の平均個数が2個以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又はゴム弾性が向上する。また、アクリル系重合体(E)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0031】
なお、アクリル系重合体(E)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるアクリル系重合体(E)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるアクリル系重合体(E)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0032】
アクリル系重合体(E)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含んでいることが好ましい。アクリル系重合体(E)がアクリル酸アルキルエステル単位を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上し、これにより上記硬化物がより長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ポリオキシエチレン鎖を含有していないことが好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、及び(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ステアリルがより好ましく、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ステアリルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有しているアルキル基は、好ましくは、-C2p+1(式中、pは、正の整数である。)で示される基である。
【0034】
(メタ)アクリル系重合体(E)は、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含んでいることが好ましい。なお、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ポリオキシエチレン鎖を含有していないことが好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル系重合体(E)は、加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステルと、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとを含むアクリル系単量体の重合体であることがより好ましい。
【0036】
加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(トリメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(トリエトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(メチルジメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸(メチルジメトキシシリル)メチルなどが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジメトキシ)プロピルが好ましく、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルがより好ましく、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルが特に好ましい。加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0037】
アクリル系重合体(E)の合成法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。後述する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合成法と同様の合成法を用いることができる。
【0038】
アクリル系重合体(E)の数平均分子量(Mn)は、2,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましく、20,000以上がより好ましい。一方、アクリル系重合体(E)の数平均分子量(Mn)は、50,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましい。アクリル系重合体(E)の数平均分子量が15,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性及び耐汚染性が向上する。アクリル系重合体(E)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0039】
アクリル系重合体(E)の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。一方、アクリル系重合体(E)の重量平均分子量(Mw)は、40,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましい。アクリル系重合体(E)の重量平均分子量が1,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性及び耐汚染性が向上する。アクリル系重合体(E)の重量平均分子量が40,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0040】
アクリル系重合体(E)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.5以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.3以下がより好ましく、1.25以下が特に好ましい。一方、アクリル系重合体(E)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.05以上が好ましく、1.1以上がより好ましい。アクリル系重合体(E)の分子量分布が1.5以下であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性及び耐汚染性が向上する。アクリル系重合体(E)の分子量分布が1.05以上であると、硬化性組成物の施工性が向上する。
【0041】
なお、本発明において、アクリル系重合体(E)の重量平均分子量及び数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0042】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)中における加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)の含有量は、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)中における加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)の含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)の含有量が50質量%以上であると、5質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐熱性が向上し、固化物は、長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(E)の含有量が30質量%以下であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上し、これにより上記硬化物がより長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。
【0043】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体(B))
硬化性組成物は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を5質量%以上且つ50質量%未満含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含む。このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を、後述するアミン化合物(C)と組み合わせて用いることにより、硬化性組成物の硬化物表面を適度な親水性にすることができる。これにより、硬化性組成物の硬化物表面に降雨などにより水が接触した場合に、上記硬化物表面において水が水滴とならずに薄く広がって容易に流れ落ちることができる。したがって、硬化性組成物の硬化物表面に雨筋汚れが発生するのを高く低減することができる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を、後述するアミン化合物(C)と組み合わせて用いることにより、硬化性組成物の硬化物の耐久性を向上させることができ、硬化性組成物の硬化物が優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することも可能となる。このように(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)とアミン化合物(C)とを組み合わせて用いることにより、これらの相乗効果が得られ、これにより雨筋汚れに対する耐汚染性に優れるだけでなく、更には耐久性にも優れた硬化物を生成する硬化性組成物を提供することが可能となる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含む。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリル系単量体の重合体であることが好ましい。
【0045】
なお、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルは加水分解性シリル基を有していないことが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0046】
ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。
【化1】

(式中、R2は水素原子又はメチル基であり、R3は、水素原子、炭素数が1~24である置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数が6~20である置換あるいは非置換のアリール基、又は炭素数が7~20である置換あるいは非置換のアラルキル基であり、mは2から100の整数である。)
【0047】
式(1)におけるR2は、水素原子またはメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0048】
式(1)におけるmは、繰り返し単位の数であって、2以上の整数が好ましく、3以上の整数がより好ましく、4以上の整数が特に好ましい。一方、式(1)におけるmは、100以下の整数が好ましく、40以下の整数がより好ましく、30以下の整数がより好ましく、15以下の整数が特に好ましい。
【0049】
式(1)におけるR3としては、水素原子、炭素数が1~24である置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数が6~20である置換あるいは非置換のアリール基、又は炭素数が7~20である置換あるいは非置換のアラルキル基が好ましい。
【0050】
式(1)のR3における炭素数が1~24である置換あるいは非置換のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のどちらであってもよく、特に制限されない。非置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。これらのアルキル基が有している水素原子が、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基などの有機基によって置換されていてもよい。なお、前記有機基から好ましくはアリール基を除く。置換のアルキル基として、例えば、ヒロドキシアルキル基、アルコキシアルキル基などが挙げられる。なお、置換のアルキル基から好ましくはベンジル基等のアラルキル基を除く。
【0051】
式(1)のR3における炭素数が6~20である置換あるいは非置換のアリール基において、アリール基を構成する芳香環は、単環であっても縮合環であってもよい。非置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基が挙げられる。これらのアリール基が有している水素原子が、ヒドロキシ基、アルキル基、及びアルコキシ基などの有機基によって置換されていてもよい。置換のアリール基としては、例えば、アルコキシフェニル基、及びアルキルフェニル基などが挙げられる。
【0052】
式(1)のR3における炭素数が7~20である置換あるいは非置換のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、及びナフチルエチル基などが挙げられる。
【0053】
式(1)のR3としては、水素原子、及び炭素数が1~24である置換あるいは非置換のアルキル基が好ましく、炭素数が1~10である非置換のアルキル基がより好ましく、炭素数が1~3である非置換のアルキル基が特に好ましい。
【0054】
ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルを形成するアルコール残基は、末端が炭素数1~24のアルキル基で封鎖されたポリエチレングリコール残基であることが好ましい。
【0055】
ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸プロポキシポリエチレングリコールなどが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールが好ましく、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールがより好ましい。ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)における、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、5質量%以上であるが、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましい。一方、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)における、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、50質量%未満であるが、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が5質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物表面の親水性が向上して、耐汚染性が向上する。ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が50質量%未満であると、硬化性組成物の硬化物表面を適度な親水性にすることができ、これにより上記硬化物の耐汚染性及びゴム弾性の双方を向上させることができる。硬化性組成物の硬化物表面の親水性が高過ぎると、上記硬化物が空気中の湿気や雨水などの水と接触することによって、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性の低下を促進させることがある。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含んでいることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むアクリル系単量体の重合体であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることにより、硬化性組成物の硬化物の耐久性を向上させることができる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ポリオキシエチレン鎖を含有していないことが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、加水分解性シリル基を有していないことが好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、及び(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、及び(メタ)アクリル酸ヘキシルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、及び(メタ)アクリル酸ブチルがより好ましく、(メタ)アクリル酸ブチルがより好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有しているアルキル基は、好ましくは、-Cn2n+1(式中、nは、正の整数である。)で示される基である。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)における、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。一方、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)における、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量が30質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上する。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量が90質量%以下であると、硬化性組成物の施工性が向上する。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、加水分解性シリル基を有していることが好ましい。加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)によれば、硬化性組成物の硬化物の耐久性がさらに向上し、上記硬化物がより長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。さらに、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)によれば、硬化性組成物の硬化物の耐汚染性を向上させることもできる。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基及びトリアルコキシリル基がより好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含んでいることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとを含むアクリル系単量体の重合体であることがより好ましく、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとを含むアクリル系単量体の重合体であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体であることが特に好ましい。
【0063】
加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(トリメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(トリエトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(メチルジメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸(メチルジメトキシシリル)メチルなどが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジメトキシ)プロピルが好ましく、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルがより好ましく、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルが特に好ましい。加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)における、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。一方、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)における、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が0.5質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上し、上記硬化物が優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる。加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が10質量%以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル単位を含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸置換アルキルエステルとは、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基が有している水素原子の少なくとも1個が、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など)、アルコキシ基、ヒドロキシ基、フルオロアルキル基、アミノ基などの有機基によって置換された化合物である。
【0066】
(メタ)アクリル酸置換アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸3,3,3-トリフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸置換アルキルエステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル単位を含んでいないことが好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの他のアクリル系単量体単位を含んでいてもよい。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合成法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0069】
例えば、フリーラジカル重合法としては、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとを含むアクリル系単量体に、重合開始剤、連鎖移動剤、及び溶媒などを加え、50~150℃で上記アクリル系単量体の重合を行う溶液重合法、上記アクリル単量体を特開2001-207157号公報に記載されている高温、高圧で重合する連続塊状重合法などが挙げられる。
【0070】
重合開始剤としては、通常、油溶性のラジカル重合開始剤を用いて反応を開始する。油溶性のラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤及び有機過酸化物などが挙げられる。
【0071】
アゾ系重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などが挙げられる。
【0072】
有機過酸化物としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-1-メチルヘプチルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルジパーオキシアジペート、クミルパーオキシネオデカノエートなどのパーオキシエステル;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド;クメンヒドロキシパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。上記ラジカル重合開始剤として有機過酸化物を使用する場合には、これと還元剤とを組み合わせてレドックス型重合開始剤として使用してもよい。重合開始剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのメルカプト基含有化合物が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の分子鎖末端に加水分解性シリル基を導入したい場合には、連鎖移動剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルクロロメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメトキシメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメトキシメチルシランなどが挙げられる。連鎖移動剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。連鎖移動剤は、耐久性に悪影響を与えることがあるため、使用量は単量体全量の2質量%以下であることが好ましく、使用しないのが特に好ましい。
【0074】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、パラジクロルベンゼン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジ-n-ブチルなどの芳香族化合物;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素化合物;酢酸ブチル、酢酸n-プロプル、酢酸イソプロピルなどのカルボン酸エステル化合物;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン化合物;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート化合物;1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、アミルアルコールなどのアルコール化合物などを挙げることができる。なかでも、ジメチルカーボネート、1-プロパノ-ル、2-プロパノール、1-ブタノ-ル、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコールがより好ましく、特に、2-プロパノ-ル、イソブタノールが好ましい。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量平均分子量は、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましい。一方、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量平均分子量は、30,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量平均分子量が2,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐久性が向上する。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量平均分子量が30,000以下であると、硬化性組成物の良好な施工性を維持することができる。
【0076】
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0077】
硬化性組成物中における(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が特に好ましい。一方、硬化性組成物中における(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、75質量部以下がより好ましく、40質量部以下が特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の含有量が5質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐汚染性及び耐久性を向上させることができる。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0078】
[アミン化合物(C)]
硬化性組成物は、融点が20℃以上であるアミン化合物(C)を含む。アミン化合物(C)の融点は、20℃以上であるが、35℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。アミン化合物(C)の融点は、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下がより好ましい。アミン化合物(C)の融点が20℃以上であると、硬化後の硬化性組成物の耐汚染性や耐久性を向上させることができる。アミン化合物(C)の融点が100℃以下であると、硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生するのを低減することができる。上記硬化物表面にタックが発生すると、上記硬化物表面に埃などの汚れが付着し易くなり、外観が損なわれる。
【0079】
なお、本発明において、アミン化合物の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。具体的には、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC-60」など)を用いて、アミン化合物を10℃から150℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、アミン化合物の融点とする。なお、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0080】
本発明において、アミン化合物(C)とは、一分子中に少なくとも1個のアミノ基(-NH2)を有している化合物を意味する。アミン化合物(C)においてアミノ基が有している水素原子は、アルキル基やアリール基などの有機基によって置換されていてもよい。アミン化合物(C)は、加水分解性シリル基を有していないことが好ましい。また、アミン化合物(C)は、ケイ素原子を含んでいないことが好ましい。
【0081】
アミン化合物(C)としては、例えば、モノアミン化合物、ジアミン化合物、及びトリアミン化合物などが挙げられる。なかでも、モノアミン化合物、及びジアミン化合物が好ましい。
【0082】
アミン化合物(C)としては、下記式(2)で示されるモノアミン化合物、下記式(3)で示されるジアミン化合物、及び下記式(4)で示されるジアミン化合物が好ましく挙げられる。
4-NH2 (2)
5-NH-R6-NH2 (3)
NH2-R7-NH2 (4)
(式(2)において、R4は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、一価の飽和脂環式炭化水素基、又はアリール基である。式(3)において、R5は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、一価の飽和脂環式炭化水素基、又はアリール基であり、R6は、アルキレン基である。式(4)において、R7は、アルキレン基である。)
【0083】
式(2)で示されるモノアミン化合物において、R4の炭素数は、12個以上が好ましく、15個以上がより好ましく、20個以上がより好ましい。式(2)で示されるモノアミン化合物において、R4の炭素数は、30個以下が好ましく、25個以下がより好ましい。R4としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。
【0084】
式(3)で示されるジアミン化合物において、R5及びR6の合計の炭素数は、15個以上が好ましく、20個以上がより好ましい。式(3)で示されるジアミン化合物において、R5及びR6の合計の炭素数は、40個以下が好ましく、30個以下がより好ましく、25個以下が特に好ましい。R5としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。
【0085】
式(4)で示されるジアミン化合物において、R7の炭素数は、15個以上が好ましく、20個以上がより好ましい。式(4)で示されるジアミン化合物において、R7の炭素数は、40個以下が好ましく、30個以下がより好ましく、25個以下が特に好ましい。
【0086】
アミン化合物(C)として、具体的には、ラウリルアミン(C1225-NH2、融点25℃)、ステアリルアミン(C1837-NH2、融点50℃)、ベヘニルアミン(C2245-NH2、融点63℃)、及びベヘニルプロピレンジアミン(C2245-NH-C36-NH2、融点60℃)などが挙げられる。アミン化合物(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0087】
硬化性組成物中におけるアミン化合物(C)の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。硬化性組成物中におけるアミン化合物(C)の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましく、3質量部以下が特に好ましい。アミン化合物(C)の含有量が0.5質量部以上であると、硬化後の硬化性組成物の耐汚染性や耐久性が向上する。アミン化合物(C)の含有量が10質量部以下であると、硬化後の硬化性組成物の耐汚染性や耐久性が向上する。
【0088】
(可塑剤)
硬化性組成物は可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤としては、ポリマー及びオリゴマー以外の場合、分子量が300~10000の化合物が好ましく用いられる。ポリマー及びオリゴマーである場合、可塑剤としては、重量平均分子量が400~11000のポリマーが好ましく用いられる。具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド類、及びアクリル系重合体などが挙げられ、アクリル系重合体が好ましい。
【0089】
可塑剤として用いられるアクリル系重合体(D)は、加水分解性シリル基を含有していないことが好ましい。すなわち、硬化性組成物は、加水分解性シリル基を含有していないアクリル系重合体(D)を含んでいることが好ましい。アクリル系重合体(D)は、ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含有していないことがより好ましい。
【0090】
アクリル系重合体(D)の重量平均分子量は、500以上が好ましく、1000以上がより好ましい。アクリル系重合体(D)の重量平均分子量は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。アクリル系重合体(D)の重量平均分子量が500以上であると、アクリル系重合体(D)のブリードアウトを抑制することができる。また、アクリル系重合体(D)の重量平均分子量が10000以下であると、硬化性組成物を十分に可塑化して、硬化性組成物の硬化物が優れたゴム弾性を有する。
【0091】
なお、本発明において、可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって、ポリスチレン換算されて測定された値である。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0092】
可塑剤中におけるアクリル系重合体(D)の含有量は、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。すなわち、可塑剤は、アクリル系重合体(D)のみからなることが特に好ましい。アクリル系重合体(D)の含有量が1質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物が優れたゴム弾性を有する。
【0093】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がより好ましい。
【0094】
(シラノール縮合触媒)
本発明の硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有することが好ましい。シラノール縮合触媒とは、有機重合体(I)などが含有する加水分解性シリル基が加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0095】
シラノール縮合触媒としては、特に限定されず、例えば、ジオクチル錫モノデカネート、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。なかでも、有機錫系化合物が好ましく、ジオクチル錫オキサイドがより好ましい。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0096】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましく、5質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0097】
(アミノシラン化合物)
本発明の硬化性組成物は、アミノシラン化合物を含むことが好ましい。アミノシラン化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。アミノシラン化合物としては、アミノアルコキシシランが好ましく挙げられる。アミノアルコキシシランとは、1分子中に、アミノ基含有官能基を少なくとも1個有し、且つ少なくとも2個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合している化合物を意味する。アミノ基含有官能基は、ケイ素原子に直接結合していることが好ましい。アミノアルコキシシランは、一分子中に、アミノ基含有官能基を1個有し、且つ3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合している化合物が好ましい。
【0098】
アミノ基含有官能基としては、硬化性組成物の接着性が向上することから、アミノプロピル官能基が好ましい。アミノプロピル官能基としては、-(CH23-NH2、-(CH23-NHR8、-(CH23-NH(CH22-NH2(3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピル基)、及び、-(CH23-NH(CH22-NH(CH22-NH2(3-[[2-(2-アミノエチルアミノ)エチル]アミノ]プロピル基)からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノプロピル官能基が好ましい。アミノプロピル官能基としては、-(CH23-NH2、-(CH23-NH(CH22-NH2がより好ましい。
【0099】
-(CH23-NHR8において、R8は、炭素数が1~18個のアルキル基、炭素数が3~18個の一価の飽和脂環式炭化水素基、又は、炭素数が6~12個のアリール基である。
【0100】
8における、炭素数が1~18のアルキル基としては、直鎖状のアルキル基及び分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基などが挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びn-ブチル基が好ましい。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
【0101】
8における、炭素数が3~18個の一価の飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基,シクロヘプチル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられ、シクロヘキシル基が好ましい。
【0102】
8における、炭素数が6~12個のアリール基としては、例えば、フェニル基などが挙げられる。
【0103】
アミノアルコキシシランとしては、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられ、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。アミノアルコキシシランは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0104】
アミノシラン化合物は、上記に示したアミノアルコキシシランであっても、アミノアルコキシシランの加水分解縮合物であってもよい。アミノシラン化合物としては、アミノアルコキシシランの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマーや、アミノアルコキシシランとアルキルアルコキシシランとの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマーが挙げられる。即ち、アミノシラン化合物としては、アミノアルコキシシランを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマー、及びアミノアルコキシシランとアルキルアルコキシシランとを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマーが挙げられる。
【0105】
アルキルアルコキシシランとは、少なくとも1個のアルキル基と、少なくとも2個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合している化合物を意味する。アルキルアルコキシシランとしては、1個のアルキル基と、3個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合しているモノアルキルトリアルコキシシラン、及び2個のアルキル基と、2個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合しているジアルキルジアルコキシシランが挙げられる。モノアルキルトリアルコキシシランとして、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びヘキシルトリメトキシシランなどが挙げられる。ジアルキルジアルコキシシランとして、具体的には、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、及びジエチルジエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、モノアルキルトリアルコキシシランが好ましく、エチルトリエトキシシランがより好ましい。なお、アルキルアルコキシシランは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0106】
硬化性組成物中におけるアミノシラン化合物の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましい。一方、硬化性組成物中におけるアミノシラン化合物の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下が特に好ましい。アミノシラン化合物の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の接着性が向上する。アミノシラン化合物の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。
【0107】
(充填剤)
硬化性組成物は充填剤をさらに含んでいるのが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0108】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができ、炭酸カルシウムが好ましく、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムが好ましい。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0109】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01~5μmが好ましく、0.05~2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシウムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0110】
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシウムが凝集することを抑制することができる。
【0111】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上が特に好ましい。一方、硬化性組成物中における充填剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、700質量部以下が好ましく、250質量部以下がより好ましく、200質量部以下が特に好ましい。硬化性組成物中における充填剤の含有量が1質量部以上であると、充填剤の添加による効果が十分に得られる。また、硬化性組成物中における充填剤の含有量が700質量部以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が優れたゴム弾性を有する。
【0112】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0113】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0114】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。一方、硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中における脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、硬化性組成物中における脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0115】
(光安定剤)
硬化性組成物は、光安定剤をさらに含んでいてもよい。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0116】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0117】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。一方、硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0118】
(他の添加剤)
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0119】
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0120】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0121】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0122】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する有機重合体(I)100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0123】
本発明の硬化性組成物は、耐久性に優れ、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材、コーティング材、接着剤、及び塗料など各種用途に使用することができる。なかでも、シーリング材として用いられることが好ましく、目地構造用シーリング材として用いられることがより好ましい。
【0124】
更に、本発明の硬化性組成物の硬化物は、耐汚染性に優れていることから、雨筋汚れの発生を低減し、特に屋外での使用にあっても、長期間に亘って美麗な外観を保持することができる。
【0125】
硬化性組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、硬化性組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられ、なかでも外壁が好ましい。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられ、外壁部材が好ましい。
【0126】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れた耐汚染性を発揮することができる。さらに、本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持できることから、気温や日照等の温度変化による部材の膨張や収縮による、或いは振動や風圧などの作用による目地部の幅の変化に対して優れた追随性を呈し、部材の損傷や建築構造物内への漏水を防止することができる。従って、本発明の硬化性組成物は、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる汚染物質の付着や雨筋汚れの発生し易い目地部をシーリングするために好適に用いられる。
【0127】
建築構造物の外壁における目地部としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、及び金属板などの外壁部材間の接合部にできる目地部が挙げられる。
【発明の効果】
【0128】
本発明の硬化性組成物は、上述の如き構成を有しているので、雰囲気(空気)中の湿気により硬化して、耐汚染性及び耐久性の双方に優れた硬化物を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0129】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0130】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体(B1)~(B6)の合成)
フラスコに、イソブタノール40質量部を添加し105℃に加熱し、窒素置換を行った後、攪拌しながら、窒素雰囲気下で、それぞれ表1に示した所定量のメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(上記式(1)(式(1)中、R2がメチル基であり、mが9であり、R3がメチル基である)で示される(メタ)アクリル酸エステル、新中村化学工業株式会社製 商品名「NKエステルM-90G」)、アクリル酸ブチル、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、重合開始剤(2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、富士フイルム和光純薬株式会社製 商品名「V-59」)、及びイソブタノールを含む溶液を5時間かけて滴下し、その後1時間に亘って重合を行った。これにより得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体のイソブタノール溶液から、加熱減圧下でイソブタノールを除去することにより、表1に示す重量平均分子量(Mw)を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B1)~(B6)をそれぞれ得た。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例及び比較例において、下記の原料を使用した。
〔有機重合体(I)〕
・メチルジメトキシシリル基を含有し且つ主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド(A1)(AGC株式会社製 製品名「エクセスター S4530」、数平均分子量(Mn):25000、分子量分布(Mw/Mn):1.16、1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:1.6個)
・メチルジメトキシシリル基を含有し且つ主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド(A2)(株式会社カネカ社製 製品名「MS-203H、数平均分子量(Mn):17000、分子量分布(Mw/Mn):1.18、1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:1.3個)
・メチルジメトキシシリル基を含有し且つ主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド(A3)(AGC株式会社製 製品名「エクセスター S2420」、数平均分子量(Mn):17000、分子量分布(Mw/Mn):1.41、1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:1.6個)
・メチルジメトキシシリル基を含有し且つ主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド(A4)(株式会社カネカ社製 製品名「SAX720」、数平均分子量(Mn):25000、分子量分布(Mw/Mn):1.42、1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:1.9個)
・アクリル系重合体(E1)(株式会社カネカ社製 製品名「XMAP420S」、メチルジメトキシシリル基を含有する、主鎖骨格がアクリル酸ブチル及びアクリル酸ステアリルの共重合体、数平均分子量(Mn):21000、分子量分布(Mw/Mn):1.2、1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:2個)
・アクリル系重合体(E2)(綜研化学株式会社製 製品名「アクトフローNE-1000」、トリメトキシシリル基を含有する、主鎖骨格がアクリル酸ブチルの重合体、重量平均分子量(Mw):3000、分子量分布(Mw/Mn):1.3、1分子当たりのトリメトキシシリル基の平均個数:1個)
また、ポリアルキレンオキサイド(A1)~(A4)は、いずれもポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含有していなかった。
アクリル系重合体(E1)及び(E2)は、いずれもポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含有していなかった。
【0133】
〔(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B7)(ポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位を含有せず、トリメトキシシリル基を有し且つ主鎖骨格がエチルアクリレート及びn-ブチルアクリレートの共重合体である(メタ)アクリル酸エステル系重合体、重量平均分子量2800、東亞合成株式会社製 商品名「US-6170」)
【0134】
[アミン化合物(C)]
アミン化合物(C1)(ステアリルアミン 融点50℃)
アミン化合物(C2)(ベヘニルプロピレンジアミン 融点60℃)
アミン化合物(C3)(ラウリルアミン 融点25℃)
アミン化合物(C4)(デシルアミン 融点17℃)
【0135】
〔可塑剤〕
アクリル系重合体(D)(加水分解性シリル基を含有しておらず、且つポリオキシエチレン鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステル単位も含有していないアクリル系重合体、重量平均分子量:2000、東亞合成株式会社製 製品名「アルフォン UP1110」)
【0136】
〔シラノール縮合触媒〕
シラノール縮合触媒(ジオクチル錫オキサイド)
【0137】
〔アミノシラン化合物〕
アミノシラン化合物(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製 製品名「KBM-603」)
【0138】
〔充填剤〕
コロイダル炭酸カルシウム(神島化学工業社製 製品名「PLS-505」、平均粒子径:0.1μm)
重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製 製品名「ホワイトンSB」、平均粒子径:2.0μm)
【0139】
〔脱水剤〕
脱水剤(ビニルトリメトシシラン、信越化学工業株式会社製 製品名「KBM-1003」)
〔酸化防止剤〕
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 製品名「イルガノックス1010」)
〔紫外線吸収剤〕
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製 製品名「チヌビン326」)
【0140】
(実施例1~11及び比較例1~5)
上述した、ポリアルキレンオキサイド(A1)~(A4)、アクリル系重合体(E1)~(E2)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B1)~(B7)、アミン化合物(C1)~(C4)、アクリル系重合体(D)、シラノール縮合触媒、アミノシラン化合物、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、脱水剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、それぞれ表2に示した配合量となるようにして密封した攪拌機中で減圧しながら均一になるまで混合することにより硬化性組成物を得た。
【0141】
〔最大荷重時伸び率(初期)〕
硬化性組成物を用いて、JIS A1439 5.17(2010年)に準拠して、H型試験体を作製した。具体的には、アルマイト処理アルミニウム板(縦50mm×横50mm、厚み5mm)2枚を用い、これらの板の間にスペーサーを挟むことによって板間の中央部に直方体状の空間(縦12mm×横50mm×高さ12mm)を形成した。この空間に硬化性組成物を空気が入らないように充填した。硬化性組成物の充填後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で硬化性組成物を14日間放置した。しかる後、硬化性組成物をさらに温度30℃の雰囲気下で14日間放置した。硬化性組成物を養生させて硬化させることにより、2枚のアルマイト処理アルミニウム板が硬化性組成物の硬化物によって接着一体化されてなるH型試験体を作製した。
【0142】
そして、作製したH型試験体について、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439 5.20.4(2010年)に準拠して行い、最大荷重時伸び率[%]を測定した。さらに、引張試験終了後、硬化性組成物の硬化物の破壊形態を目視により確認し、下記基準にて評価した。得られた結果を、表2における「初期」の欄にそれぞれ記載した。
【0143】
[最大荷重時伸び率(23℃の水1ケ月)]
上記と同様の要領で、H型試験体を作製した。作製したH型試験体を、23℃の水中に完全に沈めた状態で1ケ月間放置した後、水中からH型試験体を取り出して、23℃、相対湿度50%の雰囲気下にさらに24時間放置した。その後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439 5.20.4(2010年)に準拠して行い、最大荷重時伸び率[%]を測定した。さらに、引張試験終了後、硬化性組成物の硬化物の破壊形態を目視により確認し、下記基準にて評価した。得られた結果を、表2における「23℃水1ケ月」の欄にそれぞれ記載した。
【0144】
[最大荷重時伸び率(80℃の水3ケ月)]
上記と同様の要領で、H型試験体を作製した。作製したH型試験体を、80℃の水中に完全に沈めた状態で3ケ月間放置した後、水中からH型試験体を取り出して、23℃、相対湿度50%の雰囲気下にさらに24時間放置した。その後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439 5.20.4(2010年)に準拠して行い、最大荷重時伸び率[%]を測定した。さらに、引張試験終了後、硬化性組成物の硬化物の破壊形態を目視により確認し、下記基準にて評価した。得られた結果を、表2における「80℃水3ケ月」の欄にそれぞれ記載した。
【0145】
硬化性組成物の硬化物の破壊形態の評価基準は、引張試験終了後、硬化性組成物の硬化物が凝集破壊したものを「CF」とし、硬化性組成物の硬化物が界面破壊したものを「AF」とした。
【0146】
なお、硬化物の凝集破壊とは、引張試験において、硬化物自体が破壊した状態を意味する。また、硬化物の界面破壊とは、引張試験において、アルマイト処理アルミニウム板と硬化物との界面で剥離した状態を意味する。硬化性組成物の硬化物の接着力が高いほど凝集破壊を生じ、硬化性組成物の硬化物の接着力が低いほど界面破壊を生じる。
【0147】
[耐汚染性(雨筋汚れの発生)]
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、硬化性組成物を23℃の雰囲気下で厚さ2mmとなるように塗工して4週間養生して、これにより硬化性組成物の硬化物からなるシート状試験体を上記PET基材上に作製した。次に、シート状試験体から上記PET基材を剥離した後、シート状試験体のみをアルミ板に貼り付けて積層体を得た。その後、積層体を、シート状試験体表面が水平方向に対して垂直となるようにした状態で、屋外(滋賀県甲賀市)に3カ月間に亘って曝露した。曝露してから3ヶ月後の、シート状試験体の表面状態を目視で観察し、下記基準に従って評価した。その結果を表2の「耐汚染性(3ヶ月暴露)」の欄に示した。
◎:雨筋汚れの発生が無かった。
○:雨筋汚れの発生が僅かに有ったが、実使用上では問題はない。
×:雨筋汚れの発生があり、かなり汚れている状態であった。
【0148】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の硬化性組成物は、雰囲気(空気)中の湿気により硬化して、耐汚染性及び耐久性の双方に優れた硬化物を生成することができるので、例えば、建築構造物の外壁を構成している外壁部材の間に形成された接合部への充填材として好適に用いることができる。